JP3899272B2 - プラズマ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スロットアンテナを用いて容器内に供給した電磁界によりプラズマを生成するプラズマ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置やフラットパネルディスプレイの製造において、酸化膜の形成や半導体層の結晶成長、エッチング、またアッシングなどの処理を行うために、プラズマ装置が多用されている。これらのプラズマ装置の中に、スロットアンテナを用いて処理容器内に高周波電磁界を供給し、その電磁界により高密度プラズマを発生させる高周波プラズマ装置がある。この高周波プラズマ装置は、プラズマガスの圧力が比較的低くても安定してプラズマを生成することができるので、用途が広いという特色がある。
【0003】
図16は、従来の高周波プラズマ装置の一構成例を示す図である。この図では、一部構成について縦断面構造が示されている。
【0004】
このプラズマ装置は、上部が開口している有底円筒形の処理容器111を有している。この処理容器111の底部には基板台122が固定され、この基板台122の載置面に被処理体である基板121が配置される。処理容器111の側壁には、プラズマガス供給用のノズル117が設けられ、処理容器111の底部には、真空排気用の排気口116が設けられている。処理容器111の上部開口は、そこからプラズマが外部に漏れないように、誘電体板113で塞がれている。
【0005】
この誘電体板113の上に、スロットアンテナの一種であるラジアルアンテナ130が配置されている。このラジアルアンテナ130は、ラジアル導波路を形成する互いに平行な2枚の円形導体板131,132と、これらの導体板131,132の外周部を接続する導体リング134とから構成されている。ラジアル導波路の上面となる導体板132の中心部には、電磁界Fの導入口となる開口部135が形成され、ラジアル導波路の下面となる導体板131には、スロット136が複数形成されている。また、ラジアル導波路内には、誘電体からなる遅波材137が配置されている。この遅波材137によりラジアル導波路内を伝搬する電磁界Fの波長が短くなるので、導体板131に多くのスロット136を形成して電磁界Fの放射効率を高めることができる。なお、ラジアルアンテナ130及び誘電体板113の外周は環状のシールド材112によって覆われ、電磁界Fが外部に漏れない構造になっている。
【0006】
ラジアルアンテナ30の給電には同軸導波路141が使用される。この同軸導波路141の外導体151は導体板132の開口部135に接続され、内導体152は開口部135から遅波材137を貫通して導体板131の中心に接続されている。このようにラジアルアンテナ30の中央部に接続された同軸導波路141は、矩形・同軸変換器142及び矩形導波管143を介して、高周波発生器145に接続されている。
【0007】
図17は、ラジアルアンテナ130と同軸導波路141との接続部を拡大して示す断面図である。遅波材137はラジアル導波路の全域に充填されている。同軸導波路141を伝搬してきた電磁界の一部F1,F2は、遅波材137の表面と同軸導波路141の終端(すなわち、ラジアルアンテナ130の導体板131)で反射され、ここで反射されなかった電磁界Fがラジアル導波路を伝搬して、スロット136から放射される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、遅波材137の誘電率が大きい場合には、遅波材137の表面で反射される電磁界F1が大きくなるため、ラジアルアンテナ130から処理容器111に供給できる電力が減少し、プラズマの生成効率が低下するという問題があった。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、プラズマの生成効率向上にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明のプラズマ装置は、対向する2枚の導体板の一方にスロットが複数形成され他方に開口部を有するスロットアンテナと、このスロットアンテナの2枚の導体板の間に配置された誘電体からなる遅波材と、スロットアンテナの開口部に接続されスロットアンテナに給電する導波路と、スロットアンテナから電磁界が供給される容器とを備え、スロットアンテナの開口部における遅波材の厚みが、遅波材に対する電磁界の波長の略m/4倍(mは1以上の奇数)に調整されていることを特徴とする。これにより、遅波材の表面で反射された電磁界と、スロットアンテナの一方の導体板で反射された電磁界とが逆相になり、互いに打ち消し合うので、反射電力を低減できる。
【0011】
ここで、導波路として、スロットアンテナの2枚の導体板の一方に接続された内導体と、2枚の導体板の他方に接続された外導体とを有する同軸導波路を用いてもよい。
【0012】
同軸導波路を用いる場合、同軸導波路の内導体及び外導体の少なくとも一方が、スロットアンテナの2枚の導体板との接続部にテーパー部を有するようにしてもよい。
【0013】
同軸導波路の内導体がテーパー部を有する場合、テーパー部の起点は、遅波材内に埋没し、スロットアンテナの2枚の導体板の厚み方向の中間位置よりも開口部側にあってもよい。また、内導体のテーパー角度は、90゜より小さくてもよい。
【0014】
一方、同軸導波路の外導体がテーパー部を有する場合、テーパー部の起点は、ラジアルアンテナの開口部における遅波材の表面の位置と略同一であってもよい。また、外導体のテーパー角度は、90゜より大きくてもよい。
【0015】
また、導波路として、円筒導波管を用いてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明のプラズマ装置の第1の実施の形態の構成図である。この図では、一部構成について縦断面構造が示されている。
【0018】
このプラズマ装置は、上部が開口している有底円筒形の処理容器11を有している。この処理容器11は、アルミニウムなどの導体で形成されている。処理容器11の上部開口には、厚さ20〜30mm程度の石英ガラスまたはセラミック(Al2 O3 ,AlNなど)などからなる誘電体板13が配置されている。処理容器11と誘電体板13との接合部にはOリングなどのシール部材14を介在させており、これにより処理容器11内部の気密性を確保している。
【0019】
処理容器11の底部には、セラミックなどからなる絶縁板15が設けられている。また、この絶縁板15及び処理容器11底部を貫通する排気口16が設けられており、この排気口16に連通する真空ポンプ(図示せず)により、処理容器11内を所望の真空度にすることができる。また、処理容器11の側壁には、処理容器11内にArなどのプラズマガスやCF4 などのプロセスガスを導入するためのノズル17が設けられている。このノズル17は石英パイプなどで形成されている。
【0020】
処理容器11内には、被処理体である基板21が載置面上に配置される円柱状の基板台22が収容されている。この基板台22は、処理容器11の底部を遊貫する昇降軸23によって支持されており、上下動自在となっている。また、基板台22には、マッチングボックス25を介してバイアス用の高周波電源26が接続されている。この高周波電源26の出力周波数は数百kHz〜十数MHzの範囲内の所定周波数とする。なお、処理容器11内の気密性を確保するため、基板台22と絶縁板15との間に、昇降軸23を囲むようにベローズ24が設けられている。
【0021】
また、誘電体板13の上に、スロットアンテナの一種であるラジアルアンテナ30が配置されている。このラジアルアンテナ30は、誘電体板13によって処理容器11から隔離されており、処理容器11内で生成されるプラズマから保護されている。ラジアルアンテナ30及び誘電体板13の外周は、処理容器11の側壁上に環状に配置されたシールド材12によって覆われ、電磁界Fが外部に漏れない構造になっている。
【0022】
ラジアルアンテナ30の給電には同軸導波路41が使用される。この同軸導波路41は、矩形・同軸変換器42及び矩形導波管43を介して、高周波発生器45に接続されている。この高周波発生器44は、1GHz〜十数GHzの範囲内の所定周波数f(例えば2.45GHz)の高周波電磁界Fを発生するものである。また、矩形導波管43の途中にインピーダンスのマッチングを行うマッチング回路44を設けることにより、電力の使用効率を向上させることができる。
【0023】
次に、ラジアルアンテナ30の構成について更に説明する。
ラジアルアンテナ30は、ラジアル導波路を形成する互いに平行な2枚の円形導体板31,32と、これらの導体板31,32の外周部を接続してシールドする導体リング34を有している。ラジアル導波路の上面となる導体板32の中心部には、ラジアル導波路内に電磁界Fを導入する導入口となる開口部35が形成されている。また、ラジアル導波路の下面となる導体板31には、ラジアル導波路内を伝搬する電磁界Fを処理容器11内に供給するスロット36が例えば図2に示すように複数形成されている。導体板31,32及び導体リング34は、銅またはアルミニウムなどの導体で形成されている。なお、ラジアル導波路内における電磁界Fの波長(以下、管内波長という)をλg とすると、導体板31の径方向における隣接スロット間の間隔をλg 程度として、ラジアルアンテナ30を放射型のアンテナとしてもよいし、上記間隔をλg/10〜λg/30として、リーク型のアンテナとしてもよい。
【0024】
同軸導波路41の外導体51は導体板32の開口部35に接続され、内導体52は開口部35から導体板31の中心に接続されている。
【0025】
ラジアル導波路には、その全域にセラミックなどの誘電体からなる遅波材37が充填されている。この遅波材37によりラジアル導波路内を伝搬する電磁界Fの波長が短くなるので、導体板31に多くのスロット36を形成して電磁界Fの放射効率を高めることができる。なお、上述した管内波長λg とは、この遅波材37に対する波長、すなわち遅波材37の作用により短くなった波長のことである。
【0026】
また、図3に示すように、ラジアルアンテナ30の開口部35における遅波材37の同軸方向の厚みは、管内波長λg の略(N+1/4)倍(Nは0以上の整数)に調整されている。
【0027】
同軸導波路41とラジアルアンテナ30の接続部では、遅波材37の表面37fと同軸導波路41の終端(すなわち、ラジアルアンテナ30の導体板31)で電磁界の反射が起こる。しかし、図4に示すように開口部35における遅波材37の厚みが略(N+1/4)×λg であれば、図5に示すように遅波材37の表面37fで反射された電磁界F1と、導体板31で反射された電磁界F2とが逆相になり、互いに打ち消し合う。両者は振幅が異なるのでF3で示すように反射は零にはならないが、開口部35における遅波材37の厚みが約(N+1/4)×λg でない場合と比べて反射電力は小さくなる。ここで反射されなかった電磁界Fは、ラジアル導波路に導入されると考えられるので、反射電力を小さくすることによりラジアルアンテナ30の放射量を高めることができる。
【0028】
図3に示す同軸導波管41の外導体51の半径Rを19.4mm、内導体52の半径rを8.45mm、ラジアルアンテナ30の導体板31,32の間隔Dを7.0mmと、ラジアルアンテナ30に供給される電磁界の周波数fを2.45GHz、遅波材37の比誘電率εr を9.6として、開口部35とその他の領域とにおける遅波材37の厚みの差Hを変化させて反射量を計算したところ、H=3.4mmのときに反射量が−15.5dBまで下がった。このとき、D+Hで求められる遅波材37の厚みは10.4mmであり、約λg/4(≒9.7mm)となっている。これより、開口部35における遅波材37の厚みを約(N+1/4)×λg に調整することが反射量低減に有効であることが分かる。なお、図3ではH>0としたが、周波数fが高い場合にはH<0としてもよい。
【0029】
さらに、この効果は、遅波材37の厚みが約(N+1/4)×λg である場合だけでなく、図6に示すように約(N+3/4)×λg である場合にも同様に得ることができる。この場合も、図7に示すように遅波材37の表面37fで反射された電磁界F1と、導体板31で反射された電磁界F2とが逆相になり、互いに打ち消し合うからである。さらに、遅波材37の厚みは、上記の2例に限らず、同じ原理により、約(N+m/4)×λg (Nは0以上の整数、mは1以上の奇数)である場合にも同様の効果を得ることができる。ここで、N+m/4(Nは0以上の整数、mは1以上の奇数)は、m+4Nを新たなmとして置きかえることにより、単純にm/4(mは1以上の奇数)として表現することができる。したがって、遅波材37の厚みは、(m/4)×λg (mは1以上の奇数)であればよいといえる。
【0030】
次に、図1に示したプラズマ装置の動作を説明する。
基板21を基板台22の載置面に置いた状態で、処理容器11内を例えば0.01〜10Pa程度の真空度にする。この真空度を維持しつつ、ノズル17からプラズマガスとしてArを、またプロセスガスとしてCF4 を供給する。この状態で、高周波発生器44からの電磁界を同軸導波路41を介してラジアルアンテナ30に供給する。
【0031】
ラジアルアンテナ30に供給された電磁界Fは、ラジアル導波路の中心部から周縁部に向かって放射状に伝搬しながら、複数のスロット36から少しずつ放射されてゆく。ラジアルアンテナ30から放射された電磁界Fは、誘電体板13を透過し、処理容器11内に導入される。そして、この電磁界Fの作用により処理容器11内のArが電離して基板21の上部空間Sにプラズマが生成され、またCF4 が解離する。プラズマは、基板台22に印加されたバイアス電圧によってエネルギーや異方性がコントロールされ、基板21上に付着したラジカルCFx (x=1,2,3)と共にプラズマ処理に利用される。
【0032】
このプラズマ装置では、ラジアルアンテナ30の開口部35における遅波材37の厚みが略(N+1/4)×λg であり、m/4×λg (mは1以上の奇数)の条件に該当するので、同軸導波管41とラジアルアンテナ30との接続部における反射損失は抑制される。したがって、ラジアルアンテナ30の放射量が高まるので、プラズマ生成効率を向上させることができる。なお、ラジアルアンテナ30及び同軸導波路41の製作誤差による特性変化を、遅波材37Aで矯正することもできるので、ラジアルアンテナ30の開口部35における遅波材37の厚みは厳密にm/4×λg ではなくても、本発明の効果は得られる。
【0033】
また、本発明の効果は、遅波材37の大小にかかわらず得ることができる。
(第2の実施の形態)
図8は、本発明のプラズマ装置の第2の実施の形態の一部の構成を拡大して示す断面図である。この図は、第1の実施の形態における図3に相当するものであり、図3と同一部分を同一符号をもって示し、適宜その説明を省略する。
【0034】
この形態でも、ラジアルアンテナ30の開口部35における遅波材37の同軸方向の厚みは、管内波長λg の略(N+1/4)倍に調整されており、さらに同軸導波路41Aの外導体51A及び内導体52Aの両方がラジアルアンテナ30の導体板31,32との接続部にテーパー部51B,52Bをそれぞれ有している。図8(a)〜図8(c)では、外導体51Aのテーパー部51Bの底面の半径とRとの差をW、テーパー部51Bの高さをH、テーパー部51Bのテーパー角度をαとし、内導体52Aのテーパー部52Bの底面の半径をpr、テーパー部52Bの高さをpz、テーパー部52Bのテーパー角度をβとする。テーパー角度α,βは、図8(d)に示すように、軸線(一点鎖線)を含む断面内におけるテーパー部51B,52Bの母線(太線)の間の角度をいう。
【0035】
図9は、R=19.4mm,r=8.45mm,D=5.0mm,W=10.0mm,H=5.0mm,f=2.45GHz,εr =9.6として、prとpzを変化させて反射量を計算した結果を示す図である。
【0036】
(pr−r)/pzが1より小さい場合に、より良い特性が得られている。図8(c)に示すように、
tan(β/2) = (pr−r)/pz
であるから、テーパー角度βは90゜よりも小さいことが望ましい。
【0037】
また、図9では、pzを2.5mm以上とすると、prとの関係で反射量を−20dB以下に抑えられることが分かる。ラジアルアンテナ30の導体板31,32の間隔Dは5.0mmであるから、内導体52Aのテーパー部52Bの起点52Cは、導体板31,32の厚み方向の中間位置よりも上にあることが望ましい。
【0038】
さらに、内導体52Aのテーパー部52Bの起点52Cは、開口部35における遅波材37Aの表面の位置と同一またはより下にあり、遅波材37A内に埋没していることが望ましい。
【0039】
ラジアルアンテナ30の作成にあたっては、遅波材37Aの比誘電率εr に誤差が生じることを考慮しなければならない。そこで、比誘電率εr が9.6から±0.5ずれたときの反射量を計算した。図10は、εr =9.1としたときの計算結果を示す図、図11は、εr =10.1としたときの計算結果を示す図である。比誘電率εr が変化しても、W=10.0mm,H=5.0mm,pr=11.5mm,pz=7.0mmでは、−20dB以下の反射量が実現されている。
【0040】
なお、図10の計算結果は、εr =9.1の場合はD+H≒λg/4となるので、内導体52Aのテーパー部52Bのテーパー角度βを小さくし導体板31からの反射を大きくしたときに、反射量の最適値が得られることを示している。また、図11の計算結果は、εr =10.1の場合はD+Hとλg/4との差が大きくなるので、内導体52Aのテーパー部52Bのテーパー角度βを大きくし導体板31の上方位置からの反射を大きくしたときに反射量の最適値が得られることを示している。このため、εr =10.1の場合は、反射量の最適値が−30dB以上となり、εr =9.6,9.1の場合と比較して反射量が大きくなるので、好ましくない。
【0041】
図12は、R=19.4mm,r=8.45mm,D=5.0mm,pr=11.5mm,pz=7.0mm,f=2.45GHz,εr =9.6として、WとHを変化させて反射量を計算した結果を示す図である。
【0042】
この図から、W=10.0mm,H=5.0mmで反射量が最小になっていることが分かる。この場合、D+Hで求められる遅波材37Aの厚みは10.0mmであり、約λg/4(≒9.7mm)となっている。ここで、D+Hはλg/4と完全には一致していない。実際に、D+H=9.7mmとなるH=4.7mmを用いて図9と同様の計算をすると、その結果は図13に示すようになり、H=5mmとした図9ほど反射量が減少しないことが分かる。その理由は、外導体51A及び内導体52Aのそれぞれにテーパー部51B,52Bがあり、そこでも電磁界の反射が起こるからである。したがって、遅波材37Aの厚みについては、λg/4に対して数%の許容範囲をもって設計すればよいといえる。
【0043】
また図12では、W/Hが1より大きい場合に、より良い特性が得られている。図8(b)に示すように、
tan(α/2) = W/H
であるから、テーパー角度αは90゜よりも大きいことが望ましい。
【0044】
また、外導体51Aのテーパー部51Bの起点51Cは、開口部35における遅波材37Aの表面の位置とほぼ同一になっていることが望ましい。同軸導波路41Aのインピーダンスは、遅波材37Aの表面でステップ状に変化するので、その位置からテーパー部51Bを形成すれば、インピーダンス変化を緩和させることができる。もちろん、若干の反射が支障にならない場合は、この限りではない。
【0045】
以上の解析結果から、W=10.0mm,H=5.0mm,pr=11.5mm,pz=7.0mmとして、試作実験を行なった。図14は、この実験によって得られた反射量の周波数特性を示す図である。この図には、εr =9.1、εr =9.6、εr =10.1としたときの計算値を共に示している。
【0046】
実験値(exp)のピークの周波数が計算値とずれているが、これは遅波材37Aの比誘電率εr が設計値(εr =9.6)より低い方にずれていたためと考えられる。また、反射量が設計周波数(f=2.45)で−18dBまでしか落ちていない。この原因は、製作誤差によるものである。すべてのパラメータで±0.3mm程度の誤差しか許されないため、−20dB以下の反射量にはならなかったと思われる。
【0047】
なお、図8では同軸導波路41Aの外導体51A及び内導体52Aの両方がテーパー部を有している形態を示したが、いずれか一方のみがテーパー部を有していても、反射量減少には効果がある。
【0048】
(第3の実施の形態)
ラジアルアンテナ30の給電用の導波路として、円筒導波管を用いることもできる。図15は、ラジアルアンテナと円筒導波管との接続部を拡大して示す断面図である。この図において、図1と同一部分を同一符号をもって示し、適宜その説明を省略する。
【0049】
円筒導波管61はラジアルアンテナ30の導体板32の開口部35に接続されている。この円筒導波管61を用いた場合でも、ラジアルアンテナ30の開口部35における遅波材37の管軸方向の厚みを、管内波長λg の略(N+1/4)倍に調整することにより、反射電力を低減して処理容器11への供給電力を増やし、プラズマの生成効率を向上させることができる。
【0050】
また、ラジアル導波路の内部において、導体板31の中心部には、開口部35に向かって突出する円錐部材38が設けられている。この円錐部材38も導体板31,32等と同じ導体で形成されている。この円錐部材38には、図8(a)に示した内導体52Aのテーパー部と同様に、インピーダンス変化を緩和させることによって反射電力を低減する作用がある。
【0051】
(その他)
以上ではスロットアンテナの一例としてラジアルアンテナを用いて説明してきたが、これに限定されるものではなく、他のスロットアンテナ、例えばキャビティーアンテナを用いても同様の効果を得られる。このキャビティーアンテナとは、高周波発生器から供給された電磁界を所定のモードで共振させる空洞共振器を有し、この空洞共振器の下面に電磁界を放射するためのスロットが複数形成されたアンテナである。なお、キャビティーアンテナでは、空洞共振器の上面中心部に電磁界導入用の開口部を設ける必要はない。
【0052】
また、矩形導波路アンテナを用いても同様の効果を得られる。このアンテナアレーは、矩形導波路の一つの面に複数のスロットが形成されたアンテナである。
【0053】
また、本発明のプラズマ装置は、ECR(electron cyclotron resonance)プラズマ装置にも適用することができる。また、本発明のプラズマ装置は、エッチング装置、CVD装置、アッシング装置などに利用することができる。
【0054】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、スロットアンテナの給電用開口部における遅波材の厚みを、遅波材に対する電磁界の波長の略m/4倍(mは1以上の奇数)とする。これにより、遅波材の表面で反射された電磁界と、スロットアンテナの導体板で反射された電磁界とが逆相になり、互いに打ち消し合うので、反射電力を低減できる。したがって、スロットアンテナから処理容器11への供給電力が増えるので、プラズマの生成効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のプラズマ装置の第1の実施の形態の構成図である。
【図2】 ラジアルアンテナをII−II′線方向からみた平面図である。
【図3】 ラジアルアンテナと同軸導波路との接続部を拡大して示す断面図である。
【図4】 図1に示したプラズマ装置の作用の第1の説明図である。
【図5】 図1に示したプラズマ装置の作用の第2の説明図である。
【図6】 図1に示したプラズマ装置の作用の第3の説明図である。
【図7】 図1に示したプラズマ装置の作用の第4の説明図である。
【図8】 本発明のプラズマ装置の第2の実施の形態の一部の構成を拡大して示す断面図である。
【図9】 同軸導波路の内導体のテーパー部に関する計算結果を示す図である(εr =9.6,)。
【図10】 εr =9.1として、図9と同様の計算をしたときの結果を示す図である。
【図11】 εr =10.1として、図9と同様の計算をしたときの結果を示す図である。
【図12】 同軸導波路の外導体のテーパー部に関する計算結果を示す図である。
【図13】 H=4.7mmとして、図9と同様の計算をしたときの結果を示す図である。
【図14】 試作実験によって得られた反射量の周波数特性を示す図である。
【図15】 本発明のプラズマ装置の第3の実施の形態の一部の構成を拡大して示す断面図である。
【図16】 従来の高周波プラズマ装置の一構成例を示す図である。
【図17】 ラジアルアンテナと同軸導波路との接続部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
11 処理容器、13 誘電体板、16 排気口、17 ノズル、21 基板、22 基板台、30 ラジアルアンテナ、31,32 導体板、35 開口部、36 スロット、37 遅波材、37f (遅波材の)表面、38 円錐部材、41,41A 同軸導波路、45 高周波発生器、51,51A 外導体、52,52A 内導体、51B,52B テーパー部、51C,52C テーパー部の起点、61 円筒導波管、F 電磁界、λg 管内波長、α,β テーパー角度。
Claims (8)
- 対向する2枚の導体板の一方にスロットが複数形成され他方に開口部を有するスロットアンテナと、このスロットアンテナの2枚の導体板の間に配置された誘電体からなる遅波材と、前記スロットアンテナの開口部に接続され前記スロットアンテナに給電する導波路と、前記スロットアンテナから電磁界が供給される容器とを備えたプラズマ装置において、
前記スロットアンテナの開口部における前記遅波材の厚みが、前記遅波材に対する電磁界の波長の略m/4倍(mは1以上の奇数)であることを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項1に記載のプラズマ装置において、
前記導波路は、前記スロットアンテナの前記2枚の導体板の一方に接続された内導体と、前記2枚の導体板の他方に接続された外導体とを有する同軸導波路であることを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項2に記載のプラズマ装置において、
前記同軸導波路の内導体及び外導体の少なくとも一方は、前記スロットアンテナの2枚の導体板との接続部にテーパー部を有することを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項3に記載のプラズマ装置において、
前記同軸導波路の内導体の前記テーパー部の起点は、前記遅波材内に埋没し、前記スロットアンテナの2枚の導体板の厚み方向の中間位置よりも前記開口部側にあることを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項3または4に記載のプラズマ装置において、
前記同軸導波路の外導体の前記テーパー部の起点は、前記ラジアルアンテナの開口部における前記遅波材の表面の位置と略同一であることを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項3から5のいずれかに記載のプラズマ装置において、
前記同軸導波路の内導体のテーパー角度は、90゜より小さいことを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項3から6のいずれかに記載のプラズマ装置において、
前記同軸導波路の外導体のテーパー角度は、90゜より大きいことを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項1に記載のプラズマ装置において、
前記導波路は、円筒導波管であることを特徴とするプラズマ装置。
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