JP3902639B2 - 掛止具付きの吊持装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、とくに重量物を吊持するのに好適な掛止具を備えている吊持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フックなどの掛止具を備えている吊持装置は、実用新案登録第2585462号公報、実公平7−52404号公報、実開平6−84965号公報等に公知である。いずれも、ワイヤーで吊り下げ支持されるボールチャック機構とフックとを備えている。実開平6−84965号公報の吊持装置においては、フックの上部内面にボールチャック機構が組み込んであり、フックに吊り掛けた吊持対象が抜け落ちるのを防ぐために、フック開口に抜止具が設けてある。実公平7−52404号公報の吊持装置においては、ボールチャック機構のケースとは別の部品で形成したフックを、ケースに対してねじ込み連結できるようにしている。いずれも額、陳列商品、インテリア構造体など比較的軽量の吊持対象を吊持するために使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の釣り針状に湾曲形成したフックは、比較的軽量の吊持対象を吊持する限り問題なく使用できるが、重量物を吊持する場合や、強い衝撃荷重が作用するような用途には適さない。フックは、その形状が原因して、吊持対象を片持ち支持せざるを得ないうえ、吊持対象をフックで吊り下げた状態においては、吊持ワイヤーの中心と吊持対象の荷重中心とが必ずしも一致しておらず、そのためフックの湾曲部分に曲げモーメントが生じ、最悪の場合には湾曲部分が破損してしまうからである。フック部分の太さや大きさを増すと、湾曲部分の破断強度を増強することはできるが、全体が大形化するのを避けられない。
【0004】
この発明の目的は、フック構造の掛止具に比べて構造強度に優れており、しかも吊持対象を掛止具の中心軸線寄りで吊持することができ、従って重量物を吊持するのに好適な掛止具付きの吊持装置を提供することにある。この発明の目的は、掛止具に吊り掛けた吊持体が地震等により衝撃を受けても、掛止具から抜け外れるのをよく防止できる吊持装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の吊持装置は、ワイヤー1で吊持されるボールチャック2と、吊持体Hを掛け止めるための掛止具3とを備えている。掛止具3は、軸心に沿う状態でボールチャック2の下部に固定される縦軸17と、縦軸17の下部周面から横向きに突出する一対の掛止腕18とを含んで錨状に構成する。
【0006】
具体的には、両掛止腕18の突端寄りに、吊持体Hが掛止腕18の外側方へ抜け外れるのを規制する規制突起19が、掛止腕18と交差する状態で設けられている。
【0007】
吊持装置は、掛止腕18の上方に、掛止具3に掛け止めた吊持体Hの抜け出しを阻止する抜止具23を備えており、抜止具23が、縦軸17にスライド可能に案内支持されて、ばね26で掛止腕18の側へ向かって押し下げ付勢された形態にすることができる。
【0008】
【発明の作用効果】
この発明では、ボールチャック2の下部に固定される縦軸17と、縦軸17の周面から横向きに突出する一対の掛止腕18とを含んで、掛止具3を錨状に構成したので、吊持体Hを掛止具3に吊り掛けた状態においては、吊持荷重を縦軸17と一対の掛止腕18とで協同して負担できる。つまり、縦軸17と一対の掛止腕18との三者で荷重を分散して負担できるので、過重を負担する部分の太さ等を大きくする必要も無く、掛止具3の構造強度を向上できる。吊持体Hがワイヤーなどの弾性変形可能な素材で形成してある場合には、吊持体Hを縦軸17と掛止腕18との交差基端寄り、すなわち掛止具3の中心軸線寄りに引き絞って支持することができるので、掛止腕18に作用する吊持荷重のモーメントアームを最小限化して、重量物であっても問題なく吊持することができる。
【0009】
規制突起19と掛止腕18とでT形錨状に形成した掛止具3によれば、掛止腕18に掛け止めた吊持体Hが、掛止腕18に沿って外側方へ抜け外れるのを規制突起19で確実に防止できるのはもちろんのこと、吊持体Hに横向きの荷重が作用するような場合にも、吊持体Hの横方向へのずれ動きを規制して、吊持荷重が左右いずれかの掛止腕18に集中して作用するのを防止できる。掛止具3の外形寸法をできるだけ小さくできる点でも有利である。
【0010】
縦軸17に抜止具23をスライド可能に案内支持し、さらにばね26で抜止具23を掛止腕18の側へ向かって押し下げ付勢した吊持装置によれば、掛止具3に吊り掛けた吊持体Hが地震等により衝撃を受けて飛び跳ねるような場合にも、抜止具23で吊持体Hの跳ね出しを規制し、吊り掛け状態を維持し続けることができるので、吊持体Hが掛止具3から脱落するのを確実に防止できる。
【0011】
【実施例】
図1ないし図4は、この発明に係る掛止具付きの吊持装置の実施例を示す。図1および図2において吊持装置は、ワイヤー1で吊持されるボールチャック2と、ボールチャック2の下部に固定される掛止具3とからなる。ボールチャック2は、ステンレス鋼製のケース4と、ケース4内に収容されるホルダー5と、ホルダー5で位置保持されるボール6と、ホルダー5を押し上げ付勢するばね7と、ケース4の下面開口を塞ぐキャップ8などで構成してある。
【0012】
ケース4は上下両端が開口する筒状体からなり、その内面に下拡がり状のテーパー壁10と、テーパー壁10の大径端に連続する筒穴とを備えている。筒穴の下端にキャップ8をねじ込んで、ばね7の下端を受け止めている。ホルダー5は短軸状に形成してあり、その軸心に沿ってワイヤー1用の挿通孔11を貫通するよう形成し、上下中途部に設けた下拡がりテーパー状の保持部にボール6を保持するためのボール穴12を形成してなる。ボール穴12は周方向の3箇所に、先の挿通孔11と連通する状態で放射状に形成する。ボール穴12にボール6を装填した状態でホルダー5をケース4に装填し、さらにばね7を組み込んだ後、キャップ8をねじ込むことにより、ホルダー5の全体を上向きに移動付勢し、その上端の操作部9をケース4の上端面から突出させている。この付勢状態において、各ボール6はテーパー壁10によってホルダー5の中心方向へ押されるので、挿通孔11を通るワイヤー1に圧接してクランプできる。操作部9をばね7の付勢力に抗してケース内方へ押し込むと、ボール6による挟持作用が解除されるので、ワイヤー1を自由に出し入れできる。
【0013】
掛止具3を先のキャップ8に接続するために、キャップ8にこれの下方から接続金具15をねじ込み固定する。接続金具15はステンレス鋼製の上向きに開口する筒状体からなり、その底壁の中央に掛止具3をねじ込むためのねじ穴16が形成してある。掛止具3は、上端がねじ穴16にねじ込み固定される縦軸17と、縦軸17の下端寄りの周面から左右両側方へ突出する左右一対の掛止腕18と、各掛止腕18の突端から上向きに突出する規制突起19とを一体に形成したステンレス製の成形品からなり、全体がT形錨状に形成してある。縦軸17には、その軸心に沿ってワイヤー1用の挿通孔20を貫通形成してある。図2に示すように規制突起19は下部周面が丸めてある板状体からなり、その対向面の上端には後述する抜止具23を受け止める段部21が形成してある。
【0014】
使用状態においては、図1に示すように掛止具3に吊持体Hを吊り掛けるが、吊持具Hが振動や衝撃を受けて掛止具3から抜け落ちるのを防ぐために、掛止腕18の上方に抜止具23を備えている。抜止具23は、丸ナット上のステンレス製の旋削品からなり、その内部にばね受穴24とスライド孔25とが通設してある。スライド孔25を縦軸17に外嵌することにより、抜止具23は、縦軸17に沿って自由に上下スライドでき、縦軸17の外周に装着してばね受穴24と接続金具15との間に配置した圧縮コイル形のばね26によって押し下げ付勢されている。常態においては、抜止具23の下面周縁が規制突起19に設けた段部21で受け止められて、掛止腕18に吊り掛けた吊持体Hの跳ね出しを防いでいる。吊持体Hを出し入れする場合には、図4に示すように、ばね26の付勢力に抗して抜止具23を上方へスライド操作し、抜止具23と規制突起19の上端との間に隙間を生じさせる。図1に示す吊持具Hはワイヤーで形成してあり、その端部に形成した輪奈部28を掛止腕18に吊り掛けてある。
【0015】
上記のように掛止具3をT形錨状に形成すると、縦軸17と左右一対の掛止腕18とが協同して吊持荷重を負担するので、片方の掛止腕18に作用する荷重を小さくできるうえ、吊持体Hを掛止腕18に吊り掛けた状態において、その輪奈部28が吊持対象の重力を受けて引き絞られ、縦軸17と掛止腕18との上側交差部に密着するので、掛止腕18に作用する吊持荷重のモーメントアームを最小限化でき、従って掛止具3の吊持荷重を大きくできる。
【0018】
ボールチャック2は実施例で説明した構造に限られず、ケース4、ホルダー5、複数個のボール6、およびホルダー5を移動付勢するばね7を備えているボールチャックであれば、構造の違いとは無関係に適用できる。吊持体Hは金属リング、フック、ロープなどで形成してあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】吊持体を吊り掛けた状態の吊持装置の縦断正面図である。
【図2】吊持装置の側面図である。
【図3】図1におけるA−A線断面図である
【図4】抜止具を押し上げ操作した状態の断面図である。
【符号の説明】
1 ワイヤー
2 ボールチャック
3 掛止具
17 縦軸
18 掛止腕
19 規制突起
23 抜止具
26 ばね
H 吊持体
Claims (1)
- ワイヤー(1)で吊持されるボールチャック(2)と、吊持体(H)を掛け止めるための掛止具(3)と、掛止具(3)に掛け止めた吊持体(H)の抜け出しを阻止する抜止具(23)とを備えており、
ボールチャック(2)は、ケース(4)と、ケース(4)内に収容されるホルダー(5)と、ホルダー(5)で位置保持されるボール(6)と、ホルダー(5)を押し上げ付勢するばね(7)と、ケース(4)の下端にねじ込まれるキャップ(8)とで構成されており、
ボールチャック(2)と掛止具(3)とは、キャップ(8)にねじ込み固定した接続金具(15)を介して接続されており、
掛止具(3)は、接続金具(15)にねじ込み固定される縦軸(17)と、縦軸(17)の下部周面から左右両側方へ突出する一対の掛止腕(18)と、各掛止腕(18)の突端から上向きに突出する規制突起(19)とでT形錨状に形成されており、
縦軸(17)には、その軸心に沿ってワイヤー(1)用の挿通孔(20)が貫通形成されており、
抜止具(23)の内部には、ばね受穴(24)とスライド孔(25)とが通設されており、
抜止具(23)は、スライド孔(25)が縦軸(17)に外嵌する状態で上下スライド自在に案内支持されて、ばね受穴(24)と接続金具(15)との間に配置したばね(26)で、掛止腕(18)の側へ向かって押し下げ付勢されており、
常態において、抜止具(23)の下面周縁が規制突起(19)に設けた段部(21)で受け止められて、掛止腕(18)に吊り掛けた吊持体(H)の跳ね出しを防いでいることを特徴とする掛止具付きの吊持装置。
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