JP3912170B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
流入する排気ガスの空燃比がリーンのときに流入する排気ガス中のNOを蓄え、流入する排気ガスの空燃比が低下したときに排気ガス中に還元剤が含まれていると蓄えているNOを還元して蓄えているNOの量が減少するNO触媒を、機関排気通路から分岐して環状に延びた後に機関排気通路に戻る環状分岐通路内に配置し、排気ガスを環状分岐通路の一端に導きながらこのとき環状分岐通路の他端から環状分岐通路の一端よりも下流の機関排気通路内に排気ガスが流出する位置と、排気ガスを環状分岐通路の他端に導きながらこのとき環状分岐通路の一端から環状分岐通路の他端よりも下流の機関排気通路内に排気ガスが流出する位置との間を切替可能な切替弁を具備した内燃機関の排気浄化装置が公知である(特開2001−289030号公報参照)。なお、本明細書では排気通路の或る位置よりも上流の排気通路、燃焼室、及び吸気通路内に供給された空気と炭化水素HC及び一酸化炭素COとの比をその位置における排気ガスの空燃比と称している。
【0003】
ところで、NO触媒が蓄えうるNOの量には限界があり、従ってNO触媒内に蓄えられたNOの量が許容量を越えたときにはNO触媒内に流入する排気ガスの空燃比を低下させかつNO触媒に還元剤を供給し、それによりNO触媒内に蓄えられているNOの量を減少させる必要がある。そこで上述した公報では、内燃機関で燃焼せしめられる混合気の空燃比を一時的に理論空燃比又はリッチ空燃比に切り替えるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
NO触媒内に流入する排気ガスの空燃比を低下させかつNO触媒に還元剤を供給する方法には様々な方法が知られており、例えば切替弁とNO触媒間の環状分岐通路内にNO触媒に還元剤を供給するための還元剤供給弁を配置することも可能である。
【0005】
しかしながら、このようにすると還元剤供給弁をNO触媒から十分に離間することができず、このため還元剤供給弁から供給された還元剤がNO触媒に到るまでに排気ガスによって十分に加熱されず、その結果NO触媒で反応することなく機関排気通路内に排出される恐れがある。或いは、還元剤供給弁から還元剤を供給するタイミングによっては還元剤供給弁から供給された還元剤が環状分岐通路内の排気ガスの流れによってNO触媒に到ることなく機関排気通路内に排出される恐れもある。
【0006】
そこで本発明の目的は、還元剤が酸化されることなく機関排気通路内に排出されるのを阻止することができる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために1番目の発明によれば、流入する排気ガスの空燃比がリーンのときに流入する排気ガス中のNOを蓄え、流入する排気ガスの空燃比が低下したときに排気ガス中に還元剤が含まれていると蓄えているNOを還元して蓄えているNOの量が減少するNO触媒を、排気ガス中に含まれる微粒子を捕集するためのパティキュレートフィルタ上に担持することによりNO 触媒担持フィルタを形成し、該NO 触媒担持フィルタを、機関排気通路から分岐して環状に延びた後に機関排気通路に戻る環状分岐通路内に配置し、排気ガスを環状分岐通路の一端に導いて排気ガスがNO 触媒担持フィルタ内にその一側から流入しその他側から流出した後に環状分岐通路の他端から環状分岐通路の一端よりも下流の機関排気通路内に排気ガスが流出する位置と、排気ガスを環状分岐通路の他端に導いて排気ガスがNO 触媒担持フィルタ内にその他側から流入しその一側から流出した後に環状分岐通路の一端から環状分岐通路の他端よりも下流の機関排気通路内に排気ガスが流出する位置との間を切替可能な切替弁を具備した内燃機関の排気浄化装置において、前記一端とNO 触媒担持フィルタ間の環状分岐通路内にNO 触媒担持フィルタに還元剤を供給するための還元剤供給弁と、酸化能を有する触媒とを配置すると共に、前記他端とNO 触媒担持フィルタ間の環状分岐通路内にも酸化能を有する触媒を配置している。
【0009】
また、番目の発明によれば1番目の発明において、環状分岐通路の両端が開口する排気通路部分よりも下流の機関排気通路内にも酸化能を有する触媒を配置している。
【0010】
また、番目の発明によれば1番目の発明又は2番目の発明において、前記酸化能を有する触媒を酸化触媒から形成している。
【0011】
また、番目の発明によれば1番目の発明又は2番目の発明において、前記酸化能を有する触媒をNO触媒から形成している。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明を圧縮着火式内燃機関に適用した場合を示している。なお、本発明は火花点火式内燃機関にも適用することもできる。
【0014】
図1を参照すると、1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は電気制御式燃料噴射弁、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は対応する吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、サージタンク12は吸気ダクト13を介して排気ターボチャージャ14のコンプレッサ15に連結される。吸気ダクト13内にはステップモータ16により駆動されるスロットル弁17が配置され、更に吸気ダクト13周りには吸気ダクト13内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置18が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置18内に導かれ、機関冷却水によって吸入空気が冷却される。
【0015】
一方、排気ポート10は排気マニホルド19及び排気管20を介して排気ターボチャージャ14の排気タービン21に連結され、排気タービン21の出口は排気管20aを介して触媒コンバータ22に接続される。
【0016】
図1と共に図2を参照すると、触媒コンバータ22はステップモータ60により駆動される切替弁61を具備し、この切替弁61の流入ポート62に排気管20aの出口が接続される。また、流入ポート62に対向する切替弁61の流出ポート63には触媒コンバータ22の排気ガス排出管64が接続される。切替弁61は更に、流入ポート62及び流出ポート63を結ぶ直線の両側において互いに対向する一対の流入流出ポート65,66を有しており、これら流入流出ポート65,66には触媒コンバータ22の環状排気管67の両端がそれぞれ接続される。なお、排気ガス排出管64の出口には排気管23が接続される。
【0017】
環状排気管67は排気ガス排出管64を貫通して延びており、環状排気管67の排気ガス排出管64内に位置する部分にはフィルタ収容室68が形成される。このフィルタ収容室68内には排気ガス中の微粒子を捕集するためのパティキュレートフィルタ69が収容される。なお、図2において69a及び69bはパティキュレートフィルタ69の一端面及び他端面をそれぞれ示している。
【0018】
パティキュレートフィルタ69の一端面69aを含む触媒コンバータ22の部分縦断面図を示す図2(A)、及び触媒コンバータ22の部分横断面図を示す図2(B)に示されるようにパティキュレートフィルタ69はハニカム構造をなしており、互いに平行をなして延びる複数個の排気ガス通路70,71を具備する。これら排気ガス通路は一端が開放されかつ他端が通気性のないシール材72により閉塞されている排気ガス通路70と、他端が開放されかつ一端が通気性のないシール材73により閉塞されている排気ガス通路71とにより構成される。なお、図2(A)においてハッチングを付した部分はシール材73を示している。これら排気ガス通路70,71は例えばコージェライトのような多孔質材から形成される薄肉の隔壁74を介して交互に配置される。云い換えると排気ガス通路70,71は各排気ガス通路70が4つの排気ガス通路71によって包囲され、各排気ガス通路71が4つの排気ガス通路70によって包囲されるように配置される。
【0019】
パティキュレートフィルタ69上には後述するようにNO触媒81が担持されている。一方、切替弁61の流出ポート63と環状排気管67が貫通している部分との間の排気ガス排出管64内には触媒収容室75が形成されており、この触媒収容室75内にはハニカム構造の基材に担持された酸化能を有する触媒76が収容される。
【0020】
また、切替弁61の流入流出ポート65とパティキュレートフィルタ69間の環状排気管67にはパティキュレートフィルタ69に還元剤を供給するための電気制御式還元剤供給弁77が取り付けられる。還元剤供給弁77には電気制御式の還元剤ポンプ78から還元剤がそれぞれ供給される。還元剤には液体又は気体の炭化水素のほか水素や尿素などを用いることができるが、本発明による実施例では還元剤として燃料即ち軽油が用いられている。
【0021】
更に、流入流出ポート65とパティキュレートフィルタ69間の環状排気管67内と、流入流出ポート66とパティキュレートフィルタ69間の環状排気管67内にも、ハニカム構造の基材に担持された酸化能を有する触媒79,80がそれぞれ収容されている。図1及び図2に示される実施例では、触媒79は還元剤供給弁77とパティキュレートフィルタ69間に配置される。
【0022】
更に図1を参照すると、排気マニホルド19とサージタンク12とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路24を介して互いに連結され、EGR通路24内には電気制御式EGR制御弁25が配置される。また、EGR通路24周りにはEGR通路24内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置26が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置26内に導かれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。
【0023】
一方、各燃料噴射弁6は燃料供給管6aを介して燃料リザーバ、いわゆるコモンレール27に連結される。このコモンレール27内へは電気制御式の吐出量可変な燃料ポンプ28から燃料が供給され、コモンレール27内に供給された燃料は各燃料供給管6aを介して燃料噴射弁6に供給される。コモンレール27にはコモンレール27内の燃料圧を検出するための燃料圧センサ29が取付けられ、燃料圧センサ29の出力信号に基づいてコモンレール27内の燃料圧が目標燃料圧となるように燃料ポンプ28の吐出量が制御される。
【0024】
電子制御ユニット40はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス41によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)42、RAM(ランダムアクセスメモリ)43、CPU(マイクロプロセッサ)44、入力ポート45及び出力ポート46を具備する。燃料圧センサ29の出力信号は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。また、アクセルペダル50にはアクセルペダル50の踏み込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ51が接続され、負荷センサ51の出力電圧は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。更に入力ポート45にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ52が接続される。
【0025】
一方、出力ポート46は対応する駆動回路48を介して燃料噴射弁6、スロットル弁駆動用ステップモータ16、EGR制御弁25、燃料ポンプ28、切替弁駆動用ステップモータ60、還元剤供給弁77、及び還元剤ポンプ78にそれぞれ接続される。
【0026】
切替弁61は通常、図3(B)において実線で示される位置と破線で示される位置とのうちいずれか一方に位置せしめられる。切替弁61が図3(B)において実線で示される位置に位置せしめられると、流入ポート62が切替弁61によって流出ポート63及び流入流出ポート66との連通が遮断されながら流入流出ポート65に連通され、流出ポート63が切替弁61によって流入流出ポート66に連通される。その結果、図3(B)において実線の矢印で示されるように内燃機関から排出された全ての排気ガスが流入ポート62及び流入流出ポート65を順次介して環状排気管67内に流入し、触媒79を通過した後にパティキュレートフィルタ69を通過し、次いで触媒80を通過した後に流入流出ポート66及び流出ポート63を順次介して排気ガス排気出管64内に流出する。
【0027】
これに対し、切替弁61が図3(B)において破線で示される位置に位置せしめられると、流入ポート62が切替弁61によって流出ポート63及び流入流出ポート65との連通が遮断されながら流入流出ポート66に連通され、流出ポート63が切替弁61によって流入流出ポート65に連通される。その結果、図3(B)において破線の矢印で示されるように内燃機関から排出された全ての排気ガスが流入ポート62及び流入流出ポート66を順次介して環状排気管67内に流入し、触媒80を通過した後にパティキュレートフィルタ69を通過し、次いで触媒79を通過した後に流入流出ポート65及び流出ポート63を順次介して排気ガス排出管64内に流出する。
【0028】
このように切替弁61の位置を切り替えることによって環状排気管67内における排気ガスの流れが反転する。以下では、図3(B)において実線で示される排気ガスの流れを順流と称し、破線で示される排気ガスの流れを逆流と称することにする。また、図3(B)において実線で示される切替弁61の位置を順流位置と称し、破線で示される切替弁61の位置を逆流位置と称する。
【0029】
流出ポート66を介し排気ガス排出管64内に流出した排気ガスは図3(A)及び(B)に示されるように、次いで触媒76を通過し、環状排気管67の外周面に沿いつつ進行した後に排気管23内に流出する。
【0030】
パティキュレートフィルタ69における排気ガスの流れを説明すると、順流時には排気ガスは一端面69aを介しパティキュレートフィルタ69内に流入し、他端面69bを介しパティキュレートフィルタ69から流出する。このとき、排気ガスは一端面69a内に開口している排気ガス通路70内に流入し、次いで周囲の隔壁74内を通って隣接する排気ガス流出通路71内に流出する。一方、逆流時には排気ガスは他端面69bを介しパティキュレートフィルタ69内に流入し、一端面69aを介しパティキュレートフィルタ69から流出する。このとき、排気ガスは他端面69b内に開口している排気ガス通路71内に流入し、次いで周囲の隔壁74内を通って隣接する排気ガス流出通路70内に流出する。
【0031】
パティキュレートフィルタ69の隔壁74の両側面及び細孔内壁面上には図4に示されるようにNO触媒81がそれぞれ担持されている。このNO触媒81は例えばアルミナを担体とし、この担体上に例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Pt、パラジウムPd、ロジウムRh、イリジウムIrのような貴金属とが担持されている。
【0032】
NO触媒は流入する排気ガスの平均空燃比がリーンのときにはNOを蓄え、流入する排気ガスの空燃比が低下したときに排気ガス中に還元剤が含まれていると蓄えているNOを還元して蓄えているNOの量を減少させる蓄積還元作用を行う。
【0033】
NO触媒の蓄積還元作用の詳細なメカニズムについては完全には明らかにされていない。しかしながら、現在考えられているメカニズムを、担体上に白金Pt及びバリウムBaを担持させた場合を例にとって簡単に説明すると次のようになる。
【0034】
即ち、NO触媒に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもかなりリーンになると流入する排気ガス中の酸素濃度が大巾に増大し、酸素OがO 又はO2−の形で白金Ptの表面に付着する。一方、流入する排気ガス中のNOは白金Ptの表面上でO 又はO2−と反応し、NOとなる(2NO+O→2NO)。次いで生成されたNOの一部は白金Pt上でさらに酸化されつつNO触媒内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら、硝酸イオンNO の形でNO触媒内に拡散する。このようにしてNOがNO触媒内に蓄えられる。
【0035】
これに対し、NO触媒に流入する排気ガスの空燃比がリッチ又は理論空燃比になると、排気ガス中の酸素濃度が低下してNOの生成量が低下し、反応が逆方向(NO →NO)に進み、斯くしてNO触媒内の硝酸イオンNO がNOの形でNO触媒から放出される。この放出されたNOは排気ガス中に還元剤即ちHC,COが含まれているとこれらHC,COと反応して還元せしめられる。このようにして白金Ptの表面上にNOが存在しなくなるとNO触媒から次から次へとNOが放出されて還元され、NO触媒内に蓄えられているNOの量が次第に減少する。
【0036】
なお、硝酸塩を形成することなくNOを蓄え、NOを放出することなくNOを還元することも可能である。
【0037】
一方、比較的小容量の触媒76,79,80を上述したNO触媒からそれぞれ形成してもよく、又はアルカリ金属、アルカリ土類、及び希土類を含むことなく貴金属を含む貴金属触媒からそれぞれ形成してもよい。
【0038】
上述したように順流時であろうと逆流時であろうと排気ガスはパティキュレートフィルタ69を通過し、このとき排気ガス中に含まれる主に炭素の固体からなる微粒子はパティキュレートフィルタ69上に捕集される。即ち、概略的に説明すると、順流時には排気ガス通路70側の隔壁74の側面上及び細孔内に微粒子が捕集され、逆流時には排気ガス通路71側の隔壁74の側面上及び細孔内に微粒子が捕集される。図1に示される内燃機関はリーン空燃比のもとでの燃焼が継続して行われており、また、NO触媒は酸化能を有しているので、パティキュレートフィルタ69の温度が微粒子を酸化しうる温度、例えば250℃以上に維持されていれば、パティキュレートフィルタ69上で微粒子が酸化せしめられ除去される。
【0039】
ところが、パティキュレートフィルタ69の温度が微粒子を酸化しうる温度に維持されなくなるか又は単位時間当たりにパティキュレートフィルタ69内に流入する微粒子の量がかなり多くなるとパティキュレートフィルタ69上に堆積する微粒子の量が次第に増大し、パティキュレートフィルタ69の圧損が増大する。
【0040】
そこで本発明による実施例では、例えばパティキュレートフィルタ69上の堆積微粒子量が許容最大量を越えたときには切替弁61を順流位置から逆流位置に又はその逆に切り替えると共に、パティキュレートフィルタ69に流入する排気ガスの空燃比をリーンに維持しつつパティキュレートフィルタ69の温度を600℃以上まで上昇し次いで600℃以上に維持する昇温制御が行われる。この昇温制御が行われるとパティキュレートフィルタ69上に堆積した微粒子が着火燃焼せしめられ除去される。この場合、排気ガスの流れが反転されているので、微粒子が燃焼することにより形成される灰がパティキュレートフィルタ69から容易に除去される。
【0041】
なお、パティキュレートフィルタ69の温度を上昇させる方法には種々の方法がある。例えばパティキュレートフィルタ69の端面に電気ヒータを配置して電気ヒータによりパティキュレートフィルタ69又はパティキュレートフィルタ69に流入する排気ガスを加熱する方法や、パティキュレートフィルタ69上流の排気通路内に燃料を供給してこの燃料を燃焼させることによりパティキュレートフィルタ69を加熱する方法や、内燃機関から排出される排気ガスの温度を上昇させてパティキュレートフィルタ69の温度を上昇させる方法がある。
【0042】
ここで、パティキュレートフィルタ69は環状排気管67のほぼ中央部に配置されており、即ち切替弁61の流入ポート62からパティキュレートフィルタ69までの距離及びパティキュレートフィルタ69から流出ポート63までの距離が切替弁61が順流位置にあるときと逆流位置にあるときとでほとんど変わらない。このことはパティキュレートフィルタ69の状態例えば温度が切替弁61が順流位置にあるときと逆流位置にあるときとでほとんど変わらないことを意味しており、従って切替弁61の位置に応じた特別な制御を必要としない。
【0043】
一方、上述したようにパティキュレートフィルタ69内に流入する排気ガスの空燃比はリーンに維持されているので、排気ガス中のNOはパティキュレートフィルタ69上のNO触媒81内に蓄えられ、NO触媒81内の蓄積NO量は次第に増大する。
【0044】
本発明による実施例では、例えばNO触媒81内の蓄積NO量が許容量を越えたときにはNO触媒81内に蓄えられているNOを還元しNO触媒81内の蓄積NO量を減少させるために還元剤供給弁77からNO触媒81に還元剤を一時的に供給するようにしている。この場合、NO触媒81内に流入する排気ガスの空燃比が一時的にリッチに切り替えられる。
【0045】
ところが、切替弁61が順流位置又は逆流位置に保持されているときにはNO触媒81内に多量の排気ガスが流入しており、このときNO触媒81内に流入する排気ガスの空燃比をリッチに切り替えるためには多量の還元剤が必要となる。これに対し、切替弁61が順流位置から逆流位置に又は逆流位置から順流位置に切り替えられるときにはNO触媒81内に流入する排気ガスの量が一時的に少なくなる。即ち、切替弁61が例えば逆流位置から順流位置に切り替えられるときには逆流方向の排気ガス流量が次第に減少し、一旦ゼロになった後に順流方向の排気ガス流量が次第に増大する。
【0046】
そこで本発明による実施例では、NO触媒81内の蓄積NO量が許容量を越えた後切替弁61が順流位置から逆流位置に又は逆流位置から順流位置に切り替えられるときに還元剤供給弁77からNO触媒81に還元剤を供給するようにしている。より正確には、切替弁61が順流位置から逆流位置に切り替えられるときのNO触媒81内を流通する排気ガス流量がゼロになる直前か、又は切替弁61が逆流位置から順流位置に切り替えられるときのNO触媒81内を流通する排気ガス流量がゼロになった直後に、還元剤が供給される。いずれの場合でも、環状排気管67内を順流方向にわずかな量の排気ガスが流通しており、還元剤供給弁77から供給された還元剤は順流の排気ガスによってNO触媒81まで運ばれ拡散される。
【0047】
還元剤供給弁77から供給された還元剤はまず触媒79で部分的に酸化され或いは微粒化され、次いでNO触媒81に到る。その結果、NO触媒81における還元剤の反応性が高くなり、NO触媒81内に蓄えられたNOを還元するために必要な還元剤の量を低減することができる。
【0048】
ところで、排気ガス中にはリンが含まれている場合があり、この場合にはパティキュレートフィルタ69上にリン酸塩を含む微粒子が堆積することになる。このリン酸塩を含む微粒子は時間の経過と共に成長すれば、微粒子が燃焼せしめられたときに形成される灰がパティキュレートフィルタ69から容易に離脱する。ところが、触媒79が設けられない場合には比較的大きな液滴の形の還元剤がパティキュレートフィルタ69内に流入することになり、このような還元剤がリン酸塩を含む微粒子に付着するとその成長が阻害され、この微粒子の灰がパティキュレートフィルタ69から離脱ししにくくなる。このようにパティキュレートフィルタ69上に残存する灰はパティキュレートフィルタ69上の白金Pt粒子を覆い、パティキュレートフィルタ69上に新たに堆積した微粒子の酸化を妨げるだけでなく、NO触媒81へのNOの蓄積作用をも妨げる。
【0049】
これに対して本発明による実施例では、上述したように還元剤供給弁77から供給された還元剤が触媒79により部分的に酸化され又は微粒化されており、従ってリン酸塩を含む微粒子の灰がパティキュレートフィルタ69から容易に離脱することができる。従って、パティキュレートフィルタ69の微粒子酸化作用及びNO触媒81のNO蓄積が妨げられない。
【0050】
また、本発明による実施例では、還元剤供給弁77からの還元剤供給量及び還元剤供給時期をさほど精密に制御する必要がない。即ち、例えば過剰の量の還元剤が供給されたり、切替弁61が逆流位置から順流位置に切り替えられるときに還元剤を供給する場合に還元剤供給時期が早すぎたり、切替弁61が順流位置から逆流位置に切り替えられるときに還元剤を供給する場合に還元剤供給時期が遅すぎたりしても、このときの還元剤は触媒76,79,80のいずれかに到り消費される。従って、還元剤が酸化されることなく排気管23内に排出されることがない。
【0051】
図5に本発明による別の実施例を示す。図5に示される実施例は触媒79,80が切替弁61の流入流出ポート65,66に対面する環状排気管67内に配置され、従って触媒79が流入流出ポート65と還元剤供給弁77間に配置される点で図1及び図2に示される実施例と構成を異にしている。
【0052】
図5に示される実施例においても、パティキュレートフィルタ69又はNO触媒81で消費されなかった還元剤は触媒76,79,80のいずれかに到り消費される。従って、この実施例においても還元剤供給弁77からの還元剤供給量及び還元剤供給時期をさほど精密に制御する必要がない。
【0053】
ところで、上述したように触媒76,78,80をNO触媒から形成することもできる。このようにすると触媒コンバータ22の寸法を大きくすることなく、触媒コンバータ22全体のNO蓄積容量を増大させることができる。
【0054】
この場合、例えば順流時には排気ガスはNO触媒79を通過した後にパティキュレートフィルタ69内に流入し、しかもNO触媒79は比較的小容量であるので、短時間のうちにNO触媒79がNOで飽和する恐れがある。しかしながら、NO触媒79が飽和したとしてもNOはNO触媒81,80,76内に蓄えられ、排気管23内に排出されることがない。逆流時も同様である。
【0055】
一方、NO触媒79及びNO触媒81の下流又はNO触媒80及びNO触媒81の下流に位置するNO触媒76内にはほとんどNOが流入せず、NO触媒76内にはNOがほとんど蓄えられない。
【0056】
そうすると、これらNO触媒76,79,80内の蓄積NO量を減少させるためにこれらNO触媒76,79,80のみに還元剤を供給する必要がないということになる。もっとも、上述したようにNO触媒81に供給された還元剤の一部がNO触媒76,79,80に到る場合があり、この還元剤によってNO触媒76,79,80内の蓄積NOが還元され蓄積NO量が減少される場合がありうる。
【0057】
これまで述べてきた実施例では、切替弁61が順流位置と逆流位置との間で切り替えられるときに還元剤供給弁77から還元剤を供給するようにしている。しかしながら、わずかな量の排気ガスがNO触媒81内を順流方向に流通する位置に切替弁61を一時的に保持しながら還元剤供給弁77から還元剤を供給するようにしてもよい。即ち、切替弁61を順流位置と逆流位置との間の或る位置に保持すると、このとき内燃機関から排出された排気ガスの大部分が流入ポート62から流出ポート63を介し直接的に排気ガス排出管64内に流出し、残りのわずかな一定量の排気ガスが流入流出ポート65を介し環状排気管67内に流入し、次いでパティキュレートフィルタ69内を通過するようになる。従って、切替弁61をこのような中間位置に保持すればNO触媒81内に流入する排気ガスの空燃比をリッチにするために必要な還元剤の量を低減することができる。
【0058】
また、これまで述べてきた実施例では、NO触媒81内の蓄積NO量を低減するために還元剤供給弁77からNO触媒81に還元剤を供給する場合に本発明を適用している。しかしながら、NO触媒81内の蓄積SO量を低減するために還元剤供給弁77からNO触媒81に還元剤を供給する場合や、パティキュレートフィルタ69上の堆積微粒子を酸化除去すべく昇温制御を行うために還元剤供給弁77からパティキュレートフィルタに還元剤を供給する場合にも本発明を適用することができる。
【0059】
ここで、NO触媒81内の蓄積SO量を低減するために還元剤供給弁77からNO触媒81に還元剤を供給する場合についてもう少し詳しく説明する。排気ガス中にはイオウ分がSOの形で含まれており、NO触媒81内にはNOばかりでなくSOも蓄えられる。このSOのNO触媒81内への蓄積メカニズムはNOの蓄積メカニズムと同じであると考えられる。即ち、担体上に白金Pt及びバリウムBaを担持させた場合を例にとって簡単に説明すると、NO触媒81に流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには上述したように酸素OがO 又はO2−の形で白金Ptの表面に付着しており、流入する排気ガス中のSOは白金Ptの表面上でO 又はO2−と反応し、SOとなる。次いで生成されたSOは白金Pt上でさらに酸化されつつNO触媒81内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら、硫酸イオンSO の形でNO触媒81内に拡散する。この硫酸イオンSO は次いでバリウムイオンBaと結合して硫酸塩BaSOを生成する。
【0060】
この硫酸塩BaSOは分解しにくく、NO触媒81内に流入する排気ガスの空燃比をただ単にリッチにしてもNO触媒81内の硫酸塩BaSOの量は減少しない。このため、時間が経過するにつれてNO触媒81内の硫酸塩BaSOの量が増大し、その結果NO触媒81が蓄えうるNOの量が減少することになる。
【0061】
しかしながら、NO触媒81の温度を550℃以上に維持しつつNO触媒81に流入する排気ガスの空燃比をリッチ又は理論空燃比にすると、NO触媒81内の硫酸塩BaSOが分解してSOの形でNO触媒81から放出される。この放出されたSOは排気ガス中に還元剤即ちHC,COが含まれているとこれらHC,COと反応してSOに還元せしめられる。このようにしてNO触媒81内に蓄えられているSOの量が次第に減少し、このときNO触媒81からSOがSOの形で流出することがない。
【0062】
そこで、例えばNO触媒81内の蓄積SO量が許容量を越えたときにはNO触媒81の温度を550℃まで上昇し次いで550℃以上に維持するために、かつNO触媒81内の蓄積SO量を減少させるために還元剤供給弁77からNO触媒81に還元剤を一時的に供給することができる。この場合、NO触媒81内に流入する排気ガスの空燃比が一時的にリッチに切り替えられる。
【0063】
【発明の効果】
還元剤が酸化されることなく機関排気通路内に排出されるのを阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】内燃機関の全体図である。
【図2】触媒コンバータの構造を示す図である。
【図3】排気ガスの流れを説明するための図である。
【図4】パティキュレートフィルタの隔壁の部分拡大断面図である。
【図5】本発明による更に別の実施例による触媒コンバータの構造を示す図である。
【符号の説明】
1…機関本体
20a…排気管
22…触媒コンバータ
61…切替弁
67…環状排気管
65,66…流入流出ポート
69…パティキュレートフィルタ
76,79,80…触媒
77…還元剤供給弁
81…NO触媒

Claims (4)

  1. 流入する排気ガスの空燃比がリーンのときに流入する排気ガス中のNOを蓄え、流入する排気ガスの空燃比が低下したときに排気ガス中に還元剤が含まれていると蓄えているNOを還元して蓄えているNOの量が減少するNO触媒を、排気ガス中に含まれる微粒子を捕集するためのパティキュレートフィルタ上に担持することによりNO 触媒担持フィルタを形成し、該NO 触媒担持フィルタを、機関排気通路から分岐して環状に延びた後に機関排気通路に戻る環状分岐通路内に配置し、排気ガスを環状分岐通路の一端に導いて排気ガスがNO 触媒担持フィルタ内にその一側から流入しその他側から流出した後に環状分岐通路の他端から環状分岐通路の一端よりも下流の機関排気通路内に排気ガスが流出する位置と、排気ガスを環状分岐通路の他端に導いて排気ガスがNO 触媒担持フィルタ内にその他側から流入しその一側から流出した後に環状分岐通路の一端から環状分岐通路の他端よりも下流の機関排気通路内に排気ガスが流出する位置との間を切替可能な切替弁を具備した内燃機関の排気浄化装置において、前記一端とNO 触媒担持フィルタ間の環状分岐通路内にNO 触媒担持フィルタに還元剤を供給するための還元剤供給弁と、酸化能を有する触媒とを配置すると共に、前記他端とNO 触媒担持フィルタ間の環状分岐通路内にも酸化能を有する触媒を配置した内燃機関の排気浄化装置。
  2. 環状分岐通路の両端が開口する排気通路部分よりも下流の機関排気通路内にも酸化能を有する触媒を配置した請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  3. 前記酸化能を有する触媒を酸化触媒から形成した請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  4. 前記酸化能を有する触媒をNO 触媒から形成した請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
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