以下、本発明に係る、地理画像間変化領域の抽出を支援可能なプログラム及び地理画像間変化領域の抽出支援方法の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る地理画像間の変化領域の抽出を支援可能な装置の一つの実施の形態の概略ブロック図である。符号1は、上記装置の一つの実施の形態の全体を指す。本装置1は、例えばパソコン又はワークステーションにより実現される処理装置10と、メインメモリとして使用されるRAM(ランダムアクセスメモリ)(図示せず)及び磁気ディスク記憶装置のような補助記憶装置(図示せず)とを含む記憶装置20と、入出力装置30とを備えている。入出力装置30は、キーボード(図示せず)及びマウス等のポインティングデバイス(図示せず)を含む入力装置31と、CRTディスプレイ装置等の表示装置32又はプリンタ33などの出力装置を備えている。入力装置31はパラメータの入力やコマンドの起動などに使われる。表示装置32又はプリンタ33は、処理対象の新旧の地理画像と当該新旧の地理画像に対して得られた複数のブロック別変化尤度又はブロック別判定結果の表示又は印字等に使われる。記憶装置20内にデータが記憶されるときに、当該データが図示しないRAMと図示しない補助記憶装置のいずれに記憶されるかは、あらかじめ当該データ毎に決められている。
処理装置10には、地理画像間変化領域の抽出を支援可能なプログラム40が組み込まれている。プログラム40は、記憶装置20に記憶され処理装置10により実行されるが、図では分かりやすさのために、プログラム40とそれを構成する複数のモジュールを処理装置10を示すブロックの内部に記載している。プログラム40は、特定用途領域検出部100と、HSI変換部200と、陰影領域検出部300と、エッジ検出部400と、ブロック別変化度決定部500と、ブロック別変化度表示部600という複数のモジュールを含み、これらのモジュールは順次実行される。特定用途領域検出部100は、一例として植生領域検出部110と、道路領域検出部120とを含む。
処理装置10は、プログラム40内の特定用途領域検出部100、HSI変換部200、陰影領域検出部300、エッジ検出部400、ブロック別変化度決定部500、ブロック別変化度表示部600が実行されたときに、それぞれ特定用途領域を検出する機能ブロック、新旧地理画像に対してHSI変換を実行する機能ブロック、新旧地理画像から陰影領域を検出する機能ブロック、新旧の地理画像からエッジを検出する機能ブロック、新旧地理画像を複数のブロックに分割して、各ブロックに対するブロック別変化尤度を決定する機能ブロック、新旧地理画像とブロック別変化尤度を表示装置に表示させ、各ブロックに対して変化領域が含まれているか否かに関して利用者が判定して入力した判定結果を記憶装置20に保存する機能ブロックという複数の機能ブロックとして動作する。したがって、処理装置10と、記憶装置20と、入出力装置30と、プログラム40のこれらのモジュールにより、それぞれのモジュールに対応する複数の機能ブロックが実現されることになる。したがって、処理装置10と、記憶装置20と、入出力装置30と、プログラム40は、本発明に係る、地理画像間の変化領域の抽出を支援可能な装置の一つの実施の形態を実現することになる。
プログラム40は、本発明に係る、地理画像間変化領域の抽出を支援可能なプログラムの一つの実施の形態を実現するものであり、記録媒体に記録してあるいは図示しないネットワークを介して記憶装置20に記憶され、処理装置10で実行される。プログラム40は、図示しない記録媒体に記録されて又はネットワークを介して販売可能である。処理装置10がプログラム40を実行して地理画像間の変化領域の抽出を支援する手順は本発明に係る地理画像間変化領域の抽出支援方法の一つの実施の形態を実現する。
記憶装置20には、旧地理画像データ21A及び新地理画像データ21Bがプログラム40の実行前にあらかじめ記憶される。以下では、いろいろな処理により画像データが生成されるかあるいは画像データが記憶装置20に記憶される処理に言及するときに、簡単化のために単に画像が生成されるあるいは画像が記憶装置20に記憶されるということがある。上記新旧地理画像データ21A、21Bは、人工衛星又は航空機などから同一地域を異なる時刻に撮影して得られる地理画像データであり、本実施の形態では、これらの地理画像データは、3原色RGBの成分と赤外線成分IRとを含むマルチバンドの画像データであると仮定する。
以下に説明する画像データは、プログラム40の実行の結果生成されるデータである。植生領域画像データ22aは、旧地理画像21Aの撮影時に当該地理画像の撮影地域内の植物が存在している領域(植生領域)を表す2値の画像データである。道路領域画像データ22bは、旧地理画像21Aの撮影時に当該地理画像の撮影地域内の道路が存在している領域(道路領域)を表す2値の画像データである。輝度画像データ23A、彩度画像データ24A、色相画像データ25Aは、それぞれ、旧地理画像データ21Aの各画素の輝度(明度(I))、彩度(S)、色相(H)の値をそれぞれ表す多値の画像データである。陰影領域画像データ26Aは、旧地理画像データ21A内の陰影部領域を表す2値の画像データである。エッジ画像データ27Aは、旧地理画像データ21A内のエッジを表す2値の画像データである。
同様に、輝度画像データ23B、彩度画像データ24B、色相画像データ25Bは、それぞれ、新地理画像データ21Bの各画素の輝度(明度)、彩度、色相の値をそれぞれ表す多値の画像データである。陰影領域画像データ26Bは、新地理画像データ21B内の陰影部領域を表す2値の画像データである。エッジ画像データ27Bは、新地理画像データ21B内のエッジを表す2値の画像データである。ブロック別変化度データ28は、新旧地理画像21A、21Bを分割して得られる、それらの画像に共通に定められた複数のブロックのそれぞれに関する変化尤度及びその他のデータを含むデータである。ブロック別判定結果データ29は、各ブロック内について新旧地理画像間の変化領域の有無を利用者が判定した結果及び利用者のコメントを含むデータである。なお、後に説明するような、画像を複数のブロックに分割するためのブロックサイズ、ブロック別変化尤度を検出するための画素の属性別の重み、特定用途領域別の重み等の他のデータも利用者によりあらかじめ指定され、あらかじめ記憶装置20に記憶されるが、それらのデータは簡単化のために図には示されていない。
以下、プログラム40の処理を図1を参照して説明する。まず、特定用途領域検出部100が実行される。特定用途領域検出部100は、発明が解決しようとする課題の欄に記載したように、植生領域や道路領域のような、その領域自体が変化していないのに、その領域の画像が変化する可能性がある領域を検出するために実行される。本実施の形態では、後に説明するように、各領域自体が変化していないときにはその領域が変化領域として検出されないようにし、それでいてその領域自体が変化したときには、その領域が変化領域として検出されるように、それぞれの領域に属する画素がブロック別変化尤度に及ぼす影響の程度を建築物がある通常の領域の画素とは異ならせる。
特定用途領域検出部100は、植生領域検出部110と道路領域検出部120のいずれか一方、例えば植生領域検出部110を先に実行する。植生領域検出部110は、地上の植物が存在している領域を検出して植生領域画像22aを生成するものである。植生領域画像22aは、例えば、以下のようにして生成できる。旧地理画像データ21Aの各画素の赤の濃度Rと赤外線の濃度IRから、植生指数として(IR−R)/(IR+R)を計算し、あらかじめ定めた閾値で2値化して植生領域画像22aを生成する。なお、旧地理画像データ21Aは赤外線成分を含まないものでもよい。その場合には、植生領域検出部110は、別に同じ地域を撮影して得た、赤外線成分を含む画像から植生領域画像22aを生成するようにすればよい。あるいは、旧地理画像の撮影時に植生領域画像が利用可能になっている場合には、その画像の生成方法によらないで、当該植生領域画像を利用するようにしてもよい。要するに、植生領域画像22aは、旧地理画像の撮影時に撮影対象地域内の植生領域を表す画像であればよい。植生領域画像22aは、旧地理画像の撮影時より前に生成され、旧地理画像の撮影対象地域内にあった植生領域を近似する画像であっても、旧地理画像の撮影時における植生領域画像として使用してもよい。図2(a)は旧地理画像21Aの一例を示し、同図(b)はその画像に対して植生領域検出部110が生成した植生領域画像22aの例を示す。
図1に戻り、特定用途領域検出部100は、その後道路領域検出部120を実行する。道路領域検出部120は、撮影対象となっている地域に関する、記憶装置20にあらかじめ記憶された地図データ(図示せず)から道路位置の情報を取得して、道路領域を表す2値の道路領域画像データ22bを生成する。図2(c)は旧地理画像21Aの他の例を示し、同図(d)はその画像が撮影された地域の地図データから道路領域検出部120が生成した道路領域画像22bの例を示す。なお、道路領域の検出を、道路地図を用いないで、旧地理画像21Aから特徴領域の一つとして検出するようにすることも可能である。例えば、高木幹雄、下田陽久監修,“画像解析ハンドブック,”1991年1月,財団法人東京大学出版会,PP.180-182を参照。以下、この文献を参考文献1と呼ぶことがある。あるいは旧地理画像の撮影時に利用可能になっている場合には、その画像の生成方法によらないで、当該画像を道路領域画像に利用してもよい。要するに、道路領域画像22bは、植生領域画像22aと同じく、旧地理画像の撮影時に撮影対象地域内の道路領域を表す画像であればよい。道路領域画像22bは、旧地理画像の撮影時より前に生成され、旧地理画像の撮影対象地域内にあった道路領域を近似する画像であっても、旧地理画像の撮影時における道路領域画像として使用してもよい。
なお、同じ用途に関する特定用途領域を旧地理画像の撮影時と新地理画像の撮影時に検出することが容易にできれば、旧地理画像の撮影時と新地理画像の撮影時にその特定用途領域を検出して比較することにより、その特定用途領域の変化を検出することができる。しかし、特定用途領域を地理画像から検出することが難しい場合もある。あるいは、特定用途領域を地理画像から検出できても、処理量が多く、時間が掛かる場合がある。したがって、本実施の形態では、特定用途領域として、植生領域は、前述のように、旧地理画像から検出するか、他の地理画像を利用して検出するかあるいは旧地理画像の撮影時に利用可能になっている植生領域画像を利用する。道路領域は、前述のように、旧地理画像の撮影時に利用可能になっている地理データから検出するか、旧地理画像から検出するかあるいは旧地理画像の撮影時に利用可能になっている道路領域画像を利用する。しかし、新地理画像の撮影時には、植生領域、道路領域は直接検出せず、旧地理画像内の植生領域と道路領域のそれぞれの領域変化を、それらの領域以外の領域における領域変化の検出と同じように新旧地理画像を比較して、検出するようになっている。
図1に戻り、プログラム40は、その後HSI変換部200を実行する。本実施の形態では、地理画像の各画素の濃度に関連する属性と濃度以外の色彩に関する属性という複数の属性を使用して、後に説明するブロック別変化尤度を決定するようになっている。HSI変換部200は、このような複数の属性を示す画像データを生成するために実行される。HSI変換部200は、それ自体周知の方法により、旧地理画像21AのRGB成分から、明度(本明細書では輝度と呼ぶことがある)と、彩度と色相を決定するHSI変換を実行して、輝度画像データ23A、彩度画像データ24A、色相画像データ25Aを生成する。例えば、高木幹雄、下田陽久監修,“画像解析ハンドブック,”1991年1月,財団法人東京大学出版会,PP.485-491を参照。以下、この文献を参考文献2と呼ぶことがある。輝度は、旧地理画像21Aが白黒画像の場合の濃度を表す、各画素の属性であり、彩度と色相は、旧地理画像21Aの各画素の色彩に関する属性である。プログラム40は、その後HSI変換部200を再度実行して、新地理画像21BのRGB成分から輝度画像データ23B、彩度画像データ24B、色相画像データ25Bを生成する。
なお、HSI変換方法は、上記参考文献2に記載のようにいくつかの方法があるが、本実施の形態ではいずれのHSI変換方法を使用してもよい。更に、HSI変換部200は、見方を変えれば、新旧地理画像のそれぞれを輝度画像とカラー画像に変換すると考えることができるが、カラー画像は、上記の彩度画像と色相画像とは異なるカラー画像でもよい。したがって、HSI変換部200に代えて他の方法で新旧地理画像のそれぞれから輝度画像とカラー画像を生成する他の方法を実行するものを使用してもよい。
プログラム40は、その後陰影領域検出部300を実行する。陰影領域は、建物や雲等の物体により太陽光が遮断されて地上に影が投影される領域である影領域と、建物のある部分により太陽光が遮断されたための、その建物の他の部分に太陽光が照射されなくなった領域である陰領域とを含む。本実施の形態では、後に説明するように、新旧地理画像の同じ位置にある一組の画素の少なくとも一方が陰影領域内に位置する場合には、その一組の画素を比較対象から削除するようになっている。そのため、陰影領域検出部300は、旧地理画像21Aから陰影領域を検出して陰影領域画像データ26Aを生成する。陰影領域検出部300による陰影領域画像データ26Aの生成は、それ自体公知の多値画像を2値画像に変換する方法、例えばモード法により行うことができる。
モード法は、画像のヒストグラムの谷を利用して2値化する閾値を決める方法である。例えば、井上誠喜、他5著,“C言語で学ぶ実線画像処理,” 株式会社オーム社,1999年12月,pp. 28-31参照。以下、この文献を参考文献3と呼ぶことがある。すなわち、一般には、2値化すべき対象画像内に輝度の低い部分とそうでない部分の輝度の差がある程度はっきりしている場合、その画像の輝度のヒストグラムを生成すると、ピークが二つある双峰性のヒストグラムが得られる。それらのピークの間の谷に位置する輝度を閾値として、その画像を2値化すればよい。本実施の形態では、上記谷に位置する輝度を閾値として、その閾値より小さい値の輝度を有する画素に対応する2値化後の画素の値を「1」にすれば、陰影領域に属する画素に対して値1を有する画像データが得られ、この画像データを陰影領域画像データ26Aとして使用することができる。なお、上記参考文献3に記載のように、上記ヒストグラムの谷に位置する閾値を決める前に、上記ヒストグラムを平坦化し、その平坦化されたヒストグラムの谷を閾値とすることが一般には望ましい。図3(a)は、旧地理画像21Aの他の例を示し、同図(b)は、その画像に対して生成された陰影領域画像26Aの例を示し、同図(c)は、同図(c)の画像から得られた双峰性のヒストグラムの例を示す。このヒストグラムの谷に相当する輝度を閾値として使用可能である。プログラム40は、その後陰影領域検出部300を再度実行して新地理画像21Bから同様にして陰影領域画像データ26Bを生成する。
プログラム40はその後エッジ検出部400を実行する。本発明者による研究の結果、建築物の屋上や屋根が専有する領域の外形が変更された場合でも、それらの領域の総面積が変化しなかった場合には、輝度の変化だけで変化領域の有無を検出したのでは、新旧地理画像間の変化領域として検出できないことも起こり得ることが判明した。したがって、本実施の形態では、後述するように、このような面積が変更しないが境界(エッジ)の位置が変化するような領域の変化も検出できるように、領域のエッジの位置が新旧地理画像間で変化したか否かを検出するようになっている。画素が画像のエッジ上にあるか否かは、その画素の属性と考えることもできる。その意味では、本実施の形態では、輝度、色彩という属性の他にエッジ上にあるか否かという属性を使用することになる。
エッジ検出部400は、旧地理画像21A上のエッジを検出して、エッジの位置を示す2値のエッジ画像データ27Aを生成し、その後、プログラム40は、エッジ検出部400を再度実行して新地理画像21Bから、2値のエッジ画像データ27Bを生成する。なお、エッジ検出部400は、画像のエッジの位置の検出をそれ自体公知の方法により行うことができる。
図4は、エッジ検出部400の処理の一例の概略フローチャートと、旧地理画像21Aの例とそれに対するエッジ検出部400での処理により得られるいくつかの画像の例を示している。まず、ステップS401において、旧地理画像21Aに対してヒストグラムの均等化を施す。画像のヒストグラム均等化とは、全体的に輝度の変化の少ない画像からもエッジが検出できるよう、画像全体又は適当な区画ごとに画素値のヒストグラムを調べ、画素の輝度を変換した後のヒストグラムの各輝度の画素の発生頻度がほぼ同一になるように、画素の輝度を変換する処理である。図において、画像401は得られたヒストグラム均等化後の画像の例を示す。
ステップS402において、画像401に対してエッジ検出処理を実行する。エッジ検出法としては、それ自体公知の方法を使用することができる。例えば、キャニー法やソーベルフィルタを使用する方法などがある。キャニー法については、例えば、J. Canny,“A Computational Approach to Edge Detection,”IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, 1986, vol. PAMI-8, No. 6, pp. 679〜698参照。以下、この文献を参考文献4と呼ぶことがある。ソーベルフィルターによる方法については、例えば、高木幹雄、下田陽久監修,“画像解析ハンドブック,”1991年1月,財団法人東京大学出版会,PP.553-556を参照。以下、この文献を参考文献5と呼ぶことがある。
図4において、画像402は、画像401に対してキャニー法によりエッジ検出処理を行って得られた多値のエッジ画像の一例を示す。つぎにステップS403において、エッジ画像402を2値化して2値化されたエッジ画像403を生成する。2値化のための閾値はあらかじめ決定されているか、エッジ画像402全体又はその一部分に関する統計情報(例えばヒストグラム)から決定すればよい。つぎに、ステップS404において、2値化エッジ画像403に対して小エッジの除去処理を行う。小エッジの除去は、2値化画像403内の各エッジの長さを調べ、あらかじめ指定した所定値以下の長さのエッジを消去する。画像404は、小エッジ除去処理後に得られた画像の一例である。
つぎに、ステップS405において、画像404に対してエッジの強調処理を行う。強調処理は、エッジ等の線分上の各画素と近傍の画素との連結性に基づいて当該線分を太くする処理であり、いわゆる膨張処理とも言われる処理である。この処理は、例えば、モルフォロジー演算により行うことができる。モルフォロジー演算自体は、例えば、間瀬茂、上田修功,“モルフォロジーと画像解析[1],”電子情報通信学会誌,1991年2月, vol. 74, no. 2, pp. 166〜174参照。以下、本文献を参考文献6と呼ぶことがある。図4において、画像27Aは、エッジ強調処理により生成されるエッジ画像の例を示す。この画像が、エッジ検出部400により旧地理画像21Aから検出されたエッジを表すエッジ画像の例である。プログラム40は、その後エッジ検出部400を再度実行して新地理画像21Bから同様にしてエッジ画像27Bを生成する。
図1に戻り、プログラム40は、その後にブロック別変化度決定部500を実行する。本実施の形態では、旧地理画像21Aと新地理画像21Bを、それらに共通に定められた複数のブロックに区分し、各ブロックに対応して、新旧地理画像間の同じブロックの各画素について、その画素の複数の属性の変化量を検出して、検出された複数の属性の変化量から、当該画素が新旧地理画像間で土地被覆状態が変化した領域に属している可能性の大きさを表す画素別変化尤度を決定し、当該ブロックに属する複数の画素の画素別変化尤度から、そのブロックに新旧地理画像間で変化している領域がある可能性の大きさを表すブロック別変化尤度を決定し、決定されたブロック別変化尤度を降順にソートし、表示装置の画面に新旧地理画像と一緒に表示する。この結果、利用者はブロック別変化尤度が大きなブロックから順に新旧地理画像を比較して、そのブロックに変化領域が実際に含まれているか否かを判別できるようになっている。
各ブロック内のi番目の画素(以下画素iと呼ぶことがある)の画素別変化尤度piは下記の式1に基づいて決定される。以下では、記号「| |」は絶対値を表す。変数A、B、Cは、それぞれ輝度用の重み、カラー用の重み、エッジ用の重みを表す。
pi=A×|輝度変化量|+B×|カラー変化量|+C×|エッジ変化量| (1)
画素別変化尤度piのうち輝度、カラー、エッジの変化による寄与分は、それぞれ式2a、2b、2cに基づいて表される。
画素別の輝度変化寄与分 =A×|輝度変化量| (2a)
画素別のカラー変化寄与分=B×|カラー変化量| (2b)
画素別のエッジ変化寄与分=C×|エッジ変化量| (2c)
式2aの画素別の輝度変化寄与分は、画素iの輝度(明度)Iiという属性の、新旧地理画像間の差の絶対値と輝度用の重みAとの積であり、画素iの輝度が新旧地理画像間で変化したときに、輝度の変化量に応じて画素別変化尤度piを増大させ、それによりその画素が土地被覆状態が変化した領域に属する可能性を、輝度の変化量に依存して判別可能にするために使用される。旧地理画像21Aと新地理画像21Bの各画素の輝度は、HSI変換部200により生成された輝度画像データ23A、23Bにより与えられる。
式2bの画素別のカラー変化寄与分は、画素iのカラー属性Ciの、新旧地理画像間の差の絶対値とカラー用の重みBとの積であり、新旧地理画像間でカラー属性Ciが変化したときに、その変化量に応じて画素別変化尤度piを増大させ、それによりその画素が土地被覆状態が変化した領域に属する可能性をカラー属性Ciの変化量に依存して判別可能にするために使用される。カラー変化量は、既にある建物の屋上や屋根の色が変更されたが輝度が余り変化していないで色彩が変化した領域、あるいは輝度が余り大きくはないが、色彩が明瞭である屋上や屋根を持つ建物が新設された領域のように、輝度のみでは検出が難しい領域を検出しやすくするために使用される。本実施の形態では、カラー変化量は、彩度Siの変化量と色相Hiの変化量を利用して、例えば次式3により決定する。
カラー変化量=|彩度変化量|+|色相変化量| (3)
ここで、旧地理画像21Aと新地理画像21Bの画素の彩度は、HSI変換部200により既に生成された彩度画像データ24A、24Bにより与えられ、旧地理画像21Aと新地理画像21Bの画素の色相は、HSI変換部200により既に生成された色相画像データ25A、25Bにより与えられる。なお、カラー変化量は、式3の定義に限定されるものではなく、他の計算式により計算してもよく、場合によっては彩度の変化量を省略することも考えられる。
既に説明したように、エッジ検出部400により旧地理画像21Aと新地理画像21Bからそれぞれ2値のエッジ画像27A、27Bが生成された。これらの画像内の画素の値は、エッジ上にあるか否かに応じて「1」又は「0」になる。このように画素がエッジ上にあるか否かは、その画素の属性とも考えることができる。以下では、この画素の属性をエッジ属性と呼び、その値をEiで表すことがある。
式2cにおける画素別のエッジ変化寄与分は、画素iのエッジ属性Eiの、新旧地理画像間の差の絶対値とエッジ用の重みCとの積であり、新旧地理画像間でエッジ属性Eiが変化したときに、その変化量に応じて画素別変化尤度piを増大させ、それによりその画素が土地被覆状態が変化した領域に属する可能性をエッジ属性Eiの変化量に依存して判別可能にするために使用される。エッジ変化量は、既にある建物の屋根あるいは屋上の面積や色が変化しないが、形状が変化した場合のように、画素別の輝度変化寄与分、画素別のカラー変化寄与分のブロック内の総和は余り変化していないが、形状、すなわち、エッジの位置が変化した領域を検出しやすくするために使用される。
式1で使用された、輝度変化量、カラー変化量、エッジ変化量に対してあらかじめ定められた重みA、B、Cを、本明細書では属性別重みと呼ぶことがある。属性別重みは、利用者によりあらかじめ指定される。これらの属性別重みは、基本的には、輝度変化量、カラー変化量、エッジ変化量の各々が画素別変化尤度に及ぼす影響の程度を反映するように定められる。しかし、輝度変化量、カラー変化量、エッジ変化量のそれぞれが採りうる値の範囲が異なるので、それらの範囲の違いを補正することも考慮して属性別重みが定められる。
例えば、旧地理画像21Aと新地理画像21Bの画素の輝度の値は8ビットで表され、その値が採りうる範囲が0から255と仮定する。この場合、輝度変化量が採りうる値の範囲は同じく0から255である。同様にカラー変化量に含まれる式3の彩度変化量、色相変化量も同じ数値範囲を採りうると仮定すると、カラー変化量が採りうる値の範囲は、0から510になる。一方、エッジ属性Eiが採りうる値は0か1であるので、エッジ変化量が採りうる値は0か1である。このような条件下では、属性別の重みの例は、例えば、A=1、B=1/4、C=200/1である。この例では、式1から、輝度変化量が画素別変化尤度piに及ぼす影響の範囲は0から255であり、カラー変化量が画素別変化尤度piに及ぼす影響の範囲は0から510/4であり、エッジ変化量が画素別変化尤度piに及ぼす影響の範囲は0から200である。したがって、一つの画素の輝度変化量が画素別変化尤度piに及ぼす影響に比べて、カラー変化量が画素別変化尤度piに及ぼす影響は約0.5倍であり、エッジ変化量が画素別変化尤度piに及ぼす影響は約0.8倍になる。
本実施の形態では、ブロック別変化尤度Pbは例えば下記式4aにより計算される。
Pb=Σpi×Mi (4a)
ここで、変数piは、式1により与えられる、ブロック内の各画素の画素別変化尤度であり、Miは、前に説明した特定用途領域、例えば道路領域あるいは植生領域のそれぞれに対応してあらかじめ定められたマスク係数である。マスク係数Miの値は道路領域あるいは植生領域のそれぞれに対応して利用者によりあらかじめ試行錯誤的に決定される。例えば、植生領域に対するマスク係数MiをMisと表すと、Mis=0.7とすることができ、道路領域に対してはマスク係数MiをMirと表すと、Mir=0.6とすることができる。あるいは、植生領域用のマスク係数Misと道路領域用のマスク係数Mirの両方を0.5とすることもできる。
このように、植生領域用のマスク係数Misと道路領域用のマスク係数Mirを1より小さな値にすることにより、植生領域あるいは道路領域内の画素の属性の値が変化しても、ブロック別変化尤度に及ぼす影響は、それらの領域以外の領域における画素の属性の変化がその画素を含むブロックのブロック別変化尤度に及ぼす影響より小さくできる。これにより、それらの特定用途領域内で画素の属性の変化が生じても、それらの領域が変化領域として検出される可能性を小さくしている。したがって、そのブロックが、利用者による変化領域の有無のチェック対象になる可能性を低くでき、無用なチェックを減らすことができる。しかし、各特定用途領域のマスク係数を0にはしていないので、いずれかの特定用途領域自体に変化が生じた場合のように、その特定用途領域内の多くの画素の属性が変化したときには、それらの画素を含むブロックに対するブロック別変化尤度が大きくなり、そのブロックが、利用者による変化領域の有無のチェック対象になる可能性が高くなり、そのブロックが、利用者のチェック漏れとなることを防ぐことができる。
上記式4aでの総和(Σ)は、注目するブロック内の、旧地理画像21Aと新地理画像21Bの同じ位置にある互いに対応する二つの画素からなる複数組の画素のうち、いずれの画素も旧地理画像21A内の陰影領域画像及び新地理画像21B内の陰影領域に属していない複数の画素組に対して実行される。
本実施の形態では、注目するブロック内の、旧地理画像21Aと新地理画像21Bの同じ位置にある互いに対応する二つの画素からなる複数組の画素のうち、いずれかの画素が旧地理画像21A内の陰影領域又は新地理画像21B内の陰影領域画像に属している場合には、その画素組は、ブロック別変化尤度の決定には考慮されないようになっている。
特許文献1では、一方の地理画像では影部分であり、他方の画像内では影部分でない領域を影領域として検出して、上記一方の地理画像内のその影部分の輝度を、他方の地理画像場の、対応する位置にある影部分でない部分の輝度となるように、変換している。しかし、本当の影部分以外の部分にも、輝度が小さい領域も実際には存在するので、影領域の正確な検出は容易ではなく、影領域でない領域が影領域として検出されたり、逆に本当の影領域が検出から漏れる恐れがある。したがって、特許文献1の方法では、影部分の悪影響を除去することは必ずしも容易でない。したがって、本実施の形態では、旧地理画像あるいは新地理画像の陰影領域に含まれる領域の画素の輝度等の属性の変化をブロック別変化尤度の決定に際しては無視することにした。
上記式4aのうち、注目するブロックの複数の画素の輝度変化量、カラー変化量、エッジ変化量のそれぞれによるブロック別変化尤度への寄与分は、属性別重み及びマスク係数Miを含めて以下の式5aから5cにより計算できる。
ブロック別の輝度変化寄与分 =Σ(A×|輝度変化量|×Mi) (5a)
ブロック別のカラー変化寄与分=Σ(B×|カラー変化量|×Mi)(5b)
ブロック別のエッジ変化寄与分=Σ(C×|エッジ変化量|×Mi)(5c)
ここで、総和(Σ)は、式4aと同じく、注目するブロックに属する新旧の地理画像の同じ位置にある対応する二つの画素の組のいずれの画素も新旧地理画像の陰影領域に属さない二つの画素からなる複数の画素組に対して実行される。
上記式4aで定義されたブロック別変化尤度Pbは、上記式5aから5cの関係を使用すると、下記式4bのように定義することもできる。
Pb=ブロック別の輝度変化寄与分
+ブロック別のカラー変化寄与分 (4b)
+ブロック別のエッジ変化寄与分
図5は、ブロック別変化度決定部500により生成されるブロック別変化度データ28の例を示す。図には、このデータ28のうち一つのブロックに関する部分のみを示している。フィールド281は、後に計算されるブロック別変化尤度にしたがってブロック別変化度データを降順にソートしたしたときのブロック別変化尤度の順位(図では「6」)を格納するフィールドである。フィールド282は、このブロック別変化度データの識別情報(図の例では「AA234−7」)を格納するフィールドである。このフィールド282の内容は、同じ旧地理画像と新地理画像の組に対して生成された複数のブロックに対するブロック別変化度データのそれぞれに共通である。フィールド283は、ブロック別変化度データを決定するのに使用した旧地理画像と新地理画像のそれぞれの識別情報である画像識別情報(図の例では「A123」と「B156」)を格納するフィールドである。フィールド284は、図示しているブロック別変化度データが関係するブロックの識別情報を記憶するフィールドであり、図の例では、使用した旧地理画像と新地理画像に共通な当該ブロックの左上隅の座標(図の例では「100,200」)と右下隅の座標(図の例では「199,299」)との組がブロック識別情報として格納されている。
フィールド285は、このブロック別変化度データが関係するブロックに対する、式4a又は4bで与えられるブロック別変化尤度(図の例では「65」)を格納するフィールドである。フィールド286は、ブロック別変化尤度285に対する、いくつかの属性別の寄与分を格納するフィールドであり、フィールド286a、286b、286cを更に含んでいる。フィールド286aは、式5aにより決定されるブロック別の輝度変化寄与分(図の例では「20」)を格納するフィールドであり、フィールド286bは、式5bにより決定されるブロック別のカラー変化寄与分(図の例では「15」)を格納するフィールドであり、フィールド286cは、式5cにより決定されるブロック別のエッジ変化寄与分(図の例では「30」)を格納するフィールドである。フィールド287は、このブロック別変化度データが関係するブロックに関する過去のブロック別判定結果データ29の識別情報(図の例では「BB234−6」)を格納するフィールドである。この過去のブロック別判定結果データ29は、後に説明するように、ブロック別変化度表示部600により記憶装置20に保存されるデータである。フィールド288aから288cのデータは本実施の形態では使用しないが、追加して使用してもよい他のデータの例であり、これについては後に説明する。
図6(a)は、ブロック別変化度表示部600により保存されるブロック別判定結果データ29の例を示す。図には、このデータ29のうち一つのブロックに関する部分のみを示している。フィールド291は、同じブロックに関係するブロック別変化度データ28のフィールド282に記憶されたブロック別変化尤度の順位(図では「6」)をそのまま格納するフィールドである。フィールド292は、このブロック別判定結果データ29の識別情報(図では、「AA234−7」)を格納するフィールドである。このフィールドは、同じ旧地理画像と新地理画像の組に対して生成された複数のブロックに対する複数のブロック別判定結果データのそれぞれに共通に設けられる。フィールド293は、対応するブロック別変化度データ28のフィールド283に格納される、旧地理画像と新地理画像のそれぞれの識別情報である画像識別情報(図の例では「A123」と「B156」)をそのまま格納するフィールドである。
フィールド294は、表示されているブロック別判定結果データ29が関係するブロックの識別情報をそのまま記憶するフィールドであり、対応するブロック別変化度データ28内のフィールド284と同じく、使用した旧地理画像と新地理画像に共通な、当該ブロックの左上隅の座標(図の例では「100,200」)と右下隅の座標(図の例では「199,299」)との組がブロック識別情報として格納されている。フィールド295は、このブロック別判定結果データ29が関係するブロックに関する土地被覆状態が変化した領域の有無に関して後に利用者が入力する変化領域の有無を示すデータを格納するフィールドであり、フィールド296は、そのブロックに関する利用者が入力したコメントを格納するフィールドである。
記憶装置20には、旧地理画像と、その旧地理画像より前に撮影された旧旧地理画像とを比較して得た過去のブロック別変化判定結果も記憶されている。図6(b)はそのような過去のブロック別判定結果データ29aの例を示す。このデータ29aは、図5に示されたブロック別変化度データ28が関係するブロックに対する過去のブロック別変化判定結果データの例であり、図5のフィールド287には、図6(b)に示したブロック別判定結果データ29b内の識別情報(図の例ではBB234−6)が格納されている。
図7は、ブロック別変化度決定部500の処理の一例の概略フローチャートである。まずステップS501で、旧地理画像21Aと新地理画像21Bの領域を複数のブロックに分割する。図8は、新地理画像の例と、それらの画像上に定義された複数のブロックの例を示す図である。図7に戻り、ステップS501では、新旧地理画像21A、21Bを物理的に複数のブロックに分割するのではなく、新旧地理画像21A、21Bを複数のブロックに区分してそれぞれのブロック毎に以下の処理を実行可能なように、それぞれのブロックの位置、ブロックの総数等を決める。領域分割のためには、利用者があらかじめ指定したブロックサイズ(ブロックの縦横の画素数)を使用すればよい。各ブロックの存在領域は、そのブロックの番号とブロックサイズから計算により決定することができる。ただし、新旧地理画像21A、21Bのそれぞれを別々に複数のブロックに分割するのではなく、複数のブロックはこれらの画像に共通に決定する。したがって、旧地理画像を元に複数のブロックを決定すればよい。逆に、旧地理画像21Aが既に複数のブロックに分割されているときには、上記ブロックの位置の決定、ブロック数の決定等の処理は行う必要はない。
このステップS501では、領域分割にくわえて、領域分割で得られた複数のブロックの各々に対応してブロック別変化度データ28(図5)とブロック別判定結果データ29(図6(a))を格納する領域を記憶装置20内に確保する。更に、各ブロックに対応するブロック別変化度データ28用の領域のうち、フィールド281のブロック別変化尤度の順位、フィールド285のブロック別変化尤度、フィールド286aから286cの3つの種類の画像変化寄与分以外の複数のデータの値をそれぞれに対応するフィールドに格納する。同様に、各ブロックに対応するブロック別判定結果データ29用の領域のうち、フィールド291のブロック別変化尤度の順位、フィールド295の領域変化の有無、フィールド296のコメント以外の複数のデータの値をそれぞれに対応するフィールドに格納する。
図5に戻り、つぎにステップS502において、未処理のブロックを選択する。ブロックの選択の順序はあらかじめ定められている。つぎにステップS503において、旧地理画像21Aと新地理画像21Bのそれぞれ内の上記ブロックの同じ画素位置にある一組の未処理の画素を選択する。ブロック内の画素の選択の順序はあらかじめ定められている。
つぎにステップS504では、選択された一組の画素が陰影領域内にあるか否かを判定する。このステップでは、選択された一組の画素のうち旧地理画像21Aに属する一方の画素が旧地理画像21Aの陰影領域に属するか、選択された一組の画素のうち新地理画像21Bに属する他方の画素が、新地理画像21Bの陰影領域に属するかが判定され、判定結果がYesのときに、選択された一組の画素は陰影領域に属すると判定される。この判定は、当該一方の画素の位置におけ旧地理画像21A用の陰影領域画像データ26Aの値と当該他方の画素の位置における新地理画像21B用の陰影領域画像データ26Bの値の少なくとも一方が1であるか否かにより行うことができる。ステップS504での判定の結果、選択された一組の画素は陰影領域に属すると判定されたときには、本実施の形態では、その画素組はブロック別変化尤度の決定のための処理対象とはされず、当該画素組の属性値に関する後述の処理はスキップされ、処理はステップS516に進む。
ステップS504での判定の結果、選択された一組の画素は陰影領域に属さないと判定されたときには、ステップS505において、その画素組は、特定用途領域の一つである植生領域に属するか否かが判定される。この判定は、旧地理画像21Aに属する一方の画素の位置における、旧地理画像21Aの撮影時の植生領域を表す植生領域画像データ22aの値が1であるか否かにより行うことが出来る。ステップS505で、選択された画素組は植生領域に属すると判定されたときには、ステップS506で、処理中のブロックに対するマスク係数Miが植生領域用のマスク係数Misに設定される。
ステップS505での判定の結果、選択された画素組は植生領域に属さないと判定されたときには、ステップS507において、その画素組は、特定用途領域の一つである道路領域に属するか否かが判定される。この判定は、旧地理画像21Aに属する一方の画素の位置における、旧地理画像21Aの撮影時の道路領域を表す道路領域画像22bの値が1であるか否かにより行うことが出来る。ステップS507での判定の結果、選択された画素組は道路領域に属すると判定されたときには、ステップS508で、処理中のブロックに対するマスク係数Miは、道路領域用のマスク係数Mirに設定される。特定用途領域に対するマスク係数の値は、既に例示したように、例えば、植生領域に対するマスク係数Misを0.7とし道路領域に対するマスク係数Mirを0.6とすることができる。あるいは、植生領域に対するマスク係数Misと道路領域に対するマスク係数Mirをともに0.5とすることもできる。ステップS507での判定の結果、選択された画素組は道路領域に属さないと判定されたときには、ステップS509において、処理中のブロックに対するマスク係数Miは基準値1に設定される。
その後、ステップS510において、選択された画素組について輝度変化量が計算される。式5aで与えられるブロック別の輝度変化寄与分の初期値は0にあらかじめ設定されており、ステップS510の実行後にステップS511において、ステップS510で検出された輝度変化量の絶対値と、輝度用重みAと、当該画素に対して決定されたマスク係数Miとの積が計算され、ブロック別の輝度変化寄与分は、この積だけ増大される。その後、ステップS512において、選択された画素組についてカラー変化量が式3により計算される。式5bで与えられるブロック別のカラー変化寄与分の初期値は0にあらかじめ設定されており、ステップS512の実行後にステップS513において、ステップS512で検出されたカラー変化量とカラー用重み係数Bと上記マスク係数Miとの積が計算され、ブロック別のカラー変化寄与分は、この積だけ増大される。その後、ステップS514において、選択された画素組についてエッジ変化量が計算される。式5cで与えられるブロック別のエッジ変化寄与分の初期値は0にあらかじめ設定されており、ステップS514の実行後にステップS515において、ステップS514で検出された画素別のエッジ変化量とエッジ用の重みCと上記マスク係数Miとの積が計算され、ブロック別のエッジ変化寄与分はこの積だけ増大される。
その後、ステップS516において、処理中のブロック内に未処理の画素があるか否かを判定し、あると判定された場合には、処理はステップS503に戻り、未処理の画素を選択し、その画素についてステップS504以降の処理を繰り返す。上記繰り返しの後にステップS516が再度実行され、処理中のブロック内に未処理の画素がないと判定された場合には、ステップS517において、ブロック別変化尤度を更新する。ブロック別変化尤度の初期値は0であり、処理中のブロックのいずれかの画素の処理が終了するごとに、式4bにしたがい、ステップS511、S513、S515により計算されたブロック別の輝度変化寄与分とブロック別のカラー変化寄与分とブロック別のエッジ変化寄与分との合計だけ増大される。更に、処理が完了したブロックに対応して記憶装置20に記憶されたブロック別変化度データ28(図5)内のフィード285に上記更新後のブロック別変化尤度を格納し、フィールド286aから286cにそれぞれステップS511、S513、S515で得られたブロック別の輝度変化寄与分とブロック別のカラー変化寄与分とブロック別のエッジ変化寄与分とを格納する。
ステップS517の後にステップS518において、未処理のブロックがあるか否かが判定され、未処理のブロックがあるときには、処理はステップS502に移り、そこでは未処理のブロックが選択され、その後ステップS503以降の処理が選択された未処理のブロックに対して繰り返される。最終的にステップS518により未処理のブロックがないと判断されたときには、ステップS519において、全てのブロックに対して記憶装置20に記憶された複数のブロック別変化度データ28(図5)の中の複数のブロック別変化尤度を降順にソートする。ソートにより決まったブロック別変化尤度の順位を、各ブロック別変化度データ28内のフィールド281と各ブロック別判定結果データ29(図6(a))内のフィールド291に格納する。こうして、ブロック別変化度決定部500の処理が終了する。
プログラム40は、ブロック別変化度決定部500の実行後にブロック別変化度表示部600を実行する。ブロック別変化度表示部600は、表示装置32の画面に、新旧地理画像・ブロック別変化尤度表示画面を表示する。すなわち、この画面には、新旧地理画像を表示し、更に、各ブロック別に変化領域があるか否かを利用者に判断するのを支援するための、ソートされた複数のブロック別変化尤度を含む支援データを表示し、利用者がいずれかのブロックに関して入力した判断結果及びコメントを記憶装置20内のそのブロックに対応するブロック別判定結果データ29(図6)内のフィールド295、296に格納する。
図9は、新旧地理画像・ブロック別変化尤度表示画面の例を示す。図において、領域34は、メニュー領域を示す、「画像表示」、「地図表示」、「拡大表示」等のメニュー項目を表示し、これらのメニュー項目が入力装置31(図1)内のマウス等のポインティングデバイス(図示せず)により選択可能になっている。メニューとして「画像表示」が選択されたときには、図に示すように、旧地理画像21Aと新地理画像21Bが並べて表示される。
利用者は、後に説明するいくつかの方法により、画像21Aあるいは画像21B内の一方のいずれかのブロックを選択することができる。画像21Aと21Bの一方のいずれかのブロックを利用者が選択すると、ブロック別変化度表示部600は、他方の画像上の対応するブロックを自動的に選択するようになっている。この選択のためには、ブロック別変化度表示部600は、画像21Aと21Bの一方の上のいずれかのブロックが選択されたとき、画像21Aと21Bの他方上のそのブロックの位置と同じ位置にあるブロックを選択すればよい。更に、選択された一対のブロックの表示を、非選択のブロックと異なるように変更させる。図において、旧地理画像21Aと新地理画像21B上に描画された黒枠は、一組の選択されたブロックの例を示す。
領域35は、データ入力領域の例を示し、この領域には、選択ブロック内に新旧地理画像間の変化領域があるか否かの情報を利用者が入力するための一組のボタン351、352が表示され、更にコメントを入力するためのフィールド353も表示される。利用者は、いずれかのブロックを選択した状態において、それらの領域の旧地理画像と新地理画像を比較して、そのブロックに関して土地被覆状態が変化した領域の有無を判別し、変化有りのボタン351又は変化無しのボタン352の一方を選択する。また、入力装置31内のキーボード(図示せず)を操作してコメントをコメント入力用のフィールド353に入力することができる。入力領域35に入力された情報のうち、領域変化の有無は、対応するブロック別判定結果データ29(図6)内の変化有無を示すフィールド295に格納され、入力されたコメントは、同じブロック別判定結果データ29内のコメント用のフィールド296に格納される。
領域36は、利用者が新旧地理画像間の変化領域を検出するのを支援するための支援データの表示領域である。この領域36には、複数のブロックに対する複数の変化尤度が複数の行を用いて一覧表示される。しかも、この変化尤度の一覧は変化尤度の大きさの順にしたがって、複数のブロックのそれぞれに対して変化尤度順位361と一緒に表示される。更に、対応するブロックに対するブロック別変化尤度362、ブロック別の輝度変化寄与分363、ブロック別のカラー変化寄与分364、ブロック別のエッジ変化寄与分365、旧コメント366、コメント367も表示される。これらのデータの表示は、それぞれのブロックに対するブロック別変化度データ28(図5)と過去のブロック別判定結果データ29a(図6(b))に基づいて表示される。
すなわち、変化尤度順位フィールド361には、ブロック別変化度データ28の順位282が表示され、ブロック別変化尤度フィールド362、ブロック別の輝度変化寄与分フィールド363、ブロック別のカラー変化寄与分フィールド364、ブロック別のエッジ変化寄与分フィールド365には、ブロック別変化度データ28の変化尤度285、ブロック別の輝度変化寄与分286a、ブロック別のカラー変化寄与分286b、ブロック別のエッジ変化寄与分286cが表示される。旧コメントフィールド366には、対応するブロックに関する過去のブロック別判定結果データ29a(図6(b))内の過去のコメント296が表示される。コメントフィールド367には、利用者により入力され、対応するブロック別判定結果データ29(図6(a))のコメント用のフィールド296に格納された最新のコメントが表示される。ブロック別の輝度変化寄与分363、ブロック別のカラー変化寄与分364、ブロック別のエッジ変化寄与分365、旧コメント366は、利用者が対応するブロックに変化領域が含まれているか否かの判断を支援する情報として表示される。
なお、以下のようにして他の支援情報も追加して表示することも可能である。各ブロック内の全画素のうち、新旧の地理画像のいずれかの陰影領域に属する画素の数の比率である陰影領域比率、旧地理画像の道路領域に属する画素の数の比率である道路領域比率、旧地理画像の植生領域に属する画素の数の比率である植生領域比率を、ブロック別変化度決定部500を実行したときに検出しておき、そのブロックのためのブロック別変化度データ28(図5)のフィールド288aから288cに格納しておき、それらのデータを、支援情報として、ブロック別変化尤度362と一緒に画面に表示することもできる。
このように、支援データの表示領域36に変化尤度の大きさの順に複数のブロックに対する変化尤度その他のデータが表示されるので、利用者は、変化尤度が大きいブロックから順に選択し、選択されたブロックに新旧地理画像間で変化した変化領域があるか否かをチェックすることができ、効率的である。このチェックを続けた結果、チェックしたブロックに対して変化領域があるという結果がいくつかでたときには、更に低い変化尤度のブロックに関しても変化領域のチェックを続ければよい。しかし、チェックを続けた結果、変化尤度が比較的小さいブロックに対して変化領域がないという結果が続いたときには、それより低い変化尤度のブロックに関する変化領域の有無のチェックを省略してもよいことになる。したがって、チェック結果の履歴に応じて、変化領域の有無のチェックを、より小さい変化尤度のブロックに対して続けるか否かを判断できる。従来技術のように何かの画素値が閾値より大きいブロックを変化領域の有無のチェック対象とするという方法よりも、柔軟に変化領域の有無のチェックを続けるべきか否かを決めることができる。なお、本実施の形態でも、複数のブロック別変化尤度をソートした後、あらかじめ定めた閾値を越えるブロック別変化尤度だけを表示させるようにしてもよい。その場合には、閾値を小さめにすれば、変化領域が検出漏れとなることは防げる。更に、そのように表示されるブロック別変化尤度を制限した場合でも、それらの表示された全てのブロック別変化尤度に対応する複数のブロックについて、変化領域の有無をチェックしなくてもよい。上に述べたように、ブロック別変化尤度の順にチェックを続けた結果、複数のブロックについて変化なしという結果が続くときには、未チェックのブロックが残っていてもチェックを中止してもよいことは、閾値を用いない場合と同じである。
このように、変化尤度が高いブロックから順次変化領域の有無をチェックするのを更に容易にするために、ブロック別変化度表示部600を、以下のように構成することが望ましい。支援データの表示領域36に複数の行を用いて複数のブロックに対する複数の変化尤度を一覧表示した状態で、利用者がいずれかの行(すなわち、変化尤度)を入力装置31内のマウス(図示せず)又はカーソルキー(図示せず)を用いて選択したときに、ブロック別変化度表示部600は、表示領域36内の選択された行の表示を他の行の表示状態と異なる選択状態に変更し、更に旧地理画像21Aと新地理画像21Bの各々上の、選択された行の変化尤度が関係するブロックの領域の表示を選択状態に変更する。図では、変化尤度順位2の行が選択されたことを示すために、その行が太線で囲まれている。旧地理画像21Aと新地理画像21Bの各々内の選択されたブロックを黒枠で表示している。このようにすれば、利用者が、一覧表示された変化尤度を先頭のものから順次選択するだけで、変化尤度の高いブロックが画面に順次表示されるので、利用者は画面上でブロックを選択する操作をする必要がなくなる。利用者は、表示されたブロックについて、変化領域があるか否かの判定を行い、入力領域35から判定結果又は判定結果とコメントを入力し、その後に、次の変化尤度の行を選択するだけで、次の変化尤度のブロックが選択状態で表示され、変化尤度の大きなブロックを画面上で選択することなく、複数のブロックに対する変化領域の有無を変化尤度の高いブロックから順次チェックすることが容易になる。
なお、以上のように、ブロック別変化度表示部600は、選択された行の変化尤度が関係する、ブロックの表示を選択状態にするために、選択状態で表示すべきブロックの位置を以下のようにして決定することができる。すなわち、ブロック別変化度表示部600は新地理画像に関する複数のブロック別変化度データ28(図5)のうち、表示領域36内の選択された行の変化尤度順位361の値と同じ順位を有するブロック別変化度データ28を検出し、そのブロック別変化度データ28内のブロック識別情報284に基づいて、選択された行の変化尤度が関係するブロックの、新旧地理画像上の位置を決定する。
他の方法として、ブロック別変化度表示部600を、以下のように構成することが更に望ましい。支援データの表示領域36に複数の行を用いて複数のブロックに対する複数の変化尤度を一覧表示した状態で、次の行の選択を指示するための特定のボタン(図示せず)を画面に標示しておくか又は入力装置31内の特定のキー(図示せず)を次の行の選択を指示するためのキーとしてあらかじめ定めておき、利用者が次の行の選択指示をその特定のボタンのマウスによるクリック操作あるいはその特定のキーの打鍵操作により指示可能にしておく。利用者がその特定のボタン又はその特定のキーを操作して次の行に関して選択指示する毎に、ブロック別変化度表示部600は、一覧表示されている複数の変化尤度を含む複数の行のうち、先頭の変化尤度を含む行から自動的に順次異なる変化尤度の行を選択するようにし、いずれかの変化尤度の行が選択されたとき、その変化尤度が関係するブロックの領域を、旧地理画像21Aと新地理画像21Bの各々上に表示する。
あるいは、ブロック別変化度表示部600は、初期状態では、一覧表示されている複数の変化尤度を含む複数の行のうち、先頭の変化尤度を含む行を選択した状態にしておき、その行の変化尤度に関係する、旧地理画像21Aと新地理画像21Bの各々上のブロックを選択状態に表示するようにしてもよい。この場合は、利用者による、そのブロックに変化領域が含まれているか否かのチェックを終了後に、利用者が上記の次行選択用のボタン又はキーを操作する毎に、次の行を選択するようにしてもよい。
なお、いずれの場合も、ブロック別変化度表示部600は、選択された行の変化尤度に関係する、旧地理画像21Aと新地理画像21Bの各々上のブロックの位置の決定には先に述べたようにブロック別変化度データ28(図5)を用いることができる。このようにすれば、利用者が、表示されたブロックについて、変化領域があるか否かの判定を行い、入力領域35から判定結果又は判定結果とコメントを入力する毎に、選択指示操作をするだけで、次の変化尤度のブロックが選択状態で表示されるので、変化尤度の大きなブロックが対応する、支援データ表示領域32内の行を画面上で選択することなく、変化尤度順に複数のブロックに対する変化領域の有無をチェックすることができ、チェックが容易になる。
21A…旧地理画像データ、21B…新地理画像データ、22a…植生領域画像データ、22b…道路領域画像データ、23A…旧地理画像用の輝度画像データ、23B…新地理画像用の輝度画像データ、24A…旧地理画像用の彩度画像データ、24B…新地理画像用の彩度画像データ、25A…旧地理画像用の色相画像データ、25B…新地理画像用の色相画像データ、26A…旧地理画像用の陰影領域画像データ、26B…新地理画像用の陰影領域画像データ、27A…旧地理画像用のエッジ画像データ、27B…新地理画像用のエッジ画像データ、28…ブロック別画像変化度、29…ブロック別判定結果データ、29a…過去のブロック別判定結果データ、351、352…ボタン、353…コメント入力用のフィールド、36…支援データの表示領域、361…変化尤度順位用のフィールド、362…ブロック別の変化尤度用のフィールド、366…旧コメント用のフィールド、367…最新コメント用のフィールド、401…ヒストグラム均等化画像、402…エッジ画像、403…2値化エッジ画像、404…小エッジ除去処理後の画像、A…輝度用重み、B…カラー用重み係数、C…エッジ用重み、Mi…マスク係数、Mir…道路領域用のマスク係数、Mis…植生領域用のマスク係数、Pb…ブロック別変化尤度、pi…画素別変化尤度。