JP3888224B2 - 穴加工装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、穴径が小さく且つ深い穴を加工するための穴加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、加工においては、テーブルに保持された被加工物にドリルなどの切削工具を上方から押圧して被加工物に送り込むと同時に、加工部に加工液を噴射し、加工部からの切屑の除去、切削工具の冷却、及び加工部の潤滑を行っている。
【0003】
ところが、穴加工、特に、穴径が小さく(例えば、1mm以下)且つ深い(例えば、径の2倍以上)穴(以下、深穴と呼称する)を加工するときには、加工部に加工液を噴射しても、穴からうまく切屑が排出されず、加工部すなわち穴内から切屑を十分に除去することができない。
【0004】
そこで、穴径が小さい深穴を加工する場合には、被加工物に切削工具を少量送り込んだ後に、一旦切削工具を被加工物の深穴から上方へ引き抜き、深穴内に加工液を噴射して切屑を除去した後に、再度切削工具を深穴内に挿入し、送り込むことを繰り返し行っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
深穴加工においては、上記のように少量ずつ複数回に分けて加工しなくてはならないため、加工効率が悪く、長い加工時間を要するという問題がある。一方、加工時間を短縮するために、加工中に切削工具を被加工物の穴内から引き抜かず連続して深穴加工を行うと、深穴内に切屑が蓄積してしまい、蓄積された切屑が切削工具と深穴の壁との間に詰まって切削工具が折れてしまうという問題が生じる。
【0006】
よって、本発明の目的は、上記従来技術に存する問題を解消して、加工中に穴内から工具を引き抜くことなく、穴径が小さく且つ深い穴を連続的な動作で加工できる穴加工装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、電磁石を含む振動付与装置を備え、基台に板バネを介して支持された支持体に取り付けられた磁性体に電磁石による磁力を作用させて、支持体を基台に対して振動させることによって工具を工具の回転軸線に沿って振動させつつ、被加工物に下方へ向けて開口した穴を加工するように構成したものである。
【0008】
被加工物に穴を加工する際に、工具の回転軸線に沿って工具を振動させることにより、加工により生じる切屑が微細となり、ドリルの螺旋状溝のような工具に設けられた切削のための溝に沿って排出され易くなる。したがって、径が小さく深い穴であっても穴内に切屑が蓄積されることはなくなるので、1つの穴の途中で穴内に蓄積された切屑の除去のために工具を穴から引き抜く必要がなくなり、加工効率を向上させる。
【0009】
さらに、工具を被加工物の下方に配置し、被加工物に下方へ向けて開口した穴を加工することにより、重力の作用により、穴内で発生した切屑は直ちに工具の溝に沿って下方へ落下し、穴から排出されるので、加工中の穴内に切屑が蓄積される可能性をさらに低下させ、工具を穴から引き抜く必要性をさらに低減させる。
【0010】
工具を回転させる工具回転装置が基台によって支持され、被加工物が被加工物保持装置によって保持されている場合には、基台と被加工物保持装置とを相対的に接近させることにより、被加工物に対する通常の工具送りを行い穴を掘り進めて行くと共に、基台に対して工具回転装置を回転軸線に沿って振動させることにより、切屑の微細化を行う。すなわち、工具の送りと別個に工具の振動を行うことが可能となり、従来の穴加工装置の基台に支持される工具回転装置に振動付与装置を付加するのみで本発明の穴加工装置が実現できる。
【0011】
振動付与装置が電磁石を含み、磁性体が取り付けられた支持体を基台に板バネを介して支持、電磁石の磁力を磁性体に作用させることで、回転軸線の方向に支持体を振動させることが可能となる。これにより、支持体上に設けられた工具回転装置に回転軸線に沿った振動を与えることができる。
【0012】
例えば、板バネは、一端が基台から被加工物保持装置へ向かって延びる支持壁の端部に固定され、他端が支持体に固定される。このような配置により、支持体の下方には基台の上側表面との間に空間を形成することが可能となり、基台上で且つ支持体の下方に電磁石を配置することができるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の穴加工装置の部分断面側面図である。
【0015】
図1を参照すると、本発明の穴加工装置10は、互いに対向して配置される基台12と被加工物保持装置14とを含む。被加工物保持装置14は、基台12の上方に設けられており、テーパコーンやチャックなどの係止手段(不図示)を用いて、下端に被加工物16を着脱可能に保持することができる。一方、基台12には工具回転装置22が支持されおり、工具回転装置22は、先端部に工具18を保持し、これを回転軸線20周りに回転させる。工具回転装置22は、基部22aと、非回転部分22bと、回転部22cとからなる。
【0016】
なお、被加工物保持装置14は基台12の上方に配置されているので、工具回転装置22は、その回転軸線20が上下方向に延びるように配置されており、刃先が上方へ向くように工具18を保持するようになっている。また、工具18としては、ドリルなどの切削工具が用いられることが一般的である。
【0017】
図1の実施形態では、基台12がX軸方向及びY軸方向に移動可能、被加工物保持装置14がZ軸方向に移動可能となっている。しかしながら、基台12と被加工物保持装置14とがX軸、Y軸及びZ軸の直交3軸方向に相対移動可能になっていれば他の構成をとることも可能である。例えば、基台12又は被加工物保持装置14の一方をX軸、Y軸及びZ軸方向に移動可能とすることも可能である。
【0018】
本発明の穴加工装置10は、加工の際に被加工物16又は工具18に回転軸線20に沿った振動を与えるために、振動付与装置24をさらに備える。以下では、図1に示されている実施形態を参照して、振動付与装置24を詳細に説明する。
【0019】
基台12上には、工具回転装置22の回転軸線20の方向に(この場合には、上下方向に)基台12に対して振動可能となるように、弾性手段を介して平板状の支持体26が支持されている。図1の実施形態では、弾性手段は、基台12から上方へ向かって延びる一対の平行な支持壁28と、各支持壁28の上端に片持ち支持された一対の板バネ30とによって構成されており、支持体28は、その両端部を板バネ30によって支持され、上下方向に基台12に対して振動可能となっている。このように、支持体26をその両端部において支持し、支持体26を基台12と離間させることにより、後述する電磁石の配置のためのスペースを確保することができる。しかしながら、これは一例であり、支持体26を基台12に対して振動可能に支持する他の構造を採用することも可能である。
【0020】
支持体26の下面中央部には、磁性体32が取り付けられていると共に、磁性体32の下方に離間してこれと対向するように電磁石34が基台12上に設けられている。したがって、電磁石34を周期的に作動させ、磁性体32に周期的な磁力を作用させることにより、上下方向、すなわち回転軸線20に沿った方向に支持体26に振動を与えることができる。一方、支持体26の上面には、上述した工具回転装置22が設けられる。すなわち、工具回転装置22は、支持壁28、板バネ30、支持体26を介して基台12に支持されていることとなる。
【0021】
このように、振動付与装置24は、支持壁28、板バネ30、支持体26、及び電磁石34により構成され、基台12に対して上下方向、すなわち回転軸線20に工具回転装置22を振動させることができる。この結果、工具回転装置22により工具18を回転させながら、基台12と被加工物保持装置14とを接近させ、被加工物16に穴を加工している際に、電磁石34を作動させ、回転軸線20に沿って工具18を振動させることが可能となる。
【0022】
ところで、支持体26はその両端部を板バネ30によって支持されているのみであるため、支持体26を振動させると、工具18の回転軸線20が被加工物16に対して横振れしてしまう恐れがある。そこで、図1に示されている実施形態では、基台12上に立設された支柱36などによって水平に支持された横振れ矯正板38が設けられており、この横振れ矯正板38に設けられた貫通穴40を工具回転装置22が貫通して延びていると共に工具回転装置22の非回転部分22bがOリング42などを介して横振れ矯正板38に摺動可能に支持されている。これにより、支持体26の振動により工具回転装置22が振動したときに、工具回転装置22の回転軸線20が横方向に振れることがないように工具回転装置22を上下方向に案内している。
【0023】
次に、図1に示されている穴加工装置10を用いて被加工物16に穴を加工する手順を説明する。
【0024】
最初に、被加工物保持装置14の下端に、テーパコーンやチャックなどの係止手段(不図示)を用いて、被加工物16を装着する。また、工具回転装置22には、所望される加工穴径やその深さに応じた工具18が装着される。
【0025】
次に、基台12と被加工物保持装置14とをX軸方向及びY軸方向に相対移動させて、被加工物16上の所望される位置に工具18の刃先を配置し、基台12と被加工物保持装置14とをZ軸方向に相対移動させて、工具18を被加工物16に押圧し、加工を開始する。このとき、加工部(すなわち、被加工物16に形成された穴付近)に加工液を噴射し、工具18の冷却、被加工物16と工具18との間の潤滑、加工部からの切屑の除去を行う。
【0026】
加工の進行に伴って、基台12と被加工物保持装置14とを接近させる方向に相対移動させ、被加工物16に対して工具18を徐々に送り込んでいく。一方、こうした穴加工と同時に、電磁石34を周期的に作動させ、対向して配置された磁性体32の吸引・解放を繰り返すことにより、支持壁28及びそれに片持ち支持された板バネ30を介して基台12に支持された支持体26を回転軸線20に沿って上下方向に振動させる。これにより、支持体26上に設けられた工具回転装置22も上下方向に、すなわち回転軸線20に沿って振動し、工具18を回転軸線20に沿って振動させながら加工を行う。なお、工具18に付与される振動は高い振動数で且つ微小振幅で行われることが好ましい。
【0027】
工具18を回転軸線20に沿って振動させることにより、穴加工により生じる切屑が微細になり、工具18に設けられた溝(例えば、ドリルに設けられた螺旋状溝)に沿って切屑が穴内から排出され易くなる。さらに、高い振動数及び微小振幅で工具を振動させることにより、切屑はより微細となる効果を奏する。また、被加工物保持装置14を工具回転装置22の上方に配置し、被加工物16に工具18を下方から接近させて穴を加工することにより、被加工物16には下方へ向けて開口した穴が加工されるので、切屑は重力の作用で工具18の溝に沿って落下して、発生してもすぐに穴から排出されるようになる。
【0028】
こうして、加工により発生した切屑は穴内に蓄積されることはなくなることから、1つの穴の加工中に、穴内に蓄積された切屑を除去するために穴から工具18を引き抜く必要はなくなり、連続的に加工を行うことが可能となる。
【0029】
一方、上下方向のこの振動の際に、工具回転装置22の非回転部分22bは横振れ矯正板38の貫通穴40により上下方向に案内されているので、横方向に振れることはない。したがって、工具18は穴の深さ方向に沿って正確に上下方向に(すなわち、回転軸線20に沿って)振動し、振動が穴の加工精度に悪影響を与えることもない。
【0030】
こうして、1つの穴の加工が完了すると、必要であれば、次の穴の加工を同様の手順で行う。
【0031】
このように、本発明の穴加工装置によれば、1つの穴について連続的に穴加工を行うことが可能となるので、加工効率が向上し、加工時間の短縮に寄与することとなる。
【0032】
以上、好ましい実施形態形態を参照して、本発明の穴加工装置10を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0033】
例えば、上記実施形態では、被加工物16に対して工具18を振動させているが、工具18に対して被加工物16を振動させる又は工具回転装置22に対して被加工物保持装置14を振動させてもよい。また、被加工物保持装置14は、必ずしも基台12の上方に設けられている必要はなく、基台12が被加工物保持装置14の上方に設けられていてもよく、基台12と被加工物保持装置14が横方向に対向して配置されていてもよい。さらに、弾性手段が支持壁28と板バネ30によって構成されているが、例えば、支持体26をバネの上に配置し、バネを介して基台12上に支持体26を支持してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の穴加工装置の全体構成図である。
【符号の説明】
10…穴加工装置
12…基台
14…被加工物保持装置
16…被加工物
18…工具
20…回転軸線
22…工具回転装置
24…振動付与装置
26…支持体
28…支持壁
30…板バネ
32…磁性体
34…電磁石

Claims (3)

  1. 回転する工具を被加工物の下方に配置し前記被加工物に下方へ向けて開口した穴を加工する穴加工装置において、
    基台と、
    前記基台に板バネを介して支持された支持体と、
    前記支持体上に設けられ、回転軸線周りに工具を回転させる工具回転装置と、
    前記回転軸線に沿って該工具回転装置と前記基台とを相対的に振動させる振動付与装置と
    前記基台上に立設された支柱によって水平に支持され、前記工具回転装置の非回転部分が摺動可能に貫通する貫通孔が設けられた横振れ矯正板とを備え、
    前記振動付与装置が電磁石を含み、前記電磁石を周期的に作動させて、前記支持体に取り付けられた磁性体に前記電磁石による磁力を作用させ、前記支持体を前記回転軸線の方向に前記基台に対して振動させつつ、前記被加工物に穴を加工することを特徴とした穴加工装置。
  2. 前記基台に対して相対移動可能な被加工物保持装置を設け、前記被加工物保持装置によって前記被加工物を保持し、前記回転軸線に沿って該工具回転装置と前記基台とを相対的に振動させつつ、前記被加工物保持装置と前記基台とを接近させていくことにより、前記被加工物に穴を加工する、請求項1に記載の穴加工装置。
  3. 前記板バネは、一端が前記基台から前記被加工物保持装置へ向かって延びる支持壁の端部に固定され、他端が前記支持体に固定されている、請求項に記載の穴加工装置。
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