JP3898722B2 - 磁気共鳴診断装置 - Google Patents

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Description

本発明は、代謝機能を観測するための磁気共鳴診断装置に係り、特に13C標識化合物を被検体に投与して代謝機能を観測するための磁気共鳴診断装置に関する。
生体内の代謝情報を観測することで、形態異常を呈する前に疾病の早期診断ができる。既に、 1H、13C、31P等の核種に基づく生体内物質をスペクトル観測することで、代謝障害、腫瘍、痴呆症等多くの疾病診断の可能性が報告されている。
特に、13CによるMRS(Magnetic Resonance Spectroscopy) 、MRSI(Magnetic Resonance Spectroscopic Imaging)は、化学シフトが広く、アミノ酸、糖、脂質など、細胞の代謝機能に直接関与し生体機能の維持の根幹を成す多くの生体物質を高精度で観測できるため、これらの物質の供給量、分布に基づいて疾病の早期段階での把握に期待されている。しかし、13Cの天然存在比は約1.1パーセントと低いうえに、13Cの検出感度が 1Hに比べ約1/64と低いため、生体内の代謝物を観測するために、体外から13Cを標識した化合物を投与することが通常行われている。体外から投与された標識化合物は、トレーサとしての役目を持ち、これから検出される信号を基に生体内の代謝状態を把握できることが指摘されている。しかし、これまでの13Cスペクトルからは細胞の代謝情報を得ることができるが、血流、あるいは血液量に関する情報を同時に観測することができなかった。したがって、生体内の代謝物の濃度、時間に関連したパラメータ値だけでは、脳等の対象領域自体が機能障害を起こしているのか、対象領域への血液供給系統で障害が発生しているのかを判別することができなかった。
ところで13Cの検出感度は 1Hに比べて約1/64と低いため、MRS(Magnetic Resonance Spectroscopy )で13Cのスペクトルを良好に観測するためには、ボクセルサイズを大きくする、又は加算平均回数(アベレージング回数)を増やす必要があり、同様にMRSI(Magneti c Resonance Spectroscopic Imaging )の場合にもデータ収集時間や代謝物濃度に応じてボクセルサイズを大きくとる必要がある.この際に、目的とする観測対象領域が1ボクセルより微小にも関わらず、2ボクセル以上に跨って配置された場合には、収集された離散点で代表されるボクセル内の平均値に対して標本化定理を適用することによって、観測対象領域に合致させた位置の代謝物濃度を推定していた。
しかし、推定された代謝物濃度は、関心領域の一部分を含んだ複数ボクセルの平均値から算出された値であり、画像位置、また、定量性の面から診断に用いるには信頼性が十分ではなかった。
また、得られた13Cのスペクトル情報を単にスペクトルとして表示していることが多く、実際に診断を行うためには、医者が目的とする代謝物の存否をスペクトルパターンから視覚的に判断していた。
しかし、特に13C等の場合には観測されるスペクトルピークの数が多いことから、スペクトルパターンが複雑となり、どのスペクトルのピークがどの化合物を示すかを瞬時に判断することが困難となる。従って、観測者が標準のスペクトルパターンと照らし合わせながらスペクトルピークの同定を行っていた。
さらに、時系列的、ボクセル毎に多量なスペクトルデータから、スペクトルピークの判別を行う場合には膨大な時間を要し、なおかつ、スペクトルピークの同定を誤る危険が伴っていた。
同様に、これまでは得られたスペクトル情報を単にスペクトルとして表示し、医者がその存否を視覚的に判断するか、あるいは、ピーク高さあるいは、簡略化した面積値から、疾病の有無を判断するに留まっていた。これらの値は測定装置、被検体の設置状態によって大きく影響を受けるため、検査毎に規格化された値しか算出・表示できなかった。
また、13C標識物質を利用しても依然スペクトルS/Nが十分でないため、近年、13Cから生じる磁気共鳴信号を直接観測するのではなく、13Cに結合した 1Hから生じる磁気共鳴信号を観測することによって、この検出感度の低さを克服する試みがなされている。しかし、 1Hスペクトルを観測する場合には、前述した磁場の不均一性によるスペクトル線幅の広がりの影響を同様に受ける。このため、磁場均一性を向上するために、シムコイル電流を制御することで磁場分布の補正を時間をかけて行っていた。しかし、生体が誘起する高次成分を有する磁場分布領域では磁場均一性調整に限界があり、十分なスペクトルが得られていなかった。
生体内の代謝物を感度高く検出するには 1Hスペクトルを観測することが有利であるが、磁場不均一性のためにスペクトル線幅が広がり、スペクトルS/Nの劣化とともに、スペクトルピークの検出・同定が非常に困難となる。
特開平5−115453号公報
本発明の目的は、磁場分布を用いないで、化学シフトのずれを補償して、化合物を同定することにある。
本発明のある局面は、静磁場内に載置された被検体に高周波磁場を印加した後、磁気共鳴信号を収集し、前記磁気共鳴信号に基づいて観測スペクトルを観測する磁気共鳴診断装置において、基準物質のスペクトルに関する複数個の極大点と各々対応する化合物の情報を記憶する手段と、前記観測スペクトルについて所定の閾値を越える複数個の極大点を検出する手段と、前記検出された観測スペクトルに関する複数個の極大点を、前記記憶された基準物質のスペクトルに関する複数個の極大点に対して位置誤差を最小化するように対応付ける手段と、前記検出された観測スペクトルの極大点各々に関する化合物を、前記基準物質のスペクトルに関する複数個の極大点との対応付け、及び前記基準物質のスペクトルに関する複数個の極大点各々対応する化合物の情報に基づいて同定する手段とを備えることを特徴とする。
本発明のある局面によれば、磁場分布を用いないで、化学シフトのずれを補償して、化合物を同定することができる。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
(第1参考例
図1は第1参考例の磁気共鳴診断装置の構成図である。主磁石10は主磁石電源11から電流供給を受けて主磁場(静磁場)を発生する。X、Y、Zの3組のコイルからなる勾配コイル系12は勾配コイル電源13から電流供給を受けてX、Y、Zの各軸方向に独立に線形の勾配磁場を生成する。複数のシムコイルを含むシムコイル系14はシムコイル電源15から電流供給を受けて磁場不均一性の補正磁場を発生する。多核種の磁気共鳴信号の信号検出可能なようにチューニング可能に構成された高周波プローブ(RFコイル)16は、送信器17から高周波電流の供給を受けて高周波磁場(RFパルス)を印加する。受信器18は、被検体からの磁気共鳴信号を高周波プローブ16を介して受信し、増幅及び検波する。また多核種に対応するために複数系統の送受信系を具備するものも考えられる。シーケンスコントローラ19は、勾配コイル電源13、送信器17、受信器18を制御して後述するパルスシーケンスを実行する。CPU/メモリ20は、磁気共鳴信号に基づいて13Cのスペクトルの観測や化学シフトイメージングを可能とする。なお、13C表示標識化合物を口くう投与するケースを考えると、被検体を設置する図示しない寝台として、被検体の横臥姿勢を維持する負担を軽減するために、被検体の横臥姿勢を保持する適当な窪みを備えた寝台や、寝台が長手軸に関して傾斜する構造を有する寝台を採用することが好ましい。
図2は代謝機能を診断するための13C−Glcを投与した場合のスペクトルを示している。周知の通りスペクトルに基づいて細胞の代謝情報を得ることが可能である。代謝経路が円滑に行われるには必要なGlcが脳組織に取り込まれる必要がある。但し、この代謝機能を精度よく診断するには、脳組織内に一定の血流量が供給されているか、つまり血液供給系統(動脈系統)の障害の可否を判定することを前提としなければならない。本参考例において、血液供給系統(動脈系統)の障害の可否を判定するために、代謝機能を診断するための13C−Glcの他に被検体に投与される13C標識化合物としては、その濃度に基づいて血流情報(血流量)を推定可能な対象組織(脳)に非代謝のものであり、より具体的には13CH2 13CH4 13CO、場合によっては13C標識アルコール化合物が選定される。この非代謝の13C標識化合物の濃度は、スペクトルの面積や高さに基づいて推定される。脳領域の血流量が一定量を満たしているか否かの判断により対象組織への血液供給系統(動脈系統)の障害の可否を判定することが可能となる。
図3は脳における代謝機能の様子を模式的に示している。脳血流情報を得るために、Fickの原理を用いた脳内血流量の定量的測定法が1948年KetyとSchmidtにより提案されている。この原理を応用して脳血流量の定量的測定がSPECT(Single Photon Emission CT) 、PET(Positoron EmissionTomography) の分野では既に研究・臨床に広く用いられている。
また、非代謝の13C標識化合物を含む13Cのスペクトルと、上記Kety−Schmidt法を用いることで磁気共鳴の分野でも、脳血流の動態(供給及び流出系統の障害の有無)を観測することができる。
その方法として、瞬時に非代謝の13C標識化合物を被検体に吸入又は注入させ、脳領域と動脈領域(供給系統)各々の領域で磁気共鳴信号を経時的に収集し、各領域の13Cスペクトルを得、この13Cスペクトルに基づいて当該13C標識化合物の濃度(この濃度が血液量と略比例関係にある)の時間変化を測定し、脳血流量F及び分配係数を求めるクリアランス法を用いることが考えられる。この際に考えられるコンパートメントモデルの一例を図4に示す。13C標識化合物濃度に反映される血流量S(t)の瞬間量は、動脈血中の標識化合物濃度Caと、静脈血中の標識化合物濃度Cvとの関数として(1)式で与えられる。
dS(t)/dt=F(Ca(t)−Cv(t)) =F(Ca(t)−S(t)/λ)…(1)
λ:分配係数
ここで、図5に示すように非代謝の13C標識化合物が動脈から脳組織へ一方向のみに移行すると仮定すると、(1)式は(2)式に簡易化される。
dS(t)/dt=F(Ca(τ)dτ)…(2)
この指標から13C標識化合物が脳へ取り込まれる経路、つまり血液の供給系統における障害の有無を診断することが可能となる。
ここで、血流量の定量的な診断を行う場合には動脈血採血並びにスペクトルから13C標識化合物量を定量化する必要があるが、相対値による診断、あるいは、時定数等の時間に依存したパラメータを抽出し、診断の指標に用いることも非常に有効であり、この場合にはスペクトルのみの観測で良い。
より、厳密に脳血流量を算出するために、Patlakが提案した方法を応用して、(3)式にしたがって直線の傾きから脳血流を算出することもできる。
S(t)/Ca(t)=F(Ca(τ)dτ/Ca(t)+V)…(3)
V:13C標識化合物が可逆的に取り込まれた体積
また、非代謝の13C標識化合物として13COを用いる場合、13COを吸入させることによって生成される13CO−ヘモグロビンによるスペクトルを観測することにより血管内のヘモグロビン量を推定することができる。従って、吸入からの13CO−ヘモグロビンスペクトルの変化を観測することで血液量又は血液循環を把握することが可能となる。この際に定量性を向上させるために静脈血採血により血液中の非代謝の13C標識化合物濃度を観測することが有効である。また、呼気中の標識化合物濃度をクロマトグラフィを初めとした分析装置によって観測することも定量性を高める上で非常に有用である。
このような血液供給系統の障害の有無を判別するための非代謝の13C標識化合物を、代謝情報を観測するために投与される13C−グルコースと同時、又は13C−グルコースの投与から所定時間後に静脈、口くう吸飲又は吸入により投与させることにより、13Cのスペクトルに基づいて代謝情報と、血流動態情報(血液供給系統の障害の有無)とを一元的に観測することができる。
なお、この非代謝の13C標識化合物は13C−グルコースと同時に、被検体を寝台に設置する前、又は寝台への設置後に投与される。また、13C−グルコースを投与した後、非代謝の13C標識化合物をデータ収集期間中に連続的又は断続的に投与してもよい。また、非代謝の13C標識化合物を投与してから13C−グルコースを投与してもよいし、データ収集前からデータ収集期間終了までの期間の中の任意の期間にのみ限定的に断続的に投与してもよい。
なお、13C−グルコースを投与する場合等は脳組織への取り込みに時間を要するため、被検体を寝台に設定する前に口くう投与を行い、一定の取り込み時間経過後に被検体を寝台に設定することが被検体の拘束時間を短縮し、負担を軽減する面から好ましい。また、非代謝の13C標識化合物と13C−グルコースを同時投与してまず血流動態情報のみ観測し、その後、被検体を寝台から解放し、一定の取り込み時間経過後に寝台に被検体を設置して位置合わせした後、今度は代謝情報を観測するようにしてもよい。
また、被検体を寝台に設定した後に観測対象領域の位置決めを行い、この後に13C標識化合物を口くう投与する場合、被検体に無理なく標識化合物を投与するために寝台が傾く機構や、寝台に横臥姿勢の被検体の体曲線に沿って窪みを設けていることが望ましい。勿論、仰向けの姿勢をとるとき寝台が平面になるように、窪みに蓋が取り付けられるようになっている。このように横臥姿勢で、チューブやストローを使って被検体がむせることなく無理なく標識化合物を投与することができるようになる。
このような非代謝の13C標識化合物を時間経過とともに追加しながら、すななち、連続的あるいは断続的に投与しながらスペクトルデータを収集する場合が考えられる。このような操作を行うことで、13C標識化合物の生体内への取り込み状態、又は負荷試験を行うことができる。
さらに、本参考例では、コンソール21を介して入力した非代謝の13C標識化合物の名称及び代謝の13C標識化合物の名称を、各々の投与時刻と共にモニタ22に表示することは、医師によるスペクトルの分析の参照になる点において有効である。
(第2参考例
第2参考例は、磁気共鳴現象を利用して被検体内部の形態画像及び化学シフト画像を観測することの可能な磁気共鳴診断装置に係り、特に観測対象領域の中央を化学シフト画像の単位領域の中心と一致させることを可能とする磁気共鳴診断装置に関する。
図6は第2参考例の磁気共鳴診断装置の構成図であり、図1と同じ部分には同符号を付して説明は省略する。高周波磁場を被検体に印加するために高周波プローブ16に高周波電流を供給する送信器23は、シーケンスコントローラ24の制御にしたがって高周波電流の波形を変化させることが可能に構成される。この高周波電流の波形が変化すると、高周波磁場の周波数帯域がシフトし、これにより一定のスライス勾配磁場のもとではスライス選択領域が実質的に移動する。勾配磁場を発生させるために勾配コイル系12にパルス電流を供給する勾配コイル電源13は、シーケンスコントローラ24の制御にしたがってパルス電流の継続時間又は強度を変化させることが可能に構成される。CPU/メモリ25は受信器18を介して受信された磁気共鳴信号から形態画像及び化学シフト画像を構成する。また、CPU/メモリ25は、モニタ22に形態画像に単位領域のマトリクスを合成表示させる機能を有する。また、CPU/メモリ25は、オペレータによりコンソール21を介して指定された、観測対象領域と単位領域それぞれの中央を一致させるのに必要な単位領域の移動量及び移動方向を算出し、さらにこの移動量及び移動方向に基づいてオフセット量(RFパルスの周波数のシフト量、オフセットの継続時間や強度)を算出する機能を有する。算出されたオフセット量は、シーケンスコントローラ24を介して実現される。
疾病を早期に診断可能な場合には、化学シフト範囲の広い13Cが用いられる。13Cが天然に存在する割合が低いため(約1.1パーセント)、磁気共鳴信号を観測することが非常に困難である。このため、エンリッチした13C標識化合物(例えば13C−グルコース)を投与することが通常行われる。しかし、このような場合にも現在のところ、1時間程度の計測時間でボクセルサイズが約8cc以上の大きさになってしまう。従って、脳のより詳細な疾病診断を行うために、例えば海馬、下垂体等の各部位のグルコース、グルタミン、グルタミン酸等の代謝物を観測する場合には、図7に示すように観測対象領域がボクセルサイズに比べて小さくなることがしばしば生じる。このような場合に再構成される代謝物の濃度値は、ボクセルに含まれる体積中の、観測対象領域外の組織との平均値とならざるをえない。したがって、図8(a)に示すようなボクセル内に観測対象領域が完全に含まれる場合以外、図8(b)、(c)に示すような観測対象領域が2以上のボクセルに跨がるような場合には、各ボクセルの再構成値は平均値を示すことになり、本来、1ボクセル以下の広がりを持つ代謝物の分布が、2ボクセル以上に跨るボケた分布として観測されてしまう。最悪の場合には、信号値が各ボクセルに分散されることにより、スペクトルS/Nが劣化し、スペクトルピークの検出が困難となる。
このため、MRSIを施行する際に、観測を目的とする領域が既知の場合には、形態画像に類似するT1 あるいはT2 強調画像等によって目的とする観測対象領域の位置と、化学シフト画像の単位領域(ピクセル又はボクセル)の位置との位置関係を確認することが不可欠となる。観測対象領域が化学シフト画像の単位領域内に充填されない場合には、S/N、ボケの発生が避けられない。
図9に本参考例によるこのような位置ずれを解消するように改良された3D−MRSIパルスシーケンスを示す。
スライス方向(z軸)に関しては、観測対象領域の中央がスライス選択領域の中央(単位領域の中央と同じ)と一致するように、スライス勾配磁場Gs の存在下で印加される周波数調整された高周波磁場(RFパルス)に周波数オフセットをかけ、高周波磁場の周波数帯域をシフトさせる。これによりスライス選択領域が実質的に移動し、観測対象領域の中央がスライス選択領域の中央と一致することを可能とする。RFパルスの印加後、位相エンコード用の勾配磁場Ge1,Ge2をそれぞれx,y軸に関してかけ、その後、勾配磁場をかけないで磁気共鳴信号を収集し、この磁気共鳴信号の周波数情報から化学シフトを得ることができる。
x,y軸に関する位置ずれ補正は、図10、図11に示すように各軸に関してオフセット用磁場ωoffset-x,ωoffset-yを信号収集以前の任意のタイミングで印加することにより実現される。勿論、位相エンコード用勾配磁場Gx ,Gy にオフセット用磁場ωoffset-x,ωoffset-yを重畳してもよい。通常、3D−MRSIパルスシーケンスにて観測されるデータ列は(1)式で表される。以下3D−MRSIの場合について説明するが、4D−MRSIの場合もさらに1軸を考慮することで同様に表現できる。
Figure 0003898722
いま、位相エンコード用勾配磁場に加えてXY各方向に同じオフセット用磁場ωoffset-x,ωoffset-y(=ωoffset)を印加すると、観測されるデータ列は(2)式のように変形される。
Figure 0003898722
このようなオフセット用磁場を印加することにより、X、Y方向のエンコード磁場強度に応じ、再構成画像(化学シフト画像)ρ’(x、y)を、(3)式のように、X、Y各方向に化学シフト画像の単位領域(ピクセル又はボクセル)を実質的に移動させる。
Figure 0003898722
しかし、この場合にはX、Y両方向に同距離だけ移動するので、単位領域が立方体の場合には、スライス平面に対して45度方向の移動しかできない。
これに対して、図10のように、オフセット用磁場ωoffset-x,ωoffset-yをその強度一定のもとで、その継続時間を任意に調整することで、収集されるデータ列は(4)式のように、また再構成画像ρ’(x、y)は(5)式のように表され、任意の方向に任意の距離だけ化学シフト画像の単位領域を観測対象領域に対して移動させることができる。
Figure 0003898722
Figure 0003898722
図11のように、オフセット用磁場ωoffset-x,ωoffset-yの継続時間一定のもとでその強度を調整することでも、図10と同様に任意の方向に任意の距離だけ被検体に対して化学シフト画像の単位領域を移動させることができる。
なお、観測対象領域の大きさが単位領域以上ではあるが、さらに隣接する1ボクセルに満たない場合には、ボクセル配置を移動する他に、同様な考えに基づき、上述した0次のオフセット用磁場とは別に、その観測対象領域の辺縁部形状に応じた分布を持つ他のオフセット用磁場を信号収集に先だって印加することによって観測対象領域を1ボクセル、あるいは任意のボクセルに収めることができ、信号S/Nが改善される場合がある。
また、同一被検体の場合でも検査日時が異なり、位置が若干ずれることによる代謝物の定量性の劣化を、MRSIを行うに先立ち収集した形態画像から移動量を算出することで極力抑制することができる。この形態画像は、毎回収集することが望ましいが、過去の形態画像、さらには他のモダリティで得た画像(X線CTスキャナ画像等)を使って移動量を推定することができる。
上記移動量は、CPU25の制御によりモニタ22に形態画像に単位領域のマトリクスを合成表示させ、観測対象領域と単位領域それぞれの中央をオペレータがコンソール21を介して指定すれば、CPU25により観測対象領域と単位領域それぞれの中央を一致させるのに必要な移動量が算出され、さらにこの移動量に基づいてオフセット量(RFパルスの周波数のシフト量、オフセット用磁場の継続時間や強度)が算出される。
なお、上述したように、RFパルスや磁場によるオフセットにより位置ずれを補正する代わりに、パルスシーケンスを変化させずに、寝台の前後、左右、上下の動きにより位置補正を実現してもよい。なお、この場合、寝台にスケールを設けることが好ましい。4D−MRSIの場合には、空間3方向のボクセル配置を考慮して寝台あるいは被検体を移動させる必要がある。
本発明の実施形態)
本発明の実施形態は、磁気共鳴現象を利用して被検体の代謝物・化合物のスペクトルあるいは代謝物画像を観測する磁気共鳴診断装置に関する。
図12は実施形態に係る磁気共鳴診断装置を示す図である。図12において図1と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。シーケンスコントローラ19は、勾配コイル電源13、送信器17、受信器18を制御して、形態画像、例えば13Cのスペクトル、代謝物画像各々を取得可能なパルスシーケンスを実行する。CPU/メモリ26は、受信器18が高周波プローブ16を介して受信した磁気共鳴信号に基づいて形態画像、例えば13Cのスペクトル、代謝物画像を作成する。また、CPU/メモリ26は、スペクトルからスペクトルピークを検出し、スペクトルピークの化学シフト値に基づいて化合物を判別するために必要な情報を記憶すると共にこの情報を用いてスペクトルからスペクトルピークを検出し、スペクトルピークの化学シフト値に基づいて化合物を判別する機能を有する。モニタ22には、スペクトルがCPU/メモリ26により判別された化合物の名称と共に表示される。
図13にエンリッチ(高濃度化)した13C標識化合物、例えば13C標識グルコースを投与して、ラット脳抽出液から観測されるスペクトルの一例を示す。Glc、Glu、Glnを初め、GABA等のピークが複雑に現れることが理解される。図13はin−vitroスペクトルであるが、in−vivoの場合にも同様なスペクトルパターンを示す。分析化学の分野では、このような複雑なスペクトルを解析し、分子構造を決定することが行われている。分子構造解析を行う場合のように観測されるスペクトルの化合物分子の起源が不明な場合が多く、その同定(判別)に非常な時間・労力を要するのに対し、臨床の場合には、生体内に含まれている化合物が比較的限定され、しかも既知であるため、スペクトルのピークを検出し、ピークがいかなる化合物由来かを示すことが可能である。このようなスペクトルピークと化合物との対比を迅速に行うことが、診断を効率的に行うこととなる。本実施形態ではこれを実現する。
しかし、臨床の場合には生体内部の各領域に内部基準物質を設定し、基準スペクトルを規定することが困難である。つまり、磁場不均一性等のために化学シフト軸がずれるので、観測された化学シフト値から化合物を同定することができない。また、疾病等の種類によっては、正常の場合に比べてスペクトルピークが消失したりする場合があるため、より化合物の同定を困難にしている。
本実施形態では、化合物の同体に先立って、磁場の不均一性に起因する化学シフトのずれを補正する。このずれ補正のためには、信号感度の観点から、 1Hのスペクトルを用いることが好ましい。図14のように、実際に観測した水スペクトルの周波数f0 に対する既知の水スペクトルの周波数との差Δf1 ,Δf1 2 を求める。この周波数差Δf1 ,Δf1 2 が磁場不均一による化学シフトのずれ量である。図14(a)はA領域の実際に観測した水スペクトル、図14(c)はA領域の水の基準スペクトル、図14(b)はB領域の実際に観測した水スペクトル、図14(d)はB領域の水の基準スペクトルを示している。図中、A領域から観測される水スペクトルが、基準スペクトルの中心周波数f0 から−Δf1ずれているため、観測されたスペクトルを化学シフト軸上に+Δf1 ずらすことが行われている。また、領域Bから観測されている水スペクトルが基準スペクトルの中心周波数f0 から+Δf2 ずれているため観測スペクトルを−Δf2 ずらし補正を行っている。
ただし、基準スペクトルとして 1Hを用い、観測スペクトルが 1H以外の核種の場合には、 1H系の送受信周波数と観測核種を励起、受信するための送受信周波数間の校正を予め行っておく必要がある。
また、位相画像をもとに磁場分布が取得し、対応する領域の磁場分布を空間的な補間処理等を行うことで、スペクトルが受ける化学シフトのずれの影響を補正するようにしてもよい。
この後に、任意の閾値を越えたスペクトルピークの化学シフト値を検出し、予め核種毎、臓器毎にCPU/メモリ26に登録されている化学シフト値と化合物との対応に従って、検出されたスペクトルピークに対応する化合物を同定することができる。
同定した化合物の名称を、スペクトルと共にモニタ22に表示することで測定者がスペクトルパターンに基づいて化合物を同定する手間を省き、しかも同定した化合物の誤りを解消することができる。
ここで、磁場分布を用いないで、化学シフトのずれを補償して、化合物を同定する方法を以下に説明する。簡単には、基準スペクトルと観測スペクトルの各波形パターンが最も近似する位置関係を模索し、観測スペクトルの各ピークの化合物を、基準スペクトルのピークに予め対応されている化合物として同定する。具体的には次のように行われる。
先ず初めに、図15(a)に示すように、任意の閾値を越えるスペクトルに関して、そのM個の極大点の化学シフト値(周波数)の検出を行う。この化学シフト値をピーク値という。M個のピーク値CSMj(j=1、2・・・M)を検出し、格納する(図では3つのスペクトルピークを検出している)。図15(c)に基準スペクトルと、基準スペクトルに含まれるピーク値に対応するA〜Eの化合物を示している。基準スペクトルに含まれるN個のピーク値CSRi(i=1、2・・・N)は、対応する化合物と共にCPU/メモリ26に予め記憶されている。
第1の手順として図15(e)に示すように、最も低い(又は高い)ピーク値CSM1に、基準スペクトルの最も低い(又は高い)ピーク値CSR1を一致させる。この状態で、CSM2と、CSM2に最も近いCSRiとの差を求める。同様に、CSM3〜CSMM 各々についても、それぞれ最も近いCSRiとの差を求める。これらの差の合計D1を保持する。Dは、基準スペクトルと観測スペクトルの各波形パターンの近似度を示す指標としての意味を有し、低い程、近似していることを示している。図15(e)の場合には、D1=(d2 +d3 )となる。
次に、CSM1に次のCSR2を一致させ、同様にD2を計算する。CSM1をCSR3〜N に順番に一致させて、それぞれDを計算する。
そして最小値を示すDMIN を選定する。最小値DMIN が得られた基準スペクトルと観測スペクトルとの位置関係を、図15(f)に示す。この位置関係において、各観測ピーク値に対して、最も近い基準ピーク値を抽出し、この基準ピーク値に対応する化合物を各観測ピーク値として同定する。図15(f)の場合では、観測ピークCSM1〜3には化合物A、B、Dがそれぞれ同定される。
最後に、この化合物の名称をスペクトル上に合成して表示する。このような処理を、観測領域ごとに行う。また、時系列的に観測されたスペクトルデータについては、このような操作をある時間における1つのスペクトルデータに関して同定を行い、これ以外のスペクトルデータについては同定された結果を用いることが効率的である。
なお、スペクトルピーク検出の際に用いる閾値を、少なくともノイズの振幅値を越える値、好ましくノイズ振幅値の2倍以上に設定する。さらに、ピークを検出するために、予めフィルタ処理によってノイズ除去を行うことが効果的である。
さらに、同定された各化合物に関して、ピーク高、ピーク面積を算出し、各化合物の存在量を推定することは診断支援上有効である。また、時系列的にスペクトルが観測されている場合にはその時間変化を表す統計量・パラメータ値(時定数等)を算出することが診断に有効である。これら算出されたパラメータ値を空間的、時間的に表示することが非常に役に立つ。
一つの例として、化合物の空間的な存在量を反映したパラメータ値を画像に重ね合わせて表示することが考えられる。時間的に種々のパラメータ値が計測されている場合にはこの時間変化を1画面上、あるいは複数の画面に分割して表示することによってより詳細な診断が可能となる。また、時間変化を捕らえたパラメータ値の変化を順次表示するいわゆるシネ表示を行うことによって、単独には検出することが困難であった事象を検出することができる場合がある。
このとき、必要となる部分の時間範囲のデータ、必要となる部分の空間範囲のデータを設定して希望とする画面(サブウィンドウ)に表示することが非常に効果的である。
また、表示されているスペクトルピークのなかで、希望するスペクトルピークに関してスペクトルピークを選択・設定することで、該スペクトルピークに関する濃度・量を反映したパラメータ値、あるいは時間変化を表す画面(サブウィンドウ)を表示させることが望ましい。これによって、データ解析、あるいは診断の効率を向上させることができる。
また、各パラメータ値の標準的な値、あるいはこれらとの差を表示することで診断の信頼性、客観性を向上させることが可能である。さらに、検出されるべきスペクトルピークが観測されない、あるいは、異常を生じている等の場合には、該ボクセル(スペクトル)、時間等をメッセージ、色表示、警告音により示すことで診断の確実性を増すことができる。
(第3参考例)
参考例は、磁気共鳴現象を利用して被検体の代謝物・化合物のスペクトルあるいは代謝物画像を観測する際に、これら観測値から診断に有効なパラメータ値を抽出し、かつ、診断に供することを特徴とする磁気共鳴診断装置に関する。
図16は本参考例による磁気共鳴診断装置の構成図であり、図1と同じ部分には同符号を付して説明は省略する。CPU/メモリ27は、上記実施形態のようにスペクトルのピーク各々の化合物を同定する機能の他に、スペクトルピーク面積、スペクトルピーク高、スペクトルピーク幅の少なくとも1つを化合物毎に算出し、スペクトルピーク面積、スペクトルピーク高、スペクトルピーク幅の少なくとも1つに基づいて化合物濃度、緩和時間、拡散係数の少なくとも1つを推定し、化合物濃度、緩和時間、拡散係数の少なくとも1つの時間的変化を表す診断に有効なパラメータを化合物毎に算出する機能を有する。
図17に、脳領域の代表的な 1Hスペクトルを示す。通常、神経細胞に特有のNAA(Nアセチルアスパラギン酸)、あるいはCho(コリン含有化合物)、PCr/Cr(クレアチン燐酸/クレアチン)に対応したピークの存否により、正常/病態の鑑別診断がなされている。また、これら化合物のピーク高、スペクトルピーク下の信号強度積分値(ピーク面積)を算出する試みがなされているが、絶対量を算出することが困難なため、これらを指標にした診断を行うことは現在のところ顕著な効果が得られていないのが実状である。
参考例では、疾病を早期に診断可能な13C−MRSIに特に注目する。13Cの場合には、13Cが天然に存在する割合が低いため(約1.1パーセント)、磁気共鳴信号を観測することが非常に困難であるが、反面、体外から13Cを標識・エンリッチしたグルコース等を投与することによって、これらの化合物が代謝される様子を観測することが可能となる。図18には13C−Glcを投与後に観測される脳領域からのスペクトルが示されている。
図19に示すように13C−Glcのピーク高、ピーク面積値をいわゆるローレンツ曲線、あるいはガウス曲線によってフィッティングして算出した信号強度の時間変化のうち、増加分はほぼ体外から投与したGlcの脳内への取り込みとみなすことができる。組織に取り込まれたGlcは図20に概略を示す代謝経路にしたがって代謝され、種々のアミノ酸等に分解、合成されるため、Glcは減少傾向を呈する。この際に生じるGlu、Gln、(Glx)等の生成の度合いによって細胞の働きを評価することが考えられる。
ここで、これらの増加・減少曲線から図21の様に各相における増加時定数αu 、減衰時定数αd を近似的に算出し、比較することが考えられる。あるいは、立ち上がり・立ち下がり傾斜の最大値βu 、最小値βd も一つの良い指標となる。
また、実際に標識化合物を投与した時間から、対象領域から観測されるGlcが変化し始める時間t1、減少を開始する時間t2、あるいは、Glu、Gln、(Glx)等が変化し始める時間、平坦になる時間t4等を算出することによって、代謝時間等を知ることができる。このような時間変化を表す各パラメータ値は、患者固有の生体内の状態を反映しているため、装置等に起因する誤差が含まれず、絶対的な診断指標として考えることができる。また、各測定時間における増加・減少率、すななち微分値が役に立つ場合がある。各代謝物の最大値も診断指標の1つとなるが、絶対的なパラメータとして、これらの比をとることが有用な場合がある。
さらに、同一化合物であっても、図18のように13Cの置き変わる位置によって、観測されるスペクトル(化学シフト)が異なるため、これらの増加・減少の違いから、代謝状態の違いを検出することも可能であり、より詳細に生体内の様子を観察できる。例えば、2、3、4−Glu,Gln,Glx等のそれぞれの時間変化の割合、時定数、これらの差や比によって代謝経路の状態を推察して、疾病の鑑別を行うことができる。
さらに、血液中(動脈かつ、あるいは静脈)のGlc濃度・時間変化を測定することで、実際に脳に取り込まれたGlc、そこから生成されるGlu、Gln、(Glx)に関するパラメータ値を補正することができ、代謝のどの部分に障害が生じているかを把握することができる。このとき、肝臓等のGlc濃度を測定することでより詳細な情報を得ることができる。
これは、図22に示すコンパートメントモデルを仮定することにより、より定量性、妥当性を改善することができる。すなわち、血液中から対象とする組織(例えば脳)に取り込まれる糖代謝速度、あるいは各化合物の速度定数・平衡定数を推定することが可能となる。ただし、このようなモデルを厳密にたて、各間のパラメータ値を求めることは困難であるが、少なくとも、血液中からのGlc取り込み量、時定数から、Glu、Gln、(Glx)等の生成される割合を補正することによって、細胞のいかなる代謝経路が阻害されているか把握することができる。
さらに、13Cを投与した場合に既に体内に定常的に存在している12Cを観測し、上記と同様の種々のパラメータ値を算出することによって、13Cの変化に伴う12C変化、これらの差・比を把握することができ、より詳細に細胞の状態を把握することができる。
これら、算出された値を表示し、あるいは標準値からの差を表示する等して疾病の診断が容易になる。また、代謝物画像のように、複数のスペクトル情報が得られる場合には、上記パラメータ値を画像表示することで疾病領域を視覚的にとらえることができる。
また、これらパラメータを時間毎、ボクセル毎に表示することは有効である。このとき表示する時間範囲、ボクセル範囲、化合物の種類をコンソール21を介して入力し、指定された範囲内のパラメータについて表示することが考えられる。またこれら表示を1画面に行う他に、1画面中に分割(サブウインドウ)して表示する方法、また複数の画面に表示する方法が考えられる。またこれらパラメータを順次モニタ22にシネ表示することによって、1つのパラメータだけでは把握できない事象を診断可能になる。
また複数のパラメータを同時に1画面に表示することにより、さらに詳細な診断が可能となる。このとき各パラメータをカラーの濃淡値で表示して重畳させて表示することにより視覚的に障害部位を把握できる。
第4参考例
図23は第4参考例による磁気共鳴診断装置の構成図であり、図1と同じ部分には同符号を付して説明は省略する。第4参考例では、静磁場内の載置された被検体に高周波磁場を印加し、データ収集期間に被検体からの磁気共鳴信号を繰り返しサンプリングし、磁気共鳴信号に基づいてスペクトルを得る磁気共鳴診断装置であり、特にシーケンスコントローラ30の制御により、データ収集期間(サンプリング期間)中において、異なるサンプリング点の間(サンプリングインターバル)に磁場不均一性の影響を実質的にキャンセルするようなスピンを再結像させる高周波磁場(180°RFパルス)を印加することを特徴とする。
図24は、高周波磁場印加後に観測される自由誘導信号(FID)の減衰曲線が描かれている。理想的には物質の横緩和時間T2 によって減衰する曲線が観測されるが、実際には、磁場不均一性の影響を受け、(7)式で表される実質的なT2*の時定数を持つ減衰曲線として観測される。
1/πT2*=1/πT2 +γΔB0 /2π …(7)
但し、ΔB0 :磁場不均一性
これは、観測される線幅に等しいため、磁場不均一性が大きくなると減衰時定数が小さくなりスペクトル線幅が広幅化されることを意味する。
これに対してスピンエコーでも見られるように、磁化スピンを再結像(反転)させる180゜の高周波磁場(RFパルス)を印加することによって、磁化スピンを再結像させて磁場の不均一性の影響を除き、正味のT2 値を測定するHahnパルスシーケンスが古くから知られている。
Hahnパルス系列を印加した場合の磁化の振る舞いを図25(a)〜(f)に示す。図25(a)で、x’に沿って90゜パルスが印加され、正味磁化Mがy’軸に倒れる。図25(b)で、試料内の異なる部分の磁化がB0 の不均一性のためその位相が異なっていく。図25(c)で、時間τ後にx’に沿って180゜パルスを印加することですべての磁化はx’軸回りに180゜回転する。(e)時間2τで全ての磁化は−y’軸上に集まる(結像する)。この原理を応用して、τ、3τ、5τ時間に180゜パルスを印加するCPMGパルスシーケンスを用いることにより、2τ、4τ、6τ時間に形成される各エコーにおいては、磁場の不均一性が実質的に打ち消されている。
一方、 1Hスペクトルデータを観測する場合のパルスシーケンスの一例を図26に示す。この際、化学シフト範囲約10ppmのスペクトルデータを収集するために、1.5Tの場合にはサンプリング時間tsが通常1〜1.5秒が用いられる。このような、サンプリング時間が長く、磁場不均一性が大きくT2*が短い場合には有効なデータをサンプリングできないことがある。
そこで、本参考例では、図27(b)に示すように長いサンプリング時間を利用して、上記CPMGの原理を用いて、異なる、具体的には隣り合うサンプリング点間に、90゜パルス印加後τ、3τ、5τ・・・時間毎に180゜パルス(再結像パルス)を印加する。そして、2τ、4τ、6τ・・・時間に所望のサンプリング時間となるようにデータを繰り返しサンプリングする。所望とする化学種を選択的に励起し、これを必要回数繰り返すことで、観測されるデータ列は、磁場不均一性の影響が打ち消されたデータ列となり、スペクトル線幅を先鋭化することが可能となる。ここで、90゜パルス直後の信号は受信系の回復時間等の影響でデータサンプリングできない場合があり、図中では括弧で示されている。
また、図28(a),(b)を示すように、180゜パルスを印加するτの異なるパルスシーケンスを時分割で実行し、両シーケンスで得られるデータを合成(再配列)することにより、時間分解能の良好なデータを得ることができる。図28(a)では、τ1 、3τ1 、5τ1 ・・・に180゜パルスを印加して、データ列{S(2τ1 )、S(4τ1 )、S(6τ1 )・・・}が得られる。図28(b)では、τ2 、3τ2 、5τ2 ・・・に180゜パルスを印加して、図28(a)のデータ列と異なるタイミングでデータ列{S(2τ1 )、S(4τ1)、S(6τ1 )・・・}が得られる。この際、得られたデータサンプリング時間が不等間隔の場合には所望とするデータ間隔におけるデータを補間処理等によって求める操作が必要となる。
同様に、図29(b)のように90゜パルスから第1の180゜パルスまでの期間τ2 と、第2の180゜パルス以降のパルス間隔を相違させることも可能であり、より、最終的な所望とするデータ列のサンプリングタイミングに近いタイミングにてデータ列を収集することができる。従って、90゜パルスから第1の180゜パルスまでの期間、とサンプリングインターバルとは、必ずしも一致する必要がない。
以上の原理を利用して、図30のようにスライス選択励起をかけて、さらに磁気共鳴信号に空間的位置情報として位相情報を加える局所MRSI(Magnetic Resonance Spectroscopic Imaging)にも応用することが容易にできる。
ただし、本参考例では180゜パルスを断続的に印加するため、生体内の発熱の観点から観測するデータポイント数すべてを一度に観測することが困難な場合がある。このような場合には、図31の様に全てのサンプリングインターバルに180゜パルスを印加するのではなく1つおき、あるいは2つおきといったように180゜パルスを間引き、180゜パルス1つに対して1つのデータをサンプリングを行うのではなく、180゜パルス1つに対して複数のデータをサンプリングを行うことで、発熱の問題を軽減可能である。ただし、このときには、180゜パルス1つに対してデータサンプリングを1回行った場合に比べてスペクトル線幅が広がるため、最適な180゜パルス挿入を計画する必要がある。また、パルスを図32(a),(b)のように、データ収集期間を前段、後段に分割して行い、両シーケンスのデータを再配置することが考えられる。すなわち、図32(a)のように所望するデータポイントNのうち、N/2個のデータを第1のデータ収集系列、すなわち、τ、3τ、5τ・・・(N−1)τの時間タイミングに(N−1)個の180゜パルスを印加して収集する。残りのN/2個のデータについては図32(b)のように90゜パルス後に印加する第1の180゜パルスを(N/2+1)τ時間に印加し、これ以後2τ毎に印加して収集を行う。2回のデータ収集操作後、N個のデータSrに再配列し、再構成を行う。M回以上のデータ収集系列によりデータを収集してデータを再配列することも同様の考えに基づいて行うことができる。この際、M=m(m;1・・・M)系列における第1の180゜パルスの印加時間τ’は(8)式によって算出される。
τ’=N×(m−1)×τ/M …(8)
τ:第2以降の180゜パルスの時間間隔
ここで、τは基本的にはサンプリング時間と等しいが、前述したように種々のデータサンプリング法を用いることにより必ずしも一致しない場合が生じる。
ただし、通常収集するデータ個数はスペクトルS/Nの観点から、データ観測時間をほぼT2 時間程度とすることが望ましく、N個全てを収集する必要はない。残りのデータに関しては0フィリングを施し再構成を行うことで所望するスペクトル分解能を得る。
図33に示すように、180゜パルスのインターバルに勾配磁場反転を印加して複数のデータをサンプリングするようにしてもよい。また、180°パルスのインターバルにエンコード磁場を印加してデータ列を再配置した後に所望データ列を得ることも考えられる。
このようなスペクトル先鋭化パルスシーケンスを用いることにより、特に 1Hスペクトルを観測する際に生体内の代謝情報として有用なGlxスペクトルを配位を含めて分離することが可能である。このようなスペクトル情報から細胞レベルの診断の可能性が拓ける。
これは、体外から13Cを標識・エンリッチしたグルコース等を投与することによって、これらの化合物が代謝される様子を観測することが可能な 1H観測13Cスプクトロスコピーにも応用することができる。ただし、この場合にデカップリングパルスを印加するパルスシーケンスではより発熱の影響を考慮する必要があるため、前述したデータ収集の分割を計画的に行う必要が生じる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
第1参考例による磁気共鳴診断装置の構成図。 13C−Glc投与後に観測される13C代謝物スペクトルの一例を示す図。 診断原理を説明する図。 コンパートメントモデルの一例を示した図。 動脈から流入した標識化合物がすべて脳組織に取り込まれることを示すコンパートメントモデルの一例を示した図。 第2参考例の磁気共鳴診断装置の構成図。 観測対象領域と化学シフト画像の単位領域の相対的な大きさの比較図。 観測対象領域と単位領域の様々な位置関係を示す図。 RFパルスの周波数オフセットによりスライス方向の位置ずれを補正するMRSIパルスシーケンスを示す図。 オフセット用勾配磁場の継続時間の変化により位相エンコード方向の位置ずれを補正するMRSIパルスシーケンスを示す図。 オフセット用勾配磁場の強度の変化により位相エンコード方向の位置ずれを補正するMRSIパルスシーケンスを示す図。 本発明の実施形態に係る磁気共鳴診断装置の構成図。 脳抽出液の13Cスペクトルの一例を示す図。 基準化合物の化学シフト値に基づく化学シフトのずれ補正の説明図。 化合物同定(判別)方法の説明図。 第3参考例にかかる磁気共鳴診断装置の構成図。 脳内1 Hスペクトルの一例を示す図。 13C−Glc投与後の脳内13Cスペクトルの一例を示す図。 13C−Glc投与後の13C−Glcのピーク高さ(面積値)の時間変化の一例を示す図。 代謝経路の概略を示す図。 13C−Glc投与後の13C−Glu、Glnの時間変化から算出されるパラメータの一例を示す図。 13C化合物の最も簡略化されたコンパートメントモデルの一例を示す図。 第4参考例にかかる磁気共鳴診断装置の構成図。 磁場不均一性による信号減衰の様子を示す図。 Hahnスピンエコーにおける磁化スピンの振る舞いを説明した図。 MRSパルスシーケンスの一例を示す図。 180゜パルス列印加によるスペクトル先鋭化の原理を示す図。 サンプリングタイミングをずらした2つのパルスシーケンスの一例を示す図。 サンプリングタイミングをずらした2つのパルスシーケンスの他の例を示す図。 局所MRSIパルスシーケンスへの応用を示す図。 180゜パルスのインターバルに複数のデータをサンプリングするパルスシーケンスの一例を示す図。 データ系列を分割して収集するパルスシーケンスの一例を示す図。 180゜パルスのインターバルに勾配磁場反転により複数のデータをサンプリングするパルスシーケンスの一例を示す図。
符号の説明
10…主磁石、11…主磁石電源、12…勾配コイル系、13…勾配コイル電源、14…シムコイル系、15…シムコイル電源、16…高周波プローブ、17…送信器、18…受信器、19…シーケンスコントローラ、20…CPU/メモリ、21…コンソール、22…モニタ。

Claims (2)

  1. 静磁場内に載置された被検体に高周波磁場を印加した後、磁気共鳴信号を収集し、前記磁気共鳴信号に基づいて観測スペクトルを観測する磁気共鳴診断装置において、
    基準物質のスペクトルに関する複数個の極大点と各々対応する化合物の情報を記憶する手段と、
    前記観測スペクトルについて所定の閾値を越える複数個の極大点を検出する手段と、
    前記検出された観測スペクトルに関する複数個の極大点を、前記記憶された基準物質のスペクトルに関する複数個の極大点に対して位置誤差を最小化するように対応付ける手段と、
    前記検出された観測スペクトルの極大点各々に関する化合物を、前記基準物質のスペクトルに関する複数個の極大点との対応付け、及び前記基準物質のスペクトルに関する複数個の極大点各々対応する化合物の情報に基づいて同定する手段とを備えることを特徴とする磁気共鳴診断装置。
  2. 前記観測スペクトルを前記化合物の名称と共に表示する手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴診断装置。
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