JP3909810B2 - 原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法 - Google Patents

原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法に関し、特に、析出強化型の合金により構成された原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスタービン動翼には、耐熱超合金が用いられ、特に高温強度が要求される動翼には、例えばNi基超合金が使用されるようになっている。このNi基超合金は、析出強化型合金であり、一般にγ‘相と呼ばれるNi3(Al,Ti)の金属間化合物をNiマトリックスに析出させる高温強度を得るようにしている。
【0003】
しかし、このようなNi基超合金性のガスタービン部品については、ガスタービンの運転とともに種々の損傷又は欠陥(以下単に損傷と言う)が見られる。これは、動翼等のタービン部品は高温の燃焼雰囲気にさらされるためであり、これにより腐食や酸化その他の材料劣化が生じるとともに、運転時の遠心応力によってクリープ損傷が蓄積される。また、ガスタービンの起動あるいは停止時には、その熱履歴に遠心応力が重畳した熱疲労が生じ、さらに損傷が蓄積される。
【0004】
このような問題点を改善するため、特開平11−335802号公報の発明では、材料劣化・損傷回復処理方法の一例として次のようにしたものである。これについて、図16、17を参照して説明するが、ここでは原動機部品としてガスタービン動翼に適用した場合である。
【0005】
図16は材料劣化・損傷回復処理方法の工程の流れを示している。また、図17は材料劣化・損傷回復処理を行なう原動機部品の一例であるガスタービン動翼1を説明するための図で、図17(a)はその正面図であり、図17(b)は図17(a)のA矢視図である。
【0006】
図16に示す通り、工程の流れとして、表面損傷・欠陥検査工程S1、表面損傷・欠陥補修工程S2、回復熱処理工程S3、溶体化熱処理工程S4、時効熱処理工程S5からなっている。
【0007】
ここで、表面損傷・欠陥検査工程S1は、高温下での使用により、図17に示すガスタービン動翼1のチップシュラウド部2、翼有効部3、シャンク部4や植込み部5の表面において設計許容値を逸脱する割れ、欠損やブローホール等を外観目視検査や蛍光浸透探傷試験によって探し出す検査工程である。この表面損傷・欠陥検査工程S1を行うことによって、本結果を基に次の工程である表面損傷・欠陥補修工程S2において補修を行なうことが可能となった。
【0008】
表面損傷・欠陥補修工程S2は、表面損傷・欠陥検査工程S1において探し出された割れ、欠損やブローホール等を溶接補修、ショットブラスト照射によって補修する工程である。この表面損傷・欠陥補修工程S2を行うことによって設計許容値を逸脱した表面上の損傷・欠陥を、取り除くことが可能となった。
【0009】
回復熱処理工程S3は、高圧下での熱処理を施す工程である。回復熱処理工程S3は、具体的には、容器中に加熱装置を配置した圧力容器と不活性ガススタック及び不活性ガスを圧縮し、容器中に送り込む圧縮装置、使用した不活性ガスを回収する排気・ガス回収装置及び加熱装置内に配備した本回復熱処理を行う部品を保持する容器からなる装置を用い、この容器中に部品をセットした後、一旦容器内を排気した後、不活性を封入し、加圧しながら昇温し、所定の温度及び圧力でγ’相の母材への完全固溶を図るとともに、不可避的に生じた局部溶解による欠陥或は使用時に生じたクリープあるいは疲労による損傷を回復させるためのものである。しかし、回復熱処理工程S3において、過度の温度を上げることは、温度が高くなるにつれて部品の強度が低下し、自重により変形を生じることから、回復熱処理時に設計上問題を生じるような変形を生じない強度を有する温度以下にする必要がある。回復熱処理工程S3において、施す圧力は回復熱処理工程時に局所に偏析した元素の拡散を加速し、かつ不可避的に生じた局所の溶解あるいは運転時に生じたクリープあるいは疲労による損傷(欠陥)をその処理温度で回復させるのに十分な圧力であり、かつ回復熱処理工程時に設計上問題を生じるような変形を生じさせない圧力低下である必要がある。
【0010】
また、溶体化熱処理工程S4及び時効熱処理工程S5は、非加圧下で熱処理を施す工程であり、溶体化処理工程S4は、例えば1160〜1175℃で熱処理を行うことである。さらに、時効熱処理工程S5は、例えば通常温度で熱処理を行うことである。
【0011】
このような溶体化熱処理工程S4を行うことにより、γ‘相の完全な母材への固溶を図るとともに、高圧下で加熱することにより、溶解温度の低下を来たす要因なった元素の拡散を加速させ、局部的溶解開始温度の上昇を図るとともに、例え局部的に溶解しても高圧により圧着させることにより、局部溶解による強度低下を防ぐことができる。
【0012】
これら3つの工程を、回復熱処理工程S3→溶体化熱処理工程S4→時効熱処理工程S5の順番で行うことによって、高温下長時間の使用で劣化したガスタービン動翼1の材料を再使用可能な状態に回復させることが可能となった。
【0013】
回復熱処理工程S3の前に、表面損傷・欠陥検査工程S1で表面損傷もしくは欠陥を検査し、表面損傷・欠陥補修工程S2で部品表面の露出部について欠陥のない状態にまで補修することで、設計条件を満たす表面状態及び寸法に修復させ、ガスタービン等の原動機部品の材料劣化・損傷回復を図ることが可能となった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、回復熱処理工程S3の前に実施する、部品の表面損傷・欠陥検査工程S1及び表面損傷・欠陥補修工程S2に基づく部品表面の損傷・欠陥補修による表面状態の修復だけでは、高温下長時間使用したことによって発生する部品例えばガスタービン動翼1毎に異なる変形状態(後述する)を捉えることができず、変形修正要否(変形修正が必要かどうか)、変形修正可否(変形修正ができるかどうか)の判断及び変形修正可能な場合の変形修正量を求めることができず、例え材料劣化が回復し、部品表面の損傷・欠陥も修復されたとしても実際に再使用できるか否か判断できないという問題があった。
【0015】
例えば各ガスタービン動翼1にあっては、図3に示すようにチップシュラウド部2に有しタービンが回転動作時は隣接のガスタービン動翼1のコンタクト面と接触(単に当接する)し、かつタービンが停止時はコンタクト面が非接触状態となるコンタクト面6を備え、またチップシュラウド部2に有し、タービンの運転、停止に関係なくいつも隣接するガスタービン動翼1と非接触(隙間があいた状態)となる非コンタクト面7を有している。このようなガスタービン動翼1は理想的な状態であるが、ガスタービン動翼1を高温下で長時間使用すると、隣接するコンタクト面6同士が接触し過ぎて(接触圧が高い状態)、コンタクト面6がボロボロになったり、あるいは例えば一方のガスタービン動翼1のコンタクト面6が例えば2mmぐらい競り上がり、他方のガスタービン動翼1のコンタクト面6がほとんど競り上がらず、両コンタクト面6同士が接触しないような状態のガスタービン動翼1にあっては、ガスタービン動翼1が再使用できるか判断ができないことがある。
【0016】
なお、図3のガスタービン動翼1に形成されている突起部12は、ガスが翼有効部に作用するようにするためのものである。
【0017】
また、目視観察だけでは例えばガスタービン動翼1の冷却空気孔の詰まりなどの機能上の欠陥を見つけることができず、この観点からも再使用できるか否か判断できないという問題があった。
【0018】
そして、回復熱処理工程S3の後に、回復熱処理による部品への変形の影響を捉えるための検査工程も無く、この観点からも再使用できるか否かを判断できないという問題があった。
【0019】
さらに、修復したガスタービン動翼1を例えば92本用意し、これらを全て実機のホイールの植込み部に組込んだ際、各ガスタービン動翼1間の取合い部における検査工程及び調整工程も無く、この観点からも再使用できるか否かを判断できず、この最終段階で再使用不可と判断された場合に「予備品と交換する」等の適切な処理ができない、という問題があった。
【0020】
このように材料劣化・損傷回復したガスタービン動翼1を新品と同様に再使用するには、以上述べたような問題があり、従来このような問題があるという認識がなかったために必要な計測、検査、検討、調整の工程が無く、回復処理を行った部品を用いて復旧した実機の安全な運用が脅かされていた。
【0021】
本発明の目的は、単なる材料劣化の回復や部品表面の損傷修理に止まらず、対象部品を実機に復旧し、最終的に安全な運用を実現するに足る必要十分な原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1に対応する発明は、析出強化型の合金により構成され、高温下の使用により材料の劣化または損傷が生じた原動機部品に対し、高圧下で熱処理を施す回復熱処理工程と、非加圧下で熱処理を施す溶体化熱処理工程及び時効熱処理工程を順次実施するか、又は高圧下で熱処理を行う際に毎分40℃以上で冷却する回復処理工程と、非加圧下で熱処理を施す時効熱処理工程を順次実施する原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法において、
前記回復熱処理工程の前に、前記原動機部品が設計条件を満たすか否かの変形を計測する変形計測工程と、
を含む方法であって、
前記変形計測工程は、前記原動機部品であるガスタービン動翼のチップシュラウド側とは反対側の端部を水平となるように治具本体により支持固定し、この状態で該チップシュラウド側を、該チップシュラウドと類似した形状に刳り貫いたチップシュラウド計測孔を有する板ゲージを水平方向にスライドさせて該チップシュラウドに該チップシュラウド計測孔を挿通させ、この該チップシュラウド計測孔と前記チップシュラウドのすきまを、スキミゲージにより計測することである原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法である。
【0023】
前記目的を達成するため、請求項2に対応する発明は、析出強化型の合金により構成され、高温下の使用により材料の劣化または損傷が生じた原動機部品に対し、高圧下で熱処理を施す回復熱処理工程と、非加圧下で熱処理を施す溶体化熱処理工程及び時効熱処理工程を順次実施するか、又は高圧下で熱処理を行う際に毎分40℃以上で冷却する回復処理工程と、非加圧下で熱処理を施す時効熱処理工程を順次実施する原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法において、
前記回復熱処理工程の前に、前記原動機部品が設計条件を満たすか否かの変形を計測する変形計測工程と、
前記変形計測工程で計測された原動機部品の表面損傷・欠陥を検査する表面損傷・欠陥検査工程と、
前記表面損傷・欠陥検査工程で検査された原動機部品の機能上の欠陥を検査する機能上の欠陥検査工程と、
前記機能上の欠陥検査工程の後に、該検査した該原動機部品の機能上の欠陥を除去する機能上の欠陥除去工程を含む方法であって、
前記機能上の欠陥検査工程は、前記原動機部品であるガスタービン動翼の運転中に自分自身を冷却するための冷却空気孔の詰まりを流体を該冷却空気孔に流すことにより検査することであり、
前記機能上の欠陥除去工程は、前記原動機部品としてガスタービン動翼の場合には、該冷却空気孔に線状部材を挿通又は該冷却空気孔に高圧流体を噴射することである原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法である。
【0024】
前記目的を達成するため、請求項3に対応する発明は、析出強化型の合金により構成され、高温下の使用により材料の劣化または損傷が生じた原動機部品に対し、高圧下で熱処理を施す回復熱処理工程と、非加圧下で熱処理を施す溶体化熱処理工程及び時効熱処理工程を順次実施するか、又は高圧下で熱処理を行う際に毎分40℃以上で冷却する回復処理工程と、非加圧下で熱処理を施す時効熱処理工程を順次実施する原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法において、
前記回復熱処理工程の前に、前記原動機部品が設計条件を満たすか否かの変形を計測する変形計測工程と、
前記原動機部品に施工されているコーティング層を除去するコーティング除去工程と、
前記時効熱処理工程後に前記原動機部品に対し、設計条件を満たすように変形を修正する変形修正工程と、
前記変形修正工程の後に、前記原動機部品におけるコーティングすべき部分に酸化及び腐食を防止するためのコーティング層、ガスタービン動翼の植込み部にガタ防止のためのコーティング層を施工するコーティング施工工程と、
を含む原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法である。
【0025】
前記目的を達成するため、請求項4に対応する発明は、析出強化型の合金により構成され、高温下の使用により材料の劣化または損傷が生じた原動機部品に対し、高圧下で熱処理を施す回復熱処理工程と、非加圧下で熱処理を施す溶体化熱処理工程及び時効熱処理工程を順次実施するか、又は高圧下で熱処理を行う際に毎分40℃以上で冷却する回復処理工程と、非加圧下で熱処理を施す時効熱処理工程を順次実施する原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法において、
前記回復熱処理工程の前に、前記原動機部品が設計条件を満たすか否かの変形を計測する変形計測工程と、
前記原動機部品に対してコンタクト面に溶接部を肉盛りする溶接補修工程と、
前記時効熱処理工程後に前記原動機部品に対し、前記溶接補修工程で前記コンタクト面に肉盛りされた溶接部を機械加工する変形修正工程を更に含む原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法である。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係る原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法について図面を基に説明するが、ここでいう原動機部品としては、析出強化型の合金により構成され、高温下の使用により材料の劣化または損傷が生じたものが対象であり、例えばガスタービン動翼、ガスタービン静翼、ガスタービン燃焼器ライナ、トランジョンピース、蒸気タービン部品等に好適である。
【0037】
(第1の実施形態)
本発明に係る原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法における第1の実施形態を、原動機部品としてガスタービン動翼を用い、図1〜図4、及び図17を参照して説明する。
【0038】
図1は、材料劣化・損傷回復処理方法における第1の実施形態の工程の流れを示している。第1の実施形態の構成としては、次の7つの工程からなっている。すなわち、変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11(図16のS1に相当)、機能上の欠陥検査工程S12、コーティング除去工程S13、回復熱処理工程S14(図16のS3に相当)、溶体化熱処理工程S15(図16のS4に相当)、時効熱処理工程S16(図16のS5に相当)である。
【0039】
工程の流れとして重要なのは、回復熱処理工程S14の前に、変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12、コーティング除去工程S13を行うことである。
【0040】
変形計測工程S10は、高温下長時間の使用により変形した図17に示すガスタービン動翼1のチップシュラウド部2の変形を、図2に示す計測加工治具9により以下に述べる方法で計測する工程である。
【0041】
図2は、図1の変形計測工程を説明するための図であり、図2(a)はガスタービン動翼1を計測加工治具9により支持した状態を示す正面図であり、図2(b)は図2(a)のB矢視図である。計測加工治具9は、定盤91と、定盤91の所定位置に固定され、図17の動翼1の植込み部5及びシャンク部4を夫々支持固定する支持固定具92,93と、動翼1の外周面を押さえる押え具(図示しない)と、定盤91上にスライド可能に配設され、動翼1の軸方向とは直交する断面形状の変形を測定するためのものであって、動翼1の軸方向とは直交する断面形状に類似した形状でかつ動翼1の外形寸法より例えば全体が3mm大きい刳り抜き孔81が形成された板状ゲージ8と、該刳り抜き孔81と動翼1の外周面の隙間寸法を測定するスキミゲージ(図示しない)とから構成されている。
【0042】
このような構成の計測加工治具9を用いて変形計測工程S10を実施するためには、始めに計測すべき動翼1を、図2(a)に示すように支持固定具92,93の上に載置すると共に押え具(図示しない)により押さえて動翼1を水平に支持固定し、この状態で板状ゲージ8を定盤91上にスライドさせて動翼1に近接させる。そして、板状ゲージ8の刳り抜き孔81を、動翼1の外周側を挿通させながらスキミゲージ(図示しない)を用いて、間隙計測位置P1,P2,P3における隙間を計測する。この場合、間隙計測位置P1は、非コンタクト面7と対向する刳り抜き孔81の隙間を測定する位置であり、又間隙計測位置P3は、コンタクト面6と対向する刳り抜き孔81の隙間を測定する位置であり、更に間隙計測位置P2は非コンタクト面7とコンタクト面6の連結部であってこの連結部と対向する刳り抜き孔81の隙間を測定する位置である。
【0043】
この板状ゲージ8はガスタービン動翼1が変形のない状態で計測したときに各計測位置での隙間が1mmとなるように製作されており、チップシュラウド部2の変形量を定量的に計測することができる。
【0044】
図3は、ガスタービン動翼1を実機に組み込み運転した際の隣接したチップシュラウド部2の状態をチップシュラウド上面側から見た様子を示している。図4は、冷却空気孔10を持つガスタービン動翼1を冷却空気孔10を中心に長手方向に切断した状態を示している。
【0045】
この変形計測工程S10によって、植込み部5を基準としたシャンク部4、翼有効部3及びチップシュラウド部2おいて、各々の変形を積算した翼全体の変形を計測することが可能となった。さらに変形計測工程S10で計測した変形量は、後工程で実施される変形を修正するための、溶接補修工程(図7のS17)や変形修正工程(図12のS21)において用いられ、実機にガスタービン動翼1が組み込まれて運転された際に、図3に示すように隣接する動翼1同士が設計通り、コンタクト面6のみで接触するように修正することが可能となった。
【0046】
表面損傷・欠陥検査工程S11は、高温下の使用により、図17に示すガスタービン動翼1のチップシュラウド部2、翼有効部3、シャンク部4や植込み部5の表面において設計許容値を逸脱する割れ、欠損やブローホール等を外観目視検査や蛍光浸透探傷試験によって探し出す検査工程である。
【0047】
機能上の欠陥検査工程S12は、高温下長時間の使用により図4に示すようにガスタービン動翼1の冷却空気孔10が異物11によって閉塞しているか否かを、冷却空気孔に水を流す水流試験によって確認する。機能上の欠陥検査工程S12によってガスタービン動翼1の冷却空気孔10の閉塞を捉え、後工程の「機能上の欠陥を除去する欠陥除去工程(図11のS20)において閉塞を取り除く冷却空気孔10を特定することが可能となった。
【0048】
コーティング除去工程S13は、図17のガスタービン動翼1のチップシュラウド部2のコンタクト面6に、施工されている酸化及び腐食を防止するための耐酸化・耐腐食用のコーティング層を除去したり、またガスタービン動翼1の翼有効部3に施工されている高温腐食を防止するための耐腐食のコーティング層を除去したり、或はガスタービン動翼1の植込み部に施工されているガタ防止のためのコーティング層例えばアルミニュウム層を除去することである。
【0049】
コーティング除去工程S13は、例えば、チップシュラウド部2のコンタクト面6に耐摩耗のコーティング層が施工されていた場合に、特殊な化学溶液を用いるケミカルストリップやショットブラスト、或いはメカニカルストリップによってコーティング層を除去することである。
【0050】
このようにコーティング除去工程S13を実施することによって、後工程の回復熱処理工程S14中にガスタービン動翼1の母材がコーティングの影響を受けて変質してしまうことを防止することが可能となった。
【0051】
その他の工程である表面損傷・欠陥検査工程S11、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16については、前述の従来例で述べた通りである。回復熱処理工程S14は、高圧下で熱処理を施す工程である。また、溶体化熱処理工程S15及び時効熱処理工程S16は、非加圧下で熱処理を施す工程である。
【0052】
以上述べた第1の実施形態によれば、次のような作用効果が得られる。すなわち、変形計測工程S10によって、植込み部5を基準としたシャンク部4、翼有効部3及びチップシュラウド部2において各々の変形を積算した翼全体の変形を計測することが可能となった。さらに変形計測工程S10で計測した変形量は、後工程で実施される変形を修正するための、溶接補修工程や変形修正工程において用いられ、実機にガスタービン動翼1が組み込まれてガスタービンが運転された際に、設計通り図3に示すように動翼1のコンタクト面6のみが接触するように修正することが可能となった。
【0053】
機能上の欠陥検査工程S12によってガスタービン動翼1の冷却空気孔の閉塞を捉え、後工程の「機能上の欠陥除去工程において閉塞を取り除く冷却空気孔10を特定することが可能となった。コーティング除去工程S13によって、後工程の回復熱処理中にガスタービン動翼1の母材がコーティングの影響を受けて変質してしまうことを防止することが可能となった。
【0054】
この結果、第1の実施形態によれば、単なる材料劣化の回復や部品表面の損傷修理に止まらず、対象部品を実機に復旧し、最終的に安全な運用を実現するに足る必要十分な原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法を提供することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
図5は、本発明に係る原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法における第2の実施形態の工程の流れを示している。第2の実施形態の構成としては、次の6つの工程からなっている。すなわち、変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12、コーティング除去工程S13、回復熱処理工程S14A、時効熱処理工程S16である。
【0056】
ここで、工程の流れとして重要なのは、高圧下での回復熱処理工程S14の後に、第1の実施形態の溶体化熱処理工程S15がなく、時効熱処理工程S16のみがあることである。この場合、回復熱処理工程S14は第1の実施形態の溶体化熱処理工程S15を兼ねている。具体的には、回復熱処理工程S14Aを実施する装置が例えばガス冷却装置を備え、毎分40℃以上で冷却可能な構成となっている。なお、以上述べた点以外の構成は、第1の実施形態と同一である。
【0057】
この結果、γ‘相を固溶させる熱処理を施した後、本来の本合金の溶体化処理温度、特に部分溶体化処理温度で一旦保持した後、急速に冷却することで、第1の実施形態において実施されていた、溶体化熱処理工程S15を削除できることから、効率的な回復処理が可能となった。
【0058】
(第3の実施形態)
図6は、本発明に係る原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法における第3の実施形態の工程の流れを示している。第3の実施形態の構成としては、第1の実施形態の変形計測工程S10と、表面損傷・欠陥検査工程S11と、機能上の欠陥検査工程S12と、コーティング除去工程S13をすべて省略し、次の6つの工程のみを実施する場合である。すなわち、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16、変形計測工程S30、表面損傷・欠陥検査工程S31、機能上の欠陥検査工程S32である。
【0059】
ここで工程の流れとして重要なのは、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16を順次行うという熱処理工程の後に、変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12を行うことである。
【0060】
この場合の変形計測工程S30、表面損傷・欠陥検査工程S31及び機能上の欠陥検査工程S32の実施内容は、第1の実施形態で述べた変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11及び機能上の欠陥検査工程S12に述べた通りである。
【0061】
この実施形態の場合には、第1のような実施形態を所定回数実施することにより、過去の実績データから原動機部品の材料の欠陥率が求められる場合に限る。このことは、例えば高温下で何時間運転したものは変形計測・変形修正処理工程を行わなくても良いという判断が成り立つ場合である。従って、ユーザ側での受け入れ検査において、変形計測工程を行う必要がない(通常2回行う変形計測工程が1回ですむ)ので、ガスタービンの材料劣化・損傷回復処理費用が極めて安くなる。例えば、92本のガスタービン動翼のうち2本のみ2回変形計測工程を行えばよいと、判断された時である。
【0062】
(第4の実施形態)
図7は、本発明に係る原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法における第4の実施形態の工程の流れを示している。第4の実施形態の構成としては、次の7つの工程からなっている。すなわち、変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12、溶接補修工程S17、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16である。
【0063】
工程の流れとして重要なのは、変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12という計測・検査工程の後に、溶接補修工程S17を行うことである。
【0064】
溶接補修工程S17は、第1の実施形態でも述べたように、変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11という計測・検査の前工程にて確認されたチップシュラウド部2の変形量や翼有効部の表面に確認された設計許容値を逸脱する割れや欠損等について、低電流TIG溶接手法を用いて溶接修理する工程である。
【0065】
特にチップシュラウド部2の変形修理については、後工程の回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15及び時効熱処理工程S16による更なる変形量を考慮して溶接修理する。この更なる変形量は事前検証試験によって導出した値を用いる。具体的なチップシュラウド部2の変形修正方法は、チップシュラウド部2のコンタクト面6が変形のない設計通りの位置になるように、不足部分を溶接肉盛りし、後工程の変形修正工程において機械加工する。ここで、溶接肉盛りはコンタクト面6の摩耗による減肉分も考慮して行う。この工程によって、計測・検査の前工程にて確認された変形や設計許容値を逸脱する割れや欠損等を補修することができ、変形・損傷したガスタービン動翼を再使用することが可能となった。
【0066】
その他の工程である変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16については、第1の実施形態で述べた通りである。
【0067】
(第5の実施形態)
図8は、本発明に係る原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法における第5の実施形態の工程の流れを示している。第5の実施形態の構成としては、次の7つの工程からなっている。すなわち、変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12、表面損傷・欠陥修理工程S18、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16である。
【0068】
工程の流れとして重要なのは、変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12という計測・検査工程を順次実施の後に表面損傷・欠陥修理工程S18を行うことである。
【0069】
表面損傷・欠陥補修工程S18は第1の実施形態でも述べたように、表面損傷・欠陥検査工程S11において探し出された高温下の使用により、図17に示すガスタービン動翼1のチップシュラウド部2、翼有効部3、シャンク部4や植込み部5の表面において設計許容値を逸脱する割れ、欠損やブローホール等を外観目視検査や蛍光浸透探傷試験によって探し出す検査工程である。
【0070】
この表面損傷・欠陥補修工程S18によって設計許容値を逸脱した表面上の損傷・欠陥を、取り除くことが可能となった。
【0071】
その他の工程である変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16については、第1の実施形態で述べた通りである。
【0072】
(第6の実施形態)
図9は、本発明に係る原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法における第6の実施形態の工程の流れを示している。また、図10はガスタービン動翼1のチップシュラウド部2における応力集中による高応力部12、具体的にはコンタクト面及びその応力低減化処置後の状態部13を示している。
【0073】
第6の実施形態の構成としては、次の7つの工程からなっている。すなわち、変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12、応力低減化処置工程S19、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16である。
【0074】
工程の流れとして重要なのは、変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12という計測・検査工程を順次行った後に応力低減化処置工程S19を行うことである。
【0075】
この応力低減化処置工程S19は、前工程である表面損傷・欠陥検査工程S11において確認された部位の割れや損傷が他の多くの翼に共通し、かつFEM(有限要素法)解析等の応力解析によってチップシュラウド部2における応力が高い部位(高応力部)12であると判断された場合、図10で示したように高応力を低減するべくグラインダー等を用いてR加工(面取り加工)し、応力低減化処置状態部13を形成する工程である。この応力低減化処置工程S19によって、実機組み込み後の運転において同様の割れが発生することを防ぎ、安全な実機運用に期することが可能となった。
【0076】
その他の工程である変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16については、第1の実施形態で述べた通りである。
【0077】
(第7の実施形態)
図11は、本発明に係る原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法における第7の実施形態の工程の流れを示している。第7の実施形態の構成としては、次の7つの工程からなっている。すなわち、変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12、機能上の欠陥除去工程S20、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16である。
【0078】
工程の流れとして重要なのは、変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12という計測・検査工程の後に、機能上の欠陥除去工程S20を行うことである。
【0079】
機能上の欠陥除去工程S20は図4に示したガスタービン動翼1の冷却空気孔10に詰まった異物11を、ピアノ線を冷却空気孔10に挿入する方法や高圧の水を冷却空気孔10に噴射する方法等によって異物11を取り除く工程である。この機能上の欠陥除去工程S20によって冷却空気孔の閉塞を取り除き、実機組み込み後の運転時にガスタービン動翼1を冷却させて設計通りのメタル温度を確保することにより、安全な実機運用が可能となった。
【0080】
その他の工程である変形計測工程S10、表面損傷・欠陥検査工程S11、機能上の欠陥検査工程S12、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16については、第1の実施形態で述べた通りである。
【0081】
(第8の実施形態)
図12は、本発明に係る原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法における第8の実施形態の工程の流れを示している。図13は、図12の変形修正工程(具体的にはチップシュラウド部2のコンタクト面に対して行う変形修正工程)を説明するための図であり、図13(a)はガスタービン動翼1を計測加工治具9により支持した状態を示す正面図であり、図13(b),(c)はいずれも図13(a)のC矢視図であって、チップシュラウド部2の腹側計測加工時及び背側計測加工時を説明するための図である。
【0082】
第8の実施形態の構成としては、次の6つの工程からなっている。すなわち、溶接補修工程S17、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16、変形修正工程S21である。
【0083】
工程の流れとして重要なのは、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16という熱処理工程の後に変形修正工程S21を行うことである。
【0084】
変形修正工程S21は、高温下長時間使用や熱処理工程によって変形したガスタービン動翼1を実機に組み込み運転した際に図3に示すように翼同士がコンタクト面6のみで設計通り接触するように修正を行う工程である。
【0085】
具体的には図13(a)に示した計測加工治具9にガスタービン動翼1を水平にセッティングし、前工程の「溶接補修工程」においてコンタクト面6に肉盛りした溶接部を、平面研削盤を用いて新翼製作時の公差±0.1mm内に機械加工する。平面研削盤で加工したコンタクト面6の確認は、図13(b),(c)に示すようにデプスゲージ14を用いて計測加工治具9の計測基準15から腹側及び背側の各コンタクト面までの距離を計測することで行なう。変形修正工程S21によって、実機にガスタービン動翼が組み込まれて運転された際に図3に示すように翼同士がコンタクト面6のみで設計通り接触するように修正され、安全な実機運用に期することが可能となった。
【0086】
その他の工程である溶接補修工程S17、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16については、第1の実施形態で述べた通りである。
【0087】
(第9の実施形態)
図14は、本発明に係る原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法における第9の実施形態の工程の流れを示している。第9の実施形態の構成としては、次の5つの工程からなっている。すなわち、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16、変形修正工程S21、コーティング施工工程S22である。
【0088】
工程の流れとして重要なのは、変形修正工程S21の後にコーティング施工工程S22を行うことである。
【0089】
コーティング施工工程S22は図17に示したガスタービン動翼1の翼有効部3に耐食コーティング、図3に示したチップシュラウド部コンタクト面6に耐摩耗コーティングを施工する工程である。これらの施工は粉末状のコーティング材を対象部位に溶射することで実施される。この工程によって耐食・耐摩耗性能が向上し、実機組込み後の運転において安全な実機運用が可能となった。
【0090】
その他の工程である回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16については、第1の実施形態に述べた通りであり、また変形修正工程S21については第8の実施形態で述べた通りである。
【0091】
(第10の実施形態)
図15は、本発明に係る原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法における第10の実施形態の工程の流れを示している。第10の実施形態の構成としては、次の7つの工程からなっている。すなわち、回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16、変形修正工程S21、実機組込み配列計算工程S23、実機組込み後のチップシュラウド部取り合い間隙計測工程S24、取り合い部調整・予備翼交換工程S25である。
【0092】
工程の流れとして重要なのは、変形修正工程S21という工程の後に実機組込み配列計算工程S23、実機組込み後のチップシュラウド部間隙計測工程S24、取り合い部調整・予備翼交換工程S25を行うことである。
【0093】
実機組込み配列計算工程S23は、一連の回復処理を施工してきたガスタービン動翼1の例えば92本全てののモーメント重量に基づいて、実機に組み込んだ際にアンバランス量が最小になる配列を計算する工程である。この工程によってガスタービンローターの回転バランス試験を効率良く実施することができ、バランスウエイトを最小限に抑えることが可能となった。
【0094】
実機組込み後のチップシュラウド部間隙計測工程S24は、前記の工程で決った配列に基づいてガスタービン動翼を実機に組み込んだ際に、隣接翼のチップシュラウド部で形成される図3に示すコンタクト面6及び非コンタクト面7の間隙寸法を計測する工程である。
【0095】
具体的には、非コンタクト面における間隙寸法はコンタクト面6を隣接翼同士で接触させて計測する。またコンタクト面における間隙寸法は、組込んだ翼全体のガタツキがなくなるまで非コンタクト面に等間隔にシムを挿入し、その総シム量を計測する。この工程によって計測された値に基づいて、後工程の間隙調整・予備翼交換工程S25を実施することが可能となった。
【0096】
間隙調整・予備翼交換工程S25は、前工程で計測した間隙寸法に基づいて行われる以下のような工程である。先ず非コンタクト面については、設計許容値を確保するようにグラインダーを用いてチップシュラウド部の非コンタクト面を削る工程である。
【0097】
ここで用いる設計許容値としては、運転時に遠心力と熱伸びで非コンタクト面が接触しないように下限値のみを設定する。一方、コンタクト面の間隙寸法の設計許容値には上・下限値があり、下限値未満の場合はグラインダーでコンタクト面を削る工程と、上限値を超えた場合には予備翼と交換する工程となる。このときの予備翼は交換対象の翼と同程度のモーメント重量であるものを選択する。この工程によって回復熱処理工程S14を施したガスタービン動翼の最終調整が終了し、実機に組み込んだこの状態が真に再使用可能な状態となり得るに到り、実機運転後の安全な運用が可能となった。
【0098】
その他の工程である回復熱処理工程S14、溶体化熱処理工程S15、時効熱処理工程S16については第1の実施形態で述べた通りであり、また変形修正工程S21については第8の実施形態で通りである。
【0099】
(変形例)
本発明は、前述した実施形態に限定されず、例えば次のように変形して実施できる。図1、図6、図7、図8、図9、図11、図12、図14、図15の実施形態で記載されている高圧下で熱処理を施す回復熱処理工程S14と、非加圧下で熱処理を施す溶体化熱処理工程S15及び時効熱処理工程S16を順次実施する代りに、図5の実施形態の高圧下で熱処理を行う際に毎分40℃以上で冷却する回復処理工程14Aと、非加圧下で熱処理を施す時効熱処理工程S16を順次実施するようにしてもよい。
【0100】
また、図6の実施形態を、必要に応じて他の実施形態に組み合わせるようにしてもよい。
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、次のような従来の技術の課題を解決することができる。すなわち、従来の技術では、特に変形を計測・修正する工程、機能上の欠陥を検査・除去する工程や個々の部品が材料劣化・損傷回復した後の実機組込み状態における実機全体としての調整工程がなかったために、回復処理を施した部品が真に再使用可能かどうか判断できなかった。
【0102】
これに対して、本発明によれば、回復熱処理工程によって材料劣化・損傷の回復された全ての原動機部品について、検査工程から実機組込み工程までの必要十分な工程を提供することによって、最終的に材料劣化・損傷回復した部品を組み込んだ実機を安全に運用することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る材料劣化・損傷回復処理方法における第1の実施形態の工程の流れを示した図。
【図2】ガスタービン動翼の変形計測方法の一実施形態を示した図。
【図3】ガスタービン動翼を実機に組み込んで運転した際の隣接するチップシュラウド部の状態を示した図。
【図4】ガスタービン動翼の冷却空気孔とそれを閉塞する異物の状況を示した図。
【図5】本発明に係る材料劣化・損傷回復処理方法における第2の実施形態の工程の流れを示した図。
【図6】本発明に係る材料劣化・損傷回復処理方法における第3の実施形態の工程の流れを示した図。
【図7】本発明に係る材料劣化・損傷回復処理方法における第4の実施形態の工程の流れを示した図。
【図8】本発明に係る材料劣化・損傷回復処理方法における第5の実施形態の工程の流れを示した図。
【図9】本発明に係る材料劣化・損傷回復処理方法における第6の実施形態の工程の流れを示した図。
【図10】第6の実施形態の作用を説明するためのガスタービン動翼チップシュラウド部の高応力部とそれを応力低減した状態を示した図。
【図11】本発明に係る材料劣化・損傷回復処理方法における第7の実施形態の工程の流れを示した図。
【図12】本発明に係る材料劣化・損傷回復処理方法における第8の実施形態の工程の流れを示した図。
【図13】第8の実施形態の作用を説明するためのガスタービン動翼の変形修正の一実施形態を示した図。
【図14】本発明に係る材料劣化・損傷回復処理方法における第9の実施形態の工程の流れを示した図。
【図15】本発明に係る材料劣化・損傷回復処理方法における第10の実施形態の工程の流れを示した図。
【図16】従来の技術における材料劣化・損傷回復処理方法の一例を示す工程の流れ図。
【図17】図16の問題点を説明するための原動機部品の一例であるガスタービン動翼を示す図。
【符号の説明】
S10,S30…変形計測工程
S11,S31…表面損傷・欠陥検査工程
S12,S32…機能上の欠陥検査工程
S13…コーティング除去工程
S14,S14A…回復熱処理工程
S15…溶体化熱処理工程
S16…時効熱処理工程
S17…溶接補修工程
S18…表面損傷・欠陥修理工程
S19…応力低減化処置工程
S20…機能上の欠陥除去工程
S21…変形修正工程
S22…コーティング施工工程
S23…実機組込み配列計算工程
S24…実機組込み後のチップシュラウド部間隙計測工程
S25…チップシュラウド部間隙調整・予備翼交換工程

Claims (4)

  1. 析出強化型の合金により構成され、高温下の使用により材料の劣化または損傷が生じた原動機部品に対し、高圧下で熱処理を施す回復熱処理工程と、非加圧下で熱処理を施す溶体化熱処理工程及び時効熱処理工程を順次実施するか、又は高圧下で熱処理を行う際に毎分40℃以上で冷却する回復処理工程と、非加圧下で熱処理を施す時効熱処理工程を順次実施する原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法において、
    前記回復熱処理工程の前に、前記原動機部品が設計条件を満たすか否かの変形を計測する変形計測工程と、
    を含む方法であって、
    前記変形計測工程は、前記原動機部品であるガスタービン動翼のチップシュラウド側とは反対側の端部を水平となるように治具本体により支持固定し、この状態で該チップシュラウド側を、該チップシュラウドと類似した形状に刳り貫いたチップシュラウド計測孔を有する板ゲージを水平方向にスライドさせて該チップシュラウドに該チップシュラウド計測孔を挿通させ、この該チップシュラウド計測孔と前記チップシュラウドのすきまを、スキミゲージにより計測することである原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法。
  2. 析出強化型の合金により構成され、高温下の使用により材料の劣化または損傷が生じた原動機部品に対し、高圧下で熱処理を施す回復熱処理工程と、非加圧下で熱処理を施す溶体化熱処理工程及び時効熱処理工程を順次実施するか、又は高圧下で熱処理を行う際に毎分40℃以上で冷却する回復処理工程と、非加圧下で熱処理を施す時効熱処理工程を順次実施する原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法において、
    前記回復熱処理工程の前に、前記原動機部品が設計条件を満たすか否かの変形を計測する変形計測工程と、
    前記変形計測工程で計測された原動機部品の表面損傷・欠陥を検査する表面損傷・欠陥検査工程と、
    前記表面損傷・欠陥検査工程で検査された原動機部品の機能上の欠陥を検査する機能上の欠陥検査工程と、
    前記機能上の欠陥検査工程の後に、該検査した該原動機部品の機能上の欠陥を除去する機能上の欠陥除去工程を含む方法であって、
    前記機能上の欠陥検査工程は、前記原動機部品であるガスタービン動翼の運転中に自分自身を冷却するための冷却空気孔の詰まりを流体を該冷却空気孔に流すことにより検査することであり、
    前記機能上の欠陥除去工程は、前記原動機部品としてガスタービン動翼の場合には、該冷却空気孔に線状部材を挿通又は該冷却空気孔に高圧流体を噴射することである原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法。
  3. 析出強化型の合金により構成され、高温下の使用により材料の劣化または損傷が生じた原動機部品に対し、高圧下で熱処理を施す回復熱処理工程と、非加圧下で熱処理を施す溶体化熱処理工程及び時効熱処理工程を順次実施するか、又は高圧下で熱処理を行う際に毎分40℃以上で冷却する回復処理工程と、非加圧下で熱処理を施す時効熱処理工程を順次実施する原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法において、
    前記回復熱処理工程の前に、前記原動機部品が設計条件を満たすか否かの変形を計測する変形計測工程と、
    前記原動機部品に施工されているコーティング層を除去するコーティング除去工程と、
    前記時効熱処理工程後に前記原動機部品に対し、設計条件を満たすように変形を修正する変形修正工程と、
    前記変形修正工程の後に、前記原動機部品におけるコーティングすべき部分に酸化及び腐食を防止するためのコーティング層、ガスタービン動翼の植込み部にガタ防止のためのコーティング層を施工するコーティング施工工程と、
    を含む原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法。
  4. 析出強化型の合金により構成され、高温下の使用により材料の劣化または損傷が生じた原動機部品に対し、高圧下で熱処理を施す回復熱処理工程と、非加圧下で熱処理を施す溶体化熱処理工程及び時効熱処理工程を順次実施するか、又は高圧下で熱処理を行う際に毎分40℃以上で冷却する回復処理工程と、非加圧下で熱処理を施す時効熱処理工程を順次実施する原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法において、
    前記回復熱処理工程の前に、前記原動機部品が設計条件を満たすか否かの変形を計測する変形計測工程と、
    前記原動機部品に対してコンタクト面に溶接部を肉盛りする溶接補修工程と、
    前記時効熱処理工程後に前記原動機部品に対し、前記溶接補修工程で前記コンタクト面に肉盛りされた溶接部を機械加工する変形修正工程を更に含む原動機部品の材料劣化・損傷回復処理方法。
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