JP3889129B2 - ヒートシンクの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、各種の熱交換機器や熱伝達装置等において熱交換面積を増大させるためのヒートシンクに関し、特にダイカスト法や加圧鋳造法を利用して製造されるヒートシンクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヒートパイプ等の熱関連機器において、放熱面積あるいは吸熱面積を拡大して熱交換能力を向上させるために、ヒートシンクを備えることは周知の通りである。
【0003】
その一例を図10および図11に示す。図10に示すヒートシンク41は、互いに平行に配列された複数枚の平板状のフィン42が平板状のベース43の上面から垂直上方に延ばされた構成であり、例えばアルミ合金を素材とした押し出し成型法によって製造される。また、図11に示すヒートシンク41は、フィン42を平板状に替えて円柱形状に形成した構成であり、例えば銅合金を素材とした鍛造によって製造される。
【0004】
ここで、上記の押し出し成形や鍛造は、単一の素材からフィン42とベース43とを一体に加工する方法であるから、図12に示すように、この種の方法によって製造し得るフィン42は、厚さ(t)が最小で2mm程度が限度であり、また、厚さ(t)を2mmに設定した場合のフィン2の高さ(h)は、最大で20mm程度が限度である。さらに、各フィン42の間のピッチ(p)としては、最小で5mm以上が必要とされている。
【0005】
このように、上記の押し出し成形や鍛造による製造方法によって得られる従来のヒートシンク41では、フィン42を薄くかつ高く形成することができず、また、ベース43の表面積に対して備えられるフィン42の枚数(本数)も少ないことから、充分な熱交換面積を得ることができなかった。
【0006】
そこで、上記の課題を解決する手段として、ダイカスト法や加圧鋳造法を採用したヒートシンクが提案されており、これを図13を参照して簡単に説明する。この種のヒートシンク51は、予め所定形状に形成した複数枚の圧延板を互いにほぼ平行に保持した状態で、それらの圧延板の各下端部のうちの例えば2mm程度を一体に鋳込むように溶湯を供給かつ加圧し、これを凝固させることにより、平板状のベース53と一体化させた構成である。この鋳造法によれば、既製の圧延板がフィン52として採用できるから、フィン52における薄さと高さとの両立が可能になるとともに、各フィン52のピッチを狭く設定することができ、その結果、ヒートシンク51としての熱交換面積を上記従来のものに比べて大きくすることができる。
【0007】
しかしながら、この種のヒートシンク51では、フィン52が変形し易くなる不都合があった。これは、フィン52の基端部側に作用する荷重がフィン52の高さに比例して大きくなることや、ベース53を鋳造する際の溶湯の熱によってフィン52自体が軟化していることなどが原因であると思われる。フィンが変形した場合、フィン同士が接触して実質的な表面積が減少し、熱交換効率あるいは放熱効率が低下するから、フィンの間にスペーサを設けたり、あるいはフィン自体に突起を設け、これらスペーサや突起によってフィン同士の間隔を維持し、熱交換面積の減少を防止することが考えられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、スペーサを設ける場合では、スペーサを保持させるための部分的な加工をフィンに施す必要が生じ、またスペーサという新たな部品が必要であるうえに、スペーサによってフィンの表面の一部が覆われ、その分、放熱面積が減少する不都合がある。
【0009】
また突起は、フィンの一部をその厚さ方向に変形させて形成するので、突起の反対側には凹部が生じる。したがって全てのフィンで突起の位置が同じであれば、フィンの傾斜によって一方のフィンの突起がこれら隣接するフィンの凹部に入り込み、そのため、結局は、突起がいわゆるスペーサとして機能しなくなり、フィン同士が接触してしまう。これを防止するためには、突起のピッチをフィン毎に異ならせるなどの加工が必要であり、そのために、工数が増加してコストアップの要因になるなどの不都合が生じる。
【0010】
この発明は上記の事情を背景にしてなされたものであり、間隔の狭いフィンの強度を向上させ、フィンの変形やそれに起因する接触による実質的に表面積の減少を防止することのできるヒートシンクの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、相互に平行に配列した複数の金属製フィンの一端部を、キャビティの内部に突出させて保持するとともに、そのキャビティにベースを形成する素材の溶湯を注入して凝固させることにより、前記フィンを前記ベースに対して起立状態に一体化し、ついで、前記フィンに熱処理を施してその金属組織を微細化することを特徴とするものである。
【0012】
したがって、請求項1の発明において、形成されたヒートシンクのフィンを、フィンに用いられた素材に適した熱処理を施すことによってフィンの材質の組織が微細化される。その結果、フィンの強度が向上し、フィンの変形を防ぐことができる。
【0013】
また、請求項2に記載した発明は、相互に平行に配列した複数の金属製フィンの一端部を、キャビティの内部に突出させて保持するとともに、そのキャビティにベースを形成する素材の溶湯を注入して凝固させることにより、前記フィンを前記ベースに対して起立状態に一体化し、ついで、前記フィンを厚さ方向に加圧して加工硬化させることを特徴とするものである。
【0014】
したがって、請求項2の発明において、フィンを厚さ方向に加圧し、フィンを加工硬化させることによって、フィンの強度が向上し、フィンの変形を防ぐことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明の一具体例を図面に基づいて説明する。図1はフィンを示す図であり、このフィン1は、一例として長方形のアルミニウム(Al)製あるいはAl合金製の平板である。
【0016】
そして、フィン1をベースと一体に組み付ける。これは、例えばダイカスト法や加圧鋳造法に基づいて行うことができる。より具体的には、図2に示すように、複数枚のフィン1の各上端部を上型(可動型)11に保持させる。その場合、これらのフィン1はそれぞれの下端部を下型(固定型)12の内部空間に突出させた状態に保持される。
【0017】
上型11の底面部と下型12の上面部とは、共に平坦面を成しており、型閉じ状態での両者の間隔は、前述したフィン1の下端部の突出長さより長くなっている。このように上型11と下型12とによって得るべきベース2の形状にほぼ倣った形伏のキャビティ13が形成されている。また、下型12には、ベース2の素材である銅(Cu)あるいはCu合金の溶湯14を図2での下方から上方に向けて押圧する構成の加圧プランジャ15が備えられている。
【0018】
上記の状態から、図3に示すように、加圧プランジャ15を上型11に向けて矢印方向に移動させ、溶湯14に対して圧力を加える。
【0019】
フィン1の下端部がCuあるいはCu合金の溶湯14に接触すると、CuあるいはCu合金の融点に対してAlあるいはAl合金の融点が低いためにフィン1の表面が溶かされる。そして、溶湯14およびフィン1の素材が共に凝固すると、ベース2とフィン1とが一体に連結する。更に、通例に倣う冷却・洗浄工程等を行う。その結果、べース2中に空孔欠陥の殆どなく、しかもベース2に変形のないヒートシンク3を得ることができる。
【0020】
ついで、ヒートシンク3に熱処理を施す。特にフィン1に強度向上のための熱処理を施す。その一例として、上述のようにして一体化したフィン1とベース2とからなるヒートシンク3を図示しない電気炉内におき、雰囲気を真空にして均一に加熱する。そして、加熱されたヒートシンク3を油浴中に浸漬することによりヒートシンク3を急冷する。その際の急冷の速度は、ヒートシンク3に用いられている素材に固有の臨界冷却速度以上である必要がある。また、焼入れの後、必要があれば焼戻しを行う。
【0021】
上記のように構成されたヒートシンク3を、図4および図5を参照して説明する。ベース2の図4での上面部には、複数枚のフィン1が上方に延びた状態に突設されており、これらのベース2とフィン1とによってヒートシンク3が構成されている。
【0022】
また、フィン1は、ベース2の鋳造の際に加熱され、かつ徐冷されて強度が一旦低下したものの、上述した熱処理によって組織が微細化され、その強度が向上している。したがって外力による変形が生じにくくなっている。すなわち堅牢でかつ熱交換面積の広いヒートシンク3を得ることができる。
【0023】
つぎに、この発明の他の具体例について説明する。ここに示す例はダイカスト法や加圧鋳造法によって形成されたヒートシンクを加圧液中に浸漬し、フィンを加圧する例である。なお、ここに示すヒートシンクは上記第一実施例と同じくダイカスト法や加圧鋳造法によって形成することができ、したがって以下の説明では鋳造後のヒートシンクを加圧液中に浸漬し、フィンを加圧する工程について説明する。
【0024】
図6はヒートシンクを加圧液中に浸漬した状態を示す図である。図6の上側には円柱状のラム21が設けられている。そして、図6の下側の一端部が閉じられた円筒状の容器22が設けられている。なお、容器22の内径はラム21の外径と等しく、ラム21が容器22に液密状態を維持して嵌入できるように構成されている。
【0025】
そして、容器22に加圧液としてはたらく作動油23を注入し、続いて鋳造されたヒートシンク3を作動油23に浸漬させる。なお、ヒートシンク3は作動油23中に保持されるようになっている。次に、ラム21を容器22に挿嵌し、ラム21によって図6の下方向に作動油23を加圧する。その圧力は、一例として5.0kgf/cm2〜50kgf/cm2程度である。そして、加圧の後、容器22からヒートシンク3を取り出し、ヒートシンク3に付着している作動油23を洗浄等によって除去し乾燥する。
【0026】
作動油23を介してフィン1を加圧することによって、厚さの薄いフィン1の厚さ方向に均一に油圧を加えることができ、加圧中にフィン1が変形することはない。また、フィン1が加圧されることによって加工硬化し、強度が向上する。その結果、フィン1の変形を防ぐことができ、構成が強固で熱交換面積の大きいヒートシンク3を得ることができる。
【0027】
そして、この発明のさらに他の具体例について説明する。ここに示す例はダイカスト法や加圧鋳造法によって形成されたヒートシンクを熱処理するのに替えて、そのヒートシンクのフィン表面に微細粒子を付着させることによってフィン表面の表面粗さを粗くする例である。なお、ここに示すヒートシンクは上記第一実施例と同じくダイカスト法や加圧鋳造法によって形成することができ、したがって以下の説明では鋳造後のヒートシンクのフィンの表面に微細粒子を付着させることについて説明する。
【0028】
まず、ヒートシンク3のフィン1の表面から接着を阻害する物質を取り除く前処理をフィン1に施す。前処理完了後、ヒートシンク3をクランパ31によって支持した状態でフィン1を接着剤32液中に浸漬させる。図7はその状態を示している。ここで用いられる接着剤としては耐熱性と熱伝導性とを併せもった接着剤が用いられる。
【0029】
そして、図8に示すように、接着剤液中に浸漬させた後のヒートシンク3をクランパ31によって支持した状態で、フィン1の表面に微細粒子33が付着するようにヒートシンク3を微細粒子33が入っている容器34に挿入する。なお、ここで用いられる微細粒子33には、例として材質がAlやアルミナ(Al2O3)であり、粒径は100μm〜500μmの微細粒子が用いられている。さらに、フィン1の表面全域に微細粒子32が付着するように、容器34を図8における左右方向に振動させる。そして、完全に付着するように、ヒートシンク3に乾燥などの処理を施す。
【0030】
図9はフィン1の表面に微細粒子33が付着したヒートシンク3を示している。フィン1の表面に微細粒子33が付着していることによって、外気に接するフィンの表面積が増加することによりフィンの熱伝達効率を増加させることができる。
【0031】
なお、上記各具体例では、平板状のフィンを例示したが、この発明は上記具体に限定されるものではなく、フィンの形状は例えば波状に湾曲した薄板でもよい。また、フィンの素材は、圧延材に限定されず、切削加工によって形成されたものあるいは鋳造によって形成された円柱形状のものなどを採用することができる。さらに、フィンやベースの素材としてCuおよびAl等を例示したが、これには限定されず、例えばグラファイトやマグネシウム等を採用することができる。
【0032】
また、この発明におけるフィンの熱処理は、その組織の微細化による強度の向上のためにものであり、したがってその加熱冷却の方法は、上述した例以外に、例えば、高周波焼入れや火炎焼入れなどの表面硬化熱処理法を用いてもよい。
【0033】
さらに、この発明においてフィンを加圧するのは、その加工硬化による強度の向上のためであり、したがってその加圧の手段として上述した油圧による加圧以外に、水圧による方法や、プレス型を用いた方法などを採用することができる。
【0034】
そしてこの発明における微細粒子の付着は、フィンの表面積の増大のためにおこなうのであり、したがって上述した具体例以外に、ブラスト加工やエッチング加工あるいは切削加工のようにフィンの表面を凹凸加工することによって、フィンの表面積を増大させる方法を用いてもよい。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載した発明によれば、ベースの鋳造に伴って熱影響を受けた薄肉のフィンを、熱処理によって組織を微細化して強度を向上させることができるので、使用中のフィンの変形を防止し、その結果、フィン同士の接触による実質的な放熱面積の減少のない放熱特性に優れたヒートシンクを得ることができる。
【0036】
また請求項2に記載した発明においても、ベースの鋳造に伴って熱影響を受けた薄肉のフィンの強度を加工硬化によって向上させることができるので、請求項1の発明による場合と同様に、フィン同士の接触による実質的な放熱面積の減少のない放熱特性に優れたヒートシンクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】単体のフィンを示す概略図である。
【図2】フィンをベースに組み付ける工程において加圧前の状態を示す模式図である。
【図3】その工程において加圧中の状態を示す模式図である。
【図4】ヒートシンクの完成体を示す概略図である。
【図5】そのヒートシンクの断面図である。
【図6】ヒートシンクを油圧により加圧する工程において加圧中の状態を示す模式図である。
【図7】ヒートシンクに設けられたフィンを接着剤液中に浸漬する状態を示す模式図である。
【図8】ヒートシンクに設けられたフィンを微細粒子中に挿入する状態を示す模式図である。
【図9】フィンに微細粒子が付着したヒートシンクを示す概略図である。
【図10】従来のヒートシンクを示す概略図である。
【図11】従来のヒートシンクの他の例を示す概略図である。
【図12】従来のヒートシンクの断面図である。
【図13】加圧鋳造法によって製造されたヒートシンクを示す断面図である。
【符号の説明】
1…フィン、 2…ベース、 3…ヒートシンク、 14…溶湯、 32…微細粒子。
Claims (2)
- 相互に平行に配列した複数の金属製フィンの一端部を、キャビティの内部に突出させて保持するとともに、そのキャビティにベースを形成する素材の溶湯を注入して凝固させることにより、前記フィンを前記ベースに対して起立状態に一体化し、ついで、前記フィンに熱処理を施してその金属組織を微細化することを特徴とするヒートシンクの製造方法。
- 相互に平行に配列した複数の金属製フィンの一端部を、キャビティの内部に突出させて保持するとともに、そのキャビティにベースを形成する素材の溶湯を注入して凝固させることにより、前記フィンを前記ベースに対して起立状態に一体化し、ついで、前記フィンを厚さ方向に加圧して加工硬化させることを特徴とするヒートシンクの製造方法。
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