JP3894316B2 - チップ状固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、コストが安く、漏れ電流値が良好なチップ状固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のチップ状固体電解コンデンサは、図3及び図4に示すように、表面に誘電体酸化皮膜層2を有するアルミニウムからなる箔状の陽極基体1の表面に陽極部となる一部を除いて半導体層3及び導電体層4を順次積層した固体電解コンデンサ素子5(以下、コンデンサ素子と称する)を形成し、次いでこのコンデンサ素子5をリードフレーム6に接続するが、リードフレーム6の2ヶ所の凸部6a、6bを間隔をおいて対向させ、それぞれの凸部6a、6bに前記コンデンサ素子5の陽極部7と導電体層形成部8を載置している。
【0003】
そして前者は熔接9などで、後者は銀ペースト等の導電材10でリードフレーム6の凸部6a、6bに電気的、かつ機械的に接続した後、外装樹脂11で封止して、チップ状固体電解コンデンサ12が構成されている。そして、この封口した固体電解コンデンサは所定の容量、tanδ、漏れ電流等の電気性能を満たすものを製品としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述したコンデンサ素子の導電体層形成部は、アルミニウム箔陽極基体の表面に半導体層及び導電体層が積層されているため、陽極部よりも厚みが厚くなっている。このため陽極部とリードフレームの凸部を接続すると極端な時には、陽極基体が曲がり、漏れ電流を悪化させている。
【0005】
このような欠点を防ぐために、一平面内に配されたリードフレームの凸部6a、6bのうち、リードフレームの凸部6aにあらかじめ陽極部と導電体層形成部の厚みの差だけの段差を設けておき、前記した接続時の陽極基体の湾曲を緩和することが考えられるが、陽極基体の形状が変更される毎に高価な金型を製造してリードフレームを作製せねばならず生産上かつコスト上の問題があった。従ってコストが安く、漏れ電流値が良好なチップ状固体電解コンデンサが求められていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述した問題点を解決するためになされたものであって、
[1] 端部を陽極部とし、表面に誘電体酸化皮膜層を有する平板状アルミニウム箔の前記誘電体酸化皮膜層上に半導体層、導電体層が順次設けられた導電体層形成部を備え、この導電体層形成部が前記陽極部の厚みより厚いアルミニウム電解コンデンサ素子と平板状の前記陽極部の下方に配され前記平板状の陽極部に接続される第1のリードと、前記導電体層に接続される第2のリードを備え、前記第1と第2のリードの一部を残して外装樹脂により封口されたチップ状固体電解コンデンサの製造方法であって、
前記第一のリードと前記第2のリードが一平面内にあるリードフレームを用い、 前記平板状の陽極部の上面と、この陽極部の下方に配された前記第1のリードの上面とを金属線で遊びを持たせて電気接続して、前記平板状の陽極部が湾曲しないようにすると共に、前記第2のリードに前記導電体層を載置して、電気接続するチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
[2] 前記第1のリードが、前記陽極部から離れて配されている上記[1]に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法、及び
[3] 前記陽極部先端部を含む一部が、前記第1のリード上に配置されている上記[1]に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法、
[4] 前記金属線を複数本とした請求項1に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法を開発することにより上記の課題を解決した。
【0007】
以下本発明の固体電解コンデンサについて詳細に説明する。
本発明において固体電解コンデンサの陽極として用いられる弁作用を有する陽極基体としては、例えばアルミニウムを基質とする合金等がいずれも使用できる。そして陽極基体の形状としては平板状のアルミニウムの箔が挙げられる。
【0008】
陽極基体の表面に設ける誘電体酸化皮膜層は、アルミニウム箔の表面部分に設けられたアルミニウム箔自体の酸化物層であってもよく、或はアルミニウム箔の表面上に設けられた他の誘電体酸化物の層であってもよいが、特にアルミニウム箔自体の酸化物からなる層であることが望ましい。
【0009】
本発明では、表面に誘電体酸化皮膜層が形成された平板状の陽極基体の端部の一区画に陽極部を設けており、陽極部とした以外の残りの誘電体酸化皮膜層上に半導体層を形成させているが、半導体層の種類には特に制限は無く、従来公知の半導体層が使用できる。
【0010】
この中でとりわけ本願出願人の出願による二酸化鉛又は二酸化鉛と硫酸鉛からなる半導体層(特開昭62−256423号公報、特開昭63−51621号公報)が、作製した固体電解コンデンサの高周波性能が良好なために好ましい。また、テトラチオテトラセンとクロラニルの錯体を半導体層として形成させる方法(特開昭62−29123号公報)、タリウムイオン及び過硫酸イオンを含んだ反応母液から化学的に酸化第2タリウムを半導体層として析出させる方法(特開昭62−38715号公報)もその一例である。
【0011】
そしてこのような半導体層上には、例えばカーボンペースト及び/又は銀ペースト等の従来公知の導電ペーストを積層して導電体層を形成して導電体層形成部を構成している。また本発明においては、前述した陽極部と導電体層形成部との界面に絶縁性樹脂によってはち巻き状に樹脂層部をあらかじめ形成しておくと、半導体層を形成する時に半導体層の形成面積が一定しバラツキの少ない容量のものが得られる。
【0012】
次にこのように導電体層まで形成されたコンデンサ素子を一対の対向して配置されたリードフレームに接続する方法を説明する。図1及び図2は、固体電解コンデンサ素子5を導電材10及び金属線13で接合した状態を示す断面図である。
【0013】
図1において、陽極基体1の表面に誘電体酸化皮膜層2が形成されており、その上に半導体層3、さらにその上に導電体層4が形成された固体電解コンデンサ素子5をリードフレーム6の他方の凸部6b(切断後は第2のリードになる)に載置した後、導電体層形成部8の一部を導電材10で接合し、また、リードフレーム6の一方の凸部6a(切断後は第1のリードになる)と陽極部7が金属線13で接合する。図2においては固体電解コンデンサ素子5の陽極部7の一部がリードフレーム6の一方の凸部6aまで伸びていて、陽極部7と一方の凸部6aは金属線13で接合されている。
【0014】
前述した導電材10としては、銀ペースト等の公知の導電ペースト、クリーム半田等の溶融可能金属が挙げられる。また金属線13の材質としては鉄、ニッケル、銅、アルミニウム及びこれらの合金等公知のものが挙げられ、金属線には半田等のメッキが施されていてもよい。金属線の太さは、数ミクロンないし数ミリメートルのものが適用され、リードフレームとの接続の容易さ、固体電解コンデンサ素子の形状等によって選定される。金属線の長さは通常、数ミリメートルであるが後述する外装形状、固体電解コンデンサの大きさによって決定される。一般に金属線は、後述する外装時の応力を緩和するために、遊びを持たせてリードフレームと陽極部間を接続することが好ましい。金属線とリードフレーム及び陽極部とは、熔接、導電ペースト、半田等で接続される。
【0015】
図1及び図2では、金属線13の本数を各1本で示したが、接続を強固にするために複数本接続してもよい。また、金属線の接続順序として、あらかじめリードフレーム6の一方の凸部6aに金属線13を接続したリードフレームを使用して、固体電解コンデンサ素子5の載置時に、陽極部7と接続してもよい。或いは、あらかじめ陽極部7に金属線13を接続しておきリードフレーム6に固体電解コンデンサ素子5が載置された時に一方の凸部6aと接続してもよい。後者の場合、陽極部7に金属線13を接続する時期は、半導体層3の形成前後又は導電体層4の形成後でもよい。
【0016】
このようにしてリードフレームに接続された固体電解コンデンサ素子は、リードフレームの一部を残して、エポキシ樹脂等の外装樹脂11により、トランスファー成形機などで封止成形を行った後、リードフレームの凸部をコンデンサ素子の近辺で切断して、リードを有するチップ状の固体電解コンデンサとしている。
【0017】
【作用】
本発明の固体電解コンデンサは、前記平板状の陽極部の上面と、この陽極部の下方に配された前記第1のリードの上面とを金属線で遊びを持たせて電気接続すると共に、前記第2のリードに前記導電体層を載置し電気接続したので、陽極基体を構成する平板状のアルミニウム箔に応力、がかからず湾曲が起きないために漏れ電流値の良好なチップ状固体電解コンデンサを提供できる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに詳しく説明する。
【0019】
(実施例1)
りん酸とりん酸アンモニウム水溶液中で化成処理して表面に誘電体酸化皮膜層を形成した45μF/cm2 のアルミニウムエッチング箔(以下、化成箔と称する。)の小片4×3mmを用意した。この化成箔の端から1×3mmの部分を陽極部とし、残り3×3mmの部分を酢酸鉛三水和物2.4モル/lの水溶液と過硫酸アンモニウム4.0モル/l水溶液の混合液に浸漬し、60℃で20分放置し、二酸化鉛と硫酸鉛からなる半導体層を形成した。
【0020】
このような操作を3回行った後、半導体層上にカーボンペースト及び銀ペーストを順に積層して導電体層を形成し、コンデンサ素子を作製した。一方、別に用意したリードフレーム(材質42アロイ、厚み0.1mm、凸部の寸法:幅3mm、凸部の先端間隙1mm)を用い、前記したコンデンサ素子を他方の凸部に載置し銀ペーストで接続すると共に、陽極部の先端中央部と一方の凸部の先端中央部に0.25φ、長さ4mmのアルミニウム線を渡し、両端をそれぞれ熔接で接続した。その後、エポキシ樹脂を用いてトランスファー成形して外形寸法7×4×3mmのチップ状固体電解コンデンサを作製した。
【0021】
(実施例2)
実施例1と同様のコンデンサ素子を用い、リードフレームの凸部の先端間隙が0.5mmである以外は実施例1と同様のリードフレームの他方の凸部にコンデンサ素子の導電体層形成部3×3mmを載置し、銀ペーストで接続すると共に、リードフレームの一方の凸部にはコンデンサ素子の陽極部の0.5mmの部分がかかるように載置し、陽極部の幅方向の中央の所の先端から、リードフレームの一方の凸部の先端から1.2mmの所で凸部の幅方向の中央の位置にニッケル線(太さ0.3φ、長さ4mm)を渡し熔接で接続した。その後、エポキシ樹脂を用いてトランスファー成形して外形寸法7×4×3mmのチップ状固体電解コンデンサを作製した。
【0022】
(実施例3、4)
実施例1、2で半導体層を酢酸鉛三水和物2.0モル/l水溶液に化成箔を浸漬して、別に用意した白金陰極との間で電気化学的に形成した二酸化鉛にした以外は、実施例1、2と同様にしてチップ状固体電解コンデンサを作製した。
【0023】
(比較例1)
陽極部と陽極部側のリードフレームの接続を、金属線を使用せずに、直接、陽極部とリードフレームの凸部とを熔接で行った以外は実施例2と同様にしてチップ状固体電解コンデンサを作製した。なお、陽極部の下面とリードフレームの凸部の隙間は1mmであった。
【0024】
以上のようにして作製した直後の固体電解コンデンサの性能を表1に示した。なお、各実施例又は比較例は、全数値n=100点の平均値である。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
本発明のチップ状固体電解コンデンサは、固体電解コンデンサ素子の陽極部とリードとの接続を金属線を介して行っており、陽極基体に応力がかからないため漏れ電流値が良好な固体電解コンデンサを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 固体電解コンデンサ素子をリードフレームに載置した状態を示す断面図である。
【図2】 固体電解コンデンサ素子をリードフレームに載置した状態を示す他例の断面図である。
【図3】 従来のチップ状固体電解コンデンサをリードフレームに載置した状態を示す平面図である。
【図4】 従来のチップ状固体電解コンデンサをリードフレームに載置した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 陽極基体
2 誘電体酸化皮膜層
3 半導体層
4 導電体層
5 固体電解コンデンサ素子
6a リードフレームの一方の凸部
6b リードフレームの他方の凸部
7 陽極部
8 導電体層形成部
9 熔接
10 導電材
11 外装樹脂
12 チップ状固体電解コンデンサ
13 金属線
Claims (4)
- 端部を陽極部とし、表面に誘電体酸化皮膜層を有する平板状アルミニウム箔の前記誘電体酸化皮膜層上に半導体層、導電体層が順次設けられた導電体層形成部を備え、この導電体層形成部が前記陽極部の厚みより厚いアルミニウム電解コンデンサ素子と平板状の前記陽極部の下方に配置され前記平板状の陽極部に接続される第1のリードと、前記導電体層に接続される第2のリードを備え、前記第1と第2のリードの一部を残して外装樹脂により封口されたチップ状固体電解コンデンサの製造方法であって、 前記第一のリードと前記第2のリードが一平面内にあるリードフレームを用い、 前記平板状の陽極部の上面と、この陽極部の下方に配置された前記第1のリードの上面とを金属線で遊びを持たせて電気接続して、前記平板状の陽極部が湾曲しないようにすると共に、前記第2のリードに前記導電体層を載置して、電気接続するチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記第1のリードが、前記陽極部から離れて配置されている請求項1に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記陽極部先端部を含む一部が、前記第1のリード上に配置されている請求項1に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記金属線を複数本とした請求項1に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
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