JP3888489B2 - セルロース系繊維製品の処理方法 - Google Patents

セルロース系繊維製品の処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロース系繊維製品の処理方法に関する。特に、セルロース系繊維製品の形態安定加工方法に関し、黄変や変色を防止しながら、合理的に且つ経済的に形態安定加工できる方法を提供するものである。また、セルロース系繊維製品の染色方法に関し、形態安定加工が施されているセルロース系繊維製品を、合理的に且つ経済的に中濃色に染色できる方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
綿やビスコースレーヨン等を用いて得られたセルロース系編織物は、一般に、形態安定性が悪い。即ち、セルロース系編織物はしわがより易く、W/W性(ウォッシュアンドウエア性)が悪く、また、ひだ付け加工されたセルロース系編織物は、そのひだが洗濯によって簡単に消失してしまう。このような形態安定性の悪さを改善するために、従来より、セルロース系編織物に樹脂加工を施すことが行なわれている。この樹脂加工は、セルロース分子相互間を架橋するもので、例えばジメチロール尿素やジメチロールトリアゾン等の各種架橋剤をセルロース系編織物に付与して行なうものである。この樹脂加工によって、セルロース分子相互間が動きにくくなって、セルロース系編織物に形態安定性が付与されるのである。しかしながら、この方法は、セルロース系繊維への樹脂付着を伴うことにより、セルロース系繊維の引張強力や摩耗強力を低下させるという欠点があった。
【0003】
このため、近年、セルロース系繊維製品に樹脂付着を伴わない、形態安定加工法が提案されている。この方法は、セルロース系繊維製品を、絶対圧力3kgf/cm2以上で且つ温度130℃以上の水蒸気雰囲気下で所定時間処理することによって、セルロース系繊維製品に形態安定性を付与するというものである(特開平5−33259号公報)。この方法の作用は、セルロース系繊維製品を高圧・高温の水蒸気で処理することによって、セルロース繊維内部の非晶領域ないしは疑結晶領域における水素結合を水蒸気の作用により切断し、セルロース分子を外力に応じて移動せしめた後、所定の状態で結晶化を進行させるというものである。従って、高圧・高温の水蒸気処理を終えたセルロース系繊維製品は、その処理時の形態に固定され、洗濯等を数回程度繰り返しても、しわが生じにくく、また当初の形態を消失しにくいものである。
【0004】
しかしながら、この方法で形態安定加工を行なうと、白地のセルロース系繊維製品が黄変するという傾向があった。また、先染めした任意の色のセルロース系繊維製品が変色するという傾向があった。このような黄変及び変色は、水蒸気雰囲気中に含まれている空気(酸素)に、高い温度及び圧力が与えられるため、酸素が活性化して、セルロース繊維を酸化させるからであると考えられる。従って、水蒸気雰囲気中に空気が含まれないようにすれば、この黄変及び変色を防止することができると考えられる。例えば、密閉容器を真空にした後、水蒸気のみをこの容器中に導入すれば、空気の存在しない水蒸気雰囲気が得られると考えられる。しかし、現実的には、密閉容器を完全に真空することは困難で、若干量の空気がどうしても残る。また、水蒸気のみを導入することも困難で、水蒸気と共に若干量の空気がどうしても導入される。
【0005】
また、この方法は、セルロース分子の結晶化を進行させて、形態安定性を図るものであるため、処理後のセルロース系繊維製品を染色した場合に、濃色に染色しにくいということがあった。即ち、セルロース繊維の染色は、非晶領域に染料が染着することによって行なわれるのであるが、処理後のセルロース繊維には、非晶領域が少なくなっている傾向があり、多量の染料が染着しにくく、そのために、セルロース繊維を中濃色に合理的且つ経済的に染色しにくい傾向にある。また、セルロース繊維表面の結晶化が進行していると、セルロース繊維内部にある程度非晶領域があっても、その非晶領域に染料が侵入しにくく、セルロース繊維を中濃色に合理的且つ経済的に染色しにくくなる傾向となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者等は、特開平5−33259号公報に記載された方法を利用しながら、なおかつ、セルロース系繊維製品の黄変及び変色を防止する方法を見出すべく、種々研究を行なった。その結果、予期せぬことに、高圧・高温の水蒸気処理の前に、セルロース系編織物等のセルロース系繊維製品に特殊な予備処理をしておくと、黄変及び変色を防止しながら、良好な形態安定加工が行なえることを見出し、請求項1又は2に係る発明に到達したのである。
【0007】
また、本発明者等が研究を進めていたところ、特開平5−33259号公報に記載された方法とは異なる方法を採用することによって、セルロース系編織物等のセルロース系繊維製品に、黄変及び変色を防止しながら、良好な形態安定加工が行なえることを見出し、請求項3に係る発明に到達したのである。
【0008】
また、本発明者等は、特開平5−33259号公報に記載された方法を利用しながら、なおかつ、染色性を向上させる方法を見出すべく、種々研究を行なった。その結果、予期せぬことに、高圧・高温の水蒸気処理の前に、セルロース系編織物等のセルロース系繊維製品に特殊な予備処理をしておくと、形態安定性及び染色性の両者を向上させうることを見出し、請求項5又は6に係る発明に到達したのである。
【0009】
更に、本発明者等が研究を進めていたところ、特開平5−33259号公報に記載された方法とは異なる方法を採用することによって、セルロース系編織物等のセルロース系繊維製品に、良好な形態安定性及び染色性を与えうることを見出し、請求項7に係る発明に到達したのである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
特開平5−33259号公報に記載された方法と利用関係を有する請求項1又は2に係る発明は、水分が60重量%以上付与されたセルロース系繊維製品、又はヒドロトロープ剤が付着したセルロース系繊維製品を、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の水蒸気雰囲気下で、かつ、密閉容器内で30秒間〜60分間、一定の形状を維持した状態で、処理することを特徴とするセルロース系繊維製品の形態安定加工方法に関するものである。
【0011】
また、特開平5−33259号公報に記載された方法とは異なる請求項3に係る発明は、セルロース系繊維製品を、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の熱水中で、かつ、密閉容器内で30秒間〜60分間、一定の形状を維持した状態で、処理することを特徴とするセルロース系繊維製品の形態安定加工方法に関するものである。
【0012】
また、特開平5−33259号公報に記載された方法と利用関係を有する請求項5又は6に係る発明は、水分が60重量%以上付与されたセルロース系繊維製品、又はヒドロトロープ剤が付着したセルロース系繊維製品を、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の水蒸気雰囲気下で、かつ、密閉容器内で30秒間〜60分間、一定の形状を維持した状態で、処理した後、染色することを特徴とするセルロース系繊維製品の染色方法に関するものである。
【0013】
また、特開平5−33259号公報に記載された方法とは異なる請求項7に係る発明は、セルロース系繊維製品を、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の熱水中で、かつ、密閉容器内で30秒間〜60分間、一定の形状を維持した状態で、処理した後、染色することを特徴とするセルロース系繊維製品の染色方法に関するものである。
【0014】
まず、本発明においては、セルロース繊維を含むセルロース系繊維製品を準備する。セルロース繊維としては、従来公知のものであればどのようなものでも用いることができ、例えば、綿,ビスコースレーヨン,ポリノジック,テンセル,キュプラ等を用いることができる。セルロース系繊維製品としては、セルロース繊維、この繊維を紡績したセルロース系糸条,この糸条を製編織してなるセルロース系編織物,この編織物を縫製してなる衣料品等のセルロース系最終製品,セルロース繊維を集積してなるセルロース系不織布等を挙げることができる。セルロース系糸条や編織物等には、セルロース繊維の他に、ポリエステル繊維やナイロン繊維等の異種繊維が若干量混合されていても良い。
【0015】
形態安定加工のみを施す場合には、セルロース系繊維製品中のセルロース繊維は、一般的に、漂白されているか又は先染めされている。セルロース繊維を漂白又は先染めするには、セルロース系繊維製品を漂白又は先染めすれば良いことは言うまでもない。しかし、セルロース繊維は、漂白も先染めもされず、市販のままの状態(原綿のときの状態)であっても良い。セルロース系繊維製品を漂白するには、さらし粉,次亜塩素酸ナトリウム,過酸化水素,亜塩素酸ナトリウム,過酸,塩素化イソシアヌル酸等の従来公知の漂白剤を用いて、連続式,半連続式,非連続式等の従来公知の方法で行なえば良い。また、セルロース系繊維製品を先染めするには、直接染料,反応染料,建染染料,硫化染料等の従来公知の染料を用いて、浸染法,連続染色法,コールドバッチ法,捺染法等の従来公知の方法で行なえば良い。
【0016】
また、形態安定加工の後に染色を施す場合には、セルロース系繊維製品中のセルロース繊維は、一般的に、先染めされず漂白のみがなされている。しかし、セルロース繊維は、先染めも漂白もされずに、原綿のときの状態のままであっても良い。また、稀には、先染めされていることもある。
【0017】
このようなセルロース系繊維製品に、水分を60重量%以上付与する。セルロース系繊維製品に水分を付与するには、セルロース系繊維製品を水に浸漬した後、水分が所定の重量割合となるように、マングル等で絞れば良い。また、セルロース系繊維製品にスプレー法等によって水を噴霧し、水分が所定の重量割合となるようにすれば良い。水分の付与量が60重量%未満であると、セルロース系繊維製品の形態安定性は向上するものの、形態安定加工時にセルロース繊維が黄変又は変色する恐れがある。また、形態安定加工後に染色する場合には、染色性が向上しないので、好ましくない。ここで、水分の重量割合は、以下の方法によって測定及び算出されるものである。即ち、標準状態(温度20℃で相対湿度65%)におけるセルロース系繊維製品の重量をW0とし、水分が付与されたセルロース系繊維製品の重量をW1としたとき、水分の付与量(重量%)=[(W1−W0)/W0]×100、で算出されるものである。なお、セルロース系繊維製品に水分を付与する際、水分と共に、他の物質が付与されても差し支えない。例えば、界面活性剤,ヒドロトロープ剤,塩基性物質等が付与されても差し支えない。
【0018】
また、水分を付与するのに代えて、ヒドロトロープ剤をセルロース系繊維製品に付着しても良い。ヒドロトロープ剤としては、尿素,チオ尿素,ホルムアミド,アセトアミド,アセトン,チオシアン酸ナトリウム等のチオシアン酸塩,塩酸グアニジン,トリエタノールアミン,トリエチレングリコール,テトラエチレングリコール,ε−カプロラクタム,ジシアンジアミド,ベンゼンスルホン酸ナトリウム等のベンゼンスルホン酸塩,トルエンスルホン酸ナトリウム等のトルエンスルホン酸塩,N−ベンジルスルファニル酸ナトリウム等のN−ベンジルスルファニル酸塩,アルキルアルコール,フェノール,クレゾール塩等を用いることができる。
【0019】
ヒドロトロープ剤は、水に可溶性の物質であるため、水溶液の状態でセルロース系繊維製品に付与し、その後、乾燥して水を蒸発除去し、セルロース系繊維製品にヒドロトロープ剤を付着させれば良い。セルロース系繊維製品に対するヒドロトロープ剤の付着量(固形分としての付着量)は、5〜50重量%程度が好ましい。この付着量も、以下の方法で測定及び算出されるものである。即ち、標準状態(温度20℃で相対湿度65%)におけるセルロース系繊維製品の重量をW0とし、ヒドロトロープ剤が付着したセルロース系繊維製品の重量をW2としたとき、ヒドロトロープ剤の付着量(重量%)=[(W2−W0)/W0]×100、で算出されるものである。また、ヒドロトロープ剤を付着する際に用いる水溶液(ヒドロトロープ剤が溶解した水溶液)の濃度は、1〜50重量%程度であるのが好ましい。
【0020】
以上のようにして、水分が所定量付与されたセルロース系繊維製品、又はヒドロトロープ剤が付着したセルロース系繊維製品を準備する。水分又はヒドロトロープ剤が付与又は付着したセルロース系繊維製品には、後述する水蒸気処理を行なうに際して、一定の形付け加工が施されていても良いし、施されていなくても良い。いずれの場合であっても、一定の形状を維持した状態で、水蒸気処理を行うことによって、W/W性の向上や形付けが消失しにくくなる等の形態安定性を付与しうる。形付け加工としては、例えば、以下のような形付けを挙げることができる。セルロース系繊維製品がセルロース繊維そのものである場合には、捲縮加工等によってクリンプを設けることが挙げられる。また、セルロース系糸条の場合には、嵩高加工等によって捩れや曲がりを付与することが挙げられる。また、セルロース系編織物の場合には、しぼ付け加工やひだ付け加工等によって、所定のしぼやひだ等を付与することが挙げられる。更に、衣料品等のセルロース系最終製品の場合には、プリーツ加工等によって、所定の箇所に折り目線を設けることが挙げられる。
【0021】
このようなセルロース系繊維製品を、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の水蒸気雰囲気下で、かつ、密閉容器内で30秒間〜60分間、処理する。具体的には、一定容積の密閉した容器中に、温度140℃以上に過熱した水蒸気を充填することによって、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の水蒸気雰囲気が得られる。一般に、一定温度の水蒸気を、密閉容器中に充填してゆくと、飽和蒸気圧までの絶対圧力を得ることができる。例えば、温度140℃の水蒸気の場合、絶対圧力を約4kgf/cm2とすることができる。また、温度が150℃の水蒸気の場合、絶対圧力は約5kgf/cm2とすることができ、温度が190℃の水蒸気の場合、絶対圧力は約13kgf/cm2とすることができ、温度が200℃の水蒸気の場合、絶対圧力は約16kgf/cm2とすることができる。本発明においては、飽和蒸気圧における絶対圧力で処理しても良いが、その必要はなく、要するに、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の水蒸気雰囲気下、かつ、密閉容器内であれば良い。特に、好ましくは、絶対圧力が4〜16kgf/cm2で且つ温度が140〜200℃であり、より好ましくは、絶対圧力が5〜13kgf/cm2で且つ温度が150〜190℃であるのが良い。そして、このような水蒸気雰囲気下で、30秒〜60分、好ましく1分〜30分程度の時間処理する。
【0022】
この処理を終えたセルロース系繊維製品は、水(水蒸気による水も含む。)を含有しているので、乾燥して水分を蒸発除去する。また、ヒドロトロープ剤が付着している場合には、洗浄してヒドロトロープ剤を除去する。しかし、水やヒドロトロープ剤がセルロース系繊維製品に含有或は付着していても差し支えない場合は、除去する必要はない。以上のようにして、黄変又は変色を防止しながら、セルロース系繊維製品に形態安定加工を施すことができるのである。
【0023】
以上のような形態安定加工を施した後、このセルロース系繊維製品に、従来公知の方法で染色を施すこともできる。即ち、直接染料,反応染料,建染染料,硫化染料等の従来公知の染料を用いて、浸染法,連続染色法,コールドバッチ法,捺染法等の従来公知の方法で染色することができる。本発明においては、特にセルロース分子と反応して染着される反応染料を用いるのが、洗濯堅牢度の点で好ましい。
【0024】
以上、セルロース系繊維製品を水蒸気雰囲気下で処理する方法に関して述べたが、本発明は、水蒸気雰囲気下での処理に代えて、熱水中で処理しても良い。即ち、セルロース系繊維製品を、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の熱水中で、かつ、密閉容器内で30秒間〜60分間、処理しても良い。具体的には、一定容積の密閉した容器中に、温度140℃以上に過熱した水を一定量投入するか、又はそれ以下の温度の水を一定量投入した後、昇温して水の温度を140℃以上とし、密閉容器中の気相の蒸気圧を絶対圧力4kgf/cm2以上として、気相と液相(水相)とを平衡状態に維持すれば良い。そして、この熱水中にセルロース系繊維製品を浸漬しておけば、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上で、セルロース系繊維製品を処理することができる。熱水中における処理条件も、好ましくは、絶対圧力が4〜16kgf/cm2で且つ温度が140〜200℃であり、より好ましくは、絶対圧力が5〜13kgf/cm2で且つ温度が150〜190℃であるのが良い。そして、このような熱水中で、30秒〜60分、好ましくは1分〜30分程度の時間処理する。なお、熱水中に、界面活性剤,ヒドロトロープ剤,塩基性物質等の他の物質が併存しており、これらがセルロース系繊維製品に付与されても差し支えない。
【0025】
この処理を終えたセルロース系繊維製品は、水を含有しているので、乾燥して水分を蒸発除去する。また、熱水中に、界面活性剤,ヒドロトロープ剤,塩基性物質等の他の物質を溶解又は分散させておいた場合には、セルロース系繊維製品に界面活性剤等の他の物質が付着しているので、洗浄してこれらを除去する。しかし、水や界面活性剤等がセルロース系繊維製品に含有或は付着していても差し支えない場合は、除去する必要はない。以上のようにして、黄変又は変色を防止しながら、セルロース系繊維製品に形態安定加工を施すことができるのである。
【0026】
以上のような形態安定加工を施した後、このセルロース系繊維製品に、従来公知の方法で染色を施すこともできる。即ち、直接染料,反応染料,建染染料,硫化染料等の従来公知の染料を用いて、浸染法,連続染色法,コールドバッチ法,捺染法等の従来公知の方法で染色することができる。本発明においては、特にセルロース分子と反応して染着される反応染料を用いるのが、洗濯堅牢度の点で好ましい。
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこの実施例に限られるものではない。請求項1又は2に係る発明は、高圧・高温の水蒸気処理の前に、セルロース系繊維製品に特殊な予備処理をしておくと、セルロース系繊維製品の黄変又は変色を防止しながら、形態安定加工を行なうことができるという技術的思想によるものとして解釈されるべきである。また、請求項3に係る発明は、水蒸気処理に代えて、高圧・高温の熱水処理をセルロース系繊維製品に施すと、予備処理を施さなくても、セルロース系繊維製品の黄変又は変色を防止しながら、形態安定加工を行なうことができるという技術的思想によるものとして解釈されるべきである。また、請求項5又は6に係る発明は、高圧・高温の水蒸気処理の前に、セルロース系繊維製品に特殊な予備処理をしておくと、形態安定性及び染色性の両者を向上させうるという技術的思想によるものとして解釈されるべきである。更に、請求項7に係る発明は、水蒸気処理に代えて、高圧・高温の熱水処理をセルロース系繊維製品に施すと、予備処理を施さなくても、形態安定性及び染色性の両者を向上させうるという技術的思想によるものとして解釈されるべきである。
【0028】
【実施例】
実施例1
30番手のビスコースレーヨン紡績糸(単糸)を経糸及び緯糸として用い、経糸密度68本/インチ,緯糸密度60本/インチで、平織組織で製織したレーヨンモスリンを準備した。このレーヨンモスリンを、標準工程により、糊抜,精練,漂白した後、裁断して、400mm×260mmの大きさの試料とした。この試料を、ステンレス製ピン枠に原寸で固定し、以下の方法で水分付与を行なった。即ち、ピン枠ごと、水に浸漬した後、瀘紙脱水して、試料に水分を60重量%付与した。
【0029】
水分が付与された試料をピン枠に固定したまま、内径400mm×奥行600mmの横型高圧釜にセットし、密封後、内部空気を5分間かけて水蒸気に置換した後、高圧蒸気を釜内に導入した。そして、密封したまま、昇温加圧し、釜内の雰囲気を温度179℃で絶対圧力10kgf/cm2とした。この雰囲気下で、5分間維持し、試料を水蒸気処理した。
【0030】
処理後、系を開放し、常圧(大気圧)とした後、釜内から試料を取り出し、ピン枠で固定したまま乾燥した。乾燥後、ピン枠から試料を取り外した。以上のような形態安定加工を施した試料の白色度及び各種物性を以下の方法で評価し、表1に示した。
【0031】
また、この試料から10gを計り取り、500mlの三角フラスコに投入し、以下の方法で染色した。即ち、反応染料であるDrimarene Navy X−RBL(C.I. Reactive Blue 79)を4%owfとなるようにし、浴比1:20、80℃で90分間の条件で、振盪式染色機(株式会社中央理化機製作所製)を用いて染色した。そして、得られた染色試料の染色性及び各種物性を以下の方法で評価し、表1に示した。なお、各種物性については、染色前のものも染色後のものも、同一であった。
【0032】
(1)白色度:JIS−Z 8715に記載された白色度指数(W)の計算式、W=Y+800(xn−x)+1700(yn−y)に基づき、白色度の値(W)を算出した。なお、Y,xn,x,yn,及びyの各値は、株式会社島津製作所製の自記分光光度計UV−3100を用いて、分光測定方法により測定した。
(2)染色性:自記分光光度計(株式会社島津製作所製のUV−3100)を用いて、染色試料の分光反射率曲線を得た後、使用染料の最大吸収波長λmax=590nmにおける染色試料の反射率を読み取る。そして、この反射率をクベルカ・ムンク(Kubelka−Munk)の式に適用し、K/S値を計算した。K/S値が大きいほど、濃色に染色されている。
【0033】
(3)各種物性
(a)収縮率:JIS−L 0217に記載の取り扱い絵表示における番号103の、いわゆる家庭洗濯に準じて、形態安定加工後の試料を連続して5回洗濯した後、家庭用タンブルドライヤー(高温)にて60分間乾燥した。その後、試料の経方向及び緯方向の収縮率(%)を、次の式で算出した。即ち、当初の試料の経方向の長さをlm0及び緯方向の長さをlc0とし、洗濯乾燥後の試料の経方向の長さをlm1及び緯方向の長さをlc1としたとき、経方向の収縮率(%)=[(lm0−lm1)/lm0]×100で、緯方向の収縮率(%)=[(lc0−lc1)/lc0]×100である。
【0034】
(b)W/W性(ウォッシュアンドウエア性):上記した収縮率の場合と同様にして、試料に洗濯及び乾燥を施した後、JIS−L 1096 6.23に記載の洗濯後のしわに準じて、AATCC Test Method 124のレプリカを使用し、級判定を行なった。級数が大きいほど、洗濯乾燥後における試料にしわが生じにくいことを示している。
【0035】
(c)引張強力:JIS−L 1096 6.12 A法(ラベルドストリップ法)に基づき、試料幅を25mmとして測定した。なお、引張強力の単位は、kgf/25mm幅である。
【0036】
(4)総合評価:上記(3)の各種物性が良好で、上記(1)の白色度が70以上であり、更に上記(2)の染色性が未処理試料(対照例)と同等程度以上であるものを、○と評価した。一方、上記(3)の各種物性が良好で、上記(1)の白色度が70未満であるか、又は上記(2)の染色性が未処理試料(対照例)よりもかなり劣るものを、×と評価した。また、白色度及び染色性は良好であるが、上記(3)の収縮率及びW/W性等の各種物性が改善されておらず、形態安定性に欠けるものは、未処理試料(対照例)を含めて×と評価した。
【0037】
対照例
実施例1で用いた400mm×260mmの大きさの試料を用いて、何らの処理も施さずに、そのまま、実施例1と同様の方法で染色を行なった。そして、得られた染色試料の染色性及び各種物性を表1に示した。
【0038】
実施例2〜4
水分付与量を表1に記載の量にした他は、実施例1と同様の方法で、形態安定加工を行ない、得られた試料の白色度を表1に示した。また、形態安定加工を行なった後、実施例1と同様の方法で染色試料を得た。この染色性及び各種物性を表1に示した。
【0039】
比較例1及び2
水分付与量を表1に記載の量にした他は、実施例1と同様の方法で、形態安定加工を行ない、得られた試料の白色度を表1に示した。また、形態安定加工を行なった後、実施例1と同様の方法で染色試料を得た。この染色性及び各種物性を表1に示した。
【0040】
【表1】
Figure 0003888489
【0041】
実施例5
実施例1で用いた試料と同一の試料を、ステンレス製ピン枠に原寸で固定し、濃度10重量%の尿素水溶液に浸漬し、瀘紙脱水して、尿素水溶液が100重量%(水溶液)となるように、試料に含有させた。そして、ピン枠固定の状態で100℃にて乾燥し、水分を除去し、尿素を10重量%(固形分)付着させた。なお、この尿素がヒドロトロープ剤であることは、言うまでもない。そして、この尿素付着試料を、実施例1と同一の条件で水蒸気処理した後、ピン枠固定のまま水洗及び乾燥して試料に付着している尿素を除去した。以上のようにして、試料に形態安定加工を施し、ピン枠から試料を取り外して、この試料の白色度及び各種物性を表2に示した。また、尿素を除去した後、実施例1と同一の条件で染色を行なった。得られた染色試料の染色性及び各種物性を表2に示した。
【0042】
実施例6及び7
尿素付着量を表2に記載の量にした他は、実施例5と同様の方法で、形態安定加工を行ない、得られた試料の白色度を表2に示した。また、形態安定加工を行なった後、実施例5と同様の方法で染色試料を得た。この染色性及び各種物性を表2に示した。
【0043】
実施例8
ヒドロトロープ剤として、尿素に代えてチオシアン酸ナトリウムを用いる他は、実施例5と同様の方法で、形態安定加工を行ない、得られた試料の白色度を表2に示した。また、形態安定加工を行なった後、実施例5と同様の方法で染色試料を得た。この染色性及び各種物性を表2に示した。
【0044】
実施例9
ヒドロトロープ剤として、尿素に代えてジシアンジアミドを用いる他は、実施例5と同様の方法で、形態安定加工を行ない、得られた試料の白色度を表2に示した。また、形態安定加工を行なった後、実施例5と同様の方法で染色試料を得た。この染色性及び各種物性を表2に示した。
【0045】
実施例10
ヒドロトロープ剤として、尿素に代えてトリエタノールアミンを用いる他は、実施例5と同様の方法で、形態安定加工を行ない、得られた試料の白色度を表2に示した。また、形態安定加工を行なった後、実施例5と同様の方法で染色試料を得た。この染色性及び各種物性を表2に示した。
【0046】
【表2】
Figure 0003888489
【0047】
実施例11
実施例1で用いた試料と同一の試料を、ステンレス製ピン枠に原寸で固定した。そして、何らの処理も施すことなく、ピン枠固定の状態で、実施例1で用いた横型高圧釜にセットした。そして、導水管により内部に水を導入した。水の導入量は、釜の内容積の70%としたが、ピン枠固定の試料が完全に水に浸漬されていることを確認した。その後、釜内に高温高圧水蒸気を導入し、密封後、昇温及び加圧して、水相の温度を143℃、絶対圧力を4kgf/cm2とし、30分間維持して、試料を熱水処理した。その後、釜内の熱水を排水し、次いで冷水を釜内に導入して、試料を冷却した。そして、試料を取り出し、ピン枠固定のまま乾燥した。以上のようにして、試料に形態安定加工を施し、ピン枠から試料を取り外して、この試料の白色度及び各種物性を表3に示した。また、試料を乾燥した後、実施例1と同一の条件で染色を行なった。得られた染色試料の染色性及び各種物性を表3に示した。
【0048】
実施例12〜14、比較例3及び4
水相の温度,絶対圧力及び処理時間を表3に記載の値とした他は、実施例11と同様の方法で、形態安定加工を行ない、得られた試料の白色度を表2に示した。また、形態安定加工を行なった後、実施例11と同様の方法で染色試料を得た。この染色性及び各種物性を表3に示した。
【0049】
【表3】
Figure 0003888489
なお、表3中、温度の単位は(℃)であり、絶対圧力の単位は(kgf/cm2)であり、時間の単位は(分)である。
【0050】
実施例1a
試料として、以下のとおりに染色した先染め試料を用いる他は、実施例1と同一の条件で形態安定加工を行なった。先染め試料は、実施例1で用いたレーヨンモスリン15g(大きさは、400mm以上×260mm以上で、実施例1のものより大きい。)を、500mlの三角フラスコに投入し、反応染料であるDrimarene Blue X−3LR(C.I.Reactive Blue52)を0.3%owfとなるようにし、浴比1:20、80℃で90分間の条件で、振盪式染色機(株式会社中央理化機製作所製)を用いて染色し、これを400mm×260mmの大きさに切断したものである。そして、先染め試料と、形態安定加工した後の試料との色差(ΔE)を、以下の方法で測定し、その値を表4に示した。
【0051】
(5)色差(ΔE):JIS−Z 8730に記載された色差(ΔE* ab)の計算式、ΔE* ab=[(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2に基づき色差の値(ΔE* ab)を算出し、これを色差(ΔE)とした。なお、ΔL*,Δa*及びΔb*の各値は、対比する二つの試料を、株式会社島津製作所製の自記分光光度計UV−3100を用いて、分光測定方法により測定することによって得られた明度指数の差(ΔL*)及びクロマティックス指数の差(Δa*,Δb*)である。また、色差(ΔE)は、その値が大きいほど、変色の程度が大きいことを示している。
【0052】
実施例2a〜4a、比較例1a及び2a
試料として実施例1aで用いた先染め試料を用いる他は、実施例2〜4,比較例1及び2と同一の条件で形態安定加工を行なった。そして、先染め試料と、形態安定加工した後の試料との色差(ΔE)を表4に示した。なお、実施例2と同一の条件で行なったものには、添字aを付加し、実施例2aとした。実施例3a以下も同様の表記方法に従った。
【0053】
実施例5a〜実施例10a
試料として、以下のとおりに染色した先染め試料を用いる他は、実施例5〜10と同一の条件で形態安定加工を行なった。先染め試料は、実施例1で用いたレーヨンモスリン15gを、500mlの三角フラスコに投入し、反応染料であるDrimarene Red X−2B(C.I.Reactive Red 56)を0.3%owfとなるようにし、浴比1:20、80℃で90分間の条件で、振盪式染色機(株式会社中央理化機製作所製)を用いて染色し、これを400mm×260mmの大きさに切断したものである。そして、先染め試料と、形態安定加工した後の試料との色差(ΔE)を表4に示した。
【0054】
実施例11a〜14a、比較例3a及び4a
試料として、以下のとおりに染色した先染め試料を用いる他は、実施例11〜14,比較例3及び4と同一の条件で形態安定加工を行なった。先染め試料は、実施例1で用いたレーヨンモスリン15gを、500mlの三角フラスコに投入し、反応染料であるCibacron Scarlet 2G−E(C.I.Reactive Red 43)を0.3%owfとなるようにし、浴比1:20、80℃で90分間の条件で、振盪式染色機(株式会社中央理化機製作所製)を用いて染色し、これを400mm×260mmの大きさに切断したものである。そして、先染め試料と、形態安定加工した後の試料との色差(ΔE)を表4に示した。
【0055】
【表4】
Figure 0003888489
なお、実施例1a〜14a及び比較例1a〜4aで得られた形態安定加工を施した試料の各種物性は、各々、対応する実施例1〜14及び比較例1〜4と同様の値であった。
【0056】
実施例1〜4と対照例とを対比すれば明らかなとおり、実施例1〜4に係る方法で形態安定加工された試料は、対照例と比べて白色度の低下が少なくしながら、収縮率及びW/W性が向上しており、形態安定性に優れていることが分かる。また、実施例1〜4と比較例1及び2とを対比すれば明らかなとおり、比較例の場合は、水蒸気処理の前に試料に水分が付与されていないか又は付与量が少ないため、形態安定性には優れているものの、白色度が大幅に低下しており、黄変していることが分かる。
【0057】
また、実施例1〜4と対照例とを対比すれば明らかなとおり、実施例1〜4に係る方法で得られた染色試料は、染色性及び引張強力が対照例と同等程度以上でありながら、収縮率及びW/W性が向上しており、形態安定性に優れていることが分かる。従って、実施例1〜4に係る方法で得られた染色試料は、形態安定性に優れると共に染色性にも優れるものである。また、実施例1〜4と比較例1及び2とを対比すれば明らかなとおり、比較例の場合は、水蒸気処理の前に試料に水分が付与されていないか又は付与量が少ないため、形態安定性には優れているものの、染色性が不十分であることが分かる。
【0058】
実施例5〜10と対照例とを対比すれば明らかなとおり、実施例5〜10に係る方法で形態安定加工された試料は、対照例と比べて白色度の低下が少なくしながら、収縮率及びW/W性が向上しており、形態安定性に優れていることが分かる。また、実施例5〜10と比較例1とを対比すれば明らかなとおり、比較例1の場合は、水蒸気処理の前に試料にヒドロトロープ剤が付着していないため、形態安定性には優れているものの、白色度が大幅に低下しており、黄変していることが分かる。
【0059】
また、実施例5〜10と対照例とを対比すれば明らかなとおり、実施例5〜10に係る方法で得られた染色試料は、染色性及び引張強力が対照例と同等程度以上でありながら、収縮率及びW/W性が向上しており、形態安定性に優れていることが分かる。従って、実施例5〜10に係る方法で得られた染色試料は、形態安定性に優れると共に染色性にも優れるものである。また、実施例5〜10と比較例1とを対比すれば明らかなとおり、比較例1の場合は、水蒸気処理の前に試料にヒドロトロープ剤が付着していないため、形態安定性には優れているものの、染色性が不十分であることが分かる。
【0060】
実施例11〜14と対照例とを対比すれば明らかなとおり、実施例11〜14に係る方法で形態安定加工された試料は、対照例と比べて白色度の低下が少なくしながら、収縮率及びW/W性が向上しており、形態安定性に優れていることが分かる。また、実施例11〜14と比較例3及び4とを対比すると、いずれも熱水中の処理であるため、白色度の低下は同等であるが、熱水処理における温度及び絶対圧力が所定値以下であるため、形態安定性に劣ることが分かる。
【0061】
また、実施例11〜14と対照例とを対比すれば明らかなとおり、実施例11〜14に係る方法で得られた染色試料は、染色性及び引張強力が対照例と同等程度以上でありながら、収縮率及びW/W性が向上しており、形態安定性に優れていることが分かる。従って、実施例11〜14に係る方法で得られた染色試料は、形態安定性に優れると共に染色性にも優れるものである。なお、実施例11〜14と比較例3及び4とを対比すれば明らかなとおり、いずれも熱水中の処理であるため、染色性は同等程度である。
【0062】
実施例1a〜4aと比較例1a及び2aとを対比すれば明らかなとおり、比較例の場合は、水蒸気処理の前に試料に水分が付与されていないか又は付与量が少ないため、形態安定性には優れているものの、色差(ΔE)の値が大きく、変色していることが分かる。
【0063】
実施例5a〜10aと比較例1aとを対比すれば明らかなとおり、比較例1aの場合は、水蒸気処理の前に試料にヒドロトロープ剤が付着していないため、形態安定性には優れているものの、色差(ΔE)の値が大きく、変色していることが分かる。
【0064】
実施例11a〜14aと比較例3a及び4aとを対比すれば明らかなとおり、いずれも熱水中の処理であるため、色差(ΔE)の値にあまり変わらず、いずれも変色の程度が少ないことが分かる。
【0065】
なお、上記各実施例及び比較例においては、セルロース系繊維製品として、レーヨンモスリンを使用したが、レーヨン繊維やその他のレーヨン編織物等を用いても、上記と同様の総合評価が得られるものであった。また、素材として、レーヨン以外の綿,ポリノジック,テンセル,キュプラ等を用いたセルロース系繊維製品の場合にも、上記と同様の総合評価が得られるものであった。
【0066】
【作用】
請求項1に係る発明の作用は、以下のとおりと考えられる。セルロース系繊維製品を、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の水蒸気雰囲気下で、かつ、密閉容器内で30秒間〜60分間、一定の形状を維持した状態で、処理すると、特開平5−33259号公報に記載されているように、セルロース繊維内部の非晶領域の一部における水素結合が水蒸気の作用により切断し、セルロース分子を外力に応じて移動せしめた後、所定の状態で結晶化が進行せしめられる。また、セルロース繊維内部の結晶領域においても、結晶が部分的に再配列し、安定構造となる。従って、セルロース系繊維製品は、水蒸気処理したときの形態に固定されやすくなり、良好な形態安定性を発揮する。また、このセルロース系繊維製品には、水蒸気処理の前に水分が一定量付与されているため、セルロース繊維表面は水で被覆された状態となっていると考えられる。この状態で、水蒸気雰囲気に置くため、雰囲気中に空気(酸素)が存在していたとしても、空気が直接、セルロース繊維表面に接触するのを防止することができる。従って、セルロース繊維表面が形態安定加工時に酸化するのを防止でき、黄変及び変色を防止しうると考えられる。
【0067】
請求項2に係る発明の作用は、以下のとおりと考えられる。良好な形態安定性を発揮する作用は、請求項1に係る発明の場合と同様である。請求項2に係る発明の場合は、セルロース系繊維製品にヒドロトロープ剤が付着しており、雰囲気中の水蒸気を取り込んで、これが水となり、セルロース繊維表面が濡れて、水で被覆された状態になると考えられる。この状態で、水蒸気雰囲気中で処理されるため、雰囲気中に空気(酸素)が存在していたとしても、空気が直接、セルロース繊維表面に接触するのを防止することができる。従って、セルロース繊維表面が形態安定加工時に酸化するのを防止でき、黄変及び変色を防止しうると考えられる。
【0068】
請求項3に係る発明の作用は、以下のとおりと考えられる。セルロース系繊維製品を、熱水中で処理した場合、セルロース繊維表面は熱水に浸漬された状態となっており、気相中の空気(酸素)には接触しない。従って、セルロース繊維表面が形態安定加工時に酸化するのを防止でき、黄変及び変色を防止しうると考えられる。なお、高温高圧の熱水処理によって、良好な形態安定性が発揮される作用は、請求項1に係る発明の場合と同様であると考えられる。
【0069】
請求項5に係る発明の作用は、以下のとおりと考えられる。請求項1に係る発明の作用として述べたとおり、高圧・高温での水蒸気処理によって、セルロース繊維の結晶化が進行し、形態安定性の向上が図れる。この際、セルロース系繊維製品には、水蒸気処理の前に水分が一定量付与されているため、セルロース繊維表面は水によって若干膨潤した状態となっていると考えられる。この状態で、セルロース繊維表面において、セルロース分子が結晶化すると、存在する水に起因して、結晶構造の一部に生じるポアサイズ(空孔径)を大きく保てると考えられ、この空孔から染料がセルロース繊維内部へ侵入しやすくなり、このため、染色性が良好になると考えられる。
【0070】
請求項6に係る発明の作用は、以下のとおりと考えられる。セルロース系繊維製品に、ヒドロトロープ剤が付着していると、雰囲気中の水蒸気を取り込んで、これが水となり、セルロース繊維表面が若干膨潤した状態になると考えられる。そして、この状態で、セルロース繊維表面において、セルロース分子が結晶化すると、存在する水に起因して、結晶構造の一部に生じるポアサイズ(空孔径)を大きく保てると考えられ、この空孔から染料がセルロース繊維内部へ侵入しやすくなり、このため、染色性が良好になると考えられる。なお、高温高圧の水蒸気処理によって、良好な形態安定性が発揮される作用は、前記したとおりである。
【0071】
請求項7に係る発明の作用は、以下のとおりと考えられる。セルロース系繊維製品を、熱水中で処理した場合も、セルロース繊維表面は熱水によって若干膨潤した状態になっていると考えられる。そして、この状態で、セルロース繊維表面において、セルロース分子が結晶化すると、存在する熱水に起因して、結晶構造の一部に生じるポアサイズ(空孔径)を大きく保てると考えられ、この空孔から染料がセルロース繊維内部へ侵入しやすくなり、このため、染色性が良好になると考えられる。なお、高温高圧の熱水処理によって、良好な形態安定性が発揮される作用も、前記と同様であると考えられる。
【0072】
【発明の効果】
請求項1〜3に係る各発明は、上記した各作用によって、セルロース系繊維製品に良好な形態安定性を付与しながら、黄変又は変色を防止することができる。また、請求項4〜7に係る各発明は、上記した各作用によって、形態安定性と染色性の両者に優れたセルロース系繊維製品を得ることができる。
【0073】
従って、本発明によれば、黄変や変色が少なく、形態安定性に優れたセルロース系繊維製品、又は中濃色に良好に染色され、形態安定性に優れたセルロース系繊維製品を、合理的に且つ経済的に得ることができる。そして、このようなセルロース系繊維製品は、製品としての品位も良好で、洗濯を繰り返してもしわが生じにくく、W/W性に優れているという効果を奏するものである。
【0074】
また、セルロース系繊維製品として、以下の如き、各種の形付けが施されたものを用いた場合にも、洗濯を繰り返しても形付けが消失しにくく、且つ中濃色に合理的・経済的に染色されたセルロース系繊維製品を得ることができるという効果も奏する。即ち、セルロース系繊維製品として、クリンプを設けたセルロース繊維を使用した場合、洗濯を繰り返してもクリンプが消失しにくく、且つ中濃色に合理的・経済的に染色されたセルロース繊維を得ることができるという効果を奏する。また、セルロース系繊維製品として、嵩高加工を施したセルロース系糸条を使用した場合、洗濯を繰り返しても嵩高性の低下が少なく、且つ中濃色に合理的・経済的に染色されたセルロース系糸条を得ることができるという効果を奏する。また、セルロース系繊維製品として、しぼ付け加工やひだ付け加工を施してセルロース系編織物を使用した場合、洗濯を繰り返してもしぼやひだが消失しにくく、更にしわが生じにくく、且つ中濃色に合理的・経済的に染色されたセルロース系編織物を得ることができるという効果を奏する。更に、セルロース系繊維製品として、折り目線を設けた衣料品等のセルロース系最終製品を使用した場合、洗濯を繰り返しても、折り目線が消失しにくく、更にしわが生じにくく、且つ中濃色に合理的・経済的に染色されたセルロース系最終製品を得ることができるという効果を奏する。

Claims (8)

  1. 水分が60重量%以上付与されたセルロース系繊維製品を、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の水蒸気雰囲気下で、かつ、密閉容器内で30秒間〜60分間、一定の形状を維持した状態で、処理することを特徴とするセルロース系繊維製品の形態安定加工方法。
  2. ヒドロトロープ剤が付与されたセルロース系繊維製品を、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の水蒸気雰囲気下で、かつ、密閉容器内で30秒間〜60分間、一定の形状を維持した状態で、処理することを特徴とするセルロース系繊維製品の形態安定加工方法。
  3. セルロース系繊維製品を、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の熱水中で、かつ、密閉容器内で30秒間〜60分間、一定の形状を維持した状態で、処理することを特徴とするセルロース系繊維製品の形態安定加工方法。
  4. 絶対圧力が4〜16kgf/cm2で且つ温度が140〜200℃である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のセルロース系繊維製品の形態安定加工方法。
  5. 水分が60重量%以上付与されたセルロース系繊維製品を、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の水蒸気雰囲気下で、かつ、密閉容器内で30秒間〜60分間、一定の形状を維持した状態で、処理した後、染色することを特徴とするセルロース系繊維製品の染色方法。
  6. ヒドロトロープ剤が付与されたセルロース系繊維製品を、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の水蒸気雰囲気下で、かつ、密閉容器内で30秒間〜60分間、一定の形状を維持した状態で、処理した後、染色することを特徴とするセルロース系繊維製品の染色方法。
  7. セルロース系繊維製品を、絶対圧力4kgf/cm2以上で且つ温度140℃以上の熱水中で、かつ、密閉容器内で30秒間〜60分間、一定の形状を維持した状態で、処理した後、染色することを特徴とするセルロース系繊維製品の染色方法。
  8. 絶対圧力が4〜16kgf/cm2で且つ温度が140〜200℃である請求項5乃至7のいずれか一項に記載のセルロース系繊維製品の染色方法。
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