JP3889202B2 - 音場生成システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばコンサートホール等で音楽を聴くのと同様の広がり感の得られる音場空間を生成する音場生成システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の音場生成システムとして特開平8−130799号公報に開示された音場生成装置が知られている。
【0003】
この従来の音場生成装置は、図10(A)に示すように、SFC処理回路と呼ばれる残響生成回路1,2と、フィルタ回路3,4と、加算器5,6、増幅器7,8とを備え、2個のスピーカ9,10を鳴動させることで広がり感の得られる再生音場を生成するようになっている。
【0004】
残響生成回路1,2には、それぞれ図10(B)に示すような多段の遅延素子D1〜Dnを有する遅延回路13が備えられ、入力信号Sinに対する複数の遅延出力を所定の関係で組み合わせて加算することにより、残響特性を付与した2チャンネル分の信号を生成している。
【0005】
更に、残響生成回路1,2には、アッテネータとオールパスフィルタが備えられており、上記2チャンネル分の信号の振幅と位相特性を調整することで、右チャンネル信号SR1と左チャンネル信号SL1を生成して、加算器5,6に供給するようになっている。
【0006】
各フィルタ回路3,4は、図10(C)に模式的に示すように、右チャンネル信号SR1と左チャンネル信号SL1のゲインをオーディオ周波数帯域において可変調整するための可変フィルタで形成されている。そして、フィルタ回路3の出力が加算器5,6に供給されると共に、フィルタ回路4の出力が加算器6に供給され、更にフィルタ回路4の反転出力が加算器5に供給されている。
【0007】
かかる構成により、加算器5,6からは、例えば特定のコンサートホール内で収録がなされた際に得られるのと同様の右チャンネルと左チャンネルの信号SR2,SL2が出力され、これらの信号SR2,SL2を増幅器7,8を介してスピーカ9,10に供給することで、上記特定のコンサートホール内で受聴するのと同様の広がり感が得られる再生音場を生成するようにしている。
【0008】
更に、スピーカ9,10から受聴者の両耳に到来する再生音をマイクロフォン11,12で収音し、得られた収音信号PR,PLに基づいて両耳間相関係数ρRLを求めると共に、上記特定のコンサートホールの実際の伝達関数(周波数特性)から予め求めておいた両耳間相関係数ρRL’と上記両耳間相関係数ρRLとの差分が0になるように、フィルタ回路3,4の周波数特性を調整している。
【0009】
つまり、受聴者のリスニングルーム等の伝達関数(周波数特性)と、上記特定のコンサートホールの伝達関数(周波数特性)は異なっているため、上記リスニングルーム等で実際に生成された再生音場の両耳間相関係数ρRLを上記特定のコンサートホールの両耳間相関係数ρRL’に近似させるように、フィルタ回路3,4の周波数特性を調整し、これによって、受聴者のリスニングルーム等であっても、上記特定のコンサートホールと同様の広がり感のある再生音場を生成するようにしている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の音場生成装置では、フィルタ回路3,4の周波数特性を次のように調整していた。
【0011】
まず、仮に上記特定のコンサートホールの実際の伝達関数(周波数特性)に基づいて予め求めておいた両耳間相関係数ρRL’が図11(A)に示すような特性であったとすると、残響生成回路1,2の伝達関数を予めこの両耳間相関係数ρRL’に合わせて設定しておく。
【0012】
次に、図11(B)に示すように、フィルタ回路3,4の通過帯域を狭帯域W1に設定し、調整用の入力信号Sinとして狭帯域の定常ランダム信号を供給することで、スピーカ9,10からその狭帯域の定常ランダム信号に基づく再生音を鳴動させる。そして、マイクロフォン11,12によって再生音を収音し、得られた収音信号PR,PLに基づいて両耳間相関係数ρRLを求めた後、上記狭帯域W1における両耳間相関係数ρRL’とρRLとの差分を求める。
【0013】
また同様に、フィルタ回路3,4の通過帯域を狭帯域W2,W3,…,Wkの順に切り替えていき、その切り替えの度に、狭帯域の定常ランダム信号に基づく再生音を鳴動させて、上記狭帯域W2,W3,…,Wkにおける両耳間相関係数ρRL’とρRLとの差分を求める。
【0014】
そして、狭帯域W1,W2,W3,…,Wk毎に実際に求めた両耳間相関係数ρRLとコンサートホール等の両耳間相関係数ρRL’との差分がそれぞれ0になるように、フィルタ回路3,4の各狭帯域W1,W2,W3,…,Wk毎のゲインを調整することにより、全オーディオ周波数帯域におけるフィルタ回路3,4の周波数特性を調整する。つまり、フィルタ回路3,4の周波数特性を、受聴者のリスニングルーム等の伝達関数(周波数特性)を考慮して調整することとしている。
【0015】
こうしてフィルタ回路3,4の周波数特性を調整すると、加算器5,6からは、リスニングルーム等の残響特性が付与された信号SR1,SL1をフィルタ回路3,4の出力信号に基づいて微調整した信号SR2,SL2が出力されることになり、その信号SR2,SL2に基づいてスピーカ9,10を鳴動させると、受聴者のリスニングルーム等であっても、特定のコンサートホールと同様の広がり感のある再生音場を生成できるとしている。
【0016】
ところが、上記のように、調整用の入力信号Sinとして、狭帯域の定常ランダム信号を供給し、更に、フィルタ回路3,4の通過帯域を狭帯域W1,W2,W3,…,Wkの順に設定した場合には、図11(C)中の斜線部分で示すように、各狭帯域W1,W2,W3,…,Wkの重なり部分での信号成分を含んで両耳間相関係数ρRLを求めることになる。
【0017】
つまり、例えば狭帯域W1とW2を見た場合、互いの帯域がオーバーラップするので、狭帯域W1の範囲内の狭帯域定常ランダム信号に基づいて求めた両耳間相関係数ρRLには、狭帯域W2の範囲内の狭帯域定常ランダム信号の影響が含まれることになり、狭帯域W2の範囲内の狭帯域定常ランダム信号に基づいて求めた両耳間相関係数ρRLには、狭帯域W1の範囲内の狭帯域定常ランダム信号の影響が含まれることになる。また、残余の狭帯域W2,W3,…,Wk毎に求めた両耳間相関係数ρRLも同様の影響が含まれることになる。
【0018】
このため、実際に求めた両耳間相関係数ρRLに基づいて、特定のコンサートホールの両耳間相関係数ρRL’に近似させるようにフィルタ回路3,4の周波数特性を調整したとしても近似誤差が生じる場合があり、その調整後に実際のオーディオ周波数帯域の入力信号Sinを供給してスピーカ9,10を鳴動させても、再生音場を特定のコンサートホールに十分高い精度で近似することができない場合が想定されるという課題があった。
【0019】
本発明は、こうした従来技術の課題に着目してなされたものであり、例えば特定のコンサートホール等を模した広がり感の得られる目標の音場空間を、従来技術よりも更に高精度で近似して生成することが可能な新規な構成の音場生成システムを提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、入力オーディオ信号に両耳間補正を施して第1,第2の放音手段に供給して鳴動させることにより、目標の再生音場を生成する音場生成システムであって、無相関ノイズを前記第1,第2のフィルタ手段に供給するノイズ発生手段と、前記入力オーディオ信号又は前記無相関ノイズを帯域分割する複数の狭帯域バンドパスフィルタを有する第1のフィルタ手段と、前記フィルタ回路で帯域分割された各信号を夫々所定の減衰率で減衰させる複数のアッテネータを有する第1のアッテネータ手段と、前記第1のアッテネータ手段で減衰された各信号を夫々所定の遅延時間で遅延させる複数の遅延素子を有する第1の遅延手段と、前記第1の遅延手段で遅延された各信号と前記オーディオ信号とを加算して第1の加算信号を生成して前記第1の放音手段に供給する第1の加算手段と、を備えた前記第1の入力ラインと、前記入力オーディオ信号又は前記無相関ノイズを帯域分割する複数の狭帯域バンドパスフィルタを有する第2のフィルタ手段と、前記フィルタ手段で帯域分割された各信号を夫々所定の減衰率で減衰させる複数のアッテネータを有する第2のアッテネータ手段と、前記第2のアッテネータ手段で減衰された各信号を夫々所定の遅延時間で遅延させる複数の遅延素子を有する第2の遅延手段と、前記第2の遅延手段で遅延された各信号と前記オーディオ信号とを加算して第2の加算信号を生成して前記第1の放音手段に供給する第2の加算手段と、を備えた前記第2の入力ラインと、前記無相関ノイズが前記第1,第2の入力ラインに供給されて前記第1,第2の放音手段から放音される再生音を、受聴者の右耳に相当する受聴位置で収音する第1の収音手段及び受聴者の左耳に相当する受聴位置で収音する第2の収音手段と、前記第1の収音手段で収音された被検信号と前記第2の収音手段で収音された被検信号とに基づいて両耳間相関係数を演算する両耳間相関係数検出手段と、前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を一定に設定して、前記第1,第2の遅延手段の遅延素子の遅延時間を変化させ、前記両耳間相関係数検出手段で演算される前記両耳間相関係数とターゲットの両耳間相関係数との差分が最小となるときの前記第1,第2の遅延手段の遅延素子の遅延時間を最適遅延時間と判定して調整すると共に、前記第1,第2の遅延手段の遅延素子の遅延時間を前記最適遅延時間に調整して前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を変化させ、前記両耳間相関係数検出手段で演算される前記両耳間相関係数と目標の両耳間相関係数との差分が最小となるときの前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を最適減衰率と判定して調整する制御手段と、を具備し、前記制御手段によって前記最適遅延時間と前記最適減衰率に調整された前記第1,第2の入力ラインにより、前記入力オーディオ信号に両耳間補正を施して目標の再生音場を生成すること、を特徴とする。
【0021】
請求項2に記載の発明は、入力オーディオ信号に両耳間補正を施して第1,第2の放音手段に供給して鳴動させることにより、目標の再生音場を生成する音場生成システムであって、前記入力オーディオ信号又は無相関ノイズを帯域分割する複数の狭帯域バンドパスフィルタを有する第1のフィルタ手段と、前記フィルタ回路で帯域分割された各信号を夫々所定の減衰率で減衰させる複数のアッテネータを有する第1のアッテネータ手段と、前記第1のアッテネータ手段で減衰された各信号を夫々所定の遅延時間で遅延させる複数の遅延素子を有する第1の遅延手段と、前記第1の遅延手段で遅延された各信号と前記オーディオ信号とを加算して第1の加算信号を生成して前記第1の放音手段に供給する第1の加算手段と、を備えた前記第1の入力ラインと、前記入力オーディオ信号又は無相関ノイズを帯域分割する複数の狭帯域バンドパスフィルタを有する第2のフィルタ手段と、前記フィルタ手段で帯域分割された各信号を夫々所定の減衰率で減衰させる複数のアッテネータを有する第2のアッテネータ手段と、前記第2のアッテネータ手段で減衰された各信号を夫々所定の遅延時間で遅延させる複数の遅延素子を有する第2の遅延手段と、前記第2の遅延手段で遅延された各信号と前記オーディオ信号とを加算して第2の加算信号を生成して前記第1の放音手段に供給する第2の加算手段と、を備えた前記第2の入力ラインと、前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を一定、且つ前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を一定に設定して、前記無相関ノイズが前記第1,第2の入力ラインに供給されて前記第1,第2の放音手段から放音される再生音を、受聴者の右耳に相当する受聴位置で収音する第1の収音手段及び受聴者の左耳に相当する受聴位置で収音する第2の収音手段と、前記第1の収音手段で収音された被検信号と前記第2の収音手段で収音された被検信号とに基づいて前記第1,第2の放音手段から受聴者の左右の耳までの伝達関数を演算して記憶手段に記憶させると共に、前記記憶手段に記憶させた前記伝達関数に基づいて前記第1,第2の収音手段で収音したのに相当する疑似検出信号を生成して、両耳間相関係数検出手段にて前記疑似検出信号から両耳間相関係数を演算させ、該演算した両耳間相関係数とターゲットの両耳間相関係数との差分が最小となるときの前記第1,第2の遅延手段の遅延素子の遅延時間を最適遅延時間として調整し、且つ前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を最適減衰率として調整する制御手段と、を具備し、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶させた前記伝達関数に基づいて、前記第1,第2の遅延手段と前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータとの以後の調整を行うこと、を特徴とする。
【0022】
請求項3に記載の発明は、入力オーディオ信号に両耳間補正を施して第1,第2の放音手段に供給して鳴動させることにより、目標の再生音場を生成する音場生成システムであって、前記入力オーディオ信号を帯域分割する複数の狭帯域バンドパスフィルタを有する第1のフィルタ手段と、前記フィルタ回路で帯域分割された各信号を夫々所定の減衰率で減衰させる複数のアッテネータを有する第1のアッテネータ手段と、前記第1のアッテネータ手段で減衰された各信号を夫々所定の遅延時間で遅延させる複数の遅延素子を有する第1の遅延手段と、前記第1の遅延手段で遅延された各信号と前記オーディオ信号とを加算して第1の加算信号を生成して前記第1の放音手段に供給する第1の加算手段と、を備えた前記第1の入力ラインと、前記入力オーディオ信号を帯域分割する複数の狭帯域バンドパスフィルタを有する第2のフィルタ手段と、前記フィルタ手段で帯域分割された各信号を夫々所定の減衰率で減衰させる複数のアッテネータを有する第2のアッテネータ手段と、前記第2のアッテネータ手段で減衰された各信号を夫々所定の遅延時間で遅延させる複数の遅延素子を有する第2の遅延手段と、前記第2の遅延手段で遅延された各信号と前記オーディオ信号とを加算して第2の加算信号を生成して前記第1の放音手段に供給する第2の加算手段と、を備えた前記第2の入力ラインと、前記第1,第2の放音手段から受聴者の左右の耳までの伝達関数が予め記憶された記憶手段と、記憶手段に記憶されている前記伝達関数に基づいて、前記第1,第2の放音手段から受聴者の左右の耳に到達する音に相当する疑似検出信号を生成して、両耳間相関係数検出手段にて前記疑似検出信号から両耳間相関係数を演算させ、該演算した両耳間相関係数とターゲットの両耳間相関係数との差分が最小となるときの前記第1,第2の遅延手段の遅延素子の遅延時間を最適遅延時間として調整し、且つ前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を最適減衰率として調整する制御手段と、を具備すること、を特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の音場生成システムの実施の形態を図面を参照して説明する。尚、図1は、本実施形態の音場生成システム14の構成を示すブロック図であり、典型例として、ユーザーのリビングルーム等に設置される放音手段としての左右2チャンネルのスピーカ25,26を左右2チャンネルの入力オーディオ信号SL,SRに基づいて鳴動させる場合の構成を示している。
【0028】
図1において、音場生成システム14は、スピーカ25,26に入力オーディオ信号SL,SRを供給するための所謂2つの入力ラインCHL,CHRと、スピーカ25,26から再生される再生音を収音して入力ラインCHL,CHR中のアッテネータ回路17,18と遅延回路19,20の特性を帰還制御するための調整回路1000と、ノイズ発生器2000を備えて構成されている。
【0029】
入力ラインCHL,CHRは、デジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)によって形成されており、アナログディジタル変換された入力オーディオ信号SL,SRが供給される左右2チャンネル分のデジタル増幅器33,34と、フィルタ回路15,16と、アッテネータ回路17,18と、遅延回路19,20、及び加算器21,22,23,24を備えて構成されている。
【0030】
ここで、フィルタ回路15は、増幅器33を介して入力オーディオ信号SLが並列に供給される複数個nの帯域分割デジタルバンドパスフィルタBFL1〜BFLnによって構成されている。これら第1の帯域分割手段としての各バンドパスフィルタBFL1〜BFLnは、全オーディオ周波数帯域をn個に分割したときのそれぞれの分割帯域に割り当てられている。より具体的には、n=20個の2次のIIRフィルタで構成されている。
【0031】
フィルタ回路16もフィルタ回路15と同様に、複数個nの帯域分割デジタルバンドパスフィルタBFR1〜BFRnによって構成されており、各バンドパスフィルタBFR1〜BFRnは、全オーディオ周波数帯域をn=20個に分割したときのそれぞれの分割帯域に割り当てられている。つまり、バンドパスフィルタBFR1〜BFRnは、それぞれバンドパスフィルタBFL1〜BFLnと同じ分割帯域に設定されている。
【0032】
アッテネータ回路17は、バンドパスフィルタBFL1〜BFLnからの信号を個々に減衰して出力する複数個nのデジタルアッテネータATL1〜ATLnによって構成され、各アッテネータATL1〜ATLnの減衰率は、後述する制御部32による制御に従って個別に可変調節できるようになっている。
【0033】
アッテネータ回路18もアッテネータ回路17と同様に、複数個nのデジタルアッテネータATL1〜ATLnによって構成されており、後述する制御部32による制御に従って、バンドパスフィルタBFR1〜BFRnからの信号を個々に減衰して出力する。
【0034】
遅延回路19は、複数個nのデジタル遅延素子ZL1〜ZLnを備えて構成され、バンドパスフィルタBFL1〜BFLnからの信号を個々に遅延して出力する。
【0035】
遅延回路20も遅延回路19と同様に、複数個nのデジタル遅延素子ZR1〜ZRnを備えて構成され、バンドパスフィルタBFR1〜BFRnからの信号を個々に遅延して出力する。
【0036】
尚、これらの遅延素子ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRnの各遅延量(遅延時間)は、後述する制御部32からの指示に従って調整可能となっている。
【0037】
加算器21は、遅延素子ZL1〜ZLnから出力されるn個の信号を加算し、その加算した信号SADDLを加算器24に供給する。
【0038】
加算器22は、遅延素子ZR1〜ZRnから出力されるn個の信号を加算し、その加算した信号SADDRを加算器23に供給する。
【0039】
加算器23は、増幅器33を介して供給される入力オーディオ信号SLと信号SADDRを加算し、その加算した信号SDVLをスピーカ25に供給する。
【0040】
加算器24は、増幅器34を介して供給される入力オーディオ信号SRと信号SADDRを加算し、その加算した信号SDVRをスピーカ26に供給する。
【0041】
尚、図示していないが、加算器23とスピーカ25の間にはA/D変換器と出力電力増幅器が設けられており、デジタル信号処理された信号SDVLをアナログ信号に変換し電力増幅してスピーカ25に供給するようになっている。また、加算器24とスピーカ26の間にもA/D変換器と出力電力増幅器が設けられており、信号SDVRをアナログ信号に変換し電力増幅してスピーカ26に供給するようになっている。
【0042】
ノイズ発生器2000は、後述の音場調整の際に、全オーディオ周波数帯域にわたって一様レベルの無相関ノイズSNZを出力し、図示しない切換え回路を介して、増幅器33,34に供給する。すなわち、通常のオーディオ再生の際には、入力オーディオ信号SL,SRを増幅器33,34に供給し、後述の音場調整の際には、入力オーディオ信号SL,SRの代わりに無相関ノイズSNZを増幅器33,34に供給するようになっている。
【0043】
調整回路1000は、デジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)によって形成されたフィルタ回路29,30及び両耳間相関係数検出部31と、マイクロプロセッサ(MPU)を備えた制御部32を備えて構成されている。更に、スピーカ25,26から放音される再生音を受聴者の受聴位置(ほぼ両耳の位置)で収音するためのマイクロフォン27,28が備えられている。
【0044】
ここで、フィルタ回路29は、上記入力ラインCHLに設けられているフィルタ回路15と同様の構成となっている。すなわち、フィルタ回路15の帯域分割デジタルバンドパスフィルタBFL1〜BFLnと同じ特性の複数個nの帯域分割デジタルバンドパスフィルタBFL1’〜BFLn’によって構成されている。
【0045】
そして、マイクロフォン27から出力される収音信号PLが第2の帯域分割手段としての各バンドパスフィルタBFL1’〜BFLn’に並列供給されるようになっている。
【0046】
また、フィルタ回路30も、上記入力ラインCHRに設けられているフィルタ回路16と同様の構成となっており、フィルタ回路16の帯域分割デジタルバンドパスフィルタBFR1〜BFRnと同じ特性の複数個nの帯域分割デジタルバンドパスフィルタBFR1’〜BFRn’によって構成されている。
【0047】
そして、マイクロフォン28からの収音信号PRが第2の帯域分割手段としての各バンドパスフィルタBFR1’〜BFRn’に並列供給されるようになっている。
【0048】
尚、図示していないが、マイクロフォン27,28から出力される収音信号PL,PRをA/D変換器によってアナログデジタル変換して、フィルタ回路19,30に供給するようになっている。
【0049】
次に、かかる構成を有する音場生成システム14の音場調整時の動作を、図2及び図3のフローチャートを参照して説明する。尚、図2は、遅延回路19,20に設けられている遅延素子ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRnの各遅延時間を調整するための動作、図3は、アッテネータ回路17,18に設けられているデジタルアッテネータATL1〜ATLn,ATR1〜ATRnの各減衰率を調整するための動作をそれぞれ示している。
【0050】
ユーザーが図示しないリモートコントローラを操作し、制御部32に対して、自分のリビングルーム等を特定のコンサートホール等と同様の広がり感の得られる音場に調整するための指示をすると、図2に示す音場調整処理が開始される。
【0051】
まず、ステップS100において、制御部32が、ユーザーの指定した特定のコンサートホール等の両耳間相関係数ρRL’(T1,T2,…,Tn)を初期設定する。つまり、制御部32には、例えば有名なコンサートホールの伝達関数(周波数特性)から求めた両耳間相関係数ρRL’のデータが予め記憶されている。また、複数のコンサートホール毎の両耳間相関係数ρRL’のデータが予め記憶されている。これら複数のコンサートホールのうちの特定のコンサートホールをユーザーが選択指定すると、その指定された特定のコンサートホールの両耳間相関係数ρRL’(T1,T2,…,Tn)を初期設定する。
【0052】
尚、初期設定した両耳間相関係数ρRL’(T1,T2,…,Tn)は、ターゲット両耳間相関係数と呼ばれ、図4に示すように、フィルタ回路29,30にn個ずつ備えられている帯域分割デジタルバンドパスフィルタBFL1’〜BFLn’,BFR1’〜BFRn’の各中心周波数に対応する係数データT1,T2,…,Tnの集合となっている。
【0053】
次に、ステップS102において、全てのデジタルアッテネータATL1〜ATLn,ATR1〜ATRnの減衰率を0dBに初期設定し、更にステップS104において、全ての遅延素子ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRnの遅延時間を0秒に初期設定する。尚、説明の都合上、デジタルアッテネータATL1〜ATLnの減衰率(0dB)をAL=0、デジタルアッテネータATR1〜ATRnの減衰率(0dB)をAR=0、遅延素子ZL1〜ZLnの遅延時間(0秒)をdL=0、遅延素子ZR1〜ZRnの遅延時間(0秒)をdR=0として表すこととする。
【0054】
次に、ステップS106において、後述のm個の記憶領域Q1〜Qmのうち最初の記憶領域Q1を指定するために、変数qを「1」に設定する。
【0055】
次に、ステップS108において、制御部32に備えられているデータ記憶領域(図示省略)内に、最初の記憶領域Qk(=Q1)を確保する。
【0056】
次に、ステップS110において、変数iを「1」に設定する。尚、変数iは、遅延素子ZR1〜ZRnを所定の遅延時間τずつ変化させる際の順番を示す変数となっており、i=1のときは、dR=0となる。また、変数qは、m個の記憶領域Q1〜Qmを指定する他、遅延素子ZL1〜ZLnを所定の遅延時間τずつ変化させる際の順番を示す変数となっており、q=1のときは、dL=0となる。
【0057】
次に、ステップS112において、ノイズ発生器2000から増幅器33,34へ、全オーディオ周波数帯域の無相関ノイズSNZを供給し、スピーカ25,26を鳴動させ、所定時間Twの間、スピーカ25,26から放音される再生音をマイクロフォン27,28によって収音する。更に、それによって得られる収音信号PL,PRをフィルタ回路29,30内の各帯域分割デジタルバンドパスフィルタBFL1’〜BFLn’,BFR1’〜BFRn’に通すことにより、帯域分割した被検データDL1(t)〜DLn(t),DR1(t)〜DRn(t)を両耳間相関係数検出部31に供給する。
【0058】
尚、被検データDL1(t)〜DLn(t),DR1(t)〜DRn(t)中の変数tは、サンプリング定理に基づいて設定したサンプリング周波数fの逆数(サンプリング周期)1/f毎に得られるデータであることを示している。したがって、図5に模式的に示すように、再生音を所定時間Twの間収音することにより、被検データDL1(t)は、Tw×f個のデータ、被検データDR1(t)もTw×f個のデータ、残余の被検データDL2(t)〜DLn(t),DR2(t)〜DRn(t)もそれぞれTw×f個のデータとなる。
【0059】
また、図1に示すように、被検データDL1(t)〜DLn(t)は、スピーカ25,26からマイクロフォン27までの空間伝達関数H12,H21によって変調された音のデータ、被検データDR1(t)〜DRn(t)は、スピーカ25,26からマイクロフォン28までの空間伝達関数H11,H22によって変調された音のデータとなる。
【0060】
次に、ステップS114において、両耳間相関係数検出部31が、次式(1)に示す演算により、被検データDL1(t)とDR1(t)の間の両耳間相関係数C11、被検データDL2(t)とDR2(t)の間の両耳間相関係数C12、以下同様にして、被検データDLn(t)とDRn(t)の間の両耳間相関係数C1nまでの演算をする。
【0061】
【数1】
尚、上記式(1)中の両耳間相関係数Cijの変数jは、帯域分割デジタルバンドパスフィルタBFL1’〜BFLn’,BFR1’〜BFRn’の順番1〜nを示し、変数iは、遅延素子ZR1〜ZRnを所定の遅延時間τずつ変化させる際の順番を示す。また、上記式(1)中の記号< >は、集合平均を表している。
【0062】
これにより、最初のステップS114の処理では、図6(A)の左側図に示すように、i=1、遅延素子ZL1〜ZLnとZR1〜ZRnの遅延時間dLとdRが共に0秒に設定されたときの両耳間相関係数(C11,C12,…,C1n)が求められる。
【0063】
次に、ステップS116において、ターゲット両耳間相関係数(T1,T2,…,Tn)と、ステップS114で求めた両耳間相関係数(C11,C12,…,C1n)とのそれぞれの差分値(T1−C11),(T2−C12),…,(Tn−C1n)を演算する。すなわち、図6(A)の右側図に示すように、両耳間相関係数(C11,C12,…,C1n)に対応する差分値(T1−C11),(T2−C12),…,(Tn−C1n)が求められる。
【0064】
次に、ステップS118において、変数iがi=mであるか否か判定し、否「No」であれば、ステップS120に移行して、変数iを1インクリメントし、更に、遅延素子ZR1〜ZRnの遅延時間dRをτだけ増加して、ステップS112からの処理を繰り返す。
【0065】
このように、ステップS118でi=mと判定されるまで、ステップS112〜S120の処理を繰り返すと、図6(A)の左側図に示すように、遅延素子ZL1〜ZLnの遅延時間dLを0秒に固定して、遅延素子ZR1〜ZRnの遅延時間dRを0秒からτ秒ずつ順次増加させたときの両耳間相関係数(C11,C12,…,C1n)〜(Cm1,Cm2,…,Cmn)が求まり、更に、図6(A)の右側図に示すように、これらの両耳間相関係数(C11,C12,…,C1n)〜(Cm1,Cm2,…,Cmn)に対応する差分値〔(T1−C11),(T2−C12),…,(Tn−C1n)〕〜〔(T1−Cm1),(T2−Cm2),…,(Tn−Cmn)〕が求まる。
【0066】
そして、ステップS118でi=mと判定すると、ステップS122において、差分値〔(T1−C11),(T2−C12),…,(Tn−C1n)〕〜〔(T1−Cm1),(T2−Cm2),…,(Tn−Cmn)〕を、記憶領域Q1に記憶する。
【0067】
次に、ステップS124において、変数qがq=mか否か判定し、否「No」であれば、ステップS126に移行して、変数qを1インクリメントし、更に、全ての遅延素子ZL1〜ZLnの遅延時間dLをτだけ増加すると共に、遅延素子ZR1〜ZRnの遅延時間dRを0秒に設定して、ステップS108からの処理を繰り返す。
【0068】
このように、ステップS124でq=mと判定されるまで、ステップS108〜S126の処理を繰り返すと、遅延素子ZL1〜ZLnの遅延時間dLをτ秒に固定して、遅延素子ZR1〜ZRnの遅延時間dRを0秒からτ秒ずつ順次増加させていくときには、図6(B)に示す両耳間相関係数と差分値が求まり、遅延素子ZL1〜ZLnの遅延時間dLを2×τ秒に固定して、遅延素子ZR1〜ZRnの遅延時間dRを0秒からτ秒ずつ順次増加させていくときには、図6(C)に示す両耳間相関係数と差分値が求まり、以下同様にして、最後に、遅延素子ZL1〜ZLnの遅延時間dLを(m−1)×τ秒に固定して、遅延素子ZR1〜ZRnの遅延時間dRを0秒からτ秒ずつ順次増加させていくと、図6(D)に示す両耳間相関係数と差分値が求まる。
【0069】
そして、遅延時間dLをそれぞれτ,2×τ,…,(m−1)×τに設定したときに得られる各差分値〔Tj−Cij〕が、記憶領域Q2,Q3,…,Qmに記憶され、最終的に、全ての記憶領域Q1,Q2,…,Qmには、図7(A)に示すように、遅延時間dL,dRに対応付けられた差分値〔Tj−Cij〕が記憶されることになる。
【0070】
上記ステップS124において変数qがq=mになると(「Yes」の場合)、ステップS128において、遅延素子ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRnの最適遅延時間を判定して設定する。この判定及び設定処理は次のようにして行われる。
【0071】
まず、図7(A)に示す記憶領域Q1〜Qmに記憶された差分値〔Tj−Cij〕のうち、第1番目(j=1)の遅延素子ZL1,ZR1に該当する差分値〔T1−Ci1〕の中から最小値を検出し、その最小値に対応する遅延素子ZL1の遅延時間dLと遅延素子ZR1の遅延時間dRを最適遅延時間である判定して設定する。
【0072】
例えば、図7(A)中のj=1の列に該当する差分値〔T1−Ci1〕の中で、遅延時間がdL=τ、dR=2×τのときの差分値(T1−C31)が最小値であった場合には、図7(B)(C)に示すように、遅延素子ZL1の最適遅延時間をτ、遅延素子ZR1の最適遅延時間を2×τと判定して設定する。
【0073】
また、同様にして、図7(A)中のj=2の列に該当する差分値〔T2−Ci2〕の中で、遅延時間がdL=(m−1)×τ、dR=τのときの差分値(T2−C22)が最小値であった場合には、図7(B)(C)に示すように、遅延素子ZL1の最適遅延時間を(m−1)×τ、遅延素子ZR1の最適遅延時間をτと判定して設定する。
【0074】
また、同様にして、図7(A)中のj=3の列に該当する差分値〔T3−Ci3〕の中で、遅延時間がdL=0、dR=τのときの差分値(T3−C23)が最小値であった場合には、図7(B)(C)に示すように、遅延素子ZL3の最適遅延時間を0、遅延素子ZR3の最適遅延時間をτと判定して設定する。
【0075】
以下同様にして、残余の遅延素子の最適遅延時間を判定して設定していき、例えば、図7(A)中のj=nの列に該当する差分値〔Tn−Cin〕の中で、遅延時間がdL=2×τ、dR=τのときの差分値(Tn−C12)が最小値であった場合には、図7(B)(C)に示すように、遅延素子ZL1の最適遅延時間を2×τ、遅延素子ZR1の最適遅延時間を0と判定して設定する。
【0076】
こうして遅延素子ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRnの遅延時間を最適な値に調整すると、次に、図3に示すデジタルアッテネータATL1〜ATLn,ATR1〜ATRnの各減衰率を調整するための処理に移行する。
【0077】
ここで、図3に示す各ステップS206〜228は、図2に示した各ステップS106〜128に対応している。つまり、上記した遅延素子ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRnの最適遅延時間を求めたのと同様の処理によって、デジタルアッテネータATL1〜ATLn,ATR1〜ATRnの各減衰率を調整するようになっている。
【0078】
尚、図3中、変数rは、p個の記憶領域Q1〜Qpを指定すると共に、遅延回路19のデジタルアッテネータATL1〜ATLnを所定の減衰率(−G)デシベルずつ変化させる際の順番を示す変数である。また、変数iは、遅延回路20のデジタルアッテネータATR1〜ATRnを所定の減衰率(−G)デシベルずつ変化させる際の順番を示す変数となっている。
【0079】
ステップS206〜S226では、遅延素子ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRnを上記の最適遅延時間に設定したままで処理を行い、変数rに対応付けてデジタルアッテネータATL1〜ATLnの減衰率ALを順番に0,−G,−2×G,…,−(m−1)×Gと変化させ、更に、変数iに対応付けてデジタルアッテネータATR1〜ATRnの減衰率ARを0,−G,−2×G,…,−(m−1)×Gと変化させていく。
【0080】
これにより、減衰率AL,ARに対応付けられた両耳間相関係数Cijと差分値〔Tj−Cij〕が演算され、これらの差分値〔Tj−Cij〕は、図8(A)に示すように、減衰率ALとARに対応付けられて記憶領域Q1〜Qpに記憶されることになる。
【0081】
そして、ステップS228において、記憶領域Q1〜Qpに記憶された上記差分値〔Tj−Cij〕に基づいて、デジタルアッテネータATL1〜ATLn,ATR1〜ATRnの最適減衰率を判定して設定する。
【0082】
このデジタルアッテネータATL1〜ATLn,ATR1〜ATRnの最適減衰率は次のようにして判定される。
【0083】
まず、図8(A)に示す記憶領域Q1〜Qpに記憶された差分値〔Tj−Cij〕のうち、第1番目(j=1)のデジタルアッテネータATL1,ATR1に該当する差分値〔T1−Ci1〕の中から最小値を検出し、その最小値に対応するデジタルアッテネータATL1の減衰率ALとデジタルアッテネータATR1の減衰率ARを最適減衰率である判定して設定する。
【0084】
例えば、図8(A)中のj=1の列に該当する差分値〔T1−Ci1〕の中で、減衰率がAL=0、AR=−(p−1)×Gのときの差分値(T1−Cp1)が最小値であった場合には、図8(B)(C)に示すように、デジタルアッテネータATL1の最適減衰率を0、デジタルアッテネータATR1の最適減衰率を−(p−1)×Gと判定して設定する。
【0085】
また、同様にして、図8(A)中のj=2の列に該当する差分値〔T2−Ci2〕の中で、減衰率がAL=−2×G、AR=−2×Gのときの差分値(T2−C32)が最小値であった場合には、図8(B)(C)に示すように、デジタルアッテネータATL1の最適減衰率を−2×G、デジタルアッテネータATR1の最適減衰率を−2×Gと判定して設定する。
【0086】
また、同様にして、図8(A)中のj=3の列に該当する差分値〔T3−Ci3〕の中で、減衰率がAL=−(p−1)×G、AR=−Gのときの差分値(T3−C23)が最小値であった場合には、図8(B)(C)に示すように、デジタルアッテネータATL3の最適減衰率を−(p−1)×G、デジタルアッテネータATR3の最適減衰率を−Gと判定して設定する。
【0087】
以下同様にして、残余のデジタルアッテネータの最適減衰率を判定して設定していき、例えば、図8(A)中のj=nの列に該当する差分値〔Tn−Cin〕の中で、減衰率がAL=0、AR=−Gのときの差分値(Tn−C2n)が最小値であった場合には、図8(B)(C)に示すように、デジタルアッテネータATL1の最適減衰率を0、デジタルアッテネータATR1の最適減衰率を−Gと判定して設定する。
【0088】
こうして、ステップS228の処理によって全てのデジタルアッテネータATL1〜ATLn,ATR1〜ATRnの減衰率を調整し終えると、ノイズ発生器2000を停止し、入力オーディオ信号SL,SRの入力を可能にして、音場調整の処理を完了する。
【0089】
このように本実施形態によれば、実際に再生音から求めた両耳間相関係数ρRLをコンサートホール等の両耳間相関係数ρRL’に近似させるように、アッテネータ回路17,18の減衰率と遅延回路19,20の遅延時間を設定するので、音場調整後に入力オーディオ信号SL,SRに基づいてスピーカ25,26を鳴動させると、ユーザー(受聴者)のリスニングルーム等であっても、特定のコンサートホールと同様の広がり感のある再生音場を生成できる。
【0090】
更に、従来の技術では、音場調整の際に、狭帯域に設定したバンドパスフィルタに狭帯域の定常ランダム信号を通してスピーカを鳴動させ、それによって生じる再生音から実際の両耳間相関係数を求めていたため、受聴者等のリスニングルームにおける再生音場をコンサートホール等の両耳間相関係数に近似させる際に、近似誤差が生じる場合が想定された。
【0091】
この従来技術に対し、本実施形態では、全オーディオ周波数帯域の無相関ノイズSNZを調整用の入力信号とし、更に、この無相関ノイズSNZを分割帯域デジタルバンドパスフィルタBFL1〜BFLn,BFR1〜BFRnとデジタルアッテネータATL1〜ATLn,ATR1〜ATRn及びデジタル遅延素子ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRnの全てに通してスピーカ25,26に供給し、それによって生じる再生音を分割帯域デジタルバンドパスフィルタBFL1’〜BFLn’,BFR1’〜BFRn’で帯域分割することによって得られる被検データDL1(t)〜DLn(t)とDR1(t)〜DRn(t)に基づいて実際の両耳間相関係数ρRLを求めている。
【0092】
このように、分割帯域デジタルバンドパスフィルタBFL1〜BFLn,BFR1〜BFRnと同じ分割帯域デジタルバンドパスフィルタBFL1’〜BFLn’,BFR1’〜BFRn’で帯域分割することによって得られる被検データDL1(t)〜DLn(t)とDR1(t)〜DRn(t)に基づいて実際の両耳間相関係数ρRLを求めると、入力オーディオ信号SL,SRによってスピーカ25,26を鳴動させる通常の再生時と同じ条件の下で、両耳間相関係数ρRLを実際に求めることになる。
【0093】
そして、この両耳間相関係数ρRLをコンサートホール等のターゲット両耳間相関係数ρRL’に近似させるように上記アッテネータATL1〜ATLn,ATR1〜ATRnの各減衰率と遅延素子ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRnの各遅延時間を設定すると、近似誤差を大幅に低減することができ、コンサートホール等を模した広がり感の得られる目標の再生音場を生成することができる。
【0094】
尚、本実施形態では、調整の際に入力信号として無相関ノイズSNZを用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。全オーディオ周波数帯域にわたって信号成分を有する信号であれば、適宜の信号を使用することができる。
【0095】
また、本実施形態では、2チャンネル分の入力ラインCHL,CHRに、フィルタ回路15,16、アッテネータ回路17,19、遅延回路19,20、加算器21〜24が設けられているが、何れか一方の入力ラインだけに、フィルタ回路とアッテネータ回路と遅延回路及び加算器を配設する構成としてもよい。
【0096】
例えば、フィルタ回路16とアッテネータ回路18と遅延回路20及び加算器22を省略し、加算器23には増幅器33と34の出力を供給し、加算器24には加算器21の出力と増幅器34の出力を供給する構成にしても、スピーカ25,26から放音される再生音によって広がり間の得られる再生音場を生成することが可能である。
【0097】
また、本実施形態では、通常のオーディオ再生の際には、左右2チャンネルのステレオオーディオ信号SL,SRを供給して、スピーカ25,26によるステレオ再生を行う場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、オーディオ信号SL,SRとしてモノラルのオーディオ信号を供給しても、広がり感の得られる再生音場を生成することができる。
【0098】
また、本実施形態では、2チャンネルのステレオオーディオシステムの場合を説明したが、よりチャンネル数の多い所謂マルチチャンネルオーディオシステムに適用することが可能である。
【0099】
更にまた、本実施形態では、上記したように音場調整の際にスピーカ25,26を鳴動させ、ユーザーのリビングルーム等の空間の伝達関数(周波数特性)H11,H12,H21,H22によって実際に変調された再生音に基づいて両耳間相関係数を求め、その両耳間相関係数に基づいてアッテネータATL1〜ATLn,ATR1〜ATRnの各減衰率と遅延素子ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRnの各遅延時間を最適化している。
【0100】
しかし、実際にスピーカ25,26を鳴動させてリビングルーム等の空間の伝達関数H11,H12,H21,H22によって変調された再生音を収音することはせず、予めリビングルーム等の空間の伝達関数H11,H12,H21,H22を示す正則行列の伝達関数データ〔H〕を制御部32中の所定記憶領域に記憶しておき、シミュレーションによって、アッテネータATL1〜ATLn,ATR1〜ATRnの各減衰率と遅延素子ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRnの各遅延時間を最適化するようにしてもよい。
【0101】
すなわち、本実施形態の第1の変形例として次のようにしてもよい。図2及び図3を参照して説明した音場調整処理の際、全てのアッテネータATL1〜ATLn,ATR1〜ATRnの減衰率を0dB、全ての遅延素子ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRnの遅延時間を0秒にしたときに、スピーカ25,26に供給される信号SDVL,SDVRと、マイクロフォン27,28で収音される収音信号PL,PRの周波数特性を演算し、これらの演算結果に基づいて、スピーカ25,26とリビングルーム等の空間の伝達関数〔H〕を求め、この伝達関数データ〔H〕を制御部32中の所定記憶領域に記憶する。つまり、図9に示すような伝達関数データ〔H〕を記憶しておく。
【0102】
そして、第1回目の音場調整処理を行った後、ユーザーが他のコンサートホール等を指定して再度の音場調整を行う旨の指示をしたときには、加算器23の出力信号SDVL,SDVRをスピーカ25,26に供給するのは止めて、次式(2)に基づくシミュレーションによって収音信号PL,PRを演算する。つまり、シミュレーションによって擬似的な収音信号PL,PRを求める。
【0103】
更に、演算した収音信号PL,PRをフィルタ回路29,30に適用することにより、被検データDL1(t)〜DLn(t),DR1(t)〜DRn(t)を演算する。そして、この被検データDL1(t)〜DLn(t),DR1(t)〜DRn(t)基づいて上記の両耳間相関係数Cijと差分値〔Tj−Cij〕を演算し、それらの差分値〔Tj−Cij〕に基づいてアッテネータATL1〜ATLn,ATR1〜ATRnの減衰率と遅延素子ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRnの遅延時間を最適化する。
【0104】
つまり、再度の音場調整を行う旨の指示がなされたときには、加算器23の出力信号SDVL,SDVRをスピーカ25,26に供給するのは止めて、次式(2)に基づくシミュレーションによって擬似的な収音信号PL,PRを演算し、この演算によって求めた収音信号PL,PRを実際の収音信号としてフィルタ回路29,30に適用する。
【0105】
【数2】
このように、スピーカとリビングルーム等の空間の伝達関数データ〔H〕を求めた後は、その伝達関数データ〔H〕を用いたシミュレーションによって音場調整を行うようにすると、音場調整の度にスピーカ25,26を鳴動させる必要がなくなり、ユーザーに対する利便性の向上等を図ることが可能となる。
【0106】
尚、この第1の変形例において、上記のシミュレーションによって求めた擬似的な収音信号PL,PRをフィルタ回路29,30に適用することで更に被検データDL1(t)〜DLn(t),DR1(t)〜DRn(t)を求める場合を説明したが、この他に、リビングルーム等の空間の周波数特性とフィルタ回路29,30の周波数特性とを含めた伝達関数のデータ〔H〕を予め記憶しておき、この伝達関数のデータ〔H〕に加算器23の出力信号SDVL,SDVRを適用することで、被検データDL1(t)〜DLn(t),DR1(t)〜DRn(t)を直接に求め、これらの被検データDL1(t)〜DLn(t),DR1(t)〜DRn(t)に基づいて両耳間相関係数を演算するようにしてもよい。
【0107】
また、本実施形態の第2の変形例として、予めスピーカ25,26とユーザーのリビングルーム等の空間の伝達関数データ〔H〕を記憶部32の所定の記憶領域に記憶しておき、ユーザーが所望のコンサートホール等を指定して音場調整を行う旨の指示をしたときには、最初から上記式(2)に基づくシミュレーションによって収音信号PL,PRを演算し、この演算によって求めた収音信号PL,PRを実際の収音信号としてフィルタ回路29,30に適用するようにしてもよい。
【0108】
つまり、上記第1の変形例では、第1回目の音場調整のときにはスピーカ25,26を鳴動させることになるが、この第2の変形例では、スピーカ25,26を鳴動させることなく、予め備えておいた伝達関数データ〔H〕を用いたシミュレーションのみで音場調整を行う。
【0109】
尚、第2の変形例では、製品出荷時に、住宅事情などを考慮した複数種類の伝達関数データ〔H〕を記憶部32に予め記憶させておき、ユーザーがリモートコントローラ等を用いて複数種類の伝達関数の中から自分のリビングルーム等に合った伝達関数を選択指定するようにする。
【0110】
このように第2の変形例によれば、ユーザーに対する利便性の向上等を図ることが可能となり、また、自分のリビングルーム等に合った伝達関数を選択指定させるだけで、所望のコンサートホール等で受聴したときと同様の広がり感の得られる再生音場を提供することができる。また、図1に示したマイクロフォン27,28を不要にすることが可能となる。
【0111】
尚、この第2の変形例の場合にも、シミュレーションによって求めた擬似的な収音信号PL,PRをフィルタ回路29,30に適用することで更に被検データDL1(t)〜DLn(t),DR1(t)〜DRn(t)を求める代わりに、リビングルーム等の空間の周波数特性とフィルタ回路29,30の周波数特性とを含めた伝達関数のデータ〔H〕を予め記憶しておき、この伝達関数のデータ〔H〕に加算器23の出力信号SDVL,SDVRを適用することで、被検データDL1(t)〜DLn(t),DR1(t)〜DRn(t)を直接に求め、これらの被検データDL1(t)〜DLn(t),DR1(t)〜DRn(t)に基づいて両耳間相関係数を演算するようにしてもよい。
【0112】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の音場生成システムは、入力信号を第1の帯域分割手段と遅延手段を通して放音手段に供給し、その再生音を収音して第1の帯域分割手段と同じ帯域幅の第2の帯域分割手段で帯域分割することによって得られる各帯域分割出力に基づいて両耳間相関を演算し、その演算結果に基づいて第1の帯域分割手段毎に設けられている各遅延手段の遅延量を制御することとしたので、両耳間相関演算の演算結果には各分割帯域間の影響が含まれなくなり、高精度で目標の再生音場を実現することができる。
【0113】
また、各遅延手段に減衰率調整手段を設け、上記演算手段の演算結果に基づいて、減衰率調整手段の減衰率を制御する構成とし、第1の帯域分割手段によって設定される帯域毎の入力信号に対し遅延量と振幅制御を行うようにしたので、より高精度で目標の再生音場を生成することができる。
【0114】
また、放音手段から出力される再生音を両耳に相当する受聴位置との間の空間の伝達関数を示すデータを記憶する記憶手段を備え、シミュレーションにより、入力ラインからの放音手段側へ出力される信号を伝達関数を示すデータに基づいて変調処理することにより受聴位置における再生音に相当する変調データを求め、その変調データに基づいて受聴位置における両耳相関を演算し、その演算結果に基づいて遅延手段の遅延量を制御するようにしたので、実際に放音手段から放音される音をマイクロフォン等の収音手段で収音しなくとも、遅延手段の遅延量を最適化することが可能となる。
【0115】
このように、シミュレーションによって音場補正のための処理を行うことで、ユーザーに対する利便性の向上等を図ることが可能となり、また、自分のリビングルーム等に合った伝達関数を選択指定させるだけで、所望のコンサートホール等で受聴したときと同様の広がり感の得られる再生音場を提供することができる等の効果が得られる。
【0116】
また、各遅延手段に減衰率調整手段を設け、シミュレーションによって求めた受聴位置における両耳相関の演算結果に基づいて減衰率調整手段の減衰率を制御することとしたので、入力ラインにおける遅延量の最適化だけでなく、最適な振幅制御も行うことができ、より高精度で目標の再生音場を生成することが可能となる。また、ユーザーに対する利便性の向上等を図ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の音場生成システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の音場生成システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】本実施形態の音場生成システムの動作を更に説明するためのフローチャートである。
【図4】ターゲット両耳間相関係数の一例を模式的示した特性図である。
【図5】両耳間相関係数検出部に供給される複数の被検データを模式的に示したタイミングチャートである。
【図6】遅延回路の遅延時間を最適化調整する際に演算される両耳間相関係数と差分値を示す説明図である。
【図7】遅延回路の遅延時間を最適化調整する方法を示す説明図である。
【図8】アッテネータ回路の減衰率を最適化調整する際に演算される両耳間相関係数と差分値、及び減衰率の最適化調整方法を示す説明図である。
【図9】再生音場の伝達関数を模式的に示す図である。
【図10】従来の音場生成装置の構成を示す図である。
【図11】従来の音場生成装置の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
15,16,29,30…フィルタ回路
17,18…アッテネータ回路
19,20…遅延回路
21,22,23,24…加算器
25,26…スピーカ
27,28…マイクロフォン
31…両耳間相関係数検出部
32…制御部
33,34…増幅器
1000…調整回路
2000…ノイズ発生器
ZL1〜ZLn,ZR1〜ZRn…デジタル遅延素子
ATL1〜ATLn,ATR1〜ATRn…デジタルアッテネータ
BFL1’〜BFLn’,BFR1’〜BFRn’,
BFL1〜BFLn,BFR1〜BFRn…帯域分割デジタルバンドパスフィルタ
Claims (3)
- 入力オーディオ信号に両耳間補正を施して第1,第2の放音手段に供給して鳴動させることにより、目標の再生音場を生成する音場生成システムであって、
無相関ノイズを前記第1,第2のフィルタ手段に供給するノイズ発生手段と、
前記入力オーディオ信号又は前記無相関ノイズを帯域分割する複数の狭帯域バンドパスフィルタを有する第1のフィルタ手段と、前記フィルタ回路で帯域分割された各信号を夫々所定の減衰率で減衰させる複数のアッテネータを有する第1のアッテネータ手段と、前記第1のアッテネータ手段で減衰された各信号を夫々所定の遅延時間で遅延させる複数の遅延素子を有する第1の遅延手段と、前記第1の遅延手段で遅延された各信号と前記オーディオ信号とを加算して第1の加算信号を生成して前記第1の放音手段に供給する第1の加算手段と、を備えた前記第1の入力ラインと、
前記入力オーディオ信号又は前記無相関ノイズを帯域分割する複数の狭帯域バンドパスフィルタを有する第2のフィルタ手段と、前記フィルタ手段で帯域分割された各信号を夫々所定の減衰率で減衰させる複数のアッテネータを有する第2のアッテネータ手段と、前記第2のアッテネータ手段で減衰された各信号を夫々所定の遅延時間で遅延させる複数の遅延素子を有する第2の遅延手段と、前記第2の遅延手段で遅延された各信号と前記オーディオ信号とを加算して第2の加算信号を生成して前記第1の放音手段に供給する第2の加算手段と、を備えた前記第2の入力ラインと、
前記無相関ノイズが前記第1,第2の入力ラインに供給されて前記第1,第2の放音手段から放音される再生音を、受聴者の右耳に相当する受聴位置で収音する第1の収音手段及び受聴者の左耳に相当する受聴位置で収音する第2の収音手段と、
前記第1の収音手段で収音された被検信号と前記第2の収音手段で収音された被検信号とに基づいて両耳間相関係数を演算する両耳間相関係数検出手段と、
前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を一定に設定して、前記第1,第2の遅延手段の遅延素子の遅延時間を変化させ、前記両耳間相関係数検出手段で演算される前記両耳間相関係数とターゲットの両耳間相関係数との差分が最小となるときの前記第1,第2の遅延手段の遅延素子の遅延時間を最適遅延時間と判定して調整すると共に、前記第1,第2の遅延手段の遅延素子の遅延時間を前記最適遅延時間に調整して前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を変化させ、前記両耳間相関係数検出手段で演算される前記両耳間相関係数と目標の両耳間相関係数との差分が最小となるときの前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を最適減衰率と判定して調整する制御手段と、
を具備し、
前記制御手段によって前記最適遅延時間と前記最適減衰率に調整された前記第1,第2の入力ラインにより、前記入力オーディオ信号に両耳間補正を施して目標の再生音場を生成すること、
を特徴とする音場生成システム。 - 入力オーディオ信号に両耳間補正を施して第1,第2の放音手段に供給して鳴動させることにより、目標の再生音場を生成する音場生成システムであって、
前記入力オーディオ信号又は無相関ノイズを帯域分割する複数の狭帯域バンドパスフィルタを有する第1のフィルタ手段と、前記フィルタ回路で帯域分割された各信号を夫々所定の減衰率で減衰させる複数のアッテネータを有する第1のアッテネータ手段と、前記第1のアッテネータ手段で減衰された各信号を夫々所定の遅延時間で遅延させる複数の遅延素子を有する第1の遅延手段と、前記第1の遅延手段で遅延された各信号と前記オーディオ信号とを加算して第1の加算信号を生成して前記第1の放音手段に供給する第1の加算手段と、を備えた前記第1の入力ラインと、
前記入力オーディオ信号又は無相関ノイズを帯域分割する複数の狭帯域バンドパスフィルタを有する第2のフィルタ手段と、前記フィルタ手段で帯域分割された各信号を夫々所定の減衰率で減衰させる複数のアッテネータを有する第2のアッテネータ手段と、前記第2のアッテネータ手段で減衰された各信号を夫々所定の遅延時間で遅延させる複数の遅延 素子を有する第2の遅延手段と、前記第2の遅延手段で遅延された各信号と前記オーディオ信号とを加算して第2の加算信号を生成して前記第1の放音手段に供給する第2の加算手段と、を備えた前記第2の入力ラインと、
前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を一定、且つ前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を一定に設定して、前記無相関ノイズが前記第1,第2の入力ラインに供給されて前記第1,第2の放音手段から放音される再生音を、受聴者の右耳に相当する受聴位置で収音する第1の収音手段及び受聴者の左耳に相当する受聴位置で収音する第2の収音手段と、
前記第1の収音手段で収音された被検信号と前記第2の収音手段で収音された被検信号とに基づいて前記第1,第2の放音手段から受聴者の左右の耳までの伝達関数を演算して記憶手段に記憶させると共に、前記記憶手段に記憶させた前記伝達関数に基づいて前記第1,第2の収音手段で収音したのに相当する疑似検出信号を生成して、両耳間相関係数検出手段にて前記疑似検出信号から両耳間相関係数を演算させ、該演算した両耳間相関係数とターゲットの両耳間相関係数との差分が最小となるときの前記第1,第2の遅延手段の遅延素子の遅延時間を最適遅延時間として調整し、且つ前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を最適減衰率として調整する制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶させた前記伝達関数に基づいて、前記第1,第2の遅延手段と前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータとの以後の調整を行うこと、
を特徴とする音場生成システム。 - 入力オーディオ信号に両耳間補正を施して第1,第2の放音手段に供給して鳴動させることにより、目標の再生音場を生成する音場生成システムであって、
前記入力オーディオ信号を帯域分割する複数の狭帯域バンドパスフィルタを有する第1のフィルタ手段と、前記フィルタ回路で帯域分割された各信号を夫々所定の減衰率で減衰させる複数のアッテネータを有する第1のアッテネータ手段と、前記第1のアッテネータ手段で減衰された各信号を夫々所定の遅延時間で遅延させる複数の遅延素子を有する第1の遅延手段と、前記第1の遅延手段で遅延された各信号と前記オーディオ信号とを加算して第1の加算信号を生成して前記第1の放音手段に供給する第1の加算手段と、を備えた前記第1の入力ラインと、
前記入力オーディオ信号を帯域分割する複数の狭帯域バンドパスフィルタを有する第2のフィルタ手段と、前記フィルタ手段で帯域分割された各信号を夫々所定の減衰率で減衰させる複数のアッテネータを有する第2のアッテネータ手段と、前記第2のアッテネータ手段で減衰された各信号を夫々所定の遅延時間で遅延させる複数の遅延素子を有する第2の遅延手段と、前記第2の遅延手段で遅延された各信号と前記オーディオ信号とを加算して第2の加算信号を生成して前記第1の放音手段に供給する第2の加算手段と、を備えた前記第2の入力ラインと、
前記第1,第2の放音手段から受聴者の左右の耳までの伝達関数が予め記憶された記憶手段と、
記憶手段に記憶されている前記伝達関数に基づいて、前記第1,第2の放音手段から受聴者の左右の耳に到達する音に相当する疑似検出信号を生成して、両耳間相関係数検出手段にて前記疑似検出信号から両耳間相関係数を演算させ、該演算した両耳間相関係数とターゲットの両耳間相関係数との差分が最小となるときの前記第1,第2の遅延手段の遅延素子の遅延時間を最適遅延時間として調整し、且つ前記第1,第2のアッテネータ手段のアッテネータの減衰率を最適減衰率として調整する制御手段と、
を具備すること、
を特徴とする音場生成システム。
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