JP3875484B2 - アスファルト遮水工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルダム、貯水池、一般廃棄物処分場等のアスファルト遮水工の施工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1で左に示すのは従来のアスファルト遮水壁の標準断面で、砕石や掘削ズリによるトランジション(基盤)1の上に草木の発生防止のために除草剤を散布して、基盤のゆるみ防止及び除草剤の流出防止のためにプライムコート2を塗布し、コンクリート構造物接合面処理を行い、その上にアスファルトフェーシング工3を施す。
【0003】
アスファルトフェーシング工3は基盤とのなじみ及び不陸整正を行うレベリング・マカダム層3a、貯留水の遮水及び地下水の浸透防止のための下部遮水層3b、浸透水排除を行う中間排水層3c、貯留水の遮水を行う上部遮水層(下)3d、上部遮水層(上)3e、遮水層の劣化防止及び耐摩耗性の増強を行う表面保護層3fからなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
寒冷地や積雪地域にフィルダムや貯水池が建設される場合は、冬期にかかると温度環境でアスファルト工事に適しない場合や積雪の影響で工事が出来ないことがあり、施工期間が限定され、工期が厳しい。
【0005】
一方、電力業界においては、最近電気料金の低廉化実現のため建設コストの削減が強く求められており、フィルダムの施工では工期の短縮、コストダウンが必要である。
【0006】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、合理的な設計、および施工が可能となるアスファルト遮水工法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するため、第1に、トランジションの上に水工フォームドアスファルト混合物のレベリング層を形成し、その上に下部遮水層、中間排水層、および1層のみの上部遮水層を施工すること、第2に、水工フォームドアスファルト混合物は、変形係数を5×104 kgf/cm2 以下にすることを要旨とするものである。
【0008】
請求項1記載の本発明によれば、レベリング層として従来用いられていた水工用粗粒度アスファルト混合物(加熱混合型)に代えて常温混合型の水工フォームドアスファルト混合物を用いるので、舗設温度、気象条件等の施工条件の制約を受けることなく施工が可能となり、工期の短縮につながる。
【0009】
また、トランジション(アスファルト遮水壁の基盤)の上にレベリング層として水工フォームドアスファルト混合物を施工して越冬することにより、トランジションの表面を積雪・雪解けによるガリ侵食から保護することができ、翌年のトランジション表面の手直しが不要となる。
【0010】
水工フォームドアスファルト混合物をレベリング層として用いることにより、その上の下部遮水層施工時の基盤となり、下部遮水層の施工機械のトラフィカビリティを確保できる。
【0011】
上部遮水層は従来の二層と異なり、厚層の一層のみとしたので、施工速度を大幅に向上することができ、工期の短縮及びコストダウンに大きく寄与することになる。
【0012】
請求項2記載の本発明によれば、前記作用に加えて、水工フォームドアスファルト混合物を適正な配合にし、変形係数を5×104 kgf/cm2 以下にすることにより、温度低下に伴う温度応力破壊をすることなく越冬できる。また、水工フォームドアスファルト混合物をレベリング層として用いることにより、遮水壁とトランジションの変形係数が極端に相違しないため、地震時におけるダム堤体の挙動がアスファルト遮水壁へスムーズに伝達される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のアスファルト遮水工法の1実施形態を示す説明図で、左側に従来の断面構成を、右側に本発明の断面構成を示す。なお、数字はmmを単位とした各層の厚さを示すが、一例であり、これに限定されるものではない。
【0014】
前記の従来例がトランジション1の上にプライムコート2を塗布し、アスファルトフェーシング工3を施す。アスファルトフェーシング工3はレベリング・マカダム層3a、下部遮水層3b、中間排水層3c、上部遮水層(下)3d、上部遮水層(上)3e、表面保護層3fからなるのに対して、本発明は、トランジション1の上にプライムコート2を塗布し、アスファルトフェーシング工3を施すのに、アスファルトフェーシング工3は水工フォームドアスファルト混合物のレベリング層3hを形成し、その上に下部遮水層3b、中間排水層3c、および1層のみの上部遮水層3jを施工するものである。
【0015】
トランジション1はアスファルト遮水壁の基礎としての支持力及び排水機能を持たせるが、本発明においては従来よりも厚さを低減する。
【0016】
レベリング層3hは前記のごとく水工フォームドアスファルト混合物によるものであり、従来のレベリング層とトラジションの上部を強化した機能を持つ層として位置付け、従来よりも厚さを増すようにした。
【0017】
下部遮水層3bは、水工用密粒度アスファルト混合物とし、漏水と地山からの湧水の分離、堤体への漏水浸透防止などの遮水機能を持たせた。
【0018】
中間排水層3cは、水工用開粒度アスファルト混合物による。また、上部遮水層3jは水工用密粒度アスファルト混合物とし、遮水機能を持たせ、従来の上下2層を厚層とし1層とした。
【0019】
前記レベリング層3hを形成する水工フォームドアスファルト混合物について更に説明すると、本発明ではこの水工フォームドアスファルト混合物は、変形係数を5×104 kgf/cm2 以下にする。
【0020】
フォームドアスファルトは、高温(液状)のアスファルトに一定の条件下で水蒸気等を添加して微細な泡を生じさせ、アスファルトの容積を膨張(10〜15倍程度)させることによりアスファルトの持つ粘性を減少させ、混合作業を容易にさせたアスファルトで、常温の水を用いてフォームドアスファルトを製造する装置も特許第2748970 号として提案されている。
【0021】
これは図2に示すように噴霧ノズルとミックスチャンバを一体化し、それぞれ独立した噴霧ノズル4の先端で造るもので、これによって、噴霧ノズルのつまり等を解消するとともに、各噴霧ノズル4から吐出するフォームドアスファルトの品質および量を均一に制御できる。また、噴霧ノズルの先端でフォーム化が行われるため、使用するアスファルトの熱でノズルが加温でき、特別な保温装置が不要となる。
【0022】
前記フォームドアスファルト混合物のメカニズムを図3に示すと、液体を泡にすると言うことは液体の表面張力を減少させることであり、他のものへの付着性が良好になる(例えば、洗剤は表面活性剤の一種であり、水の表面張力を減少させて繊維に浸透させ汚れを落とす仕組みがこれにあたる)。そのため、アスファルトをフォーム化することにより常温の骨材に付着させることが可能になる。なお、混合時には、フォーム化されたアスファルトは粗骨材を被覆せず、細粒分とフィラービチュメンを形成し、混合物中に小さな塊となって均一に分散する。このフィラービチュメンが、締固め時に粗骨材間を点溶接のように固着して、強度を発揮する。
【0023】
骨材との混合後は骨材として表面積の大きな細粒分の方がフォームドアスファルトと接触する機会が多いため、細粒分はより多くのアスファルトに被覆される。転圧後については、転圧されると細粒分を被覆しているアスファルトが潰され、接着剤として粗骨材同士を結合させる。
【0024】
アスファルトをフォーム化するための水量は、フォーム化したアスファルトの「膨張率」と、泡が最大容積になった瞬間からその容積が半分になるまでの「半減時間」により、下記表1に示す目標値を満足する範囲内で決定する。
【0025】
【表1】
なお、水アスファルト比とフォームドアスファルトの性状との関係は図4に示すとおりであり、膨張率と半減時間は反比例する。
【0026】
通常、フォームドアスファルト混合物は道路の上層路盤材として使用されており、トラフイカビリティに関しては何ら問題がない。また、フォームド処理する前の骨材の修正CBRの基準値は20%以上であり、まったく強度増加がなかったとしてもコーン指数に換算するとqc=40kgf /cm2 〔4.0N/mm2 〕(qc=2CBR)となりトラフイカビリティに関しては何ら問題がない。
【0027】
本発明で使用する水工フォームドアスファルト混合物の耐水性の評価は、舗装試験法便覧別冊「3・1・2T簡易式水浸ホイールトラッキング試験方法」により実施したが、水工フォームドアスファルト混合物は粗骨材をアスファルトが被覆していないため、単純に剥離率を求めることができない。そこで、試験前後の供試体について表3に示す条件で曲げ試験を実施し、強度変化により耐水性を評価した結果を表4に示す。なお、載荷速度を遅くしたのは、剥離の影響が明確に現れると考えたためである。
【0028】
【表2】
曲げ試験条件
【0029】
【表3】
水浸ホイールトラッキング試験前後の曲げ試験結果
〔曲げ強度(kgf/cm2 ) は単位をN/mm2 とした場合には1/10の数値である。〕
【0030】
この結果によれば、セメントを添加していない水工フォームドアスファルト混合物であっても、曲げ強度は低いものの、残存強度率は加熱アスファルト安定処理混合物よりも大きくなっており、粗骨材がアスファルトで被覆されていなくても、耐水性に問題のないことが分かる。
【0031】
フォームドアスファルト混合物の配合試験時の空隙率の基準値は8〜15%であり、透気性に関してはまったく問題がない。下記表5はC−40を使用した水工フォームドアスファルト混合物について透水試験を実施した結果であるが、透水係数は8.7×10−5(cm/s)と低いものの透水性は有している。
【0032】
【表4】
透水試験結果
【0033】
前記図1に示す実施例によれば、遮水壁全体の厚さは従来のものよりも薄くすることができる。例えば、前記のごとく水工フォームドアスファルト混合物をレベリング層として15cm設置することにより、トランジション1を60cmから45cmに減じることができ、上部遮水層を従来の5cm二層(10cm)から8cm一層とすることにより、遮水壁全厚さを91cmから81cmに減少できた。
【0034】
【発明の効果】
以上述べたように本発明のアスファルト遮水工法は、レベリング層として従来用いられていた水工用粗粒度アスファルト混合物(加熱混合型)に代えて常温混合型の水工フォームドアスファルト混合物を用いるので、舗設温度、気象条件等の施工条件の制約を受けることなく施工が可能となり、工期の短縮につながるものである。
【0035】
また、トランジション(アスファルト遮水壁の基盤)の上にレベリング層として水工フォームドアスファルト混合物を施工して越冬することにより、トランジションの表面を積雪・雪解けによるガリ侵食から保護することができ、翌年のトランジション表面の手直しが不要となる。
【0036】
さらに、水工フォームドアスファルト混合物をレベリング層として用いることにより、その上の下部遮水層施工時の基盤となり、下部遮水層の施工機械のトラフィカビリティを確保できるものである。
【0037】
また、上部遮水層は従来の二層と異なり、厚層の一層のみとしたので、施工速度を大幅に向上することができ、工期の短縮及びコストダウンに大きく寄与することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアスファルト遮水工法の1実施形態を示す説明図である。
【図2】フォームドアスファルトの製造装置の概略図である。
【図3】フォームドアスファルト混合物の模試図である。
【図4】フォームドアスファルトの水アスファルト比と性状との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1…トランジション 2…プライムコート
3…アスファルトフェーシング工 3a…レベリング・マカダム層
3b…下部遮水層 3c…中間排水層
3d…上部遮水層(下) 3e…上部遮水層(上)
3f…表面保護層 3h…レベリング層
3j…上部遮水層
4…噴霧ノズル
Claims (2)
- トランジションの上に水工フォームドアスファルト混合物のレベリング層を形成し、その上に下部遮水層、中間排水層、および1層のみの上部遮水層を施工することを特徴としたアスファルト遮水工法。
- 水工フォームドアスファルト混合物は、変形係数を5×104 kgf/cm2 以下にする請求項1記載のアスファルト遮水工法。
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