JP3889580B2 - 無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、燃料電池システムに使用する水素ガスを貯蔵するために採用されるもので、水素ガスのように分子量の小さなガスを高圧で充填するための無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の無給油往復動式コンプレッサには、高差圧で漏れの少ない長寿命のピストンシール構造の要望があり、このピストンシール構造として、非接触式ラビリンスシール方式(第1方式)や、エンドレス接触シール方式(第2方式)や、合口のある接触ピストンシール方式(第3方式)等が採用されている。
【0003】
しかしながら、第1方式は、寿命の点では有利であるが、漏れを少なくするためにはピストンとシリンダとの間の厳密な隙間管理が求められ、このため両者に対して非常に精密な加工を必要とするばかりでなく、熱膨張の影響もあり、漏れを少なくすることが困難である。
【0004】
また、第2方式は、漏れを非常に少なくすることができるが、複数のシールで差圧を分担させることが困難であるため、大きな差圧を1本のシールで止めることになるので、該シールに非常に高い面圧がかかり、このため寿命が極端に短くなる。
【0005】
さらに、第3方式は、所謂ピストンリングであるが、円周の一カ所以上に合口隙間があるために必ず一定量の漏れがあるので、高い差圧を保持するためには、多数のピストンリングを装着する必要がある。
【0006】
このように従来のピストンシール構造は、いずれも満足するものではないが、第3方式は、合口隙間からの漏れをできるだけ少なくすることを主眼において様々な工夫がなされて実行されている。
【0007】
すなわち、この改良した第3方式は、例えば、合口を斜めにカットしたアングルカットリングや、合口を階段状にカットしたステップカットリングを用いることにより、合口の漏れ道を幾分塞ぐことができるし、あるいは2本のリングを重ねて合口を位置ずれさせたダブルリンクを用いることにより合口の漏れ道を幾分塞ぐことができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この改良した第3方式に基づくピストンシール構造(以下、従来のピストンシール構造、と略称する)は、ガス漏れを少なくすればする程、1本のピストンリングにかかる面圧が高くなり、ひいては寿命が短くなると言う二律背反を解決することができず、このため得られるシール機能には限界がある、という課題を有している。
【0009】
また、従来のピストンシール構造は、ピストンが鉄、アルミニウム等の金属で構成されているので、シリンダとの接触事故を避けるためにライダーリングを使用してシリンダとの間隔を大きく保つ必要があり、このため前記間隔によってピストンリングにかかる曲げモーメントが大きくなり、厚みの薄いピストンリングでは強度的に保たないため、ピストンリングの厚みを薄くすることには限界がある。
【0010】
したがって、従来のピストンシール構造は、ピストンを長くしないと多数のピストンリングを装着することができず、このため装置の大型化およびコスト高を招く、という課題をも有している。
【0011】
そこで、この発明は、十分なシール機能と長寿命化とを共に達成することができると共に、ピストンリングの厚みの薄化が可能で、ひいては装置の小型化および低コスト化をも達成することができる無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、ピストンの表面に、その軸方向に沿って適宜の間隔で複数個設けられたリング溝の各々に、合口のある接触ピストンリングを納めて構成される無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造において、
前記ピストンの前記リング溝の設けられる機能部分であって、その少なくとも高圧側部分の外周面部分と、前記外周面部分に対向するシリンダの内周面部分のいずれか一方を、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン等の低摩擦材で構成すると共に、他方を適宜の固体材料で構成し、前記ピストンの前記リング溝の設けられる機能部分を、圧力差の方向に沿って高圧側部分と低圧側部分とに少なくとも2分割すると共に、前記高圧側部分と前記低圧側部分とを圧力差の方向に直列に連結して構成したことを特徴とする。
【0013】
このため、請求項1の発明では、ピストンのリング溝の設けられる機能部分であって、その少なくとも高圧側部分の外周面部分と、この外周面部分に対向するシリンダの内周面部分のいずれか一方を、低摩擦材で構成したので、ピストンとシリンダとの接触事故を未然に防いで、シリンダに対するピストンの摺動を確保することができる。
【0014】
さらに、ピストンのリング溝の設けられる機能部分を、高圧側部分から低圧側部分に亘って複数に分割したので、各分割部分はそれぞれの構成する材料を相互に独立して適宜選択することができ、これにより材料選択幅が拡大する。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記低圧側部分のピストンは、鉄またはアルミニウム等の金属材からなる無垢材で構成されると共に、前記高圧側部分のピストンよりも小径に形成されていることを特徴とする。
このため、請求項2の発明では、ピストンの低圧側部分を高圧側部分よりも小径に形成したので、鉄またはアルミニウム等の金属材で構成した低圧側部分とシリンダとの接触事故を防ぐことができる。
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記外周面部分は、前記ピストンを構成する前記低摩擦材からなる無垢材の表面で構成したことを特徴とする。
【0015】
このため、請求項3の発明では、低摩擦材からなる外周面部分は、コーティング工程を経ることなく、ピストンの基礎材料そのもので構成することができる。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項1または2に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記外周面部分は、前記ピストンを構成する基礎部分の表面にコーティングした前記低摩擦材で構成したことを特徴とする。
【0017】
このため、請求項4の発明では、ピストンの基礎部分は、特定の材料に限定されるものでなく適宜選択することができるので、材料の選択幅が拡大する。
【0018】
また、請求項5の発明は、請求項1または2に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記内周面部分は、前記シリンダを構成する前記低摩擦材からなる無垢材の表面で構成したことを特徴とする。
【0019】
このため、請求項5の発明では、低摩擦材からなる内周面部分は、コーティング工程を経ることなく、シリンダの基礎材料そのもので構成することができる。
【0020】
また、請求項6の発明は、請求項1または2に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記内周面部分は、前記シリンダを構成する基礎部分の表面にコーティングした前記低摩擦材で構成したことを特徴とする。
【0021】
このため、請求項6の発明では、シリンダの基礎部分は、特定の材料に限定されるものでなく適宜選択することができるので、材料の選択幅が拡大する。
また、請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記ピストンの低圧側部分の末端側に設けられる少なくとも1個のリング溝に、エンドレス接触ピストンリングを装着して構成したことを特徴とする。
【0022】
このため、請求項7の発明では、エンドレス接触ピストンリングをピストンの低圧側部分の末端側に装着したので、エンドレス接触ピストンリングにかかる面圧を小さくして該ピストンリングの摩耗を抑制することができると共に、エンドレス接触ピストンリングによりガス漏れを極力抑制することができる。
【0023】
また、請求項8の発明は、請求項7に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記エンドレス接触ピストンリングの高圧側と低圧側を連通させるように、保圧維持が可能な適度な漏れを生じさせるガス通路が設けられていることを特徴とする。
【0024】
このため、請求項8の発明では、エンドレス接触ピストンリングと云えども、ガス通路を形成することにより、他のピストンリングとの差圧の分担バランスをとることができるので、複数本の装着が可能となる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の関連技術および実施の形態を図面に基づき説明する。
【0026】
図1は、この発明の第1関連技術としての無給油往復動式コンプレッサAのピストンシール構造1を示す。このピストンシール構造1は、ピストン2の表面に、その軸方向に沿って適宜の間隔で複数個設けられたリング溝3の各々に、合口のある接触ピストンリング4を納めて大略構成されている。
【0027】
その上、ピストンシール構造1は、ピストン2のリング溝3の設けられる機能部分5であって、シリンダ6の内周面部分6aに接近する外周面部分7を、低摩擦材で構成すると共に、外周面部分7と内周面部分6aとの片隙間dを0.03mm以下になるように設定される。なお、図1中、符号50はピストン室であり、符号51および52は、それぞれピストン室50に設けられた吸入口および排出口であり、符号G1およびG2は、それぞれ吸入ガスおよび排出ガスである。
【0028】
合口のある接触ピストンリング4は、ポリテトラフルオロエチレンを用いてリング状に成形されるもので、例えば、図2に示すように円周の一部を階段状にカットした合口4aを有するステップカットリングや、図3に示すように円周の一部を垂直にカットした合口4bを有する平行カットリングを使用することができる。
【0029】
また、低摩擦材としては、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、あるいはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が用い得る。
【0030】
ピストンシール構造1では、外周面部分7は、ピストン2を構成する基礎部分8の表面にコーティングした低摩擦材で構成されており、ピストン2の高圧側末端部5aを除いた機能部分5の、シリンダ6の内周面部分6aに接近する全面に形成されている。基礎部分8は、例えば鉄またはアルミニウム等の金属材を用いて形成される。ピストン2の高圧側末端部5aは、その機能部分5よりも幾分小径で、基礎部分8を露出させたままの状態で形成されている。なお、ピストン2の高圧側部分とは、ピストン室50の吸入口51および排出口52寄りのピストン2の部分を云い、その低圧側部分とは、前記吸入口51および排出口52から遠ざかるピストン2の部分を云う。
【0031】
また、シリンダ6は、鉄またはアルミニウム等の金属材を含む適宜の固体材料により形成されている。
【0032】
このように構成されたピストンシール構造1を備えた無給油往復動式コンプレッサAは、クランク軸(図示せず)を介してピストン2を、矢印方向に直線往復運動させることにより、吸入ガスG1を吸入口51からピストン室50内に吸入すると共に、高差圧でピストン室50から排出口52を経て排出ガスG2として排出することができる。
【0033】
このとき、ピストンシール構造1は、ピストン2のリング溝3の設けられる機能部分5であって、シリンダ6の内周面部分6aに接近する外周面部分7を、低摩擦材で構成したので、ピストン2とシリンダ6との接触事故を未然に防いで、シリンダ6に対するピストン2の摺動を確保することができる。
【0034】
また、ピストン2の外周面部分7とシリンダ内周面部分6aとの片隙間を0.03mm以下になるように設定したので、ラビリンスシール作用を奏することができると共に、ピストンリング4の1本当たりの面圧を低く抑制することができる。この面圧を低く抑制した分、ピストンリング4の1本当たりの厚みを薄くすることができ、薄くした分、ピストンリング4の装着本数を増やすことができる。そして、ピストンリング4の装着本数を増やすことによって、ピストンリング4の1本当たりに掛かる差圧を少なくすることができる。これによりガスの漏れ量を減少させることができる。
【0035】
具体的には、ピストンリング4は、約1.25mmの厚さに設定でき、ピストン径20mm未満で、ピストン長さ10mm当たり3本以上配置することができ、これによりピストンシール構造1は、排出ガスG2の圧力を35MPaにまですることができる。
【0036】
因みに、従来のピストンシール構造では、ピストンの外周面部分とシリンダ内周面部分との片隙間が0.05〜0.2mm、ピストンリングの厚さが3mm以上となっており、排出ガスの圧力を精々25MPaにまですることができるに過ぎない。
【0037】
また、ピストンシール構造1は、外周面部分7を、ピストン2を構成する基礎部分8の表面にコーティングした低摩擦材で構成したので、基礎部分8を構成する金属材料を、特定の材料に限定されるものでなく適宜選択することができ、その選択幅が拡大する。このとき、シリンダ6を構成する材料も又、特定の材料に限定されるものでなく適宜選択することができ、その選択幅が拡大する。
【0038】
図4は、この発明の第2関連技術としての無給油往復動式コンプレッサAのピストンシール構造10を示す。このピストンシール構造10は、ピストン2のシリンダ内周面部分6aに接近する外周面部分9を、コーティングを施さないピストン2の表面で構成した点が異なるだけで、他の構成はピストンシール構造1と同様に構成されている。このため、同一構成部材は、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
すなわち、ピストンシール構造10における外周面部分9は、ピストン2を構成する低摩擦材からなる無垢材の表面で構成されている。
【0040】
このため第2関連技術は、前述した第1関連技術と同様の作用効果を奏することができることは勿論のこと、低摩擦材からなる外周面部分9を、コーティング工程を経ることなく、ピストン2の基礎材料そのもので構成することができるので、工程の簡略化をも図ることができる。
【0041】
図5は、この発明の第3関連技術としての無給油往復動式コンプレッサAのピストンシール構造11を示す。このピストンシール構造11は、ピストン2をコーティングを施さない基礎部分8のみで構成すると共に、シリンダ6を低摩擦材、例えばセラミックスで形成した点が異なるだけで、他の構成はピストンシール構造1と同様に構成されている。このため、同一構成部材は、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
すなわち、ピストンシール構造11では、ピストン2は、例えば鉄、アルミニウム等の金属材からなる無垢材で構成されており、シリンダ6は、セラミックスからなる無垢材で構成されている。このためシリンダ6の内周面部分6aは、セラミックスからなる無垢材の表面で構成されている。
【0043】
このため第3関連技術は、前述した第1関連技術と同様の作用効果を奏することができることは勿論のこと、低摩擦材からなる内周面部分6aを、コーティング工程を経ることなく、シリンダ6の基礎材料そのもので構成することができるので、工程の簡略化をも図ることができる。このとき、ピストン2を構成する材料は、特定の材料に限定されるものでなく適宜選択することができ、その選択幅が拡大する。
【0044】
また、第3関連技術は、シリンダ6の内周面部分6aは、シリンダ6を構成する基礎部分の表面にコーティングした低摩擦材で構成することもできる。この場合は、前述した第3関連技術と同様の作用効果に加えて、シリンダ6を構成する基礎部分の材料は、特定の材料に限定されるものでなく適宜選択することができ、その選択幅が拡大する。
【0045】
図6は、この発明の第4関連技術としての無給油往復動式コンプレッサAのピストンシール構造12を示す。このピストンシール構造12は、ピストン2の機能部分5を高圧側部分5bと低圧側部分5cとに分けてそれぞれ異なる構成にした点が相違するだけで、他の構成はピストンシール構造1と同様に構成されている。このため、同一構成部材は、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0046】
すなわち、ピストンシール構造12では、ピストン2の機能部分5の高圧側部分5bは、基礎部分8の表面を低摩擦材でコーティングして構成される外周面部分7を有して、ピストンシール構造1と同様に構成されており、かつその低圧側部分5cは、基礎部分8を露出させたままの状態で形成されている。
【0047】
そして、このピストンシール構造12では、高圧側部分5bのリング溝3に装着されたピストンリング4が、従来のライダーリングの機能を発揮してピストン2の姿勢を保つことができる。
【0048】
このため第4関連技術は、前述した第1関連技術と同様の作用効果を奏することができることは勿論のこと、低摩擦材でコーティングする面積が小さくなるので、その分コストの低減化を達成することができる。
【0049】
図7は、この発明の第1実施形態としての無給油往復動式コンプレッサAのピストンシール構造13を示す。このピストンシール構造13は、ピストン2の機能部分5を、高圧側部分15と低圧側部分16とに分割して形成したことを特徴としている。
【0050】
すなわち、ピストンシール構造13は、ピストン2の機能部分5を、高圧側部分15と低圧側部分16とに分割して形成すると共に、高圧側部分15と低圧側部分16とを圧力差の方向に直列に連結して構成されている。すなわち、ピストン室50の吸入口51および排出口52寄りが高圧側で高圧側部分15が位置しており、この高圧側部分15の吸入口51および排出口52と反対側の隣接部位に低圧側部分16が位置している。
【0051】
本実施形態では、高圧側部分15および低圧側部分16は、共に円筒体形状に形成されており、それぞれの中心孔15aおよび16aに支持軸2aを挿通すると共に、低圧側部分16の下端面を支持軸2aのフランジ部2bに当接させ、かつ高圧側部分15の上端面から突出した支持軸2aのねじ部2cにワッシャ18を挿通すると共に、ねじ部2cに螺合するナット17による締め付けにより、支持軸2aに結合されている。
【0052】
このとき、少なくとも高圧側部分15は、シリンダ6の内周面部分6aに接近する外周面部分を、低摩擦材を用いて形成される。本実施形態では、高圧側部分15は、前述したピストンシール構造10のように、低摩擦材(例えば、セラミックス)の無垢材を用いて形成されているが、前述したピストンシール構造1のように、コーティングした低摩擦材で構成される外周面部分7で構成することもできる。
【0053】
そして好ましくは、本実施形態のように、低圧側部分16は、鉄またはアルミニウム等の金属材からなる無垢材で構成されると共に、高圧側部分15よりも小径に形成される。例えば、高圧側部分15は、外径11.98mmで形成されるとき、低圧側部分16は、外径11.90mmで形成される。このときピストン2の機能部分5は、高圧側部分15の外周面部分とシリンダ6の内周面部分6aとの片隙間dが0.03mm以下になるように設定される。本実施形態では、リング溝3および合口のある接触ピストンリング4は、前述したピストンシール構造1と同様に構成されている。
【0054】
本実施形態によれば、ピストン2の機能部分5の、高圧側部分15と低圧側部分16とは、それを構成する材料を相互に独立して適宜選択することができ、これにより材料選択幅が拡大し、ひいては設計自由度の拡大を図ることができる。
【0055】
また、低圧側部分16を高圧側部分15のよりも小径に形成したので、低圧側部分16とシリンダ6との接触事故を防ぐことができると共に、低圧側部分16を鉄またはアルミニウム等の金属材で構成することができ、これによりコストの低減化を図ることができる。
【0056】
また、この第1実施形態の変形例として、ピストン2の高圧側部分15の外周面部分に対向するシリンダ6の内周面部分6aを低摩擦材(例えば、セラミックス)で構成し、ピストン2の高圧側部分15を適宜の金属材(例えば、鉄、またはアルミニウム)で構成することもできる。この変形例の場合は、前述した第1実施形態の作用効果に加えて、ピストン2の材料の選択幅が拡大するメリットがある。
【0057】
図8は、この発明の第5関連技術としての無給油往復動式コンプレッサAのピストンシール構造14を示す。このピストンシール構造14は、エンドレス接触ピストンリング20を納めて構成した点が異なるだけで、他の構成はピストンシール構造10と同様に構成されている。このため、同一構成部材は、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0058】
すなわち、ピストンシール構造14は、ピストン2の機能部分5の低圧側の末端部分に設けられるリング溝21に、エンドレス接触ピストンリング20を納めて構成されている。
【0059】
第5関連技術では、ピストン2の機能部分5は、低摩擦材からなる無垢材で形成されており、その本体部22から分割して形成されている。機能部分5は、その低圧側端面の略中央部に凸形状に形成される雄ねじ部5dを、本体部22の高圧側端面の略中央部に凹形状に形成される雌ねじ部22aに螺合することにより本体部22に結合されるようになっている。リング溝21は、この機能部分5の結合により、機能部分5の低圧側端面と本体部22の高圧側端面との間に形成される。
【0060】
また、エンドレス接触ピストンリング20としては、図10及び図11に示す合口の無いものが用いられる。図10に示すピストンリング20は、矩形状断面のポリテトラフルオロエチレン製リング体で構成されており、図11に示すピストンリング20は、内側にV字状断面の板ばね23を備えたV字状断面のポリテトラフルオロエチレン製リング体で構成されている。そして、エンドレス接触ピストンリング20は、結合前の機能部分5の雄ねじ部5dに挿入した後、機能部分5を本体部22に結合させることによって、ピストン2に装着される。
【0061】
この第5関連技術によれば、エンドレス接触ピストンリング20は、ピストン2の機能部分5の低圧部分の末端側に配置したので、ピストンリング20にかかる面圧が小さくなり、このためピストンリング20の摩耗を抑制することができ、ひいては装置の長寿命化を図ることができる。さらには、エンドレス接触ピストンリング20によりガス漏れを極力抑制することができ、これにより排出ガスG2の高圧力を確保することができる。
【0062】
図9は、この発明の第6関連技術としての無給油往復動式コンプレッサAのピストンシール構造30を示す。このピストンシール構造30は、エンドレス接触ピストンリング20の高圧側と低圧側を連通させるようにガス通路25が設けられている点が異なるだけで、他の構成はピストンシール構造14と同様に構成されている。このため、同一構成部材は、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0063】
すなわち、ピストンシール構造30では、エンドレス接触ピストンリング20が装着されるリング溝21には、保圧維持が可能な適度な漏れを生じさせるガス通路25が設けられている。
【0064】
第6関連技術では、エンドレス接触ピストンリング20が装着される部分のピストン2は、該ピストンリング20の装着のし易さのためにリング溝21が解放されるように分割可能に構成されており、かつガス通路25は各リング溝21毎に形成されている。分割部分は、雄ねじ部5dを雌ねじ部22aに螺合することにより連結することができる。ガス通路25は、リング溝21の奥壁のエンドレス接触ピストンリング20で覆われない部分に開口する第1開口部25aと、ピストン2の外周面に開口する第2開口部25bとを連通して形成されている。第6関連技術では、エンドレス接触ピストンリング20は、ピストン2の機能部分5の低圧側部分に2本装着されている。
【0065】
この第6関連技術によれば、エンドレス接触ピストンリング20と云えども、ガス通路25を形成することにより、他のピストンリング4との差圧の分担バランスをとることができるので、複数本の装着が可能となるばかりでなく、排出ガスG2の一層の高圧化を確保することができると共に、摩耗を少なくして寿命の長期化を図ることができる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明してきたように、請求項1の発明によれば、ピストンのリング溝の設けられる機能部分であって、その少なくとも高圧側部分の外周面部分と、前記外周面部分に対向するシリンダの内周面部分のいずれか一方を、低摩擦材で構成したので、ピストンとシリンダとの接触事故を未然に防いで、シリンダに対するピストンの摺動を確保することができること、ラビリンスシール作用を奏することができること、およびピストンリング1本当たりの厚みを薄くしてピストンリングの装着本数を増やすことによって、ピストンリング1本当たりの差圧を少なくしてガスの漏れ量を減少させることができることにより、十分なシール機能と長寿命化とを共に達成することができる。
【0067】
その上、請求項1の発明によれば、ピストンリングの厚みの薄化により、装置の小型化および低コスト化をも達成することができる。
さらに、ピストンの機能部分の、高圧側部分と低圧側部分とは、それを構成する材料を相互に独立して適宜選択することができ、これにより、請求項1〜5のいずれか1項の発明の効果に加えて、材料選択幅が拡大し、ひいては設計自由度の拡大を図ることができる。
また、請求項2の発明によれば、ピストンの低圧側部分を高圧側部分よりも小径に形成したので、低圧側部分のピストンとシリンダとの接触事故を防ぐことができ、これにより請求項1の発明の効果に加えて、一層の長寿命化を図ることができると共に、低圧側部分のピストンを鉄またはアルミニウム等の金属材で構成したので、コストの低減化をも図ることができる。
また、請求項3の発明によれば、低摩擦材からなる外周面部分は、コーティング工程を経ることなく、ピストンの基礎材料そのもので構成することができるので、請求項1または2の発明の効果に加えて、工程の簡略化を図ることができる。
【0068】
また、請求項4の発明によれば、ピストンの基礎部分は、特定の材料に限定されるものでなく適宜選択することができるので、請求項1または2の発明の効果に加えて、ピストン材料の選択幅が拡大し、ひいては設計自由度の拡大を図ることができる。
【0069】
また、請求項5の発明によれば、低摩擦材からなる内周面部分は、コーティング工程を経ることなく、シリンダの基礎材料そのもので構成することができるので、請求項1または2の発明の効果に加えて、工程の簡略化を図ることができ、かつピストンは、特定の材料に限定されるものでなく適宜選択することができるので、材料の選択幅が拡大し、ひいては設計自由度の拡大を図ることができる。
【0070】
また、請求項6の発明によれば、シリンダの基礎部分は、特定の材料に限定されるものでなく適宜選択することができるので、請求項5の発明の効果に加えて、シリンダ材料の選択幅が拡大し、ひいては設計自由度の拡大を図ることができる。
【0071】
また、請求項7の発明によれば、エンドレス接触ピストンリングにかかる面圧を小さくして該ピストンリングの摩耗を抑制することができると共に、エンドレス接触ピストンリングによりガス漏れを極力抑制することができ、これにより請求項1〜6のいずれか1項の発明の効果に加えて、排出ガスの一層の高圧化を確保することができる。
【0072】
また、請求項8の発明によれば、エンドレス接触ピストンリングを複数本装着することが可能となるので、請求項7の発明の効果に加えて、排出ガスの一層の高圧化を確保することができると共に、エンドレス接触ピストンリングの摩耗を少なくして寿命の長期化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1関連技術としての無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造を示す概略断面図である。
【図2】 図1のピストンシール構造に適用される合口のある接触ピストンリングで、(a)は平面図、(b)は(a)の側面図である。
【図3】 図1のピストンシール構造に適用される他の合口のある接触ピストンリングで、(a)は平面図、(b)は(a)の側面図である。
【図4】 本発明の第2関連技術としての無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造を示す概略断面図である。
【図5】 本発明の第3関連技術としての無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造を示す概略断面図である。
【図6】 本発明の第4関連技術としての無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造を示す概略断面図である。
【図7】 本発明の第1実施形態としての無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造を示す概略断面図である。
【図8】 本発明の第5関連技術としての無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造を示す概略断面図である。
【図9】 本発明の第6関連技術としての無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造を示す一部概略断面図である。
【図10】 図8のピストンシール構造に適用されるエンドレス接触ピストンリングで、(a)は平面図、(b)は(a)のXb−Xb線に沿う断面図である。
【図11】 図9のピストンシール構造に適用される他のエンドレス接触ピストンリングで、(a)は平面図、(b)は(a)のXIb−XIb線に沿う断面図、(c)は要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1、10、11、12、13、14、30 ピストンシール構造
2 ピストン
3、21 リング溝
4 ピストンリング(合口のある接触ピストンリング)
4a、4b 合口
5 機能部分
5b、15 高圧側部分
5c、16 低圧側部分
6 シリンダ
6a 内周面部分(シリンダの)
7、9 外周面部分
8 基礎部分
20 エンドレス接触ピストンリング
25 ガス通路
A 無給油往復動式コンプレッサ
Claims (8)
- ピストンの表面に、その軸方向に沿って適宜の間隔で複数個設けられたリング溝の各々に、合口のある接触ピストンリングを納めて構成される無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造において、
前記ピストンの前記リング溝の設けられる機能部分であって、その少なくとも高圧側部分の外周面部分と、前記外周面部分に対向するシリンダの内周面部分のいずれか一方を、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン等の低摩擦材で構成すると共に、他方を適宜の固体材料で構成し、
前記ピストンの前記リング溝の設けられる機能部分を、圧力差の方向に沿って高圧側部分と低圧側部分とに少なくとも2分割すると共に、前記高圧側部分と前記低圧側部分とを圧力差の方向に直列に連結して構成したことを特徴とする無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造。 - 請求項1に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記低圧側部分のピストンは、鉄またはアルミニウム等の金属材からなる無垢材で構成されると共に、前記高圧側部分のピストンよりも小径に形成されていることを特徴とする無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造。 - 請求項1または2に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記外周面部分は、前記ピストンを構成する前記低摩擦材からなる無垢材の表面で構成したことを特徴とする無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造。 - 請求項1または2に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記外周面部分は、前記ピストンを構成する基礎部分の表面にコーティングした前記低摩擦材で構成したことを特徴とする無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造。 - 請求項1または2に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記内周面部分は、前記シリンダを構成する前記低摩擦材からなる無垢材の表面で構成したことを特徴とする無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造。 - 請求項1または2に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記内周面部分は、前記シリンダを構成する基礎部分の表面にコーティングした前記低摩擦材で構成したことを特徴とする無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記ピストンの低圧側部分の末端側に設けられる少なくとも1個のリング溝に、エンドレス接触ピストンリングを装着して構成したことを特徴とする無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造。 - 請求項7に記載の無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造であって、
前記エンドレス接触ピストンリングの高圧側と低圧側を連通させるように、保圧維持が可能な適度な漏れを生じさせるガス通路が設けられていることを特徴とする無給油往復動式コンプレッサのピストンシール構造。
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