JP3910884B2 - Rheedのエネルギー損失スペクトル計測装置及び方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子線を利用した表面分析のためのRHEED(reflection high-energy electron diffration,反射高速電子回折)のエネルギー損失スペクトル計測装置及び方法に係る。
【0002】
【従来の技術】
電子線をプローブとする分析評価法の中で、電子線の波動性を利用した電子回折法は構造解析手段として広く用いられている。従来の電子回折法では、回折図形の幾何学や回折斑点強度といった明暗の情報から結晶構造の精密な分析・評価に努力が払われてきた。しかしながら最近、回折図形を形成する電子強度のみならず、エネルギー識別といった新たな座標軸を導入して、これまでの明暗情報(白黒画像)に加えて色情報(カラー画像)を付与することに相当する研究が始まっている。このような研究の流れは、透過電子回折において古くは1949年のBoerschの研究に溯り、その後各種のエネルギーフィルタが考案されている。RHEEDのエネルギーフィルタに限ってみれば、まだ研究の実績は少ないが、最近の画像取得・処理技術の急速な発展に伴い、これからの新展開が期待される分野と言えよう。
【0003】
本発明者はRHEED図形全体をエネルギー識別できると同時に、回折斑点のエネルギー損失スペクトルも数値的エネルギー微分により得ることができる3枚メッシュの阻止電場型エネルギーフィルタを装着したRHEED装置を1995年に開発した。(特開平9−89815号公報、Horio,“Zero-Loss Reflection High-Energy Electron Diffraction Patterns and Rocking Curves of the Si(111)7×7 Surface Obtained by Energy Filtering”,Jpn.J.Appl.Phys.Vol.35(1996)pp3559-3564 Part1,No.6A,June 1996、参照)
【0004】
この非弾性散乱成分を除去した反射高速電子回折パターンの計測法は、RHEED法において、反射高速電子回折パターンより非弾性散乱電子を排除し、弾性散乱電子のみを蛍光スクリーンに到達させて、観察、計測又は表示するものである。すなわち、電子銃より放射された電子が試料表面において反射し、エネルギーフィルタにより、非弾性散乱電子を排除し、弾性散乱電子を蛍光スクリーンに投射し、これに映出される回折パターンをモニターカメラで観測し、コンピュータでそのRHEEDパターンを計測するようにした。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来、磁場偏向型或いは電場偏向型エネルギー分析器を用いた回折電子のエネルギー損失スペクトルの計測法は存在するが、この場合、回折図形の観察が困難、或いは不可能であり、また装置も特殊で高価なものであった。
【0006】
また、従来のRHEED装置は、試料表面で前方散乱する反射電子線群を前方に置かれた平面ガラスの蛍光スクリーンに映して観察するものであった。これは、高速電子において前方散乱が支配的であることを考えた場合で実効的な観察法と言えるものの、前方以外の散乱については、観察することができなかった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、比較的簡単な阻止電場型エネルギー分析器により、RHEEDで発生する回折電子のエネルギー損失スペクトル、特に表面プラズモン損失エネルギースペクトルを高いS/Nで計測可能とすることを目的とする。
【0008】
また、本発明は、従来から表面構造分析・評価法として用いられている反射高速電子回折(RHEED)法の未開拓領域、すなわち、これまで注目されなかった全出射方位にわたる回折図形の観測を行なうため、ドーム型(半球型)蛍光スクリーンを装備した新しい装置を開発し、表面・薄膜内部構造及び非弾性散乱電子に関するより多くの情報を取得することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、単に全方位観察に留まらず、2枚又は3枚メッシュの阻止電場型エネルギーフィルタを提供し、さらにそれを可動式とすることにより任意の方位のエネルギー識別された回折図形や回折電子のエネルギー損失スペクトルが得られるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、例えば、RHEEDにおいて、蛍光スクリーンの直前に設置された球面グリッドに走引式阻止電圧及び周波数ωの高周波電圧を重畳し、グリッドを通過する回折電子線をチャンネルトロンにより検出し、ロックインアンプを介してω成分或いは2ω成分を抽出することにより、回折電子のエネルギー損失スペクトル或いはそのエネルギー微分型スペクトルを取得可能とした。また、チャンネルトロン及び蛍光スクリーンは可動式としたため、RHEEDパターン観察時はチャンネルトロンを引き出し、蛍光スクリーンをグリッドに接近させることにより、エネルギーフィルタされたパターンを観察可能とした。
【0011】
また、RHEEDの蛍光スクリーンは従来前方に置かれた平面状のものであったが、本発明は試料表面を中心とした半球面型蛍光スクリーンを装備することにより、試料表面で反射する全ての電子線を観察可能とするものである。これにより、次のような特徴がある。
▲1▼広角散乱あるいは後方散乱領域の回折図形の観察が可能となる。
▲2▼試料上面方向には回折斑点の代わりに菊地図形が観察できるため、応用面で重要な界面構造情報が取得できる。菊池図形(菊池像、菊池パターン)は、電子回折に特有の像であって、非弾性散乱を受けた電子線が結晶によって回折されて形成される。1928年に菊池正士が雲母薄膜の試料を使って始めて観察した。▲3▼広範囲の逆空間が観察できるため、エネルギーフィルタを併用すれば、振動相関熱散漫散乱情報が広範囲に取得でき、表面原子構造の解析に有効である。
▲4▼RHEED図形は逆空間の立面投影図であるが故に、結晶周期の対称性が歪んで観察されるが、本蛍光スクリーンでは、上方から眺めることにより平面投影された回折図形が観察できるため、複雑な表面超構造を理解する上で極めて効果的である。
▲5▼全方位の散乱電子のエネルギー損失スペクトルが取得でき、非弾性散乱機構の解明や、未発見現象の開拓が促進される。
【0012】
本発明の第1の解決手段によると、
試料に電子線を照射する電子銃と、
走引された阻止電圧及び高周波電圧を重畳して供給するための電圧供給部と、試料から反射又は透過された電子線を入射し、前記電圧供給部からの電圧が印加され、阻止電圧で定められたエネルギーより高いエネルギーの電子線を通過させるためのエネルギーフィルタと、
前記エネルギーフィルタを通過した電子線を入射して、増幅するための電子増幅部と、
前記電子増幅部の出力から前記電圧供給部による高周波電圧の周波数成分及び/又はその2倍の周波数成分を検出する検出部と、
前記電圧供給部からの阻止電圧の走引に従い、前記検出部で検出された出力によりエネルギー損失スペクトルを測定する測定部と、
前記エネルギーフィルタを通過した電子線が照射されRHEEDパターンを形成するための蛍光スクリーンと、
を備えたRHEEDのエネルギー損失スペクトル計測装置が提供される。
【0013】
本発明の第2の解決手段によると、
試料に電子線を照射する電子銃と、
走引された阻止電圧及び高周波電圧を重畳して供給するための電圧供給部と、試料から反射又は透過された電子線を入射し、前記電圧供給部からの電圧が印加され、阻止電圧で定められたエネルギーより高いエネルギーの電子線を通過させるためのエネルギーフィルタと、
前記エネルギーフィルタを通過した電子線を入射して、増倍するための電子増幅部と、
前記電子増幅部の出力から前記電圧供給部による高周波電圧の周波数成分及び/又はその2倍の周波数成分を検出する検出部と、
前記電圧供給部からの阻止電圧の走引に従い、前記検出部で検出された出力によりエネルギー損失スペクトルを測定する測定部と、
試料位置を中心として該試料を半球又は半球の一部で覆い、前記エネルギーフィルタを通過した電子線を検出するためのドーム型蛍光スクリーンと、
を備えたRHEEDのエネルギー損失スペクトル計測装置が提供される。
【0014】
本発明の第3の解決手段によると、
試料に電子線を照射する電子銃と、
走引された阻止電圧及び高周波電圧を重畳して供給するための電圧供給部と、試料から反射又は透過された電子線を入射し、前記電圧供給部からの電圧が印加され、阻止電圧で定められたエネルギーより高いエネルギーの電子線を通過させるためのエネルギーフィルタと、
試料位置を中心として該試料を半球又は半球の一部で覆い、前記エネルギーフィルタを通過した電子線を検出するためのドーム型蛍光スクリーンと、
前記エネルギーフィルタを通過した電子線が前記ドーム型蛍光スクリーンに照射されたことで形成される光を増倍して電気信号に変換する光デバイスと、
前記光デバイスの出力から前記電圧供給部による高周波電圧の周波数成分及び/又はその2倍の周波数成分を検出する検出部と、
前記電圧供給部からの阻止電圧に応じた出力に従い、前記検出部で検出された出力によりエネルギー損失スペクトルを測定する測定部と、
を備えたRHEEDのエネルギー損失スペクトル計測装置が提供される。
【0015】
本発明の第4の解決手段によると、
試料に電子線を照射し、
走引された阻止電圧及び高周波電圧が重畳されて与えられたエネルギーフィルタに、試料から反射又は透過された電子線を入射し、
前記エネルギーフィルタを通過し、阻止電圧で定められたエネルギーより高いエネルギーの電子線を増倍して出力し、
阻止電圧を走引させ、電子増倍された出力から、エネルギーフィルタに供給された高周波電圧の周波数成分及び/又はその2倍の周波数成分を検出することにより、エネルギー損失スペクトルを測定する
RHEEDのエネルギー損失スペクトル計測方法が提供される。
【0016】
本発明の第5の解決手段によると、
試料に電子線を照射し、
走引された阻止電圧及び高周波電圧が重畳されて与えられたエネルギーフィルタに、試料から反射又は透過された電子線を入射し、
前記エネルギーフィルタを通過し、阻止電圧で定められたエネルギーより高いエネルギーの電子線を増倍して出力し、
阻止電圧を走引させ、電子増倍された出力からエネルギーフィルタに供給された高周波電圧の周波数成分及び/又はその2倍の周波数成分を検出することにより、エネルギー損失スペクトルを測定し、
試料位置を中心として該試料を半球又は半球の一部で覆ったドーム型蛍光スクリーンにより、試料から反射された電子線が前記エネルギーフィルタを通過して又は通過しないで前記ドーム型蛍光スクリーンに照射されたことで形成されるRHEEDパターンを観察する
RHEEDのエネルギー損失スペクトル計測方法が提供される。
【0017】
本発明の第6の解決手段によると、
試料に電子線を照射し、
走引された阻止電圧及び高周波電圧が重畳されて与えられたエネルギーフィルタに、試料から反射又は透過された電子線を入射し、
試料位置を中心として該試料を半球又は半球の一部で覆ったドーム型蛍光スクリーンにより、前記エネルギーフィルタを通過した電子線が前記ドーム型蛍光スクリーンに照射されたことで像を形成し、
前記ドーム型蛍光スクリーンにより形成された像を増倍して電気信号に変換し、
変換された電気信号から高周波電圧の周波数成分及び/又はその2倍の周波数成分を検出した出力によりエネルギー損失スペクトルを測定する
RHEEDのエネルギー損失スペクトル計測方法が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
1.第1の実施の形態
1−1 構成及び動作
まず、表面プラズモン損失と表面構造・形態・組成との関連性或いは回折条件依存性に関し、直接的にエネルギー損失スペクトルの計測が可能となるように改良されたエネルギーフィルタ型RHEED装置について説明する。なお、各実施の形態において、電圧値、周波数等の各値は、一例にすぎず、適宜の値、適宜のオーダーを用いることができる。
【0019】
図1に、RHEEDの損失エネルギー計測装置の第1の実施の形態の構成図を示す。
この計測装置は、試料100についてのRHEEDで発する回折電子のエネルギー損失スペクトルを計測する。この計測装置は、電子銃1、電圧供給部2、エネルギーフィルタ3−1、電子増幅部4−1、検出部5−1、測定部6、蛍光スクリーン7−1、カメラ8、コンピュータ9、電子増幅部移動部10、蛍光スクリーン移動部11を備える。
【0020】
電子銃1は、試料100に電子線(例えば、加速電圧10kV等)を照射する。電圧供給部2は、走引された阻止電圧及び高周波電圧を重畳して供給する。電圧供給部2は、高電圧(例えば、−10kV等)を供給する走引式の高圧電源21、高周波電圧(例えば、4〜10V、2kHzの正弦波、等)を供給する高周波電源22と、これら電圧を重畳するトランス23を備える。高周波電源22の出力は、検出部53にも供給される。
【0021】
エネルギーフィルタ3−1は、試料100から反射又は透過された電子線を入射し、電圧供給部からの電圧が印加され、阻止電圧で定められたエネルギーより高いエネルギーの電子線を通過させる、いわばハイパスフィルタの役割を果たす。エネルギーフィルタ3−1は複数のグリッドを有し、そのグリッド間は、電場が平行又はほぼ平行に保たれるとよい。エネルギーフィルタ3−1に印加される電圧は、電子銃1のエネルギーに従い阻止電圧が決定される(例えば、−10kV等)。エネルギーフィルタ3−1は、試料位置を中心とする球面の曲率の形状であって、接地された両端の接地用グリッドGrid#1及びGrid#3と、試料位置を中心とする球面の曲率の形状であって、電圧供給部2から供給された走引された阻止電圧と高周波電圧とを重畳した電圧が印加される中央の阻止電圧印加用グリッドGrid#2と、を有する。エネルギーフィルタ3−1は、3枚のグリッドをぞれぞれ試料位置からの距離に従い曲率を変化させることが厳密な構成であるが、適当な曲率としてもよいし、3枚同じ曲率としてもよい。エネルギーフィルタは、それほど広範囲を検出するものでなければ、3枚のグリッドを平面又は略平面に成型してもよい。また、エネルギーフィルタは半球でもよい。
【0022】
電子増幅部4−1は、エネルギーフィルタ3−1を通過した電子線を入射して、増幅する。電子増幅部4−1は、例えば、チャンネルトロンで構成されることができるが、これに限らず電子を増幅して信号を取り出す適宜のデバイスを用いることができる。
【0023】
検出部5−1は、電子増幅部4−1の出力から電圧供給部2による高周波電圧の周波数成分及び/又はその2倍の周波数成分を検出する。検出部5−1は、プリアンプ51、バンドパスフィルタ52、ロックイン増幅器53を備える。プリアンプ51は、電子増幅部4−1からの出力により、エネルギー積分された信号強度を測定することになる(詳細は後述)。バンドパスフィルタ52は、電子増幅部4−1の出力からノイズを除去して(例えば、検出すべき高周波成分又はその2倍の高周波成分の前後の周波数の信号を除去して)、ロックイン増幅器53に供給するためのものである。ロックイン増幅器53は、電圧供給部2から高周波成分が供給され、その周波数に従い信号を検出する。すなわち、ロックイン増幅器53は、電圧供給部2から供給された高周波電圧の周波数成分の信号を抽出することで、直接的にエネルギー損失スペクトルを取得する。また、検出部5−1は、該高周波電圧の2倍の周波数成分の信号を抽出することで、直接的にエネルギー損失スペクトルのエネルギー微分されたスペクトルを取得する。さらに高周波電圧の周波数の整数倍の周波数成分の信号を取り出すようにしてもよい。
【0024】
測定部6は、電圧供給部2からの阻止電圧の走引に従い、検出部5−1で検出された出力によりエネルギー損失スペクトルを測定する。測定部6は、例えば、X−Yレコーダ等を用いることができ、その場合、X軸に走引式高圧電源2−1からの信号を入力し、Y軸にロックイン増幅器53からの検出出力を入力することで、データを測定することができる。蛍光スクリーン7−1は、エネルギーフィルタ3−1を通過した電子線が照射されRHEEDパターンを形成するためのものである。カメラ8は、例えばCCDカメラを用いることができ、蛍光スクリーン7−1を観察する。なお、蛍光スクリーン7−1は照射された電子をグランドに逃がすため、あるいは、グランド電位に保つため、導電性薄膜がコーティングされていると好ましい。
【0025】
第1の移動部10は、電子増幅部4−1を、エネルギーフィルタ3−1と蛍光スクリーン7−1との間に挿入する又はその間から抜き出すための装置である。第2の移動部11は、蛍光スクリーン7−1とエネルギーフィルタ3−1との距離を近づける又は離すための装置である。第1の移動部10により電子増幅部4−1を引き抜き、第2の移動部11により蛍光スクリーン7−1をエネルギーフィルタ3−1に接近させることで、蛍光スクリーン7−1に投影されたRHEEDパターンを観察可能とする。また、蛍光スクリーン7−1とエネルギーフィルタ3−1との距離を近づけることにより、エネルギーフィルタ3−1による電子線のレンズ効果の影響、電子線のビームの広がりを抑えることができる。第1及び第2の移動部10及び11の駆動は、手動でもコンピュータによる制御によってもよい。
【0026】
コンピュータ9は、カメラからの出力を解析すること、第1及び第2の移動部10及び11を駆動制御すること、電圧供給部2について高圧電源の走引及び周波数及び各電圧の制御をすること、検出部5−1による測定処理動作を制御すること、ロックイン増幅器53を設定すること、電子銃1の角度・出力等を制御すること、試料100の搭載台の位置・方向等を制御すること、など測定に必要な各種の制御を行う。
【0027】
この装置の主な特徴は、周波数ωの高周波電圧が重畳された阻止電場グリッドを通過する電子をチャンネルトロン等の電子増幅部4−1で検出・増幅し、ロックイン増幅器53を介してω或いは2ωの周波数成分を取り出すことにより直接エネルギー損失スペクトルを計測できる点である。すなわち、3枚のグリッドを試料位置を中心とする球面に成型及び配置し、両端のグリッドは接地し、中央グリッドに走引可能な阻止電圧と周波数ωの高周波電圧を重畳する。この3枚グリッドを通過して来る回折電子を可動型チャンネルトロンで検出し、ロックインアンプによりω成分或いは2ω成分の信号を抽出すれば、本来ハイパスフィルターである阻止電場型のエネルギー分析器をバンドパスフィルター型のエネルギー分析器として利用できるため、直接的にエネルギー損失スペクトル、或いはそのエネルギー微分されたスペクトルを取得できる。また、RHEEDパターン観察時にはチャンネルトロンを引き抜き、蛍光スクリーン7−1をグリッドに接近させることにより、ハイパスのエネルギーフィルタされたパターンも観察可能となる。
【0028】
1−2.測定データ
図2に、測定部により測定されるスペクトル図の一例を示す
図2(a)のように、一般に入射電子は試料表面でエネルギー損失して反射するため微小交流摂動電圧を印加しないで阻止電圧を掃引するとハイパスフィルター本来のエネルギー積分されたスペクトルとなる。図2(b)のように、微小交流摂動電圧を印加してω成分のみを抽出すればエネルギー微分された通常のエネルギー損失スペクトルとなる。また、図2(c)のように、2ω成分のみを抽出すればさらに、エネルギー微分されてピークの存在に敏感なスペクトルとなる。
【0029】
ロックイン増幅器によるω、或いは2ω周波数成分の抽出がエネルギーで1階、或いは2階微分したスペクトルになる理由は次の通りである。
【0030】
グリッドGrid♯2に印加する阻止電圧Vに、微小交流摂動電圧 ΔV=ksinωt を重畳して印加すると、出力信号強度 N(E+ΔE) は、この摂動によって変調される。(ただしE=eV,ΔE=eΔV)
N=(E+ΔE)をテーラー展開すると、
N=(E+ΔE)
=N(E)+N’(E)ΔE+(N’’(E)/2!)ΔE2+(N’’’(E)/3!)ΔE3+…
=N+N’ksinωt+(N’’/2!)k2sin2ωt+(N’’’/3!)k3sin3ωt+(N’’’’/4!)k4sin4ωt+…
ここで、
sin2ωt=(1−cos2ωt)/2
sin3ωt=(3/4)sinωt−(1/4)sin3ωt
sin4ωt=3/8−(cos2ωt)/2+(cos4ωt)/8
であり、k3以上の次数の項を省略すると、次のようになる。
N≒N0+N’ksinωt−(N’’/4)k2cos2ωt
(ただし、N0=N+(N’’/4)k2)
【0031】
したがって、ロックイン増幅器を用いてω周波数成分のみを検出すれば、N’=dN(E)/dN の信号成分を取り出すことができる。また、2ω周波数成分のみを検出すれば、N’’=d2N(E)/dE2 の取得が可能となる。
【0032】
ここで注意すべきは今回の阻止電場型エネルギーフィルタはハイパスフィルターであるため、N(E)は既にエネルギー積分された信号強度となっている。ゆえに、N’信号成分で従来のエネルギー損失スペクトルがN’’信号成分で更にエネルギー微分したエネルギー損失スペクトルが得られることになる。
【0033】
1−3 計測例
図3〜図5に、この装置を用いて得られた計測結果の図の一例を示す。図3及び図4に関する実験はSi(111)7x7表面上に室温でInの膜厚を変えて蒸着した時、及び1/3ML吸着時の√3×√3−In構造について、鏡面反射ビームのエネルギー損失スペクトルの変化を系統的に調べたものである。これらの表面プラズモンエネルギー値の推移を図にまとめた。これらの結果から、Si(111)7x7表面にInを1原子層(約2.7Å程度)覆っても直ちにInの表面プラズモンエネルギー値には推移せず、20Å程度の膜厚でほぼ推移が飽和することがわかる。しかしながら、この段階でも純粋なIn表面の表面プラズモンエネルギー値より約1.5(eV)ほど高い。このような興味深い変化の理解は、表面プラズモンエネルギーが価電子密度(自由電子密度)や表面形態に依存するためと理解できるが、一方で表面プラズモン励起を試料表面からどのくらいの深さまで考慮すべきかにも関わり、これらの興味深い現象の理解が新たな表面分析法への発展と非弾性散乱過程の基礎研究に貢献するものと期待される。
【0034】
また図5は、Si(111)7x7表面[11−2]方位で、各視射角θの鏡面反射ビーム強度の系統的変化を表わす。矢印P0は弾性ピーク、矢印P1〜P5はSiの表面プラズモン損失をそれぞれ示す。
【0035】
2.第2の実施の形態
図6に、RHEEDの損失エネルギー計測装置の第2の実施の形態の構成図を示す。
この装置は、可動式エネルギーフィルタ型RHEED装置及びエネルギー損失スペクトル計測システムである。第2の実施の形態では、主に、エネルギーフィルタ、電子増幅部及びそれらの移動に関する構成が第1の実施の形態と異なる。この計測装置は、電子銃1、電圧供給部2、エネルギーフィルタ3−2、電子増幅部としてのマルチチャンネルプレート(MCP)4−2及び電子コレクター4−3、検出部5−1、測定部6、蛍光スクリーン7−1、カメラ(図示せず)8、コンピュータ9、第3の移動部12、第4の移動部13、バイアス電源14を備える。
【0036】
エネルギーフィルタ3−2は、試料位置を中心とする球面の曲率の形状であって、接地された試料側の接地用グリッドGrid#1と、試料位置を中心とする球面の曲率の形状であって、電圧供給部2から供給された走引された阻止電圧と高周波電圧とを重畳した電圧が印加される、試料と反対側の阻止電圧印加用グリッドGrid#2とを有する。電子増幅部としては、マルチチャンネルプレート4−2と電子コレクター4−3を有する。バイアス電源14は、マルチチャンネルプレート4−2及び蛍光スクリーン7−1に電子線を加速するためのバイアス電圧を印加する。例えば、バイアス電源14は、マルチチャンネルプレート4−2の試料側に−4kV、試料と反対側に−3kV、及び蛍光スクリーン7−1には接地することで、グリッドGrid#2を通過した電子線を加速して蛍光スクリーン7−1に照射することができる。電子増幅部とバイアス電源14により、第1の実施の形態よりも電子の透過率を上げ、測定のエネルギー分解能を上げることができる。グリッドの形状、印加電圧、動作等の詳細については、第1の実施の形態で述べたとおりである。なお、マルチチャンネルプレート4−2は1枚型または複数枚型のものがある。
【0037】
第3の移動部12は、可動式の電子コレクター4−3をマルチチャンネルプレート4−2と蛍光スクリーン7−1の間に挿入又は抜き出すための装置である。第4の移動部13は、エネルギーフィルタ3−2と電子増幅部と蛍光スクリーン7−1の組みを、測定する角度・位置に応じて、試料位置を中心とした半球上を移動するための装置である。第3及び第4の移動部12及び13の駆動は、手動でもコンピュータによる制御によってもよい。
【0038】
エネルギーフィルタ3−2を透過した電子線はマルチチャンネルプレート4−2を用いて増幅され、電子コレクター4−3で任意個所の電子電流の検出を行なう。また、回折図形の観察時には可動式の電子コレクター4−3は横に倒す。電子コレクター4−3は超高真空モータを使用し、エネルギーフィルタ等の駆動は後述する。その他の各構成・動作については、第1の実施の形態と同様である。
【0039】
3.第3の実施の形態
3−1 構成及び動作
図7に、RHEEDの損失エネルギー計測装置の第3の実施の形態の構成図を示す。これは、ドーム型RHEED装置及びエネルギー損失スペクトル計測システムである。半球面上の回折図形が可能であると同時にエネルギーフィルタも可動式とした。エネルギー損失スペクトルの計測には蛍光スクリーン上の光強度を光増幅器で電気信号に変換し、その後の信号処理は第1、第2の実施の形態と同様である。エネルギーフィルタ駆動機構については後述する。
【0040】
第3の実施の形態では、主に、蛍光スクリーン、検出部及びそれらの移動に関する構成が第1の実施の形態と異なる。この計測装置は、電子銃1、電圧供給部2、エネルギーフィルタ3−1、光デバイス4−4、検出部5−2、測定部6、ドーム型蛍光スクリーン7−2、カメラ8、コンピュータ9、第4の移動部13を備える。
【0041】
ドーム型蛍光スクリーン7−2は、試料位置を中心として該試料100を半球又は半球の一部で覆い、エネルギーフィルタ3−1を通過した電子線を検出する。光デバイス4−4は、例えば、光ファイバ41及び光増幅器42等で構成され、エネルギーフィルタ3−1を通過した電子線がドーム型蛍光スクリーン7−2に照射されたことで形成される光を増倍して電気信号に変換する。検出部5−2は、光デバイス4−4の出力から電圧供給部2による高周波電圧の周波数成分及び/又はその2倍の周波数成分を検出する。測定部6は、電圧供給部2からの阻止電圧に応じた出力に従い、検出部5−2で検出された出力によりエネルギー損失スペクトルを測定する。第4の移動部13は、エネルギーフィルタ3−1を、測定する角度・位置に応じて、試料位置を中心とした半球上を移動するための装置である。
【0042】
チャンネルトロン、又は、マルチチャンネルプレートと電子コレクターの組み合わせで構成される電子増幅部をさらに備えるようにしてもよい。その場合は、第4の移動部13により、エネルギーフィルタ3−1と蛍光スクリーンの距離を試料に近づけ又は離すようにしてもよい。
その他の各構成・動作については、第1の実施の形態と同様である。
【0043】
第3の実施の形態は、ドーム型(半球型)蛍光スクリーン7−2に回折図形を全方位パノラマ的に観察するもので、それはあたかも天体観察(プラネタリウム観察)するがごときである。大きなドーム型スクリーンを作るのは困難であるため、従来のRHEED図形はかなり縮小されて映るであろうが、CCDカメラ8の画素は十分多いため画像拡大により克服できる。このドーム型スクリーン内面に接近して3枚グリッド型のエネルギーフィルタ3−1をスキャンできるようにし、任意の方向のエネルギーフィルタされた回折図形や特定の回折図形のエネルギー損失スペクトルを高周波を乗せた阻止電圧とロックインアンプを併用する手法により取得できるようにする。
【0044】
測定されるデータは、エネルギーフィルタされた回折図形と注目する回折斑点のエネルギー損失スペクトルであり、これらを立体角2πの空間にわたり取得することができる。エネルギーフィルタされた回折図形については既存のCCDカメラ8を用いることができる。エネルギー損失スペクトルについては、ターゲットを正確に狙うため光ファイバー41を用いて蛍光スクリーン7−2上の光強度を取り込み、フォトマル等の光増幅器42により電気信号として増幅する。阻止グリッドには高圧の阻止電圧に数kHz(これをωとする)、数Vの交流電圧も重畳して印加するための走引式高圧電源を用いる。光増幅器により計測された電気信号はロックイン増幅部53を用いてω成分を抽出し、本来ハイパスフィルタであるこの阻止電場型エネルギーフィルタをバンドパスフィルタとして通常のエネルギー損失スペクトルが取得できるようにする。また、2ω成分を抽出すれば更にエネルギーで微分されたスペクトルが取得できるため詳細なエネルギー損失スペクトルの変化が取得可能となる。
【0045】
なお、図示のエネルギーフィルタ3−1の代わりに第2の実施の形態で示したエネルギーフィルタ3−2、マルチチャンネルプレート4−2可動式電子コレクター4−3の組みを用いるようにしてもよい。さらに、エネルギーフィルタ3−1とドーム型蛍光スクリーン7−2との間に第1の実施の形態で示したチャンネルトロンを用いて、その間から挿入又は抜き出す移動部を設けるようにしてもよい。
【0046】
3−2 構造
図8に、ドーム型RHEED装置の概観図を示す。作成された試料はマグネット式サンプル移動機構により上部のドームチャンバー中央に移され、周りのミニ直線導入端子により3点等で固定される。そこでドーム型RHEED観察する。ドームチャンバーの電子銃は機械的に視射角変化できるようにする。また、電子線の加速電圧も可変できるようにし、振動相関熱散漫散乱(CTDS)観測においてより多くの逆空間情報を取得可能とする。このドーム状蛍光スクリーンの内壁近くに設置するエネルギーフィルタは3枚グリッド式の阻止電場型とし、θ、φスキャンできるようにする。ドームチャンバー内は10‐10Torr台程度の超高真空が達成できる排気系を備える。
【0047】
図9に、エネルギーフィルタ移動部の他の構成図を示す。この移動部13は、回転台131、方位角駆動部132、設置台133を備える。回転台131の内部に回転導入端子を用いる。回転台131の回転により極角の変化を行なう。方位角駆動部132は、内部の回転軸の先端には歯車を付けレール上のステージを滑らせ、方位角を変化させる。設置台133には、エネルギーフィルタ3、又はエネルギーフィルタ3と電子増幅部4等が搭載される。
【0048】
3−3 計測例
図10に、Si(001)試料表面直上の蛍光スクリーンに映し出された回折図形の図を示す。
【0049】
実際に高角散乱がRHEEDで強度的に観察可能かといった点について、既に我々は結晶試料表面直上に蛍光スクリーンを配置し、RHEED実験時にこの直上の蛍光スクリーンにも回折図形が強度的に問題なく観察されるか確かめた。その結果、回折斑点の代わりに菊池図形と思われる回折図形が肉眼で十分確認できる明るさで観察でき、対称性のある帯状の図形が観察できた。このことからほぼ全方位にわたる回折図形の観察は可能であると判断された。これが菊池図形であれば、結晶表面内部あるいは薄膜内部の構造情報源となり、実用的価値を生む。
【0050】
また、図11に、Si(111)7x7表面の視射角6.1°における(a)従来のRHEED図形、(b)非弾性成分除去によるCTDS強度分布図を示す。図示のように、左右対称に斜めの方向に縞模様が観察された。
【0051】
振動相関熱散漫散乱(CTDS)強度分布の抽出については、Si(111)7x7表面を用いて既存のEF−RHEED装置により非弾性散乱成分を除去し、さらに画像処理によりバックグランド成分を除去したところ、従来のRHEED図形にはバックグランド強度に埋もれて見えなかった縞状の強度分布(CTDS強度分布と思われる)を抽出できた。そのパターソン関数からSiの格子定数に近い値が得られ、RHEEDからもCTDSを用いた構造解析が可能であると考えられる。しかしながら、従来の平面スクリーンでは逆空間情報が限られているため(特に入射方向成分は情報が少ないため)、本実施の形態のようなドーム観察は非常に有効である。
【0052】
【発明の効果】
本発明により、従来、特殊で高価な分析装置が必要であったRHEEDの回折電子のエネルギー損失スペクトル計測が簡単で安価な装置で計測可能となり、また得られるスペクトルのS/Nはかなり高いため、表面プラズモン励起の入射条件依存性や、表面元素或いは表面形態依存性の直接的その場計測が可能となった。これにより、従来の表面構造評価装置であったRHEEDは表面プラズモン励起情報も捕らえることが可能となったため、新たな発見と応用への展開が期待できる。本装置のエネルギー分解能は、例えば、現在のところ、約6eVと見積られるが(ダイレクトビームの半値幅)、スペクトルの安定性及びS/Nの高さから考えれば1eV 程度のエネルギー識別も可能である。また、エネルギー微分モードも使用できるため、スペクトルの僅かな変化も検出できる。
【0053】
エネルギーフィルタと周波数成分の抽出により以下のような効果がある。
(1)エネルギーフィルタにより回折図形のバックグランド強度の低減に伴うコントラストの向上のみならず、これまで抽出困難であった付加的斑点列の強度分布を明瞭に捉えることができ、それによる規則ステップ表面の形態情報が得られる。
(2)ロッキング曲線の非弾性散乱成分の除去により、菊池線による影響を除外できると同時に、ピークの相対強度比に変化が現われることを見出すことができる。
(3)RHEEDでは入射電子や回折反射電子が試料表面近傍を長い距離走るため、表面プラズモン励起を顕著に引き起こすことが特徴的である。その視射角依存性や表面上に成長する膜厚依存性について、幾つかの点を明らかにすることができる。
【0054】
またドーム型RHEED装置又は、エネルギーフィルタと蛍光スクリーンを広範囲に可動することで、以下のような効果がある。
(1)これまで、RHEEDにおいて注目されなかった高角度散乱領域あるいは後方散乱領域の回折図形が観察可能となるため、原子散乱能f(θ)の散乱角依存性が広範囲にわたり観測できる。これを計算から求めたf(θ)と比較検討すると同時に、これを利用した元素識別が可能となる。
(2)試料真上に蛍光スクリーンの設置を試みたところ、回折斑点の代わりに菊池図形と思われる線状或いは帯状の構造が観察された。菊池図形は表面下数10Å内部からの散乱電子によって形成されるため、特に薄膜結晶試料においては、その内部構造や界面構造情報が得られるものと期待される。
(3)最近、中速電子回折において振動相関熱散漫散乱(CTDS)強度分布がバックグランドに埋もれて存在することが報告されている。このCTDS強度分布は、エネルギーフィルタを用いることにより、抽出可能となる。逆空間の広い範囲にわたり、このCTDS強度分布を取得し、そのフーリエ変換から直接的に最近接原子間の結合距離や結合方向に関する知見が得られる。本装置では広範囲の逆空間を観測し、さらに必要ならば入射電子線のエネルギーも変えてより多くのCTDS情報を取得し、この直接的表面構造解析がRHEEDにおいても可能となることが期待され、ロッキング曲線の動力学的表面構造解析と相補的解析手段としての活用を目指すことができる。
(4)RHEED図形はLEED図形と異なり逆空間の立面投影となるため、回折図形は逆空間の幾何学が歪んで観察される。特に複雑な回折図形になると結晶学の把握が困難となる。ドーム型蛍光スクリーンを真上から観察すればLEED図形と同様な逆空間の平面投影図となり、結晶学の把握に大変有利である。無理数で表わされるような回転を伴った長周期構造に適用し、その有効性を確認することもできる。
(5)エネルギーフィルタは可動式とするため、これまでの小角散乱電子の研究に加え、高角度散乱電子のエネルギー損失過程の研究も可能となり、プラズモン損失割合の違いを明らかにすることができる。その他、まだ観測されていない現象の発掘も期待される。
【0055】
RHEED法も成熟期を向かえ、エネルギーフィルタによる非弾性散乱電子についての理解や、最近ではスピン偏極電子線の使用といった新たな展開を目指している状況にあって、発想は単純であるが、これまで観察されなかった立体角2πの全放出角にわたる回折図形を観察することは重要であると考える。これまで逃していた情報が高角度の散乱に現れている可能性がある。高角散乱電子は原子核による散乱断面積が大きく、一方、小角散乱は原子間領域、すなわち原子の結合状態を反映する散乱断面積に強く影響されると考えられるため、全出射角或いは全方位角にわたる観察・観測は結晶の総合的評価に意義深い情報が得られるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】RHEEDの損失エネルギー計測装置の第1の実施の形態の構成図。
【図2】測定部により測定されるスペクトル図。
【図3】本装置を用いて得られた計測結果の図(1)。
【図4】本装置を用いて得られた計測結果の図(2)。
【図5】本装置を用いて得られた計測結果の図(3)。
【図6】RHEEDの損失エネルギー計測装置の第2の実施の形態の構成図。
【図7】RHEEDの損失エネルギー計測装置の第3の実施の形態の構成図。
【図8】ドーム型RHEED装置の概観図。
【図9】エネルギーフィルタ駆動部の構成図。
【図10】Si(001)試料表面直上の蛍光スクリーンに映し出された回折図形の図。
【図11】Si(111)7x7表面の視射角6.1°における(a)従来のRHEED図形、(b)非弾性成分除去によるCTDS強度分布図。
【符号の説明】
1 電子銃
2 電圧供給部
3−1 エネルギーフィルタ
4−1 電子増幅部
4−2 マルチチャンネルプレート
4−3 電子コレクター
4−4 光デバイス
5−1 検出部
6 測定部
7−1 蛍光スクリーン
7−2 ドーム型蛍光スクリーン
8 カメラ
9 コンピュータ
10 電子増幅部移動部
11 蛍光スクリーン移動部
12,13 移動部
14 バイアス電源
41 光ファイバ
42 光増幅器
100 試料
Claims (10)
- 電子線を利用した表面分析のための反射高速電子回折(RHEED)のエネルギー損失スペクトル計測装置であって、
試料に電子線を照射する電子銃と、
走引された阻止電圧及び高周波電圧を重畳して供給するための電圧供給部と、
試料側の接地された接地用グリッドと、前記電圧供給部から供給された走引された阻止電圧と高周波電圧とを重畳した電圧が印加される、試料と反対側の阻止電圧印加用グリッドとを有し、試料から反射又は透過された電子線を入射し、前記電圧供給部からの電圧が印加され、阻止電圧で定められたエネルギーより高いエネルギーの電子線を通過させるためのエネルギーフィルタと、
前記エネルギーフィルタを通過した電子線を入射して、増幅するためのマルチチャンネルプレートと、
前記エネルギーフィルタを通過し、前記マルチチャンネルプレートを用いて増幅された電子線の、任意個所の電子電流を検出する可動式の電子コレクターと、
前記電子コレクターの出力から前記電圧供給部による高周波電圧の周波数成分及び/又はその2倍の周波数成分を検出する検出部と、
前記電圧供給部からの阻止電圧の走引に従い、前記検出部で検出された出力によりエネルギー損失スペクトルを測定する測定部と、
前記エネルギーフィルタを通過した電子線が照射されRHEEDパターンを形成するための蛍光スクリーンと、
可動式の前記電子コレクターを前記マルチチャンネルプレートと前記蛍光スクリーンの間に挿入又は抜き出すための第1の移動部と、
前記エネルギーフィルタ、又は、前記エネルギーフィルタと前記マルチチャンネルプレートと前記電子コレクターと前記蛍光スクリーンの組みを、測定する角度・位置に応じて、試料位置を中心とした半球上を移動するための第2の移動部と、
前記接地用グリッド、前記阻止電圧印加用グリッド、前記マルチチャンネルプレート及び前記蛍光スクリーンに電子線を加速するためのバイアス電圧を印加するバイアス電源であって、前記マルチチャンネルプレートの試料側に第1の電圧、試料と反対側に第2の電圧を印加し、かつ、前記接地用グリッド及び前記蛍光スクリーンは接地することで、前記阻止電圧印加用グリッドを通過した電子線を加速して前記蛍光スクリーンに照射するための前記バイアス電源と
を備えたRHEEDのエネルギー損失スペクトル計測装置。 - 前記エネルギーフィルタは、
試料位置を中心とする球面の曲率を有する形状である
請求項1に記載のRHEEDのエネルギー損失スペクトル計測装置。 - 前記蛍光スクリーンは、
試料位置を中心として該試料を半球又は半球の一部で覆い、前記エネルギーフィルタを通過した電子線を検出するためのドーム型蛍光スクリーンである
請求項1に記載のRHEEDのエネルギー損失スペクトル計測装置。 - 電子線を利用した表面分析のための反射高速電子回折(RHEED)のエネルギー損失スペクトル計測装置であって、
試料に電子線を照射する電子銃と、
走引された阻止電圧及び高周波電圧を重畳して供給するための電圧供給部と、
試料から反射又は透過された電子線を入射し、前記電圧供給部からの電圧が印加され、阻止電圧で定められたエネルギーより高いエネルギーの電子線を通過させるためのエネルギーフィルタと、
試料位置を中心として該試料を半球又は半球の一部で覆い、前記エネルギーフィルタを通過した電子線を検出して、RHEEDパターンを形成するためのドーム型蛍光スクリーンと、
光ファイバと光増幅器とを有し、前記エネルギーフィルタを通過した電子線が前記ドーム型蛍光スクリーンに照射されたことで形成される光を、前記光ファイバを用いて取り込み、前記光増幅器により増倍して電気信号に変換する光デバイスと、
前記光デバイスの出力から前記電圧供給部による高周波電圧の周波数成分及び/又はその2倍の周波数成分を検出する検出部と、
前記電圧供給部からの阻止電圧に応じた出力に従い、前記検出部で検出された出力により特定の回折図形又は回折斑点のエネルギー損失スペクトルを測定する測定部と、
前記エネルギーフィルタを、測定する角度・位置に応じて、試料位置を中心とした半球上を移動するための移動部と
を備えたRHEEDのエネルギー損失スペクトル計測装置。 - 前記検出部は、前記電圧供給部から供給された高周波電圧の周波数成分の信号を抽出することで、直接的にエネルギー損失スペクトルを取得すること、及び/又は、該高周波電圧の2倍の周波数成分の信号を抽出することで、直接的にエネルギー損失スペクトルのエネルギー微分されたスペクトルを取得することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のRHEEDのエネルギー損失スペクトル計測装置。
- 前記電子増幅部の出力からノイズを除去して前記検出部に供給するためのバンドパスフィルタをさらに備えた請求項1乃至5のいずれかに記載のRHEEDのエネルギー損失スペクトル計測装置。
- 前記蛍光スクリーンを観察するためのカメラと
前記カメラからの出力を解析するためのコンピュータと
をさらに備えた請求項1乃至6のいずれかに記載のRHEEDのエネルギー損失スペクトル計測装置。 - 電子線を利用した表面分析のための反射高速電子回折(RHEED)のエネルギー損失スペクトル計測方法であって、
試料に電子線を照射し、
試料側の接地された接地用グリッドと、走引された阻止電圧と高周波電圧とを重畳した電圧が印加される、試料と反対側の阻止電圧印加用グリッドとを有するエネルギーフィルタに、走引された阻止電圧及び高周波電圧を重畳して与え、
該エネルギーフィルタに、試料から反射又は透過された電子線を入射し、
前記エネルギーフィルタを通過し、阻止電圧で定められたエネルギーより高いエネルギーの電子線をマルチチャンネルプレートにより増倍して出力し、
増幅された電子線の任意個所の電子電流を、マルチチャンネルプレートと蛍光スクリーンの間に挿入又は抜き出される可動式の電子コレクターにより検出し、
阻止電圧を走引させ、電子増倍された出力から、エネルギーフィルタに供給された高周波電圧の周波数成分及び/又はその2倍の周波数成分を検出することにより、エネルギー損失スペクトルを測定し、
エネルギーフィルタを通過した電子線を蛍光スクリーンに照射してRHEEDパターンを形成し、
エネルギーフィルタ、又は、エネルギーフィルタとマルチチャンネルプレートと電子コレクターと蛍光スクリーンの組みを、測定する角度・位置に応じて、試料位置を中心とした半球上を移動させ、
マルチチャンネルプレートの試料側に第1の電圧、試料と反対側に第2の電圧を印加し、かつ、接地用グリッド及び蛍光スクリーンは接地することで、阻止電圧印加用グリッド を通過した電子線を加速して蛍光スクリーンに照射するRHEEDのエネルギー損失スペクトル計測方法。 - 試料位置を中心として該試料を半球又は半球の一部で覆ったドーム型蛍光スクリーンにより、試料から反射された電子線が前記エネルギーフィルタを通過して又は通過しないで前記ドーム型蛍光スクリーンに照射されたことで形成されるRHEEDパターンを観察する請求項8に記載のRHEEDのエネルギー損失スペクトル計測方法。
- 電子線を利用した表面分析のための反射高速電子回折(RHEED)のエネルギー損失スペクトル計測方法であって、
試料に電子線を照射し、
走引された阻止電圧及び高周波電圧が重畳されて与えられたエネルギーフィルタに、試料から反射又は透過された電子線を入射し、
試料位置を中心として該試料を半球又は半球の一部で覆ったドーム型蛍光スクリーンにより、前記エネルギーフィルタを通過した電子線が前記ドーム型蛍光スクリーンに照射されたことで像を形成し、
前記ドーム型蛍光スクリーンにより形成された像を、光ファイバを用いて取り込み、光増幅器により増倍して電気信号に変換し、
変換された電気信号から高周波電圧の周波数成分及び/又はその2倍の周波数成分を検出した出力により特定の回折図形又は回折斑点のエネルギー損失スペクトルを測定し、
エネルギーフィルタを、測定する角度・位置に応じて、試料位置を中心とした半球上を移動させるRHEEDのエネルギー損失スペクトル計測方法。
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