JP3902003B2 - 水捕集装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水捕集装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、地球上では各地で大規模な砂漠化が進行している。特に、中国においては、干ばつなどの自然的要因の他に、放牧地の再生能力を超えた家畜の放牧や過耕作による生態系破壊といった人災的要因も加わって、砂漠化地域は加速的に拡大している。
【0003】
こうした砂漠化の防止および緑化に関する手法としては、イオン交換樹脂法、逆浸透膜法、蒸留法などによって、海水から真水を製造し、この真水で灌漑する方法や、砂漠にコールタールやシートを張り、その上に吸水性樹脂を積層したり、吸水性組成物を地中に埋めたりすることにより、土壌の保水力を改善する方法などが提言されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような、海水から真水を製造する方法では、海水が原水として必要になるので、近くに海が存在しない内陸部まで海水を運ぶには、莫大なコストがかかってしまう、という欠点がある。
【0005】
また、土壌の保水力を改善する方法は、貴重な水資源を少しでも土壌に蓄えて活用しようとするものに過ぎず、自ら水を創成する技術ではないため、結局、水源としては、降雨を待つといった不安定なものに頼らざるを得ない。
さらに、地球環境保全の観点からは、無害で安全であることが求められ、また、永続的な運用を考えると、できる限り運用コストを抑えることができることも重要である。
【0006】
本発明は、上記のような背景の下で完成されたものであり、その目的は、海水のような原水を入手しにくい場所であっても、安全に低コストで水を創り出すことができる水捕集装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段、および発明の効果】
以下、上記目的を達成するためになされた本発明の特徴について詳述する。
本発明の水捕集装置は、
容器と、
該容器内に配置され、前記容器内の相対湿度が上昇すると前記容器内の空気中から水蒸気を吸着する一方、加熱されると吸着水を前記容器内の空気中へ脱着する吸脱着剤と、
外気の相対湿度が上昇する第1の時間帯に、前記吸脱着剤に水蒸気を吸着させるため、前記容器内の空気と外気とを入れ替える換気手段と、
太陽エネルギーが得られる第2の時間帯に、前記吸脱着剤に吸着水を脱着させるため、前記太陽エネルギーを利用して前記吸脱着剤を加熱する加熱手段と、
該加熱手段によって加熱された前記吸脱着剤が吸着水を脱着して前記容器内の水蒸気量が増大した際に、該容器内の水蒸気を凝結させる凝結面を提供する凝結面提供部材と
を備え、
前記加熱手段は、太陽光を透過させる光透過性部材によって形成された前記容器の一部であり、該光透過性部材を透過した太陽光が照射される場所に前記吸脱着剤が配置されており、
前記凝結面提供部材は、凝結面となる内面で前記容器内の空気に接し、外面で外気に接するように構成された前記容器の一部であり、前記内面から前記外面へと熱を逃がすことにより、前記内面で前記容器内の水蒸気を凝結させる部材であり、
さらに、前記容器は、前記光透過性部材、前記吸脱着剤、空間、および前記凝結面提供部材が、当該順序で積層された内部構造とされることにより、前記光透過性部材側を太陽に向けて配置した際に、前記空間および前記凝結面提供部材が前記吸脱着剤を挟んで太陽とは反対側に配置される構造になっている
ことを特徴とする。
【0008】
この水捕集装置において、吸脱着剤は、周囲の空気の温度および相対湿度、吸脱着剤自体の温度および吸着水の量に応じて、空気中から水蒸気を吸着、または、吸着水を空気中へ脱着するもので、代表的なものとしては、シリカゲル、ゼオライト、活性アルミナ、活性炭などを挙げることができる。中でも、シリカゲルは、細孔径の制御が容易で、吸脱着性能の最適化が容易なので特に好適である。本装置において採用可能なシリカゲルとしては、例えば、細孔径が2nm〜10nmに制御されたシリカゲルを用いることができ、一般的には、A型シリカゲル、B型シリカゲルが、この程度の細孔径を有している。
【0009】
この吸脱着剤は、所期の吸脱着性能を有するものであれば、球状や破砕状などの粒状物であっても、ハニカム状やボード状などの成形体であってもよい。吸脱着剤の吸脱着性能は、もちろん高ければ高いほどよいが、目安としては、例えば、前記吸脱着剤が、前記容器内の相対湿度が10%〜80%の間で変化した場合に、自重に対する重量比で少なくとも10重量%の水を吸脱着する吸脱着能力を有すると望ましい。このような吸脱着剤を用いると、10重量%未満の水しか吸脱着できないものに比べ、過大な量の吸脱着剤を用いなくてもよくなり、その分だけ装置全体を小型化することができる。
【0010】
換気手段は、外気の相対湿度が上昇する第1の時間帯に容器内の空気と外気とを入れ替える手段である。外気の相対湿度が上昇する第1の時間帯は、大まかには気温の低下に伴って相対湿度が上昇する夜間から選ばれるが、容器内の空気と外気とをどれ位の時間にわたって入れ替えると吸脱着剤が吸着飽和に達するかは、外気の温度や相対湿度、吸脱着剤の吸脱着能力、換気手段の換気能力といった条件によっても変わる。したがって、これらの条件を想定または実測して、できる限り吸脱着剤が吸着飽和に近づくように、第1の時間帯を任意に設定すればよい。
【0011】
第1の時間帯の始まりと終わりは、例えば、タイマーなどによって管理できる。この場合、タイマーで設定した時間帯になると作動するように構成された送風機を、容器に設けられた換気口に連結することによって、所期の換気手段を構成することができる。また、第1の時間帯がほぼ夜間全体にわたる設定にする場合は、例えば、光センサや太陽電池からの出力に基づいて周囲が暗くなったことを検知したら換気手段を作動させ、その後、朝を迎えて周囲が明るくなったことを検知したら換気手段の作動を停止させるように構成してもよい。
【0012】
また、この換気手段の構成要素として、例えば、電気エネルギーで作動する送風機など、電気エネルギーを必要とする機器を利用する場合には、電気エネルギーを供給する給電手段が必要である。この給電手段としては、例えば、太陽電池と、該太陽電池よって得られた電気エネルギーを蓄積する蓄電手段とを備え、該蓄電手段に蓄積した電気エネルギーで前記換気手段を作動させるように構成したものを考えることができる。このように構成すれば、本装置外から電力を供給しなくても、本装置単独で電気エネルギーを確保できるので、本装置外からの電力供給が望めないような場所でも、本装置を稼働させることができるので望ましい。
【0013】
この場合、蓄電手段としては、公知の各種蓄電池、蓄電器を任意に利用できる。但し、砂漠のような寒暖の変化が激しい場所で使用するには、前記蓄電手段が、電気二重層キャパシタであると望ましい。電気二重層キャパシタは、80℃程度の高温環境でも充放電が可能なので、砂漠のような高温環境でも利用することができる。また、電気二重層キャパシタは、化学反応を伴わずに充放電できることから、10万回〜100万回程度の充放電を繰り返しても基本的には劣化しないので、砂漠のような場所でもメンテナンスフリーで利用することができる。さらに、電気二重層キャパシタは、鉛やカドミウムといった有害物質を使用せずに、無公害の活性炭電極やアセトニトリル系の電解液などで構成できるので、環境汚染の恐れが無く、この点では、砂漠のような場所に無人で放置しても安全である。
【0014】
なお、給電手段としては、上記太陽電池と蓄電手段との組み合わせ以外の手段であってもよく、例えば、風力発電機と蓄電手段とを組み合わせてもよい。
加熱手段は、太陽エネルギーが得られる第2の時間帯に太陽エネルギーを利用して吸脱着剤を加熱する手段である。吸脱着熱を加熱する方法は、本発明の場合、太陽光を吸脱着剤に直接照射することにより、輻射熱で吸脱着剤を加熱する方法を採用している。なお、本発明で採用した加熱方法以外の方法としては、太陽光の照射に伴って発生した輻射熱を、伝導や対流によって吸脱着剤へ伝達する方法もあり、これらの方法を併用して加熱を行う方法もある。
【0015】
本発明の場合、太陽光を吸脱着剤に直接照射するための具体的構成としては、前記加熱手段が、太陽光を透過させる光透過性部材によって形成された前記容器の一部になっていて、該光透過性部材を透過した太陽光が照射される場所に前記吸脱着剤が配置されている構造を採用している。このような構造にすると、太陽が出ている日中は、太陽光が容器内に入射して吸脱着剤に到達し、その輻射熱で吸脱着剤が加熱される。しかも、上記第1の時間帯に、吸脱着剤が水蒸気を吸着するのに伴って吸着熱が発生すると、吸脱着剤から放射された赤外線が、光透過性部材を透過して容器の外部へと放出されるので、放射冷却効果によって吸着熱を外部へと逃がすこともできる。
【0016】
凝結面提供部材は、凝結面に接触した水蒸気を凝結させて水滴化する部材であり、前記容器の一部が凝結面提供部材として機能しても、前記容器の内部に配置された前記容器とは別の部材が凝結面提供部材として機能してもよい。凝結面に接触した水蒸気を効率よく凝結させるためには、凝結面が親水性表面となっているものが望ましい。また、水蒸気から熱を奪って凝結させるためには、凝結面から得た熱を速やかに凝結面以外に伝達、放出できるような構造になっているとよい。この点、本発明においては、前記凝結面提供部材が、凝結面となる内面で前記容器内の空気に接し、外面で外気に接するように構成された前記容器の一部であり、前記内面から前記外面へと熱を逃がすことにより、前記内面で前記容器内の水蒸気を凝結させるような構造になっているので、外気への放熱を図ることができる。また、凝結面は、平面に限らず、波板状などの曲面であってもよく、さらに、平滑な凝結面に限らず、梨地、バレル研磨やショットブラスト加工が施された表面構造としてもよい。
なお、前記光透過性部材として、外面側が外気に接する第1の光透過性部材と、内面側が前記吸脱着剤に接する第2の光透過性部材とを有し、前記第1の光透過性部材と前記第2の光透過性部材との間には、空間が形成された構造になっていてもよい。
また、前記凝結面提供部材が透明で、前記吸脱着剤から放射される赤外線が前記凝結面提供部材を透過して前記容器の外部へ放射されるように構成されていてもよい。
【0017】
以上のように構成された水捕集装置は、次のように動作する。
まず、第1の時間帯に換気手段が作動して、高湿な外気を容器の内部に導入し、これにより、容器内の吸脱着剤に水蒸気を吸着させる。例えば、夜間の砂漠では相対湿度が100%近くに達するので、この外気を容器の内部に導入して、吸脱着剤に水蒸気を吸着させる。
【0018】
通常、水蒸気吸着は、吸着熱が非常に多く発生し、吸脱着剤温度および容器内空気温度が上昇するので、飽和吸着状態にはなりにくいが、換気手段によって高湿な外気を大量に導入し、吸着熱によって加熱された容器内の空気と外気とを入れ替えることにより、容器内の空気の温度上昇は抑制することができる。また、加熱手段が上述の如き光透過性部材によって形成されている場合は、吸脱着剤から容器外へ赤外線が放射されることによっても吸着熱が放出されるので、この放射冷却作用によっても容器内の空気の温度上昇は抑制される。そのため、容器内では温度上昇が抑制され、同時に高湿な空気が供給され、吸着飽和状態まで吸着を進めることが可能となる。そして、第1の時間帯が過ぎると、換気手段は作動を停止する。
【0019】
その後、第2の時間帯になると、加熱手段によって吸脱着剤が加熱され、吸脱着剤から容器内の空気中へ吸着水が脱着される。この時は、換気手段が作動していないので、容器の内外では実質的な空気の入れ換えが起こらず、容器内の湿度はきわめて高くなる。この状態で容器内の水蒸気が、凝結面提供部材の凝結面に接触すると、凝結面が水蒸気から熱を奪い、凝結面には水滴ができる。したがって、この水滴を集めることにより、水を得ることができる。
【0020】
凝結面において凝結してできた水滴は、どのような方法で集めてもよく、例えば、凝結面を垂直面または傾斜面としておくことにより、水滴が自重で凝結面の下端側へ集まるようにしてもよいし、凝結面から滴り落ちる水滴を漏斗で集めるようにしてもよい。こうして集められた水は、例えば、タンクなどに回収してもよいし、そのまま土壌に放出して土壌への水分補給を行うような構成にしてもよい。
【0021】
このような水捕集装置によれば、大気中に存在する水蒸気を捕集して水を創り出すことができる。したがって、海水から真水を製造する方法とは異なり、水を創り出すに当たって、原水となる海水等は不要であり、近くに海が存在しない内陸部においても、水を創り出すことができ、その水を灌漑用等の用途に利用することができる。
【0022】
しかも、この水捕集装置の作動に必要なエネルギーは、太陽エネルギーや風力エネルギー(いわゆるソフトエネルギー)でまかなうことができるので、砂漠のような給電設備のない場所での稼働も可能であり、装置の稼働に伴う二酸化炭素の排出や有害物質の排出も無いので、環境に対する負荷もきわめて小さい。したがって、砂漠化の防止および緑化といった環境保全のために用いる装置としては、きわめて有望な装置である。
【0023】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について参考例および実施例を挙げて説明する。
[参考例]
以下に説明する水捕集装置は、図1に示すように、太陽電池10、蓄電器12、タイマー14、送風機16、吸脱着器18、およびタンク20を備えている。
【0024】
太陽電池10は、太陽光を電気エネルギーに変換する装置である。
蓄電器12は、太陽電池10から送られてくる電気エネルギーを蓄積する装置であり、本実施形態においては、複数の電気二重層キャパシタによって構成されている。各電気二重層キャパシタは、多孔性セパレータを介装することによって互いに絶縁された一対の多孔性炭素電極と電解液とを密閉容器に封入し、これら多孔性炭素電極および電解液によって一対の分極性電極を形成した構造のものである。この電気二重層キャパシタにおいて、多孔性炭素電極としては、水酸化カリウムによって賦活したピッチ系活性炭が用いられ、電解液としては、プロピレンカーボネートとアセトニトリルとの1:1混合物にテトラエチルアンモンテトラフルオロボレートを溶解してなる有機系電解液が用いられている。蓄電器12は、複数の電気二重層キャパシタを直列および並列に組んで構成されている。なお、蓄電器12については、送風機16の性能に応じて、電気二重層キャパシタ単独で構成してもよいし、キャパシタと電池とを組み合わせて構成してもよく、例えば、キャパシタと冷暖房機能を備えた電池とを併用で使用する場合もある。
【0025】
タイマー14は、事前にセットされた時間帯にのみ蓄電器12側と送風機16側とを電気的に接続するスイッチング回路である。本実施形態においては、午後6時になると送風機16に電力が供給され、午前6時になると送風機16への電力供給が停止されるように、各時刻がセットされている。
【0026】
送風機16は、蓄電器12から電力が供給されると作動して、吸脱着器18の内部へ外気を送り込む装置で、本実施形態においては、消費電力19Wで、吸脱着器18内へ、圧力196Pa、風量166m3/hの空気を送り込み可能なものを利用している。
【0027】
吸脱着器18は、夜間には、送風機16から送られる空気中から水蒸気を吸着する第1の状態になり、昼間には、太陽光での加熱により吸着水を脱着させ、その脱着に伴って増大する水蒸気を凝結させて水にする第2の状態になり、これら2つの状態を1日周期で繰り返すことによって、水を捕集するものである。
【0028】
タンク20は、吸脱着器18によって捕集した水を貯めておく容器である。
次に、吸脱着器18の具体的な構造について詳述する。
吸脱着器18は、図2に示すように、吸脱着ボックス22(本発明でいう容器に相当)と、スタンド24とで構成されている。
【0029】
吸脱着ボックス22は、底面側および四方の側面側が断熱材によって形成された断熱部26、上面側が光透過性材料によって形成された透明部28となっている。この透明部28は、透明な樹脂材料(例えば、硬質塩化ビニル、ポリカーボネート等)を波板状に成形加工した部材によって構成されている。また、断熱部26の一側面には、送風機16からの空気を導入する導入口30が設けられ、断熱部26の別の一側面には、吸脱着ボックス22内の空気を排出する排出口32が設けられている。そして、断熱部26の隅には、吸脱着ボックス22の内部において捕集される水を、吸脱着ボックス22の外部へ導出するためのホース34が設けられている。
【0030】
スタンド24は、吸脱着ボックス22を傾斜させた状態で支持するもので、本実施例においては、図2に示した角度θ1が30〜45度、角度θ2が5〜10度となっている。
また、吸脱着ボックス22の内部において、透明部28の下方には、図3(a)に示すように空間36が形成され、その下方に吸脱着剤38が配置されている。本実施形態において、吸脱着剤38は、細孔径2nm〜10nmのA型シリカゲルであり、吸脱着ボックス22内には、12.5kgのA型シリカゲルが、70cm×160cmの範囲に略均一な厚さで敷き詰められている。
【0031】
このように構成された吸脱着器18において、吸脱着ボックス22の透明部28は、昼間は、外部から入射する太陽光を内部へ透過させることにより、その透過させた太陽光で吸脱着剤38を加熱する手段(本発明でいう加熱手段)として機能する。また、透明部28は、断熱部26よりも薄くて内面側の熱がすぐに外面側へと伝わり、且つ、外面側が外気にさらされているため、透明部28を透過した太陽光によって吸脱着剤38が加熱されて吸着水を脱着し、吸脱着ボックス22内部の水蒸気量が上昇した際には、水蒸気が透明部28の内面に接触して凝結する。すなわち、透明部28は、吸脱着ボックス22内の水蒸気を凝結させる凝結面を提供する手段(本発明でいう凝結面提供部材)としても機能する。透明部28には、上記スタンド24による角度θ1(30〜45度)の傾きがあるので、透明部28内面に付着した水は、図3(b)に矢印で示したように、透明部28の内面を伝って透明部28の下端に集まり、さらに断熱部26の内面を伝って吸脱着ボックス22の最下部に集まる。そして、吸脱着ボックス22の最下部に集まった水Wは、上記スタンド24による角度θ2(5〜10度)の傾きによって、ホース34側へと集まり、このホース34を介して吸脱着ボックス22の外部へと導出される水が、タンク20の内部に貯められるようになっている。
【0032】
このように構成された水捕集装置は、次のように動作する。
まず、午前6時から午後6時までの時間帯には、タイマー14が送風機16への電力供給を停止する。この時間帯には、太陽光が太陽電池10に照射されるので、太陽電池10から蓄電器12に電気エネルギーが送られる。蓄電器12に送られる電気エネルギーは、僅かな待機電力(例えばタイマー14の計時動作に必要な電力等)を除き、大部分が蓄電器12に蓄積される。
【0033】
その後、午後6時から午前6時までの時間帯(本発明でいう第1の時間帯)には、タイマー14が蓄電器12から送風機16へ電力を供給する。これにより、送風機16が作動して、外気が吸脱着ボックス22の内部に導入される。この時間帯は、外気温が低下するのに伴って外気の相対湿度が上昇するので、外気を吸脱着ボックス22の内部に導入すると、吸脱着ボックス22内の吸脱着剤38に水蒸気を吸着させることができる。
【0034】
この時、吸脱着剤38からは、非常に多くの吸着熱が発生するが、吸脱着ボックス22内には、送風機16から連続的に外気が送り込まれて、吸着熱によって加熱された空気と外気とが入れ替わるので、吸脱着ボックス22内の温度上昇は抑制される。特に、透明部28が、波板状になっていることから、吸脱着ボックス22内に送り込まれた空気の流れは、乱流となって吸脱着ボックス22内全体に広がるので、吸脱着ボックス22内にはまんべんなく外気が送り込まれて、内気と外気とが交換される。さらに、吸脱着剤38の温度上昇に伴って、吸脱着剤38の表面から放射される赤外線は、透明部28を透過して吸脱着ボックス22の外部へ放出されるので、この放射冷却作用によっても吸脱着ボックス22内の温度上昇は抑制される。そのため、吸脱着ボックス22内では温度上昇が抑制され、同時に高湿な空気が供給され、吸着飽和状態まで吸着を進めることができる。
【0035】
さて、その後、再び午前6時から午後6時までの時間帯(本発明でいう第2の時間帯)になると、タイマー14が送風機16への電力供給を停止する。この時間帯には、上述の通り、太陽光による充電が行われるが、同時に、透明部28を透過した太陽光が吸脱着剤38に照射され、その輻射熱によって吸脱着剤38が加熱される。吸脱着剤38が加熱されると、吸脱着剤38から吸脱着ボックス22内の空気中へ吸着水が脱着される。この時は、送風機16が作動していないので、吸脱着ボックス22の内外間で空気の入れ換えが起こらず、吸脱着ボックス22内の湿度はきわめて高くなる。この状態で吸脱着ボックス22内の水蒸気が、透明部28の内面(凝結面)に接触すると、その水蒸気から熱が奪われて、透明部28の内面に水滴ができる。この水滴は、自重で傾斜した透明部28の内面を伝って透明部28の下端側へ集まり、さらにホース34側へと集まり、ホース34を介して吸脱着ボックス22の外部へと導出されて、タンク20の内部に貯められる。
【0036】
以上説明した水捕集装置の性能を確認するため、この水捕集装置を二昼夜にわたって稼働させた。(実験日:2001年10月24日〜25日)。実験初日の昼間は主に蓄電器12の充電を行う期間であり、初日から二日目にかけての夜間は主に水蒸気の吸着を行う期間であり、二日目の昼間は主に水の捕集を行う期間である。実験日は、両日とも晴天で、最高気温は24℃であった。この実験の結果、タンク20に400gの水を捕集することができた。したがって、この水捕集装置によれば、大気中に存在する水蒸気を捕集して水を創り出すことができ、その水を灌漑用等の用途に利用することができる。
【0037】
特に、海水から真水を製造する方法とは異なり、水を創り出すに当たって、原水となる海水等は不要であり、近くに海が存在しない内陸部においても、水を創り出すことができるので、例えば、中国内陸部のような砂漠地帯において砂漠化の防止および緑化を図る上では、きわめて有効な手段になると期待される。また、将来的には、宇宙ステーションの内部において水を創出する装置としても応用可能である。
【0038】
[実施例]
次に、本発明の実施例について説明する。なお、以下に説明する実施例は、上述の参考例との相違点を説明するものであり、参考例と共通する構成についての説明は省略する。
上記参考例では、加熱手段と凝結面提供部材とを兼ねる透明部28が、吸脱着ボックス22の上面側に設けられていたが、以下に説明する実施例においては、加熱手段と凝結面提供部材とを別の部材で構成している。
具体的には、図4に示す吸脱着ボックス40のように、断熱材によって形成された枠体42の内側に、吸脱着剤(例えばシリカゲル)を板状に成形してなる吸脱着ボード44を嵌め込んで、吸脱着ボード44の上面側を、加熱手段としての透明シート46で覆い、吸脱着ボード44の下面側には、凝着面提供手段としてのガラス板48を嵌め込んで、吸脱着ボード44とガラス板48との間の空間50に外気を導入するように構成している。
このような吸脱着ボックス40の場合、透明シート46側から入射する太陽光で吸脱着ボード44が加熱され、これにより吸脱着ボード44から脱着された水蒸気がガラス板48の内面で凝結する。
なお、この吸脱着ボックス40において、透明シート46の上面側には、透明板52が嵌め込まれて空間54が形成されているので、これにより、透明シート46側での放熱が抑制され、透明シート46の内面では水蒸気が凝結せず、ガラス板48の内面でのみ水蒸気が凝結する。
また、この吸脱着ボックス40の場合、上面側の透明板52および透明シート46と、下面側のガラス板48とが、どちらも透明であり、吸着熱によって加熱された吸脱着ボード44から放射される赤外線が、吸脱着ボード44の上下両方向に放出されるので、放射冷却効果も高くなる。
【0039】
[変形例等]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態では、昼間に送風機16からの送風を停止する例を示したが、昼間に送風機16を作動させて、僅かに空気を送り込むようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では特に言及しなかったが、吸脱着剤にシリカゲルを用いる場合は、シリカゲルを着色して太陽光を吸収しやすくしてもよい。
【0040】
加えて、上記実施形態では、太陽電池10を使って電気エネルギーを得る例を示したが、これに限らず、風力発電機を使って電気エネルギーを得るシステムにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例として説明した水捕集装置の全体構成図である。
【図2】 吸脱着器の斜視図である。
【図3】 (a)は吸脱着ボックスの縦断面図、(b)は吸脱着ボックスの一部を拡大した部分縦断面図である。
【図4】 別の吸脱着ボックスの断面図である。
【符号の説明】
10・・・太陽電池、12・・・蓄電器、14・・・タイマー、16・・・送風機、18・・・吸脱着器、20・・・タンク、22・・・吸脱着ボックス、24・・・スタンド、26・・・断熱部、28・・・透明部、30・・・導入口、32・・・排出口、34・・・ホース、38・・・吸脱着剤。
Claims (6)
- 容器と、
該容器内に配置され、前記容器内の相対湿度が上昇すると前記容器内の空気中から水蒸気を吸着する一方、加熱されると吸着水を前記容器内の空気中へ脱着する吸脱着剤と、
外気の相対湿度が上昇する第1の時間帯に、前記吸脱着剤に水蒸気を吸着させるため、前記容器内の空気と外気とを入れ替える換気手段と、
太陽エネルギーが得られる第2の時間帯に、前記吸脱着剤に吸着水を脱着させるため、前記太陽エネルギーを利用して前記吸脱着剤を加熱する加熱手段と、
該加熱手段によって加熱された前記吸脱着剤が吸着水を脱着して前記容器内の水蒸気量が増大した際に、該容器内の水蒸気を凝結させる凝結面を提供する凝結面提供部材と
を備え、
前記加熱手段は、太陽光を透過させる光透過性部材によって形成された前記容器の一部であり、該光透過性部材を透過した太陽光が照射される場所に前記吸脱着剤が配置されており、
前記凝結面提供部材は、凝結面となる内面で前記容器内の空気に接し、外面で外気に接するように構成された前記容器の一部であり、前記内面から前記外面へと熱を逃がすことにより、前記内面で前記容器内の水蒸気を凝結させる部材であり、
さらに、前記容器は、前記光透過性部材、前記吸脱着剤、空間、および前記凝結面提供部材が、当該順序で積層された内部構造とされることにより、前記光透過性部材側を太陽に向けて配置した際に、前記空間および前記凝結面提供部材が前記吸脱着剤を挟んで太陽とは反対側に配置される構造になっている
ことを特徴とする水捕集装置。 - 前記吸脱着剤が、前記容器内の相対湿度が10%〜80%の間で変化した場合に、自重に対する重量比で少なくとも10重量%の水を吸脱着する吸脱着能力を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の水捕集装置。 - 太陽電池と、
該太陽電池よって得られた電気エネルギーを蓄積する蓄電手段とを備え、
該蓄電手段に蓄積した電気エネルギーで前記換気手段を作動させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水捕集装置。 - 前記蓄電手段が、電気二重層キャパシタである
ことを特徴とする請求項3に記載の水捕集装置。 - 前記光透過性部材として、外面側が外気に接する第1の光透過性部材と、内面側が前記吸脱着剤に接する第2の光透過性部材とを有し、前記第1の光透過性部材と前記第2の光透過性部材との間には、空間が形成された構造になっている
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の水捕集装置。 - 前記凝結面提供部材が透明で、前記吸脱着剤から放射される赤外線が前記凝結面提供部材を透過して前記容器の外部へ放射される
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の水捕集装置。
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