JP3911544B2 - 複合膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は複合膜の製造方法に関し、特に大型飛行船または気球等の宇宙・航空機器に好適に用いられる複合膜であって、ガスが透過しにくく、宇宙・航空機器の中でヘリウムガス等を貯蔵し、成層圏等の高高度での厳しい条件下で宇宙・航空機器の形状を安定させることができる複合膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、通信衛星等を利用した通信技術が発展し、今や世界中で使える携帯電話や携帯端末が全世界的に普及しつつある。しかし、通信衛星の打ち上げには莫大な費用と労力を要する。そこで、最近、通信衛星にかわるものとして、成層圏を利用する可能性が模索されている。成層圏とは、地上から10〜50kmあたりの大気圏のことで、特に高度20〜22km付近は風速が穏やかである。また常に晴天であり、太陽エネルギーの効率的利用が可能である。これらの条件が、通信基地として都合がよい。
【0003】
現在、文部科学省と総務省が共同で「成層圏プラットホーム」の研究開発に取り組んでいる。成層圏プラットホームとは、成層圏に浮かぶ巨大な飛行船をプラットホームとして使用するというものであり、21世紀における新しい通信・放送(例えばデジタル放送、携帯端末、超高速インターネット、移動通信等)、地球観測(例えば海洋、大気等)、災害監視(例えば山火事、赤潮等)の基地として期待されている。
【0004】
前述の成層圏プラットホーム計画では、全長150mあるいはそれ以上の大型飛行船を空気の薄い成層圏の高度にまで上げることが要求される。前記飛行船には、十分な浮力を得るために軽量化が求められ、飛行船を構成する外皮膜には、軽量かつ高強度であることが求められる。さらに、成層圏では直射日光を受け、外皮膜の表面温度が100℃あるいはそれ以上の高温となるため、飛行船を構成する外皮膜には耐熱性も要求される。
上述のような要求に対し、軽量で高強度かつHeガス透過性が低く、さらに耐熱性の高い複合膜が開発されている(特願2001−334105)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、製造が効率的で、かつしわが寄るなどの不良品が生じにくい、繊維布帛と熱可塑性樹脂とヘリウムガス透過性が約600cc/m2/24hr/0.1mm/atm以下であるフィルム(以下、「Heガス低透過性フィルム」という。)とからなる複合膜の工業的に有利な製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、先に開発した繊維布帛にポリエステルエラストマーまたはポリエステルエラストマーを含む組成物(以下、単に「ポリエステルエラストマー」という。)を接着剤として、Heガス低透過性フィルムを複合化させることを特徴とする複合膜の工業的な製造方法について検討を行った。
前記複合膜の製造方法として、予めポリエステルエラストマーはフィルム化したものを用いて、繊維布帛、フィルム化した組成物、およびHeガス低透過性フィルムを重ね合わせ、温度160〜240℃の範囲で熱プレスロール等を使用して熱融着により複合化する熱ラミネーション方式が挙げられる。しかし、かかる製造方法では、ラミネーション後、複合膜が冷却されることにより、ポリエステルエラストマーが収縮して、繊維布帛やHeガス低透過性フィルムにしわがよる等の不具合が生じる場合があることがわかった。また、ポリエステルエラストマーに炭素が含有されている場合、当該エラストマーが繊維布帛に浸透しすぎて炭素が繊維布帛表面に沈着し、繊維布帛の外観が損なわれる等の不具合も生じる場合があることもわかった。
【0007】
そこで、本発明者らは、上記複合膜の製造工程における上記問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、ポリエステルエラストマーを融点以上分解点以下の温度で薄膜状に溶融押出し、そのようにして製造された溶融薄膜を繊維布帛とHeガス低透過性フィルムとで挟み込むという方法を用いれば、上記問題点を解決できることを知見した。さらに、予め繊維布帛を加熱しておけば、さらに得られる複合膜にしわが寄りにくいことも知見した。また、かかる製造方法を用いれば、加工速度が上記熱ラミネーション方式を採用した場合に比べて向上し、効率的な製造が可能となるため、工業的な製造にとっては好適であることも知見した。
さらに、本発明者らは、鋭意検討し、ポリエステルエラストマーのかわりに、他の熱可塑性樹脂を用いても、上記複合膜を効率的に、かつしわが寄ることなく製造することができることも知見した。
本発明者らは、さらに検討を重ね、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) 熱可塑性樹脂を融点以上分解点を10℃超える温度以下の温度で薄膜状に溶融押出して溶融薄膜を製造し、その溶融薄膜を繊維布帛とヘリウムガス透過性が600cc/m2/24hr/0.1mm/atm以下であるフィルムとで挟み込むことを特徴とする繊維布帛と熱可塑性樹脂と前記フィルムとからなる複合膜の製造方法、
(2) 繊維布帛を予め加熱しておくことを特徴とする前記(1)に記載の複合膜の製造方法、
(3) 加熱温度が、30〜500℃であることを特徴とする前記(2)に記載の複合膜の製造方法、
(4) 加熱手段が、コロナ放電処理であることを特徴とする前記(2)または(3)に記載の複合膜の製造方法、
に関する。
【0009】
また、本発明は
(5) 加工速度が、10〜400m/分であることを特徴とする前記(1)〜(4)に記載の複合膜の製造方法、
(6) 繊維布帛が、繊維束、織物、編物、不織布、網状物およびハニカム状物から選ばれることを特徴とする前記(1)〜(5)に記載の複合膜の製造方法、
(7) 繊維布帛の素材が、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、ポリエチレン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維およびポリビニルアルコール系繊維からなる群から選ばれる1種以上の繊維であることを特徴とする前記(1)〜(6)に記載の複合膜の製造方法、
に関する。
【0010】
また、本発明は
(8) 熱可塑性樹脂が、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミドまたはポリウレタンであることを特徴とする前記(1)〜(7)に記載の複合膜の製造方法、
(9) 熱可塑性樹脂が、ポリエステルエラストマーまたはポリエステルエラストマーを含む組成物であることを特徴とする前記(1)〜(7)に記載の複合膜の製造方法、
(10) フィルムが、アラミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムまたはフッ素フィルムであることを特徴とする前記(1)〜(9)に記載の複合膜の製造方法、
(11) 前記(1)〜(10)のいずれかに記載の方法により製造された複合膜、
に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の複合膜の製造方法は、熱可塑性樹脂を融点以上分解点以下の温度で薄膜状に溶融押出し、その溶融薄膜を繊維布帛とHeガス低透過性フィルムとで挟み込むことを特徴とする。かかる製造方法は、押出しサンドラミネートまたはサンドイッチ押出しラミネートと称されている公知技術に従って、容易に行うことができる。上述のように熱可塑性樹脂は、通常は、融点以上分解点以下に加熱されるが、本発明の「分解点以下」は、厳密であることを要しない。熱可塑性樹脂の種類によっては分解点以上の温度で加熱してよい場合もあり、例えば、熱可塑性樹脂として後述するポリエステルエラストマーを用いる場合は、分解点(280℃)以上である約290℃付近まで加熱することができる。そのような場合もまた、本発明の実施である。以下、本明細書では、融点から分解点を約10℃程度こえる温度に至る範囲の温度を、単に「融点以上分解点以下」と略称する。
【0012】
具体的には、融点以上分解点以下の温度に加熱溶融され、連続的に薄膜状に押出された熱可塑性樹脂の溶融薄膜を繊維布帛に積層させると同時に、反対面側、すなわち熱可塑性樹脂の溶融薄膜の繊維布帛との積層面の反対面側から、Heガス低透過性フィルムを熱可塑性樹脂の溶融薄膜に積層させ、得られた積層体を圧着および冷却するという方法が、好ましい態様として挙げられる。
【0013】
本発明に係る複合膜の製造方法において、上記ラミネート処理の前に、すなわち,繊維布帛とHeガス低透過性フィルムとを熱可塑性樹脂で接着する前に、繊維布帛または/およびHeガス低透過性フィルムに対して前処理を予め施してもよい。前処理は、繊維布帛または/およびHeガス低透過性フィルムの全体に対して行ってもよいし、一部、好ましくは熱可塑性樹脂との積層面に対して行ってもよい。本発明においては、特に繊維布帛に対して前処理を行うことが好ましい。以下、繊維布帛に対する前処理について述べるが、Heガス低透過性フィルムに対して前処理を行う場合も、全く同様である。
【0014】
かかる前処理としては、繊維布帛を予め加熱することが好適な処理として挙げられる。このように繊維布帛の予備加熱を行うことで、繊維布帛と熱可塑性樹脂の溶融薄膜との積層時に両者間の温度差が小さくなり、得られる複合膜にしわが生じにくくなり、不良製品の発生を抑えることができる。ここで、予備加熱温度は、繊維布帛の種類などに応じて適宜選択することができるが、約30〜500℃程度、好ましくは約30〜300℃程度であることが好ましい。
【0015】
予備加熱は、公知の手段を使用してよく、例えばコロナ放電処理、温風加熱、またはヒーター、赤外線もしくはホットロールによる加熱等が挙げられる。これらの手段は、単独で用いてもよいし、2以上の手段を組み合わせてもよい。中でも、コロナ放電処理を用いるのが好ましい。コロナ放電処理は、例えば公知のコロナ放電処理機を用い、発生させたコロナ雰囲気の下に繊維布帛を通過させることにより行われる。ここで、コロナ放電処理の雰囲気は大気下であってもよく、また、不活性ガス(例えば窒素)等で調整された雰囲気下であってもよい。コロナ放電処理は、約3〜13kW程度、より好ましくは約4.5〜8.5kW程度の条件で行うことが好ましい。
【0016】
また、上述の前処理としては、電子線照射処理、紫外線照射処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理または低圧プラズマ処理などが挙げられる。このような処理により、繊維布帛の熱可塑性樹脂との積層面に一定以上の活性化点を生成し、熱可塑性樹脂との強固な接着が可能になる。なお、コロナ処理には、加熱作用とともに、前記のような作用も有する。
【0017】
本発明にかかる複合膜の製造方法における加工速度は、約10〜400m/分であることが好ましく、より好ましくは、約30〜200m/分である。本発明においては、上述のような方法を採用することにより、加工速度を上記のような高い値に設定することができ、作業効率が向上するという利点を有する。
【0018】
本発明にかかる複合膜の特に好ましい製造方法について、図を参照して説明する。図1は、本発明にかかる複合膜の好ましい製造装置の模式図である。まず、押出装置2に熱可塑性樹脂(B)を投入し、熱可塑性樹脂(B)を融点以上分解点以下に加熱して溶融状態にする。投入時の熱可塑性樹脂(B)は、ペレットでも粉体でもよく、その形状は限定されない。
【0019】
押出装置2から連続的に薄膜状に押出された熱可塑性樹脂の溶融薄膜(B’)は、プレスロール5および冷却ロール6に送られる。また、送り出しロール1から送り出された繊維布帛(A)は、コロナ放電処理装置4で予め加熱されて、プレスロール5および冷却ロール6に搬送される。さらに、繊維布帛(A)の反対側、すなわち、熱可塑性樹脂の溶融薄膜(B’)の繊維布帛(A)との積層面の反対面側から、プレスロール5および冷却ロール6にHeガス低透過性フィルム(C)を送り込む。このようにして、熱可塑性樹脂の溶融薄膜(B’)を繊維布帛(A)とHeガス低透過性フィルム(C)とで挟み込み、プレスロール5および冷却ロール6で圧着すると同時に冷却する。
【0020】
上記プレスロール5は、硬度の高い材料、好ましくは、硬度が約40〜160度、好ましくは約55〜105度程度の材料から形成されていることが好ましく、具体的には、例えばシリコンロール等が挙げられる。上記冷却ロール6は、複合膜を冷却できる機能、例えば水冷管等を備えていることが好ましい。冷却温度は、約5〜30℃程度、より好ましくは約10〜20℃程度であることが好ましい。また、冷却ロール6の材質としては、金属等で製造されていることが好ましい。
プレスロール5および冷却ロール6で複合化された複合膜(D)は、最後に巻き取りロール7に巻き取られる。
【0021】
本発明の製造方法においては、上記工程を有していれば、さらに他の工程が加わってもよい。例えば、本発明にかかる複合膜が紫外線照射により耐えることができるように、Heガス低透過性フィルムの外側にさらにもう1層、紫外線防護層を設ける工程を追加してもよい。紫外線防護層は、例えばフッ素フィルムまたはアルミ、銅、銀もしくは金等の金属箔を貼り合せることや、アルミ、銅、銀もしくは金等を蒸着すること等により設けることができる。かかる貼り合わせ工程および蒸着工程は、公知の方法に従ってよい。
【0022】
また、上記「他の工程」としては、Heガス低透過性フィルムを保護し、複合膜の耐久性を向上させるために、Heガス低透過性フィルムの外側、つまり熱可塑性樹脂と接していない側に、樹脂層を設ける工程が挙げられる。このような目的に使用される樹脂としては、公知の樹脂でよく、例えばポリエステル、ポリウレタン、ナイロンなどのポリアミド等が挙げられる。前記樹脂層を設ける工程は、公知の方法に従ってよい。
【0023】
本発明にかかる繊維布帛を構成する繊維素材としては、高強度繊維が好ましい。高強度繊維としては、引張強度が約13cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは約15cN/dtex以上である。また、破断伸度が約15%以下の繊維も、高強度繊維として好ましい。具体的に、高強度繊維としては、例えばアラミド繊維(全芳香ポリアミド繊維ともいう)、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、ポリエチレン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(以下、PBO繊維という)、全芳香族ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール系繊維(以下、PVA系繊維という。)等が挙げられる。本発明にかかる繊維布帛を構成する繊維は、上記繊維を単独で使用してもよく、2種類以上を併用して使用してもよい。
【0024】
上記高強度繊維は、公知またはそれに準ずる方法で製造できる。また、市販の繊維を使用することもできる。例えば、パラ系アラミド繊維としては、東レ・デュポン(株)製「ケブラー」もしくは帝人(株)製「テクノーラ」、ポリエチレン繊維としては、東洋紡績(株)製「ダイニーマ」、全芳香族ポリエステル繊維としては(株)クラレ製「ベクトラン」、PBO繊維としては東洋紡績(株)製「ザイロン」、またはPVA系繊維としては(株)クラレ製「クラロンK−II」等が挙げられる。
【0025】
本発明で使用される繊維布帛は、上記した繊維素材を用いてシート状の布帛としたものであればいずれでもよく、例えば、繊維束;3軸布もしくは4軸布等の多軸織布;平織布、もじり織布、からみ織布など織物;編物;不織布;網状物またはハニカム状物が挙げられる。該繊維布帛の重量は、用途、例えば飛行船の大きさ(ガス体積)から適宜決定されるが、約30〜200g/m2の範囲であることが好ましい。
【0026】
本発明の複合膜に用いる接着剤としての熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン系共重合体樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ−4−メチル−1ペンテン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、アイオノマー系樹脂等を挙げることができる。ここで、エチレン系共重合体樹脂としてはエチレンと共重合し得るコモノマー成分を1〜4種類用い共重合された樹脂のことをいい、例えばエチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体樹脂、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体樹脂、エチレンと無水マレイン酸との共重合体樹脂、エチレンとエポキシ系化合物との共重合体樹脂等の接着性の機能を付与した接着性樹脂を挙げることができる。またアイオノマー樹脂としては、接着性樹脂を亜鉛やナトリウム等の金属イオンで部分的或いは完全に中和した樹脂を挙げることができる。前記接着性樹脂としてはグラフト重合法で製造される樹脂であってもよく、例えばポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂に無水マレイン酸などの酸無水物をグラフト重合させたものを挙げることができる。
【0027】
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂のエラストマーでもよく、エラストマーを含む組成物であってもよい。
本発明の複合膜に用いる接着剤としてのエラストマーとしては、ポリエステルエラストマーまたはポリエステルエラストマーを含む組成物が、耐熱性能の点で好ましい。前記組成物においてポリエステルエラストマーに配合されるものとしては、ポリウレタン樹脂が好ましく、その配合重量は約10〜60重量%程度であることが好ましい。
上述のような本発明で用いる熱可塑性樹脂は、公知の方法で容易に製造することができるし、市販品を用いてもよい。例えば、ポリエステルエラストマーとしては、東レ・デュポン(株)社製「ハイトレル」等が挙げられる。
【0028】
本発明で使用される熱可塑性樹脂は、本発明の目的を損なわない程度で、難燃剤、無機もしくは有機フィラー、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、ワックス類、着色剤または結晶化促進剤等の添加剤を含有していてもよい。前記添加剤は、単独で用いても、複数の組み合わせで用いてもよい。上記添加剤としては、公知の添加剤を使用してよく、具体的には、例えば、カーボンブラック、チョーク、石英、アスベスト、長石、雲母、タルク、ケイ酸塩、カオリン、二酸化珪素、アルミナ、シリカ、マグネシア、タルク、マイカ、フラーレン等が挙げられる。中でも、カーボンブラックが好ましく使用される。
【0029】
本発明におけるHeガス低透過性フィルムは、ヘリウムガス透過性が、約600cc/m2/24hr/0.1mm/atm以下であることが好ましい。ここでいうヘリウムガス透過性は、JIS K 6404−10に従って、またはこれに準拠して測定できる。このヘリウムガス透過性が、約600cc/m2/24hr/0.1mm/atmを越えると、ヘリウムガスが複合膜から漏れる可能性が高いため、上記範囲であることが好ましい。さらに好ましい範囲としては、約100〜200cc/m2/24hr/0.1mm/atmであり、かかる範囲の物性を有すれば、飛行船を成層圏まで上げることができ、より実用的である。
【0030】
本発明に係るHeガス低透過性フィルムとしては、例えばアラミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムまたはフッ素フィルムなどが挙げられる。さらに好ましくは、アラミドフィルム、ポリイミドフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムまたはフッ素フィルムが挙げられ、これらはいずれも良好なガスバリア性を有している。これらのフィルムとしては、アラミドフィルムとしては東レ(株)製「ミクトロン」、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムとしてはクラレ製「エバール」、フッ素フィルムとしてはデュポン製「テドラー」等が挙げられる。Heガス低透過性フィルムの厚みは、約3.3μm以上のものが複合膜を作製するために好ましい。
【0031】
以上のようにして得られる複合膜は、下記の物性を有することが好ましい。
例えば、本発明にかかる複合膜の目付は、約300g/m2以下であることが好ましく、飛行船として実用化する点では、約280g/m2以下であることがより好ましい。複合膜の重量を軽くし、成層圏等の上空で飛行船が十分な浮力が得るため、複合膜の目付は上記範囲であることが好ましい。
また、複合膜の引張強度は、約150cN/cm以上であることが好ましい。ここでいう複合膜の引張強度は、JIS K 6404−3 ストリップ法に従って、またはこれに準拠して測定できる。成層圏の過酷な条件に耐え、また飛行船に搭載する機材等の重さで複合膜が破断することがないように、複合膜の引張強度は上記範囲であることが好ましい。
【0032】
また、本発明にかかる複合膜の厚みは、約20mm以下であることが好ましく、約10mm以下であることがより好ましい。飛行船に使用する場合は、約100μm程度であることがさらに好ましい。
【0033】
接着剤として使用される熱可塑性樹脂とHeガス低浸透性フィルムまたは繊維布帛との剥離強度は、約2.0N/cm以上であることが望ましい。ここでいう剥離強度は、JIS K 6404−5に従って、またはこれに準拠して測定でき、測定した剥離強度の最小値のことを指す。
【0034】
本発明に係る製造方法により得られる複合膜は、宇宙・航空機器として使用されることが好ましい。例えば、飛行船あるいは気球の外皮膜、ヘリウム等の気体を貯蔵する容器として使用されることが好ましい。
【0035】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されないことはいうまでもない。
【0036】
〔実施例1〕
繊維布帛として、繊度220dtex、目付61.8g/m2のパラ系アラミド繊維であるケブラー(東レ・デュポン(株)製)の織組織が平織の織物を用いた。熱可塑性樹脂として、目付35.8g/m2のハイトレル(東レ・デュポン(株)製)を、Heガス低透過性フィルムとして、厚み12.5μmのアラミドフィルムであるミクトロン(東レ(株)製)を用いた。なお、ミクトロンは、熱可塑性樹脂との接着性を高めるため接着面にコロナ放電処理を行った。上記ミクトロンのヘリウムガス透過性は、78cc/m2/24hr/0.1mm/atmであった。
【0037】
図1の模式図で示される製造装置を用いて、複合膜を製造した。具体的には、まず、押出装置2にハイトレルを投入し、250℃に加熱して溶融状態にした。溶融状態のハイトレルを押出装置2から連続的に薄膜状に押出し、押出された溶融薄膜(B’)をプレスロール5および冷却ロール6に送った。また、ケブラーの織物を送り出しロール1から送り出し、コロナ放電処理装置4に通した。コロナ放電処理装置4内で、6.5kWの条件でコロナ放電を行い予備加熱した。このときの布帛の表面温度は50℃であった。次いで、予備加熱されたケブラーの織物をプレスロール5および冷却ロール6に搬送した。さらに、ケブラーの織物の反対側、すなわち、ハイトレルの溶融薄膜(B’)のケブラーの織物(A)との積層面の反対面側からプレスロール5および冷却ロール6にミクトロン(C)を送り込んだ。このようにして、ハイトレルの溶融薄膜(B’)をケブラーの織物(A)とミクトロン(C)とで挟み込み、プレスロール5および冷却ロール6で圧着すると同時に冷却した。このとき、ロール圧力は、4kgf/cm2であり、ロールの線圧は約22kgf/cmであった。なお、プレスロール5としては、硬度が80度のシリコンロールを用い、冷却ロール6としては15℃まで冷却した金属ロールを用いた。
プレスロール5および冷却ロール6で複合化された複合膜(D)を、最後に巻き取りロール7に巻き取り、本発明に係る複合膜を製造した。
【0038】
〔実施例2〕
押出装置2内で、ハイトレルを270℃に加熱して溶融した以外は、実施例1と全く同様の方法で本発明に係る複合膜を製造した。
【0039】
実施例1および実施例2で作製した複合膜は、しわもなく品質も良好であった。また、加工速度が40m/分と早い速度で加工することができ、作業効率は熱ホットメルトラミネーション方式による製造方法に比して格段によかった。
【0040】
【発明の効果】
本発明にかかる複合膜の製造方法は、しわが生じる等の不具合が生じることなく、その結果、不良品が生じにくいため、工業的に優れた製造方法である。また、本発明にかかる複合膜の製造方法によれば、熱ホットメルトラミネーション方式による製造方法に比して、加工速度を上げることができ、より効率的な複合膜の製造が可能になる。さらに、本発明の製造方法によって製造された複合膜は、剥離強度が高いという利点を有する。
【0041】
上述のように複合膜を製造すると、繊維布帛の奥深くまで熱可塑性樹脂が染み込んでいかない。そのため、例えば熱可塑性樹脂に添加剤として炭素等が配合されている場合、炭素が繊維布帛の内部に入り込むことによる黒ずみなどが生じず、繊維布帛の外観が美しく保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる複合膜の好ましい製造装置の模式図である。
【符号の説明】
1 繊維布帛の送り出しロール
2 押出装置
3 Heガス低透過性フィルの送り出しロール
4 コロナ放電処理装置
5 プレスロール
6 冷却ロール
7 巻き取りロール
A 繊維布帛
B 熱可塑性樹脂
B’ 熱可塑性樹脂の溶融薄膜
C Heガス低透過性フィルム
D 複合膜
Claims (9)
- 熱可塑性樹脂を融点以上分解点を10℃超える温度以下の温度で薄膜状に溶融押出して溶融薄膜を製造し、その溶融薄膜を繊維布帛とヘリウムガス透過性が600cc/m2/24hr/0.1mm/atm以下であるフィルムとで挟み込むことにより複合膜を製造するに際し、繊維布帛を予め加熱しておくことにより複合膜にしわが生じにくくすることを特徴とする繊維布帛と熱可塑性樹脂と前記フィルムとからなる複合膜の製造方法。
- 加熱温度が、30〜500℃であることを特徴とする請求項1に記載の複合膜の製造方法。
- 加熱手段が、コロナ放電処理であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合膜の製造方法。
- 加工速度が、10〜400m/分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合膜の製造方法。
- 繊維布帛が、繊維束、織物、編物、不織布、網状物およびハニカム状物から選ばれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合膜の製造方法。
- 繊維布帛の素材が、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、ポリエチレン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維およびポリビニルアルコール系繊維からなる群から選ばれる1種以上の繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合膜の製造方法。
- 熱可塑性樹脂が、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミドまたはポリウレタンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合膜の製造方法。
- 熱可塑性樹脂が、ポリエステルエラストマーまたはポリエステルエラストマーを含む組成物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合膜の製造方法。
- フィルムが、アラミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムまたはフッ素フィルムであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の複合膜の製造方法。
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