JP3897241B2 - 熱搬送媒体 - Google Patents

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  • Devices For Blowing Cold Air, Devices For Blowing Warm Air, And Means For Preventing Water Condensation In Air Conditioning Units (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷暖房システムなどにおいて熱を搬送するために用いる熱搬送媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、地域冷暖房システムにおいては、熱供給側システム(熱供給側プラント)と熱利用側システム(熱を利用するビルなど)との間に送給流路および戻り流路が設けられ、熱供給側システムからの熱搬送媒体は送給流路、熱利用側システム、戻り流路を通して循環される。送給流路および戻り流路は配管から構成され、熱搬送媒体は例えば水から構成されるが、このような地域冷暖房システムでは、送給流路および戻り流路の長さは数km以上になることもある。このように送給流路および戻り流路が長くなると、熱搬送媒体である水の搬送動力がかなり大きくなり、この搬送動力が地域冷暖房システムのランニングコストの約60〜70%になるとも言われている。
【0003】
そこで、この水の搬送動力を低減させる有効な方法として、粘弾性を示す界面活性剤を水に添加した水溶液(界面活性剤水溶液)を熱搬送媒体として用いることが提案されており、このような界面活性剤を用いることにより、熱搬送媒体の流動摩擦抵抗を著しく低減させることができる。
【0004】
界面活性剤として特定の第四級アンモニウム塩とサリチル酸塩の混合物からなるものを用い、このような界面活性剤を数10〜数1000ppmの濃度で配管内を流動する水に溶解させると、この界面活性剤が水中で、疎水基部を中心に親水基部を外周部に配置したミセルを形成し、そのミセルが棒状の形態をなして高次に絡まって粘弾性を示すことに起因するといわれている。
【0005】
このような特性を示す界面活性剤および水搬送配管内の摩擦抵抗低減方法として、例えば特公平3−76360号公報、特公平4−6231号公報、特公平5−47534号公報、特開平8−311431号公報などがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方、このような効果を示す界面活性剤の濃度には特定の範囲があることが知られている。従って、常に摩擦低減効果を得るためには、配管内の界面活性剤の濃度をその効果の得られる範囲内に保つ必要がある。しかしながら、界面活性剤の分子は、水中の溶存酸素によって酸化され、界面活性剤水溶液が黄色乃至黒色に変色するといった現象が観察されている。このことは、初期に投入した水溶液中の界面活性剤の濃度が、酸化により、経時的に減少することを意味し、長期間にわたって熱搬送システムを運転すると、この経時的現象によって摩擦低減効果が減少する。このように摩擦低減効果が減少すると、界面活性剤水溶液を搬送するポンプの動力が一定であるとすると、摩擦低減効果の減少により圧力損失が増大し、その結果、配管内を流れる界面活性剤水溶液の流量が減少し、熱利用側での熱量が不足する。このような熱量不足を少なくするには、ポンプの動力を増加しなければならず、このように動力を増加すると、ランニングコストが更に増大する。また、常に摩擦低減効果を維持しながら熱搬送装置を省エネルギー状態で運転しようとすると、界面活性剤の濃度が低下する度に添加しなければならず、これは手間がかかり、運転効率も悪くなる。
【0007】
本発明の目的は、界面活性剤水溶液の経時的劣化を抑え、長期にわたって安定して熱を搬送することができる熱搬送媒体を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、摩擦低減効果を有する界面活性剤水溶液を熱搬送媒体に使用する場合、この界面活性剤水溶液中に溶存酸素除去剤を添加すると、この水溶液中の界面活性剤濃度が減少せず、長期にわたって摩擦低減効果を持続させることができ、前記目的が達成できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、熱供給側システムおよび熱利用側システムを接続する送給流路と戻り流路を通して循環される熱搬送媒体であって、
溶存酸素除去剤、並びにステアリルトリメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、ドデシルトリメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、ヘキシルトリメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、ヘプチルトリメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、オレイルビス(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、オレイルヒドロキシエチルジメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、及びオレイルトリヒドロキシエチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の界面活性剤が水性液体に添加されており、界面活性剤の濃度が300〜4000ppm、溶存酸素除去剤の添加量が界面活性剤の濃度に対して3〜50倍であることを特徴とする。
【0010】
本発明に従えば、水などの水性液体に界面活性剤とともに溶存酸素除去剤が添加される。摩擦低減効果を有する界面活性剤を添加して熱搬送媒体として使用する場合、水溶液中の溶存酸素による酸化反応や微生物繁殖により界面活性剤が変化し、水溶液中(液相中)の界面活性剤濃度が減少し、これによってその摩擦低減効果が減少してしまう現象が生じる。そこで、界面活性剤水溶液に溶存酸素除去剤を加えることにより、このような現象の発生を抑え、長期にわたって摩擦低減効果を得ることができる。これは、溶存酸素除去剤が界面活性剤よりも優先的に溶存酸素と反応して、水溶液中の溶存酸素濃度を著しく低下させ、これによって、界面活性剤を酸化させ得る溶存酸素を減少させるためと考えられる。これにより、界面活性剤水溶液中(液相中)の摩擦低減効果発現に有効な界面活性剤の濃度低下を抑制し、摩擦低減効果が経時的に減少してしまうことを効果的に防止することができる。
【0011】
また、本発明では、請求項1記載の熱搬送媒体において、不凍剤が添加されていることを特徴とする。
本発明に従えば、界面活性剤の水溶液に不凍剤が添加されており、このように不凍剤を添加した場合、溶存酸素除去剤は不凍剤よりも優先的に溶存酸素と反応して、水溶液中の溶存酸素濃度を著しく低下させる。
【0012】
また、本発明では、請求項1および請求項2記載の熱搬送媒体において、前記溶存酸素除去剤がヒドラジン類、有機酸塩類、ヒドロキシアミン類、フェノール類および糖類から選ばれた少なくとも1種類以上の化合物であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明では、請求項2記載の熱搬送媒体において、前記不凍剤がグリコールまたはアルコールから選ばれた少なくとも1種類以上の化合物であることを特徴とする。
【0014】
本発明に従えば、溶存酸素除去剤としてヒドラジン類、有機酸塩類、ヒドロキシアミン類、フェノール類および糖類から選ばれた少なくとも1種類以上の化合物を好都合に用いることができ、また不凍剤としてグリコールまたはアルコールから選ばれた少なくとも1種類以上の化合物を好都合に用いることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に従う熱搬送媒体の実施の形態を説明する。図1は、本発明の熱搬送媒体を用いる冷暖房システムなどに適用される熱搬送システムの一例を示す概略図である。
【0016】
図1において、図示の熱搬送システムは、例えば、熱搬送媒体に熱を供給する熱供給側システム13と、熱搬送媒体の熱を利用する熱利用側システム14とを備え、熱供給側システム13と熱利用側システム14とが送給流路15および戻り流路16を介して接続されている。この実施形態では、戻り流路16に熱搬送媒体を送給するためのポンプ18が配設され、送給流路15に熱搬送媒体の流量を計測する電磁流量計17が配設されている。温熱(または冷熱)を搬送するための熱搬送媒体は、熱供給側システム13、送給流路15、熱利用側システム14及び戻り流路16を通して循環され、熱供給側システムからの温熱(または冷熱)が上述したように循環される熱搬送媒体によって熱利用側システムに伝達される。なお、送給流路15および戻り流路16は、例えば配管などから構成される。
【0017】
このような熱搬送システムに熱搬送媒体として水を用いた場合、その摩擦抵抗が大きく、所望の熱量を搬送するためには、ポンプ18の動力を大きくしなければならない。そのために、熱搬送媒体としての水に摩擦低減効果を有する界面活性剤を添加することが提案されているが、界面活性剤による摩擦低減効果を得るためには、その濃度を所定範囲に維持するのが望ましいことが知られている。
【0018】
界面活性剤の一例として、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドとサリチル酸ナトリウムとを1:1.5のモル比で混合させたものを使用した場合、そのときの水溶液中の界面活性剤の濃度と摩擦低減率との関係は、図2に示す通りとなる。この図2における摩擦低減率とは、同じ直管配管内を同じ流速条件下で、界面活性剤が添加されてないときに計測した圧力損失値(熱搬送媒体としての水を用いたときの圧力損失値)に対する界面活性剤を添加したときに計測した圧力損失値(熱搬送媒体として界面活性剤水溶液を用いたときの圧力損失値)の低減割合であり、この摩擦低減率が大きいほど摩擦低減効果が大きいことを示す。図2に示す摩擦低減率を調べたときの圧力損失の計測条件は、使用配管がサイズ25Aの塩化ビニル管(所謂、塩ビ管)で、熱搬送媒体の流速が2m/sであった。図2から明らかなように、界面活性剤の濃度が0〜500ppmの範囲では、界面活性剤による摩擦低減率はその濃度の増加とともに比例的に増加するが、界面活性剤の濃度が500ppmを超えると、界面活性剤による摩擦低減率はほぼ一定になることが判った。このようなことから、界面活性剤としてステアリルトリメチルアンモニウムクロライドとサリチル酸ナトリウムとの混合物を用いた場合、この界面活性剤の濃度を500ppm以上に維持するのが望ましいことが分かる。
熱搬送媒体に含まれる界面活性剤の種類については、特に制限されるものではなく、例えば、セチルトリメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、ステアリルトリメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、ドデシルトリメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、ヘキシルトリメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、ヘプチルトリメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、オレイルビス(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、オレイルヒドロキシエチルジメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、オレイルトリヒドロキシエチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物などがある。また、界面活性剤の濃度は、図2に示す通り、少ないと摩擦低減効果が充分に発現せず、また多すぎても摩擦低減効果はある一定の値以上には増加しないので、経済的に無駄になる。このようなことから、界面活性剤の濃度は、300〜4000ppmであるのが好ましく、500〜2500ppmであるのがより好ましい。
【0019】
熱搬送媒体として摩擦低減効果を有する界面活性剤水溶液を用いた場合、長期にわったって使用すると、水溶液中の溶存酸素によって界面活性剤が酸化してその濃度が低下し、充分な摩擦低減効果を得られなくなるが、このような界面活性剤の酸化を防止するために、界面活性剤水溶液に溶存酸素除去剤が添加される。
【0020】
熱搬送媒体に加えられる溶存酸素除去剤の種類についても、特に制限されるものではないが、水への溶解性が良いものが使い勝手が良くて好ましい。即ち、溶存酸素除去剤としては、例えば、ヒドラジン、エリソルビン酸ナトリウム、ジエチルヒドロキシルアミン、メチルエチルケトオキシム、カルボヒドラジド、クルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムなどの中から少なくともとも1種類以上の化合物であるのが好ましく、これらの中でもヒドラジンが特に好ましい。溶存酸素除去剤の濃度に関しては、少ないと溶存酸素を除去できる量が少なく、従って、界面活性剤の酸化を抑制する効果(水溶液中の濃度減少を抑制する効果)が低くなり、また多すぎると特に界面活性剤の酸化を抑制する効果(水溶液中の濃度減少を抑制する効果)は変わらないが、経済的に無駄となる。このようなことから、溶存酸素除去剤の添加量は界面活性剤の濃度に対して、2〜100倍モル濃度が好ましく、3〜75倍モル濃度がさらに好ましく、3〜50倍モル濃度がなおさらに好ましい。
【0021】
このような熱搬送媒体に不凍剤を添加するようにしてもよい。不凍剤を添加することによって、熱搬送媒体の凍結を防止することができ、低温環境下においても使用することが可能となる。この不凍剤の種類に関しても特に制限はなく、エチレングリコールやプロピレングリコールなどのグリコールやメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコールから選ばれた少なくとも1種類以上の化合物が好ましく、これらのうちプロピレングリコールが特に好ましい。不凍剤の濃度に関しては、濃度が低いと熱搬送媒体の凝固温度が高くなり、低温への使用可能な温度域が小さくなるために好ましくなく、逆に濃度が大きいと使用温度域がより低温まで拡張できるが、粘性が大きくなって流動性が悪くなる。このようなことから、不凍剤の濃度は、5〜40重量%であるのが好ましく、7〜30重量%であるのがより好ましい。
【0022】
熱搬送媒体として水に界面活性剤、溶存酸素除去剤および不凍剤を添加したものを用いる場合、溶存酸素除去剤は、界面活性剤および不凍剤よりも優先的に溶存酸素と反応して水溶液中の溶存酸素濃度を低減するように作用し、また不凍剤よりも優先的に界面活性剤と反応するように作用するようにするのが好ましく、このような溶存酸素除去剤を添加することによって、安定した熱搬送媒体を提供することができる。
【0023】
実施例および比較例
まず、溶存酸素除去剤による界面活性剤の酸化抑制効果を確認するために、次の実験を行った。実施例1として、500mlの水を入れたビーカーに、界面活性剤としてのステアリルトリメチルアンモニウムクロライドを500ppm添加するとともに、溶存酸素除去剤としてのヒドラジンをステアリルトリメチルアンモニウムクロライドに対して、0.1〜80倍モル濃度添加し、80℃加熱下でマグネチックスターラーで10日間攪拌した。その際、ビーカーは大気下に放置し、溶存酸素が常に飽和になるようにした。そして、溶液中のステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの濃度を液体クロマトグラフィーにて分析した。この分析結果は、図3に示す通りであった。図3の分析結果から明らかなように、溶存酸素除去剤としてのヒドラジンの濃度が界面活性剤としてのステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの濃度に対して3倍以下の場合、界面活性剤の濃度の低下が観察された。これは、溶存酸素により界面活性剤が酸化され、分解しているものと考えられる。一方、このヒドラジンの濃度が界面活性剤の濃度に対して3倍を超えると、界面活性剤の濃度に変化はなく、劣化による消失が防止されている。
【0024】
次に、熱搬送媒体の摩擦低減効果を調べるために、模擬配管を用いた流動試験を行った。流動試験に用いた模擬循環ラインは、配管サイズ20Aの塩化ビニル配管10mと片渦巻式ポンプ(イワキ株式会社製、型番:LP−025A)及び電磁流量計(株式会社日立製作所社製、形式:FMR104W−40)で構成される密閉系ループラインであった。実施例2の熱搬送媒体としては、水に、プロピレングリコール10重量%と、界面活性剤(摩擦低減材)としてのステアリルトリメチルアンモニウムクロライドとサリチル酸ナトリウムとをモル比1:1.5で混合させた化合物500ppmと、そして溶存酸素除去剤としての所定量のヒドラジンとを溶解させた水溶液(以下、「摩擦抵抗低減水溶液」ともいう)を用いた。片渦巻式ポンプの定格動力は0.75kW(60Hz)であり、インバータ制御を行うことによりこの片渦巻式ポンプの動力の調整を行った。
【0025】
流動試験においては、まず、30℃の摩擦抵抗低減水溶液の流量をポンプの定格流量値(37dm/min)で一定になるように、ポンプ動力をインバータ制御した。一般に、ポンプ動力はインバータ周波数の3乗に比例するので、ポンプ動力低減率は、{1−(インバータ周波数/60)}×100で求められる。これより算出したポンプ動力低減率を流動試験1日目と流動試験20日目に計測した。ポンプ動力低減率とヒドラジンの濃度の関係は、図4に示す通りであった。図4において、流動試験1日目の結果を白丸印で、また流動試験20日目の結果を黒丸印で示した。
【0026】
比較例1として、ヒドラジンを添加しない以外は実施例2と実質上同一成分の熱搬送媒体を用い、実施例2と同様の条件で同様の流動試験を行った。この比較例1の結果も図4に示し、図4において、流動試験1日目の結果を白四角印で、また流動試験20日目の結果を黒四角印で図4に示した。
【0027】
図4から明らかなように、実施例2において、ヒドラジンの濃度がステアリルトリメチルアンモニウムクロライドに対して3倍モル濃度以上では、20日経過した段階においても、ポンプ動力削減率は試験開始初期の値とほぼ同じであるのに対し、比較例1では、20日経過した段階では、ポンプ動力削減率が大きく低下することが分かった。
【0028】
次に、熱搬送媒体の経時的な摩擦低減効果の低下を調べるために、模擬配管を用いた流動試験を行った。流動試験に用いた模擬循環ラインは、配管サイズ20Aの塩化ビニル配管10mと片渦巻式ポンプ(イワキ株式会社製、型番:LP−025A)及び電磁流量計(株式会社日立製作所製、形式:FMR104W−40)とで構成される密閉系ループラインであった。実施例3の熱搬送媒体としては、水に、プロピレングリコールと、界面活性剤(摩擦低減材)としてのステアリルトリメチルアンモニウムクロライドとサリチル酸ナトリウムとをモル比1:1.5で混合させた化合物と、そして溶存酸素除去剤としてのヒドラジンとを、それぞれ、10重量%、500ppm、100ppm(ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド濃度の3.2倍モル量に相当する)の濃度で溶解させた水溶液(以下、「摩擦抵抗低減水溶液」ともいう)を用いた。片渦巻式ポンプの定格動力は0.75kW(60Hz)であり、インバータ制御を行うことによりこの片渦巻式ポンプの動力の調整を行った。
【0029】
流動試験においては、まず、30℃の摩擦抵抗低減水溶液の流量をポンプの定格流量値(37dm/min)で一定になるように、ポンプ動力をインバータ制御した。一般に、ポンプ動力はインバータ周波数の3乗に比例するので、ポンプ動力低減率は、{1−(インバータ周波数/60)}×100で求められる。これより算出したポンプ動力低減率の経時変化は、図5中に丸印で示す通りであった。図5は、摩擦抵抗低減水溶液をサンプリングし、そのサンプリング液中の界面活性剤濃度を液体クロマトグラフィーにて求めた結果もプロットの近傍にカッコ書きで示した。
【0030】
比較例2として、ヒラジンを添加しない以外は実施例3と実質上同一成分の熱搬送媒体を用い、実施例3と同様の条件で同様の流動実験を行った。この比較例の結果は、図5中に四角印で示す通りであった。
【0031】
図5から明らかなように、実施例3では、50日経過した後もポンプ動力削減率および界面活性剤の濃度は、いずれも、流動実験開始初期の値とほぼ同じであるのに対し、比較例2では、5日経過した段階で、ポンプ動力削減率が急激に低下し、それに対応して界面活性剤の濃度も低下することが分かった。
【0032】
また、実施例3では50日を経過した後も、摩擦抵抗低減水溶液の外観色は無色透明であるのに対して、比較例では、数日を経過した段階で、その水溶液は黄色に変色した。
【0033】
上述した結果から分かるように、界面活性剤を添加した熱搬送媒体に溶存酸素除去剤を添加することによって、水溶液中(液相中)に存在し、摩擦低減効果に寄与する界面活性剤の濃度を一定に保つことができ、これによって、ポンプ動力削減効果も得られることが確認できた。
【0034】
【発明の効果】
本発明の熱搬送媒体によれば、水性液体に界面活性剤とともに溶存酸素除去剤が添加されるので、水溶液中の溶存酸素の濃度を著しく低減させて、界面活性剤濃度の低下を防止することができ、長期にわたって摩擦低減効果を得ることができ、その結果、熱搬送媒体を送給するためのポンプ動力の削減効果を長期的に持続することができる。また、不凍剤を含む熱搬送媒体は、低温環境下において使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱搬送媒体を用いる熱搬送システムの一例を示す概略図である。
【図2】摩擦低減率と熱搬送媒体中の界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
【図3】溶存酸素除去剤の濃度と界面活性剤の濃度との関係(溶存酸素除去剤による酸化防止効果)を示す図である。
【図4】ポンプ動力削減率とヒドラジン濃度との関係を示す図である。
【図5】ポンプ動力削減効果の経時的変化を示す図である。
【符号の説明】
13 熱供給側システム
14 熱利用側システム
15 送給流路
16 戻り流路
18 ポンプ

Claims (4)

  1. 熱供給側システムおよび熱利用側システムを接続する送給流路と戻り流路を通して循環される熱搬送媒体であって、
    溶存酸素除去剤、並びにステアリルトリメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、ドデシルトリメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、ヘキシルトリメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、ヘプチルトリメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、オレイルビス(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、オレイルヒドロキシエチルジメチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物、及びオレイルトリヒドロキシエチルアンモニウム塩とサリチル酸塩との混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の界面活性剤が水性液体に添加されており、界面活性剤の濃度が300〜4000ppm、溶存酸素除去剤の添加量が界面活性剤の濃度に対して3〜50倍であることを特徴とする熱搬送媒体。
  2. 請求項1記載の熱搬送媒体において、不凍剤が添加されていることを特徴とする熱搬送媒体。
  3. 請求項1および請求項2記載の熱搬送媒体において、前記溶存酸素除去剤がヒドラジン類、有機酸塩類、ヒドロキシアミン類、フェノール類および糖類から選ばれた少なくとも1種類以上の化合物であることを特徴とする熱搬送媒体。
  4. 請求項2記載の熱搬送媒体において、前記不凍剤がグリコールまたはアルコールから選ばれた少なくとも1種類以上の化合物であることを特徴とする熱搬送媒体。
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