JP3885323B2 - 放射体温計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鼓膜近傍の赤外線エネルギーを検出して体温を測定する放射体温計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、鼓膜近傍から放射される赤外線を検出して、人体の体温を1〜2秒程度で測定する放射体温計が体温の測定に適用されるようになってきた。このような放射体温計は、耳孔に挿入するプローブと、プローブ先端から入射された赤外線を体温計の本体内に配置された赤外線センサで検出して体温情報に換算している。また、プローブ内の光学系の構成は放射された赤外線を赤外線センサまで導光する導光管を備えた構成のものや、レンズにより赤外線を集光させる構成としているものがある。さらに導光管内部を汚れから保護するために導光管の先端に防塵膜を着接したり、プローブ先端に防塵膜を着接する場合がある。一般に防塵膜は赤外線を透過させる材料から構成されている。しかし、このような放射体温計において、体温を測定する際には、プローブを外耳道に挿入するので、どうしても耳垢等が防塵膜に付着する。防塵膜を備えていない構成のものでは、導光管やレンズ等に付着する可能性がある。さらに外耳道内の温度は体温近傍の36℃前後の温度であり、室温が10℃前後の大変低い温度環境下で測定する時には、プローブを外耳道に挿入するだけでプローブ、導光管、プローブまたは導光管に着接した防塵膜、レンズ等の光学系がしばしば結露する場合が発生する。結露が発生すれば、ゴミ、ホコリ等が付着し汚れの原因となる。光学系が汚れている状態では赤外線の透過率が減少するので、体温を測定すると低く計測されるという問題があった。また使用者にも、光学系が汚れているかどうかの識別が困難であった。従来、このような光学系の汚れの処理方法に関して提案されたものはなく、光学系が汚れたかどうかを判別するには、放射体温計に基準温度となる熱源を見せて基準温度を計測できるかどうかで認識できる。
【0003】
基準熱源を備えたものとして特開昭61―117422号公報の放射体温計があり、図6のような方式をとっている。
【0004】
すなわち赤外線センサ1を備えたプローブユニット2と、ターゲット3を備えたチョッパーユニット4と、充電ユニット5の3ユニット構成からなっている。そして前記赤外線センサ1とターゲット3とを外耳孔のリファレンス温度(36.5℃)に予熱するための加熱制御手段6を設け、この加熱制御手段6を前記充電ユニット5からの充電エネルギーによって駆動している。
【0005】
図7は、プローブ7の詳細構成図である。プローブユニット2のプローブ7は、熱伝導性が極めて低いプラスチック等から構成されており、円筒状の中空基部8、中間筒部9、先端部10を備えている。また、赤外線センサ1は円筒状の金属ハウジング11に埋め込まれて、金属ハウジング11に金属チューブ12の後端が固着されている。この金属チューブ12が赤外線を赤外線センサ1に導く導光管となる。この金属ハウジング11と金属チューブ12の周囲にプローブ7が配置され、その外側に検温カバー13が装着される。金属ハウジング11には、加熱用の抵抗11aが埋め込まれており、赤外線センサ1をリファレンス温度(36.5℃)に加熱する。
【0006】
体温測定の際はプローブユニット2をチョッパーユニット4にセットして前記加熱制御手段6により、赤外線センサ1とターゲット3をリファレンス温度(36.5℃)に予熱した状態にてキャリブレートを行い、しかる後にプローブユニット2を取り外して外耳孔に挿入して鼓膜からの放射赤外線を検出し、前記ターゲット3からの放射赤外線と比較することにより体温測定を行っている。つまり、チョッパーユニット4のターゲット3が基準熱源となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来の放射体温計は、基準熱源を備えた構成としているが、導光管等の汚れに関する処理構成については全く開示されておらず、光学系が汚れた場合は、計測値が低くなるという課題があった。
【0008】
本発明は、このような光学系の汚れを認識し、汚れを検出すれば、使用者にその旨を報知し、報知に基づき使用者が汚れを取り除くことにより汚れによる検温誤差を無くし検温精度を向上させることができる放射体温計を目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、光学系の汚れ検出手段を備えた構成とすることにより、光学系の汚れを検出すれば、汚れ情報を使用者に報知するようにしたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の放射体温計は、鼓膜近傍から放射される赤外線を集光する集光手段と、前記集光手段により集光された赤外線を検出する赤外線センサと、前記集光手段の汚れを検出する汚れ検出手段と、前記赤外線センサの出力を体温情報に換算するとともに前記汚れ検出手段の情報に基づき汚れを判別する演算処理手段と、前記演算処理手段の情報により汚れを報知する汚れ報知手段からなる。
【0011】
また、汚れ検出手段は基準熱源を備え、前記基準熱源を赤外線センサで計測した計測値がある計測値以下であれば、演算処理手段は汚れ報知手段を駆動する構成としている。
【0012】
また、基準熱源の温度は体温近傍の37℃前後としている。
また、汚れ検出手段を放射体温計を収納する収納ケースに備えた構成としている。
【0013】
また、放射体温計を収納ケースに収納した時に、自動的に汚れ検出手段を駆動させる汚れ検出自動開始手段を備えた構成としている。
【0014】
また、充電可能な充電ユニットと結合可能な構成としている。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0016】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の放射体温計の構成ブロック図である。図1において、14は放射体温計の本体、7は耳孔部8に挿入する部分でありプローブである。プローブ7の先端には、耳垢等から保護するための赤外線を透過させる防塵用膜15aを着接している。防塵用膜15aとしては、赤外線を透過させるものであるなら良く、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコン等が用いられる。15bはプローブ7を介して入射された赤外線を赤外線センサ1に集光するレンズである。本実施例では回折効果を利用した平板レンズを用いているが、レンズ材料としては、ゲルマニウムやガリウムヒ素であってもよく、また球面レンズであっても支障はない。また、本実施例における集光手段15は防塵用膜15aとレンズ15bから構成される。また、16は赤外線センサ1自身の温度を検出するサーミスターである。赤外線を検知する放射温度計に使用される焦電型センサの材料として、PbTiO3、PZT等のセラミック材料、LiTaO3、TGSなどの単結晶あるいはPVDF等の有機フィルムがあるが、多く使用されているのは、セラミック材料を用いたバルク型焦電センサである。本実施例においても、赤外線センサ1として、セラミック材料のバルク型焦電センサーを使用している。17は赤外線センサ1で出力される電圧値を増幅するフィルターアンプである。18はフィルターアンプ17の出力とサーミスタ16の出力をアナログ値からデジタル値に変換するAD変換器であり、19はAD変換器18の出力に基づき、体温情報に変換演算する演算制御手段であり、20は演算制御手段19で算出された体温情報を表示する表示手段である。サーミスタ16の位置は、赤外線センサ1の温度が検出可能な位置であれば良く、赤外線センサ1と結合または隣接していることが望ましい。21は赤外線を連続的に断続させ赤外線センサ1に入射させるチョッパーであり、赤外線センサ1の前に配置されている。22は電源であり、乾電池より構成される。23は電源スイッチ、24は測定用のスイッチであり、共にプッシュスイッチを用いている。25は光学系の1つである防塵用膜15aの汚れを検出するための汚れ検出手段であり、汚れ検出手段25は、基準熱源26とこの基準熱源26を37℃に制御する加熱制御手段27および基準熱源の温度を検出する温度検出器28で構成されている。本実施例において基準熱源26は面ヒータより構成されているが、この構成方式は本発明を拘束するものではない。
【0017】
図2に示すように、放射体温計の本体14は本体上部14aと本体下部14bに分割構成し接合部で折れるような構成にしており、図2(a)は検温時の状態であり、図2(b)は検温前または検温が終了して汚れ検出をしている状態を示す。つまり、汚れ検出手段25は凹部29を有した本体下部14bに配置し、放射体温計14を折り曲げた時にプローブ7が本体下部14bの凹部29にはまり込む構成としている。汚れ検出手段25の基準熱源26は、この凹部29に配置されている。この構成により、放射体温計14を図2(b)に示す状態にすれば、赤外線センサ1はプローブ7を介して基準熱源26の温度が計測可能となる。30は汚れ検出自動開始手段であり、リードスイッチ30aと磁石30bからなる。この時、本体上部14aにはリードスイッチ30aが配置され、本体下部14bには磁石30bが配置されている。折り曲げた状態になるとリードスイッチ30aが通電状態となりその信号は演算制御手段19に伝達され、演算制御手段19は、汚れ検出手段25が駆動可能状態であることを認識し自動的に汚れ検出手段25を駆動する。この時の計測温度が、基準熱源26の温度の37℃より低い温度であれば、防塵用膜15aが汚れていることになる。本実施例では体温計の温度精度が±0.1℃以内であることより、計測温度が36.9℃未満であれば汚れが付着していると判断した。
【0018】
具体的な使用方法は、検温前に放射体温計の本体14を折り曲げた状態にして電源スイッチ22を投入する。演算制御手段19は、汚れ検出自動開始手段30のリードスイッチ30aがオン状態になっていること認識して、加熱制御手段27に基準熱源26を駆動制御させるための信号を出力する。温度検出手段28の情報は演算制御手段19にも入力されているので、演算制御手段19は基準熱源26が37℃になったかどうかを判断できる。基準熱源26が37℃になれば、演算制御手段19は基準熱源26の温度を赤外線センサ1により計測する。この時の計測温度が37℃であれば、光学系の汚れは無いが、37℃よりも計測温度が低ければ光学系が汚れていると演算処理手段19は認識する。本実施例では前記したように光学系が汚れていると判断する計測温度範囲は36.9℃未満とした。光学系が汚れていると演算制御手段19が認識すれば、報知手段31に報知音を鳴動させる。本実施例では、汚れ報知を報知手段31で報知させているが、表示手段20に表示報知させてもよい。この汚れ報知により使用者は防塵用膜15a等の汚れを取ることになる。
【0019】
尚、本実施例では集光手段15として、防塵用膜15aとレンズ15bを用いたが、防塵用膜15aを備えていないものや、導光管を用いた放射体温計にも適用できることはいうまでもない。
【0020】
以上のように本実施例によれば、従来防塵用膜等の光学系の汚れの有無を使用者は判断できなかったが、汚れを簡単に識別でき、さらに使用者に汚れを報知する構成としたので、汚れを取り除くことにより、正確な検温ができるようになる。
【0021】
(実施例2)
図3は本発明の実施例2の放射体温計の構成ブロック図である。実施例1とほぼ同様の構成であるが、放射体温計の本体14は折れ曲がらないような構成とし、汚れ検出手段25は放射体温計の本体14を収納する収納ケース32に備えた点が異なる。実施例1と同様に、汚れ検出自動開始手段30のリードスイッチ30aは放射体温計の本体14側に備え、磁石30bは収納ケース32側に備えた構成としている。また放射体温計の本体14と収納ケース32は光通信で結合されており、各々に受発信部33を備えている。体温の測定が終われば、放射体温計の本体14を収納ケース32に収納する。収納した時点で、汚れ検出自動開始手段30が駆動し、演算制御手段19は受発信部33を介して、収納ケース32の汚れ検出手段25に汚れ検出開始信号を発信する。収納ケース32側の受発信部33がこの信号を受信すれば、加熱制御手段27は基準熱源26が37℃になるように制御する。温度検出器28の情報は受発信部33を介して、放射体温計14の演算制御手段19に入力されているので、演算制御手段19は基準熱源が37℃になったかどうかが識別できる。具体的内容は実施例1と同様であるので省略する。
【0022】
本実施例の場合、放射体温計の本体14を2つに折る構成とはしなくて良く、汚れ検出手段25を放射体温計14の本体に備えていないので、放射体温計の本体14を小型化できる。汚れ報知に関しては、実施例1と同様の効果が得られる。
【0023】
(実施例3)
図4,図5は本発明の実施例3の放射体温計の構成ブロック図である。実施例1または実施例2とほぼ同様の構成であるが、放射体温計の本体14に充電可能な充電ユニット34と結合できる構成とした点が異なる。図4は放射体温計の本体14に被充電部35を備え、充電ユニット34と結合される。また図5は、収納ケース32に充電ユニット34を備えた構成としており、収納ケース32と放射体温計の本体14部の被充電部35とで結合可能としている。また、充電ユニット34は商用電源から電力が供給される。
【0024】
以上のように本実施例によれば、基準熱源を得るために加熱用の電力を必要とするが、充電可能な構成にすることで、検温が終了すれば、即座に汚れチエックを行うことができ、次回測定に関しての検温精度を維持することが可能となる。また、検温前に光学系の汚れチエックを行うこともでき、精度よく体温を計測することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明から明かなように本発明の放射体温計によれば、次の効果が得られる。
【0026】
放射体温計の光学系の汚れは、従来使用者に識別が困難であったが、基準熱源を有した汚れ検出手段を放射体温計に備えることにより、汚れ識別が可能となり、汚れた場合は、汚れ情報を使用者に報知することができるので、検温精度をいつまでも維持することができる。
【0027】
また、放射体温計を収納するケースに、汚れ検出手段を備えた構成とすることで、放射体温計本体を小型化できるとともに、検温が終了すれば収納ケースに収納するだけで、自動的に汚れチエックを行うので、使用者が意識して汚れチエックを行う必要はなく、使い勝手も向上する。
【0028】
また、汚れチエックを行う基準熱源の温度を体温近傍の37℃前後とすることで、汚れに対する検温精度を極めて向上させることができる。
【0029】
また、基準熱源を得るために加熱用の電力を必要とするが、充電可能な構成にすることで、検温が終了すれば、即座に汚れチエックを行うことができ、次回測定に関しての検温精度を維持することが可能となる。また、検温前に光学系の汚れチエックを行うこともでき、精度よく体温を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の放射体温計の構成ブロック図
【図2】(a)同放射体温計の検温時の状態図
(b)同放射体温計の汚れ検出時の状態図
【図3】本発明の実施例2の放射体温計の構成ブロック図
【図4】本発明の実施例3の充電ユニットと結合した放射体温計の構成ブロック図
【図5】本発明の実施例3の収納ケースに充電ユニットを備えた放射体温計の構成ブロック図
【図6】従来の放射体温計の構成ブロック図
【図7】従来の放射体温計のプローブの詳細構成図
【符号の説明】
1 赤外線センサ
15 集光手段
19 演算制御手段
25 汚れ検出手段
26 基準熱源
27 加熱制御手段
30 汚れ検出自動開始手段
31 報知手段
32 充電ユニット
32 収納ケース
34 充電ユニット

Claims (6)

  1. 鼓膜近傍から放射される赤外線を集光する集光手段と、前記集光手段により集光された赤外線を検出する赤外線センサと、前記集光手段の汚れを検出する汚れ検出手段と、前記赤外線センサの出力を体温情報に換算するとともに前記汚れ検出手段の情報に基づき汚れを判別する演算処理手段と、前記演算処理手段の情報により汚れを報知する汚れ報知手段を備えた放射体温計。
  2. 汚れ検出手段は基準熱源を備え、前記基準熱源を赤外線センサで計測した計測値がある計測値以下であれば、演算処理手段は汚れ報知手段を駆動する請求項1記載の放射体温計。
  3. 基準熱源の温度は体温近傍の37℃前後としたことを特徴とした請求項2記載の放射体温計。
  4. 放射体温計を収納する収納ケースを有し、汚れ検出手段を前記収納ケースに備えた請求項1記載の放射体温計。
  5. 放射体温計を収納ケースに収納した時に、自動的に汚れ検出手段を駆動させる汚れ検出自動開始手段を備えた請求項4記載の放射体温計。
  6. 充電可能な充電ユニットと結合可能な構成とした請求項1または4記載の放射体温計。
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