JP3914092B2 - 薄スラブの連続鋳造設備および連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁力によって鋳型内での溶鋼流動を制御する薄スラブの連続鋳造設備および連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼の連続鋳造設備において、タンディッシュから浸漬ノズルを通して鋳型内に注入された溶鋼は大きな流速をもっている。この吐出流は、溶鋼内に深く侵入するため、アルミナ等を主体とする脱酸生成物が凝固シェル内に捕捉される原因となり、また、鋳型短辺面に衝突した吐出流は、上方流となって湯面近傍で大きな流速となるため、モールドパウダーの巻き込みを生じる原因ともなる。このような脱酸生成物の混入やモールドパウダーの巻き込みは、鋳造速度が速くなるにしたがって顕著となり、最終的にはブレークアウトを発生させる。これらの現象を防ぐために電磁力を流動溶鋼に作用させる防止技術が従来から種々提案されている。
【0003】
この防止技術としては、特開平8−19841号公報に開示されている技術がある。この公報では、図6に示すように、鋳型の幅中央ないし鋳型短辺4より内側の所定の位置から端部近傍にかけて、磁極を鋳型上方側に曲げるかまたは傾斜させ、かつ鋳片の幅中央部では浸漬ノズル1の吐出孔より下方に設けたものが提案されている。
【0004】
また、上記公報の実施例の中に磁極を鋳型の幅方向にV字形状にしたものや磁極の両端部を垂直に立てて全体としてコ字状にしたものが提案されている。
【0005】
上記従来技術おいては、鋳型の中央ないし鋳型短辺4より内側の所定の位置から両端部近傍にかけて、磁極を鋳型上方側に曲げるかまたは傾斜させ、かつ鋳片の幅中央部では浸漬ノズル1の吐出孔より下方に設けているため、浸漬ノズル1からの吐出流は下方斜め方向の鋳片端部に向かって流れるが、磁極が浸漬ノズル1の下方から鋳型の両端部では上方に曲げるか傾斜させて配置されているため、この磁極による磁場帯14によって浸漬ノズル1から吐出する吐出流のうち、鋳型下方への吐出流13を減衰することが出来る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術においては、磁場帯14に反射して、反転して発生する2次的上昇流12を減衰させることは出来ない。従って、この2次的に発生する上昇流12により、湯面3の変動を防止することは出来ない。
【0007】
また、厚みが100mm以下の薄スラブの連続鋳造設備においては、鋳型上面の面積が小さいため、このわずかな上昇流でも、湯面の変動は大きくなり、モールドパウダーの巻き込みによる鋳造欠陥やブレークアウトという鋳造障害を起こすことになる。まして、薄スラブの鋳造を高速(5m/min以上)で行う場合には、湯面変動は、容易に±30mmから±40mmレベルになり、ブレークアウトの原因となる。ブレークアウトを防止するためには、湯面の変動を±5mm以内に抑える必要がある。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、100mm以下の厚みのスラブを5m/min以上の鋳造速度で鋳造する場合に、鋳型上面の湯面の変動を抑えて安定した鋳造を行うことが出来る薄スラブの連続鋳造設備および連続鋳造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄スラブの連続鋳造設備は、鋳型の厚み方向に磁極を対向させた電磁力による直流静磁場または低周波交流磁場、あるいは永久磁石による静磁場によって鋳型内の溶鋼流動を制御する薄スラブの連続鋳造設備において、スラブの厚みを100mm以下、鋳造速度を5m/min以上とし、且つ、浸漬ノズルを囲む磁極形状を略U形とするとともに、浸漬ノズルと磁極との距離Aを300mm以下とすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の薄スラブの連続鋳造設備は、鋳型の厚み方向に磁極を対向させた電磁力による直流静磁場または低周波交流磁場、あるいは永久磁石による静磁場によって鋳型内の溶鋼流動を制御する薄スラブの連続鋳造設備において、スラブの厚みを100mm以下、鋳造速度を5m/min以上とし、且つ、浸漬ノズルを囲む磁極形状を略U形とするとともに、浸漬ノズルと磁極との距離Aと磁極幅Bの関係が、200mm≦A+B≦500mmの式を満足することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の薄スラブの連続鋳造設備は、鋳型の厚み方向に磁極を対向させた電磁力による直流静磁場または低周波交流磁場、あるいは永久磁石による静磁場によって鋳型内の溶鋼流動を制御する薄スラブの連続鋳造設備において、スラブの厚みを100mm以下、鋳造速度を5m/min以上とし、且つ、浸漬ノズルを囲む磁極形状を略U形とするとともに、磁極幅Bが、磁極の最大磁束密度(テスラ)×磁極幅B(mm)≧10×浸漬ノズルの吐出流速(m/s)+20の関係を満足することを特徴とする。
【0012】
本発明の薄スラブの連続鋳造方法は、鋳型の厚み方向に磁極を対向させた電磁力による直流静磁場または低周波交流磁場、あるいは永久磁石による静磁場によって鋳型内の溶鋼流動を制御する薄スラブの連続鋳造方法において、
スラブの厚みを100mm以下、鋳造速度を5m/min以上とし、且つ、浸漬ノズルを囲む磁極形状を略U形とするとともに、浸漬ノズルと磁極との距離Aを300mm以下として鋳型内溶鋼流動を制御することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す実施例に基づき、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の連続鋳造設備の鋳型部分を示す縦断面図、図2は鋳型の平面図、図3は浸漬ノズルと磁極との距離Aと湯面の流速標準偏差の関係を示すグラフ、図4は浸漬ノズルと磁極との距離Aおよび磁極幅Bと湯面の流速標準偏差との関係を示すグラフ、図5は最大磁束密度および磁極幅Bと浸漬ノズルの吐出流速の関係を示すグラフである。
【0014】
図2において、鋳型は、鋳型長辺5と鋳型短辺4とで構成され、鋳型長辺5側に磁気コイル7を配置している。磁気コイル7の間には、鋳型内での磁場帯14が略U形となるように(図1参照)、1対の略U形の磁極6、6をそれぞれ鋳型長辺5に沿って配置している。各磁極6、6は、鋳型内中央に配置した浸漬ノズル1からAの距離をおいて配置され、Bの磁極幅を有する。なお、図2中の符号8はリターンヨークである。
【0015】
図1において、鋳型の中央に配置された、浸漬ノズル1から溶鋼が吐出される。浸漬ノズル1には、鋳型内斜め下方に溶鋼を吐出するための孔が設けられており、この孔から溶鋼が鋳型内に吐出される。鋳型内の浸漬ノズル1の周りには、図2に示した磁極6、6によって、浸漬ノズル1から距離Aをおいて、且つ磁極幅Bと同じ幅を有する略U形の磁場帯14が形成されている。浸漬ノズル1の孔から吐出された溶鋼は所定の吐出流で吐出される。この吐出流は、U形磁極6、6による磁場帯14に接触して、吐出流が減衰され、鋳型短辺4側の壁に形成された凝固シェル9に衝突する。衝突した吐出流は鋳型短辺4の壁(凝固シェル9)に沿って上昇流10と下降流11とに分散される。吐出流は、衝突前にU形磁極6、6による磁場帯14により減衰されているので、上昇流10および下降流11とも溶鋼を撹拌する力はなく、鋳型上面の湯面3の変動は防止できる。なお、なお、図1中の符号2はモールドパウダーである。
【0016】
また、本発明では、浸漬ノズル1から距離Aをおいて磁極6、6を配置し、浸漬ノズル1から距離A内の領域で吐出流の上昇を発生させず、鋳型上面の湯面3の変動が起こらないようにしている。このことを図3で詳述する。図3は、浸漬ノズルと磁極との距離Aと湯面の流速標準偏差の関係について説明するグラフで、スラブ厚90mm、スラブ幅1500mm、鋳造速度8m/minの条件で行った実験結果を示すものである。図3より、浸漬ノズルと磁極との距離Aを300mm以下とすれば湯面の変動が小さいことがわかる。つまり、湯面の変動は、浸漬ノズルから吐出された溶鋼が鋳型の壁、または、磁極による磁場帯に接触した際に発生するに上昇流によって溶鋼が流動し、この流動によって変動するもので、これを流速標準偏差として表すことが出来る。流速標準偏差とは、湯面の任意の点における流速の時間に対する変化率であり、この変化率が大きいと、流れは乱流状態となり湯面変動が大きいということになる。この湯面レベルを安定させるためには、湯面の流速標準偏差を0.1以下にすることが必要である。図3からわかるように、浸漬ノズルと磁極との距離Aを300mm以下とすることで流速標準偏差を0.1以下に抑えることが出来た。
【0017】
次に、浸漬ノズルと磁極との距離Aおよび磁極幅Bと湯面の流速標準偏差との関係について、スラブ厚90mm、スラブ幅1500mm、鋳造速度8m/minの条件で、種々の実験を行い、最適な範囲を導くことが出来た。このときの磁極の磁束密度は最大0.4テスラとした。図4に示すように磁極と浸漬ノズルの距離Aおよび磁極幅Bと湯面の流速標準偏差との関係は、A+Bが200mm以上であれば、湯面の流速標準偏差を0.1以下に出来ることがわかった。上限は、コストとの関係から500mm程度までが最も有効な範囲である。200mm未満では磁極幅が小さく、吐出流を減衰させることが出来ない。従って、浸漬ノズルと磁極との距離Aと磁極幅Bは、200≦A+B≦500の関係を満足することが望ましい。
【0018】
次に、磁極の最大磁束密度および磁極幅Bと浸漬ノズルの吐出流速の関係を検討した。その結果を図5に示す。図5では、スラブ厚90mm、スラブ幅1500mm、鋳造速度=8m/min、ノズルからの吐出口面積S=4800mm2、浸漬ノズルの吐出流速=3.75m/sとして種々の実験を行った。鋳型上面の湯面の流速標準偏差を0.1以下とするためには、最大磁束密度(テスラ)×磁極幅B(mm)≧10×浸漬ノズルの吐出流速(m/s)+20であることを確認した。この範囲を採用することで、湯面の流速標準偏差を0.1以下に抑えることができ、結果として湯面レベルの変動を±5mm以下に制御することが可能となり、薄スラブの連続鋳造設備での高速安定鋳造が可能となった。
【0019】
本発明は、平行鋳型、ファンネル形状鋳型、凹形状鋳型等のあらゆる鋳型形状のものに対しても実施可能である。また、これら形状の場合、スラブの厚みの定義は、鋳型短辺近傍の厚みをもって、厚みが100mm以下の薄スラブの連続鋳造設備とする。
【0020】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、スラブ厚が100mm以下で鋳造速度が5m/min以上の薄スラブの連続鋳造において、鋳型内の湯面の変動を防止でき、モールドパウダーの巻き込みによる鋳造欠陥やブレークアウトの発生を防止し、安定した高速鋳造を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の連続鋳造設備の鋳型部分を示す縦断面図である。
【図2】鋳型の平面図である。
【図3】浸漬ノズルと磁極との距離Aと湯面の流速標準偏差の関係を示すグラフである。
【図4】浸漬ノズルと磁極との距離Aおよび磁極幅Bと湯面の流速標準偏差との関係を示すグラフである。
【図5】最大磁束密度および磁極幅Bと浸漬ノズルの吐出流速の関係を示すグラフである。
【図6】従来技術の鋳型部分の縦断面図である。
【符号の説明】
1 浸漬ノズル
2 モールドパウダー
3 湯面
4 鋳型短辺
5 鋳型長辺
6 磁極
7 磁気コイル
8 リターンヨーク
9 凝固シェル
10 ノズル吐出流(上昇流)
11 ノズル吐出流(下降流)
12 ノズル吐出流(2次的上昇流)
13 ノズル吐出流
14 磁場帯
Claims (4)
- 鋳型の厚み方向に磁極を対向させた電磁力による直流静磁場または低周波交流磁場、あるいは永久磁石による静磁場によって鋳型内の溶鋼流動を制御する薄スラブの連続鋳造設備において、
スラブの厚みを100mm以下、鋳造速度を5m/min以上とし、且つ、浸漬ノズルを囲む磁極形状を略U形とするとともに、浸漬ノズルと磁極との距離Aを300mm以下とすることを特徴とする薄スラブの連続鋳造設備。 - 鋳型の厚み方向に磁極を対向させた電磁力による直流静磁場または低周波交流磁場、あるいは永久磁石による静磁場によって鋳型内の溶鋼流動を制御する薄スラブの連続鋳造設備において、
スラブの厚みを100mm以下、鋳造速度を5m/min以上とし、且つ、浸漬ノズルを囲む磁極形状を略U形とするとともに、浸漬ノズルと磁極との距離Aと磁極幅Bの関係が下記式を満足することを特徴とする薄スラブの連続鋳造設備。
式 200mm≦A+B≦500mm - 鋳型の厚み方向に磁極を対向させた電磁力による直流静磁場または低周波交流磁場、あるいは永久磁石による静磁場によって鋳型内の溶鋼流動を制御する薄スラブの連続鋳造設備において、
スラブの厚みを100mm以下、鋳造速度を5m/min以上とし、且つ、浸漬ノズルを囲む磁極形状を略U形とするとともに、磁極幅Bが、磁極の最大磁束密度(テスラ)×磁極幅B(mm)≧10×浸漬ノズルの吐出流速(m/s)+20の関係を満足することを特徴とする薄スラブの連続鋳造設備。 - 鋳型の厚み方向に磁極を対向させた電磁力による直流静磁場または低周波交流磁場、あるいは永久磁石による静磁場によって鋳型内の溶鋼流動を制御する薄スラブの連続鋳造方法において、
スラブの厚みを100mm以下、鋳造速度を5m/min以上とし、且つ、浸漬ノズルを囲む磁極形状を略U形とするとともに、浸漬ノズルと磁極との距離Aを300mm以下として鋳型内溶鋼流動を制御することを特徴とする薄スラブの連続鋳造方法。
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