JP3879011B2 - 間欠空気揚水装置用の気泡分割筒及び気泡分割筒を備えた間欠空気揚水装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、大量の水を有するダム、貯水池、湖、沼などに設置され、気泡を揚水筒内で間欠的に上昇させることにより、水底側の水を水面側へ上昇させ、これによってダム等の中において広範囲な水の上下対流循環を生じさせ、大量の水の中の溶存酸素量の増大、水質改善に用いられる間欠空気揚水装置に関し、特に、下端側に空気室を有する大口径揚水筒の上側に複数本の小口径揚水筒が連接されてなる間欠空気揚水装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
間欠空気揚水装置は従来から大量の水を有するダム、貯水池、湖、沼などに設置され、大量の水の中の溶存酸素量の増大、藻類の除去等、水質改善に用いられて多大な効果を発揮している。
【0003】
この間欠空気揚水装置の揚水筒は、その直径が一定の大きさになるまでは直径を大きくするにつれて揚水量を増大させることができるので、大きな容量のダム等の水を処理する場合であっても、揚水筒の直径を大きくすることにより、間欠空気揚水装置の設置数を増す必要はなかった。
【0004】
しかし、揚水筒の直径が一定の大きさを越えると、揚水効率の向上が図れなくなるという問題点があるので、これを解決すべく、出願人は、間欠空気揚水装置の大口径の揚水基筒の上に大口径の整流筒を連接すると共に、この大口径整流筒の上に複数本の小口径揚水筒を連接して1基の揚水量が増大された大容量の間欠空気揚水装置を構成し(実開昭61−200498号)、更に大きな容量を有するダム等の水を処理する場合であっても、間欠空気揚水装置の設置数を比較的少数にして保守・点検等の便宜を図りつつ、大きな効果を上げている。
【0005】
【発明により解決しようとする課題】
下端側に空気室を有する大口径揚水筒の上側に複数本の小口径揚水筒が連接されてなる従来の間欠空気揚水装置では、図5(a)、(b)、(c)に現されているように、大口径揚水筒2の上端側と複数本の小口径揚水筒3a、3b、3c、3dの下端側との連結部には、小口径揚水筒3a〜3dへの連通孔を有する頂板38が設けられており、この頂板38の底面から下方向に向かって大口径揚水筒2内を上昇してきた気泡33及び揚水を各小口径揚水筒3a〜3dに均等に分割、分流させるべく、仕切り39が設けられていた。これによって、大口径揚水筒2内を上昇してきた大きな気泡33を分割し、上側に連接されている複数本の小口径揚水筒3a〜3d内に上昇させると共に、当該気泡33に連れて大口径揚水筒2内を上昇してくる揚水を同じく複数本の小口径揚水筒3a〜3d内に上昇させていたものである。
【0006】
このように大口径揚水筒の上側に複数本の小口径揚水筒が連接されてなる間欠空気揚水装置においては、大口径揚水筒内を上昇してきた大きな1個の気泡33を均等に分割し、小口径揚水筒内にそれぞれ均等に配分して、各小口径揚水筒の上端開口から均等に吐出させることが望ましいが、大口径揚水筒2内を上昇してきた大きな1個の気泡33が頂板38とこれから下方向に向けて突設されている仕切り39に衝突した際に、気泡33から小口径揚水筒3a〜3dに向けての気泡の分割が円滑に行われないと、最も上昇していきやすい小口径揚水筒内に向けて比較的多くの気体が上昇、流入するようになり、複数本の小口径揚水筒相互の間での不均一な気泡の上昇、各小口径揚水筒の上端開口からの不均等な吐出が生じやすい。このような各小口径揚水筒の上端開口からの不均等な揚水の吐出は、間欠空気揚水装置による揚水効率の低下をもたらすので防止する必要がある。
【0007】
間欠空気揚水装置が垂直位置より多少傾いていると、前述した不均等な気泡の分割が生じやすいので、いかなる場合でも間欠空気揚水装置を直立設置させるべく、間欠空気揚水装置の下端側に取り付けられているシンカーと協働して間欠空気揚水装置の直立設置を担うように間欠空気揚水装置の上端側に取り付けられているブイの浮力を増加させることも試みられたが、ブイによる浮力を増加させると、シンカーの重量をこれに応じて増大させたり、間欠空気揚水装置の下端側とシンカーとの間の連結具の強度を高める必要があるなど、経済性と施工性の面で問題点が多かった。また、間欠空気揚水装置が設置されている大量水が流動している場合、ブイの浮力を大きくしただけでは間欠空気揚水装置の完全なる直立設置を維持することは困難である。そこで、間欠空気揚水装置が直立に設置されている状態より多少傾いている場合であっても、大口径揚水筒2内を上昇してきた大きな1個の気泡33が、小口径揚水筒3a〜3dに向けて均等に、すなわち均等な体積ずつに、しかも円滑、速やかに分割されることを可能ならしめる気泡分割手段の開発が求められていた。
【0008】
また、前記のように大口径揚水筒内を上昇してきた大きな1個の気泡33が頂板38とこれから下方向に向けて突設されている仕切り39に衝突した際に、気泡33から小口径揚水筒に向けての気泡の分割が円滑に行われないと、気泡33による浮力、気泡33が頂板38等に衝突した際の上昇力などによって間欠空気揚水装置の全体が、矢示40方向(図5(a))に持ち上げられ、これが繰り返されることによって、上側のブイ6と協働して水中における間欠空気揚水装置の直立設置を担っているシンカー7と間欠空気揚水装置下端側との連結部に破損が生じることがあった。
【0009】
本発明は、大口径揚水筒2内を上昇してきた大きな1個の気泡33が小口径揚水筒3a〜3d内に上昇していく小さな気泡に分割されるのを円滑に行わせ、またより均等な体積で各小口径揚水筒3a〜3dに気泡33が分割されていくことを可能ならしめることによって、均一な体積を有するように分割された気泡が複数本の小口径揚水筒3a〜3d内を同一のタイミングで上昇し、各小口径揚水筒の上端開口からの均等な揚水の吐出が行われるようにすること、また、大きな1個の気泡33から小口径揚水筒3a〜3dの数に合せた数の気泡への分割の際に気泡33による浮力や気泡33が頂板38等に衝突する際の上昇力などによって間欠空気揚水装置1が持ち上げられ、シンカー7と間欠空気揚水装置1の下端側との連結部等に破損を生じることがないようにすることを目的としている。
【0010】
更に、1個の大きな気泡33から小さな気泡35a、35b等への分割を円滑に行わせることにより、大口径揚水筒2の上端側から小口径揚水筒3a〜3d下端側への連結部における気泡33、気泡35a、35b等の上昇速度の低減を少なくさせ、これによって気泡33、気泡35a、35b等に連行される揚水の上昇速度の低減をも少なくして揚水効率を一層向上させることを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下端側に空気室を有する大口径揚水筒の上側に複数本の小口径揚水筒が連接されてなる間欠空気揚水装置の大口径揚水筒と複数本の小口径揚水筒との間に介装される気泡分割筒であって、複数本の小口径揚水筒の下端開口に通じる複数の連通孔を有する頂板と大口径揚水筒の上端開口に通じる下端開口とを備えており、前記頂板には気泡分割用の複数の仕切り板が前記下端開口に向けて突設されていると共に、当該複数の仕切り板の中央の交差部において、隣接する仕切り板同士の交差部を閉鎖する板体を周壁とし、かつ前記交差部の中心線上に頂点を有する下向きの角錐が、前記下端開口に向けて突設されていることを特徴とする間欠空気揚水装置用の気泡分割筒であり、下端側に空気室を有する大口径揚水筒の上側に複数本の小口径揚水筒が連接されてなる間欠空気揚水装置において、大口径揚水筒と複数本の小口径揚水筒との間に気泡分割筒が介装されており、当該気泡分割筒は、複数本の小口径揚水筒の下端開口に通じる複数の連通孔を有する頂板と大口径揚水筒の上端開口に通じる下端開口とを備えており、前記頂板には気泡分割用の複数の仕切り板が前記下端開口に向けて突設されていると共に、当該複数の仕切り板の中央の交差部において、隣接する仕切り板同士の交差部を閉鎖する板体を周壁とし、かつ前記交差部の中心線上に頂点を有する下向きの角錐が、前記下端開口に向けて突設されていることを特徴とする気泡分割筒を備えた間欠空気揚水装置である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明が提案する間欠空気揚水装置用の気泡分割筒4は、下端側に空気室5を有する大口径揚水筒2の上側に複数本の小口径揚水筒3(3a、3b、3c、3d)が連接されてなる間欠空気揚水装置1の大口径揚水筒2と複数本の小口径揚水筒3との間に介装されて使用されるものである。この気泡分割筒4は、複数本の小口径揚水筒3の下端開口に通じる複数の連通孔を有する頂板10を上端側に備えていると共に、大口径揚水筒2の上端開口に通じる下端開口12を下端側に備えている。頂板10には気泡分割用の複数の仕切り板50a、50b、51a、51bが下端開口12に向けて突設されていると共に、当該複数の仕切り板の中央の交差部において、隣接する仕切り板同士の交差部を閉鎖している板体11a、11b、11c、11dを周壁とする角錐11が同じく前記下端開口12に向けて突設されている。
【0013】
前記において、気泡分割用の複数の仕切り板50a、50b、51a、51bの中央の交差部において隣接する仕切り板同士の交差部を閉鎖している板体11a、11b、11c、11dを周壁とする角錐11が、仕切り板50a等と同じく頂板10から気泡分割筒4の下端開口12に向けて突設されていることにより、隣接する仕切り板同士の交差部、例えば、仕切り板50aと51bとの交差部は、角錐11の1つの周壁を構成する板体11cによって塞がれ(図2、図3)、しかも、板体11cは角錐11の1つの周壁を構成しているので、前記板体11cは頂板10から下端開口12に向けて、角錐11の頂点13方向すなわち仕切り板50aと51bとの交差部が存在する方向に向けて斜設された状態で、仕切り板50aと51bとの交差部を閉鎖している(図2、図3)。これによって、大口径揚水筒2の中を上昇してきた1個の大きな気泡33は、気泡分割用の複数の仕切り板50a、50b、51a、51b及び(上昇する気泡33側から見ると)頂点13から斜め上方に延びる板体11a、11b、11c、11dとによって、上方に連接されている複数本の小口径揚水筒3の数に分割されると共に、角錐11の頂点13から前記複数の仕切り板50a等の中央交差部における隣接する仕切り板同士を斜めに塞いでいる角錐11の周壁を構成する板体11a、11b、11c、11dに案内されて、円滑に複数本の小口径揚水筒3a、3b、3c、3dの中に上昇していく。
【0014】
このように、気泡分割用の複数の仕切り板50a〜51bの中央の交差部において隣接する仕切り板同士の交差部が、板体11a、11b、11c、11dによって閉鎖され、この板体11a〜11dを周壁として構成される角錐11が、複数の仕切り板50a〜51bの中央の交差部の位置に頂点13を有するようにして、仕切り板50a等と同じく頂板10から気泡分割筒4の下端開口12に向けて突設されていることにより、前記大きな1個の気泡33が分割される際に、その分割が円滑に進まず、その間に、間欠空気揚水装置1が垂直設置状態より若干傾斜している等の理由によって、気体が上昇、移動しやすくなっている側の小口径揚水筒の中により大きな体積の気体が上昇し、複数の小口径揚水筒の間で不均一な気泡の上昇・不均一な揚水の吐出が生じることを防止できる。また気泡33の分割が円滑に進まない間に、気泡33の浮力等によって間欠空気揚水装置1が矢示40(図5(a))のように上方に持ち上げられることを防止できる。
【0015】
前記のように、板体11a〜11dは、頂板10から気泡分割筒4の下端開口12に向けて突設されている気泡分割用の仕切り板50a〜51bの中央の交差部において隣接している仕切り板同士と頂板10との間で構成される空間、例えば、図2(c)において仕切り板50aと51b及び頂板10との間で構成される空間を、頂板10から気泡分割筒4の下端開口12に向けて斜めに塞ぐものである。
【0016】
このように頂板10から気泡分割筒4の下端開口12に向けて突設されている気泡分割用の仕切り板50a〜51bの中央の交差部の位置を頂点13とし、同じく頂板10から気泡分割筒4の下端開口12に向けて突設されている角錐11の周壁を構成する板体11a〜11dは、気泡分割用の仕切り板50a〜51bと協働して大口径揚水筒2を上昇してきた1個の大きな気泡33を円滑に、上側に連接されている複数本の小口径揚水筒3の数に分割させ、1個の大きな気泡33が分割される際に間欠空気揚水装置1が気泡33の浮力によって上側方向(図5(a)に矢示40で現す方向)への力を受けることを未然に防止すると共に、気泡33から気泡35a、35b等となっての上昇への過程を円滑に行わせることを目的として、前記のように気泡分割用の複数の仕切り板50a〜51bの中央の交差部を斜めに塞ぐと共に、分割された気泡35a、35b等の小口径揚水筒3a〜3d方向への上昇を効果的に案内、方向付けできるものでなければならない。
【0017】
そこで、図2、図3図示のように、4本の小口径揚水筒3が大口径揚水筒2の上に連接されている場合には、大口径揚水筒2を上昇してきた1個の大きな気泡33を4個に分割させるべく、4枚の気泡分割用仕切り板50a〜51bを頂板10から突設させると共に、これら4枚の仕切り板50a〜51bの中央交差部を閉鎖して前記上側に連接されている4本の小口径揚水筒3の方向に向けて傾斜する周壁からなる四角錐11を、4枚の仕切り板50a〜51bの中央交差部において頂板10から突設させる必要がある。
【0018】
また、図示していないが、3本の小口径揚水筒が大口径揚水筒2の上に連接されている場合には、3枚の気泡分割用仕切り板とそれらの中央交差部を、上側に連接されている3本の小口径揚水筒の方向に向けて、斜めに閉鎖する周壁からなる三角錐とを頂板10から突設させ、6本の小口径揚水筒が大口径揚水筒2の上に連接されている場合には、6枚の気泡分割用仕切り板とそれらの中央交差部を、上側に連接されている6本の小口径揚水筒の方向に向けて、斜めに閉鎖する周壁からなる六角錐とを頂板10から突設させる必要がある。
【0019】
このように、頂板10から下方向に突設されている気泡分割用の仕切り板の中央交差部において、同じく下方向に突設される角錐の高さは、気泡分割用の仕切り板の高さと同一、すなわち、仕切り板の中央交差部の下端(大口径揚水筒2の上端開口に通じる気泡分割筒4の下端開口12方向に向いている仕切り板の中央交差部の下端)が角錐の頂点となるようにすることが、気泡分割筒の製造コストの面から有利である。
【0020】
また、本発明が提案する間欠空気揚水装置は、下端側に空気室5を有する大口径揚水筒2の上側に複数本の小口径揚水筒3(3a、3b、3c、3d)が連接されてなる間欠空気揚水装置1において、大口径揚水筒2と複数本の小口径揚水筒3との間に前述した気泡分割筒4が介装されているものである。
【0021】
【実施例1】
以下添付図面を用いて本発明の間欠空気揚水装置用の気泡分割筒4及び気泡分割筒4を備えた間欠空気揚水装置1を詳細に説明する。
【0022】
図2(a)、(b)、(c)及び図3(a)、(b)、(c)に詳細を現す気泡分割筒4は、下端側に空気室5を有する大口径揚水筒2の上側に複数本の小口径揚水筒3(3a、3b、3c、3d)が連接されてなる間欠空気揚水装置1 (図1、図4(a))の大口径揚水筒2と複数本の小口径揚水筒3との間に介装されて使用されるものである。この気泡分割筒4は、複数本の小口径揚水筒3の下端開口に通じる複数の連通孔を有する頂板10と大口径揚水筒2の上端開口に通じる下端開口12とを備えている。頂板10には気泡分割用の複数の仕切り板50a、50b、51a、51bが下端開口12に向けて突設されている。また、複数の仕切り板50a〜51bの中央の交差部においては、隣接する仕切り板同士の交差部、すなわち、仕切り板50aと51bとの間、仕切り板51bと50bとの間、仕切り板50bと51aとの間、仕切り板51aと50aとの間が、頂板10上で下端開口12方向に斜設された板体11c、11b、11a、11dによってそれぞれ閉鎖されている(図2(c)。図3(c))。前記板体11c〜11dによって、複数の仕切り板50a〜51bの中央の交差部の下側に位置する点13を頂点とする四角錐11が構成されているので(図2)、頂板10上で下端開口12方向に向けて複数の仕切り板50a〜51bが突設されていると共に、これらの仕切り板50a〜51bの中央の交差部において、隣接する仕切り板同士の交差部を閉鎖する板体11c〜11dを周壁とする四角錐11が下端開口12に向けて突設されていることになる。
【0023】
なお、図2図示の実施例では、四角錐11の頂点13が複数の仕切り板50a〜51bの中央の交差部の下側に位置する、すなわち、仕切り板50a〜51bより四角錐11の方が高くなるように構成したが、図3図示のように、四角錐11の頂点13が複数の仕切り板50a〜51bの中央の交差部の下端に位置する、すなわち、仕切り板50a〜51bと四角錐11とが同一高さになるように構成することもできる。気泡分割筒4の製造コストの観点からは、図3図示のように構成することが有利である。
【0024】
図2(a)、(b)、(c)、図3(a)、(b)、(c)に図示した気泡分割筒4が大口径揚水筒2の上端側と複数本の小口径揚水筒3の下端側との間に介装されている以外の本発明の間欠空気揚水装置1の構造、構成は、従来公知の間欠空気揚水装置のものと同一であり、以下のようになっている。
【0025】
すなわち、図4(b)に示すように、大口径揚水筒2の下端側外周に空気室5が取り付けられている。空気室5は、大口径揚水筒2の外周に外覆筒14を遊嵌し、外覆筒14と大口径揚水筒2の外周壁との間に仕切筒16、17を所定間隔で配置し、仕切筒16、17の下部と大口径揚水筒2の外周壁との間、外覆筒14の上端と仕切筒17の外周壁および仕切筒17の上端と大口径揚水筒2の外周壁との間をそれぞれ塞板18、19、20で閉鎖して構成されている。そして、外覆筒14の下端と仕切筒16の下端との間には、外覆筒14と仕切筒16との間の中空部24を空気室5の外部に連通させる連通孔49が、塞板19と仕切筒16の上端との間には外覆筒14と仕切筒16との間の中空部24と、仕切筒16と仕切筒17との間の中空部28とを連通する連通孔26が、塞板18と仕切筒17の下端との間には仕切筒16と仕切筒17との間の中空部28と、仕切筒17と大口径揚水筒2の外周壁との間の中空部とを連通する連通孔29が、それぞれ設けられている。また、大口径揚水筒2の外周壁の塞板20が取り付けられている位置より下側には、空気室5の仕切筒17と大口径揚水筒2の外周壁との間の中空部を大口径揚水筒2内に連通する複数の連通孔31が所定間隔をあけて穿設されている。
【0026】
以下、本発明の気泡分割筒4を備えた間欠空気揚水装置1を用いて揚水する場合を説明する。
【0027】
コンプレッサー(図示していない)から加圧空気をホース21を介して矢示22のように給気口23へ供給し(図4(b))、外覆筒14側の中空部24に矢示25のように加圧空気を送り込む。この加圧空気は、連通孔26を経て、仕切筒16、17間の中空部28にも入り、中空部24及び中空部28の水位を逐次下降させる。下降された水位が連通孔29に達すると、前記中空部24、28に溜まっていた空気は、一挙に、仕切筒17の連通孔29を矢示30のように通過して、大口径揚水筒2の外周壁と仕切筒17との間の中空部に入り、ここを上昇して、連通孔31から矢示32のように大口径揚水筒2内に入り、ひとかたまりの大きな気泡33となって、矢示34のように大口径揚水筒2内を上昇する。
【0028】
上昇した気泡33は、気泡分割筒内4に入り、四角錐11の頂点13に衝突し、気泡分割用の仕切り板50a、50b、51a、51b及び四角錐11の4つの周壁11a、11b、11c、11d(図2(c))に沿って4つに分割され、これらの4つの周壁11a〜11dに案内され、4つの周壁11a〜11dの方向に対応した位置で上方に連接されている4本の小口径揚水筒3a、3b、3c、3d内に上昇する。なお、図4(b)では、小口径揚水筒3a、3b方向へ気泡が分割されて矢示48a、48bのように上昇する状態のみを示している。
【0029】
このように、気泡分割用の複数の仕切り板50a〜51bの中央の交差部において隣接する仕切り板同士の交差部が、板体11a、11b、11c、11dによって閉鎖され、この板体11a〜11dを周壁として構成される角錐11が、複数の仕切り板50a〜51bの中央の交差部の位置に頂点13を有するようにして、仕切り板50a等と同じく頂板10から気泡分割筒4の下端開口12に向けて突設されていることにより、前記大きな1個の気泡33が分割される際に、その分割が円滑に進まず、その間に、間欠空気揚水装置1が垂直設置状態より若干傾斜している等の理由によって、気体が上昇、移動しやすくなっている側の小口径揚水筒の中により大きな体積の気体が上昇し、複数の小口径揚水筒の間で不均一な気泡の上昇・不均一な揚水の吐出が生じることを防止できる。また気泡33の分割が円滑に進まない間に、気泡33の浮力等によって間欠空気揚水装置1が矢示40(図5(a))のように上方に持ち上げられることを防止できる。
【0030】
また、四角錐11の頂点13に衝突して均等な体積ごとに分割された気泡は、小口径揚水筒3a〜3dの本数に等しい4つの周壁11a〜11dに沿って上昇するので、この気泡33から気泡35a、35b等の4個の気泡への分割、分割された4個の気泡の小口径揚水筒3a〜3d内への上昇は、円滑に進み、この過程における気泡の上昇速度の低下は極めて少なくなる。同様にして、大口径揚水筒2内を上昇してきた揚水が小口径揚水筒3a〜3d内へと分流されて上昇していくのも、小口径揚水筒3a〜3dの本数に等しい周壁数であって、小口径揚水筒3a〜3dの方向に向いている四角錐11の4つの周壁11a〜11dに沿って行われるので、小口径揚水筒3a〜3d内への、それぞれの分割された揚水の上昇は円滑に進み、この過程における揚水の上昇速度の低下も極めて少なくなる。これによって、本発明の間欠空気揚水装置1は、高い揚水効率を発揮することができる。
【0031】
なお、前記のような円滑な気泡33の分割、上昇、大口径揚水筒2内を上昇してきた揚水の小口径揚水筒3a〜3d内への円滑な上昇を行わせる上で、図2(b)に示すように、四角錐11の4つの周壁11a〜11dの傾斜角度と、気泡分割筒4を構成する側壁9の内周壁の傾斜角度とは対応させておくことが望ましく、両者が図2(b)に示すように、互いに平行になるように構成しておくことが最も望ましい。
【0032】
そこで、気泡分割筒4の製造コストの面と、最もよい揚水効率を得るという観点からは、図3図示のように、四角錐11の頂点13が複数の仕切り板50a〜51bの中央の交差部の下端に位置する、すなわち、仕切り板50a〜51bと四角錐11とが同一高さになるように構成し、四角錐11の4つの周壁11a〜11dの傾斜角度と、気泡分割筒4を構成する側壁9の内周壁の傾斜角度が互いに平行になるように構成しておくことが最も望ましい。
【0033】
前記において気泡33は、従来公知の間欠空気揚水装置の場合と同じく、その外周を大口径揚水筒2の内周壁に接しさせつつ大口径揚水筒2内を上昇し、同じように、気泡35a、35b等はその外周を小口径揚水筒3a、3b等の内周壁に接しさせつつ小口径揚水筒3a、3b等内を上昇するので、大口径揚水筒2内での間欠的な気泡33の上昇、及びこの気泡33が分割されて気泡35a等となって複数本の小口径揚水筒3a等内をそれぞれ上昇するのに連れて、気泡33、35a等の上側にある水は持ち上げられ、また気泡33、35a等の下側にある水は引き上げられる。こうして大口径揚水筒2及び複数本の小口径揚水筒3a等内を通って、間欠空気揚水装置1の下側、すなわち水底側に位置していた水は矢示36(図1、図4(b))のように間欠空気揚水装置1内に吸引され、揚水されて、間欠空気揚水装置1の上側から矢示37a、37bのように放出される。
【0034】
空気室5の容量、空気室5への加圧空気の供給量及び供給速度などを調整し、大口径揚水筒2内で気泡33が生成される時間間隔を調整することにより、大口径揚水筒2内で気泡33を所定の間隔にて上昇させることができる。大口径揚水筒2及び複数本の小口径揚水筒3a等内を通る揚水の流速は、気泡33、35a等が上昇するときには、当該気泡33、35a等の上昇速度と同様の早さになり、気泡35a等が小口径揚水筒3(3a〜3d)の上端開口から放出された後には、慣性流動となって、大口径揚水筒2及び複数本の小口径揚水筒3内を通る揚水の流速は若干遅くなる。結局、大口径揚水筒2及び複数本の小口径揚水筒3内を通る揚水の流速は所定の間隔をおいて変化し、揚水は、複数本の小口径揚水筒3の上端開口から間欠空気揚水装置1の上側方向に向けて矢示37a、37b(図4(b))のように間欠的に噴出される。こうして間欠空気揚水装置1から放出された揚水の流れは、所定の時間間隔ごとでその流速を変えつつ、波紋をえがいて間欠空気揚水装置1の周囲に、矢示44、45(図1)のように放射状に拡散し、間欠空気揚水装置1を中心として広範囲な水の上下対流循環を引き起こし、大量水中における溶存酸素量の改善、水質の改善を図ることができるのである。
【0035】
本発明のように複数本の小口径揚水筒を結束して使用した場合、例えば、直径80cmの揚水筒を4本結束して上側の複数本の小口径揚水筒とした場合には、直径50cmの揚水筒1本からなる間欠空気揚水装置の10基分の揚水能力を発揮することができる。そこで、水量1億m3 のダムの溶存酸素量の改善、水質の改善に際しても、上側に直径80cmの揚水筒を4本結束した本願発明の間欠空気揚水装置を10基設置すれば、十分目的を達成することができ、直径50cmの揚水筒1本からなる間欠空気揚水装置であれば100基設置しなければならないのに対して、設置数を大幅に減少させることができるので、保守・管理等が容易になる。
【0036】
なお、上側の複数本の小口径揚水筒の合計断面積と下側の大口径揚水筒の断面積とは、同程度、あるいは大口径揚水筒の断面積の方が複数本の小口径揚水筒の合計断面積より若干大きいようにしておくことが、揚水効率を高める上で好ましい。また、大口径揚水筒2の長さは、少なくとも、連通孔31が穿設されている位置から気泡分割筒4までの長さが、複数の連通孔31を介して空気室5から供給された加圧空気が大口径揚水筒2内を一つにかたまって上昇できる程度の長さ、及び大口径揚水筒2内を上昇する水の流れが整流される程度であることが必要である。例えば、大口径揚水筒2の内径の1.5倍〜3倍の長さであることが望ましい。
【0037】
【発明の効果】
下端側に空気室5を有する大口径揚水筒2の上側に複数本の小口径揚水筒3が連接されてなる間欠空気揚水装置1の大口径揚水筒2と小口径揚水筒3との間に、この発明の間欠空気揚水装置用の気泡分割筒を介装すれば、大口径揚水筒2内を上昇してきた1個の大きな気泡33を、上側の小口径揚水筒3の数の小さな気泡へ分割させることを円滑に行わせることができるのみならず、分割された小さな気泡の体積をそれぞれ均一化させることが可能になる。これによって、前記分割された小さな気泡は、複数本の小口径揚水筒3内を同一のタイミング、あるいはより近似したタイミングで上昇することとなり、複数本の小口径揚水筒3の上端開口からの揚水の吐出が均等に行われ、揚水効率がより一層向上する。
【0038】
このように、大口径揚水筒2内を上昇してきた1個の大きな気泡33の小口径揚水筒3に向けた気泡の分割、しかも均等な体積での分割を円滑、確実に行わせることができるので、間欠空気揚水装置が完全なる直立位置に設置されていない場合であっても、複数本の小口径揚水筒3内での不均等な揚水、複数本の小口径揚水筒3の上端開口からの不均等な揚水の吐出が行われることを防止できる。
【0039】
更に、前記気泡33が大口径揚水筒2上端側と小口径揚水筒3下端側との連結部において分割される際に、気泡33が与える浮力や、その上昇力によって間欠空気揚水装置1が持ち上げられるようなことがなくなり、長期の使用によっても、間欠空気揚水装置1の下端側とシンカー7との連結部41a、41b、42、43、チェーン8(図4(a))に破損等の不具合が生じることはない。
【0040】
また、大口径揚水筒2内を上昇してきた1個の大きな気泡33の分割と、分割された気泡の複数本の小口径揚水筒3内への上昇が円滑に行われ、大口径揚水筒2上端側と小口径揚水筒3下端側との連結部における気泡の上昇速度の低下が少なくなるので、前記気泡の上昇に連れた揚水も、大口径揚水筒2上端側と小口径揚水筒3下端側との連結部においてその上昇速度をほとんど低下させることがなくなり、間欠空気揚水装置の揚水効率が改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の間欠空気揚水装置を現す斜視図。
【図2】この発明の気泡分割筒を現す図であって、(a)は平面図、(b)は縦断面図、(c)は底面図。
【図3】この発明の他の気泡分割筒を現す図であって、(a)は平面図、(b)は縦断面図、(c)は底面図。
【図4】この発明の間欠空気揚水装置を説明する図であって、(a)は正面図、(b)は気泡の上昇と分割を説明する一部を省略した縦断面図。
【図5】従来の間欠空気揚水装置を説明する図であって、(a)は正面図、(b)は大口径揚水筒と小口径揚水筒との連結部を現す平面図、(c)は大口径揚水筒と小口径揚水筒との連結部を現す底面図。
【符号の説明】
1 間欠空気揚水装置
2 大口径揚水筒
3(3a、3b、3c、3d) 小口径揚水筒
4 気泡分割筒
5 空気室
10 気泡分割筒の頂板
11 四角錐
12 気泡分割筒の下端開口
11a、11b、11c、11d 四角錐の周壁
13 四角錐の頂点
33 気泡
35a、35b 気泡
50a、50b、51a、51b 気泡分割用の仕切り板
Claims (2)
- 下端側に空気室を有する大口径揚水筒の上側に複数本の小口径揚水筒が連接されてなる間欠空気揚水装置の大口径揚水筒と複数本の小口径揚水筒との間に介装される気泡分割筒であって、複数本の小口径揚水筒の下端開口に通じる複数の連通孔を有する頂板と大口径揚水筒の上端開口に通じる下端開口とを備えており、前記頂板には気泡分割用の複数の仕切り板が前記下端開口に向けて突設されていると共に、当該複数の仕切り板の中央の交差部において、隣接する仕切り板同士の交差部を閉鎖する板体を周壁とし、かつ前記交差部の中心線上に頂点を有する下向きの角錐が、前記下端開口に向けて突設されていることを特徴とする間欠空気揚水装置用の気泡分割筒。
- 下端側に空気室を有する大口径揚水筒の上側に複数本の小口径揚水筒が連接されてなる間欠空気揚水装置において、大口径揚水筒と複数本の小口径揚水筒との間に気泡分割筒が介装されており、当該気泡分割筒は、複数本の小口径揚水筒の下端開口に通じる複数の連通孔を有する頂板と大口径揚水筒の上端開口に通じる下端開口とを備えており、前記頂板には気泡分割用の複数の仕切り板が前記下端開口に向けて突設されていると共に、当該複数の仕切り板の中央の交差部において、隣接する仕切り板同士の交差部を閉鎖する板体を周壁とし、かつ前記交差部の中心線上に頂点を有する下向きの角錐が、前記下端開口に向けて突設されていることを特徴とする気泡分割筒を備えた間欠空気揚水装置。
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Family Applications (1)
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- 1998-12-16 JP JP35710398A patent/JP3879011B2/ja not_active Expired - Lifetime
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