JP3872863B2 - 哺乳動物胚保存用ストロー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、哺乳動物胚の低温保存に用いるガラス化保存液と希釈液層からなるストロー、及びそれを用いた哺乳動物胚の凍結保存方法に関する。本発明により、通常の無処置胚はもちろん、透明帯を除去されたバイオプシー胚においても、胚を凍結保存した時の解凍後の胚の生存率が格段に向上する。従って、胚の凍結保存、さらには胚移植、あるいは性判別後の透明帯の除去された胚の移植などに有利に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来、高濃度に耐凍剤を含む溶液を直接液体窒素中あるいは液体窒素ガス中に投入すると、溶液が氷晶化せずにガラス化と呼ばれる状態を形成することが知られている。ガラス化は本質的に結晶を形成せずに溶液が固体化することであり、いろいろな方法でその存在が確かめられている。Rall and Fahy (Nature, 313, 573-575(1985))は、ジメチルスルフォキシド、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびアセトアミドで構成されたガラス化溶液(VS1) を用い、世界で初めてマウス胚の低温保存に成功した。その後、胚のガラス化低温保存に有効な溶液として、グリセロールとプロピレングリコールの混合液(Scheffen et al., Cryo-Letters, 7, 260-269 (1986))、グリセロールあるいはプロピレングリコールとポリエチレングリコールの混合液(Rall, Cryobiology, 24, 387-402 (1987))、エチレングリコール、フィコールおよびシュクロースの混合液(Kasai et al., Biodynamica, 10, 321-331(1990)) 、グリセロールと1,2ープロパンジオールの混合液(Kuwayama et al., J.R.F., 96, 1,187-193(1993)) 、エチレングリコールとジメチルスルフォキシドの混合液(Ishimori et al., Theriogenology, 40,427-433 (1993)) 、グリセロールとエチレングリコールの混合液(Agca et al., Theriogenology, 41, 154(1994)) など数種類報告されているのみである。
【0003】
ガラス化による低温保存は、氷晶が形成されないために細胞内氷晶形成による細胞障害、および冷却過程で溶液が浸透圧上昇することによる細胞障害 (溶液効果) を防ぐことができる。さらに、ガラス化溶液に浸漬された胚を直接液体窒素あるいは液体窒素ガスに投入するため、冷却に必要な時間が短く、適切な冷却速度、融解速度を気にしなくてよく、高価な凍結器を必要としない利点がある。
しかし、ガラス化溶液は、細胞毒性を有する透過型耐凍剤を高濃度に含むために、胚に対して強い毒性作用を示すことが報告されている(Rall et al. Nature, 313, 573-575 (1985); Rall, Cryobiology, 24, 387-402 (1987); Scheffen et al., Cryo-Letters, 7, 260-269 (1986); Massip et al., Cryo-Letters, 7, 270-273 (1986))。 Rall et al.やMassip et al. は、この毒性作用を低めるために、胚のガラス化溶液への浸漬を4℃の低温下で行う必要があることを報告している。また、ガラス化溶液へシュクロースのような非透過型耐凍剤(Kasai et al., 1989) 、ポリエチレングリコールのような高分子物質(Rall et al., 1985; Rall, 1987; Ficoll; Kasai et al. 1989)の添加により、毒性を低めることができるということも報告されている。さらに、桑実胚より発育の進んだ胚盤胞を用いてガラス化低温保存すると、ガラス化後の生存率は桑実胚に比べて低いことがマウス胚で報告されている(Scheffen et al., 1986; Kono et al., Jpn. J. Anim. Reprod. 33, 77-81 (1987); Bielanski et al., Cryo-Letters, 8, 294-301 (1987); Valdez et al., Theriogenology, 33, 627-636 (1990)) 、及びウシ胚(Massip et al., Cryo-Letters, 7, 270-273 (1986); Gatius et al. Zuchtyg., 24, 255-258 (1989); Douchi et al., Jpn. J. Amin. Reprod., 36, 69-72 (1990)) 。Van Der Zwalmen et al.は、Massip et al. の方法を一部修正することにより、ウシ胚盤胞のガラス化に成功している(Theriogenology, 31, 270 (1989)) 。しかし、その方法は胚盤胞より若い発育ステージの胚では成功していない。
【0004】
さらに、Rall et al. (1985)により報告されたガラス化法は、ガラス化を行う前の胚の溶液への平衡時間を約30分間必要とする。平衡時間の短いScheffen et al. (1986)の方法でも、10分以上を必要とする。このように、冷却にかかる時間は短いが、冷却の前の平衡にある程度の時間が必要とされている。
そこで本発明者らは、このような問題点を解決するために、先に、エチレングリコールとジメチルスルフォキシドを含有してなるガラス化定温保存液に関する発明をなし、特許出願した(特開平5-176658号公報) 。この発明によれば、ガラス化溶液の組成を簡単にすることができ、ガラス化する前の平衡を室温化で行うことができる。また、この発明により、平衡に必要な時間を、平衡化溶液(50 %希釈ガラス化保存液) に1分間、ガラス化保存液に0.5 分間と短縮することができる。さらに、この発明によって、ウシの桑実胚から胚盤胞までの胚を同じ方法でガラス化することが可能となる等、従来の問題点が大幅に改良されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の状況に鑑み、細胞に対する毒性低減のためにも、さらなる平衡時間の短縮が求められている。そこで本発明者らは、さらに鋭意研究の結果、ガラス化の前処理工程における平衡時間をさらに短縮し、通常の無処置胚はもちろん、性判別などの目的のために細胞の一部あるいは半分を切除した透明帯のない胚 (バイオプシー胚) においても、その活性を維持した状態でガラス化でき、胚を凍結保存した時の解凍後の胚の生存率を格段に向上させることができる、新規な哺乳動物胚のガラス化保存液を見出した。従って本発明は、新規な哺乳動物胚のガラス化保存液が封入されている哺乳動物胚保存用ストローを提供することを目的とする。また本発明は、新規なガラス化保存液が封入されている哺乳動物胚保存用ストローを用いた哺乳動物胚の凍結保存方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、新規な凍結保存方法により凍結されたガラス化胚を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、エチレングリコール、ジメチルスルフォキシド、及びポリビニルピロリドンを含有する哺乳動物胚のガラス化保存液が封入されている哺乳動物胚保存用ストローに関する。このガラス化保存液は、培養液、特に血清又は血清アルブミンを添加した培養液と混合して用いるとよい。また、本発明は、このようなガラス化保存液に哺乳動物胚を入れて凍結保存する哺乳動物胚の凍結保存方法及びこのようにして得られる哺乳動物のガラス化胚に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる哺乳動物胚は、特に限定されないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等の胚が挙げられる。本発明では、どのような時期の胚でも用いることができる。例えば、体外受精により得られた桑実胚から胚盤胞までの胚などが挙げられるが、特に好ましいものとして、過排卵処置されたホルスタインあるいは和牛雌ウシより得られる、人工授精から7日後に非手術的に回収された桑実胚から胚盤胞までの胚等が挙げられる。本発明の哺乳動物胚のガラス化保存液は、エチレングリコール、ジメチルスルフォキシド、及びポリビニルピロリドンより構成される。
本発明において、エチレングリコール、ジメチルスルフォキシド及びポリビニルピロリドンよりなるガラス化保存液は、ガラス化保存液中、エチレングリコールを20〜35v/v %、及びジメチルスルフォキシドを20〜35v/v %含有し、この溶液にポリビニルピロリドンを5〜20w/v %添加してなるものが望ましい。
【0008】
このような混合割合で使用することによって室温で短時間平衡した後、ガラス化した場合でも高い受胎率を得ることができる。さらに、本発明では、従来ガラス化前の平衡を低温下で行い、桑実胚と胚盤期の胚とでは平衡する方法を変える必要があったことと比較すると、いかなる時期の胚でも室温下で平衡を行うことができ、著しい利点を有する。さらに、本発明は、前記のガラス化保存液に培養液を混合するものである。培養液としては、例えば修正ダルベッコ−リン酸緩衝液を40〜70%混合すればよい。混合液のガラス化保存液濃度が40%以下では、ガラス化保存液を溶解したときに、一時的に氷の結晶を生成し胚を損傷するおそれがあり、また、70%以上では毒性が強くなり胚が死滅するおそれが生ずることがあるので培養液は前記の量で使用される。培養液は、胚の培養に用いるものであれば特に限定されないが、特に好ましくは、修正ダルベッコ−リン酸緩衝液が用いられる。
【0009】
さらに、本発明においては、培養液は血清または血清アルブミンを含む培養液であることが好ましい。培養液に血清又は血清アルブミンを加えることにより、その緩衝作用によりガラス化保存液の毒性を緩和し、胚を傷つけることなくガラス化することができる。また、本発明におけるガラス化保存液の希釈液は、その凍結点のガラス化保存液の凝固点と相違し、ガラス化保存液の凝固点より高く、好ましくは−20〜−25℃付近に凝固点をもつ希釈液が用いられる。−20〜−25℃付近に凝固点をもつものを使用すると、ガラス化保存液が液体窒素でガラス化され、両者の間に凝固点が明確に区別され、ガラス化保存液注入時に両者が溶液の形で混ざり合うことがないので好ましい。このような溶液にはシュクロース−リン酸塩緩衝液、トレハロース−リン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液などが挙げられる。
【0010】
本発明のガラス化保存液は、これらを胚移植用ストローのなかに入れて使用される。特に好ましくは、エチレングリコール、ジメチルスルフォキシド、さらに4mg/ml 程度の血清あるいは血清アルブミンが添加された修正ダルベッコ−リン酸緩衝液を容積比1:1:2で混合し、ポリビニルピロリドンを5〜20w/v %添加したものを用いることができる。また、平衡化溶液としては、前述のガラス化保存液を修正ダルベッコ−リン酸緩衝液で希釈したものが用いられるが、特に好ましくは、前述のガラス化保存液を50%希釈したものにポリビニルピロリドンを5〜20w/v %添加したものが用いられる。
【0011】
さらに、本発明は、哺乳動物胚のガラス化保存液が封入されている哺乳動物胚保存用ストローを用い、哺乳動物胚を保存する方法に関する。すなわち、本発明では、まず前記した胚を平衡化溶液に浸漬し、次いでこの胚を、微細ストロー中にガラス化保存液とともに入れて平衡化する。通常の胚の平衡化は4℃前後の低温で行われるが、本発明のガラス化保存液を使用することにより、室温での平衡化が可能である。まず、平衡化溶液中での浸漬は、22〜25℃の室温下で10秒〜1分間浸漬することによって行ない、次いでこれを微細ストロー中にガラス化保存液とともに入れて、室温付近で約10秒〜1分間の平衡化を行なう。微細ストローは、通常、胚移植用に使用されるものを使用する。例えば図1に示すように、このストロー中に胚1個をガラス化保存液10〜20μl 、好ましくは10μl と共に封入することが望ましい(V-2) 。その外側に空気層(A-2,A-3)を設け、必要により、さらにその外側に少量のガラス化保存液(V-1) を入れて、凍結保存工程中胚と希釈液とが混合されることを防止する。さらにその外側に空気層(A-1) を設け、希釈液を入れた希釈液層(S-1及びS-2)を設け、密封する。次に、これを低温処理して胚をガラス化する。低温処理は、従来知られている種々の低温処理方法が用いられるが、液体窒素ガス中に放置するかあるいは液体窒素中に投入すると、直ちにガラス化して胚に対するガラス化保存液の毒性の低減がはかられ作業効率が高まるので、液体窒素で処理することが望ましい。
【0012】
このように凍結保存されたガラス化胚を、使用時に融解して使用する。融解方法に特に制限はないが、通常はこのストローを水に浸漬することによって行なわれる。融解後、ストロー中の内容物を混和する。この時、適当な希釈液、好ましくはウシ血清アルブミンを加えた0.5Mシュクロース−リン酸緩衝液、あるいはこれに5%ポリビニルピロリドンを加えたもの、さらにはこれらを組み合わせたものを用いる。このようにして得られた凍結保存されていた胚を、発情後のレシピエント動物に頸管法等により注入することにより通常の無処置胚はもちろん、透明帯を除去されたバイオプシー胚においても、胚の生存率が格段に向上し、受胎率を高めることができる。
【0013】
【実施例】
以下の実施例をもって本発明をより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0014】
【製造例1】
本発明のガラス化保存液の製造・1
(組成1)
エチレングリコール 20ml
ジメチルスルフォキシド 20ml
BSA含有修正ダルベッコ−リン酸緩衝液 60ml
ポリビニルピロリドン 5g
上述の組成1に従い各成分を混合し、ガラス化保存液を調製した。
【0015】
【製造例2】
本発明のガラス化保存液の製造・2
(組成2)
エチレングリコール 35ml
ジメチルスルフォキシド 35ml
BSA含有修正ダルベッコ−リン酸緩衝液 30ml
ポリビニルピロリドン 5g
上述の組成2に従い各成分を混合し、ガラス化保存液を調製した。
【0016】
【製造例3】
(組成3)
エチレングリコール 20ml
ジメチルスルフォキシド 35ml
BSA含有修正ダルベッコ−リン酸緩衝液 45ml
ポリビニルピロリドン 10g
上述の組成3に従い各成分を混合し、ガラス化保存液を調製した。
【0017】
【製造例4】
本発明ガラス化保存液の製造・4
(組成4)
エチレングリコール 35ml
ジメチルスルフォキシド 20ml
BSA含有修正ダルベッコ−リン酸緩衝液 45ml
ポリビニルピロリドン 15g
上述の組成4に従い各成分を混合し、ガラス化保存液を調製した。
【0018】
【製造例5】
本発明ガラス化保存液の製造・5
(組成5)
エチレングリコール 25ml
ジメチルスルフォキシド 25ml
BSA含有修正ダルベッコ−リン酸緩衝液 50ml
ポリビニルピロリドン 5g
上述の組成5に従い各成分を混合し、ガラス化保存液を調製した。
【0019】
【製造例6】
本発明ガラス化保存液の製造・6
(組成6)
エチレングリコール 25ml
ジメチルスルフォキシド 25ml
BSA含有修正ダルベッコ−リン酸緩衝液 50ml
ポリビニルピロリドン 10g
上述の組成6に従い各成分を混合し、ガラス化保存液を調製した。
【0020】
【製造例7】
本発明ガラス化保存液の製造・7
(組成7)
エチレングリコール 25ml
ジメチルスルフォキシド 20ml
BSA含有修正ダルベッコ−リン酸緩衝液 55ml
ポリビニルピロリドン 6g
上述の組成7に従い各成分を混合し、ガラス化保存液を調製した。
【0021】
【製造例8】
本発明ガラス化保存液の製造・8
(組成8)
エチレングリコール 20ml
ジメチルスルフォキシド 25ml
BSA含有修正ダルベッコ−リン酸緩衝液 55ml
ポリビニルピロリドン 5g
上述の組成8に従い各成分を混合し、ガラス化保存液を調製した。
【0022】
【製造例9】
本発明ガラス化保存液の製造・9
(組成9)
エチレングリコール 25ml
ジメチルスルフォキシド 35ml
BSA含有修正ダルベッコ−リン酸緩衝液 40ml
ポリビニルピロリドン 10g
上述の組成9に従い各成分を混合し、ガラス化保存液を調製した。
【0023】
【製造例10】
本発明ガラス化保存液の製造・10
(組成10)
エチレングリコール 35ml
ジメチルスルフォキシド 25ml
BSA含有修正ダルベッコ−リン酸緩衝液 40ml
ポリビニルピロリドン 8g
上述の組成10に従い各成分を混合し、ガラス化保存液を調製した。
【0024】
【試験例1】
本発明のガラス化保存液による胚のガラス化
ガラス化保存液へのポリビニルピロリドン(PVP)の添加濃度が、細胞の一部を切除した胚(バイオプシー胚)の低温保存後の生存性に及ぼす影響について検討した。即ち、体外受精後に得られたウシ胚(桑実胚〜胚盤胞)の一部を切除後、10v/v %ウシ胎児血清を含む 199培地 (ギブコ社) を培養液として、3〜4時間培養した。培養後の胚の形態は、はとんどが胞胚腔を形成あるいは再形成した。これらの胚を22〜26℃の室温下で、PVPを 0, 5, 10 又は20w/v %添加した平衡化溶液(修正ダルベッコ−リン酸緩衝液の50%希釈液)で15〜30秒間平衝化し、次いで同様にPVPを添加したガラス化保存液に約30秒間平衝後、あらかじめ5w/v %ポリビニルピロリドン及び0.5Mシュクロースを添加した平衡化溶液(希釈液)約70mm、5w/v %ポリビニルピロリドンを添加したガラス化溶液を順に吸引しておいたストローで、胚を含む平衡化溶液を吸引し、さらにpH調整した5w/v %ポリビニルピロリドン及び0.5Mシュクロースを添加した希釈液10〜15mmを吸引し、プラスチックプラグで密栓した。胚の平衡化溶液への平衡はシャーレ内で、ガラス化保存液への平衡はストロー内で、15μl のガラス化保存液のカラム中で行われた。カラムは数mmの空気層で仕切られ、希釈液に挟まれている(図1)。このストローを液体窒素ガス中に2分間静置し、その後液体窒素中に投入し凍結した。凍結保存したストローの融解は、ストローを20℃の水に15秒間浸漬することにより行われた。融解後、ストロー内容はプラスチックシャーレに移され、5%PVPを添加したウシ血清アルブミン含有0.5Mシュクロース−リン酸緩衝液で5分間静置して耐凍剤を希釈した後、さらに5%PVPを添加したウシ血清アルブミン含有0.5Mリン酸緩衝液で3分間静置(37℃)し、耐凍剤を希釈した。胚の培養は、ミネラルオイル下の10%ウシ胎仔血清添加 199培地の50μl 小滴中で39℃、5%O2、5% CO2、90%空気下で行われた。生存性は培養48時間で胞胚腔の形成により判定された。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
この結果、バイオプシー胚のガラス化低温保存後の培養における生存性では、20%以下のPVP濃度の添加は影響しないことが確認された。
【0027】
【試験例2】
本発明のガラス化保存液によるガラス化胚の移植生存率
生体ウシより回収した桑実胚〜初期胚盤胞をバイオプシー後、0,5及び10%PVP添加ガラス化保存液で低温保存した。融解及び耐凍剤除去後、仔牛血清を含むリン酸緩衝液(PBS)に移し、発情後6〜7日日のレシピエントウシに、頸管法により1頭あたり1個の胚を移植した。受胎は、移植後23〜35日目に超音波断層診断装置により診断された。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
この結果、PVPを添加したガラス化保存液で低温保存したバイオプシー胚は、添加しなかった時と比較して、非常に受胎率が高かった。よって、ウシの桑実胚〜胚盤胞や、さらに細胞の一部あるいは半分を切除され、透明帯のない胚においても高い生存性を維持したままガラス化できることが確認された。
【0030】
【実施例1】
製造例1で製造したガラス化保存液を用いて、ウシ胚の凍結保存及びそれを用いた人工受精を行なった。即ち、ウシ胚をPBSで50%希釈したガラス化保存液に30秒間浸漬した。次いで、図1の様にストロー内の15μl のガラス化保存液カラム中にピペットにより胚を注入し、ストローを密封した。0.5 分後にストローを液体窒素ガス中に静置し、2分間冷却した後液体窒素中で保存した。使用時に20℃の水中に浸漬し融解し、ストロー内容をシャーレに移した。5分間静置し耐凍剤の希釈を行なった後、胚をPBSに移した。この胚を、発情後、7日目のレシピエントウシに頸管法により移植した。移植後35日目に超音波断層診断装置によりレシピエントウシの受胎を確認したところ、受胎していることが確認された。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、哺乳動物胚を低温保存することのできるガラス化保存液が封入されている哺乳動物胚保存用ストロー、及びそれを用いた哺乳動物胚の凍結保存方法が提供される。本発明により、ガラス化の前処理工程における平衡時間をさらに短縮でき、通常の無処置胚はもちろん、透明帯を除去されたバイオプシー胚においても、胚を凍結保存した時の解凍後の胚の生存率を格段に向上することができる。さらに、本発明のガラス化保存液に培養液を加えることにより、特に透明帯の除去されたバイオプシー胚において、解凍後の生存率が飛躍的に向上するので、哺乳動物胚の凍結保存、胚移植あるいは性判別後の透明帯の除去された胚の移植などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガラス化保存液と希釈液とを充填した微細ストロー内の構造を示す。
Claims (6)
- ガラス化保存液層がエチレングリコール、ジメチルスルフォキシド、及びポリビニルピロリドンを含有し、ガラス化保存液層と希釈液層とが接していないことを特徴とする哺乳動物胚保存用ストロー。
- ガラス化保存液層と該ガラス化保存液層の両側に位置する希釈液層との間に空気層を設け、ガラス化保存液層と希釈液層が接していない構造を有するものである請求項1記載の哺乳動物胚保存用ストロー。
- ガラス化保存液が、エチレングリコールを20〜35v/v %、ジメチルスルフォキシドを20〜35v/v %含有する溶液に、ポリビニルピロリドンを5〜20w/v %添加してなる請求項1または2記載の哺乳動物胚保存用ストロー。
- ガラス化保存液を培養液に混合してなる請求項1〜3のいずれかに記載の哺乳動物胚保存用ストロー。
- 哺乳動物胚を請求項1〜4のいずれかに記載の哺乳動物胚保存用ストローを用いて凍結することを特徴とする哺乳動物胚の凍結保存方法。
- 請求項5記載の方法で凍結されてなるガラス化胚。
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- 1997-04-10 JP JP10826597A patent/JP3872863B2/ja not_active Expired - Fee Related
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