JP3913639B2 - 放射性廃液処理方法およびその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、たとえば原子力発電施設で発生する放射性廃樹脂濃縮廃液などに含有される有機物を無機化し、安定にセメント固化体に処理する方法、およびそのための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、原子力発電施設で発生する放射性廃樹脂濃縮廃液、例えば炉水浄化系廃樹脂濃縮廃液はとくに処理はなされておらず、タンクに貯蔵されている。また14C有機物は、セメント固化時に分配係数が14C無機物と比較して著しく低く、廃樹脂劣化物はその他の核種の分配係数を低下させる可能性がある。しかし従来の方法では、以下の理由から無機化への適用が困難である。
【0003】
(1)紫外線分解: 塩濃度が高いため、ランプ保護管に塩が析出して分解効率が低下し、塩除去のためのメンテナンスが必要となる。
(2)過酸化水素分解: Feが共存している必要があるが、硫酸ナトリウム(NaSO)水溶液中では水酸化鉄として析出するため、分解効率が悪い。
その上、炉水浄化系廃樹脂濃縮廃液は多量の硫酸イオンを含有しており、これまで固化処理等の安定化はなされていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
原子力発電施設などで発生する炉水浄化系廃樹脂濃縮廃液は、多量の硫酸イオンと有機物(14C化合物を含む)を含有している。有機形態の14Cはセメント中の分配係数が低く、処分時の被ばく評価上問題となる場合があり、14Cを含まないその他の有機物についても他核種と結びつき、分配係数を低下させる可能性があった。また、硫酸イオンはセメント固化時にひび割れや膨潤等の固化体の劣化を招く恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明は、原子力発電施設などにおいて発生する炉水浄化系廃樹脂濃縮廃液などに含有する有機物を無機化して安定なセメント固化体に処理する方法およびそのための装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するものであって、請求項に記載の発明は、硫酸ナトリウム溶液を含む放射性廃樹脂濃縮廃液の処理方法において、前記放射性廃樹脂濃縮廃液が15ないし25wt%の硫酸ナトリウム溶液であり、前記濃縮廃液に含有される有機物をオゾン酸化により分解して無機化し、前記無機化された廃液に含有される硫酸イオンをアルミナセメントでエトリンガイト化処理し、さらにアルカリ土類金属化合物を添加し、その後セメントを加えてセメント固化すること、を特徴とする。
【0007】
請求項に記載の発明によれば、放射性濃縮廃液に含有される有機物を分解して無機化して廃棄体の核種閉じ込め性を高め、安定なセメント固化体を得ることができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、ほとんどの有機物を無機化することができ、より確実に安定なセメント固化体を得ることができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、セメント固化体の膨潤を抑制することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の放射性廃液処理方法において、前記オゾン酸化による無機化の際の処理温度が、60ないし90℃であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による作用・効果が得られるほか、ほとんどの有機物を無機化することができ、より確実に安定なセメント固化体を得ることができる。
【0012】
また、請求項に記載の発明は、前記オゾン酸化による無機化の際に、廃液1Lに対してオゾンを2g以上の割合で注入すること、を特徴とする。
【0013】
請求項に記載の発明によれば、ほとんどの有機物を無機化することができ、より確実に安定なセメント固化体を得ることができる。
【0015】
また、請求項に記載の発明は、15ないし25wt%の硫酸ナトリウムを含む放射性廃樹脂濃縮廃液をセメント固化する前に当該廃液を処理するための処理装置であって、前記濃縮廃液を収容する反応容器と、この反応容器内の前記廃液中に浸漬されたオゾンガス噴出管と、このオゾンガス噴出管にオゾンを供給するオゾン発生器と、を有し、さらにこのオゾン発生器から供給されたオゾンによって無機化された廃液に含有される硫酸イオンをエトリンガイト化処理するアルミナセメントを加えるアルミナセメント供給装置と、さらにアルカリ土類金属化合物を添加するアルカリ土類金属化合物添加装置を有すること、を特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、放射性濃縮廃液の安定なセメント固化体を得るための前処理として、濃縮廃液の有機物をオゾン酸化により無機化することができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、ほとんどの有機物を無機化することができ、より確実に安定なセメント固化体を得ることができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、セメント固化体の膨潤を抑制することができる。
【0017】
また、請求項に記載の発明は、前記噴出管からオゾンガスが噴出される噴出口は、口径が100μm以下の多数の小孔であること、を特徴とする。
【0018】
請求項に記載の発明によれば、オゾンガスが廃液中に微小気泡として吹き込まれるので、廃液との接触面積が大きくなり、廃液中へのオゾンガスの溶解が促進されて、反応が促進される。
【0019】
また、請求項に記載の発明は、前記噴出管のガス噴出部は水平に広がった広がり部を有し、この広がり部の上面に多数の小孔が設けられていること、を特徴とする。
【0020】
請求項に記載の発明によれば、オゾンガスが廃液中に分散するので、廃液中へのオゾンガスの溶解が促進されて、反応が促進される。
【0021】
また、請求項に記載の発明は、前記反応容器から出た有機物をトラップしてそれを前記反応容器に戻すためのトラップと、前記反応容器を出たオゾンを分解するためのオゾン分解塔とを有すること、を特徴とする。
【0022】
請求項に記載の発明によれば、オゾンおよび有機物の大気への放出を減らすことができる。
【0023】
【発明の実施形態】
図2および図3は、本発明における廃樹脂廃液中の樹脂劣化物および14C含有有機物生成機構の一例を示す。図2(a)に示すように、アニオン樹脂1からはトリメチルアミン2が生成され、図2(b)に示すように、カチオン樹脂3からは低分子化したポリスチレンスルホン酸4が生成される。また、図3に示すように、炉水中にわずかに含有するH 17O(17O存在比:0.038%)5が、炉心6から発生する中性子7と反応して「−14CH−」が生成され、これらが重合反応してメタノール、ホルムアルデヒド、アセトン、ギ酸等が生成される。
【0024】
図1は本発明に係る放射性廃液処理装置の一実施の形態を示す図である。オゾンガスが、オゾン発生装置8から導入される。導入されたオゾンは、ガス噴射管9から反応容器10内の廃樹脂廃液中に噴射され、気泡を発生する(バブリングする)。この際、ミキシングポンプ11により液の一部を循環させ、その循環系統の途中に設けられたヒーター12により加熱して、温度を調整する。一部揮発した有機物はトラップ13で捕捉して反応容器10に還流させ、さらに排ガスはオゾン分解塔14を通してオゾン分解後、既設の排気系から排出される。
【0025】
ガス噴射管9は反応容器10の底部付近で水平に広がる形状であり、その水平部に、多数の小孔(図示せず)が設けられて、各小孔から廃液中にオゾンガスの気泡が噴出するようになっている。各小孔の口径を100μm以下と非常に小さくすることにより、オゾンガスの気泡を微細にすることができる。また、小孔が水平面内に配置されていることから、各気泡が互いに合体せずに微細なまま上昇することができる。硫酸ナトリウムのような溶質が多量に存在すると、オゾンは廃液中にあまり溶解しにくいとされているが、噴出口径を小さくして、微細な泡を発生させることで、物理的に廃液との接触面積が大きくなり、反応を促進することができる。
反応容器10でオゾン酸化処理された廃液は、図示しないミキサーへ移送され、そこでセメントが投入される。
【0026】
図4は、廃液中に硫酸ナトリウムを含まない場合のオゾン酸化分解結果を比較例として示す。試験条件は、試験溶液:トリメチルアミン(初期TOC濃度:100ppm)、試験液量:80〜600mL、温度:80℃、オゾン注入率:1.75〜13.1g/h/L(オゾン注入量:1.84〜13.8g/L)、オゾン注入速度:1.05g/h、処理時間:1〜4時間の条件で、ガス噴射管により試験液中にオゾンガスを注入した。ここで、「TOC」は全有機炭素(total organic carbon)を意味する。この実験結果から、廃液1L(リットル)に対してオゾン注入量を2g以上の割合とすることにより、ほとんどの有機物が無機化されることがわかる。
【0027】
次に、図5は本発明に係るオゾン酸化分解の温度依存性試験結果である。試験条件は、試験溶液:トリメチルアミン、ベンゼンスルホン酸(一水和物)(初期TOC濃度:100ppm)、温度:20〜90℃、オゾン注入率(=オゾン注入量(g/h)/試験液容量(L)):13.1g/h/L、試験時間:1時間である。60〜90℃でほとんどが分解して無機化される。
【0028】
図6は本発明に係るオゾン酸化分解結果である。試験条件は、試験溶液:トリメチルアミン(初期TOC濃度:100ppm、硫酸ナトリウム含有率:16〜20wt%)、試験液量:80〜600mL、温度:80℃、オゾン注入率:2.28〜13.1g/h/L、オゾン注入速度:1.05g/h、処理時間:1〜3.5時間の条件で、ガス噴射管により試験液中にオゾンガスを注入した。硫酸ナトリウムが共存すると、オゾンガス注入量に関係なくほとんどが無機化されることがわかる。
【0029】
図4と図6を比較すると、試験条件での相違は硫酸ナトリウムの存在の有無である。一般的に高濃度の硫酸ナトリウムが溶液中に存在すると、オゾンの溶解度は低下するとされている。そのため、硫酸ナトリウム含有溶液では分解率の低下が考えられるが、これと相違した結果となっている。
【0030】
これは、硫酸ナトリウムの濃度が上昇すると、溶液の粘度が上昇し、気泡が細分化され物理的な接触が改善したためと考えられる。実際に、硫酸ナトリウムの濃度を0%から20%まで段階的に変えて行なった試験の結果によれば、硫酸ナトリウム濃度が高いほど泡が細かくなることが観測された。この試験結果から、廃樹脂廃液が高濃度の硫酸ナトリウムを含有していても、希釈等の処理をせず、そのままオゾン酸化処理をすることが望ましいことが分かる。
【0031】
また、図4によると、硫酸ナトリウムが入っていないと無機化に多量のオゾンを必要とすることがわかるが、図6のように硫酸ナトリウムが含有している場合は少量のオゾンで十分な無機化率が得られることがわかる。本発明は、硫酸ナトリウムの濃度が15〜25wt%の場合に特に有効である。
【0032】
図1の反応容器10でオゾン酸化処理された廃液を、前述のミキサーへ移送して、そこでセメントを投入する前に、アルミナセメントを加えてエトリンガイト化処理し、これに水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属化合物を添加剤として加えることが好ましい。これにより、膨潤や表面での結晶析出がなく、健全な固化体が作製可能である。ここで、エトリンガイト化処理とは、セメントとして固める前にエトリンガイトを生成させることをいう。エトリンガイトはセメントの中で硫酸イオンが存在するとできる鉱物であって、これができるとセメント固化体が膨潤して固化体の健全性が害されることがある。セメントとして固める前にエトリンガイトを生成させておけば、この膨潤を避けることができる。
【0033】
実際に、模擬廃樹脂廃液(25%硫酸ナトリウム溶液)をセメント固化体としたものを作成して外観を観察した。その結果、アルミナセメントや水酸化バリウムなどの添加剤を加えることにより、膨潤や表面での結晶析出がなく、健全な固化体が作製可能なことが確認された。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、原子力発電施設において発生する放射性廃樹脂濃縮廃液は、有機物を無機化して安定なセメント固化体とすることが可能である。したがって、廃樹脂濃縮廃液の処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る放射性廃液処理装置の一実施の形態におけるオゾン酸化装置を示す模式的系統図。
【図2】廃樹脂廃液中の樹脂劣化物生成機構を示す説明図であって、(a)はアニオン樹脂から、(b)はカチオン樹脂からの反応を示す。
【図3】 14C含有有機物の生成機構を示す説明図。
【図4】硫酸ナトリウムを含まない場合の樹脂劣化物の無機化のオゾン注入量依存性を表すグラフ。
【図5】樹脂劣化物の無機化の温度依存性を表すグラフ。
【図6】16〜20%の硫酸ナトリウムを含む場合の樹脂劣化物の無機化のオゾン注入量依存性を表すグラフ。
【符号の説明】
1…アニオン樹脂、2…トリメチルアミン、3…カチオン樹脂、4…低分子化したポリスチレンスルホン酸、5…炉水中のH 17O、6…炉心、7…中性子、8…オゾンガス発生装置、9…ガス噴射管、10…反応容器、11…ミキシングポンプ、12…ヒーター、13…トラップ、14…オゾン分解塔。

Claims (7)

  1. 硫酸ナトリウム溶液を含む放射性廃樹脂濃縮廃液の処理方法において、前記放射性廃樹脂濃縮廃液が15ないし25wt%の硫酸ナトリウム溶液であり、前記濃縮廃液に含有される有機物をオゾン酸化により分解して無機化し、前記無機化された廃液に含有される硫酸イオンをアルミナセメントでエトリンガイト化処理し、さらにアルカリ土類金属化合物を添加し、その後セメントを加えてセメント固化すること、を特徴とする放射性廃液処理方法。
  2. 前記オゾン酸化による無機化の際の処理温度が、60ないし90℃であることを特徴とする請求項1記載の放射性廃液処理方法。
  3. 前記オゾン酸化による無機化の際に、廃液1Lに対してオゾンを2g以上の割合で注入すること、を特徴とする請求項1又は2記載の放射性廃液処理方法。
  4. 15ないし25wt%の硫酸ナトリウムを含む放射性廃樹脂濃縮廃液をセメント固化する前に当該廃液を処理するための処理装置であって、前記濃縮廃液を収容する反応容器と、この反応容器内の前記廃液中に浸漬されたオゾンガス噴出管と、このオゾンガス噴出管にオゾンを供給するオゾン発生器と、を有し、さらにこのオゾン発生器から供給されたオゾンによって無機化された廃液に含有される硫酸イオンをエトリンガイト化処理するアルミナセメントを加えるアルミナセメント供給装置と、さらにアルカリ土類金属化合物を添加するアルカリ土類金属化合物添加装置を有すること、を特徴とする放射性廃液処理装置。
  5. 前記噴出管からオゾンガスが噴出される噴出口は、口径が100μm以下の多数の小孔であること、を特徴とする請求項記載の放射性廃液処理装置。
  6. 前記噴出管のガス噴出部は水平に広がった広がり部を有し、この広がり部の上面に多数の小孔が設けられていること、を特徴とする請求項4又は5記載の放射性廃液処理装置。
  7. 前記反応容器から出た有機物をトラップしてそれを前記反応容器に戻すためのトラップと、前記反応容器を出たオゾンを分解するためのオゾン分解塔とを有すること、を特徴とする請求項4乃至6記載の放射性廃液処理装置。
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