JP3881445B2 - 物品検査装置および物品検査プログラムを記録した記録媒体 - Google Patents

物品検査装置および物品検査プログラムを記録した記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は物品検査装置に関し、特に外観では区別することができない物品をその容器材質や中身の量などの差異の存在によって選別するようにした物品検査装置に関する。
【0002】
従来より、たとえば物を製造するような分野において、物品が良品か不良品かの検査が行われている。この場合の検査は、主として、製造された物品に関して容器の外観形状が変形していないかまたは傷やひびがないかどうかによる選別、あるいは、中身の充填物が規定量充填されているかどうかによる選別である。そして、外観の違いで選別するか、中身の違いで選別するかに応じて選別時の検査には様々な検査方法が用いられている。
【0003】
【従来の技術】
外観の違いで物品を選別しようとする場合には、光学的な検査方法が用いられている。たとえば、対象物の物品に光またはレーザー光を照射し、物品によって反射されたまたは遮られた光を検出し、その光を画像処理することにより、物品の形状が認識される。認識された物品の形状は、基準パターンとの比較判定により、形状的・サイズ的に異なる物品を不良品として選別することができる。また、光を照射した物品からの反射光の反射率を測定し、この反射率を利用して分析を行うことで、物品の選別を行うこともある。
【0004】
また、物品の中身の違いを検査する場合は、X線、超音波など透視させることよる診断方法が知られている。診断結果により物品の中身の状態が判断され、これが物品の選別に利用されている。
【0005】
一方、たとえば空き缶の回収装置のように、外観がまったく同じでもアルミ缶と鉄缶とでは容器材質が異なるので、この場合にも、材質の違いによる選別の必要性がある。このアルミ缶と鉄缶との選別には、一般に、磁石を利用した方法が用いられている。また、アルミ缶・鉄缶の別の選別方法としては、たとえば特公平7−89388号公報に記載のように、缶を押し潰すときのモータの負荷電流の違いを利用する方法も知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、形状を認識する画像処理では一般に認識処理に時間がかかる。たとえば、ガラス製品の表面の傷などを検査する必要がある場合には、表面全部について検査する必要があるので、さらに、処理時間がかかることになる。また、X線または超音波診断により、物品の中身を検査する方法は、物品によっては利用できない場合がある。たとえば、X線または超音波照射により中身が変質するなどの影響が出る可能性のある物品や、焼結煉瓦のような焼き物の内部微小空洞(鬆の存在)の検査には利用することができないという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、物品選別のための物品の検査の処理時間が短く、検査によって物品に悪影響を与えることがなく、さらに、焼き物のような物品にも物品選別のための検査が可能な物品検査装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
図1は上記目的を達成する本発明の原理図である。本発明の物品検査装置は、検査しようとする物品に打撃を与える打撃音発生手段1と、この打撃音発生手段1による打撃音を検出する音検出手段2と、検出された音のスペクトル密度を時間的に連続して求めることで検出音の分析を行う検出音分析手段3と、周波数軸および時間軸の平面をセグメントに細分化し、各セグメントに対応する検出音のスペクトル密度を数値化することで検出音3次元でパターン化する検出音パターン生成手段4と、物品ごとの検出音パターンをあらかじめ登録しておく基準パターン登録手段5と、検出音パターン生成手段4によって生成されたパターンを基準パターン登録手段5に登録されている基準パターンと照合するパターン照合手段6と、パターン照合の結果に従って物品を振り分ける物品振り分け手段7とを備えている。
【0009】
このような物品検査装置によれば、まず、基準パターン登録手段5には、検査対象の物品に関し、打撃音発生手段1、音検出手段2、検出音分析手段3、および検出音パターン生成手段4を用いて物品の種類ごとにパターンを生成し、基準パターンとして登録されている。検査しようとする物品は打撃音発生手段1に供給され、ここで打撃が与えられる。打撃によって発生された打撃音は音検出手段2によって拾われ、検出音分析手段3にて分析される。分析された検出音は検出音パターン生成手段4によってパターン化される。このパターンはパターン照合手段6に入力され、ここで、基準パターン登録手段5に登録されている基準パターンと照合され、その照合の結果は物品振り分け手段7に渡され、照合の結果に従って物品が振り分けられる。物品の検査に打撃音を利用することにより、外観検査では区別が困難な物品をその材質に従って、または中身の分量に従って選別することが可能になる。
【0010】
また、本発明によれば、コンピュータを、物品の打撃音のスペクトル密度を時間的に連続して求めることで打撃音の分析を行う打撃音分析手段、周波数軸および時間軸の平面をセグメントに細分化し、各セグメントに対応する前記打撃音のスペクトル密度を数値化することで打撃音3次元でパターン化する打撃音パターン生成手段、検査する物品の基準となる打撃音パターンをあらかじめ生成して登録しておく基準パターン登録手段、および前記打撃音パターン生成手段によって生成されたパターンを前記基準パターン登録手段に登録されている基準パターンと比較し類似するかどうかを検査して前記物品を区別するパターン照合手段として機能させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0011】
この媒体に記録された物品検査プログラムをコンピュータに実行させることにより、打撃音分析手段と、打撃音パターン生成手段と、基準パターン登録手段と、パターン照合手段と、の各機能がコンピュータによって実現できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の概略について図面を参照して説明する。
図1は物品検査装置の原理的な構成を示す図である。本発明によれば、物品検査装置は、検査しようとする物品に打撃を与えて打撃音を発生させる打撃音発生手段1と、この打撃音発生手段1による打撃音を検出する音検出手段2と、この音検出手段2により検出された音を分析する検出音分析手段3と、この検出音分析手段3の分析結果を基に検出された音をパターン化する検出音パターン生成手段4と、物品の種類ごとに検出音パターンをあらかじめ登録しておく基準パターン登録手段5と、検出音パターン生成手段4によって生成されたパターンと基準パターン登録手段5に登録されている基準パターンとを照合するパターン照合手段6と、パターン照合の結果に従って物品を振り分ける物品振り分け手段7とを備えている。
【0013】
この物品検査装置では、まず、検査対象の物品に関し、打撃音発生手段1、音検出手段2、検出音分析手段3、および検出音パターン生成手段4を用いて物品の種類ごとにパターンを生成し、そのパターンを基準パターン登録手段5に基準パターンとして登録しておく。このとき、基準パターンとしては、物品の特徴を最も表している代表的な音を採用するか、または同じ種類の物品を複数個または複数回サンプリングした打撃音を平均化したものを採用して、パターン化したものでもよい。
【0014】
検査しようとする物品は、打撃音発生手段1に供給される。打撃音発生手段1に供給された物品は、打撃が与えられて、打撃音を発生する。このとき、打撃音を発生させるハンマの材質、打撃の強さ、打撃位置、打撃時間などは、検査しようとする物品に応じて選択される。なお、打撃音を発生させるときには、打撃音を採取する場合を考慮して、周囲の雑音が混入しないように、物品を囲うようにしている。打撃音発生手段1で発生された打撃音は音検出手段2によって検出され、検出音分析手段3に入力される。検出音分析手段3では、入力された打撃音を分析し、その物品に固有な音の特徴が抽出される。検出音分析手段3で分析された結果は検出音パターン生成手段4に入力され、ここでパターン化される。このパターンはパターン照合手段6に入力される。パターン照合手段6は、また、基準パターン登録手段5に登録されている基準パターンを入力しており、検出音パターン生成手段4より入力されたパターンと基準パターン登録手段5に登録されている基準パターンとの照合が行われ、入力されたパターンがどの基準パターンに近いかを調べる。パターン照合手段6による照合の結果は物品振り分け手段7に渡される。物品振り分け手段7は照合の結果に従って物品を適当に振り分ける。
【0015】
本発明では、物品の比較可能な特徴を調べるのに、物品に打撃を与えることによって得られる打撃音を利用している。打撃音は、物品の材質、形状、寸法、中身の種類や量によって、それぞれ特徴ある音になる。これにより、外観検査では区別が困難な、材質の異なる物品、あるいは、中身の分量が異なる物品の選別に適用することができる。
【0016】
次に、本発明の実施の形態を、同一形状・サイズの空き缶をアルミ缶と鉄缶とに分別して回収するような装置に適用した場合を例にして説明する。
図2は缶材質選別装置の概略構成を示すブロック図である。この缶材質選別装置によれば、最初にアルミ缶および鉄缶の混じった状態で空き缶が投入される缶整列装置10が設けられている。この缶整列装置10の出力には選別不能缶除去装置12および缶頭・缶底振り分け装置14が設けられている。缶頭・缶底振り分け装置14の出力は2系統の処理装置、すなわち、缶頭側処理装置16および缶底側処理装置18に接続されている。これにより、缶頭・缶底振り分け装置14によって振り分けられた缶が、穴の開いている缶頭側と打撃を与える場所である缶底側とにそれぞれ揃えられた形で振り分けられるので、二手に分けての選別処理が可能になり、処理時間の短縮を図ることができる構成となる。缶頭側処理装置16および缶底側処理装置18の出力には選別缶収納箱20が接続されている。また、缶頭側処理装置16および缶底側処理装置18には、基準パターン登録装置22が接続されている。ここで、缶頭側処理装置16および缶底側処理装置18はそれぞれ同じ構成を有しているので、それらの詳細な構成は缶頭側処理装置16のみ示して缶底側処理装置18の詳細な構成は省略する。
【0017】
缶頭側処理装置16は、缶頭・缶底振り分け装置14から供給された缶を受けて、その缶に打撃を与える缶打撃装置24が設けられている。この缶打撃装置24には打撃音を検出するマイク26が設けられ、その出力にはマイクアンプ28が接続されている。マイクアンプ28はAGC(automatic gain control)回路を備えており、缶ごとの打撃音のレベル差をなくすようにしている。マイクアンプ28の出力にはバンドパスフィルタ30が接続されている。このバンドパスフィルタ30は打撃音以外にマイク26が定常的に拾う周囲の背景雑音を除去するためのもので、その上側および下側の遮断周波数は打撃音の信号成分から決定される。マイク26、マイクアンプ28およびバンドパスフィルタ30は音検出手段を構成している。
【0018】
次に、バンドパスフィルタ30の出力には、検出音分析手段としてトリガ検出回路32および短時間FFT(fast Fourier transform)分析装置34が設けられている。この短時間FFT分析装置34の出力には、パターン生成装置36が設けられている。パターン生成装置36の出力は、パターン照合装置38の一つの入力に接続されるとともに、基準パターン登録装置22の登録用の入力にも接続されている。パターン照合装置38の別の入力には、基準パターン登録装置22の出力が接続され、このパターン照合装置38の出力には、缶振り分け装置40が設けられている。基準パターン登録装置22は、缶の種類ごとに用意された基準パターン22a,22bを登録している。ここでは、形状と直径および長さのサイズとが同じアルミ缶と鉄缶とを判別することを前提とすることにしたので、基準パターン22aにはアルミ缶、基準パターン22bには鉄缶の代表的な打撃音のパターンが登録されている。
【0019】
次に、上記のように構成された缶材質選別装置の動作について以下のフローチャートを参照しながら説明する。
図3は缶材質選別装置の前処理動作の流れを示すフローチャートである。まず、缶を缶整列装置10の缶投入口に投入する(ステップS1)。すると、缶整列装置10は投入された缶を整列させて選別不能缶除去装置12へ送り込む(ステップS2)。選別不能缶除去装置12では、送り込まれた缶が缶頭側処理装置16または缶底側処理装置18で処理可能かどうかなどが検査される。すなわち、連続して送られてくる缶を1個ずつ検査するために、まず、1個の缶を缶検査台に乗せ(ステップS3)、缶径、缶長、缶重量を順次に、または同時にチェックする(ステップS4,5,6)。缶重量のチェックは缶に中身が残っていたり異物が混入していたりするのをチェックするためである。ここで、缶径、缶長または缶重量のいずれか一つでも不良が検出されると、その缶は選別対象外の缶であると判断され、その缶の払い出し処理が行われる(ステップS7)。また、缶径、缶長および缶重量のチェックの後、またはそれらのチェックと同時に缶の向きがチェックされる(ステップS8)。その後、缶は缶頭・缶底振り分け装置14に送られる。缶頭・缶底振り分け装置14では、ステップS8でチェックされた缶の向きが缶頭側かどうかが判断され(ステップS9)、その判断に基づいて、缶を缶頭側処理装置16に送るか缶底側処理装置18に送るかが決められる。
【0020】
図4は缶材質選別装置の選別動作の流れを示すフローチャートである。このフローチャートにおいて、缶頭側処理装置16および缶底側処理装置18の処理シーケンスは同じであるので、缶頭側処理装置16による処理シーケンスで説明する。缶頭・缶底振り分け装置14によって振り分けられた缶は缶打撃装置24に入れられ(ステップS11)、続いて、この缶打撃装置24の入口は防音用の蓋によって閉じられる(ステップS12)。缶打撃装置24は缶の底に打撃を与えて、打撃音を発生させ、その打撃音はマイク26、マイクアンプ28、バンドパスフィルタ30およびトリガ検出回路32を通して、短時間FFT分析装置34に入力され、この短時間FFT分析装置34にて缶の打撃音が分析される(ステップS13)。短時間FFT分析装置34による分析の結果は、パターン生成装置36に入力され、ここで、パターン化される(ステップS14)。このパターンはパターン照合装置38に入力され、パターン照合装置38において、基準パターン登録装置22に格納された、アルミ缶の打撃音をパターン化した基準パターン22a、および鉄缶の打撃音をパターン化した基準パターン22bとそれぞれ照合される(ステップS15)。パターン照合装置38によるパターン判定が終了すると、その缶は缶振り分け装置40に送られる。缶振り分け装置40では、パターン照合装置38によるパターン判定にて缶が正しく判定されたかどうかが判断される(ステップS16)。ここで、缶の材質がアルミであるか鉄であるかが明確に判断できなかった場合には、不良缶箱への払い出しが行われる(ステップS17)。缶の材質がアルミまたは鉄のいずれかであると判断された場合には、次に、缶材質はアルミかどうかが判断される(ステップS18)。缶材質がアルミの場合には、その缶はアルミ缶収納箱へ払い出され(ステップS19)、缶材質がアルミでない場合は、その缶は鉄缶収納箱へ払い出される(ステップS20)。また、前処理段階のステップS7において、選別対象外の缶であるとして払い出し処理が行われた缶は、ステップS17にて、不良缶箱への払い出しが行われる。
【0021】
次に、缶打撃装置24にて発生された打撃音からパターン判定にて缶材質を判定する処理の詳細を以下に説明する。
図5は缶打撃装置による缶の打撃音の波形例を示す図である。缶打撃装置24にて発生された打撃音は、マイク26で拾われ、マイクアンプ28で適当に増幅された後、バンドパスフィルタ30で余分な信号成分が取り除かれると、図示のように、ある時刻t0で大きな振幅を有し、そこから振幅が減衰していく波形の音声信号が得られる。この打撃音の信号は、トリガ検出回路32に入力され、ここで、短時間FFT分析装置34が分析を開始する時刻t0が検出される。
【0022】
図6は短時間FFT分析装置による分析結果の3次元表示例を示す図である。短時間FFT分析装置34は、打撃音の信号を分析することによって、図示の3次元表示のような分析結果を得ることができる。この図において、X軸は周波数を表し、Y軸は時間を表し、そしてZ軸はスペクトル密度を表している。周波数軸のスケールはリニアまたはログスケールで示され、時間軸のスケールは秒スケールで示され、スペクトル密度軸の周波数分析スケールは、特徴を捉えることができる密度(図示の例ではスペクトル密度の量子化値d3)をスペクトル密度軸の中心付近までシフトさせたシフト付きリニアスケールで示される。打撃音の信号は、分析により、周波数に沿って変化するスペクトル密度が時間とともに連続して変化する状態で表現される。このような分析結果は、パターン生成装置36によってパターン化される。
【0023】
図7はパターン生成装置が出力する量子化パターンの一例を示す図であって、(A)は検出音量子化パターンを示し、(B)は登録された基準量子化パターンを示している。分析結果のパターン化は、周波数軸と時間軸とのXY平面を時間軸に沿ってある幅で等間隔に分割し、かつ周波数軸に沿ってある幅で等間隔に分割してセグメントを形成し、各セグメントにはその位置に対応するスペクトル密度軸の量子化値を書き込むことによって行われる。ただし、時間軸方向に隣接するセグメントに特徴データが分散化されるように、時間軸方向に隣接するセグメントは周波数軸方向に半セグメント分シフトさせた配列パターンにしている。したがって、量子化パターンは、完全セグメントN1と周波数軸上端および下端に見られる半セグメントN2(完全セグメントN1の半分の領域を有する)とから構成されることになる。なお、各セグメント内の量子化値dnはdn={d0,d2,・・・,d7}の8段階であり、検出音の量子化値はF(Dij)∈dn、登録された基準量子化パターンの量子化値はF(Sij)∈dnで表す。このようにして、検出された打撃音がパターン化された後、パターン照合装置38により基準のパターンとの照合が行われる。
【0024】
図8はパターン照合装置の動作の流れを示すフローチャートである。パターン照合装置38によるパターン照合では、まず、検出音の量子化パターンをパターン生成装置36から受け取るとともに(ステップS31)、基準パターン登録装置22からアルミ缶用の基準パターン22aを第1の基準量子化パターンとして、鉄缶用の基準パターン22bを第2の基準量子化パターンとしてそれぞれ読み出す(ステップS32,S33)。次いで、検出音の量子化パターンと第1の基準量子化パターンとのパターン比較を行い(ステップS34)、検出音の量子化パターンと第2の基準量子化パターンとのパターン比較を行う(ステップS35)。これらのパターン比較は、たとえば以下のようにして行われる。
【0025】
すなわち、検出音の量子化パターンの各セグメントの量子化値と第1または第2の基準量子化パターンの対応するセグメントの量子化値とを比較して、その差Δijを
【0026】
【数1】
Δij=|F(Dij)−F(Sij)| ・・・(1)
として求める。そして、この差がある閾値e1以下ならば、すなわち、Δij≦e1ならば、両セグメントの量子化値は非常に類似しているものとして、完全セグメントについては、Nij=1、半セグメントについては、Nij=1/2を割り当てる。一方、Δij>e1ならば、両セグメントの量子化値はほとんど類似していないものとして、完全セグメント、半セグメントに関係なく、Nij=0を割り当てる。以上の、操作はすべてのセグメントについて行われる。
【0027】
次に、以上のようにして求められた類似度を表す値Nijを積算して総合パターン値eA,eBを求める(ステップS36,S37)。これらの総合パターン値eA,eBは、それぞれ
【0028】
【数2】
Figure 0003881445
【0029】
によって求められる。ただし、Nは全セグメントの数であり、完全セグメントN1の総数と半セグメントN2の総数の半分との和である。
次に、総合パターン値eAは、ある閾値e2(0<e2<1)と比較される(ステップS38)。ここで、総合パターン値eAが閾値e2より小さい場合には、総合パターン値eBと閾値e2との比較が行われる(ステップS39)。ステップS38,S39のいずれにおいても、総合パターン値eA,eBが閾値e2より小さい場合には、検出音量子化パターンは登録されている基準パターン22a,22bのいずれにも類似していなく、判別不能と判断される(ステップS40)。総合パターン値eA,eBのいずれか一方が閾値e2より大きい場合には、両者の比較が行われる(ステップS41)。ここで、eA>eBならば、缶はアルミ缶であると判断され(ステップS42)、eA>eBでなければ、缶は鉄缶であると判断される(ステップS43)。
【0030】
次に、以上の缶材質選別装置を構成する各装置の機械的な構成例について説明する。
図9は缶材質選別装置の一構成例を示す平面図、図10は図9の構成の側面図である。図示の缶材質選別装置によれば、缶投入口50があり、この下方位置には缶整列用のコンベア52が設けられている。このコンベア52はコンベアモータ54によって駆動され、缶を搬送中に缶の方向を一定にして整列させる缶整列装置10を構成している。コンベア52の下流側には缶検査台が配置されている。この缶検査台は、たとえば差動トランス検出型の重量計56と、缶を1個ずつ検査するために缶を1個ずつ受け入れるようにしたシャッタ58と、このシャッタ58を上下に移動させるエアシリンダ60と、缶の一方の端面側に設けられてその端面が穴の開いている缶頭側か穴の開いていない缶底側かを検出する光学センサ62と、缶の他方の端面側に設けられてその端面で缶長を測定するリミットスイッチ64と、缶検査台の上部に設けられて缶径を測定するリミットスイッチ66とから構成されている。
【0031】
缶検査台の下流側には異物混入缶の排出用シュート68が設けられ、その上端開口部には切換弁70が設けられている。この切換弁70は缶検査台における検査の結果に従って排出用シュート68の上端開口部を開閉させるようモータ72によって駆動される。缶検査台、排出用シュート68、切換弁70およびモータ72は選別不能缶除去装置12を構成している。
【0032】
切換弁70の下流側には、さらに、二つのシュート74,76が設けられており、それらの入口には切換弁78が設けられている。この切換弁78は、光学センサ62による検査結果に従って、光学センサ62のある側の缶の端面が缶底である場合には缶をシュート74に導き、缶頭である場合には缶をシュート76に導くようにモータ80によって切換制御される。したがって、切換弁78およびモータ80は缶頭・缶底振り分け装置14を構成していることになる。シュート74の下端開口部は打撃装置82に接続され、シュート76の下端開口部は打撃装置84に接続されている。各打撃装置82,84の缶入口部にはモータ86,88によって駆動される防音用蓋90,92が設けられ、出口部には振り分けコンベア94,96が設けられている。振り分けコンベア94,96の搬送方向両端にはアルミ缶収納箱98,100および鉄缶収納箱102,104が設置され、振り分けコンベア94,96の側部には不良缶箱106,108が設置されている。さらに、不良缶箱106,108が設置された側と反対側の振り分けコンベア94,96の側部にはエアシリンダ110,112が設けられている。また、排出用シュート68の下端は、不良缶箱106に開口していて、選別不能な缶を払い出すようにしている。振り分けコンベア94,96およびエアシリンダ110,112は、打撃装置82,84によって発生された打撃音の分析・パターン比較結果に従って、缶をアルミ缶収納箱98,100または鉄缶収納箱102,104に送り出したり、不良缶箱106,108へ払い出したりするよう構成される。振り分けコンベア94,96およびエアシリンダ110,112は、缶振り分け装置40を構成している。
【0033】
上記の構成において、缶投入口50に缶が投入されると、その缶はコンベア52によって搬送され、その途中で搬送方向と直角な方向に向けられ、整列させられる。整列された缶は順次缶検査台に送られる。缶は、エアシリンダ60がシャッタ58を上方に移動させることにより缶検査台に乗せられ、エアシリンダ60がシャッタ58を下方に移動させることによって検査が開始される。この検査は、リミットスイッチ66により缶径がチェックされ、リミットスイッチ64により缶長がチェックされ、重量計56により缶への異物混入がチェックされ、そして、光学センサ62により缶の向きがチェックされる。
【0034】
このようにしてチェックされた缶は、エアシリンダ60がシャッタ58を上方に移動させることによって次の缶が缶検査台に導入されると同時に缶検査台より排出される。このとき、切換弁70は缶検査台による測定結果に従って切換制御されている。すなわち、リミットスイッチ66があらかじめ定めた缶径を有していることを検出し、リミットスイッチ64があらかじめ定めた缶長を有していることを検出し、かつ重量計56が缶の標準的な重量値を検出した場合、切換弁70は排出用シュート68の上部開口部を閉じる位置に切り換え、リミットスイッチ66があらかじめ定めた缶径に達していないことを検出し、リミットスイッチ64があらかじめ定めた缶長に達していないことを検出し、または、重量計56が異常重量値を検出したような場合には、切換弁70は排出用シュート68の上部開口部が開放する位置に切り換え制御される。したがって、缶検査台において、サイズおよび重量が異なると判断された缶は、基準パターン登録装置22に基準パターンがあらかじめ登録されていない缶または内容の一部が残っているか異物が混入された缶であり、打撃音分析による選別は不可能であるとして、排出用シュート68より不良缶箱106へ導かれ、打撃音分析を開始する前の段階で排除される。
【0035】
缶検査台による測定結果が打撃音分析による選別可能な缶であると判断された場合、缶が缶検査台より排出されるときには、切換弁78は光学センサ62の測定結果に従って回転位置が切り換えられている。これにより、光学センサ62が設けられている側に缶底が来る缶はシュート74に導かれ、光学センサ62が設けられている側に缶頭が来る缶はシュート76に導かれる。シュート74,76を介して打撃装置82,84に缶が供給されると、防音用蓋90,92が閉じられる。打撃装置82,84は防音用蓋90,92を閉じた状態で缶に打撃を与え、打撃音を発生させる。その打撃音は集音されて短時間FFT分析装置34により分析され、パターン生成装置36でパターン化され、パターン照合装置38にて基準パターン登録装置22に登録された基準パターン22a,22bと比較検査される。その結果は、缶振り分け装置40に与えられ、振り分けコンベア94,96を駆動する方向の決定、またはエアシリンダ110,112の動作の決定に使用される。このように、途中で、缶の向きによって、選別処理を2系統に分け、選別処理を同時に平行して実施していくことにより、処理時間を短くしている。
【0036】
図11は打撃装置の一構成例を示す図である。打撃装置82,84は同じ構成を有しているので、ここでは、打撃装置82について説明する。打撃装置82は、シュート74を介して缶114が供給されると打撃装置82への入口開口部を閉止する防音用蓋90と、この防音用蓋90を駆動するモータ86と、缶114の缶底側に配置されたエアシリンダ116とから構成される。エアシリンダ116は2方向弁118に接続され、2方向弁118のエア供給口は圧力調整弁120を介してエアポンプ122に接続され、エア排出口は緩衝器124に接続されている。この打撃装置82の出口には、打撃音を検出するマイク26が設けられている。マイク26の出力はマイクアンプ28に接続されている。
【0037】
打撃装置82は、供給された缶114の底をエアシリンダ116の駆動棒の先に取り付けられたハンマーヘッドを突き当てることによって打撃音を発生させる。駆動棒が突き当てられた缶114はこの打撃装置82から突き出されて振り分けコンベア94の上に落とされる。なお、缶114を突き当てる力は圧力調整弁120を調整することによって変えられる。こうして発生された打撃音はマイク26によって拾われ、マイクアンプ28などを介して短時間FFT分析装置34に与えられて分析される。
【0038】
以上、本発明をその好適な実施の形態について説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。たとえば、上記の実施の形態では缶のサイズが1種類の場合について説明したが、前処理段階で、缶径・缶長をチェックしているので、ここで缶のサイズの種類を絞り込み、さらに、それらのサイズに応じた基準パターンを登録させておくことにより、缶のサイズが違っても材質を認識することができ、アルミ缶および鉄缶の選別をすることができる。また、衝撃音の分析に、短時間FFT分析装置を使用したが、これ以外にも、短時間FFT分析装置よりも分析時間はかかるが選別度が高い、ウイグナー分布関数またはウエーブレット変換を利用した分析装置を利用することもできる。
【0039】
さらに、上記の好ましい実施の形態では、空き缶をその材質により選別するのに適用したが、被選別物に打撃を与えることによって特徴ある打撃音を発生するすべての物品に適用することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、打撃音発生装置によって発生された打撃音を音検出手段で検出し、検出音分析手段で分析して検出音パターン生成手段によりパターン化し、パターン照合手段にて、このパターンと基準パターン登録手段にあらかじめ登録してある基準パターンとを照合し、その照合結果に従って物品振り分け手段により物品を振り分けるように構成した。このため、同一形状・サイズのアルミ缶と鉄缶のように外観だけでは判断できない容器材質の検出が可能になる。また、直接見ることはできない容器内の充填物の量をチェックしたり、他の選別装置では困難な、たとえば、西瓜などの果菜の熟れ具合による選別、あるいは焼き物の鬆の存在の検査などに適用することができる。
【0041】
さらに、分析するために必要な信号は音信号であるので、その音を検出する検出装置はマイクとアンプとで構成することができ、他の選別装置に比べて検出装置を非常に簡単に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】物品検査装置の原理的な構成を示す図である。
【図2】缶材質選別装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】缶材質選別装置の前処理動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】缶材質選別装置の選別動作の流れを示すフローチャートである。
【図5】缶打撃装置による缶の打撃音の波形例を示す図である。
【図6】短時間FFT分析装置による分析結果の3次元表示例を示す図である。
【図7】パターン生成装置が出力する量子化パターンの一例を示す図であって、(A)は検出音量子化パターンを示し、(B)は登録された基準量子化パターンを示している。
【図8】パターン照合装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】缶材質選別装置の一構成例を示す平面図である。
【図10】図9の構成の側面図である。
【図11】打撃装置の一構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 打撃音発生手段
2 音検出手段
3 検出音分析手段
4 検出音パターン生成手段
5 基準パターン登録手段
6 パターン照合手段
7 物品振り分け手段

Claims (7)

  1. 物品に打撃を与えて音を発生させる打撃音発生手段と、
    前記打撃音発生手段により発生させた打撃音に基づいて当該物品を識別する物品識別手段と、
    を備え
    前記物品識別手段は、発生された打撃音を検出する音検出手段と、検出された音のスペクトル密度を時間的に連続して求めることで検出音の分析を行う検出音分析手段と、周波数軸および時間軸の平面をセグメントに細分化し、各セグメントに対応する前記検出音のスペクトル密度を数値化することで前記検出音を3次元でパターン化する検出音パターン生成手段と、検査する物品の基準となる検出音パターンをあらかじめ生成して登録しておく基準パターン登録手段と、前記検出音パターン生成手段によって生成されたパターンを前記基準パターン登録手段に登録されている基準パターンと比較して類似するかどうかを検査するパターン照合手段とを有していることを特徴とする物品検査装置。
  2. 前記物品識別手段の識別結果に応じ当該物品を振り分ける物品振り分け手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の物品検査装置。
  3. 前記打撃音発生手段は、検査物品を周囲から囲うようにした防音手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の物品検査装置。
  4. 前記音検出手段は、打撃音を捉えるマイクと、前記マイクからの音声出力を増幅するマイクアンプと、背景雑音を除去する雑音除去回路とを有していることを特徴とする請求項1記載の物品検査装置。
  5. 前記パターン照合手段は、前記検出音のパターンと前記基準パターン登録手段に登録されたパターンとのそれぞれ対応するセグメントの数値化された値の差をそれぞれ求め、前記差の合計値により両パターンの一致を評価するようにしたことを特徴とする請求項1記載の物品検査装置。
  6. 前記打撃音発生手段に供給される物品が検査対象になり得るかどうかをあらかじめ検査する前処理手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の物品検査装置。
  7. コンピュータを、
    物品の打撃音のスペクトル密度を時間的に連続して求めることで打撃音の分析を行う打撃音分析手段、
    周波数軸および時間軸の平面をセグメントに細分化し、各セグメントに対応する前記打撃音のスペクトル密度を数値化することで打撃音を3次元でパターン化する打撃音パターン生成手段、
    検査する物品の基準となる打撃音パターンをあらかじめ生成して登録しておく基準パターン登録手段、および
    前記打撃音パターン生成手段によって生成されたパターンを前記基準パターン登録手段に登録されている基準パターンと比較し類似するかどうかを検査して前記物品を区別するパターン照合手段として機能させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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