JP3905504B2 - 昇降用直線作動機 - Google Patents

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本発明は、搬送装置の仕分け機構等の昇降装置や精密機械の昇降アクチュエータ等として使用される、電動モータの回転により昇降用ロッドを上下移動させて直線運動を行う昇降用直線作動機に関するものである。
従来より直線作動機として、ねじ軸と、ねじ軸に噛み合ったナットと、ナットに取り付けられたロッドと、ねじ軸を正逆回転する電動モータとを備えた直線作動機が知られている。
この直線作動機は、電動モータの電源をONにすると、電磁ブレーキが解放されると共に電動モータが正逆いずれかの方向に回転し、減速機を介してねじ軸が回転し、そのねじ軸に噛み合ったナットが移動し、このナットに取り付けられたロッドが伸縮する。
そして、ロッドが停止位置に到達したことをリミットスイッチやエンコーダ等の位置検出器で検出し、電動モータの電源をOFFすることで、ロッドの移動を停止させ、そして、電磁ブレーキを働かせて、ロッドをその位置に維持させるものである(例えば、特許文献1参照)。
特許第2951282号公報
上述したような従来の直線作動機を高速運転させる場合には、ねじ軸とナットの噛み合わせに代えて、雄ねじと雌ねじの溝を対向させ、つる巻き状の溝に鋼球を入れた、いわゆる“ボールねじ”を用いることが、摩擦を小さくできるため適しているが、その場合には、逆転を防止するための電磁ブレーキが必要になる。
また、高速運転時になると、電磁ブレーキ使用時の惰行距離が長くなり、そのバラツキも大きくなるので、直線作動機内部での衝突が発生したり、オーバーランで外部装置が破損する懸念がある。
さらに、高頻度運転・急加速急減速運転により、電磁ブレーキのライニングが摩耗したり、装置へ衝撃が加わったりして、ライニング取り替えやギャップ調整等のメンテナンスが必要になる等の課題があった。
しかも、ロッドを手動で動作させるためには、電磁ブレーキに手動解放機構を取り付ける必要があり、複雑で高価な機構になっていた。
そこで、本発明の目的は、電磁ブレーキが不要で昇降用ロッドを上昇させた状態で静止して安定した荷重保持が実現でき、長寿命であり、動作時の機械的衝撃が小さく、昇降用ロッドの手動動作も可能である昇降用直線作動機を提供することにある。
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、上下移動する昇降用ロッドと、該昇降用ロッドに連結されたスライド板と、該スライド板に開口した案内窓の内側に遊嵌するとともにモータの出力軸に連結された偏心軸と、前記スライド板の移動を制止させるストッパ機構とを備え、前記偏心軸の回転によって、前記スライド板が少なくとも最下位安定位置と最上昇安定位置と該最上昇安定位置を越えた強制制止位置との間で上下動する昇降用直線作動機であって、前記スライド板と偏心軸との接触摩擦により前記昇降用ロッドの上昇状態を維持可能なスライド板の上昇準安定位置が、前記最上昇安定位置と強制制止位置との間に設けられているとともに、前記ストッパ機構が、前記スライド板の強制制止位置に設けられている。
請求項2に係る昇降用直線作動機は、請求項1に記載した昇降用直線作動機の構成に加えて、案内窓の上辺部に、偏心軸に働く回転モーメントによって偏心軸の外周面と係合する曲面を形成している。
請求項1に係る発明は、上下移動する昇降用ロッドと、該昇降用ロッドに連結されたスライド板と、該スライド板に開口した案内窓の内側に遊嵌するとともにモータの出力軸に連結された偏心軸と、前記スライド板の移動を制止させるストッパ機構とを備え、前記偏心軸の回転によって、前記スライド板が少なくとも最下位安定位置と最上昇安定位置と該最上昇安定位置を越えた強制制止位置との間で上下動する昇降用直線作動機であって、前記スライド板と偏心軸との接触摩擦により前記昇降用ロッドの上昇状態を維持可能なスライド板の上昇準安定位置が、前記最上昇安定位置と強制制止位置との間に設けられているとともに、前記ストッパ機構が、前記スライド板の強制制止位置に設けられているため、電磁ブレーキを要することなく、昇降用ロッドを上昇させた状態で静止して安定した荷重保持を実現することが可能であり、動作時における機械的衝撃が少なく、長寿命である。
請求項2に係る昇降用直線作動機は、請求項1に記載した昇降用直線作動機が奏する効果に加えて、案内窓の上辺部に、偏心軸に働く回転モーメントによって偏心軸の外周面と係合する曲面が形成されているため、昇降用ロッドを上昇させた状態で、より安定して静止させることが可能になる。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による昇降用直線作動機の構造を示すためにハウジングの一部を除去した状態で示した平面図であり、図2は、図1に示した昇降用直線作動機を軸方向から見た時の平面図である。ここで示した昇降用直線作動機は、昇降用ロッドが突出して上昇した状態を示している。図3及び図4は、昇降用ロッドが降下した状態における昇降用直線作動機の平面図を示している。
本発明の一実施例である昇降用直線作動機1は、図1に示すように、モータ2の出力軸4に偏心軸3が連結されている。この偏心軸3は、例えば、鋼等でできた円柱形状をしており、円周側面に近接した位置にモータ2の出力軸4が貫通している。
そして、出力軸4の先端部は、偏心軸3から突出しており、この突出部がベアリング5によって昇降用直線作動機1のハウジング10に回転自在に保持されている。
また、偏心軸3の中心軸に対して出力軸4の貫通する位置と対象の位置に、ストッパボルト6が螺設されている。
この偏心軸3は、スライド板7に開口した長円形の案内窓7aの内側に遊嵌している。
また、これらの偏心軸3と案内窓7aの間には、摩擦を低減するためのベアリング8を有している。
スライド板7は、図2に示すように、左右の両端をハウジング10に設けられた溝9に係合し、上下方向に摺動可能に支持されており、偏心軸3の回転により、上下方向に移動する。
このスライド板7に昇降用ロッド11が連結されており、スライド板7の上下移動により、昇降用ロッド11のハウジング10からの突出長が上下方向で変化する。
すなわち、昇降用ロッド11のストローク(突出長の変化量)は、偏心軸3の短径R1と長径R2の差によって決定される。
次に図5乃至図7に基づき本発明の昇降用直線作動機の動作について説明する。
図5(a)は、モータ2が停止しており、昇降用ロッド11が降下している状態を示している。
モータ2には、電磁ブレーキなどの負荷保持機構が備わっていないため、偏心軸3は、昇降用ロッド11が最下位に降下した状態(重力安定点)となるスライド板7の最下位安定位置で静止する。
次に、モータ2に給電すると、偏心軸3が回転し、それに伴い昇降用ロッド11が上昇する。
モータ2は、ACサーボモータやステッピングモータ等の位置制御が可能なものが使用され、モータ2に給電すると180度回転して停止する(図5(b))。
この最上昇安定位置では、昇降用ロッド11に加わる荷重方向が偏心軸3の回転軸中心を通るため、回転モーメントが発生せずに昇降用ロッド11の突出した上昇状態が維持される(安定点)。
モータ停止中に外部の振動などで、偏心軸3の回転角度が180度から外れると、偏心軸3に回転モーメントが発生し、偏心軸3は、重力安定点の状態となるスライド板7の最下位安定位置に戻るために、昇降用ロッド11が、最上昇安定位置から降下する。
しかしながら、実際には、偏心軸3と昇降用ロッド11に連結されたスライド板7との接触面に生じる摩擦力と回転モーメントがバランスするため、図6(a)、(b)のように、回転角度が180度±αの範囲である場合、昇降用ロッド11は、上昇準安定位置から降下することなく突出した上昇状態を維持する(準安定点)。
昇降用ロッド11の上昇状態を維持することができる限界の角度、即ち、ストラット角度αは、昇降用ロッド11に連結されたスライド板7と偏心軸3の接触部における摩擦係数μによって異なる。
摩擦係数μを大きくすることにより、ストラット角度αを大きくすることができるが、それに伴い、モータ2への負荷が大きくなり、摩擦による熱の発生も大きくなる。
偏心軸3の回転角度が180度+αを僅かに越えた場合、要するに、偏心軸3の回転によって、昇降用ロッド11に加わる荷重方向が偏心軸3の回転軸中心を通るスライド板7の最上昇安定位置から、昇降用ロッド11の突出した上昇状態が偏心軸3との接触摩擦により維持可能なスライド板7の上昇準安定位置を越えてスライド板7を移動降下させた強制制止位置に、偏心軸3の回転を強制的に制止するストッパ12が設けられている。
すなわち、図7に示すように、偏心軸3の回転角度が180度+αを越えて180度+β(強制安定角度)となった場合、ストッパボルト6が、ストッパ12に接触するため、スライド板7の強制制止位置で偏心軸3のそれ以上の回転が制止される(強制安定点)。
したがって、本発明に使用するモータ2は、位置決め精度に高い精度を必要とせず、バラツキがある場合でも動作可能である。
しかも、昇降用ロッド11の上昇時における偏心軸3の回転角度を180度+α近傍、即ち180度以上に設定しておくことにより、モータ停止時に振動等で偏心軸3が回転し、回転角度が180度+αを越えたとしても、ストッパ12により回転が制止されるため、偏心軸3が重力安定点の状態に戻ることなく、安定した荷重保持が実現できる。
昇降用ロッド11が上昇して荷重保持状態にある昇降用直線作動機を、降下させる場合には、モータを逆転させ、偏心軸3の回転角度が180度−α以下にすることにより、重力安定点の状態となる最下位に戻すことができる。
また、本発明の昇降用直線作動機には、電磁ブレーキのようなブレーキ機構がないため、回転軸を手動で回すことにより、昇降用ロッド11の昇降を行うことができる。
次に、本発明の別の実施の形態について図8に基づいて説明する。図8は、本発明の別の実施の形態である昇降用直線作動機の概念を示す概念図である。
この昇降用直線作動機においては、スライド板7に開口した案内窓7aの形状以外は、上述した実施例と同じであるので、詳述は省略する。
この昇降用直線作動機のスライド板7に開口した案内窓7aには、その上辺部に偏心軸3の外周の形状と係合する円弧7bが形成されている。そのため、偏心軸3の回転角度が、図8(a)のように、180度±αである準安定状態となる上昇準安定位置にある場合に、偏心軸3に回転モーメントが働き、偏心軸3は、常に安定点を維持する(図8(b))。
したがって、ストッパ機構に過大な負荷を掛けることなく、安定した上昇状態が保たれ、一層、安定した荷重保持が可能になる。
なお、上述した実施例においては、モータとしてACサーボモータやステッピングモータ等の位置制御が可能なものを使用して、回転角度が略180度までの間で正転・逆転できるように制御しているが、出力軸4にリミットスイッチやエンコーダなどの位置検出装置を取り付け、その出力信号により、偏心軸3の回転角度を検出し、モータ2を停止させることもできる。
本発明における昇降用直線作動機は、モータ2の回転運動を偏心軸3によって昇降用ロッド11の上下運動に変えているため、昇降用ロッド11を昇降させた場合、昇降用ロッド11の下降状態(偏心軸3の回転角度が0度)及び上昇状態(偏心軸3の回転角度が180度)において最もロッド速度が小さくなる。
そのため、昇降用ロッド11の昇降時における惰行距離が小さくなり、また、機械的衝撃も低減され、静粛で安定した昇降用ロッド11の昇降が可能になる。
さらに、部品点数が少なく装置構成が簡単であるため安価に製造することができ、高速度動作が可能であるため、搬送コンベアの仕分け機構等、様々な用途への応用が期待できる。
本発明の昇降用直線作動機における昇降用ロッドの上昇時を示す一部破断した平面図。 図1に示した昇降用直線作動機を軸方向から見た時の平面図。 本発明の昇降用直線作動機における昇降用ロッドの下降時を示す一部破断した平面図。 図3に示した昇降用直線作動機を軸方向から見た時の平面図。 本発明の昇降用直線作動機の動作を説明する図。 本発明の昇降用直線作動機の準安定点を説明する図。 本発明の昇降用直線作動機の強制安定点を説明する図。 本発明の昇降用直線作動機の別の実施の形態を説明する図。
符号の説明
1 ・・・ 昇降用直線作動機
2 ・・・ モータ
3 ・・・ 偏心軸
4 ・・・ 出力軸
5 ・・・ ベアリング
6 ・・・ ストッパボルト
7 ・・・ スライド板
8 ・・・ ベアリング
9 ・・・ 溝
10 ・・・ ハウジング
11 ・・・ 昇降用ロッド
12 ・・・ ストッパ
α ・・・ ストラット角度
β ・・・ 強制安定角度

Claims (2)

  1. 上下移動する昇降用ロッドと、該昇降用ロッドに連結されたスライド板と、該スライド板に開口した案内窓の内側に遊嵌するとともにモータの出力軸に連結された偏心軸と、前記スライド板の移動を制止させるストッパ機構とを備え、前記偏心軸の回転によって、前記スライド板が少なくとも最下位安定位置と最上昇安定位置と該最上昇安定位置を越えた強制制止位置との間で上下動する昇降用直線作動機であって、
    前記スライド板と偏心軸との接触摩擦により前記昇降用ロッドの上昇状態を維持可能なスライド板の上昇準安定位置が、前記最上昇安定位置と強制制止位置との間に設けられているとともに、
    前記ストッパ機構が、前記スライド板の強制制止位置に設けられていることを特徴とする昇降用直線作動機。
  2. 前記案内窓の上辺部に、前記偏心軸に働く回転モーメントによって偏心軸の外周面と係合する曲面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載された昇降用直線作動機。
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