JP3889343B2 - 可変フィルタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可変フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
無線通信技術の発達、新方式への切り替えに伴い、複数の送受信システムに対応する通信装置の需要がますます高まっている。複数の送受信システムに対応するためには、通過特性の異なるフィルタをいくつも用いて送受信装置を形成しなくてはならないが、この方法は通信装置の小型化という観点から適切ではない。
【0003】
そこで適当な外部制御手段を用いてフィルタの通過特性を可変にできる可変フィルタを用いれば、素子数を減らすことができるので通信装置の小型化を図るうえで期待されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、複数の送受信システムに対応する通信装置の需要が高まりつつあり、通過特性を可変にできる可変フィルタが期待されている。
【0005】
本発明は、適当な外部制御手段を用いて通過特性を可変にできる新たな可変フィルタを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、直列接続の薄膜圧電共振器と、並列接続の薄膜圧電共振器とを組み合わせた可変フィルタにおいて、
前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の少なくとも一つは共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、この薄膜圧電共振器に印加される電圧により通過特性が制御されることを特徴とする可変フィルタを提供する。
【0007】
また、本発明は、第1及び第2の入力端子と、
第1及び第2の出力端子と、
前記第1の入力端子及び前記第1の出力端子間或いは前記第2の入力端子及び前記第2の出力端子間に直列接続された薄膜圧電共振器と、
前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子との間或いは前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子との間に並列接続された薄膜圧電波共振器と、
前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の少なくとも一つは共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、この薄膜圧電共振器に接続され、電圧を可変にする可変電圧回路とを具備し、
前記可変電圧回路により前記薄膜圧電共振器に印加される電圧を変化させ通過特性が制御されることを特徴とする可変フィルタを提供する。
【0008】
ここで通過特性とは、フィルタを通過する電磁波の通過周波数帯域の幅や波形形状、阻止帯域の幅や波形形状その他のフィルタ特性のことを言う。
【0009】
このとき、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とを一致させ、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とを共に上昇或いは下降させて、通過帯域の中心周波数を制御することができる。
【0010】
また、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とを一致させ、前記直列薄膜圧電共振器或いは前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数の間隔或いは前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数の間隔を変化させて、通過帯域幅を制御することができる。
【0011】
また、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とをほぼ一致させ、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数の間隔を変化させて、通過帯域のリップル位置或いはリップル形状を制御することができる。
【0012】
また、前記直列薄膜圧電共振器の反共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数とを一致させ、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の反共振周波数及び前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数とを共に上昇或いは下降させて、阻止帯域の中心周波数を制御することができる。
【0013】
また、前記直列薄膜圧電共振器の反共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数とを一致させ、前記直列薄膜圧電共振器或いは前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数の間隔或いは前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数の間隔を変化させて、阻止帯域幅を制御することができる。
【0014】
また、前記直列薄膜圧電共振器或いは前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とが一致したときに得られる通過帯域特性及び前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数とが一致したときに得られる全域阻止特性とを切り替えることができる。
【0015】
また、前記可変フィルタを単独或いは組み合わせて少なくとも2個以上直列に接続することができる。
【0016】
また、前記直列に接続された前記可変フィルタの間にアイソレータ或いはバッファアンプが接続することができる。
【0017】
また、前記可変フィルタを単独或いは組み合わせて少なくとも2個以上、スイッチを介して並列に接続し、前記スイッチにより前記フィルタを選択することにより、通過特性を制御することができる。
【0018】
また、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器は、単結晶或いは配向した強誘電体膜とこれを挟んだ電極とを具備することが好ましい。
【0019】
また、前記強誘電体膜が0.1°以上の配向半値幅を有することが好ましい。
【0020】
また、前記強誘電体が、チタン酸バリウムを主成分とすることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、入出力に対して直列に接続された第1の薄膜圧電共振器と、
入出力に対して並列に接続された第2の薄膜圧電共振器と、
前記第1及び第2の薄膜圧電共振器の少なくとも一方の印加電圧を変化させる可変電圧回路と、
前記可変電圧回路の電圧を変化させることによって、前記第1及び第2の薄膜圧電共振器の少なくとも一方の共振特性をシフトさせて、前記薄膜圧電共振器の通過及び遮断周波数帯を切り替えることを特徴とするスイッチングフィルタを提供する。
【0022】
また、本発明は、第1の入出力端子と、
第2の入出力端子と、
前記第1の入出力端子間に直列に接続された複数の直列薄膜圧電共振器と、
前記第1の入出力端子と前記第2の入出力端子との間に並列に接続された複数の並列薄膜圧電共振器と、
前記直列薄膜圧電共振器と前記並列薄膜圧電共振器の少なくとも一方に電圧を印加することのできる可変電圧回路と、
前記可変電圧回路の電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とが一致したときに得られる帯域通過特性及び前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数とが一致したときに得られる全域阻止特性を切り替えることを特徴とするスイッチングフィルタを提供する。
【0023】
このとき、前記直列薄膜圧電共振器と前記並列薄膜圧電共振器とを用いて多段の梯子型帯域通過フィルタ回路を形成することができる。
【0024】
前記直列薄膜圧電共振器と前記並列薄膜圧電共振器を用いて多段の格子型帯域通過フィルタ回路を形成することができる。
【0025】
また、前記薄膜圧電共振器に使用される圧電体膜がチタン酸バリウムを主成分とするペロブスカイト型構造の誘電体からなることが好ましい。
【0026】
また、本発明は、アンテナと、
前記アンテナに接続され、異なる周波数帯をろ波する複数のスイッチングフィルタと、
前記スイッチングフィルタのそれぞれに接続され、前記異なる周波数帯に対応する複数の周波数処理システムとを具備するマルチバンド対応の無線装置であって、
前記スイッチングフィルタが前記スイッチングフィルタを用いることを特徴とする無線装置を提供する。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく種々工夫して用いることができる。
【0028】
先ず、本発明者らは、可変フィルタを形成するための薄膜圧電共振器の圧電体として、どのような材料を用いればよいかを検討した。その結果、強誘電体膜を用いれば分極が大きな電界依存性をもち、かつ自発分極が生じているため電圧を印加しなくとも圧電性を示し、材料定数が大きな電圧依存性を示すことを見出した。
【0029】
特に、厚み縦振動を利用した共振を利用するため、分極は膜厚方向に揃っている必要がある。そのためには膜厚方向に配向した強誘電体薄膜が好ましい。また、膜厚方向に配向したエピタキシャル成長した強誘電体薄膜を用いることがより好ましいことが分かった。
【0030】
また、強誘電体膜の弾性定数と電気機械結合定数(圧電定数)が電界依存性をもつ。このため膜厚方向に配向した強誘電体膜を用いた薄膜圧電共振器でフィルタを形成すると通過特性を電圧で制御できることを初めて見出した。
【0031】
さらに、チタン酸バリウムやPZTなどの強誘電体は、比誘電率がAlNやZnOなどの圧電体に比べて大きいため、インピーダンス整合を考慮に入れて共振器を設計すると、サイズが小さくできるというメリットがあることが分かった。
【0032】
以下、実施形態では、圧電体としてチタン酸バリウムやPZTを膜厚方向に配向するようにエピタキシャル成長したものを用いて説明する。
【0033】
(実施形態1)
本発明者らは、帯域通過特性と全域阻止特性とを切り替えられるスイッチングフィルタについて詳細に検討を行なった。その結果、共振周波数を機械的でなく電気的に切り替える薄膜圧電共振器を用いれば、単純な回路構成で、かつ安価にマルチバンドの相互干渉、送受信信号の相互干渉及び不要ノイズを防止できる小型軽量のスイッチングフィルタを実現できることを見出した。ここで薄膜圧電共振器とは、SAWデバイスのような表面波を用いた共振器ではなく、薄膜の厚み方向の弾性波も用いた共振、すなわち薄膜をバルクとして膜全体の弾性波を用いた共振を利用した共振器のことである。薄膜圧電共振器として、薄膜バルク弾性波共振器を含む。
【0034】
薄膜の厚さとしては、共振周波数が1GHzから2GHzで、1μmから2μm程度である。今後必要とする共振周波数が高くなると、薄膜の厚さも薄くなっていく。
【0035】
以下、本発明の原理について詳述する。
【0036】
図1は、本発明に用いる薄膜圧電共振器の断面図である。
【0037】
この薄膜圧電共振器は、単結晶基板5上に、エッチングストッパー層4が形成され、このエッチングストッパー層4上に、第1の電極3、圧電体膜2及び第2の電極1からなる共振器構造が形成され、さらに単結晶基板5裏面からエッチングすることによりキャビティ(空洞)100が形成されたものである。
【0038】
この薄膜圧電共振器は、圧電体膜2の圧電効果を利用した共振器であり、単結晶基板5の裏面に形成されたキャビティ100によって、圧電振動のエネルギーが逃げないようにしている。なお、エッチングストッパー層4は、単結晶基板5にキャビティ100をエッチングにより形成する際のストッパーとして機能するほかに、エッチングストッパー層4上に形成されたエピタキシャル膜の下地層としての機能も有する。
【0039】
図2は、図1に示す薄膜圧電共振器の別の例を示す断面図であり、第1の電極3と単結晶基板5の間に空隙110を設けたものである。
【0040】
この空隙110は、第1の電極3、圧電体膜2及び第2の電極1からなる共振器の圧電振動のエネルギーが逃げないようにするためのものである。
【0041】
また、図3は、図1に示す薄膜圧電共振器のまた別の例を示す断面図である。この薄膜圧電共振器は、第1の電極3と単結晶基板5の間に、異なる音響インピーダンスを有する層を積層して構成したブラッグ反射鏡6が形成されたものである。
【0042】
このブラッグ反射鏡6も、第1の電極3、圧電体膜2及び第2の電極1からなる共振器の共振周波数を有する弾性波を反射し、エネルギーを逃さない構造となっている。
【0043】
このようにして構成された図1、図2或いは図3に示す薄膜圧電共振器は、圧電体膜2の密度、膜厚或いは第1の電極3及び第2の電極1における質量負荷の効果などによって決まる共振周波数及び反共振周波数をもち、一つの共振点付近の電気的特性は、図4のような等価回路で示される。
【0044】
図4に示すように、この等価回路は、キャパシタンスC1、抵抗R及びインダクタンスLが直列に接続され、これらにキャパシタンスC2が並列に接続されたものである。
【0045】
次に、図5に、このように接続された等価回路におけるインピーダンスの絶対値の周波数依存性を示す。
【0046】
図5に示すように、この等価回路すなわち図1乃至図3に示す薄膜圧電共振器は、極小点(共振周波数)及び極大点(反共振周波数)をもつ。
【0047】
次に、図6にて、このような特性をもつ薄膜圧電共振器を用いたスイッチングフィルタの構造及び特性について説明する。
【0048】
図6(a)は、薄膜圧電共振器を梯子型フィルタ回路に組み合わせたスイッチングフィルタを示すものであり、図6(b)は、フィルタ回路を構成する直列及び並列共振器の共振特性を示す図である。
【0049】
図6(a)に示すように、このスイッチングフィルタは、第1の入出力端子(In1、Out1)と、第2の入出力端子(In2、Out2)を有する。第1の入出力端子(In1、Out1)間には第1の導線202が接続され、これに直列に薄膜圧電共振器200が複数接続されている。
【0050】
また、第2の入出力端子(In2、Out2)間には第2の導線203が接続され、この第2の導線203と第1の導線202と並列に薄膜圧電共振器201が複数接続されている。
【0051】
図6(b)は、直列に接続された薄膜圧電共振器200と並列に接続された薄膜圧電共振器201におけるインピーダンスの絶対値の共振周波数特性を示している。
【0052】
このように直列に接続した薄膜圧電共振器200と並列に接続された薄膜圧電共振器201とは、インピーダンスの絶対値と共振周波数の特性の形はほぼ同じであるが、直列に接続した薄膜圧電共振器200の方が並列に接続した薄膜圧電共振器201よりも周波数が高い方に僅かにシフトしたものを選ぶ。
【0053】
このとき直列に接続された薄膜圧電共振器200の共振周波数と並列に接続された薄膜圧電共振器201の反共振周波数が一致するようになっている。ここで、薄膜圧電共振器の共振周波数を変えるためには、例えば圧電体膜の膜厚や電極の膜厚を変えるといった方法がある。
【0054】
図7に、このときの直列に接続された薄膜圧電共振器200と並列に接続された薄膜圧電共振器201の合成された通過特性を示す。
【0055】
図7に示すように、この合成インピーダンスは、1.7GHzから1.9GHzにピークを有する帯域通過特性が得られていることが分かる。この特性によってある周波数帯域を濾波することが可能なフィルタリングが可能となる。
【0056】
次に、直列に接続した薄膜圧電共振器200及び並列に接続した薄膜圧電共振器201の少なくとも一方に電圧を印加して、直列に接続した薄膜圧電共振器の共振周波数と並列に接続した薄膜圧電共振器の共振周波数とを一致させる。このとき直列に接続した薄膜圧電共振器の反共振周波数と並列に接続した薄膜圧電共振器の反共振周波数も一致することになる。
【0057】
図8に、このときのフィルタの通過特性を示す。
【0058】
図8に示すように、このフィルタの通過特性はほぼ全域で阻止特性を示すことが分かる。
【0059】
このように、本発明では、直列に接続された薄膜圧電共振器200の共振周波数と並列に接続された薄膜圧電共振器201の反共振周波数が一致したときに得られる帯域通過フィルタ特性及び直列に接続された薄膜圧電共振器200の共振周波数と並列に接続された薄膜圧電共振器201の共振周波数とが一致したときに得られる全域阻止特性を、電圧によって切り替え可能とすることによって、簡単な構造のスイッチングフィルタを提供できる。
【0060】
この例では、初期状態に電圧無印加で直列に接続された薄膜圧電共振器の特性と並列に接続された薄膜圧電共振器の特性がずれている状態を説明したが、初期状態にこれらの特性が一致している状態から電圧を印加することによって、これらの特性がずれている状態にすることも可能である。
【0061】
また、直列に接続された薄膜圧電共振器200及び並列に接続された薄膜圧電共振器201のいずれか一方に電圧を印加して特性をシフトさせてもいいし、両方に電圧を印加することによって特性をシフトさせてもよい。
【0062】
このように本発明では、圧電体膜にDCバイアスを印加し、分極状態を変化させて、圧電定数及び弾性定数などを変化して共振周波数を変化させることを利用している。このような効果を利用すれば、直列に接続された薄膜圧電共振器200と並列に接続された薄膜圧電共振器201の共振特性を一致させて得られる全域阻止特性と、直列に接続された薄膜圧電共振器200と並列に接続された薄膜圧電共振器201の共振特性をずらすことによって得られる帯域通過特性とをDCバイアスのみで切り替えることができるので、簡単な構成によりスイッチングフィルタを提供することができる。
【0063】
以上では、図6に示した不平衡な(unbalanced)梯子型フィルタを例にとって説明を行なったが、図9に示す平衡な(balanced)梯子型フィルタ或いは図10に示すような平衡な格子型フィルタを用いても同様の効果が得られる。
【0064】
また、スイッチングフィルタを構成する薄膜圧電共振器の段数についても、図6、図9、図10に記載の段数に限らず、帯域外減衰量を大きくするためにさらに段数を増やしても良いし、通過域での挿入損失を減らすために段数を減らしても良い。その他、本発明の主旨の範囲内であれば、目的に応じてフィルタ回路の構成を変形して用いることができる。
【0065】
次に、上述した薄膜圧電共振器に印加するDCバイアスの印加方式について説明する。
【0066】
先ず、図9に示したような平衡な梯子型フィルタの並列に接続された薄膜圧電共振器201のみに電圧を印加する方式について検討を行なった。
【0067】
単純に考えると、図9に示した回路の中で並列に接続された薄膜圧電共振器201の両端部にのみ可変電圧回路を接続すればよさそうであるが、その場合直列に接続された薄膜圧電共振器200にも電圧が印加されて、共振特性が変化してしまう。フィルタ特性の通過、阻止を最も効率的に切り替えるためには、並列に接続された薄膜圧電共振器201と直列に接続された薄膜圧電共振器200とに印加される電圧をそれぞれ独立に制御する必要があるので、並列に接続された薄膜圧電共振器201に電圧を印加する時に、直列に接続された薄膜圧電共振器200の特性が変化してしまうのは好ましくない。
【0068】
これを解決するために、図11に示すような回路構成を挙げることができる。
【0069】
図11に示すように、平衡な梯子型フィルタ回路は、第1の入出力端子(In1、Out1)と、第2の入出力端子(In2、Out2)と、第1の入出力端子(In1、Out2)間を接続した第1の導線202と、第2の入出力端子(In1、Out2)間を接続した第2の導線203と、第1の導線202に直列に接続された第1から第3の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−1、200−2、200−3)と、第2の導線203に直列に接続された第4から第6の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−4、200−5、200−6)と、第1と第2の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−1、200−2)との間を一方の端子とし第4と第5の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−4、200−5)との間をもう一方の端子とする第1の並列に接続された薄膜圧電共振器201−1と、第2と第3直列に接続された薄膜圧電共振器(200−2、200−3)との間を一方の端子とし第5と第6直列に接続された薄膜圧電共振器(200−5、200−6)との間をもう一方の端子とする第2の並列に接続された薄膜圧電共振器201−2とから構成され、さらに第1と第2の入出力端子(In1、Out1、In2、Out2)にはそれぞれキャパシタンスCとインダクタンスLからなるマッチング回路が接続されている。
【0070】
このような3段の平衡な梯子型フィルタ回路において、二つの並列に接続された薄膜圧電共振器(201−1、201−2)のみに電圧を印加するためには以下のような回路を接続すればよい。
【0071】
先ず、第1と第2並列に接続された薄膜圧電共振器(201−1、201−2)を、第1の導線202から第2の導線203に向けて電圧が印加された場合にその共振周波数がともに上昇(もしくはともに低下)するように接続する。
【0072】
次に、第1の直列に接続された薄膜圧電共振器200−1と第1の入力端子In1との間、第1と第2の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−1、200−2)の間、第2と第3の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−2、200−3)の間、そして第3の直列に接続された薄膜圧電共振器200−3と第1の出力端子Out1との間に、高周波をカットするための抵抗Rを介して、可変電圧回路の一方の端子V1を接続する。さらに、第4の直列に接続された薄膜圧電共振器200−4と第2の入力端子In2との間、第4と第5の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−4、200−5)の間、第5と第6の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−5、200−6)の間、そして第6の直列に接続された薄膜圧電共振器200−6と第2の出力端子Out2との間に、高周波をカットするための抵抗Rを介して、可変電圧回路のもう一方の端子V2を接続する。
【0073】
上述の電圧印加方式を用いると、直列に接続された薄膜圧電共振器200の全てに対して可変電圧回路が接続されているので、直列に接続された薄膜圧電共振器200には電圧が印加されず、並列に接続された薄膜圧電共振器201にのみ電圧を印加することが可能である。
【0074】
また第1と第2の入出力端子(In1、Out1、In2、Out2)にはマッチング回路が接続されているため、ポートの外部に対してはDC電圧が印加されることはない。
【0075】
上述の方式でフィルタ回路の各薄膜圧電共振器と可変電圧回路とを接続すれば、基本的なフィルタ構成を変えることなく、高周波カット用の抵抗体素子のみを付加することで、通常のフィルタ回路にスイッチング機能をもたせることができ、産業上特に有効である。
【0076】
次に、図12を用いて、平衡な梯子型フィルタの直列に接続された薄膜圧電共振器200にのみ電圧を印加する方法を説明する。
【0077】
図12に示すように、このスイッチングフィルタは、6つの直列に接続された薄膜圧電共振器200と2つの並列に接続された薄膜圧電共振器201とキャパシタンスC及びインダクタンスLからなるマッチング回路は、図11に示す平衡な梯子型フィルタ回路の構成と同じである。
【0078】
可変電圧回路との接続部及び直列に接続された薄膜圧電共振器200の「向き」、即ち電圧印加に対して共振周波数が上昇する方向のみが図11の回路と異なり、以下それらの点について説明する。
【0079】
先ず、第1と第3の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−1、200−3)を、第1の入力端子In1から第1の出力端子Out1に向けて電圧が印加された場合にその共振周波数がともに上昇するように接続し、それとは逆に第2の直列に接続された薄膜圧電共振器200−2は第1の入力端子In1から第1の出力端子Out1に向けて電圧が印加された場合にその共振周波数が低下するように接続する。
【0080】
次に、第4と第6の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−4、200−6)を、第2の入力端子In2から第2の出力端子Out2に向けて電圧が印加された場合にその共振周波数がともに上昇するように接続し、それとは逆に第5の直列に接続された薄膜圧電共振器200−5は第2の入力端子In2から第2の出力端子Out2に向けて電圧が印加された場合にその共振周波数が低下するように接続する。
【0081】
次に、第1の直列に接続された薄膜圧電共振器200−1と第1の入力端子In1との間、第2と第3の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−2、200−3)の間、第4の直列に接続された薄膜圧電共振器200−4と第2の入力端子In2との間、そして第5と第6の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−5、200−6)の間に、高周波をカットするための抵抗Rを介して、可変電圧回路の一方の端子V1を接続する。
【0082】
さらに、第1と第2の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−1、200−2)の間、第3の直列に接続された薄膜圧電共振器200−3と第1の出力端子Out1との間、第4と第5の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−4、200−5)の間、そして第6の直列に接続された薄膜圧電共振器200−6と第2の出力端子Out2との間に、高周波をカットするための抵抗Rを介して、可変電圧回路のもう一方の端子V2を接続する。
【0083】
上述の電圧印加方式を用いると、並列に接続された薄膜圧電共振器201の両端は常に同じ電位となっているため電圧が印加されず、直列に接続された薄膜圧電共振器200に印加される電圧のみを制御することが可能である。
【0084】
また第1と第2の入出力端子(In1、Out1、In2、Out2)にはキャパシタンスC及びインダクタンスLからなるマッチング回路が接続されているため、ポートの外部に対してはDC電圧が印加されることはない。
【0085】
次に、図13に示すような平衡な格子型フィルタの並列薄膜圧電共振器のみに電圧を印加する方式について説明する。
【0086】
この平衡な格子型フィルタ回路は、第1の入出力端子(In1、Out1)と、第2の入出力端子(In2、Out2)と、第1の入出力端子(In1、Out1)間を接続した第1の導線202と、第2の入出力端子間(In2、Out2)を接続した第2の導線203と、第1の導線202に直列に接続された第1の薄膜圧電共振器200−1と、第2の導線203に直列に接続された第2の薄膜圧電共振器200−2と、第1の直列に接続された薄膜圧電共振器200−1と第1の入力端子In1との間が一方の端子と接続され、第2の直列に接続された薄膜圧電共振器200−2と第2の出力端子Out2との間がもう一方の端子と接続された第1の並列に接続された薄膜圧電共振器201−1と、第2の直列に接続された薄膜圧電共振器200−2と第2の入力端子In2との間が一方の端子と接続され、第1の直列に接続された薄膜圧電共振器200−1と第1の出力端子Out1との間がもう一方の端子と接続された第2の並列に接続された薄膜圧電共振器201−2とから構成され、さらに第1と第2の入出力端子(In1、Out1、In2、Out2)にはそれぞれキャパシタンスCとインダクタンスLからなるマッチング回路が接続されている。
【0087】
上述の平衡な格子型フィルタ回路において、二つの並列に接続された薄膜圧電共振器201のみに電圧を印加するためには以下のような回路を接続すればよい。
【0088】
先ず、第1と第2の並列に接続された薄膜圧電共振器(201−1、201−2)を、第1の導線202から第2の導線203に向けて電圧が印加された場合にその共振周波数がともに上昇(もしくはともに低下)するように接続する。次に、第1の直列に接続された薄膜圧電共振器200−1と第1の入力端子In1との間、そして第1の直列に接続された薄膜圧電共振器200−1と第1の出力端子Out1との間に、高周波をカットするための抵抗Rを介して、可変電圧回路の一方の端子V1を接続する。
【0089】
さらに、第2の直列に接続された薄膜圧電共振器200−2と第2の入力端子In2との間、そして第2の直列に接続された薄膜圧電共振器200−2と第2の出力端子Out2との間に、高周波をカットするための抵抗Rを介して、可変電圧回路のもう一方の端子V2を接続する。
【0090】
上述の電圧印加方式を用いると、直列に接続された薄膜圧電共振器200の両端は常に同じ電位となっているため電圧が印加されず、並列に接続された薄膜圧電共振器201に印加される電圧のみを制御することが可能である。
【0091】
また、第1と第2の入出力端子(In1、Out1、In2、Out2)には、キャパシタンスC及びインダクタンスLからなるマッチング回路が接続されているため、ポートの外部に対してはDC電圧が印加されることはない。
【0092】
次に、図14を用いて、平衡な格子型フィルタの直列薄膜圧電共振器にのみ電圧を印加する方法を説明する。
【0093】
図14に示すように、このスイッチングフィルタは、2つの直列に接続された薄膜圧電共振器200と2つの並列に接続された薄膜圧電共振器201とキャパシタンスC及びインダクタンスLからなるマッチング回路からなる平衡な格子型フィルタ回路の構成は、図13と同じである。
【0094】
可変電圧回路との接続部及び直列に接続された薄膜圧電共振器200の「向き」、即ち電圧印加に対して共振周波数が上昇する方向のみが図13の回路と異なり、以下それらの点について説明する。
【0095】
先ず、第1の直列薄膜圧電共振器200−1を、第1の入力端子In1から第1の出力端子Out1に向けて電圧が印加された場合にその共振周波数が上昇するように接続する。次に、第2の直列に接続された薄膜圧電共振器200−2を、第2の出力端子Out2から第2の入力端子In2に向けて電圧が印加された場合にその共振周波数が上昇するように接続する。
【0096】
さらに、第1の直列に接続された薄膜圧電共振器200−1と第1の入力端子In1との間、そして第2の直列に接続された薄膜圧電共振器200−2と第2の出力端子Out2との間に、高周波をカットするための抵抗Rを介して、可変電圧回路の一方の端子V1を接続する。
【0097】
さらに、第1の直列に接続された薄膜圧電共振器200−1と第1の出力端子Out1との間、そして第2の直列に接続された薄膜圧電共振器200−2と第2の入力端子In2との間に、高周波をカットするための抵抗Rを介して、可変電圧回路のもう一方の端子V2を接続する。
【0098】
上述の電圧印加方式を用いると、並列に接続された薄膜圧電共振器201の両端は常に同じ電位となっているため電圧が印加されず、直列に接続された薄膜圧電共振器200に印加される電圧のみを制御することが可能である。
【0099】
また、第1と第2の入出力端子(In1、Out1、In2、Out2)にはキャパシタンスC及びインダクタンスLからなるマッチング回路が接続されているため、ポートの外部に対してはDC電圧が印加されることはない。
【0100】
次に、図15に示すような不平衡な梯子型フィルタの並列薄膜圧電共振器のみに電圧を印加する方式について説明する。
【0101】
図15に示すように、このスイッチングフィルタは、第1の入出力端子(In1、Out1)と、第2の入出力端子(In2、Out2)と、第1の入出力端子(In1、Out1)間を接続した第1の導線202と、第2の入出力端子(In2、Out2)間を接続した第2の導線203と、第1の導線202に直列に接続された第1から第3の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−1、200−2、200−3)と、第1と第2の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−1、200−2)との間に一方の端子が接続され、第2の導線203にもう一方の端子が接続されている第1の並列に接続された薄膜圧電共振器201−1と、第2と第3の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−2、200−3)との間に一方の端子が接続され、第2の導線203にもう一方の端子が接続されている第2の並列に接続された薄膜圧電共振器201−2とから構成され、さらに第1の入出力端子(In1、Out1)にはそれぞれキャパシタンスCとインダクタンスLからなるマッチング回路が接続されている。
【0102】
図15の不平衡な梯子型フィルタ回路において、二つの並列に接続された薄膜圧電共振器201のみに電圧を印加するためには以下のような回路を接続すればよい。
【0103】
先ず、第1と第2の並列に接続された薄膜圧電共振器(201−1、201−2)を、第1の導線202から第2の導線203に向けて電圧が印加された場合にその共振周波数がともに上昇(もしくはともに低下)するように接続する。
【0104】
次に、第1の直列に接続された薄膜圧電共振器200−1と第1の入力端子In1との間、第1と第2の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−1、200−2)の間、第2と第3の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−2、200−3)の間、そして第3の直列に接続された薄膜圧電共振器200−3と第1の出力端子Out1との間に、高周波をカットするための抵抗Rを介して、可変電圧回路の一方の端子V1を接続する。
【0105】
さらに、第2の入力端子In2と第2の出力端子Out2との間に、高周波をカットするための抵抗Rを介して、可変電圧回路のもう一方の端子V2を接続する。
【0106】
上述の電圧印加方式を用いると、直列に接続された薄膜圧電共振器200の両端は常に同じ電位となっているため電圧が印加されず、並列に印加された薄膜圧電共振器201に印加される電圧のみを制御することが可能である。
【0107】
また、第1の入出力端子(In1、Out1)には、キャパシタンスC及びインダクタンスLからなるマッチング回路が接続されているため、ポートの外部に対してはDC電圧が印加されることはない。
【0108】
次に、図16を用いて、不平衡な梯子型フィルタの並列薄膜圧電共振器にのみ電圧を印加する方法について説明する。
【0109】
図16に示すように、このスイッチングフィルタは、3つの直列に接続された薄膜圧電共振器200と2つの並列に接続された薄膜圧電共振器201とキャパシタンスC及びインダクタンスLからなるマッチング回路を構成する不平衡な梯子型フィルタ回路は、図15と同じである。
【0110】
可変電圧回路との接続部及び直列に接続された薄膜圧電共振器200の「向き」、即ち電圧印加に対して共振周波数が上昇する方向、およびDC電圧遮断用の二つのコンデンサのみが図15の回路と異なり、以下それらの点について説明する。
【0111】
先ず、第1と第3の直列薄膜圧電共振器(200−1、200−3)を、第1の入力端子In1から第1の出力端子Out1に向けて電圧が印加された場合にその共振周波数が上昇するように接続する。
【0112】
次に、第2の直列に接続された薄膜圧電共振器200−2を、第1の出力端子Out1から第1の入力端子In1に向けて電圧が印加された場合にその共振周波数が上昇するように接続する。
【0113】
さらにDC電圧を遮断する目的で、第1の並列に接続された薄膜圧電共振器201−1と第2の導線203との接続部との間に第1のコンデンサC1、第2の並列に接続された薄膜圧電共振器201−2と第2の導線203との接続部との間に第2のコンデンサC2を挿入する。
【0114】
さらに、第1の直列に接続された薄膜圧電共振器200−1と第1の入力端子In1との間、第2と第3の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−2、200−3)の間、さらに第2の並列に接続された薄膜圧電共振器201−2と第2のコンデンサC2との間に、高周波をカットするための抵抗Rを介して、可変電圧回路の一方の端子V1を接続する。
【0115】
さらに、第1と第2の直列に接続された薄膜圧電共振器(200−1、200−2)との間、第3の直列に接続された薄膜圧電共振器200−3と第1の出力端子Out1との間、そして第1の並列に接続された薄膜圧電共振器201−1と第1のコンデンサC1との間に高周波をカットするための抵抗Rを介して、可変電圧回路のもう一方の端子V2を接続する。
【0116】
上述の電圧印加方式を用いると、並列に接続された薄膜圧電共振器201の両端は常に同じ電位となっているため電圧が印加されず、直列に接続された薄膜圧電共振器200に印加される電圧のみを制御することが可能である。
【0117】
また、前記第1の入出力端子(In1、Out1)には、キャパシタンスC及びインダクタンスLからなるマッチング回路が接続され、第2の導線203には第1と第2のコンデンサ(C1、C2)が接続されているため、ポートの外部に対してはDC電圧が印加されることはない。
【0118】
また、本発明による薄膜圧電共振器に用いる圧電体材料としては、AlN、ZnO、PbTiO、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)などが適しているが、誘電率が大きい材料ほどインピーダンスマッチングを取るために必要な電極面積が小さくて済むため、小型軽量化に有利である。中でも、わずかな電圧印加で大きく共振周波数が変化するBaTiOが好ましい。
【0119】
図17に複数の薄膜圧電共振器から構成されるスイッチングフィルタの一つの好ましい実施例の回路図を示した。
【0120】
この回路は不平衡な2.5段の梯子型フィルタ回路であり、3つの直列に接続された薄膜圧電共振器11と2つの並列に接続された薄膜圧電共振器12とからなる。直列に接続された薄膜圧電共振器11の全ての電極と、第2の導線17との間には可変電圧回路が接続されており、任意の方向に電圧を印加することができる構成となっている。可変電圧回路と第1の導線16及び第2の導線17との間には高周波成分を遮断する目的で薄膜抵抗体からなる抵抗18が接続されている。
【0121】
この抵抗の大きさは、薄膜圧電共振器のインピーダンスの絶対値が最も大きくなる反共振周波数におけるインピーダンスの最大値に対して、500倍〜1000倍以上の値であれば良く、典型的には数百kΩ〜数MΩといった値となる。この抵抗値が大きすぎると、薄膜圧電共振器のキャパシタンスと抵抗値とで決まるCR時定数が大きくなり、スイッチングに要する時間が長くなる。また、フィルタ回路の出入力端子にはマッチング回路15が接続されており、特性インピーダンスが想定されるシステムに必要な値に調整されている。
【0122】
直列及び並列の薄膜圧電共振器(11、12)は全て同一の材料、構造で形成されており、電圧印加しない場合には図8に示すような遮断特性を示す。一方で、並列に接続された薄膜圧電共振器12に対して、共振周波数が低下する方向にDCバイアスを印加して、並列に接続された薄膜圧電共振器12の反共振周波数と直列に接続された薄膜圧電共振器11の共振周波数とが等しくなると、その周波数を中心周波数とする帯域通過フィルタの特性を示すようになる。
【0123】
以上のようなフィルタを構成するための薄膜圧電共振器は例えば以下のようにして製造される。
【0124】
先ず、図18に示すように、Si基板21を既知の酸化手法によって酸化し、SiO層22を厚さ600nm形成する。この上部にSrRuOからなる空洞化のための犠牲層23をスパッタ法により厚さ300nm成膜する。成膜条件は、基板温度450℃、RFパワー300Wとし、4インチセラミックターゲットを用いてアルゴン及び酸素(Ar+O)雰囲気中とした。
【0125】
次に、SrRuO犠牲層23をパターニングし、硝酸セリウムアンモニウム溶液を主成分とするエッチャントにより加工した。さらにこの上部に、第1のIrからなる電極24を同じくスパッタ法により厚さ100nm形成し、パターニング後Arミリング加工を行った。
【0126】
次に、スパッタ法によりBaTiOからなる圧電体膜25を成膜した。成膜条件は、基板温度450℃、RFパワー300Wとし、成膜速度を稼ぐため複数のターゲットを使用した。なお、成膜雰囲気はアルゴン及び酸素(Ar+O)雰囲気である。圧電体膜25の膜厚は800nmとした。
【0127】
次に、圧電体膜25をパターニング後、過酸化水素水を主成分とするエッチャントによりウェットエッチングを行った。次に、Irからなる第2の電極26を第1の電極24と同一の成膜条件により厚さ100nm成膜した。
【0128】
次に、第2の電極26をパターニングしたあとArミリングで加工した。すべての層の成膜が終了した後、加工により形成されていたヴィアホール27を通じて犠牲層SrRuO323を、硝酸セリウムアンモニウム溶液を主成分とするエッチャントにより溶解し、空洞化処理を行った。
【0129】
このように作成された薄膜圧電共振器の電気特性を、ネットワークアナライザを用いて測定したところ、2GHz近傍に共振、反共振周波数をもち、電気機械結合定数は約17%、Q値は800であった。
【0130】
上述のようにして作成された薄膜圧電共振器を、同一のSi基板上に多数作成し、その他薄膜抵抗やマッチング回路用コンデンサ、インダクタも同じ基板上にすべて薄膜技術を用いて形成した。
【0131】
これら薄膜素子を配線で図17に示すスイッチングフィルタ回路となるように接続した。これらの薄膜圧電共振器は、並列、直列ともに同一の構造をもつため、DCバイアスを印加しない場合は図8に示す全域阻止特性を示した。一方、並列に接続された薄膜圧電共振器12にのみDCバイアスを印加して、共振周波数を低下させると、図7に示す帯域通過特性を示した。
【0132】
印加したDCバイアスは2.5Vのとき最も特性の良好な帯域通過フィルタ特性を示した。
【0133】
次に、アンテナを準備し、このアンテナに、上記スイッチングフィルタを複数接続する。このときそれぞれのスイッチングフィルタは、異なる周波数帯をろ波する特性となるようにする。次に、これらスイッチングフィルタのそれぞれに異なる周波数帯に対応する複数の周波数処理システムとを接続して、マルチバンド対応の無線装置を作製した。
【0134】
このようにして作製したマルチバンド無線装置では、通過域における減衰量は従来のアンテナスイッチを介した場合よりも平均で1.5dBほど少なかった。
【0135】
このように、可変電圧回路という容易な構造によって、帯域通過特性と全域阻止特性とを切り替えることができるため、マルチバンドにおける相互干渉、送受信信号の相互干渉、不要ノイズを防止できる。
【0136】
(実施形態2)
本実施形態では、中心周波数を可変する可変フィルタを説明する。
【0137】
本実施形態においても薄膜圧電共振器は、実施形態1で説明したものと同一の工程により作製することができる。
【0138】
本実施形態の可変フィルタは、電圧無印加時には、直列薄膜圧電共振器の共振周波数と並列薄膜圧電共振器の反共振周波数を一致させる。このときある周波数を通過する帯域特性を持つ。次に、制御電圧を印加することにより、直列薄膜圧電共振器の共振周波数と、並列薄膜圧電共振器の反共振周波数を共に上昇或いは共に降下することにより、通過帯域の中心周波数を可変にすることができる。
【0139】
また、電圧印加時に直列薄膜圧電共振器の共振周波数と並列薄膜圧電共振器の反共振周波数を一致させる。このときある周波数を通過する帯域特性を持つ。次に、制御電圧を変化する或いは無印加にすることにより、直列薄膜圧電共振器の共振周波数と、並列薄膜圧電共振器の反共振周波数を共に上昇或いは共に降下することにより、通過帯域の中心周波数を可変にすることができる。
【0140】
通常、複数のシステムを一つの端末に載せたマルチバンド対応の移動体通信用の携帯端末では、帯域が異なるシステム毎に受信系を用意しなければならないが、本実施形態の中心周波数が可変の帯域通過フィルタを用いれば、一つのフィルタ回路だけでマルチバンド対応の移動体通信用の携帯端末を形成できる。
【0141】
図19に、本実施形態に関わる中心周波数を可変する可変フィルタを、平衡な格子型フィルタで構成した場合の具体的な回路図を示す。
【0142】
図19に示すように、この中心周波数可変フィルタは、第1の導線16上に、直列薄膜圧電共振器11が直列に接続されている。第2の導線17上に、直列薄膜圧電共振器11が直列に接続されている。第1の導線16及び第2の導線17の間に2個の並列薄膜圧電共振器12が並列に接続されている。
【0143】
第1の導線16において、入力端子14と直列薄膜圧電共振器11の間には、制御電圧入力端子13が接続されている。同様に、第2の導線17において、入力端子14と直列薄膜圧電共振器11の間には、制御電圧入力端子13が接続されている。
【0144】
この中心周波数可変フィルタの動作原理を、図20を用いて説明する。
【0145】
図20(a)は電圧無印加時の直列薄膜圧電共振器11及び並列薄膜圧電共振器12の共振特性を示す。
【0146】
図20(a)に示すように、直列薄膜圧電共振器11の共振周波数(下側のピーク位置)と並列薄膜圧電共振器12の反共振周波数(上側のピーク位置)が一致するように組み合わせている。
【0147】
図20(c)は、この電圧無印加時のフィルタの通過特性である。
【0148】
図20(c)に示すように、電圧無印加時には、中心周波数がf0の帯域通過フィルタ特性を示している。
【0149】
次に、図19の回路において、制御電圧入力端子13に負の電圧を印加する。直列薄膜圧電共振器11及び並列薄膜圧電共振器12の全てに対して同一の電圧が印加され、その向きは分極方向と逆向きである。また、正の電圧を印加した場合は、直列薄膜圧電共振器11及び並列薄膜圧電共振器12の全てに対して同一の電圧が印加され、その向きは分極方向と同じ向きである。
【0150】
図20(b)に示すように、電圧印加に伴い弾性定数が増加すると、直列薄膜圧電共振器11及び並列薄膜圧電共振器12の共振周波数はいずれもΔfだけ上昇する。ここで直列薄膜圧電共振器11の共振周波数と並列薄膜圧電共振器12の反共振周波数は一致したまま移動するように電圧を制御する。
【0151】
こうすることで図20(d)に示すように、中心周波数がf0+Δfの帯域通過特性を示すフィルタとなる。すなわち電圧印加後のフィルタの通過帯域は、電圧無印加時よりも高周波側にΔfシフトする。
【0152】
典型的には、直列薄膜圧電共振器11及び並列薄膜圧電共振器12に、1μmの厚さのチタン酸バリウム薄膜を用いて、これに3Vの電圧を加えると、2%程度の共振周波数の変化率が得られる。
【0153】
本実施形態では、図19に示す中心周波数可変フィルタは、例えばGSM1.8GとGSM1.9Gのように使用周波数帯が比較的近いシステムのRFのトップフィルタとして用いることができる。
【0154】
従来では、二つのRFフィルタが必要であるのが、周波数可変フィルタを用いればもともとサイズが小さい薄膜圧電共振器を用いたフィルタ一つで済むため、受動回路の大幅な小型化が実現でき、その有用性は極めて大きい。
【0155】
(実施形態3)
本実施形態では、通過周波数帯域の幅を可変する帯域幅可変フィルタを説明する。本実施形態においても薄膜圧電共振器は、実施形態1で説明したものと同一の工程により作製することができる。
【0156】
本実施形態の可変フィルタは、例えば電圧無印加時には、直列薄膜圧電共振器の共振周波数と並列薄膜圧電共振器の反共振周波数を一致するように構成しておく。次に、直列薄膜圧電共振器及び並列薄膜圧電共振器の少なくとも一方に制御電圧を印加することで、共振周波数と反共振周波数の間隔を変えることができる。このとき、直列薄膜圧電共振器の共振周波数と並列薄膜圧電共振器の反共振周波数がほぼ一致したままであれば、フィルタの中心周波数を動かさずに帯域幅だけを可変とすることが可能になる。
【0157】
電圧の印加する向きとして、強誘電体薄膜の分極が増加する向きを選べば、強誘電体薄膜の電気機械結合定数が増加し、その結果共振周波数と反共振周波数の間隔は広がる。従って、帯域通過フィルタの通過帯域幅を大きくすることが可能となる。
【0158】
なお、分極を大きくする向きに電圧を印加すると、弾性定数も変化し共振周波数が変化してしまう。従って、帯域幅が変化すると同時にフィルタの中心周波数も変化してしまう。
【0159】
このような場合は、例えば弾性定数の電圧依存性が圧電定数の電圧依存性に比べて小さい強誘電体材料を用いればよい。その一例として、例えば、若干配向に乱れをもつような強誘電体膜を用いることが好ましい。また、強誘電体膜はエピタキシャル成長した膜を使用することが好ましい。
【0160】
こうすることで分極方向が多少乱れている場合、電圧を印加して分極が揃った場合の圧電性の変化が非常に大きく、周波数変化が無視できる電圧範囲で帯域幅を可変とすることが可能になる。
【0161】
図21に、本実施形態に関わる通過周波数帯域の幅を可変する帯域幅可変フィルタを説明する。
【0162】
図21に示すように、この帯域幅可変フィルタは、第1の導線16に2個の直列薄膜圧電共振器11−1、11−2が直列に接続されている。第2の導線17に2個の直列薄膜圧電共振器11−3、11−4が接続されている。第1の導線16と第2の導線17の間に4個の並列薄膜圧電共振器12が接続されている。
【0163】
直列薄膜圧電共振器11−1及び直列薄膜圧電共振器11−2の間には、制御電圧入力端子13が接続されている。同様に、直列薄膜圧電共振器11−3及び直列薄膜圧電共振器11−4の間にも、制御電圧入力端子13が接続されている。
【0164】
この帯域幅可変フィルタの動作原理を、図22を用いて説明する。
【0165】
図22(a)は電圧無印加時の直列薄膜圧電共振器11及び並列薄膜圧電共振器12の共振特性を示す。
【0166】
図22(a)に示すように、直列薄膜圧電共振器11の共振周波数(下側のピーク位置)と並列薄膜圧電共振器12の反共振周波数(上側のピーク位置)が一致するように組み合わせている。このとき直列薄膜圧電共振器11の反共振周波数のピーク位置と並列薄膜圧電共振器12の反共振周波数のピーク位置の間隔はΔf/2である。
【0167】
図22(c)は、この電圧無印加時のフィルタの通過特性である。
【0168】
図22(c)に示すように、電圧無印加時には、通過帯域幅がΔfの帯域通過フィルタ特性を示している。
【0169】
次に、図21の回路において、制御電圧入力端子13に電圧を印加する。直列薄膜圧電共振器11及び並列薄膜圧電共振器12の全てに対して同一の電圧が印加され、その向きは強誘電体の分極方向と同じ向きである。
【0170】
強誘電体膜は、電極無印加時には若干のばらつきをもっていた分極が、全て同一の方向を向くようになり、結合定数が増加する。
【0171】
したがって図22(b)に示すように、直列薄膜圧電共振器11及び並列薄膜圧電共振器12の反共振周波数の間隔が広がる。この場合直列薄膜圧電共振器11及び並列薄膜圧電共振器12の共振周波数の間隔も広がっている。ここで直列薄膜圧電共振器11の共振周波数と並列薄膜圧電共振器12の反共振周波数は一致したまま移動するように制御する。
【0172】
この場合、共振周波数も変化してしまうが、分極がわずかに乱れた強誘電体配向膜を圧電体膜として用いることで、共振周波数の電圧依存性よりも結合定数の電圧依存性の方がはるかに大きくなるので、実質的に問題は生じない。
【0173】
こうすることで図22(d)に示すように、通過する周波数帯幅がΔf+Δf'の帯域通過特性を示すフィルタとなる。すなわち電圧印加後のフィルタの通過帯域は、電圧無印加時よりもΔf'だけ広がることになる。
【0174】
このようにしてフィルタ回路を構成したところ、制御電圧で通過帯域幅を可変にできる帯域通過フィルタを構成することができた。このようにして構成された帯域幅可変フィルタは、使用帯域幅の異なる複数のシステムを切り替えることや、情報量に応じて帯域幅を変えて対応するシステム(CDMA2000など)で使用することが可能である。
【0175】
このように、同一のフィルタ回路で帯域幅を可変にすることができれば、伝送する情報量に応じてチャネルの周波数帯域幅を変えるという今後の移動体通信で必須とされるフィルタ機能が一つの回路で実現できることになり、実用上極めて有用である。
【0176】
(実施形態4)
本実施形態では、通過帯域内のリップル形状やリップル位置を可変する可変フィルタを説明する。本実施形態においても薄膜圧電共振器は、実施形態1で説明したものと同一の工程により作製することができる。
【0177】
本実施形態の可変フィルタは、電圧無印加時には、直列薄膜圧電共振器の共振周波数と並列薄膜圧電共振器の反共振周波数を一致させる。このときある周波数を通過する帯域特性を持つ。次に、直列薄膜圧電共振器及び並列薄膜圧電共振器の少なくとも一方に制御電圧を印加することで、直列薄膜圧電共振器の共振周波数と並列薄膜圧電共振器の反共振周波数の間隔を変化させることにより、通過帯域内のリップルの位置や形状を可変とすることができる。
【0178】
また、電圧印加時には、直列薄膜圧電共振器の共振周波数と並列薄膜圧電共振器の反共振周波数を一致させる。このときある周波数を通過する帯域特性を持つ。次に、直列薄膜圧電共振器及び並列薄膜圧電共振器の少なくとも一方に制御電圧を変化或いは無印加にすることで、直列薄膜圧電共振器の共振周波数と並列薄膜圧電共振器の反共振周波数の間隔を変化させることにより、通過帯域内のリップルの位置や形状を可変とすることができる。
【0179】
こうすることで、例えば、通過帯域内にリップルが存在し、部分的にシステム要求よりも挿入損失が大きい帯域が存在したとしても、通過帯域内の使用チャネルだけは挿入損失が小さくなるように薄膜圧電共振器に電圧を印加して強誘電体を使用した直列薄膜圧電共振器の共振周波数と並列薄膜圧電共振器の反共振周波数をずらし、また別のチャネルを用いて通信を行なうときには該当するチャネルの挿入損失が小さくなるようなリップル形状になるように制御電圧を変化させるので、多少のリップルが存在してもフィルタとして使用可能になる。
【0180】
このような可変フィルタは、フィルタの可変特性を向上させるような材料を選択すると、フィルタの挿入損失が若干大きくなる場合があるが、リップル位置や形状を可変とすることで、従来は適用が難しいと考えられていた材料でも可変性を活かしたフィルタとして利用することが可能になり、材料選択の幅が広がるというメリットが得られる。また、挿入損失を小さくできる材料を用いても、リップルのないフィルタを構成した場合の最小挿入損失よりも、リップルの存在を許容しても使用チャネルだけは挿入損失が小さくなるように共振器を組み合わせる方が、最小挿入損失は小さくできるという利点がある。
【0181】
図23に、本実施形態に関わるリップル形状やリップル位置を可変にする可変フィルタを説明する。
【0182】
図23に示すように、この可変フィルタは、第1の導線16に3個の直列薄膜圧電共振器11が直列に接続されている。第1の導線16と第2の導線17の間に2個の並列薄膜圧電共振器12が接続されている。
【0183】
第1の導線16の直列薄膜圧電共振器11の全ての電極に制御電圧入力端子13−1が抵抗18を介して接続されている。
【0184】
制御電圧は並列薄膜圧電共振器12にのみ印加され、直列薄膜圧電共振器11には電圧が印加されないようになっている。
【0185】
このリップル形状やリップル位置を可変にする可変フィルタの動作原理を、図24を用いて説明する。
【0186】
図24(a)は電圧無印加時の直列薄膜圧電共振器11及び並列薄膜圧電共振器12の共振特性を示す。
【0187】
図24(a)に示すように、直列薄膜圧電共振器11の共振周波数(下側のピーク位置)と並列薄膜圧電共振器12の反共振周波数(上側のピーク位置)が一致するように組み合わせている。
【0188】
図24(c)は、この電圧無印加時のフィルタの通過特性である。
【0189】
図24(c)に示すように、電圧無印加時には、リップルのない帯域通過フィルタ特性を示している。この場合帯域の中心にもっとも挿入損失の小さい領域が存在し、真中の2本のch2及びch3が通過する。
【0190】
次に、図23の回路において、制御電圧入力端子13に電圧を印加する。
【0191】
こうすると図24(b)に示すように、直列薄膜圧電共振器11の共振周波数と並列薄膜圧電共振器12の反共振周波数を僅かにずらす。
【0192】
すると図24(d)のように、通過周波数の端の位置にリップルが存在する特性となる。
【0193】
このように並列薄膜圧電共振器12の反共振周波数と直列薄膜圧電共振器11の共振周波数において挿入損失が極小となる通過特性をもつフィルタが構成できる。
【0194】
例えば、このリップル可変帯域通過フィルタの通過帯域内に4個のチャネルが存在する場合、図24(c)のような特性を示すときは4個のチャネルのうち真中の二つの帯域のチャネル(ch2とch3)が使用でき、図24(d)のような特性を示すときは4個のチャネルのうち上下二つの帯域のチャネル(ch1とch4)が使用できる。
【0195】
このようにしてリップル形状可変帯域通過フィルタ回路を構成したところ、リップルが存在せず、使用チャネルの全てに対して常に挿入損失が要求の値以下である帯域通過フィルタを作るよりは、多少のリップルがあったとしても、使用しているチャネルだけは挿入損失が少なくなるようなリップル形状になる可変フィルタの方が、使用チャネルの挿入損失を小さく抑えることができ、またある程度の特性のばらつきを電圧制御により抑えることが可能になるので、実用上そのメリットは大きい。
【0196】
(実施形態5)
本実施形態では、遮断周波数やその帯域幅を可変とする帯域遮断フィルタを説明する。本実施形態においても薄膜圧電共振器は、実施形態1で説明したものと同一の工程により作製することができる。
【0197】
この帯域遮断フィルタは、電荷無印加時に、直列薄膜圧電共振器の反共振周波数と、並列薄膜圧電共振器の共振周波数とを一致させている。このときはある周波数帯を遮断する遮断フィルタとなっている。
【0198】
次に、電圧を印加することによって、直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数と、並列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数が、共に上昇或いは共に降下することにより、阻止帯域の中心周波数が可変となる。
【0199】
電圧印加時に直列薄膜圧電共振器の反共振周波数と、並列薄膜圧電共振器の共振周波数とを一致させ、電圧を変化或いは無印加にして、直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数と、並列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数が、共に上昇或いは共に降下してもよい。
【0200】
また、電圧を印加することによって、直列薄膜圧電共振器の共振周波数と反共振周波数の間隔及び並列薄膜圧電共振器の共振周波数と反共振周波数の間隔を変化させることにより、通過帯域幅を可変とする。
【0201】
このような構成を用いると、キャパシタンスの大きい方を直列薄膜圧電共振器として、キャパシタンスの小さい方を並列薄膜圧電共振器として用いることで、電圧を印加して直列薄膜圧電共振器の共振周波数と並列薄膜圧電共振器の反共振周波数をともに上昇させれば中心周波数も上昇し、電圧を印加して直列薄膜圧電共振器の共振周波数と並列薄膜圧電共振器の反共振周波数をともに低下させれば中心周波数も低下するため、遮断周波数を可変とする帯域通過フィルタを構成することができる。
【0202】
また、強誘電体薄膜の分極が増加する向きに電圧を印加して、その結果強誘電体薄膜の電気機械結合定数が増加すると、直列もしくは並列薄膜圧電共振器の共振−反共振周波数の間隔が広がるので、帯域遮断フィルタの遮断帯域幅を大きくすることが可能となる。
【0203】
帯域外の妨害波の周波数が変化した場合や、妨害波の存在する周波数範囲が変化した場合にも、単一のノッチフィルタ回路構成で妨害波を除くことができ、フィルタ回路の小型化に特に有利である。
【0204】
図25は、実施形態5に係わる遮断周波数可変フィルタを不平衡な梯子型フィルタで構成した場合の回路例である。
【0205】
図25において、遮断周波数可変フィルタは、第1の導線16に2個の直列薄膜圧電共振器11が直列に接続されている。第1の導線16と第2の導線17の間に1個の並列圧電共振器12が並列に接続されている。直列薄膜圧電共振器11の間に制御電圧入力端子13−1が接続されている。
【0206】
こうすることで、制御電圧を直列薄膜圧電共振器11及び並列薄膜圧電共振器12に等しく印加することが可能となる。
【0207】
図26に、この遮断周波数可変フィルタの構成を示す。
【0208】
図26(a)に示すように、この可変フィルタは、直列薄膜圧電共振器11に共振周波数が低く、インピーダンスが小さいもの、並列薄膜圧電共振器12には共振周波数が高く、インピーダンスが大きいものを用いる。
【0209】
図26(b)に示すように、直列薄膜圧電共振器11の反共振周波数と、並列薄膜圧電共振器12の共振周波数が一致している。
【0210】
図26(c)に示すように、直列薄膜圧電共振器11の反共振周波数と並列薄膜共振器12の共振周波数が一致するようにすれば、この一致する周波数の位置が遮断周波数となる帯域遮断特性が得られる。
【0211】
さらに、直列薄膜圧電共振器11と並列薄膜圧電共振器12が同じ方向に共振周波数がシフトするように制御電圧を印加すれば、遮断周波数が可変となる帯域遮断フィルタを構成することができる。
【0212】
このようにして遮断周波数可変フィルタ回路を構成し、さらに帯域通過フィルタを同じ強誘電体配向膜からなる薄膜圧電共振器で同一基板上に形成し、直列に接続したところ、所望波を通過させ、妨害波を除去するとともに、妨害波の周波数帯が多少変動しても、変動を検知して適当な制御電圧を遮断周波数可変フィルタに印加する回路を付加することで、妨害波が変動してもフィルタ後段のアンプが飽和することなく動作させることができた。
【0213】
また、ノッチ位置可変ノッチフィルタ回路を使用することにより、例えばW−CDMAの受信帯域である2110〜2170MHz帯の前後にPHS(1900MHz前後)、無線LAN(2.4MHz)の帯域が存在しているので、これらの妨害波の位置に遮断周波数を合わせ、また妨害波のチャネルが変わった時にも遮断周波数を動かして妨害波に追随させる、といった動作が可能になった。
【0214】
(実施形態6)
本実施形態は、帯域通過特性と全域遮断特性とを電圧制御で切り替えることのできるスイッチングフィルタに関するものである。本実施形態においても薄膜圧電共振器は、実施形態1で説明したものと同一の工程により作製することができる。
【0215】
このスイッチングフィルタは、直列薄膜圧電共振器の共振周波数と並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とが一致したときに得られる帯域通過特性と、直列薄膜圧電共振器の共振周波数と並列薄膜圧電共振器の共振周波数とが一致したときに得られる全域阻止特性とを、直列薄膜圧電共振器或いは並列薄膜圧電共振器の少なくとも一方に前記制御電圧を印加することにより切り替え可能である。
【0216】
このような構成を用いると、直列薄膜圧電共振器の共振周波数と、並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とが一致したときに得られる帯域通過特性と、前記強誘電体を使用した直列薄膜圧電共振器の共振周波数と、並列薄膜圧電共振器の共振周波数とが一致したときに得られる全域阻止特性とを、制御電圧だけで切り替えることができる。ここで、フィルタは常時接続されており、使用されているシステムに対応するフィルタのみ通過特性を示し、それ以外のフィルタは全域阻止特性を示すため、PINダイオードのように切り替えのために挿入されたスイッチング素子で生じる損失がなく、挿入損失の少ないフィルタが構成できるとともに、オンオフの動作が能動素子を含まないため、受動素子を集積したモジュールのみを使用すればよく、極めて小さい面積で切り替え手段が実現できるという実用上大きな利点がある。
【0217】
図27は、本実施形態に係わる帯域外減衰量切り替えフィルタを、スイッチングフィルタを用いて構成したブロック図を示す。
【0218】
この帯域外減衰量切り替えフィルタは3つのスイッチングフィルタを具備し、それらは常時接続されている。
【0219】
図28に示すように、この3つのスイッチングフィルタは、例えばフィルタの段数を変えるなどの方法により、それぞれ帯域外減衰量が異なる値となっている。
【0220】
図29に、帯域外減衰量ならびに挿入損失が最も小さい第1のスイッチングフィルタ回路例を示す。
【0221】
図29は、平衡な格子型フィルタからスイッチングフィルタを構成した例で、第1の導線16及び第2の導線17にそれぞれ1個ずつの直列薄膜圧電共振器11が直列に接続されている。第1の導線16と第2の導線17の間に2個の並列薄膜圧電共振器12が並列に接続されている。第1の導線16の直列薄膜圧電共振器11の両端の電極には制御電圧入力端子13が抵抗18を介して接続されている。こうすることで、制御電圧は並列薄膜圧電共振器12にのみ印加され、直列薄膜圧電共振器には電圧が印加されないようになっている。
【0222】
次に、図30を用いて、このスイッチングフィルタの動作原理を説明する。
【0223】
図30(a)は、並列薄膜圧電共振器12の反共振周波数と直列薄膜圧電共振器11の共振周波数を一致させた場合のそれぞれの共振特性である。
【0224】
図30(c)に示すように、このときのフィルタの特性は、帯域通過フィルタ特性を示す(スイッチ“オン"に対応)。
【0225】
次に、図29の回路の制御電圧入力端子13に+Vの電圧を印加すると、2個の並列薄膜圧電共振器12にのみ電圧が印加される。例えば電圧印加に伴い弾性定数が増加したとすると、二つの並列薄膜圧電共振器12の共振周波数は上昇する。
【0226】
図30(b)に示すように、制御電圧を変えて直列薄膜圧電共振器11及び並列薄膜圧電共振器12の共振周波数を一致させると、フィルタの特性は図30(d)のような全ての周波数帯にわたって阻止特性を示すようになる(スイッチ“オフ"に対応)。
【0227】
このように、制御電圧を変えるだけで、帯域通過特性と全域遮断特性を切り替えることができ、並列に接続してもPINダイオードのような選択手段を介さなくて済むので、挿入損失が一切増加しないというメリットがある。
【0228】
図27では、このような第1のスイッチングフィルタ33、第2のスイッチングフィルタ34及び第3のスイッチングフィルタ35を3つ並列に接続したものを示す。このとき第1のスイッチングフィルタ33、第2のスイッチングフィルタ34及び第3のスイッチングフィルタ35のフィルタの段数は全て異なるようにしておく、第1のスイッチングフィルタ33には第1の電圧印加端子36から電圧が印加出来るようにしておく。第2のスイッチングフィルタ34には第2の電圧印加端子37から電圧が印加出来るようにしておく。第3のスイッチングフィルタ35には第3の電圧印加端子38から電圧が印加出来るようにしておく。31は信号入力端子、32は信号出力端子である。
【0229】
また、図28に、このときの帯域外減衰量切り替えフィルタの通過特性を示す。
【0230】
図28から分かるように、フィルタを構成する直列薄膜圧電共振器と並列薄膜圧電共振器の組み合わせからなるフィルタの段数が少ない場合、挿入損失は少ないものの帯域外減衰量の小さい通過特性となる。一方フィルタの段数が多い場合、帯域外減衰量は大きいものの挿入損失もそれに応じて大きい通過特性となる。
【0231】
所望波に対して近くに妨害波が存在しない場合は、帯域外減衰量は少なくてもよく、むしろ挿入損失を少なくすることが後段のアンプの負担を減らすためにも必要となるので第1のフィルタ33をスイッチングフィルタで選択し、逆に妨害波が存在する場合は、挿入損失が例え大きくとも、帯域外減衰量を大きくして後段のアンプが飽和しないようにすることが要求されるので第2のフィルタ34を選択して使用する。妨害波の強度が極めて大きい場合は、さらに帯域外減衰量の大きい第3のフィルタ35を選択して使用する。
【0232】
このように、帯域外減衰量と挿入損失のトレードオフを回避するために、容易に小型化できる強誘電体配向膜を用いた薄膜圧電共振器から構成されるフィルタを損失の少ないスイッチ手段で切り替えて使用することで、妨害波の有無によってそれぞれ最適化されたフィルタ回路を使用できるようになった。また、スイッチ手段がフィルタ回路と同じ薄膜受動素子基板上に集積化できるため、極めてサイズの小さいフィルタモジュールが作製可能となった。
【0233】
(実施形態7)
本実施形態では、上記した可変フィルタを組み合わせた可変フィルタに関するものである。
【0234】
すなわち上記した通過帯域の中心周波数、通過帯域幅、リップル位置或いはリップル形状、ノッチ位置或いは遮断帯域幅を可変とする可変フィルタを複数用いて所望の可変帯域通過フィルタを形成することができる。
【0235】
こうすることでそれぞれ単独の特性可変フィルタでは実現が難しい大きな可変幅をもつフィルタを形成することもできる。
【0236】
例えば、フィルタ回路を実施形態2の中心周波数可変フィルタの直列接続で用い、電圧を印加することにより、前段の周波数可変フィルタの中心周波数を上昇させ、後段の周波数可変フィルタの中心周波数を低下させれば、帯域幅を狭くすることができる。
【0237】
また、前段と後段の中心周波数をあらかじめ異なる周波数に設定して、重なる部分だけをフィルタをして用いて、前段と後段の中心周波数を電圧印加により同じ方向に動かせば、通過帯域に比べて中心周波数の変化する割合を大きく取ることができ、より多くのシステムに特性可変フィルタを適用することができるようになり、実用上極めて有利である。
【0238】
図31に、帯域幅可変フィルタを2個の中心周波数可変フィルタの直列接続により実現した回路を示す。
【0239】
図31において、この直列型帯域幅可変フィルタは、第1の導線16に2個の直列薄膜圧電共振器11−1、11−2が直列に接続されている。第2の導線17に2個の直列薄膜圧電共振器11−3、11−4が直列に接続されている。第1の導線16と第2の導線17の間に4個の並列薄膜圧電共振器12が並列に接続されている。
【0240】
第1の導線16の第1の直列薄膜圧電共振器11−1と第2の直列薄膜圧電共振器11−2の間には、制御電圧入力端子13が接続されている。同様に、第2の導線17の第3の直列薄膜圧電共振器11−3と第4の直列薄膜圧電共振器11−4の間にも、制御電圧入力端子13が接続されている。便宜上、制御電圧入力端子13から入力端子14側のフィルタを第1のフィルタ、制御電圧入力端子13から出力端子15側のフィルタを第2のフィルタと以下呼ぶことにする。
【0241】
図32を用いて、この帯域幅可変フィルタの動作原理を説明する。
【0242】
図32(a)は、電圧無印加時の第1のフィルタ及び第2のフィルタの通過特性を示したものである。第1のフィルタ及び第2のフィルタは、通過帯域がΔfだけ重なるように設計されている。
【0243】
図32(c)に示すように、第1のフィルタ及び第2のフィルタを直列に接続した帯域通過フィルタの特性は帯域幅Δfの帯域通過フィルタ特性を示す。
【0244】
次に、図32(b)に示すように、制御電圧を印加して薄膜圧電共振器の共振周波数を変化させることにより、第1のフィルタの通過域を低周波側にΔf'シフトさせ、第2のフィルタの通過域を高周波側にΔf'シフトさせる。
【0245】
図32(d)に示すように、帯域通過フィルタの特性は帯域幅がΔf+2Δf'になり、2Δf'だけ広がることになる。このようにして、外部から加えた制御電圧により帯域幅を可変とすることができる。
【0246】
このような構成を実現するには実際には以下のように設計すればよい。第1のフィルタは第2のフィルタよりも低周波側に通過域をもつものとすると、第1のフィルタを構成する4つの薄膜圧電共振器は、第2のフィルタを構成する4つの薄膜圧電共振器よりも電極膜厚を大きくして、共振周波数を低下させなければならない。
【0247】
この場合、制御電圧入力端子に正の電圧を印加すると、第1のフィルタを構成する4つの薄膜圧電共振器には分極方向と同じ向きに電界が印加され、逆に第2のフィルタを構成する4つの薄膜圧電共振器には分極方向と逆向きに電界が印加される。従って、制御電圧を印加することで、第1のフィルタが例えば高周波側にシフトしたとすると、このとき第2のフィルタは逆に低周波側にシフトする。また、第1のフィルタが例えば低周波側にシフトしたとすると、このとき第2のフィルタは逆に高周波側にシフトする。つまり、このような構成の回路を作製すれば、制御電圧印加にともなって第1のフィルタと第2のフィルタが逆向きにシフトするため、両者の重なっている部分、すなわち通過帯域が広がったり狭まったりする。
【0248】
以上の説明で分かるように、図31で示したようなフィルタ回路は、図32で説明した動作原理に基づく帯域幅可変フィルタを作製することができる。この方法では、実質的に一つのフィルタ回路に制御電圧入力端子を付け加えるだけで帯域幅可変フィルタが構成できたので、従来の薄膜圧電共振器を用いたフィルタ回路の設計技術、プロセス技術がともに活用でき、さらに同一の基板上に全て形成可能であることから、極めて小さいフィルタモジュールが実現できた。
【0249】
この帯域幅可変フィルタは、例えばマルチキャリア方式を採用しているCDMA2000のように、通常1キャリアあたり1.25MHzである帯域幅を、高速性が要求される場合にのみ複数のキャリアを用いて、2.5MHzや3.75MHzの帯域幅に変えるシステムにおいて特に有効である。このような大きな帯域幅の変化を要するシステムでは、可変幅を大きく取れるので有利である。また、通常チャネル幅は数MHzであり、10%以上もの結合定数をもつ強誘電体配向膜を圧電体とした薄膜圧電共振器では帯域幅が広すぎて、作製するのが困難であるが、本実施例に見られるような、帯域幅の広いフィルタを二つ直列に接続して帯域幅の狭いフィルタを構成する手法を用いれば、帯域幅の狭い帯域幅可変フィルタが構成できる。
【0250】
(実施形態8)
図33に、本実施形態の可変フィルタの回路図を示す。これは2個の中心周波数可変フィルタの直列接続により実現した回路例である。
【0251】
図33において、帯域幅可変フィルタは、第1の導線16に2個の直列薄膜共振器11−1、11−2が直列に接続されている。第2の導線17に2個の直列薄膜圧電共振器11−3、11−4が直列に接続されている。第1の導線16と第2の導線17の間に4個の並列薄膜圧電共振器12が並列に接続されている。
【0252】
第1の導線16の第1の直列薄膜圧電共振器11−1と第2の直列薄膜圧電共振器11−2の間には、制御電圧入力端子13が接続されている。同様に、第2の導線17の第3の直列薄膜圧電共振器11−3と第4の直列薄膜圧電共振器11−4の間にも、制御電圧入力端子13が接続されている。
【0253】
回路上は図21の2段の中心周波数可変フィルタと全く同一であるが、以下述べるように、電圧無印加時の通過特性が異なる。
【0254】
図34を用いて、この帯域幅可変フィルタの動作原理を説明する。便宜上、図22の制御電圧入力端子13よりも入力端子14側を第1の中心周波数可変フィルタ、出力端子15側を第2の中心周波数可変フィルタと呼ぶことにする。
【0255】
図34(a)は、電圧無印加時の第1及び第2の中心周波数可変フィルタの通過特性を示したものである。それぞれの通過特性は、帯域幅はほぼ同じであるが、重なっている周波数帯がチャネル一つ分と同じになっている。
【0256】
図34(c)に示すように、第1及び第2の中心周波数可変フィルタを直列に接続した場合に、チャネル一つ分が通過帯域幅となるような帯域通過フィルタが構成できるように調整してある。
【0257】
図34(b)に示すように、このような中心周波数可変フィルタに電圧を印加して、それぞれの通過帯域をΔf'だけ高周波側にずらすと、図34(d)に示すように、通過域のチャネルもΔf'だけ高周波側にシフトする。
【0258】
通常の方法では、強誘電体のように結合定数の大きい圧電材料では、1チャネルを選択するような帯域幅の狭いフィルタを構成し、かつそれを数チャネル分動かすのは困難であった。なぜならば、強誘電体配向膜のように可変幅が大きい材料は結合定数も大きく、逆に結合定数が小さい材料は可変幅が極めて狭く、中心周波数可変フィルタを作製できないというトレードオフの関係があるからである。
【0259】
しかし、本実施形態で説明したような2段の中心周波数可変フィルタを構成すれば、強誘電体のもつ大きなチューナビリティを活かしつつ、帯域幅の狭いチャネルフィルタを作製することができ、実用上の価値は極めて大きい。
【0260】
本発明では、直列に接続された複数のフィルタの間に、アイソレータ或いはバッファアンプが接続することができる。こうすることで直列薄膜圧電共振器のフィルタの前段と後段との間で、インピーダンスの不整合に起因する通過特性の低下を抑制することができ、実用上特に利用価値が高い。
【0261】
また、可変フィルタを少なくとも2個以上スイッチを介して並列に接続し、スイッチによりフィルタを選択することにより、通過帯域の中心周波数、通過帯域幅、リップル位置或いはリップル形状、ノッチ位置或いは遮断帯域幅、帯域外減衰量、通過損失を可変とすることができる。
【0262】
こうすると単一の可変フィルタ或いは複数の可変フィルタの直列接続で実現できる可変範囲よりも、さらに広い可変範囲をもつ特性可変フィルタが得られるという利点がある。
【0263】
例えば、挿入損失が少ないが帯域外減衰量も大きくない第1の特性の可変フィルタと、挿入損失は大きいが帯域外減衰量が大きい第2の特性の可変フィルタを並列に接続すれば、妨害波が存在しない場合には第1の可変フィルタを使用し、妨害波が出現した場合には第2の可変フィルタに切り替えて使用することで、フィルタ後段のアンプが飽和するのを避けることが可能となる。
【0264】
また、周波数可変チャネル選択フィルタを構成する場合、900MHz帯と2GHz帯のチャネル選択フィルタを一つのフィルタ或いは直列に接続された可変フィルタで実現することは困難であるが、別々に構成して並列接続すれば用意に作製可能である。
【0265】
また、特に並列された可変フィルタの選択手段として実施形態1で説明したスイッチングフィルタを使用すれば、挿入損失も小さく実用上のメリットは極めて大きい。
【0266】
また、可変フィルタに用いる薄膜圧電共振器に使用する強誘電体として、単結晶或いは配向した強誘電体が0.1°以上の配向半値幅を有することが好ましい。
【0267】
本来、理想的な強誘電体では、電圧を印加しない場合でも分極が位置方向に揃っているが、適度に欠陥などが導入されていたり、格子定数がばらついたりしていると、電圧を印加しない場合は分極が揃っていない領域が膜中に形成される。このような領域もわずかに電圧を印加すれば分極が揃い、結合定数が大きく変化する。従って、印加電圧に対して材料定数の変化率を大きく取るためには、理想的な単結晶の強誘電体よりもわずかに配向が乱れていたほうが好ましい。
【0268】
詳細に実験を行なった結果、X線回折により得られた配向半値幅が0.1°以上であれば、実用上必要な結合定数の電圧依存性を得ることができる。
【0269】
薄膜圧電共振器の圧電体膜としてチタン酸バリウムを用いることが好ましい。
【0270】
チタン酸バリウムは、電気機械結合定数が約20%と大きく、また弾性定数や結合定数の電圧依存性が他の圧電材料に比べて大きく、さらに高周波帯における誘電率も200以上とAlNやZnOに比べると遥かに大きいため、上述したような特性可変フィルタや小型切り替え式フィルタを構成するのに特に適している。また、PZTと違い、熱力学的に安定でかつ有害な金属を含まないので、実用上特に有望な材料である。
【0271】
【発明の効果】
適当な外部制御手段を用いて通過特性を可変にできる新たな可変フィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いる薄膜バルク弾性波共振器の断面図。
【図2】 本発明に用いる薄膜バルク弾性波共振器の断面図。
【図3】 本発明に用いる薄膜バルク弾性波共振器の断面図。
【図4】 本発明に用いる薄膜バルク弾性波共振器の等価回路。
【図5】 本発明に用いる薄膜バルク弾性波共振器の周波数特性。
【図6】 本発明のスイッチングフィルタの(a)回路図及び(b)インピーダンスの絶対値の周波数特性図。
【図7】 本発明のスイッチングフィルタの帯域通過特性図。
【図8】 本発明のスイッチングフィルタの全域阻止特性図。
【図9】 本発明のスイッチングフィルタにおける平衡梯子型フィルタの回路図。
【図10】 本発明のスイッチングフィルタにおける平衡格子型フィルタの回路図。
【図11】 本発明のスイッチングフィルタにおける平衡梯子型フィルタの回路図。
【図12】 本発明のスイッチングフィルタにおける平衡梯子型フィルタの回路図。
【図13】 本発明のスイッチングフィルタにおける平衡格子型フィルタの回路図。
【図14】 本発明のスイッチングフィルタにおける平衡格子型フィルタの回路図。
【図15】 本発明のスイッチングフィルタにおける平衡梯子型フィルタの回路図。
【図16】 本発明のスイッチングフィルタにおける不平衡梯子型フィルタの回路図。
【図17】 本発明のスイッチングフィルタにおける不平衡梯子型フィルタの回路図。
【図18】 本発明に用いる薄膜バルク弾性波共振器の断面図。
【図19】 本発明の実施形態2に係わる中心周波数可変フィルタの回路図。
【図20】 本発明の実施形態2に係わる中心周波数可変フィルタの動作原理を説明する図であり、(a)及び(b)は共振器のインピーダンス特性、(c)及び(d)は、通過特性。
【図21】 本発明の実施形態3に係わる帯域幅可変フィルタの回路図。
【図22】 本発明の実施形態3に係わる帯域幅可変フィルタの動作原理を説明する図であり、(a)及び(b)は共振器のインピーダンス特性、(c)及び(d)は、通過特性。
【図23】 本発明の実施形態4に係わるリップル形状可変フィルタの回路図。
【図24】 本発明の実施形態4に係わるリップル形状可変フィルタの動作原理を説明する図であり、(a)及び(b)は共振器のインピーダンス特性、(c)及び(d)は、通過特性。
【図25】 本発明の実施形態5に係わる周波数可変帯域遮断フィルタの回路図。
【図26】 本発明の実施形態5に係わる周波数可変帯域遮断フィルタの動作原理を説明する図であり、(a)は回路図、(b)は共振器のインピーダンス特性、(c)は通過特性。
【図27】 本発明の実施形態6に係わる帯域外減衰量切り替えフィルタのブロック図。
【図28】 本発明の実施形態6に係わる帯域外減衰量切り替えフィルタを構成するスイッチングフィルタの通過特性。
【図29】 本発明の実施形態6に係わる帯域外減衰量切り替えフィルタのスイッチングフィルタの回路図。
【図30】 本発明の実施形態6に係わる帯域外減衰量切り替えフィルタを構成するスイッチングフィルタの動作原理を説明する図であり、(a)及び(b)は共振器のインピーダンス特性、(c)及び(d)は、通過特性。
【図31】 本発明の実施形態7に係わる帯域幅可変フィルタの回路図。
【図32】 本発明の実施形態8に係わる帯域幅可変フィルタの動作原理を説明する図であり、(a)及び(b)は共振器のインピーダンス特性、(c)及び(d)は、通過特性。
【図33】 本発明の実施形態7に係わるチャネル選択フィルタの回路図。
【図34】 本発明の実施形態7に係わるチャネル選択フィルタの動作原理を説明する図であり、(a)及び(b)は共振器のインピーダンス特性、(c)及び(d)は、通過特性。
【符号の説明】
1・・・第1の電極
2・・・圧電体膜
3・・・第2の電極
4・・・エッチングストッパー層
5・・・単結晶基板
6・・・多層音響反射層
11・・・直列に接続された薄膜圧電弾性波共振器
12・・・並列に接続された薄膜圧電弾性波共振器
13・・・マッチング回路
14・・・入力ポート
15・・・出力ポート
16・・・第1の導線
17・・・第2の導線
18・・・高周波遮断用抵抗
19・・・可変電圧回路接続端子
21・・・Si基板
22・・・SiO
23・・・SrRuO犠牲層
24・・・Ir下部電極
25・・・BaTiO圧電体膜
26・・・Ir上部電極
27・・・ヴィアホール
30・・・帯域外減衰量切り替えフィルタ
31・・・信号入力端子
32・・・信号出力端子
33・・・第1のスイッチングフィルタ
34・・・第2のスイッチングフィルタ
35・・・第3のスイッチングフィルタ
36・・・第1の制御電圧入力端子
37・・・第2の制御電圧入力端子
38・・・第3の制御電圧入力端子

Claims (18)

  1. 直列接続の薄膜圧電共振器と、並列接続の薄膜圧電共振器とを組み合わせた可変フィルタにおいて、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器は共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とを一致させ、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とを共に上昇或いは下降させて、通過帯域の中心周波数を制御することを特徴とする可変フィルタ。
  2. 直列接続の薄膜圧電共振器と、並列接続の薄膜圧電共振器とを組み合わせた可変フィルタにおいて、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の少なくとも一つは共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とを一致させ、前記直列薄膜圧電共振器或いは前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数の間隔或いは前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数の間隔を変化させて、通過帯域幅を制御することを特徴とする可変フィルタ。
  3. 直列接続の薄膜圧電共振器と、並列接続の薄膜圧電共振器とを組み合わせた可変フィルタにおいて、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器は共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とをほぼ一致させ、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数の間隔を変化させて、通過帯域のリップル位置或いはリップル形状を制御することを特徴とする可変フィルタ。
  4. 直列接続の薄膜圧電共振器と、並列接続の薄膜圧電共振器とを組み合わせた可変フィルタにおいて、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器は共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、前記直列薄膜圧電共振器の反共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数とを一致させ、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の反共振周波数及び前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数とを共に上昇或いは下降させて、阻止帯域の中心周波数を制御することを特徴とする可変フィルタ。
  5. 直列接続の薄膜圧電共振器と、並列接続の薄膜圧電共振器とを組み合わせた可変フィルタにおいて、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の少なくとも一つは共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、前記直列薄膜圧電共振器の反共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数とを一致させ、前記直列薄膜圧電共振器或いは前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数の間隔或いは前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数の間隔を変化させて、阻止帯域幅を制御することを特徴とする可変フィルタ。
  6. 直列接続の薄膜圧電共振器と、並列接続の薄膜圧電共振器とを組み合わせた可変フィルタにおいて、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の少なくとも一つは共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、前記直列薄膜圧電共振器或いは前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とが一致したときに得られる通過帯域特性及び前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数とが一致したときに得られる全域阻止特性とを切り替えることを特徴とする可変フィルタ。
  7. 第1及び第2の入力端子と、第1及び第2の出力端子と、前記第1の入力端子及び前記第1の出力端子間或いは前記第2の入力端子及び前記第2の出力端子間に直列接続された薄膜圧電共振器と、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子との間或いは前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子との間に並列接続された薄膜圧電共振器と、 前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器は共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、この薄膜圧電共振器に接続され、電圧を可変にする可変電圧回路とを具備し、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とを一致させ、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とを共に上昇或いは下降させて、通過帯域の中心周波数を制御することを特徴とする可変フィルタ。
  8. 第1及び第2の入力端子と、第1及び第2の出力端子と、前記第1の入力端子及び前記第1の出力端子間或いは前記第2の入力端子及び前記第2の出力端子間に直列接続された薄膜圧電共振器と、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子との間或いは前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子との間に並列接続された薄膜圧電共振器と、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の少なくとも一つは共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、この薄膜圧電共振器に接続され、電圧を可変にする可変電圧回路とを具備し、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とを一致させ、前記直列薄膜圧電共振器或いは前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数の間隔或いは前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数の間隔を変化させて、通過帯域幅を制御することを特徴とする可変フィルタ。
  9. 第1及び第2の入力端子と、第1及び第2の出力端子と、前記第1の入力端子及び前記第1の出力端子間或いは前記第2の入力端子及び前記第2の出力端子間に直列接続された薄膜圧電共振器と、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子との間或いは前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子との間に並列接続された薄膜圧電共振器と、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器は共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、この薄膜圧電共振器に接続され、電圧を可変にする可変電圧回路とを具備し、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とをほぼ一致させ、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数の間隔を変化させて、通過帯域のリップル位置或いはリップル形状を制御することを特徴とする可変フィルタ。
  10. 第1及び第2の入力端子と、第1及び第2の出力端子と、前記第1の入力端子及び前記第1の出力端子間或いは前記第2の入力端子及び前記第2の出力端子間に直列接続された薄膜圧電共振器と、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子との間或いは前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子との間に並列接続された薄膜圧電共振器と、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器は共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、この薄膜圧電共振器に接続され、電圧を可変にする可変電圧回路とを具備し、前記直列薄膜圧電共振器の反共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数とを一致させ、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の反共振周波数及び前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数とを共に上昇或いは下降させて、阻止帯域の中心周波数を制御することを特徴とする可変フィルタ。
  11. 第1及び第2の入力端子と、第1及び第2の出力端子と、前記第1の入力端子及び前記第1の出力端子間或いは前記第2の入力端子及び前記第2の出力端子間に直列接続された薄膜圧電共振器と、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子との間或いは前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子との間に並列接続された薄膜圧電共振器と、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の少なくとも一つは共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、この薄膜圧電共振器に接続され、電圧を可変にする可変電圧回路とを具備し、前記直列薄膜圧電共振器の反共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数とを一致させ、前記直列薄膜圧電共振器或いは前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数の間隔或いは前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数及び反共振周波数の間 隔を変化させて、阻止帯域幅を制御することを特徴とする可変フィルタ。
  12. 第1及び第2の入力端子と、第1及び第2の出力端子と、前記第1の入力端子及び前記第1の出力端子間或いは前記第2の入力端子及び前記第2の出力端子間に直列接続された薄膜圧電共振器と、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子との間或いは前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子との間に並列接続された薄膜圧電共振器と、前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器の少なくとも一つは共振特性が印加電圧により変化する薄膜圧電共振器であり、この薄膜圧電共振器に接続され、電圧を可変にする可変電圧回路とを具備し、前記直列薄膜圧電共振器或いは前記並列薄膜圧電共振器の印加電圧を変化させることによって、前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の反共振周波数とが一致したときに得られる通過帯域特性及び前記直列薄膜圧電共振器の共振周波数と前記並列薄膜圧電共振器の共振周波数とが一致したときに得られる全域阻止特性とを切り替えることを特徴とする可変フィルタ。
  13. 請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の可変フィルタを単独或いは組み合わせて少なくとも2個以上直列に接続することを特徴とする可変フィルタ。
  14. 前記直列に接続された前記可変フィルタの間にアイソレータ或いはバッファアンプが接続されていることを特徴とする請求項13記載の可変フィルタ。
  15. 請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の可変フィルタを単独或いは組み合わせて少なくとも2個以上、スイッチを介して並列に接続し、前記スイッチにより前記フィルタを選択することにより、通過特性を制御することを特徴とする可変フィルタ。
  16. 前記直列薄膜圧電共振器及び前記並列薄膜圧電共振器は、単結晶或いは配向した強誘電体膜とこれを挟んだ電極とを具備することを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の可変フィルタ。
  17. 前記強誘電体膜が0.1°以上の配向半値幅を有することを特徴とする請求項16記載の可変フィルタ。
  18. 前記強誘電体が、チタン酸バリウムを主成分とすることを特徴とする請求項16または請求項17記載の可変フィルタ。
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