JP3904719B2 - サブバンド合成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サブバンドサンプルのサブバンド合成処理を行うための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、様々なオーディオ信号圧縮符号化の規格が提案されている。例えばDVD規格においては、オーディオ信号圧縮符号化の規格として、MPEGオーディオとドルビーデジタル(Dolby Digital:AC-3:ドルビーは登録商標)が採用されている。このため、DVD装置用のオーディオデコーダは、MPEGオーディオとドルビーデジタルの双方に対して復号可能に構成されていた。
【0003】
MPEGオーディオはサブバンド合成処理が行われている。サブバンド合成処理とは、人間の聴覚特性を上手に利用して人間の耳には雑音として聞こえない程度の量子化雑音を積極的に導入することによって符号の量を減少させるもので、オーディオ信号を圧縮符号化する際に、オーディオ信号をいくつかの小さな帯域(サブバンド)に分割して、各帯域ごとに符号を生成し、さらに、復号時にはいくつかの帯域に分割されたオーディオ信号を合成して元の帯域に戻す一連の処理のことである。一方、ドルビーオーディオでは、IMDCT(インバース・モディファイド・ディスクリート・サイン・トランスフォーム)が行われる。
【0004】
このように、この双方の復号アルゴリムは相当異なっているため、従来ではMPEGオーディオ用のデコードとドルビーデジタル用のデコーダとが別個の装置として実現されていた。
【0005】
したがって、MPEGオーディオのサブバンド合成処理における行列演算の出力Vn を求める際の演算に工夫を施して少しでも演算量を低減して装置規模を小さくすることが提案されていた。この種の提案は例えば特開平7−210196号公報等の文献に記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この特開平7−210196号公報記載の技術によれば、演算回数の低減に関しては非常に優れているものの、離散余弦変換を行わなければならないため、離散余弦変換の複雑なアルゴリズムにしたがった演算を行わなければならなかった。
【0007】
そのため、装置規模が依然として大きなものとなっていたという問題があった。したがって、例えばMPEGオーディオとドルビーデジタルとのデコード処理に対する共用部分を見つけ出して、演算処理の共用による装置規模の低減化を図ることが望まれていた。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、演算アルゴリズムの単純化を図りMPEGオーディオのサブバンド合成処理を行う手段を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、MPEGオーディオのサブバンド合成処理を他方式でのサブバンド合成処理と共用可能にする手段を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し本発明の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、MPEGオーディオのサブバンドサンプルのサブバンド合成処理と、ドルビーデジタルのサブバンドサンプルのサブバンド合成処理と、を行うための装置であって、
前記MPEGオーディオのサブバンドサンプルの実数列を逆フーリエ変換用の複素数列に変換するMPEGオーディオ前処理部と、
前記ドルビーデジタルのサブバンドサンプルの実数列を逆フーリエ変換用の複素数列に変換するドルビーデジタル前処理部と、
前記MPEGオーディオ前処理部で変換された複素数列及び前記ドルビーデジタル前処理部で変換された複素数列を逆高速フーリエ変換する逆フーリエ変換部と、
前記逆高速フーリエ変換の結果から前記MPEGオーディオのサブバンドサンプルのサブバンド合成処理における行列演算の出力を算出するMPEGオーディオ後処理部と、
前記逆高速フーリエ変換の結果に余弦関数を乗じて実数とするドルビーデジタル後処理部と、
を備え
前記逆フーリエ変換部は、前記ドルビーデジタル前処理部で変換された複素数列に対してバタフライ演算を行うバタフライ演算部と、前記MPEGオーディオ前処理部で変換された複素数列と前記バタフライ演算部の出力との両方に対して逆高速フーリエ変換する共用逆フーリエ変換部と、を備え、
前記MPEGオーディオ前処理部で変換された複素数列をさらに前記共用逆フーリエ変換部で処理した結果が前記MPEGオーディオ後処理部に入力され、
前記バタフライ演算部の出力をさらに前記共用逆フーリエ変換部で処理した結果が前記ドルビーデジタル後処理部に入力されるようになっていることを特徴とするサブバンド合成装置である。
【0011】
上記課題を解決し本発明の目的を達成するために、請求項2に係る発明は、MPEGオーディオのサブバンドサンプルのサブバンド合成処理と、ドルビーデジタルのサブバンドサンプルのサブバンド合成処理と、を行うための装置であって、
前記MPEGオーディオのサブバンドサンプルの実数列を逆フーリエ変換用の複素数列に変換するMPEGオーディオ前処理部と、
前記ドルビーデジタルのサブバンドサンプルの実数列を逆フーリエ変換用の複素数列に変換するドルビーデジタル前処理部と、
前記MPEGオーディオ前処理部で変換された複素数列及び前記ドルビーデジタル前処理部で変換された複素数列を逆高速フーリエ変換する逆フーリエ変換部と、
前記逆高速フーリエ変換の結果から前記MPEGオーディオのサブバンドサンプルのサブバンド合成処理における行列演算の出力を算出するMPEGオーディオ後処理部と、
前記逆高速フーリエ変換の結果に余弦関数を乗じて実数とするドルビーデジタル後処理部と、
を備え、
前記逆フーリエ変換部は、前記MPEGオーディオ前処理部で変換された複素数列及び前記ドルビーデジタル前処理部で変換された複素数列との両方に対して逆高速フーリエ変換する共用逆フーリエ変換部と、前記ドルビーデジタル前処理部で変換された複素数列をさらに前記共用逆フーリエ変換部で逆高速フーリエ変換したものに対してバタフライ演算を行うバタフライ演算部と、を備え、
前記MPEGオーディオ前処理部で変換された複素数列をさらに前記共用逆フーリエ変換部で処理した結果が前記MPEGオーディオ後処理部に入力され、
前記バタフライ演算部の出力が前記ドルビーデジタル後処理部に入力されるようになっていることを特徴とするサブバンド合成装置である。
請求項1、2に係る発明によれば、二つの処理部がサブバンドサンプルの実数列を逆フーリエ変換用の複素数列に変換すると共に、MPEGオーディオ後処理部が逆フーリエ変換部による逆高速フーリエ変換の結果からMPEGオーディオのサブバンドサンプルのサブバンド合成処理における行列演算の出力を算出し、ドルビーデジタル後処理部が逆高速フーリエ変換の結果に余弦関数を乗じて実数とするので、MPEGオーディオのサブバンド合成処理の演算アルゴリズムが単純になり、しかもこの逆フーリエ変換部をドルビーデジタルのサブバンドサンプルに対するものとして利用できる。
【0012】
また、請求項に係る発明は、請求項1又は2において、前記バタフライ演算部は、128点又は64点の入力を高速逆フーリエ変換用の32点の出力に変換する演算を行うようになっており、前記共用逆フーリエ変換部は、32点の入力に対して逆高速フーリエ変換を行うようになっていることを特徴とする。
【0015】
さらに、請求項4に係る発明は、請求項1、2および3のいずれかにおいて、前記MPEGオーディオ後処理部は、前記行列演算の算出を定位置計算で行うことを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、後処理部が定位置計算を行うので装置規模を小さくすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明のサブバンド合成のアルゴリズムについて説明し、その後、具体的な装置構成やその動作について説明する。
【0020】
さて、MPEGオーディオのサブバンド合成処理は次式(1)で示される行列演算(Matrixing)を行うことである。
【0021】
【数3】
Figure 0003904719
【0022】
ここで、Sk は、圧縮符号化されたオーディオ信号より得られる値で、サブバンド分割された各帯域のオーディオ信号(サブバンドサンプル)、Vn は行列演算の出力結果であり、実際には、このVn に対して窓掛け処理(Windowing )を行うことによって元のオーディオ信号が得られる。
【0023】
この式において、余弦関数の中身を展開する。まず、加法定理を用いて(2k+1)を展開する次式(2)となる。
【0024】
【数4】
Figure 0003904719
【0025】
次に、(16+n)・2kπを含む項に対して、さらに、(16+n)を展開して(2πnk/64)を含む項を生成するように変形すると、次式(3)が得られる。
【0026】
【数5】
Figure 0003904719
【0027】
式(3)より、行列演算の式は次式(4)となる。
【0028】
【数6】
Figure 0003904719
【0029】
ここで、次式(5)のような新たな行列を導入する。
【0030】
【数7】
Figure 0003904719
【0031】
このS1k 、S2k を用いると式(4)は次式(6)のように変形される。
【0032】
【数8】
Figure 0003904719
【0033】
したがって、Vn を求めるためには、次式(7)〜(10)の値を求める必要がある。
【0034】
【数9】
Figure 0003904719
【0035】
【数10】
Figure 0003904719
【0036】
【数11】
Figure 0003904719
【0037】
【数12】
Figure 0003904719
【0038】
ところで、一般にxn のフーリエ変換をXk とすると、64点逆フーリエ変換の定義式は次式(11)で与えられることが知られている。
【0039】
【数13】
Figure 0003904719
【0040】
この式(11)と、S1k 、S2k が実数であることにより、式(7)〜(10)は夫々、S1k 、S2k の64点逆フーリエ変換により求めることができる。即ち、S1k の逆フーリエ変換の実数部がU1rn 、虚数部がU1in 、また、S2k の逆フーリエ変換の実数部がU2rn 、虚数部がU2in となる。
【0041】
式(11)によれば、Xk としては64個のデータが必要であるが、実際にはサブバンドサンプルは32個しかないため、S1k 、S2k を生成する際には32成分ではなく、64成分として後半の32個分に値「0」を埋め込む必要がある。
【0042】
ところで、三角関数の性質より次式(12)、(13)が成立する。
【0043】
【数14】
Figure 0003904719
【0044】
【数15】
Figure 0003904719
【0045】
これらによれば、S1k の奇数成分は全て「0」、S2k の偶数成分は全て「0」である。そこで、このような数列の逆フーリエ変換は次式(14)の公式を適用できることが知られている。
【0046】
【数16】
Figure 0003904719
【0047】
この式は2N点の逆フーリエ変換を、2回のN点の逆フーリエ変換で置き換えるための公式である。ところで、交互に「0」が現れる数列の場合には、式(14)の右辺のいずれかのシグマ計算を行わなくてもよくなるため、逆フーリエ変換の点数が半分になり演算速度の向上や装置の小型化が図れることになる。したがって、U1rn 、U1in 、U2rn 、U2in を求めるためには64点の半分の32点の逆フーリエ変換を行えば良いことになる。このことだけでも、フーリエ変換の演算量が何も工夫しないのに比べて半分程度にまで削減される。
【0048】
さて、このような性質を利用するために、新たに式(15)のような数列を導入する。
【0049】
【数17】
Figure 0003904719
【0050】
t1k 、t2k の32点逆フーリエ変換をT1n ,T2n とすると、式(14)より、T1n ,T2n とU1rn 、U1in 、U2rn 、U2in との関係は、次式(16)〜(19)のようになる。
【0051】
【数18】
Figure 0003904719
【0052】
【数19】
Figure 0003904719
【0053】
【数20】
Figure 0003904719
【0054】
【数21】
Figure 0003904719
【0055】
但し、0≦n<32、t1k 、t2k が実数であるのに対してT1n ,T2n は複素数となる。フーリエ変換、逆フーリエ変換は一般に入力、出力ともに複素数であるため、入力が実数である場合には省略できる計算も多い。ここでは、2種類の実数数列S1k 、S2k を逆フーリエ変換しなければならないが、次のような公式により、2種類の同じ大きさの実数の数列を1つの複素数の数列にまとめて1回の逆フーリエ変換で計算するようにする。
【0056】
2種類のN個の成分を持つ実数数列h(k)、g(k)のフーリエ変換を夫々H(n)、G(n)とする。また、式(20)が成立しているものとする。
【0057】
【数22】
Figure 0003904719
【0058】
一般に、X(n)をx(k)のN点フーリエ変換とすると、フーリエ変換の線形性により、次式(21)が成立する。
【0059】
【数23】
Figure 0003904719
【0060】
このとき、H(n)、G(n)はX(n)のみを用いて、次式(22)、(23)のように表される。
【0061】
【数24】
Figure 0003904719
【0062】
【数25】
Figure 0003904719
【0063】
なお、Re、Imは夫々実数部、虚数部を示す。
この性質を利用するために、さらに式(24)のような数列を導入する。
【0064】
【数26】
Figure 0003904719
【0065】
k ’の32点逆フーリエ変換をsn とすると、式(22)、(23)により、sn とT1n ,T2n の関係は次式(25)のようになる。
【0066】
【数27】
Figure 0003904719
【0067】
以上の計算結果を踏まえると、図1に示すようなアルゴリズムでVn を求めることが可能になる。
まず、ステップS100で、32個の実数成分を持つ数列Sk を式(24)を用いて、32個の複素数成分を持つ数列Sk ’に変換する。
【0068】
ステップS110では、複素数列Sk ’を32点逆フーリエ変換する。ステップS120では、式(25)を用いて、T1n ,T2n を生成する。
また、ステップS130では、式(16)〜(19)を用いて、64個の複素数成分を持つ数列U1rn 、U1in 、U2rn 、U2in を生成する。そして、ステップS140において、式(6)と、式(7)〜(10)より行列演算の出力Vn を計算する。このようにして、行列演算の出力Vn を求めることができる。
【0069】
次に、本発明に係るサブバンド合成装置の構成や動作を説明する。
図2に示す装置は、MPEGオーディオサブバンドを入力し、処理結果を4チャンネル出力するMPEGオーディオ前処理部40と、各チャンネルに応じて設けられた32点IFFT(逆高速フーリエ変換)部60a,60b,60c,60dと、32点IFFT部60a,60b,60c,60dからの出力を入力するMPEGオーディオ後処理部70と、窓掛け処理を行うMPEGオーディオウンドウニング(Windowing )部80とを備え、さらに、ドルビーデジタルサブバンドを入力するドルビーデジタル前処理部10と、前記32点IFFT部60a,60b,60c,60dにその演算結果を出力する128点(64点)バタフライ演算部50と、32点IFFT部60a,60b,60c,60dからの出力を入力するドルビーデジタル後処理部20と、窓掛け処理を行うドルビーデジタルウンドウニング(Windowing )部30とを備える。即ち、32点IFFT部60a,60b,60c,60dは、MPEGオーディオサブバンドとドルビーデジタルサブバンドとに対して共用の逆高速フーリエ変換部となっている。
【0070】
まず、ステップS100に示すように、MPEGオーディオ前処理部40が32個のMPEGオーディオサブバンド(Sk )を入力すると、32個の複素数成分を持つ数列Sk ’に変換する。次に、ステップS110に示すように、32点IFFT部60a,60b,60c,60dは複素数列Sk ’を32点逆高速フーリエ変換する。
【0071】
ステップS120、130、140に示すように、MPEGオーディオ後処理部70は、T1n ,T2n を生成し、64個の複素数成分を持つ数列U1rn 、U1in 、U2rn 、U2in を生成し、行列演算の出力Vn を求める。そして、MPEGオーディオウンドウニング(Windowing )部80は、Vn に対して窓掛け演算を行って音声信号が出力される。
【0072】
一方、ドルビーデジタル前処理部10が256個のドルビーデジタルサブバンドを入力すると夫々に余弦関数を乗じて実数部、虚数部とする128個の複素数データを生成する。次に、128点(64点)バタフライ演算部50のバタフライ演算を行いさらに32点IFFT部60a,60b,60c,60dが逆高速フーリエ変換を行う。そして、ドルビーデジタル後処理部20が逆高速フーリエ変換結果に余弦関数を乗じて実数とし、ドルビーデジタルウンドウニング部30が窓掛け演算を行って音声信号が出力される。このような装置構成によれば、点線部分で囲まれた構成要素を共用しながら、MPEGオーディオおよびドルビーデジタル双方のサブバンド合成処理が可能となる。この結果、装置規模を小さくできてLSI化時にはチップ面積の低減が図れる。
【0073】
図3に示す装置も、図2の装置と同様に、点線で囲まれた構成要素がMPEGオーディオおよびドルビーデジタル双方のサブバンド合成処理時に共用されるようになっている。図2に示すものとの相違点は、ドルビーデジタルのサブバンド合成処理において、32点IFFT部60a,60b,60c,60dが逆高速フーリエ変換を行ってから、128点(64点)バタフライ演算部50のバタフライ演算を行う点に特徴があり、これ以外の相違点はない。したがって、この装置構成によっても、点線部分で囲まれて構成要素を共用しながら、MPEGオーディオおよびドルビーデジタル双方のサブバンド合成処理が可能となる。
【0074】
次に、本発明の他の実施形態であるMPEGオーディオ後処理部70が位相補正を定位置計算で行うことについて説明する。
さて、上述してきた実施形態では、数列Sk から行列演算の出力Vn を求める過程でいくつかの中間データとなる数列を導入したが、この中間データを全て記憶するための記憶エリアを装置内に設ける必要はなく、前ステップから当該ステップに処理が移行する際に生成される中間データは、前ステップで保持していた記憶エリアに新たなデータを上書きすることでよいので、いわゆる定位置計算が可能である。
【0075】
以下では中間データの対称性を利用することにより、64個の半分の32個分の記憶エリアを確保しておけばよくなることを説明する。まず、式(24)を用いて、32個の実数成分を持つ数列Sk から32個の複素数成分を持つ数列Sk ’を生成するステップについて説明する。
【0076】
MPEGオーディオ前処理部40が、数列Sk からSk ’を生成する際には、kが偶数の場合には図4(a)に示すように、またkが奇数の場合には図4(b)に示すように並べる。なお、図中の破線は「−1」を乗じることを意味する。
【0077】
次に、逆高速フーリエ変換を行うステップにおいて、逆フーリエ変換は逆高速逆フーリエ変換を使うことにより定位置計算ができることが良く知られている。次に、式(25)を用いて、32個の複素数成分を持つ数列T1n ,T2n を求めるステップについて説明する。
【0078】
式(25)において、T1n ,T2n の夫々を実数部と虚数部とに分けると、以下の式(26)〜(29)が得られる。
【0079】
【数28】
Figure 0003904719
【0080】
【数29】
Figure 0003904719
【0081】
【数30】
Figure 0003904719
【0082】
【数31】
Figure 0003904719
【0083】
式(26)〜(29)より、「Re(T1n )=Re(T132-n)、Im(T1n )=−Im(T132-n)=0、Im(T10 )=Im(T116)=0、Re(T2n )=Re(T232-n)、Im(T2n )=−Im(T232-n)=0、Im(T20 )=Im(T216)=0」なる性質があるので、T1n ,T2n の実数部については0〜16まで、虚数部については1から15までのみを記憶しさえすれば良い。そこで、式(26)〜(29)を図5に示すようにして実現する。なお、図中の破線は「−1」を乗じることを意味する。
【0084】
MPEGオーディオ後処理部70が、T1n ,T2n を図5に示すように配置することにより、sn が記憶されていた領域に、新たに作成したT1n ,T2n を上書きすることができ、sn からT1n ,T2n を生成する際に定位置計算が可能となる。
【0085】
次に、式(16)〜(19)を用いて、64個の複素数成分を持つ数列U1rn 、U1in 、U2rn 、U2in を生成するステップについて説明する。なお、T1n ,T2n からU1rn 、U1in 、U2rn 、U2in を生成す時には、U1rn 、U1in は夫々T1n の実数部と虚数部のデータそのものであるのでここでは説明を省略する。
【0086】
さて、U2rn 、U2in の対称性は次の式(30)〜(39)のようになる。
【0087】
【数32】
Figure 0003904719
【0088】
【数33】
Figure 0003904719
【0089】
【数34】
Figure 0003904719
【0090】
【数35】
Figure 0003904719
【0091】
【数36】
Figure 0003904719
【0092】
【数37】
Figure 0003904719
【0093】
【数38】
Figure 0003904719
【0094】
【数39】
Figure 0003904719
【0095】
【数40】
Figure 0003904719
【0096】
【数41】
Figure 0003904719
【0097】
U2rn についてはnが0〜15、U2in についてはnが1〜16の成分を記憶しさえすれば、以上の対称性により、nが0〜63の全ての成分の値を把握することができる。したがって、U1rn 、U1in 、U2rn 、U2in を図6のように配置すれば良い。この図のようにU1rn 、U1in 、U2rn 、U2in を配置すると、T1n ,T2n からU1rn 、U1in 、U2rn 、U2in を生成す時には定位置計算ができる。なお、図6において、細い実線はそのままコピー、太い実線は「cos(nπ/64)」を乗じる、一点鎖線は「−sin(nπ/64)」を乗じる、点線は「sin(nπ/64)」を乗じることを意味し、斜線部は、符号が反対であることを意味する。また、図面において複数段の数字の並びは、対称性より導出される成分番号であり、成分番号に斜線を引いたものは符号が反転することを意味する。したがって、一番右端の例では、「U1i1 =−U1i1 31=U1i33=−U1i63」となることを示している。
【0098】
なお、以降の図面において複数段の数字の並びはこのようなことを意味する。次に、式(6)と式(7)、(8)、(9)、(10)より、行列演算の出力Vn を計算するステップについて説明する。図7、8、9、10は夫々、式(6)の第1、2、3、4項の計算を示すものである。図7乃至11においては、細い実線はそのままコピー、太い実線は「cos((n+16)π/64)」を乗じる、一点鎖線は「−sin((n+16)π/64)」を乗じる、太い点線は「sin((n+16)π/64)」を乗じること、細い点線は「−1」を乗じることを意味し、斜線部は、符号が反対であることを意味する。
【0099】
結局、図7〜10に示すものを合成した図11に示すもののようにして行列演算の出力Vn を計算することができるので、Vn を定位置計算することが可能になる。
【0100】
以上説明してきたように、本発明の実施の形態によれば、MPEGオーディオとドルビーデジタルのサブバンド合成装置において、逆高速フーリエ変換部を共用できるため、装置の大きさを小型化することができ、例えばLSI化時にはチップ面積が小さくなる。また、定位置計算も可能であるので、一層、装置の小型化を図ることができる。
【0101】
なお、このような装置はハードウエアとしてLSI化できると共に、CPUがROM等の記憶媒体に記憶されている処理プログラムにしたがった処理を実行するようにしても実現可能である。
【0102】
【発明の効果】
以上説明したように、発明によれば、MPEGオーディオのサブバンド合成処理の演算アルゴリズムを単純化でき、しかも逆フーリエ変換部をドルビーデジタルのサブバンドサンプルに対するものとして利用可能になる装置を実現できる。
【0105】
さらに、請求項4に係る発明によれば、装置規模を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るサブバンド合成処理の説明図である。
【図2】本発明に係る実施形態のサブバンド合成装置のブロック構成図である。
【図3】本発明に係る実施形態の他のサブバンド合成装置のブロック構成図である。
【図4】定位置計算を行うための原理の模試的説明図である。
【図5】定位置計算を行うための原理の模試的説明図である。
【図6】定位置計算を行うための原理の模試的説明図である。
【図7】定位置計算を行うための原理の模試的説明図である。
【図8】定位置計算を行うための原理の模試的説明図である。
【図9】定位置計算を行うための原理の模試的説明図である。
【図10】定位置計算を行うための原理の模試的説明図である。
【図11】定位置計算を行うための原理の模試的説明図である。
【符号の説明】
10 ドルビーデジタル前処理部
20 ドルビーデジタル後処理部
30 ドルビーデジタルウンドウニング
40 MPEGオーディオ前処理部
50 128点(64点)バタフライ演算部
60 a32点IFFT部
60 b32点IFFT部
60 c32点IFFT部
60 d32点IFFT部
70 MPEGオーディオ後処理部
80 MPEGオーディオウンドウニング部

Claims (4)

  1. MPEGオーディオのサブバンドサンプルのサブバンド合成処理と、ドルビーデジタルのサブバンドサンプルのサブバンド合成処理と、を行うための装置であって、
    前記MPEGオーディオのサブバンドサンプルの実数列を逆フーリエ変換用の複素数列に変換するMPEGオーディオ前処理部と、
    前記ドルビーデジタルのサブバンドサンプルの実数列を逆フーリエ変換用の複素数列に変換するドルビーデジタル前処理部と、
    前記MPEGオーディオ前処理部で変換された複素数列及び前記ドルビーデジタル前処理部で変換された複素数列を逆高速フーリエ変換する逆フーリエ変換部と、
    前記逆高速フーリエ変換の結果から前記MPEGオーディオのサブバンドサンプルのサブバンド合成処理における行列演算の出力を算出するMPEGオーディオ後処理部と、
    前記逆高速フーリエ変換の結果に余弦関数を乗じて実数とするドルビーデジタル後処理部と、
    を備え
    前記逆フーリエ変換部は、前記ドルビーデジタル前処理部で変換された複素数列に対してバタフライ演算を行うバタフライ演算部と、前記MPEGオーディオ前処理部で変換された複素数列と前記バタフライ演算部の出力との両方に対して逆高速フーリエ変換する共用逆フーリエ変換部と、を備え、
    前記MPEGオーディオ前処理部で変換された複素数列をさらに前記共用逆フーリエ変換部で処理した結果が前記MPEGオーディオ後処理部に入力され、
    前記バタフライ演算部の出力をさらに前記共用逆フーリエ変換部で処理した結果が前記ドルビーデジタル後処理部に入力されるようになっていることを特徴とするサブバンド合成装置。
  2. MPEGオーディオのサブバンドサンプルのサブバンド合成処理と、ドルビーデジタルのサブバンドサンプルのサブバンド合成処理と、を行うための装置であって、
    前記MPEGオーディオのサブバンドサンプルの実数列を逆フーリエ変換用の複素数列に変換するMPEGオーディオ前処理部と、
    前記ドルビーデジタルのサブバンドサンプルの実数列を逆フーリエ変換用の複素数列に変換するドルビーデジタル前処理部と、
    前記MPEGオーディオ前処理部で変換された複素数列及び前記ドルビーデジタル前処理部で変換された複素数列を逆高速フーリエ変換する逆フーリエ変換部と、
    前記逆高速フーリエ変換の結果から前記MPEGオーディオのサブバンドサンプルのサブバンド合成処理における行列演算の出力を算出するMPEGオーディオ後処理部と、
    前記逆高速フーリエ変換の結果に余弦関数を乗じて実数とするドルビーデジタル後処理部と、
    を備え、
    前記逆フーリエ変換部は、前記MPEGオーディオ前処理部で変換された複素数列及び前記ドルビーデジタル前処理部で変換された複素数列との両方に対して逆高速フーリエ変換する共用逆フーリエ変換部と、前記ドルビーデジタル前処理部で変換された複素数列をさらに前記共用逆フーリエ変換部で逆高速フーリエ変換したものに対してバタフライ演算を行うバタフライ演算部と、を備え
    前記MPEGオーディオ前処理部で変換された複素数列をさらに前記共用逆フーリエ変換部で処理した結果が前記MPEGオーディオ後処理部に入力され、
    前記バタフライ演算部の出力が前記ドルビーデジタル後処理部に入力されるようになっていることを特徴とするサブバンド合成装置。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記バタフライ演算部は、128点又は64点の入力を高速逆フーリエ変換用の32点の出力に変換する演算を行うようになっており、前記共用逆フーリエ変換部は、32点の 入力に対して逆高速フーリエ変換を行うようになっていることを特徴とするサブバンド合成装置。
  4. 請求項1、2および3のいずれかにおいて、
    前記MPEGオーディオ後処理部は、前記行列演算の算出を定位置計算で行うことを特徴とするサブバンド合成装置。
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