JP3892614B2 - 設備及び製品プロセス異常状態の診断方法及び装置 - Google Patents

設備及び製品プロセス異常状態の診断方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧延設備等における設備及び製品プロセス異常状態の診断方法及び装置に対し、特に異常原因と異常状態との因果関係を明確にすることが出来るようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、設備及び製品プロセス異常状態の診断を行うための方法や装置が種々提案されている。
製品プロセス異常状態を診断する方法としては、線形多変量解析を行う方法が知られている。
特開平6−74876号公報には、対象設備の状態をオンラインで診断する設備診断方法及び装置として、観測情報をニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークを使って原因の候補を求め、ニューロンの重みを使って、確率の高い原因の候補を絞り込み、さらにニューラルネットワークを使って、原因の候補によって引き起こされる影響を求め、ニューロンの重みを使って原因の候補によって引き起こされる影響の中から重大な影響を及ぼす原因を求め、実際の設備で影響の有無とその程度を確認し、真の原因を特定するものが開示されている。
【0003】
具体的には、この診断方法は、対象設備の状態を測定するセンサまたは運転者の観測情報をその対象設備の状態とその状態を引き起こす原因との因果関係を表すニューラルネットワークに入力し、そのニューラルネットワークの該当するパスを辿って、その状態を引き起こす候補を求め、その状態を引き起こす原因の候補が及ぼす状態をそのニューラルネットワークの該当するパスを逆方向に辿ることによって求め、そのニューラルネットワークで求めた状態を確認することによって真の原因を究明する構成になっている。
【0004】
また、特開平10−122917号公報には、ニューラルネットワークや遺伝的アルゴリズムを用いて異常原因と異常状態との因果関係を同定し、異常状態を回避するためのアクションガイダンスを提案するものが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した従来の設備及びプロセス診断方法では、以下のような問題があった。
すなわち、線形多変量解析を行って製品プロセス異常状態を診断するための方法では、非線形プロセス現象を取り扱うことが困難であり、異常状態を定量的に表現することができないという問題があった。
また、特開平6−74876号公報に開示された、対象設備の状態をオンラインで診断する方法及び装置では、ニューラルネットワークにより異常要因分析することが記述されているものの、異常原因と異常状態との因果関係を具体的に導き出す方法が示されていない。すなわち、ニューラルネットワークによる異常原因の同定だけでは、因果関係がブラックボックス化されており、実用化に乏しいという問題点がある。
【0006】
さらに特開平10−122917号公報には、ニューラルネットワークや遺伝的アルゴリズムを用いて異常原因と異常状態との因果関係を同定する方法が、開示されているが、同定精度に対し大きな外乱となる不必要な説明変数破棄方法が示されていないため、同定精度が低下するという問題点がある。
本発明では、上記した従来の技術の有する問題点に鑑み提案されたもので、以下の点をその目的とする。
【0007】
第1発明は、非線形プロセス現象を容易に取り扱うことが可能で、簡易的に外乱要因となる不要説明変数の影響を受けないように選別し、必要な説明変数は影響度で評価し、さらに最適化を容易に行うことが出来る設備及び製品プロセス異常状態の診断方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
第2発明は第1発明の目的に加えて、不必要な説明変数の選別の精度向上、ひいては異常要因分析の精度を向上させることが可能な設備及び製品プロセス異常状態の診断方法を提供することを目的とする。
【0009】
第3発明は第1発明または第2発明の目的に加えて、ステップワイズ法により一度破棄された説明変数を救いあげることが可能となるため、さらに同定精度を向上させることが可能な設備及び製品プロセス異常状態の診断方法を提供することを目的とする。
【0010】
第4発明は第1発明ないし第3発明の目的に加えて、同定データ量が少なく、説明変数が膨大となった場合に不要説明変数を効率良く選別することが可能な設備及び製品プロセス異常状態の診断方法を提供することを目的とする。
【0011】
第5発明は第1発明ないし第4発明の目的に加えて、説明変数同士の因果関係を加味した評価が可能となるため、更に正確な不要説明変数を選別することが可能な設備及び製品プロセス異常状態の診断方法を提供することを目的とする。
【0012】
第6発明は第1発明ないし第5発明の目的に加えて、不要説明変数除去の評価において学習で用いたデータを用いずに検定用のデータで客観的な評価が可能となるため、同定精度の信頼性が保証される。
【0013】
第7発明は第1発明ないし第6発明の目的に加えて、ニューラルネットワークを用いた同定方法において目的変数及び説明変数に対しデータの標準化を行うことで単位の影響を取り除くことで更に同定精度を向上させることが可能な設備及び製品プロセス異常状態の診断方法を提供することを目的とする。
【0015】
第9発明は、特に鋼板製造プロセスにおいて、形状不良等を防止するための診断方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明の要旨とするところは、
(1)対象設備及び製品プロセスの異常状態をオンラインまたはオフラインで診断する方法において、所定のセンサーで測定した設備異常状態又は品質異常状態を目的変数とし、同時に測定した操業状態又は設備状態を説明変数とし、前記設備異常状態又は品質異常状態に対する前記操業状態又は設備状態の因果関係をニューラルネットで同定し、さらにこのニューラルネットワークでは前述の説明変数全てを用いて同定を完了したニューラルネットに対し、1つの説明変数以外は全て入力値を所定の一定値とし、その際に出力されるニューラルネットワークの出力値と目的変数との影響関係を統計解析で用いられるF値またはt値で評価することを全ての説明変数について順次実施し、所定の値以下の不要な説明変数を全て破棄し、所定の値以上の説明変数だけで同定を完了するまで、前記同定、評価及び破棄を繰り返すことを特徴とする設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
【0017】
(2)所定の値以下の説明変数を全て破棄する代わりに、所定の値以下の説明変数の中で一番低い値のもの1つを破棄し、所定の値以上の説明変数だけで同定を完了するまで、前記同定、評価及び破棄を繰り返すことを特徴とする前記(1)記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
【0018】
(3)全説明変数n個に対し、説明変数1個、目的変数1個でのネットワークによる同定を各々実施し、同定を完了したニューラルネットワークに対し、F値またはt値で評価し、所定の値以上の説明変数の中で一番高い値のものを必要説明変数として採取し、これ以降ステップワイズ法に従って、ニューラルネットワークの再同定を繰り返しながら必要説明変数の取捨選択を実施することを特徴とする前記(1)又は(2)記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
【0019】
(4)全説明変数n個に対し、m(<n)個の説明変数で同定を行い、F値またはt値で評価し、所定の値以下の説明変数を破棄し、まだ選択されていないn−m個の説明変数の中から任意の説明変数を加え説明変数をm個として、再同定を実施し、再度F値又はt値で評価を行い、所定の値以下の説明変数を破棄し、1度は説明変数m個の中に選択されるまでこの操作を繰り返すことを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか1項に記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
【0020】
(5)説明変数を破棄する際に、ニューラルネットワークでは説明変数全てを用いて同定を完了したニューラルネットワークに対し、各説明変数について当該説明変数以外は全て入力値を所定の一定値とし、その際に出力されるニューラルネットワークの値をそれぞれの説明変数に対するニューラルネットワーク変換値とすることを全ての説明変数について順次実施し、ニューラルネットワーク変換値と目的変数との因果関係を線形重相関式で表し、前記線形重相関式の各ネットワーク変換値に対する偏回帰係数をF値またはt値で評価し、前記各ネットワーク変換値に対応する説明変数を破棄することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
【0021】
(6)データを学習用データと検定用データの2つのデータ群に分け、同定には学習用データを用い、F値又はt値での評価には検定用データを用いることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
【0022】
(7)目的変数及び説明変数に対しデータの標準化を行うことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
【0024】
)設備異常状態が軸受け破損、歯車磨耗、オイル圧力異常、オイル温度異常、異常振動又はロール、減速機若しくは増速機の故障であり、品質異常状態が製品の疵、板厚変動、形状不良又は温度異常であり、操業状態又は設備状態がモータ電流、モータ電圧、振動、オイル圧力、オイル温度、ロールギャップ、ロールの荷重、製品成分及び製造温度の1種又は2種以上であることを特徴とする前記(1)〜()の何れか1項に記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
にある。
【0025】
また、本発明の要旨とするところは、
(9)対象設備及び製品プロセスの異常状態をオンラインまたはオフラインで診断する装置において、所定のセンサーで測定された設備異常状態又は品質異常状態及び操業状態又は設備状態のデータを収集するデータ収集手段と、前記設備異常状態又は品質異常状態を目的変数に、同時に測定した前記操業状態又は設備状態を説明変数にそれぞれ変換して、目的変数を所定のしきい値と比較し異常兆候を判断する演算手段と、目的変数及び説明変数を蓄え、異常兆候が現れた場合に、前記設備異常状態又は品質異常状態と前記操業状態又は設備状態との因果関係を同定したニューラルネットワークを作成する演算処理手段とを備え、前記ニューラルネットワークは、当該ニューラルネットワークの出力値と前記目的変数との影響関係を統計解析で用いられるF値またはt値で評価することを全ての説明変数について順次実施し、不要な説明変数を破棄し、同定されたものであることを特徴とする設備及び製品プロセス異常状態の診断装置。
にある。
【0026】
【発明の実態の形態】
本発明は、上記した目的を達成するためのものであり、以下にその内容を説明する。
【0027】
第1発明では、対象設備及び製品プロセスの異常状態を、オンラインまたはオフラインで診断する方法において、所定のセンサーで測定した設備異常状態又は品質異常状態をまず、測定した異常状態が設備異常または品質異常とならないレベルに設定した所定のしきい値を越えた場合に、当該異常に関連する測定した操業状態又は設備状態を説明変数とし、異常に対する操業状態又は設備状態を表す説明変数及び目的変数を求める。
【0028】
図2を参考にして具体的に解説するとニューラルネットワークにより、1あるいは複数の異常要因分析をおこなって、目的変数Yに対する説明変数P1、P2、…、PNの影響を同定する。
【0029】
その際、必要と考えられる説明変数全てを用いて同定を完了したニューラルネットに対し、例えば説明変数P1に対してそれ以外は全て入力値を例えば0とし、その際に出力されるニューラルネットワークの値Y’と目的変数Yとの影響関係を統計解析で用いられるF値またはt値を求め、順にP2〜PNまでのF値またはt値を求める。そして所定の値以下例えば2未満の説明変数を全て破棄し、再度同定を実施し、前述の操作を繰り返し所定のF値2以上の説明変数となるまで同定を繰り返す。最終的にはF値2以上の説明変数だけのニューラルネットワークが構築できる。本発明者らは、同定が完了したニューラルネットワークの単一(当該入力以外は0入力)入力されたニューラルネットワークの出力と目的変数は、線形多変量解析で用いられる偏回帰係数の検定で用いられるF値及びt値、又は線形式での予測の際の可否判別で用いるF値及びt値が、不要な説明変数の評価、破棄にも使えることを発見した。
【0030】
第2発明は、上記した第1発明に加えて、ニューラルネットワークによる説明変数の選別方法において、ニューラルネットワークでは説明変数を全て用いて同定を完了したニューラルネットワークに対し、各説明変数について当該各説明変数以外は全て入力値を所定の一定値(例えば0)とし、その際に出力されるニューラルネットワークの値と目的変数との影響関係を統計解析で用いられるF値またはt値で評価し、所定の値以下の説明変数の中で一番低い値のものを破棄し、再度残りの説明変数を用いて同定を実施し、前述の影響関係を評価しながら所定の値以上の説明変数だけで同定を完了することで因果関係を説明するのに不必要な説明変数を選別する後退消去法を実施する。
【0031】
第3発明では第1発明ないし第2発明のいずれか1項に記載の診断方法に加えて、ニューラルネットワークによる説明変数の選別方法において、全説明変数n個に対し、説明変数1つ目的変数1つでのネットワークによる同定を各々実施し、同定を完了したニューラルネットワークに対し、F値またはt値で評価し、所定の値以上の説明変数の中で一番高い値のものを必要説明変数として採取し、これ以降ステップワイズ法に従って、ニューラルネットワークの再同定を繰り返しながら必要説明変数の取捨選択を実施する。
【0032】
第2,第3発明での後退消去法ステップワイズ法については例えば、「多変量解析統計解析法:田中豊,脇本和昌著:現代数学社P42〜47」に記載されている。
【0033】
第4発明では第1発明ないし第3発明のいずれか1項に記載の診断方法に加えて、ニューラルネットワークによる説明変数の選別方法において、全説明変数n個に対し、m(<n)個の説明変数で同定を行い、F値またはt値で評価し、所定の値以下の説明変数を破棄し、まだ選択されていないn−m個の説明変数の中から任意の説明変数を加え説明変数をm個として加え、再同定を実施し、再度評価を行い、所定の値を破棄し、1度は説明変数m個の中に選択されるまでこの作業を繰り返すことによって必要説明変数の取捨選択を実施する。
【0034】
第5発明では第1発明ないし第4発明のいずれか1項に記載の診断方法において、ニューラルネットワークでは説明変数全てを用いて同定を完了したニューラルネットワークに対し、各説明変数について当該各説明変数以外は全て入力値を所定の一定値とし、その際に出力されるニューラルネットワークの値をそれぞれの説明変数に対するニューラルネットワーク変換値とし、ネットワーク変換値と目的変数との因果関係を線形重相関式で表し、線形重相関式の各ネットワーク変換値に対する偏回帰係数をF値またはt値で評価し、前記各ネットワーク変換値に対応する説明変数を破棄する。
【0035】
第6発明では、第1発明ないし第5発明のいずれか1項に記載の診断方法において、同定するためのデータをネットワークを構成するための基となる学習用データと構成されたネットワークをt値やF値で評価選別時にだけ用いる検定用データの2つのデータ群に分けることにより選別の精度を更に向上させることができる。
【0036】
第7発明では、第1発明ないし第6発明のいずれか1項に記載の診断方法において、目的変数及び説明変数に対しデータの標準化を行うことで単位の影響を取り除く。
【0038】
第8発明では、本発明を用いて、例えば熱延工場の捲取設備を対象設備として、捲取プロセスにおける鋼板の蛇行という品質異常状態を診断することが出来る。
【0039】
設備異常状態は軸受け破損、歯車磨耗、オイル圧力異常、オイル温度異常、異常振動又はロール、減速機若しくは増速機の故障であり、品質異常状態は製品の疵、板厚変動、形状不良(鋼板の蛇行、鋼板のサイズ異常等)又は温度異常である。
【0040】
また、上記した説明変数とは、設備の異常要因に関する説明変数のことであり、説明変数となる操業状態又は設備状態とは、具体的にはモータ電流、モータ電圧、振動、オイル圧力、オイル温度、ピンチロールギャップ、ピンチロールの荷重、製品成分及び製造温度の1種又は2種以上であり、捲取設備等に関する変数である。
【0041】
また、上記した目的変数とは、設備の稼働状態に関する変数のことであり、具体的には、例えば捲取設備におけるピンチロール通過後1m時の鋼板の蛇行量を変数とすることができる。この目的変数である板蛇行量は大きくなるとコイル状態においては断面が円錐状となり、板折れや擦り疵の原因となる操業上の異常である。
【0042】
【実施例】
(実施例1)
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態の一例を説明する。
図1は本発明に係わる診断装置の概略構成を示したブロック図、図3は、本発明を適用した熱延工場の捲取設備の概略構成を示した説明図である。
【0043】
本発明に係わる診断装置1は、例えば、図3に示すような熱延工場の捲取設備2に取り付けて使用される。そして、この捲取設備2では、圧延された鋼板3をコイル状に捲き取る工程で生じる鋼板3の蛇行を異常状態として検出し、同時に必要な説明変数と目的変数をデータとして採取し、因果関係を同定し、その結果を表示するようにしている。
【0044】
診断装置1を応用する捲取設備2は、図3に示すように、仕上圧延機(図示せず)で圧延されて送り出された鋼板3の巾方向の両側に、鋼板3をガイディングするガイド4,4をそれぞれ設け、ガイド4,4の下流側に、鋼板3を上下方向から挟み込んで送出する上下2対のピンチロール5を設け、マンドレル6の外周には、マンドレル6に鋼板3を捲き取るための補助ロールである4個のラッパーロール7を配置してある。
【0045】
上記したピンチロール5は、モータ等のピンチロール駆動装置8に連絡して、回転駆動されている。
【0046】
上記したマンドレル6は、減速装置9を介してモータ等のマンドレル駆動装置10に連絡して、回転駆動されている。
【0047】
診断装置1は、図1に示すように、オペレータが操作するキーボード等の入力装置11と、上記したピンチロール5〜マンドレル駆動装置10に取り付けられ、鋼板3の蛇行量を測定するセンサ12と、診断に必要なデータを収集するデータ収集装置13と、収集したデータを加工演算するデータ加工演算装置14と、不要説明変数を破棄したニューラルネットワークを作成する同定最適化演算装置15と、データ収集装置13、データ加工演算装置14、同定最適化演算装置15で取り扱うデータを記憶する記憶装置16と、演算の過程及び診断結果を表示する表示装置17と、を備えている。
【0048】
上記したオペレータが操作するキーボード等からなる入力装置11及びセンサ12がデータ収集手段に対する入力装置として機能する。この場合、オペレータからの入力は、オフラインで行われ、センサ12からの入力はオンラインで行われる。
【0049】
また、データ収集装置13、データ加工演算装置14、同定最適化演算装置15は、例えば、CPU及び付属機器を備えたコンピュータにより構成され、予め設定されたプログラムに従ってコンピュータが動作することにより、コンピュータがこれらの手段として機能する。
【0050】
これらの装置のうち、データ収集装置13が診断に必要なデータを収集するデータ収集手段として機能する。また、データ加工演算装置14及び同定最適化演算装置15が、収集したデータを説明変数及び目的変数にそれぞれ変換して、目的変数を所定のしきい値と比較し異常兆候を判断する演算手段と、目的変数及び説明変数を蓄え、異常兆候が現れた場合に、目的変数と説明変数とから不要な説明変数を破棄したニューラルネットワークを作成する演算処理手段としてそれぞれ機能する。
【0051】
また、記憶装置16は、例えば、RAM、ハードディスク記憶装置、その他の磁気的あるいは光学的記憶装置により構成され、一連のデータを記憶する記憶手段として機能する。
【0052】
また、表示装置は、例えば、CRT表示装置等により構成され、演算の過程及び診断結果を表示する表示手段として機能する。
【0053】
次に図3に基づき、上記した診断装置1を用いた診断方法の手順を説明する。図4は、本発明に係わる診断方法の手順の概略を説明したフローチャートである。
【0054】
図4に示すように、診断処理が開始すると、まず、オペレータによる入力によるオフラインまたはセンサ12からの入力によるオンラインで、目的変数の測定を行う(S1)。具体的には、この目的変数とは、異常状態を表す鋼板3の蛇行量である。すなわち、鋼板3の蛇行は、捲形状不良という異常状態につながり、歩留まりを低下させる製品プロセスの異常となる。
【0055】
次に、しきい値と目的変数(蛇行量)との比較による判定を行う(S2)。ここで、目的変数(蛇行量)がしきい値を越えていない場合は、正常状態であると判定して、処理を終了する。
【0056】
一方、目的変数(蛇行量)がしきい値を越えている場合には、オフラインまたはオンラインでの目的変数(蛇行量)に対する説明変数の測定を行う(S3)。具体的には、この説明変数とは、ピンチロール5の押し力、ピンチロール5の左右のgap差、ピンチロール5の回転数、ピンチロール5のリード率、各ラッパーロール7の押し力、各ラッパーロール7の左右のgap差、各ラッパーロール7の回転数、各ラッパーロール7のリード率、ガイド4のgap、板巾、板厚、各ロールの噛み込み時間である。実施例1で測定した目的変数と説明変数(28個)を表1に示す。
【0057】
【表1】
Figure 0003892614
【0058】
次にニューラルネットワークによる状態変数の絞り込みを行う(S4)。
具体的には、説明変数の絞り込みで、説明変数全てを用いて同定を完了したニューラルネットに対し、1つの説明変数以外は全て入力を0とし、その際に出力されるニューラルネットワークの値と目的変数との影響関係を統計解析で用いられるF値で評価し、所定の値以下の説明変数を全て破棄し、再度同定を実施し、所定の値以上の説明変数だけで同定を完了することで因果関係を説明するのに不必要な説明変数を選別した。今回のF値やt値の評価式そのものは例えば「すぐわかる多変量解析:石村貞夫著:東京図書P11〜20」に記載されている。今回所定のしきい値を2と置いた。
【0059】
選別の過程を表2に、表2中の記号の説明を表3に示す。最終的に蛇行量(目的変数)は、説明変数としてピンチロール5の押し力P1、ピンチロール5の左右GAP差P2、ピンチロール噛み込み時間P5及び板巾P7のみで説明できることが分かった。
【0060】
【表2】
Figure 0003892614
【0061】
【表3】
Figure 0003892614
【0062】
また、同定が充分行われない(学習が収束しない)場合は、状態説明変数の測定以下の処理(S3〜S4)を繰り返し実施する。
【0063】
(実施例2)
まず、図4に基づいて、実施例1で測定した(S3)各説明変数を用いて、ニューラルネットワークによる異常要因分析(同定)(S4)の有効性の検討結果を行った。
【0064】
表1の79個のデータを1番から40番までを学習用データとし、41番から79番までを検定用データと2つのデータ群に分けた。
【0065】
図5は、ニューラルネットワークによるプロセスの同定の有効性の検討結果を示したグラフで、No1のピンチロール5から計測した学習に用いなかった検定用のデータを用い縦軸にそのデータをニューラルネットワークに入力した際の蛇行量、横軸は実績蛇行量を示した。その結果、図4に示すように相関係数が99%となり、非常に良い相関関係を示していて、ニューラルネットワークによる同定が有効であることが判った。
【0066】
【発明の効果】
本発明は、上記した構成からなるので、以下に説明するような効果を奏することができる。
第1発明では、ニューラルネットワークを用いたことにより、非線形プロセス現象を取り扱うことが可能で、現象の表現関数の形状に関係なく取り扱いが容易で、同定用データに内在する外乱の影響を受けにくいこと、F値あるいはt値による一括した不要説明変数の削除により、現象同定の精度向上が図れ、これに基づく最適化により、最適な異常状態の改善が可能となる。
第2及び第3発明では、F値あるいはt値による不要説明変数の破棄を精度良く行うことが可能となる。
第4発明では、F値あるいはt値による不要説明変数の破棄を効率良く行うことが可能となる。
第5発明では、同定データの偏りによる同定精度の低下を防ぐことが可能となる。
第6発明では、同定結果の信頼性が向上する。
第7発明では、学習の桁落ちの防止による同定結果の信頼性が向上する。
発明では、例えば熱延工場の捲取設備を対象設備として、捲取プロセスにおける鋼板の蛇行という品質異常状態を精度よく診断することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる診断装置の概略構成を示したブロック図である。
【図2】本発明に係わるニューラルネットワークの不要説明変数削除概要を示した概要図である。
【図3】診断装置を応用した熱延工場の捲取設備の概略構成を示した説明図である。
【図4】本発明に係わる診断手法の概略を説明したフローチャートである。
【図5】ニューラルネットワークによるプロセス同定の有効性の検討結果を示したグラフである。
【符号の説明】
1 診断装置
2 捲取設備
3 鋼板
4 ガイド
5 ピンチロール
6 マンドレル
7 ラッパーロール
8 ピンチロール駆動装置
9 減速機
10マンドレル駆動装置
11入力装置
12センサ
13データ収集装置
14データ加工演算装置
15同定最適化演算装置
16記憶装置
17表示装置
18警報装置

Claims (9)

  1. 対象設備及び製品プロセスの異常状態をオンラインまたはオフラインで診断する方法において、
    所定のセンサーで測定した設備異常状態又は品質異常状態を目的変数とし、同時に測定した操業状態又は設備状態を説明変数とし、前記設備異常状態又は品質異常状態に対する前記操業状態又は設備状態の因果関係をニューラルネットで同定し、さらにこのニューラルネットワークでは前述の説明変数全てを用いて同定を完了したニューラルネットに対し、1つの説明変数以外は全て入力値を所定の一定値とし、その際に出力されるニューラルネットワークの出力値と目的変数との影響関係を統計解析で用いられるF値またはt値で評価することを全ての説明変数について順次実施し、所定の値以下の不要な説明変数を全て破棄し、所定の値以上の説明変数だけで同定を完了するまで、前記同定、評価及び破棄を繰り返すことを特徴とする設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
  2. 所定の値以下の説明変数を全て破棄する代わりに、所定の値以下の説明変数の中で一番低い値のもの1つを破棄し、所定の値以上の説明変数だけで同定を完了するまで、前記同定、評価及び破棄を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
  3. 全説明変数n個に対し、説明変数1個、目的変数1個でのネットワークによる同定を各々実施し、同定を完了したニューラルネットワークに対し、F値またはt値で評価し、所定の値以上の説明変数の中で一番高い値のものを必要説明変数として採取し、これ以降ステップワイズ法に従って、ニューラルネットワークの再同定を繰り返しながら必要説明変数の取捨選択を実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
  4. 全説明変数n個に対し、m(<n)個の説明変数で同定を行い、F値またはt値で評価し、所定の値以下の説明変数を破棄し、まだ選択されていないn−m個の説明変数の中から任意の説明変数を加え説明変数をm個として、再同定を実施し、再度F値又はt値で評価を行い、所定の値以下の説明変数を破棄し、1度は説明変数m個の中に選択されるまでこの操作を繰り返すことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
  5. 説明変数を破棄する際に、ニューラルネットワークでは説明変数全てを用いて同定を完了したニューラルネットワークに対し、各説明変数について当該説明変数以外は全て入力値を所定の一定値とし、その際に出力されるニューラルネットワークの値をそれぞれの説明変数に対するニューラルネットワーク変換値とすることを全ての説明変数について順次実施し、ニューラルネットワーク変換値と目的変数との因果関係を線形重相関式で表し、前記線形重相関式の各ネットワーク変換値に対する偏回帰係数をF値またはt値で評価し、前記各ネットワーク変換値に対応する説明変数を破棄することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
  6. データを学習用データと検定用データの2つのデータ群に分け、同定には学習用データを用い、F値又はt値での評価には検定用データを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
  7. 目的変数及び説明変数に対しデータの標準化を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
  8. 設備異常状態が軸受け破損、歯車磨耗、オイル圧力異常、オイル温度異常、異常振動又はロール、減速機若しくは増速機の故障であり、品質異常状態が製品の疵、板厚変動、形状不良又は温度異常であり、操業状態又は設備状態がモータ電流、モータ電圧、振動、オイル圧力、オイル温度、ロールギャップ、ロールの荷重、製品成分及び製造温度の1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の設備及び製品プロセス異常状態の診断方法。
  9. 対象設備及び製品プロセスの異常状態をオンラインまたはオフラインで診断する装置において、
    所定のセンサーで測定された設備異常状態又は品質異常状態及び操業状態又は設備状態のデータを収集するデータ収集手段と、
    前記設備異常状態又は品質異常状態を目的変数に、同時に測定した前記操業状態又は設備状態を説明変数にそれぞれ変換して、目的変数を所定のしきい値と比較し異常兆候を判断する演算手段と、
    目的変数及び説明変数を蓄え、異常兆候が現れた場合に、前記設備異常状態又は品質異常状態と前記操業状態又は設備状態との因果関係を同定したニューラルネットワークを作成する演算処理手段とを備え、
    前記ニューラルネットワークは、当該ニューラルネットワークの出力値と前記目的変数との影響関係を統計解析で用いられるF値またはt値で評価することを全ての説明変数について順次実施し、不要な説明変数を破棄し、同定されたものであることを特徴とする設備及び製品プロセス異常状態の診断装置。
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