JP3893242B2 - スピーカ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反発型磁気回路を用いたスピーカ装置に係わり、特に磁石のマグネットホルダに対する取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
反発磁気回路型スピーカ装置は、磁石の同じ極同士を接合して上下対称構造の反発磁気回路を形成しているものである。この反発磁気回路型スピーカ装置は、小型化、薄型化に適しているため、近年では例えばプラズマディスプレイの如き壁掛けテレビ等へ用いられたりしている。また、ひずみが低減されるという特有の効果をも有している。
【0003】
図14に、この反発磁気回路型スピーカ装置の構成を示す。この図(右半分が側面図で、左反分が端面図)において、反発磁気回路型スピーカ装置50は、フレーム51により全体が支持され、かつその側面部分が覆われている。フレーム51は、その下方部分がマグネットホルダ52となっており、内部に後述するボイスコイルや磁石、或いはセンタープレートが存する構成となっている。このフレーム51には、ドーナッツ状の振動板53の一端部が取り付けられている。そして、振動板53の他端部は円筒形のボイスコイルボビン54に取り付けられている。ボイスコイルボビン54には、ドーナッツ状のダンパ55の一端部が取りつけ固定されている。それによって、該ダンパ55によってボイスコイルボビン54が弾性的に支持されている。
【0004】
なお、ボイスコイルボビン54の下端側の外周には、ボイスコイル56が円筒状に巻回されている。
【0005】
ボイスコイルボビン54の内方には、磁性材料からなるドーナッツ状のセンタープレート57がボイスコイル56に対向するように設けられている。そして、このセンタープレート57を挟んで2つの磁石58a,58bの同極同士が対向するように配置されている。かかる磁石58a,58bの配置により、センタープレート57の外周には反発磁束が生じ、該反発磁束の磁界内にボイスコイルボビン54が位置している。
【0006】
同極同士が対向して設けられる磁石58a,58bは、例えばネオジウムを材質として形成されると共に、外観が円柱形状を為すように形成されている。そして、円柱形状の磁石58a,58bは、その下端部でマグネットホルダ52に形成されたマグネット受け部59に載置される。すなわち、同極同士の反発により、磁石58a,58bはセンタープレート57から互いに遠ざかる向きに反発力を受けるが、かかる反発力によりマグネットホルダ52の底面側に存する磁石58aはマグネット受け部59に載置される構成となる。また、センタープレート57よりも上方に位置する磁石58bは、磁石受け60によって上方から抑え込まれることにより、マグネットホルダ52内に係止される構成となる。
【0007】
なお、上述の磁石58a,58b、センタープレート57、及びボイスコイル56を含むボイスコイルボビン54によって反発磁気回路61が構成される。かかる反発磁気回路61を有する反発磁気型スピーカ装置50は、中低音域用スピーカであるが、反発磁気回路61の上部に高音域用のツイータを取付固定するようにしても良い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の如く磁石58a,58bは、ネオジウムの如き高価な材料からなり、しかも概観形状が円柱状を為すように形成されている。このため、磁石58a,58bの体積が大きくなり、それによって必要とされる原材料も多くなるので、コストが掛かる、といった問題が生じる。
【0009】
しかしながら、磁石58a,58bを小型化する等して体積を単純に低減した場合には、その分だけ磁束密度が低下してしまう。このため、ボイスコイル56を通過する磁束密度が低下することとなり、効率が低下する。また、磁石58a,58bを小型化すると、その高さが小さくなり、逆磁界となる位置が中心側に大きくずれてしまって音に悪影響を及ぼしてしまう。それ故、磁石58a,58bの体積を単に低減することはできないものとなっている。
【0010】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、磁石の体積を低減化すると共に、体積の低減化の割には磁束密度が低下しない反発磁気回路を有する反発磁気型のスピーカ装置を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のスピーカ装置は、同極同士が対向配置される一対の円柱形状の磁石を有すると共に、該磁石が磁石取付部に取り付けられるスピーカ装置において、磁石は対向配置される極と反対側の極において、対向配置される極に向かい切欠き部が形成されていると共に、切欠き部の径方向における外径寸法は、該磁石の外径寸法の1/3より大きく2/3よりも小さく設けられると共に、切欠き部の高さ方向における高さ寸法は、該磁石の高さ寸法の1/5より大きく3/5よりも小さく設けられているものである。このように、磁石の対向配置されている極と反対側の極において、切欠き部を形成することで、磁石の体積を少なくすることができる。それによって、高価な材質を使用する磁石のコストを低減することが可能となる。これと共に、対向配置される極に向かい切欠き部を形成する場合、磁石の体積の低減割合と比較して、磁束密度の低下割合を小さく抑えることが可能となる。
【0012】
さらに、他のスピーカ装置の発明は、同極同士が対向配置される一対の円柱形状の磁石を有すると共に、該磁石が磁石取付部に取り付けられるスピーカ装置において、磁石はその一部が他の部分よりも窪んだ凹陥部を有し、該凹陥部とは反対側の端面同士が対向配置されると共に、磁石取付部には該磁石の凹陥部を嵌合させるための突出部が形成されていて、凹陥部の径方向における外径寸法は、該磁石の外径寸法の1/3より大きく2/3よりも小さく設けられると共に、凹陥部の高さ方向における高さ寸法は、該磁石の高さ寸法の1/5より大きく3/5よりも小さく設けられていることとしたものである。
【0013】
このように、磁石同士が対向配置されている端面とは反対側の面において凹陥部が形成されることで、磁石の体積を少なくすることができる。それにより、高価な材質を使用する磁石のコストを低減することが可能となる。また、かかる凹陥部を形成することにより、磁石の体積の低減割合と比較して磁束密度の低下割合を小さく抑えることが可能となる。さらに、磁石取付部に形成された突出部に凹陥部を嵌合させることにより、磁石の位置合わせ等の必要が無くなり、磁石の取付作業が容易になる。それによって、作業効率が向上し、生産コストの低減を一層図ることが可能となる。また、逆磁界となる位置が磁石が対向配置される中心位置から逆磁界となる位置までの距離がほどんど小さくならず、音への悪影響を生じない。
【0014】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、凹陥部は磁石の同極同士が対向している端面とは反対側の端面の内周面を窪ませて形成されていることとしたものである。このようにすれば、磁石の取付部の外周側には、磁石が存するようになり、従来と同様な形状・構成にすることが可能となる。また、磁石の取付固定が一層簡単化される。
【0015】
さらに、他のスピーカ装置の発明は、同極同士が対向配置される一対の円柱形状の磁石を有すると共に、該磁石が磁石取付部に取り付けられるスピーカ装置において、磁石はその一部が他の部分よりも突出した凸部を有し、該凸部とは反対側の端面同士が対向配置されると共に、磁石取付部には、該磁石の凸部を嵌合させるための凹部が形成されていて、凸部の径方向における外径寸法は、該磁石の外径寸法の1/3より大きく2/3よりも小さく設けられると共に、凸部の高さ方向における高さ寸法は、該磁石の高さ寸法の1/5より大きく3/5よりも小さく設けられていることとしたものである。
【0016】
このように、磁石同士が対向配置されている端面とは反対側の面において凸部が形成されることで、同程度の高さを有する磁石と比較して、磁石の体積を少なくすることができる。それにより、高価な材質を使用する磁石のコストを低減することが可能となる。また、かかる凸部を形成することにより、磁石の体積の低減割合と比較して磁束密度の低下割合を小さく抑えることが可能となる。さらに、磁石の磁石取付部に形成された凹部に凸部を嵌合させることにより、磁石の位置合わせ等の必要が無くなり、磁石の取付作業が容易になる。それによって、作業効率が向上し、生産コストの低減を一層図ることが可能となる。また、磁石に凹部を設ける構成に比べ、体積低減割合に対する磁束密度低下割合をさらに小さく抑えることが可能となり、機能を維持しつつ、一層低コスト化できるスピーカ装置にすることができる。
【0017】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、凸部は磁石の同極同士が対向している端面とは反対側の端面の内周側を突出させて形成されていることとしたものである。このようにすれば、磁石取付部の内周側には、磁石が存するようになり、磁石外部に向けて一定の磁界を与えることが可能となる。また、磁石の取付固定が一層簡単化される。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第一の実施の形態)
以下、本発明の第一の実施の形態について、図1から図3に基づいて説明する。
図1は、本発明の反発磁気回路型のスピーカ装置10の構成を示す側断面図である。この図において、反発磁気回路型のスピーカ装置10は、略円錐形状の上部が開放した形状のフレーム11が設けられている。このフレーム11には、径大の外周縁部11aにてガスケット18を介してエッジ12が取り付けられている。そして、このエッジ12を介して振動板13の一端側が取り付けられている。振動板13は、径中心に孔部14が形成されていて、この孔部14に円筒形状のボイスコイルボビン15が存する。そして、振動板13の他端側がこのボイスコイルボビン15に例えば接着剤を介して取付固定される。
【0019】
また、ボイスコイルボビン15には、ダンパー16の一端部が取付固定されている。ダンパー16は、その他端部がフレーム11に取付固定されており、それによってボイスコイルボビン15を弾性的に支持する構成となっている。また、ボイスコイルボビン15の下端側の外周には、ボイスコイル17が円筒状に巻回されている。
【0020】
フレーム11の下端には、図2に示すようなマグネットホルダ20が取付固定されている。マグネットホルダ20は、磁石30を取付固定するためのものであり、径方向中心部分が他の部分よりも窪んで形成された窪み部21を有している。窪み部21は、その一方側のみが開放して設けられていて、開放した側からはボイスコイルボビン15や後述する磁石30aが挿通される。また、マグネットホルダ20は、その外周縁部に位置する上端面20aを介してフレーム11に取付固定される。磁石30a,30bは、例えば窪み部21側がS極となり、窪み部21とは反対側の面がN極となるように着磁されており、全体として円柱状の磁石となっている。
【0021】
窪み部21の底部22には、図3に示すような磁石30を取付固定するための磁石取付部23が設けられている。この磁石取付部23は、底部22よりも円盤状に突出形成して設けられた台座部24と、この台座部24の径方向中心部においてさらに上方に向かって突出形成されたボス部25とから構成されている。このボス部25には、磁石30aの凹陥部31が嵌め込まれる。凹陥部31は、磁石30aの取付面33のうち、内径側を円柱状のボス部25の高さに対応した分の深さだけくり抜いて形成されている。それによって、凹陥部31をボス部25に位置合わせして嵌め込むことを可能としている。
【0022】
ここで、磁石30aの上面には、磁性材料からなる円板状のセンタープレート32が取り付けられる。そして、このセンタープレート32を挟んで、さらに磁石30aと同形状の磁石30bがセンタープレート32の上面側に取り付けられている。この磁石30bは、磁石30aと同極同士が対向するように取り付けられている。なお、磁石30bは、センタープレート32に対して接着固定する等により、取付固定される。しかしながら、磁石30bの上方に不図示の接触部材を設け、この接触部材によって磁石30bが抑え付けられることで、取付固定される構成としても構わない。
【0023】
(第二の実施の形態)
続いて、本発明の第二の実施の形態について、図4から図6に基づいて説明する。なお、本実施の形態においては、上述の第一の実施の形態で述べた構成と同一の構成については、同一の符号を付して説明する。
【0024】
図4に示すように、本実施の形態のスピーカ装置40は、上述の第一の実施の形態で述べ反発磁気回路型のスピーカ装置10において、磁石30及び窪み部21の底部22における凹凸関係が逆に形成されたものである。すなわち、本実施の形態の磁石41においては、図4から図6に示すように円柱状の凸部42が設けられている。この凸部42は、従来の円柱形状の磁石を切り欠いた切欠き部42aを磁石41の取付面43の外周側に形成することで、取付面43の内周側が突出して凸部42となるようにしたものである。
【0025】
また、図4及び図5に示すように、かかる凸部42に対応して、マグネットホルダ20の磁石取付部23の中央には、円柱状の凹部44が形成されている。凹部44は、台座部24の径方向中心部を所定の深さだけ繰り抜いて形成したものである。なお、かかる凹部44を形成して磁石41を良好に嵌合するために、台座部24は、上述の第一の実施の形態で述べた台座部24よりも高く突出形成されている。
【0026】
(第一の実施の形態及び第二の実施の形態の磁石についての特性の実験結果)以上のような第一の実施の形態及び第二の実施の形態で述べた構成を有する反発磁気回路型のスピーカ装置10,40の特性について、図7から図13に基づいて説明する。なお、これらの図は、本発明の発明者がシュミレーション実験した結果を示すものである。この実験において、磁石30a,30bの中心からの距離に対する磁束密度の強さを示すものである。この図において、縦軸は磁束密度の強さ、横軸は磁石30a,30bの中心からの距離を示すものである。
【0027】
なお、磁石30a,30bの中心からの距離とは、センタープレート32の厚さの中央部分からの距離についてのことである。さらに、磁石30a,30bの外径、高さ、材質及び残留磁束密度の最小値を夫々24mm、8mm、35H、1.17kGaussとし、またセンタープレートの外径、高さをそれぞれ24.88mm、3.2mmとする。さらに、いずれの実験においても、リングは設けられていない。また、測定点は、センタープレート32の径方向の中心から12.77mm、すなわち、センタープレート32の外周面から外側に0.33mmの仮想面となっている。
【0028】
まず、本発明の実験を行う前に、比較対象として、従前の磁石についての中心距離からの距離−磁束密度特性の実験を行った。この実験の様子を図7に示す。この結果、最高磁束密度は中心から1.1mmの地点において9700(Gauss)となった。また、逆磁界となる地点は、中心から5.85mm離れた位置となった。なお、この磁石の体積は、3.62cm3 (1.2cm×1.2cm×3.14×0.8cm)となっている。
【0029】
また、中心から1.1mmの地点は、磁石の外周ではなく、センタープレート32の外周部分となる。すなわち、センタープレート32の厚さは、3.2mmであり、その中心から1.6mmの地点までは依然としてまだセンタープレート32の外周部分となっている。
【0030】
続いて、磁石41の形状を、図6に示すように凸部42が形成されたものとした場合について述べる。この磁石41においては、高さ6mmまでは従来の磁石と同様であるが、残りの2mmの部分については、外周側を切り取って直径12mmの凸部42を形成している。この磁石41においては、図8より、この結果、最高磁束密度は中心から1.1mmの地点において9000(Gauss)となった。この磁石41の体積は、約2.94cm3 で、その体積減少率(以下、ΔVと表示する。)を求めると、ΔV=18.8%となった。
【0031】
また、磁束密度の減少率(以下、ΔGと表示する。)について求めると、(9700−9000)÷9700で、ΔG=7.2%となった。これより、磁石41の体積減少率と比較して、磁束密度の減少率が小さくなっている、と言える。また、逆磁界となる地点は、中心から4.85mm離れた位置となり、従前の磁石に比べ約1mmほど中心に近い位置となった。
【0032】
さらに、磁石41の形状を変化させ、凸部42の外径を16mmに変化させた場合について述べる。この磁石41においては、図9より、この結果、最高磁束密度は中心から1.1mmの地点において9200(Gauss)となった。この磁石41の体積は、約3.12cm3 で、その体積減少率を求めると、(3.62cm3 −3.12cm3 )÷3.62cm3 となり、ΔV=13.8%となった。
【0033】
また、磁束密度の減少率について求めると、上述と同様の計算によってΔG=5.2%となった。これより、この磁石41においても、磁石41の体積減少率と比較して、磁束密度の減少率が小さくなっている、と言える。また、逆磁界となる地点は、中心から約5.0mm離れた位置となる。
【0034】
続いて、磁石30の形状を、図3に示すように凹陥部31が形成されたものとした場合について述べる。この磁石30においては、高さ6mmまでは従来の磁石と同様であるが、残りの2mmの部分については、内周側を切り取って直径12mmの凹陥部31を形成している。この磁石30においては、図10より、この結果、最高磁束密度は中心から1.1mmの地点において9300(Gauss)となった。この磁石30の体積は、約3.39cm3 で、体積減少率を求めると、(3.62cm3 −3.39cm3 )÷3.62cm3 となり、ΔV=6.4%となった。
【0035】
また、磁束密度の減少率について求めると、上述と同様の計算によってΔG=4.1%となった。すなわち、この磁石30においても、磁石30の体積減少率と比較して、磁束密度の減少率が小さくなっている、と言える。また、逆磁界となる地点は、中心から約5.75mm離れた位置となり、従前の磁石の場合と略同一地点となる。
【0036】
さらに、磁石30の形状を変化させ、凹陥部31の外径を16mmに変化させた場合について述べる。この磁石30においては、図11に示すように、最高磁束密度は中心から1.1mmの地点において9100(Gauss)となった。この磁石30について、上述と同様な計算によって体積減少率を求めると、ΔV=11.0%となった。また、磁束密度の減少率について求めると、ΔG=6.2%となった。すなわち、この磁石30においても、磁石30の体積減少率と比較して、磁束密度の減少率が小さくなっている、と言える。また、逆磁界となる地点は、中心から5.55mm離れた位置となった。
【0037】
また、磁石30の形状を変化させ、高さ5mmまでは上述の磁石と同様であるが、残りの3mmの部分については、内周側を切り取って直径12mmの凹陥部31を形成した場合について述べる。この磁石30においては、図12より、最高磁束密度は中心から1.1mmの地点において9100(Gauss)となった。この磁石30について、体積減少率を求めると、ΔV=9.4%となった。また、磁束密度の減少率について求めると、ΔG=6.2%となった。すなわち、この磁石30においても、磁石30の体積減少率と比較して、磁束密度の減少率が小さくなっている、と言える。なお、逆磁界となる地点は、中心から略5.65mm離れた位置となった。
【0038】
さらに、磁石30の形状を変化させ、高さ4mmまでは従来の磁石と同様であるが、残りの4mmの部分については、内周側を切り取って直径12mmの凹陥部31を形成した場合について述べる。この磁石30においては、図13より、最高磁束密度は中心から1.1mmの地点において8900(Gauss)となった。この磁石30について、体積減少率を求めると、ΔV=12.4%となった。また、磁束密度の減少率について求めると、ΔG=8.2%となった。すなわち、この磁石30においても、磁石30の体積減少率と比較して、磁束密度の減少率が小さくなっている、と言える。また、逆磁界となる地点は、中心から略5.70mm離れた位置となった。
【0039】
以上の実験結果から、磁石に凹陥部31や凸部42を形成した場合には、磁石30,41の体積減少率と比較して磁束密度の減少率を低く抑えられる、ということが判明した。なお、凹陥部31を設けた磁石30は、従前の磁石に比べ、逆磁界に入る位置がほとんど変わらないため、音に悪影響を与えることがほとんどない、と言える。一方、凸部42を設けた磁石41は、逆磁界に入る位置がわずかにセンタープレート32側にずれるが、音質悪化の影響はほとんどない。これに加えて、体積減少率に比べ、磁束密度の減少率が小さく、本発明における磁束密度を維持しつつ、コスト低減を図るという効果に秀でたものとなる。
【0040】
このような反発磁気型のスピーカ装置10,40によれば、磁石30,41に対して凹陥部31や凸部42を設ける構成とすることで、磁石30,41の高さに対する磁石30,41の体積を減少させることができると共に、かかる磁石30,41の体積の減少に比較して、磁束密度の低下を抑えることが可能となる。それによって、磁石の原料である、例えばネオジウムの如き高価な材質の使用量を低減させることが可能となる。すなわち、価格と比較すると、安価でありながら磁束密度の減少が抑えられた、特性の良好な磁石30,41を提供することが可能となる。また、かかる磁石30,41を反発磁気型のスピーカ装置10,40に用いることによって、該スピーカ装置10,40の製造コストを抑制することが可能となる。
【0041】
さらに、凹陥部31や凸部42を形成し、この凹陥部31や凸部42をボス部25や凹部44に嵌め込む構成であるので、磁石30,41の位置合わせや取付固定が容易なものとなる。すなわち、磁石30,41に形成された凹陥部31や凸部42をボス部25や凹部44に嵌め込むことにより、磁石30,41の位置合わせを簡単に行うことが可能となる。
【0042】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下それについて述べる。上述の各実施の形態では、取付面33,43には、所定の径を有する円形の凹陥部31又は凸部42を形成しているが、かかる凹陥部31や凸部42は、円形状に限られるものではない。また、その個数も1つのみではなく、複数個形成しても構わない。すなわち、体積の低減の効果に比して、磁束の低減を抑えることができるものであれば、凹陥部31の形状や個数は上述の実施の形態で述べたものに限定されない。
【0043】
また、磁石は円柱形状の磁石30,41についてのみならず、角柱形状や円筒形状の磁石に対しても本発明を適用可能である。円筒形状の磁石については、磁石の内周面側を切り欠いたり外周面側を切り欠くことで、本発明と同様の作用効果(体積低減に比して磁束密度低下を抑えることができる等)を奏する構成となる。また、ドーナッツ状の磁石と円柱形の磁石を貼り合わせることで、凹陥部31を有する磁石30としたり、小径の円柱形の磁石と大径の円柱形の磁石を貼り合わせることで、凸部42を有する磁石41としても良い。
【0044】
なお、本発明は、反発磁気回路型のスピーカ装置に適用した場合が最も好ましいが、反発磁気回路型ではない通常のスピーカ装置のマグネットと、マグネット保持部に適用しても同様な効果を有するものとなる。
【0045】
ここで、図3の磁石30の各寸法につき、夫々高さをh0 ,直径をd0 ,凹陥部31の直径をd1 ,凹陥部31の深さをh1 とすると共に、図6の磁石の各寸法につき、夫々高さをh0 ,直径をd0 ,凸部42の直径をd2 ,凸部42の深さをh1 とした場合、これらの寸法を以下のように設定しても構わない。
【0046】
すなわち、d1 ,d2 をd0 /3より大きくし、h1 ,h2 をh0/5より大きくすると、体積低減と比較して磁束密度の減少率が低いという効果が顕著に現れてくる。また、d1 ,d2 を2d0 /3より小さくし、h1 ,h2 を3h0 /5より小さくすると、磁束密度が絶対値で大幅に減少することがなくなり、また体積の減少率と比較して磁束密度の減少率が低いという効果も維持できるものとなる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のスピーカ装置によると、磁石の対向配置されている極と反対側の極において、切欠き部を形成することで、磁石の体積を少なくすることができる。それによって、高価な材質を使用する磁石のコストを低減することが可能となる。これと共に、対向配置される極に向かい切欠き部を形成する場合、磁石の体積の低減割合と比較して、磁束密度の低下割合を小さく抑えることが可能となる。また、磁石の取付部に形成された突出部に凹陥部を嵌合させたり、磁石の取付部に形成された凹部に凸部を嵌合させることにより、磁石の位置合わせ等の必要が無くなり、磁石の取付作業が容易になる。それによって、作業効率が向上し、生産コストの低減を一層図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係わるスピーカ装置の構成を示す側断面図である。
【図2】図1のスピーカ装置において、マグネットホルダ付近の断面構成を示す部分拡大図である。
【図3】図1のスピーカ装置において、磁石の形状を示す側断面図である。
【図4】本発明の第二の実施の形態に係わるスピーカ装置の構成を示す側断面図である。
【図5】図4のスピーカ装置において、マグネットホルダ付近の断面構成を示す部分拡大図である。
【図6】図4のスピーカ装置において、磁石の形状を示す側断面図である。
【図7】本発明や従来のスピーカ装置に用いられる磁石において、中心からの距離に対する磁束密度の特性を示す図であり、従来の磁石についての特性を示すものである。
【図8】本発明のスピーカ装置に用いられる磁石において、中心からの距離に対する磁束密度の特性を示す図であり、直径が12mmで高さ2mmの凸部が設けられている磁石についての特性を示すものである。
【図9】本発明のスピーカ装置に用いられる磁石において、中心からの距離に対する磁束密度の特性を示す図であり、直径が16mmで高さ2mmの凸部が設けられている磁石についての特性を示すものである。
【図10】本発明のスピーカ装置に用いられる磁石において、中心からの距離に対する磁束密度の特性を示す図であり、直径が12mmで深さ2mmの凹陥部が設けられている磁石についての特性を示すものである。
【図11】本発明のスピーカ装置に用いられる磁石において、中心からの距離に対する磁束密度の特性を示す図であり、直径が16mmで深さ2mmの凹陥部が設けられている磁石についての特性を示すものである。
【図12】本発明のスピーカ装置に用いられる磁石において、中心からの距離に対する磁束密度の特性を示す図であり、直径が12mmで深さ3mmの凹陥部が設けられている磁石についての特性を示すものである。
【図13】本発明のスピーカ装置に用いられる磁石において、中心からの距離に対する磁束密度の特性を示す図であり、直径が12mmで深さ4mmの凹陥部が設けられている磁石についての特性を示すものである。
【図14】従来の反発磁気回路型スピーカ装置の構成を示す側断面図である。
【符号の説明】
10,40…反発磁気回路型のスピーカ装置
11…フレーム
20…マグネットホルダ
21…窪み部
22…底部
23…磁石取付部
24…台座部
25…ボス部
30,30a,30b,41,41a,41b…磁石
31…凹陥部
32…センタープレート
33,43…取付面
42…凸部
44…凹部

Claims (5)

  1. 同極同士が対向配置される一対の円柱形状の磁石を有すると共に、該磁石が磁石取付部に取り付けられるスピーカ装置において、
    上記磁石は対向配置される極と反対側の極において、対向配置される極に向かい切欠き部が形成されていると共に、
    上記切欠き部の径方向における外径寸法は、該磁石の外径寸法の1/3より大きく2/3よりも小さく設けられると共に、
    上記切欠き部の高さ方向における高さ寸法は、該磁石の高さ寸法の1/5より大きく3/5よりも小さく設けられている、
    ことを特徴とするスピーカ装置。
  2. 同極同士が対向配置される一対の円柱形状の磁石を有すると共に、該磁石が磁石取付部に取り付けられるスピーカ装置において、
    上記磁石はその一部が他の部分よりも窪んだ凹陥部を有し、該凹陥部とは反対側の端面同士が対向配置されると共に、上記磁石取付部には該磁石の凹陥部を嵌合させるための突出部が形成されていて、
    上記凹陥部の径方向における外径寸法は、該磁石の外径寸法の1/3より大きく2/3よりも小さく設けられると共に、
    上記凹陥部の高さ方向における高さ寸法は、該磁石の高さ寸法の1/5より大きく3/5よりも小さく設けられている、
    ことを特徴とするスピーカ装置。
  3. 記凹陥部は磁石の同極同士が対向している端面とは反対側の端面の内周面を窪ませて形成されていることを特徴とする請求項2記載のスピーカ装置。
  4. 同極同士が対向配置される一対の円柱形状の磁石を有すると共に、該磁石が磁石取付部に取り付けられるスピーカ装置において、
    上記磁石はその一部が他の部分よりも突出した凸部を有し、該凸部とは反対側の端面同士が対向配置されると共に、上記磁石取付部には、該磁石の凸部を嵌合させるための凹部が形成されていて、
    上記凸部の径方向における外径寸法は、該磁石の外径寸法の1/3より大きく2/3よりも小さく設けられると共に、
    上記凸部の高さ方向における高さ寸法は、該磁石の高さ寸法の1/5より大きく3/5よりも小さく設けられている、
    ことを特徴とするスピーカ装置。
  5. 記凸部は磁石の同極同士が対向している端面とは反対側の端面の内周側を突出させて形成されていることを特徴とする請求項4記載のスピーカ装置。
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