JP3896088B2 - 排気カムのタイミングを進めたシリンダ非活動化エンジン及び方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの選択されたシリンダを非活動化するための切替えバルブアクチュエータを持つシリンダ非活動化エンジンに関する。詳細には、本発明は、シリンダ非活動化エンジンの作動を改良するため、カムシャフトのカムのタイミングの変更を行う。
【0002】
【従来の技術】
シリンダ非活動化エンジンと関連した技術分野において、空動き液圧バルブリフタ、又は下文においてラッチングピンと呼ぶ摺動ピンラッチング機構を備えたラッシュ(隙間)(lash)調整装置を提供することが周知である。これらの空動き装置は、切替えバルブアクチュエータと呼ばれ、内部ラッシュアジャスターを備えた収納式バルブリフタ、及びエンジンバルブギヤの枢動部材として使用される定置の収納式ラッシュアジャスターの両方を含む。
【0003】
このような切替えバルブアクチュエータのラッチングピンは、ラッチングピンの自由移動を確実にする機械的ラッシュ構成要素を必要とする。その結果、機構は、液圧式ラッシュアジャスター又はリフタが必要な機械的ラッシュを補償できないように設計されている。バルブトレインの騒音をなくすため、空動き(切替え)バルブアクチュエータを含む各バルブラインの開閉側液圧ランプ(ramp)に追加のカムシャフトカムランプ高さを加えることによって、この機械的ラッシュをなくさなければならない。更に、多数の生産部品における実際の機械的ラッシュの予想される変化にも拘わらず騒音をなくすため、追加のランプは、最大許容機械的ラッシュにエンジンの寿命中に被るものと予想される磨耗を加えた量と等しくなければならない。
【0004】
ランプを大きくすると、切替えバルブアクチュエータの機械的ラッシュ成分によりバルブトレインで騒音が発生する可能性がなくなるけれども、これにより、切替えバルブアクチュエータを持つ全てのバルブラインで、機械的ラッシュが最大の状態を除いて、バルブオーバーラップ領域が大きくなる。これは、最悪よりもましな場合でラッシュが無くされた後に残る追加のランプ高さのためである。追加のオーバーラップ領域は、軽負荷状態中及びアイドリング時の燃焼の品質を大幅に劣化させ、オペレータにエンジンの振動を感じさせることとなる。従って、最少のエンジン変更でこれらの悪影響をなくす方法が所望とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上文中に論じた機械的ラッシュにより大きくなったバルブオーバーラップ領域を大幅に減少するか或いはなくすエンジンのカムタイミングの変更を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
代表的なエンジンでは、各シリンダ内の吸気バルブに対する排気バルブのタイミングは、エンジンの全てのシリンダに亘って同じであるように設計されている。バルブのタイミングがシリンダによって異なると、各シリンダのオーバーラップを変化させてしまう。
【0007】
本発明は、切替えバルブアクチュエータを備えたシリンダについて、吸気バルブのタイミングを固定した状態に維持しながら排気カムのタイミングを進める。排気カムのタイミングを進めると、機械的ラッシュにより発生する追加のオーバーラップが減少する。切替えバルブアクチュエータを備えていない残りのシリンダは変化しない。排気バルブのタイミングを進めることを選択するのは、排気バルブのタイミングを値の所定の限度範囲内で変化させたときにエンジンの性能が大幅には変化しないが、吸気カムのタイミングは僅かに変化させただけでエンジンのトルク出力に大きな影響を及ぼすためである。
【0008】
本発明のこれらの及び他の特徴及び利点は、本発明の特定の実施例の以下の説明を添付図面を参照して読むことにより更によく理解されるであろう。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に添付図面を詳細に参照すると、参照番号10は、複数の同様の構造のエンジンシリンダ(図示せず)がシリンダバンク11に配置された内燃エンジンの全体を示す。これらのシリンダの幾つかは非活動化シリンダと呼ばれ、エンジンの作動中に非活動化でき、残りのシリンダは従来型シリンダであり、エンジンの作動中に通常の作動を続ける。
【0010】
エンジンは、従来型シリンダの各々について吸気カム14及び排気カム16を備えており、非活動化シリンダの各々について吸気カム18及び排気カム20を備えたカムシャフト12を含む。吸気カム14及び排気カム16は、従来型バルブリフタ22を作動する。これらのバルブリフタは、エンジンの従来型シリンダの吸気バルブ24及び排気バルブ26に連結されており、これらのバルブを作動する。カム18、20は切替えバルブリフタ28を作動する。これらの切替えバルブリフタは、エンジンの非活動化シリンダの吸気バルブ30及び排気バルブ32に連結されており、これらのバルブを作動する。
【0011】
従来型バルブリフタ22及び切替えバルブリフタ28は、両方とも、シリンダバンク11の一部を形成するリフタギャラリー34に取り付けられている。リフタギャラリーは、リフタ22、28の内部に取り付けられたラッシュアジャスターに圧力オイル供給36を提供する。切替えバルブリフタ28には、切替えリフタ28のラッチングピン42に連結された制御通路ネットワーク40の加圧及び排出を交互に行うために連結された制御バルブ38を含む制御システムを通して制御オイル圧力が追加に供給される。切替えリフタ28には、機械的内部ラッシュが設けられている。この機械的内部ラッシュは、制御通路ネットワーク内の非活動化オイル圧力が制御バルブ38を通して排出された場合にラッチングピンを確実に再係合することを必要とする。逆に、従来型リフタ22には有効な機械的ラッシュは設けられていない。
【0012】
その結果、カムシャフトに設けられた非活動化シリンダ用の吸気カム18及び排気カム20は、非活動化リフタ28の機械的ラッシュをなくし、オペレータにとって好ましからぬリフタ騒音が発生しないようにするため、液圧式ラッシュアジャスターを作動させるのに必要なランプ高さを越える追加のランプ高さを含むことを必要とする。従来型リフタ22には機械的ラッシュがなく、そのため吸気カム14及び排気カム16のランプ高さは大きくされていない。その結果、非活動化シリンダは、添付図面のうち図2と関連して論じるように、排気−吸気バルブオーバーラップが大きい。このようにオーバーラップが大きくなると、非活動化シリンダの低負荷時及びアイドリング作動中の燃焼状態が悪化するシリンダ状態を生じ、これは、エンジン又は車輛のオペレータにとって好ましくない。
【0013】
図2を参照すると、実線44は従来型排気カム16のリフト曲線即ち揚程曲線を示し、実線46は従来型吸気カム14の揚程曲線を示す。破線48は非活動化排気カム20の揚程曲線を示し、破線50は非活動化吸気カム18の揚程曲線を示す。この実施例では、非活動化カムのタイミングは対応する従来型カムのタイミングと同じである。しかしながら、これらの揚程曲線は、従来型カムと非活動化カムでランプ高さが異なるため、異なる。図2の中央には、排気バルブ揚程曲線及び吸気バルブ揚程曲線のオーバーラップ部分の拡大図が示してあり、ここでは、線44、46、48、及び50は、カムのランプ部分に沿ったそれらの経路の相違を更に容易に示す。
【0014】
図3は、変更した、本発明によるカムシャフトカムタイミング装置を示す。これらの図では、線46及び50は、エンジンの吸気カムの揚程曲線を示す。揚程曲線及びタイミングは図2に示すのと同じであり、そのため、それらを表示するのに同じ参照番号を使用する。同様に、従来型排気カム16のカム揚程及びタイミングを示す実線44は、図2の同じ参照番号を付した線と同じである。
【0015】
しかしながら、本発明の新たな特徴は、非活動化排気カム20のタイミングが図2に示すカムのタイミングから2°進ませてあるということである。カム揚程曲線は同じままであるけれども、所望であれば、変更できる。進ませた排気カムバルブ揚程が結果的に辿る経路を破線52で示す。
【0016】
排気カム揚程曲線のタイミングを2°進ませると、非活動化シリンダの有効バルブオーバーラップが従来型シリンダと比較して減少するということに着目すべきである。例示の実施例では、従来型シリンダのカムで計測したバルブオーバーラップ領域は約10.668°mm(約0.42°インチ(degree inch))であり、非活動化カムのオーバーラップ領域は約0.152°mm(約0.06°インチ大きい。しかしながら、排気カムを2°進ませると、非活動化カムのオーバーラップ領域が減少し、従来型シリンダカムのオーバーラップ領域と非常に近くなる。かくして、非活動化排気カムのタイミングだけを2°だけ進めることにより、エンジンの燃焼安定性を従来型シリンダ及び非活動化シリンダの両方で、これらのシリンダが作動している場合、本質的に同じ状態に維持し、二種類のシリンダ間でのエンジンの性能が本質的に変わらず、差が1%未満であるようにする。
【0017】
例示の実施例の以上の説明から理解されるように、本方法により、非活動化シリンダ用のカムの通常のラッシュ状態での機械的ランプ効果による大きなバルブオーバーラップが無くなる又は少なくなるという結果が得られる。非活動化シリンダと従来型シリンダとの間のバルブオーバーラップを正規化するのに必要な排気バルブタイミングの進め量は、用途によって変化し、ラッシュアジャスターの機械的ラッシュ仕様、カムシャフトのカムランプ設計、及びベースラインカムタイミング等のファクタで決まる。かくして、非活動化排気カムのタイミングを2°進めることにより、以上説明した例示のエンジンシステムについて有効であることが示され、小さな変化の潜在的有効性を示すが、他のエンジン実施例について必要な進め量を決定するのにも使用できる。現在周知のバルブ切替え非活動化機構で使用する上で、排気カムタイミングを約2°乃至5°の範囲で進めるのが好ましいと考えられている。しかしながら、これよりも拡大した約1°乃至7°の範囲だけ進めるのが様々なエンジンの実施例で有用である。
【0018】
本発明を特定の好ましい実施例を参照して説明したが、以上説明した本発明の概念の範囲内で多くの変更を行うことができるということは理解されるべきである。従って、本発明を開示の実施例に限定しようとするものではなく、本発明は、特許請求の範囲の文言が許す全範囲を含む。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンジンのバルブを作動するための従来型の及び切替え式の両方のバルブアクチュエータ又はバルブリフタを含み、非活動化シリンダの排気バルブのタイミングを進めたエンジンの概略図である。
【図2】従来型シリンダ及び非活動化シリンダを備えた、排気カムのタイミングを進ませていないエンジンについてのバルブオーバーラッププロットのグラフである。
【図3】本発明に従って排気カムのタイミングを進ませたことによる効果を示す、図2と同様のグラフである。
【符号の説明】
10 内燃エンジン 11 シリンダバンク
12 カムシャフト 14 吸気カム
16 排気カム 18 吸気カム
20 排気カム 22 従来型バルブリフタ
24 吸気バルブ 26 排気バルブ
28 切替えバルブリフタ 30 吸気バルブ
32 排気バルブ 34 リフタギャラリー
36 圧力オイル供給 38 制御バルブ
40 制御通路ネットワーク 42 ラッチングピン

Claims (12)

  1. 選択されたエンジンシリンダのバルブを、通常の作動状態と選択されたエンジンシリンダを非活動化する閉鎖された非作動状態との間で切替えるための切替えバルブアクチュエータを持つエンジン用のカムシャフトであって、このカムシャフトは、前記カムシャフトによって作動できる少なくとも一つのカムを吸気バルブ及び排気バルブの各々に備えており、従来型シリンダ及び非活動化シリンダの両方を含み、
    正のバルブラッシュを持つラッシュアジャスターを備えた、前記非活動化シリンダの前記バルブを作動するための前記切替えバルブアクチュエータ、及び大きなバルブラッシュを含まないラッシュアジャスターを備えた、従来型シリンダ用バルブアクチュエータを含み、そのため、前記カムを備えた前記カムシャフトは、前記従来型シリンダ及び前記非活動化シリンダを通るガス流を等しくし、吸気−排気バルブタイミングを同じにすると、前記カム及びバルブアクチュエータの開閉負荷を最小にするのに必要とされる前記非活動化シリンダのカムの開放ランプ及び閉鎖ランプが大きくされているため、前記非活動化シリンダでのバルブオーバーラップを前記従来型シリンダにおけるバルブオーバーラップよりも大きくし、
    前記カムシャフトは、前記非活動化シリンダの前記排気カムについてのタイミングが、様々なシリンダの性能のバランスを大幅に損なうことなく前記従来型シリンダと前記非活動化シリンダとの間の前記バルブオーバーラップの差を大幅に減少するのに十分に進めてある、カムシャフト。
  2. 請求項1に記載のカムシャフトにおいて、前記従来型シリンダ及び前記非活動化シリンダ用の前記排気カムのタイミングの差が約1°乃至7°の範囲内にある、カムシャフト。
  3. 請求項1に記載のカムシャフトにおいて、前記従来型シリンダ及び前記非活動化シリンダ用の前記排気カムのタイミングの差が約2°乃至5°の範囲内にある、カムシャフト。
  4. 請求項1に記載のカムシャフトにおいて、前記従来型シリンダ及び前記非活動化シリンダ用の前記排気カムのタイミングの差が約2°である、カムシャフト。
  5. 活動化シリンダのバルブを作動し又は非活動化するための正のバルブラッシュを持つ切替えバルブアクチュエータ、従来型シリンダのバルブを作動するため、バルブラッシュを無視できる従来型バルブアクチュエータ、及び開放ランプ及び閉鎖ランプが前記従来型シリンダのカムよりも大きい、前記非活動化シリンダ用カムを含むエンジンにおいて、前記非活動化シリンダの前記排気カムのタイミングを従来型シリンダの排気カムのタイミングに対して進ませ、前記非活動化シリンダのバルブオーバーラップを前記従来型シリンダのバルブオーバーラップの十分近くまで減少し、前記従来型シリンダ及び前記非活動化シリンダの両方でアイドリング時の燃焼を安定させ、全てのシリンダの作動出力をほぼ等しくする、エンジン。
  6. 請求項5に記載のエンジンにおいて、前記非活動化シリンダ用の前記排気カムの相対的タイミングを約1°乃至7°の範囲内の値だけ進めた、エンジン。
  7. 請求項5に記載のエンジンにおいて、前記非活動化シリンダ用の前記排気カムの相対的タイミングを約2°乃至5°の範囲内の値だけ進めた、エンジン。
  8. 請求項5に記載のエンジンにおいて、前記非活動化シリンダ用の前記排気カムの相対的タイミングを約2°の値だけ進めた、エンジン。
  9. 活動化シリンダのバルブを作動し又は非活動化するための正のバルブラッシュを持つ切替えバルブアクチュエータ、前記従来型シリンダのバルブを作動するため、バルブラッシュを無視できる従来型バルブアクチュエータ、及び開放ランプ及び閉鎖ランプが前記従来型シリンダのカムよりも大きい、前記非活動化シリンダ用カムを含むエンジンの作動方法において、
    前記非活動化シリンダの前記排気カムのタイミングを従来型シリンダの排気カムのタイミングに対して進ませ、前記非活動化シリンダのバルブオーバーラップを前記従来型シリンダのバルブオーバーラップの十分近くまで減少し、前記従来型シリンダ及び前記非活動化シリンダの両方でアイドリング時の燃焼を安定させ、全てのシリンダの作動出力をほぼ等しくする、方法。
  10. 請求項9に記載の方法において、非活動化シリンダの排気カムの相対的タイミングを約1°乃至7°の範囲の値だけ進ませる、方法。
  11. 請求項9に記載の方法において、非活動化シリンダの排気カムの相対的タイミングを約2°乃至5°の範囲の値だけ進ませる、方法。
  12. 請求項9に記載の方法において、非活動化シリンダの排気カムの相対的タイミングを約2°の値だけ進ませる、方法。
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