JP3892263B2 - 耐炎化炉、及び耐炎化炉の温度制御方法 - Google Patents

耐炎化炉、及び耐炎化炉の温度制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素前駆体を耐炎化処理するための耐炎化炉、及び耐炎化炉の温度制御方法に係り、特に、炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走を自動検出する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、炭素繊維は、炭素前駆体(カーボンプレカーサー)を紡糸して得られた炭素前駆体繊維を焼成することにより製造されている。炭素前駆体としては、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とする樹脂が広く用いられており、この前駆体を用いて製造された炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維と称されている。
【0003】
炭素前駆体繊維の焼成処理は、200〜300℃の酸化性雰囲気中で、数十分〜数時間、炭素前駆体繊維を焼成する耐炎化(安定化)処理と、300〜3000℃の不活性雰囲気中で、炭素前駆体繊維を焼成する炭化処理とに大きく分けられる。耐炎化処理後の炭素前駆体繊維は、高い難燃性を示すことから、炭化処理前に耐炎化処理を施すことにより、炭化処理時に形体を保ったまま安定に炭化反応を進行させることができ、炭素繊維を安定して製造することができる。また、耐炎化処理後の繊維は、炭素繊維の前駆体として利用される他、それ自身も耐炎化繊維として広く利用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
耐炎化処理は、空気や、酸素等の酸化性ガスと不活性ガスとの混合ガスなどの酸化性雰囲気中で焼成することにより、ポリアクリロニトリルの環化反応と脱水素反応とを進行させることにより行われるが、これらの反応は発熱反応である。そのため、耐炎化炉の構造や、炭素前駆体繊維の搬送速度等によっては、炭素前駆体繊維に蓄熱が生じて、耐炎化反応が暴走し、炭素前駆体繊維が発火する恐れがあった。
また、炭素前駆体繊維が発火した場合には、ポリアクリロニトリルの熱分解が急激に進行して、シアン化水素(HCN)、アンモニア(NH3)等の可燃性ガスの発生量が急激に上昇すると共に、不完全燃焼により可燃性ガスである一酸化炭素(CO)の発生量が急激に上昇するため、これら可燃性ガスが所定の濃度を超えると、火災や爆発に発展する恐れもあった。
【0005】
耐炎化炉内における発生気体の正常時の濃度は、炭素前駆体繊維の搬送速度、炉温、炉内の給排気速度等に依存しており、部分的に滞留が生じない限りは、耐炎化炉の形状や容積には依存しないので、本発明者が小規模の耐炎化炉内で、炭素前駆体繊維に発火を起こさせるモデル実験を行ったところ、現在、三菱レイヨン株式会社で運用されている耐炎化炉の運転条件では、最悪の火災を想定した場合でも各可燃性ガスの発生濃度が、爆発発生濃度(爆発が発生する時の最低濃度)に到ることはなく、爆発の危険性はないことを確認している。しかしながら、将来的には、製造コストの低減のために、より多くの炭素前駆体繊維を一度に処理することが必要であり、この場合には、発火により発生する可燃性ガスの発生濃度が、爆発発生濃度を超え、爆発に到る恐れがある。
【0006】
なお、炭化処理では、耐炎化処理よりも炭素前駆体繊維を高温で焼成する必要があるが、窒素等の不活性ガス雰囲気中で焼成するため、上述の問題が発生する恐れはない。
【0007】
耐炎化処理時における上述の問題を解決するために、特開平5−132824号公報等には、通気性を有するベルトコンベアを用いて炭素前駆体繊維を搬送するなどして、炭素前駆体繊維の除熱を行うことが提案されている。しかしながら、特開平5−132824号公報等に開示された技術では、何らかの原因で蓄熱や反応の暴走が生じた場合には、火災や爆発の発生を回避することはできない。
【0008】
そのため、従来は、炭素前駆体繊維が発火した場合には、散水等により鎮火し、火災や爆発を未然に防ぐように、目視による監視を行っているのが現状である。しかしながら、一般に、耐炎化炉内は視認性が悪く、炭素前駆体繊維が完全に燃焼し破断して、はじめて異常が認識されることが多く、火災等を未然に防ぐことは困難であった。また、鎮火されたか否かについても目視により判定していたため、過去には、実際には鎮火されていないにもかかわらず、鎮火されたと誤認識され、大きな火災に発展した例もあった。
【0009】
したがって、火災等を未然に防ぐためには、目視の判定によらず、炭素前駆体繊維の蓄熱や反応の暴走を自動検出する技術の開発が必要である。
ここで、耐炎化炉内の温度(炉温)を測定することにより、炭素前駆体繊維の温度上昇を自動検出することが考えられる。しかしながら、炉温は200〜300℃の高温であることに加えて、耐炎化炉内において占める体積の小さい炭素前駆体繊維の温度上昇による炉温の上昇は小さいため、炭素前駆体繊維の温度上昇の検出は困難である。
また、光学的に炉温を測定することにより、炭素前駆体繊維の温度上昇による炉温の上昇を検出することができたとしても、炭素前駆体繊維の焼成により発生する黒色の有機物等が、検出に必要な光学レンズ等に付着し、光学レンズ等の透光性が低下し、検出精度が著しく低下するため、長期に渡って安定して検出を行うことは難しい。
【0010】
また、炭素前駆体繊維の温度を直接測定することにより、炭素前駆体繊維の温度上昇を自動検出することが考えられる。しかしながら、全長数10〜数100m、数〜数1000唾に及ぶ耐炎化炉内の炭素前駆体繊維の温度を直接測定するためには、極めて多数の温度センサーを炭素前駆体繊維に接触させる必要があることに加えて、温度センサーの接触による炭素前駆体繊維へのダメージが大きくなる恐れがあり、実用化は難しい。
【0011】
炭素繊維を耐炎化処理する場合の問題についてのみ説明したが、以上の問題は、繊維に限らず、いかなる形状の炭素前駆体に耐炎化処理を施す場合にも同様に生じる問題である。
そこで、本発明は、耐炎化処理時の炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走を、炭素前駆体にダメージを与えることなく、長期に渡って安定して、自動検出する手段を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、小規模の耐炎化炉内で、炭素前駆体に発火を起こさせるモデル実験を行った結果、可燃性ガスであるシアン化水素、アンモニア、一酸化炭素の正常時の発生量は、いずれも耐炎化炉内に滞在している炭素前駆体の質量を100%とした時、0.1〜2.0質量%/hr程度であるが、炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走が発生した場合、シアン化水素、アンモニア、一酸化炭素の濃度は急激に上昇し、炭素前駆体が発火した場合のアンモニアの最大濃度は正常時の100倍以上、シアン化水素及び一酸化炭素の最大濃度は正常時の30倍程度となることを見出した。
【0013】
つまり、炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走が発生した場合、シアン化水素と一酸化炭素の発生濃度は最大でも正常時の30倍程度であるのに対し、アンモニアの発生濃度は正常時の100倍以上であり、濃度上昇の最も著しい可燃性ガスはアンモニアであることが判明した。そして、本発明者は、かかる点に着目することにより、以下の耐炎化炉、及び耐炎化炉の温度制御方法を発明するに到った。なお、本発明者が行ったモデル実験の内容については[実施例]の項において詳述する。
【0014】
本発明の耐炎化炉は、炭素前駆体を酸化性雰囲気中で加熱することにより、炭素前駆体に耐炎化処理を施すことが可能な耐炎化炉において、前記耐炎化炉内のガスを採取する少なくとも1個のガス採取手段と、各ガス採取手段により採取されたガス中のアンモニア濃度を測定するアンモニア濃度測定手段とを具備することを特徴とする。
【0015】
上述したように、炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走が発生した場合、濃度上昇の最も著しい可燃性ガスはアンモニアであるので、かかる構成の本発明の耐炎化炉を用い、耐炎化炉内のガスを採取し、ガス中のアンモニア濃度を自動的に測定しながら耐炎化処理を行うことにより、火災等が発生する前に、炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走を自動検出することができる。
また、本発明の耐炎化炉では、ガス中のアンモニア濃度を測定することにより、炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走を検出する構成を採用しているので、炭素前駆体にダメージを与えることなく、長期に渡って安定して、炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走を検出することができる。
【0016】
また、耐炎化炉内のガス中のアンモニア濃度が上昇するということは、炭素前駆体の温度が上昇していることを意味する。
したがって、本発明の耐炎化炉が、前記アンモニア濃度測定手段により測定されたアンモニア濃度に基づいて、前記耐炎化炉内の温度を制御する温度制御手段をさらに具備することが好ましい。
かかる構成を採用することにより、アンモニア濃度が正常値より上昇した場合には、温度制御手段により、耐炎化炉内の温度を自動的に下降させることができ、炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走を、自動的に停止又は抑制することができる。また、アンモニア濃度が正常値より下降した場合には、温度制御手段により、耐炎化炉内の温度を自動的に上昇させ、炭素前駆体を所望の温度に設定することができるので、耐炎化処理を安定して進行させることができる。
【0017】
すなわち、本発明の耐炎化炉によれば、耐炎化処理時の炭素前駆体の温度を、極めて精密に制御することができるので、炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走を自動的に停止又は抑制することができるという効果の他、耐炎化処理を安定して進行させることができるという効果も合わせて得られるのである。なお、これまで、耐炎化処理時の炭素前駆体の温度を制御するという技術については全く報告されていない。
【0018】
ここで、前記温度制御手段としては、下記式(1)に基づいて、前記耐炎化炉内の新たな設定温度を演算する設定温度演算手段を具備するものを用いることができる。
S1=TS0/{1−TS0 ×ln(C0V/CS0)/(E/R)}・・・(1)(但し、式(1)中において、C0Vは現在のアンモニア濃度、TS0は過去のある一定期間における設定温度の平均値、CS0は過去のある一定期間におけるアンモニアの平均濃度、TS1は新たな設定温度を各々表す。また、Eは活性化エネルギー、Rは気体定数を表す。)
かかる構成の温度制御手段を用いることにより、耐炎化炉内の温度を良好に制御することができる。
【0019】
また、前記温度制御手段としては、上記式(1)よりも簡略な下記式(2)に基づいて、前記耐炎化炉内の新たな設定温度を演算する設定温度演算手段を具備する構成のものを用いることもできる。
S1=TS0+α × (C0V−CS0)/CS0・・・(2)
(但し、式(2)中において、C0Vは現在のアンモニア濃度、TS0は過去のある一定期間における設定温度の平均値、CS0は過去のある一定期間におけるアンモニアの平均濃度、TS1は新たな設定温度を各々表す。また、αは定数であり、約20程度である。)
かかる構成の温度制御手段を用いることによっても、耐炎化炉内の温度を良好に制御することができる。
【0020】
なお、上記式(1)、(2)において、TS0、TS1は絶対温度を示している。また、式(1)、(2)に基づいて、耐炎化炉内の新たな設定温度を演算することができ、耐炎化炉内の温度を良好に制御できる理由については、「発明の実施の形態」の項において詳述する。
【0021】
また、本発明の耐炎化炉に、前記炭素前駆体が発火した際に、強制的に消火する強制消火手段を設けると共に、前記強制消火手段を、前記アンモニア濃度測定手段により測定されたアンモニア濃度が所定の値以上の時に作動させることが好ましい。
ここで、前記強制消火手段としては、前記炭素前駆体に散水する散水手段等が好適である。
かかる構成を採用することにより、アンモニア濃度が著しく高くなった場合、すなわち、温度制御手段により、炭素前駆体の温度を正常範囲内に制御できない程度にまで、炭素前駆体の反応の暴走が進行してしまったと考えられる場合に、強制消火手段により、炭素前駆体を強制的に冷却することができるので、万一、火災が発生したとしても直ちに鎮火することができ、好適である。
【0022】
また、以上の本発明の耐炎化炉は、ポリアクリロニトリルを主成分とする炭素前駆体等の耐炎化処理を行う場合に好適である。なお、本明細書において、「ポリアクリロニトリルを主成分とする炭素前駆体」とは、ポリアクリロニトリルを85%以上含有する炭素前駆体を意味しているものとする。
【0023】
本発明の耐炎化炉の温度制御方法は、炭素前駆体を酸化性雰囲気中で加熱することにより、炭素前駆体に耐炎化処理を施すことが可能な耐炎化炉の温度制御方法であって、前記耐炎化炉内のアンモニア濃度を少なくとも1箇所測定し、測定されたアンモニア濃度に基づいて、前記耐炎化炉内の温度を制御することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の耐炎化炉の温度制御方法において、下記式(1)に基づいて、前記耐炎化炉内の新たな設定温度を演算することにより、前記耐炎化炉内の温度を制御することができる。
S1=TS0/{1−TS0 ×ln(C0V/CS0)/(E/R)}・・・(1)
(但し、式(1)中において、C0Vは現在のアンモニア濃度、TS0は過去のある一定期間における設定温度の平均値、CS0は過去のある一定期間におけるアンモニアの平均濃度、TS1は新たな設定温度を各々表す。また、Eは活性化エネルギー、Rは気体定数を表す。)
【0025】
また、本発明の耐炎化炉の温度制御方法において、上記式(1)よりも簡略な下記式(2)に基づいて、前記耐炎化炉内の新たな設定温度を演算することによっても、前記耐炎化炉内の温度を制御することができる。
S1=TS0+α × (C0V−CS0)/CS0・・・(2)
(但し、式(2)中において、C0Vは現在のアンモニア濃度、TS0は過去のある一定期間における設定温度の平均値、CS0は過去のある一定期間におけるアンモニアの平均濃度、TS1は新たな設定温度を各々表す。また、αは定数であり、約20程度である。)
【0026】
以上の本発明の耐炎化炉の温度制御方法によれば、本発明の耐炎化炉と同様の効果を得ることができ、耐炎化処理時の炭素前駆体の温度を、極めて精密に制御することができるので、炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走を自動検出し、蓄熱や反応の暴走を自動的に停止又は抑制することができると共に、耐炎化処理を安定して進行させることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る実施形態について詳述する。
図1、図2に基づいて、本発明に係る実施形態の耐炎化炉の構造について、炭素前駆体繊維の耐炎化処理を行うことが可能な熱風循環式の耐炎化炉を取り上げて説明する。図1、図2は、本実施形態の耐炎化炉を模式的に示す図であり、図1は、本実施形態の耐炎化炉を炭素前駆体繊維の搬送方向に対して垂直方向に切断した時の断面図、図2は、本実施形態の耐炎化炉を炭素前駆体繊維の搬送方向に対して平行方向に切断した時の概略断面図である。
なお、耐炎化処理速度の向上を図るために、実際には、炭素前駆体繊維を、多段的に構成された炉内に段階的に通過させることが一般的であるが、本実施形態では、説明を簡略化するため、炭素前駆体繊維を炉内に1回のみ通過させて耐炎化処理を施すものとして説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の耐炎化炉100においては、加熱ガスを生成する加熱ガス生成室200と、炭素前駆体繊維の耐炎化処理を行う耐炎化処理室300とが設けられている。そして、これら加熱ガス生成室200と耐炎化処理室300とは、仕切材400を介して仕切られているが、加熱ガス生成室200と耐炎化処理室300とは、仕切材400の上端側、下端側に各々形成された通気孔410、420を介して接続されている。
【0029】
また、耐炎化炉100には、空気や、酸素等の酸化性ガスと不活性ガスとの混合ガスなどの、耐炎化処理に必要なガスを供給するガス供給手段(図示略)と、ガス供給手段から供給されたガスを排出するガス排出手段(図示略)とが設けられており、耐炎化炉100内へは所定の速度で連続的にガスが供給されるようになっている。
【0030】
また、加熱ガス生成室200には、ガス供給手段から供給されたガスを加熱し、加熱ガスを生成するヒータ(加熱手段)210と、ヒータ210により生成された加熱ガスを耐炎化炉100内に循環させるためのファン220が設けられており、加熱ガス生成室200により生成された加熱ガスは、通気孔410を介して耐炎化処理室300に送られ、通気孔420を介して再び加熱ガス生成室200に戻るように構成されている。また、ヒータ210には、後述するアンモニア濃度測定器330により測定されたアンモニア濃度に基づいて、ヒータ210の温度を制御することが可能な温度制御手段500が接続されている。
【0031】
また、図1、図2に示すように、耐炎化処理室300には、炭素前駆体繊維310を搬送するベルトコンベア等の搬送手段(図示略)が備えられており、この搬送手段により、少なくとも1本の炭素前駆体繊維310が一方向(図2では、図示左方から図示右方)に向けて搬送され、耐炎化炉100内を通過する間に、通気孔410から送られた加熱ガスにより、耐炎化処理が施されるようになっている。
【0032】
さらに、耐炎化処理室300には、耐炎化処理室300内のガスを採取するガス採取手段320が取り付けられている。図1に示すように、このガス採取手段320は、ガス採取管321とポンプ322とから構成されており、ポンプ322によりガスを吸引することにより、ガス採取管321内にガスを吸引採取することが可能な構成になっている。また、ガス採取管321は、一端がガス採取口321A、他端がガス排出口321Bになっており、ガス採取口321Aから採取されたガスは、ガス排出口321Bから耐炎化処理室300に戻されるようになっている。なお、ガス採取手段300によるガスの採取は、常時行っても良いし、所定時間おきに行っても良い。
【0033】
ガス採取手段320は、炭素前駆体繊維310の蓄熱や反応の暴走を検出するために設けられるものであるが、一般に、炭素前駆体繊維310の蓄熱や反応の暴走は、炭素前駆体繊維310全体に渡って一様に起こるのではなく、はじめに、炭素前駆体繊維310の一部分で起こった後、全体に広がるため、ガス採取手段320は、炭素前駆体繊維310の近傍に搬送方向に沿って複数設置することが好ましく、最低でも入口、出口、中央の3箇所、より好ましくは50cmおき程度に設けることが好ましい。かかる構成とすることにより、炭素前駆体繊維310に局所的に起こった蓄熱や反応の暴走を迅速に検出することが可能になる。但し、炭素前駆体繊維310が振動した場合においても、ガス採取手段320が炭素前駆体繊維310に接触してダメージを与えない程度に、ガス採取手段320を離間配置させることが好ましい。また、ガス採取手段320を、炭素前駆体繊維310よりも、加熱ガスの風下側に設置することが望ましい。なお、図2では、ガス採取手段320のうち、ガス採取口321Aのみを取り出して図示しており、ガス採取手段320を6箇所設けた場合について図示している。
【0034】
また、各ガス採取手段320のガス採取管321には、アンモニア濃度測定器(アンモニア濃度測定手段)330が接続されており、採取されたガス中のアンモニア濃度が測定されるようになっている。なお、アンモニア濃度測定器330によるアンモニア濃度の測定は、常時行っても良いし、所定時間おきに行っても良い。
アンモニア濃度測定器330としては、アンモニア濃度を測定することができれば特に限定されるものではないが、電気化学的にイオン化電位を測定することにより、アンモニア濃度を連続的に測定することが可能な電気化学式センサー等が好適に用いられる。電気化学式センサーとしては、例えば、(株)ジコー社製のEITセンサースティック有毒ガスモニターを例示することができ、このセンサーによれば、数ヶ月から2年程度の長期に渡って、0〜100ppmのアンモニア濃度を連続して測定することができる。
【0035】
アンモニア濃度測定器330により測定できるアンモニア濃度の上限は、正常時のアンモニア濃度の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、4倍以上であることが特に好ましい。かかる性能のアンモニア濃度測定器330を用いることにより、異常発生時のアンモニア濃度の上昇を精度良く測定することができる。
但し、アンモニア濃度測定器330として、測定できるアンモニア濃度の上限が、正常時のアンモニア濃度の2倍未満のものを用いても良い。この場合には、測定できるアンモニア濃度の上限が、正常時の測定ガスのアンモニア濃度の2倍以上となるように、採取ガスを空気等により希釈し、測定ガスとして用いることが好ましい。
【0036】
さらに、各アンモニア濃度測定器330は、ヒータ210に接続された温度制御手段500に接続されており、各アンモニア濃度測定器330により測定されたアンモニア濃度に基づいて、温度制御手段500によりヒータ210の設定温度が調節されるようになっている。
ここで、温度制御手段500は、ヒータ210を駆動するヒータ駆動装置510と、ヒータ駆動装置510を制御する制御装置520と、アンモニア濃度測定器330により測定されたデータの処理を行うデータ処理装置530とから構成されている。
【0037】
アンモニア濃度測定器330により測定されたアンモニア濃度のデータ信号は、データ処理装置530に入力されて処理が行われる。データ処理装置530は、A/Dコンバータ531と、コンピュータ(設定温度演算手段)532と、D/Aコンバータ533とから構成されており、アンモニア濃度測定器330により測定されたデータ信号は、A/Dコンバータ531を介してコンピュータ532に入力され、コンピュータ532において、ヒータ210の新たな設定温度が演算された後、得られた新たな設定温度のデータ信号が、D/Aコンバータ533を介して制御装置520に入力されるように構成されている。
そして、制御装置520は、D/Aコンバータ533から入力されたデータ信号に基づいて、ヒータ駆動装置510を制御する信号をヒータ駆動装置510に入力するように構成されている。また、ヒータ駆動装置510は、制御装置520から入力された信号に基づいて、ヒータ210に供給する電力を調節するなどして、ヒータ210の設定温度が、コンピュータ532により演算された新たな設定温度になるように調節するように構成されている。
【0038】
すなわち、本実施形態の耐炎化炉100では、耐炎化処理室300内のガス中のアンモニア濃度を測定し、得られたデータに基づいて、ヒータ210の設定温度を調節することにより、炉温を調節し、炭素前駆体繊維310の温度を制御することが可能な構成を採用している。なお、本実施形態では、ヒータ210の温度が炉温にほぼ等しくなる。
【0039】
ここで、データ処理装置530のコンピュータ(設定温度演算手段)532におけるヒータ210の新たな設定温度の演算方法について具体的に説明する。
本発明者は、炭素前駆体繊維310からのアンモニアの発生は熱分解過程であるので、アンモニアの発生は、下記式(3)で示されるアレニウス式に従うと考えた。
K(T)=Aexp(−E/RT)・・・(3)
(但し、式(3)中において、K(T)は絶対温度Tにおける生成速度定数、Aは頻度因子、Eは活性化エネルギー、Rは気体定数を各々表す。)
【0040】
ある絶対温度におけるアンモニアの発生濃度は、アンモニアの生成量にほぼ比例するので、その温度における生成速度定数にも比例する。また、炉温が一定状態であると仮定した場合、アンモニア濃度が上昇するということは、蓄熱により炭素前駆体繊維310の温度が炉温より上昇したことを示す。したがって、炉温をある温度に設定した時の、炭素前駆体繊維310の正常時の絶対温度をT0、アンモニア濃度をC0とし、アンモニア濃度がC1となった時の炭素前駆体繊維310の絶対温度をT1とすると、アレニウス式(3)から、下記式(4)が求められる。
1/C0=exp(−E/RT1)/exp(−E/RT0)・・・(4)
また、この式から下記式(5)が求められる。
1=T0/{1−T0×ln(C1/C0)/(E/R)}・・・(5)
【0041】
したがって、下記式(1)に基づいて、アンモニア濃度の上昇に対して、ヒータ210の設定温度を下降させ、アンモニア濃度の下降に対して、ヒータ210の設定温度を上昇させるように制御を行えば、炭素前駆体繊維310の温度を正常範囲に制御することができる。
S1=TS0/{1−TS0 ×ln(C0V/CS0)/(E/R)}・・・(1)
(但し、式(1)中において、C0Vは現在のアンモニア濃度、TS0は過去のある一定期間における設定温度の平均値、CS0は過去のある一定期間におけるアンモニアの平均濃度、TS1は新たな設定温度を各々表す。また、Eは活性化エネルギー、Rは気体定数を表す。)
なお、式(1)において、E/Rは定数であり、本発明者が、耐炎化処理時のアンモニア発生について、実験的にE/Rの値を求めたところ約14000であることが判明した。
【0042】
また、耐炎化処理時の加熱温度である200〜300℃(473〜573K)の範囲において、アンモニア濃度が5%上昇あるいは下降すると仮定した時、上記式(1)を用いて、TS1とTS0の差を計算すると約1Kとなる。したがって、アンモニア濃度が5%上昇すると、設定温度を約1K下降させ、アンモニア濃度が5%下降すると、設定温度を約1K上昇させるように、制御を行うことによっても炭素前駆体繊維310の温度を正常範囲に制御することができる。
具体的には、例えば、上記式(1)をより簡略な下記式(2)に近似し、式(2)に基づいて、炭素前駆体繊維310の温度を制御することも可能である。
S1=TS0+α × (C0V−CS0)/CS0・・・(2)
(但し、式(2)中において、C0Vは現在のアンモニア濃度、TS0は過去のある一定期間における設定温度の平均値、CS0は過去のある一定期間におけるアンモニアの平均濃度、TS1は新たな設定温度を各々表す。また、αは定数であり、約20程度である。)
【0043】
すなわち、本実施形態の耐炎化炉100においては、データ処理装置530のコンピュータ532が、アンモニア濃度測定器330により測定されたアンモニア濃度に基づいて、上記式(1)又は(2)を用いて、ヒータ210の新たな設定温度を演算するように構成されている。
【0044】
さらに、本実施形態の耐炎化炉100において、耐炎化処理室300の天井側には、少なくとも1個の散水手段(強制消火手段)600が取り付けられており、各散水手段600は、内部に水が流れる流水管(図示略)に接続された散水ノズル610と、流水管610に接続され、散水ノズル610からの散水を行う時に自動的に開くオートバルブ620を具備して構成されている。また、オートバルブ620は、データ処理装置530のD/Aコンバータ533に接続されている。
【0045】
そして、アンモニア濃度が著しく高くなった場合、すなわち、温度制御手段500により、炭素前駆体繊維310の温度を正常範囲内に制御できない程度にまで、炭素前駆体繊維310の反応の暴走が進行してしまったと考えられる場合には、温度制御手段500により、ヒータ210への電力供給が停止されると共に、温度制御手段500のデータ処理装置530からオートバルブ620に自動的に信号が入力され、この信号に基づいてオートバルブ620が開き、散水ノズル610から炭素前駆体繊維310に散水され、炭素前駆体繊維310を強制的に冷却するように構成されている。
例えば、アンモニア濃度が正常時のアンモニアの平均濃度の3倍以上になった場合に、温度制御手段500により、炭素前駆体繊維310の温度を正常範囲内に制御できない程度にまで、炭素前駆体繊維310の反応の暴走が進行したと判定すれば良い。
【0046】
本実施形態の耐炎化炉100は以上のように構成され、本実施形態の耐炎化炉100は、ポリアクリロニトリルを主成分とする炭素前駆体繊維等に耐炎化処理する場合に好適に用いることができる。
【0047】
本実施形態の耐炎化炉100では、耐炎化処理室300内のガスを採取する少なくとも1個のガス採取手段320と、ガス採取手段320により採取されたガス中のアンモニア濃度を測定するアンモニア測定器330を備える構成としたので、本実施形態の耐炎化炉100を用いて耐炎化処理を行うことにより、炭素前駆体繊維310の蓄熱や反応の暴走が発生した場合に、濃度上昇の最も著しい可燃性ガスであるアンモニアの濃度を自動的に測定しながら耐炎化処理を行うことができ、火災等が発生する前に、炭素前駆体繊維310の蓄熱や反応の暴走を自動検出することができる。
【0048】
また、本実施形態の耐炎化炉100では、耐炎化処理室300内のガス中のアンモニア濃度を測定することにより、炭素前駆体繊維310の蓄熱や反応の暴走を検出する構成を採用しているので、炭素前駆体繊維310にダメージを与えることなく、長期に渡って安定して、炭素前駆体繊維310の蓄熱や反応の暴走を検出することができる。
【0049】
さらに、本実施形態の耐炎化炉100では、アンモニア濃度測定器330により測定されたアンモニア濃度に基づいて、ヒータ210の温度を制御する温度制御手段500を備える構成としたので、耐炎化処理時の炭素前駆体繊維310の温度を、極めて精密に制御することができ、炭素前駆体繊維310の蓄熱や反応の暴走を自動的に停止又は抑制することができると共に、耐炎化処理を安定して進行させることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、ヒータ駆動装置510、制御装置520、データ処理装置530からなる温度制御手段500を備える場合についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、アンモニア測定器330により測定されたアンモニア濃度に基づいてヒータ210の設定温度を制御することができれば、いかなる構成の温度制御手段500を用いても良い。
例えば、設定温度演算手段として機能するコンピュータ532の代わりに、プログラマブルコントローラ等を用いて、ヒータ210の温度を制御することも可能である。プログラマブルコントローラ等を用いる場合にも、コンピュータを用いる場合と同様に、アンモニア濃度が上昇すると、ヒータ210への供給電力を下降させ、アンモニア濃度が下降すると、ヒータ210への供給電力を上昇させるように制御を行えば良い。但し、コンピュータ等の設定温度演算手段を用いる場合には、予測的な制御を行うことができ、アンモニア濃度(すなわち、炭素前駆体繊維310の温度)をより安定的に維持することができるので、好適である。
【0051】
このように、本実施形態の耐炎化炉310では、耐炎化処理室300内のガス中のアンモニア濃度に基づいて、ヒータ210の設定温度、すなわち炉温を制御することにより、すべての炭素前駆体繊維310の全体の温度を制御することが可能な構成とした。
【0052】
しかしながら、本発明はかかる構成に限定されるものではない。上述したように、一般に、炭素前駆体繊維310の蓄熱や反応の暴走は、炭素前駆体繊維310全体に渡って一様に起こるのではなく、はじめに、炭素前駆体繊維310の一部分で起こった後、全体に広がるため、少なくともアンモニア濃度を測定した箇所の近傍の温度を制御するように構成すれば良い。
例えば、複数のガス採取手段320の設置箇所に対応させて、炭素前駆体繊維310の搬送方向に沿って、複数のヒータを設置し、各ヒータに対して、各ヒータの設定温度を制御する温度制御手段を取り付けることにより、アンモニア濃度を測定した箇所の近傍の温度をそれぞれ制御することが可能になる。そして、かかる構成とした場合には、耐炎化炉100内の全体の温度を制御する場合に比較して、異常が発生した部分の温度を迅速に正常範囲に戻すことができ、好適である。
【0053】
また、本実施形態の耐炎化炉100では、炭素前駆体繊維310を強制的に冷却する散水手段600を設けると共に、散水手段600を、アンモニア濃度測定器330により測定されたアンモニア濃度が所定の値以上の時に作動させる構成を採用したので、アンモニア濃度が著しく高くなった場合、すなわち、温度制御手段500により、炭素前駆体繊維310の温度を正常範囲内に制御できない程度にまで、炭素前駆体繊維310の反応の暴走が進行してしまったと考えられる場合に、散水手段600により、炭素前駆体繊維310を強制的に冷却することができるので、万一、火災が発生したとしても直ちに鎮火することができ、好適である。
【0054】
なお、強制消火手段として、散水手段600の代わりに、炭素前駆体繊維310に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を備える構成としても良い。但し、不活性ガスを供給する場合には、炉内のシアン化水素などの可燃性ガスが外部に漏洩する恐れや、熱分解によって発生している可燃性ガスの量を逆に増大させてしまう恐れがある。したがって、かかる恐れがある場合には、強制消火手段として、散水手段を備えることがましい。
【0055】
また、本実施形態の耐炎化炉100では、強制消火手段により消火した後も、引き続き、耐炎化処理室300内のガス中のアンモニア濃度を測定することにより、炭素前駆体繊維310の反応が完全に停止したか否かを正確に確認することができる。したがって、万一、火災等が発生した場合にも鎮火されたか否かを誤判定する恐れがない。
【0056】
なお、本実施形態では、熱風循環式の耐炎化炉を取り上げて説明したが、本発明はいかなる構造の耐炎化炉にも適用可能である。また、本実施形態では、炭素前駆体繊維に耐炎化処理を施す場合についてのみ説明したが、本発明はいかなる形状の炭素前駆体に耐炎化処理を施す場合にも適用可能である。
【0057】
【実施例】
次に、本発明に係る試験例、実施例、比較例について説明する。
(試験例)
以下のようにして、耐炎化炉として小規模炉を用いて発火を発生させるモデル実験を行い、シアン化水素、アンモニア、一酸化炭素の発生挙動を調べた。
小規模炉として、有効炉長が15cm、ガラス製で内部が視認可能な輻射炉を用いた。この小規模炉内に、12000フィラメントのポリアクリロニトリルを主成分とする炭素前駆体繊維(約0.24g/15cm)を4m/hrの速度で連続的に投入した。また、炉内に1.0l/minの速度で空気を連続的に供給すると共に、炉内から同じ速度で空気を排出させ、約135秒間の耐炎化処理を施した。
【0058】
排出される空気のうち、0.06l/minを、常時、(株)ジコー社製のEITセンサースティックに導入し、アンモニア濃度を測定した。また、センサーの測定範囲(0〜100ppm)を超えた場合のアンモニア濃度、及び、他の可燃性ガスであるシアン化水素、一酸化炭素の濃度を測定するために、排気流路の途中に4本のガスタイトシリンジを設置し、適宜、200ml/20secのガス採取速度でガス採取を行えるようにした。また、ガスタイトシリンジにより採取したガスは室温までに冷却した後、ガステック社製のアンモニア用ガス検知管(3L、3M)、シアン化水素用ガス検知管(12M、12L)、一酸化炭素用ガス検知管(1LK)を用いて測定した。
【0059】
炉温を243℃に保ち定常状態とした後のシアン化水素、アンモニア、一酸化炭素の濃度の測定結果を表1に示す。なお、アンモニア濃度についてはEITセンサースティックにより測定した。表1に示すように、正常時のシアン化水素、アンモニア、一酸化炭素の濃度は、いずれも10ppm以上100ppm未満であった。
また、本発明者は、別途、実際に炭素繊維の製造に使用している耐炎化炉からガスを採取し、同様の測定を行ったところ、各ガスの濃度は数〜数100ppmであることを確認した。
【0060】
また、本発明者は、EITセンサースティックやガス検知管による測定値の信頼性を確認するために、測定値の信頼性が高いが大量のガス採取を必要とするイオンクロマトグラフ法(JIS−K−0099に記載)に基づいて、実際に炭素繊維の製造に使用している耐炎化炉から採取したガス約30lについてアンモニア濃度の測定を行ったところ、前記のEITセンサースティックやガス検知管による測定値と同様な結果が得られ、耐炎化炉から採取したガスについてEITセンサースティックやガス検知管による測定で得られる測定値は、特に妨害ガスの影響等はなく信頼できるものであることを確認した。
【0061】
【表1】
Figure 0003892263
【0062】
続いて、炉温を243℃から、約5℃/minの昇温速度で昇温すると、炉温の昇温に伴って、徐々にアンモニア濃度が上昇し、約1分後に炭素前駆体繊維に発火が確認された。なお、本試験例では、ガラス製の小規模炉を用いているため、目視により発火を確認することができるが、発煙が観察された時点を発火が発生したと判定した。
発火と同時に、アンモニア濃度は急激に上昇し、EITセンサースティックの測定範囲を瞬時に外れるため、発火の時点からガスタイトシリンジによるガス採取を開始し、4本のガスタイトシリンジで20秒ずつ計80秒間ガス採取を行い、検知管によるガス濃度の測定を行った。なお、残った炭素前駆体繊維を観察したところ、有効炉長15cmと同程度の長さの部分が燃焼していることが確認された。
【0063】
図3に、発火の100秒前から発火の80秒後まで、アンモニア濃度の測定を行った結果を示す。図3において、時間0(sec)が発火の時点を示している。図3から、発火の50秒前から徐々にアンモニア濃度が上昇し、発火と同時に、アンモニア濃度が急激に上昇し、発火の60秒後にアンモニア濃度が最大になることが判明した。
【0064】
また、発火からの経過時間と、炉温、各ガスの濃度の関係を表2に示す。
表2に示す結果から、いずれのガスも発火の60秒後に最大濃度を示すことが判明した。また、表1、表2に示す結果から、アンモニアの最大濃度は正常時の170倍程度であったのに対し、シアン化水素の最大濃度は正常時の7倍程度、一酸化炭素の最大濃度は18倍程度であり、濃度上昇の最も著しい可燃性ガスはアンモニアであることが判明した。
なお、本発明者が同様の試験を数十回繰り返し行ったところ、同様の結果が得られ、発火後、20〜60秒で、各ガス濃度は最大値を示すと共に、濃度上昇の最も著しい可燃性ガスはアンモニアであることが判明した。
【0065】
【表2】
Figure 0003892263
【0066】
(実施例1)
試験例と同じ小規模炉を用いて、試験例と同様に試験を行った。なお、アンモニア濃度が55ppmで一定となるように、ヒータの温度を制御して試験を行った。
定常状態になり、アンモニア濃度が55ppmであることを確認した後、炭素前駆体繊維に蓄熱を起こさせるために、炭素前駆体繊維の投入速度を4m/hrから1m/hrに低下させたところ、アンモニア濃度は一時的に80ppmまで上昇したが、直ちに、ヒータの設定温度が下げられ、炉温が低下した。その結果、約2分後に、アンモニア濃度は55ppmに戻り、炭素前駆体繊維に発火は生じなかった。
【0067】
(比較例1)
試験例と同じ小規模炉を用いて、試験例と同様に試験を行った。なお、炉温が243℃で一定となるように、ヒータの温度を制御して試験を行った。
定常状態になり、アンモニア濃度が55ppmであることを確認した後、炭素前駆体繊維に蓄熱を起こさせるために、炭素前駆体繊維の投入速度を4m/hrから1m/hrに低下させたところ、蓄熱により炭素前駆体繊維は発火した。
【0068】
(実施例2)
試験例と同じ小規模炉を用いて、試験例と同様に試験を行った。なお、アンモニア濃度が55ppmで一定となるように、ヒータの温度を制御して試験を行った。
定常状態になり、アンモニア濃度が55ppmであることを確認した後、炭素前駆体繊維に蓄熱を起こさせるために、炭素前駆体繊維に結び目を形成して、耐炎化炉に投入したところ、アンモニア濃度は一時的に70ppmまで上昇したが、直ちに、ヒータの設定温度が下げられ、炉温が低下した。その結果、約2分後に、アンモニア濃度は55ppmに戻り、炭素前駆体繊維に発火は生じなかった。
【0069】
(比較例2)
試験例と同じ小規模炉を用いて、試験例と同様に試験を行った。なお、炉温が243℃で一定となるように、ヒータの温度を制御して試験を行った。
定常状態になり、アンモニア濃度が55ppmであることを確認した後、炭素前駆体繊維に蓄熱を起こさせるために、炭素前駆体繊維に結び目を形成して、耐炎化炉に投入したところ、蓄熱により炭素前駆体繊維は発火した。
【0070】
(実施例3)
有効炉長が26mの熱風循環炉(6ゾーンに分割されたもの)を用い、上記実施形態と同様の本発明の耐炎化炉を得た。
この耐炎化炉に、12000フィラメントのポリアクリロニトリルを主成分とする炭素前駆体繊維29錘を53.3m/hrの速度で連続的に投入し、約29分間の耐炎化処理を施す条件で運転を行った。
耐炎化炉の6つの各ゾーンの中央部に挿入したガス採取管(金属パイプ)から、0.06l/minのガス採取速度で炉内のガスを採取し、常時、(株)ジコー社製のEITセンサースティックに導入し、アンモニア濃度を連続的に測定した。
初期の炉温を242℃に設定したところ、定常状態(正常時)のアンモニア濃度は30ppmとなった。その後、測定されたアンモニア濃度に基づいて、上記式(2)を用いて、ヒータの新たな設定温度を演算することにより、ヒータの温度を制御しながら、連続運転を実施した。
また、万一の火災に備えて、アンモニア濃度が90ppm以上になった時にはヒータへの電力供給を停止するように設定すると共に、アンモニア濃度が100ppm以上になった時には散水手段により散水するよう設定した。
1週間の連続運転を3回行ったが、炭素前駆体繊維の反応の暴走や発火は起こらず、耐炎化炉を安全に運転することができた。
【0071】
(比較例3)
アンモニア濃度の測定、及び測定されたアンモニア濃度に基づくヒータの温度制御を行わなかった以外は、実施例3と同様にして連続運転を行った。
1週間の連続運転を3回行ったところ、炭素前駆体繊維の反応の暴走により、計5回の発火が発生した。
【0072】
実施例1〜3、比較例1〜3の結果から、アンモニア濃度を測定し、測定されたデータに基づいて、ヒータの温度(炉温)を制御することにより、炭素前駆体繊維に蓄熱や反応の暴走が生じた場合においても、直ちに、蓄熱や反応の暴走を停止することができ、耐炎化炉を安全に運転することができることが判明した。
【0073】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の耐炎化炉によれば、耐炎化炉内のアンモニア濃度を自動的に測定しながら耐炎化処理を行うことができるので、炭素前駆体にダメージを与えることなく、長期に渡って安定して、炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走を自動検出することができる。
また、測定されたアンモニア濃度に基づいて、耐炎化炉内の温度を制御するように構成することが好ましく、かかる構成とするにより、耐炎化処理時の炭素前駆体の温度を、極めて精密に制御することができるので、炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走を自動的に停止又は抑制することができると共に、耐炎化処理を安定して進行させることができる。
また、本発明の耐炎化炉の温度制御方法によれば、本発明の耐炎化炉と同様の効果を得ることができ、耐炎化処理時の炭素前駆体の温度を、極めて精密に制御することができるので、炭素前駆体の蓄熱や反応の暴走を自動検出し、蓄熱や反応の暴走を自動的に停止又は抑制することができると共に、耐炎化処理を安定して進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る実施形態の耐炎化炉の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】 図2は、本発明に係る実施形態の耐炎化炉の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】 図3は、試験例において、発火の100秒前から発火の80秒後までの、耐炎化炉内のガス中のアンモニア濃度の測定を行った結果を示す図である。
【符号の説明】
100 耐炎化炉
310 炭素前駆体繊維(炭素前駆体)
200 加熱ガス生成室
300 耐炎化処理室
210 ヒータ
320 ガス採取手段
321 ガス採取管
322 ポンプ
330 アンモニア濃度測定器(アンモニア濃度測定手段)
500 温度制御手段
510 ヒータ駆動装置
520 制御装置
530 データ処理装置
532 コンピュータ(設定温度演算手段)
600 散水手段(強制消火手段)

Claims (10)

  1. 炭素前駆体を酸化性雰囲気中で加熱することにより、炭素前駆体に耐炎化処理を施すことが可能な耐炎化炉において、
    前記耐炎化炉内のガスを採取する少なくとも1個のガス採取手段と、
    各ガス採取手段により採取されたガス中のアンモニア濃度を測定するアンモニア濃度測定手段とを具備することを特徴とする耐炎化炉。
  2. 前記アンモニア濃度測定手段により測定されたアンモニア濃度に基づいて、前記耐炎化炉内の温度を制御する温度制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の耐炎化炉。
  3. 前記温度制御手段が、下記式(1)に基づいて、前記耐炎化炉の新たな設定温度を演算する設定温度演算手段を具備することを特徴とする請求項2に記載の耐炎化炉。
    S1=TS0/{1−TS0 ×ln(C0V/CS0)/(E/R)}・・・(1)
    (但し、式(1)中において、C0Vは現在のアンモニア濃度、TS0は過去のある一定期間における設定温度の平均値、CS0は過去のある一定期間におけるアンモニアの平均濃度、TS1は新たな設定温度を各々表す。また、Eは活性化エネルギー、Rは気体定数を表す。)
  4. 前記温度制御手段が、下記式(2)に基づいて、前記耐炎化炉の新たな設定温度を演算する設定温度演算手段を具備することを特徴とする請求項2に記載の耐炎化炉。
    S1=TS0+α × (C0V−CS0)/CS0・・・(2)
    (但し、式(2)中において、C0Vは現在のアンモニア濃度、TS0は過去のある一定期間における設定温度の平均値、CS0は過去のある一定期間におけるアンモニアの平均濃度、TS1は新たな設定温度を各々表す。また、αは定数であり、約20程度である。)
  5. 前記炭素前駆体が発火した際に、強制的に消火する強制消火手段をさらに具備すると共に、
    前記強制消火手段を、前記アンモニア濃度測定手段により測定されたアンモニア濃度が所定の値以上の時に作動させることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の耐炎化炉。
  6. 前記強制消火手段が、前記炭素前駆体に散水する散水手段であることを特徴とする請求項5に記載の耐炎化炉。
  7. 前記炭素前駆体がポリアクリロニトリルを主成分とすることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の耐炎化炉。
  8. 炭素前駆体を酸化性雰囲気中で加熱することにより、炭素前駆体に耐炎化処理を施すことが可能な耐炎化炉の温度制御方法であって、
    前記耐炎化炉内のアンモニア濃度を少なくとも1箇所測定し、
    測定されたアンモニア濃度に基づいて、前記耐炎化炉内の温度を制御することを特徴とする耐炎化炉の温度制御方法。
  9. 下記式(1)に基づいて、前記耐炎化炉内の新たな設定温度を演算することにより、前記耐炎化炉内の温度を制御することを特徴とする請求項8に記載の耐炎化炉の温度制御方法。
    S1=TS0/{1−TS0 ×ln(C0V/CS0)/(E/R)}・・・(1)
    (但し、式(1)中において、C0Vは現在のアンモニア濃度、TS0は過去のある一定期間における設定温度の平均値、CS0は過去のある一定期間におけるアンモニアの平均濃度、TS1は新たな設定温度を各々表す。また、Eは活性化エネルギー、Rは気体定数を表す。)
  10. 下記式(2)に基づいて、前記耐炎化炉内の新たな設定温度を演算することにより、前記耐炎化炉内の温度を制御することを特徴とする請求項8に記載の耐炎化炉の温度制御方法。
    S1=TS0+α × (C0V−CS0)/CS0・・・(2)
    (但し、式(2)中において、C0Vは現在のアンモニア濃度、TS0は過去のある一定期間における設定温度の平均値、CS0は過去のある一定期間におけるアンモニアの平均濃度、TS1は新たな設定温度を各々表す。また、αは定数であり、約20程度である。)
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