JP3871898B2 - 熱間粉体潤滑剤組成物およびそれを用いた熱間加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば継目無管の製造過程におけるマンドレルミル圧延において、少なくとも表層部にCr層を有する熱間工具を用いた圧延時に有効な熱間粉体潤滑剤組成物およびそれを用いた熱間加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えばマンドレルミル圧延は、継目無管の製造過程において、前工程で穿孔された1000〜1300℃の中空素管にマンドレルバーを挿入し、数段の孔型ロール(通常5〜8段)により所定の肉厚に圧延し、引き伸ばす工程である。
【0003】
このマンドレルバーは、通常、熱間工具鋼(SKD6又は同等の鋼種)が使用され、その表面には工具の寿命や焼付きを考慮して、熱処理によりいわゆるスケール付けを施したスケール肌となされたり、Crめっきが施されている。
【0004】
そして、前記したようなマンドレルバーを用いて中空素管が引き伸ばされる時、中空素管の内面とマンドレルバー表面の間に相対滑りが生じるので、圧延時、中空素管の内面やマンドレルバーの表面に潤滑剤が塗布されるが、この潤滑剤のうち、マンドレルバーの表面に塗布して使用される潤滑剤として、特開昭50−144868号のような黒鉛を主体としたいわゆる黒鉛系潤滑剤や、特開昭64−16894号のような酸化物系層状物質を主体とした非黒鉛系組成物が知られている。
【0005】
一方、中空素管の内面に付着させて使用する潤滑剤としては、特公平7−84667号のような潤滑性を備えた酸洗い剤、特開平6−184573号のような黒鉛と炭酸ナトリウムの2成分系潤滑剤が知られているが、これらは何れも表層部にCrめっき等のCr層を有するマンドレルバーを想定したものではないので、Cr層の摩耗抑制に対して劣り、工具すなわちマンドレルバーの寿命が短くなる。
【0006】
一方、Crめっきを施したマンドレルバーを想定した潤滑剤としては、特開平8−41474号のような金属炭酸塩、アルカリ金属カルボン酸塩を主体とした潤滑剤、特開2000−226591号のようなアルカリ金属硼酸塩、鉄の酸化物を主体とした潤滑剤が知られている。
【0007】
このうち、特開平8−41474号で提案されたものは、摩擦係数の低減と焼付き防止によって工具寿命の延長を図るものであり、Crめっきの腐食摩耗については全く考慮されていない。
【0008】
また、特開2000−226591号で提案されたものは、腐食摩耗については考慮されているものの、積極的に腐食を抑制するものではない。特に硫酸ナトリウムのように腐食を促進するような物質の配合はCrめっきの腐食摩耗の要因となり、結果的に工具寿命が短くなる。
【0009】
前記したようなマンドレルバーのうち、表面にCrめっきを施したマンドレルバー(以下、「Crめっきバー」という。)を使用したマンドレルミル圧延では、マンドレルバーの寿命が非常に重要な要因となる。
【0010】
マンドレルバーの寿命が短いと、製管中にめっきの剥離が生じ、製品内面に焼付き疵が発生して製品不良をきたすからである。特に13%Cr鋼のような高合金鋼のように圧延荷重の高い条件においては、前記したような従来の潤滑剤ではCrめっきバーの寿命は十分ではなく、安定した品質が得られない。
【0011】
ところで、マンドレルミル圧延のような高温条件下でのCrめっきの摩耗は、凝着摩耗(焼付きによる摩耗)、疲労摩耗(繰返し接触による材料内部の疲労)、アブレシブ摩耗(凹凸部の噛み合いや引っかき、或いは、研磨作用による摩耗)、及び、腐食摩耗の全ての形態が考えられる。
【0012】
このうち、凝着摩耗に対しては、黒鉛などの固体潤滑剤を摩擦面に介在させ、金属−金属接触を防止することによって軽減することが可能である。
また、疲労摩耗に対しては、黒鉛等の固体潤滑剤や高温で流体となる珪酸ナトリウム、粉末ガラス、硼酸ナトリウム等を使用し、摩擦係数を小さくすることによって軽減することが可能である。
【0013】
また、アブレシブ摩耗に対しては、中空素管の内面に発生したスケールのような硬い物質が悪影響を及ぼすことから、前記したような硬い物質を溶融する物質を使用することが好ましい。また、スケールや砂のような硬い物質を配合しないことも重要である。しかしながら、スケールを素早く溶融するような物質は、反応性が良いことから、Crめっきとも反応(腐食)することが考えられる。
【0014】
Crめっきの表層は、通常は酸化クロムで覆われ、不働態化していて腐食し難い状態になっているが、高温において硼酸ナトリウム等のように酸化金属を溶融する物質と接触すると、Crめっき表面の酸化クロムが溶融し、一種の腐食摩耗を引き起こす。このような状況が圧延の都度繰返し発生するために、Crめっきが摩耗することになる。しかしながら、従来は、このような高温、高圧において、腐食摩耗が発生していることすら明らかにされていなかったので、当然にCr層の腐食を防止することはできなかった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、少なくとも表層部にCr層を有する熱間工具の寿命を延長し、良質の安定した製品内面品質を得ることができる熱間粉体潤滑剤組成物およびそれを用いた熱間加工方法を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明に係る熱間粉体潤滑剤組成物は、硼酸ナトリウムの無水塩が30〜80質量%、或いは、硼酸ナトリウムの5水塩又は10水塩の何れか一方が40〜89質量%、或いは、硼酸ナトリウムの無水塩、5水塩、10水塩を2種以上混合した割合に応じて前記配合比から求めた下限値および上限値からなる範囲と、炭酸ナトリウムが5〜30質量%と、炭酸カルシウム又は蛍石の1種以上が1〜20質量%と、脂肪酸のNa塩又は脂肪酸のCa塩の1種以上が5〜25質量%とからなることとし、望ましくは、硼酸ナトリウムを除いたCaとNaの質量百分率の比が1:0.5〜1:5の範囲であることとしている。そして、このようにすることで、潤滑性を損なうことなく良質の安定した製品内面品質を得ることができ、しかも、表層のCr層の腐食損耗を抑制できて熱間工具の寿命を延長することができるようになる。
また、本発明に係る熱間加工方法は、穿孔圧延されて1000〜1300℃となった中空素管を、少なくとも表層部にCr層を有する熱間工具を用いて熱間加工する方法であって、この中空素管の内面に、少なくとも片端から素管内面に上記の熱間粉体潤滑剤組成物を吹き込んだのち、熱間工具を用いて加工することとしている。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記したような従来の熱間粉体潤滑剤組成物にあった問題点に対し鋭意検討の結果、少なくとも表層部にCr層を有する熱間工具を用いた熱間加工において、潤滑性を損なうことなく良質の安定した製品内面品質を得ることができ、しかも、表層部のCr層の腐食損耗を抑制できて熱間工具の寿命を延長することができる熱間粉体潤滑剤組成物を発明した。
【0018】
すなわち、本発明に係る熱間粉体潤滑剤組成物は、少なくとも表層部にCr層を有する熱間工具を用いた熱間加工において使用する潤滑剤組成物であって、硼酸ナトリウムの無水塩が30〜80質量%、或いは、硼酸ナトリウムの5水塩又は10水塩の何れか一方が40〜89質量%、或いは、硼酸ナトリウムの無水塩、5水塩、10水塩を2種以上混合した割合に応じて前記配合比から求めた下限値および上限値からなる範囲と、炭酸ナトリウムが5〜30質量%と、炭酸カルシウム又は蛍石の1種以上が1〜20質量%と、脂肪酸のNa塩又は脂肪酸のCa塩の1種以上が5〜25質量%とからなるものであり、必要に応じて、硼酸ナトリウムを除いたCaとNaの質量百分率の比を1:0.5〜1:5の範囲とする。
【0019】
本発明に係る熱間粉体潤滑剤組成物を採用すれば、少なくとも表層部にCr層を有する熱間工具を用いた熱間加工において、1000〜1300℃といった高温の熱間加工面に付着した場合には、瞬時に溶融して加工面に発生したスケールをも融解しながら液体状になって加工面に広がる。この際、継目無管の製造においては、中空素管の回転によってより一層均一に広がることになり、潤滑性を損なうことなく良質の安定した製品内面品質を得ることができる。しかも、表層のCr層の腐食損耗を抑制できて熱間工具の寿命を延長することができるようになる。
【0020】
本発明に係る熱間粉体潤滑剤組成物において、硼酸ナトリウムは流体潤滑性とスケール溶解性のために配合するものである。しかしながら、硼酸ナトリウムの無水塩を1種使用する場合に30質量%未満の場合や、硼酸ナトリウムの5水塩又は10水塩の何れか一方を1種使用する場合は40質量%未満の場合には、他成分が多くなり、流体潤滑性、スケール溶解性が損なわれる。また、硼酸ナトリウムの無水塩を1種使用する場合に80質量%を超えた場合や、硼酸ナトリウムの5水塩又は10水塩の何れか一方を1種使用する場合に89質量%を超えた場合には、他成分が少なくなり、粉体時の固化性または流動性が損なわれたり、高温流動性が悪化するばかりか、Crめっきの腐食摩耗が抑制できなくなる。
【0021】
従って、本発明では、硼酸ナトリウムの無水塩を1種使用する場合には30〜80質量%と、また、硼酸ナトリウムの5水塩又は10水塩の何れか一方を1種使用する場合には40〜89質量%とした。本発明者らの実験・研究によれば、硼酸ナトリウムの無水塩を1種使用する場合は40〜70質量%配合した場合に、また、硼酸ナトリウムの5水塩又は10水塩の何れか一方を1種使用する場合は50〜80質量%配合した場合により好ましい結果が得られた。
【0022】
本発明に係る熱間粉体潤滑剤組成物においては、硼酸ナトリウムの無水塩、5水塩、10水塩を2種以上混合したものを使用しても良いが、その場合はその混合割合に応じて前記した配合比から求めた範囲とする。
【0023】
また、本発明に係る熱間粉体潤滑剤組成物において、炭酸ナトリウムは高温流動性を良くするために配合される。しかしながら、炭酸ナトリウム配合比が5質量%未満では粘性を充分に低くすることができず、流動性が悪化する。また、30質量%を超えた場合には、粘性が低くなりすぎて潤滑性が悪化するばかりか、Crめっきの腐食摩耗を抑制できなくなる。従って、本発明では炭酸ナトリウムを5〜30質量%配合することにした。本発明者らの実験・研究によれば、10〜20質量%の場合により好ましい結果が得られた。
【0024】
また、本発明に係る熱間粉体潤滑剤組成物において、炭酸カルシウムや蛍石はCr層の腐食摩耗を防止するために配合するものである。炭酸カルシウムや蛍石は、潤滑性を損なうことなくスケール(酸化鉄)と同様の作用を示すからである。しかしながら、配合量が1質量%未満では、Cr層の腐食摩耗を抑制できなくなる。また、20質量%を超えると粘性が大きくなり、広がり性が悪化して加工面に均一に付着させることができなくなる。そこで、本発明では、炭酸カルシウム又は蛍石の1種以上を1〜20質量%とした。本発明者らの実験・研究によれば、3〜15質量%配合した場合に、より好ましい結果が得られた。
【0025】
蛍石を採用する場合、当該蛍石はCaF2 の含有量が70質量%以上であれば使用可能で、80質量%以上含有されていることが好ましい。CaF2 がこの含有量より少ないと上記した作用を得られなくなるからである。
【0026】
例えばCrめっきバーを使用した継目無管の圧延においては、被圧延材が普通鋼の場合はCrめっきバーは比較的摩耗し難いが、被圧延材がステンレス鋼のようなスケールを発生し難い材料の場合にはCrめっきバーの摩耗は激しくなる。
【0027】
被圧延材が普通鋼の場合にCrめっきバーが摩耗し難いのは、ステンレス鋼(含む13Cr鋼)等を圧延する場合と比較して圧延時の負荷が軽いこともあるが、被圧延材が普通鋼の場合にはCrめっき表層の酸化クロムを腐食し難くなるためと考えられる。
【0028】
継目無管の圧延を例にとると、酸化クロムを溶融する硼酸ナトリウムは、マンドレルバーに接触する前に素管内に投入され、スケールすなわち酸化鉄を溶融する。この現象によって硼酸ナトリウムは酸化クロムを溶融する性質が劣化するものと考えられる。
【0029】
しかしながら、被圧延材がステンレス鋼のようにスケールを発生しない材料では、硼酸ナトリウムは中空素管内に投入されたほぼそのままの状態であるから、酸化クロムを溶融する性質は劣化していない。このことから、被圧延材が普通鋼の場合でも硼酸ナトリウムが過剰な場合は当然に酸化クロムを溶融する性質を備えていることになる。
【0030】
また、本発明に係る熱間粉体潤滑剤組成物において、脂肪酸のNa塩や脂肪酸のCa塩は、粉体時の潤滑剤の良好な性質を保持するために必須である。しかしながら、その配合量が5質量%未満では搬送時の流動性が悪化するばかりか、固化してしまう。また、25質量%を超えた場合には、他の有効成分が少なくなって本発明の目的を達成できなくなる。そこで、本発明では5〜25質量%とした。本発明者らの実験・研究によれば、8〜20質量%配合した場合に、より好ましい結果が得られた。
【0031】
本発明に係る熱間粉体潤滑剤組成物において、使用可能な脂肪酸のNa塩またはCa塩としてはステアリン酸、パルミチン酸等の飽和脂肪酸の塩、或いは、天然の植物油脂から得られる脂肪酸、例えばパーム油脂肪酸、パーム核油の脂肪酸及び動物油脂から得られる脂肪酸、例えば牛脂脂肪酸等の塩が挙げられる。
【0032】
ところで、前記した脂肪酸のNa塩や脂肪酸のCa塩は、高温の加工面に付着した時に、燃焼又は分解ガスにより潤滑剤の分散性をより良好ならしめ、最終的にはNa2 O及びCaOになり、Na2 Oは炭酸ナトリウムと同様の作用、CaOは炭酸カルシウムと同様の作用を示す。
【0033】
従って、本発明に係る熱間粉体潤滑剤組成物においては、各素材の配合量は上記した範囲内において潤滑剤の粉体時の性質と高温時の性質を考慮し、適宜決定することになる。このことは、脂肪酸のNa塩と脂肪酸のCa塩の配合比も同様である。
【0034】
また、硼酸ナトリウムの10水塩は保管中に粉体温度が50℃以上に上昇すると、結晶水を放出するため、脂肪酸のNa塩が多量に配合されていると、固化する傾向がある。また、脂肪酸のCa塩を多量に使用した場合は、炭酸カルシウムの配合量を調整し、硼酸ナトリウムを除いたCaとNaの質量比を1:0.5〜1:5の範囲にすることが望ましい。Caが1に対してNaが0.5より少なすぎると、広がり性が悪化するからである。また、Caが1に対してNaが5より多すぎるとCr層の腐食を防止できないからである。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明の効果を説明する。
(実施例1)
下記の表1に本発明品の組成を、表2に本発明品の比較品の組成を、表3に従来例(従来例1〜3は特開2000−226591の組成物、従来例4〜6は特開平6−184573号の組成物)の組成を示す。
【0036】
なお、本実施例で使用した成分の内容は下記の通りである。
硼酸ナトリウム無水塩:平均粒径 約0.6mm、純度 98%以上
硼酸ナトリウム5水塩:平均粒径 約0.4mm、純度 98%以上
硼酸ナトリウム10水塩:平均粒径 約0.3mm、純度 98%以上
炭酸ナトリウム:平均粒径 約0.3mm、純度 約99%
炭酸カルシウム:平均粒径 約0.1mm、純度 約98%
蛍石:平均粒径 約0.2mm、純度 約92%(CaF2 として)
脂肪酸のNa塩(牛脂脂肪酸のNa塩)
:平均粒径 約0.3mm、純度 約95%
脂肪酸のCa塩(ステアリン酸のCa塩)
:平均粒径 約0.4mm、純度 約97%
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
上記した表1〜表3に示した熱間粉体潤滑剤組成物の評価結果を下記の表4に示したが、表1に示した本発明の実施例は、何れのものも表2に示した比較例や表3に示した従来例と比べて粉体時の性質(粉体固化性、粉体流動性)、摩擦係数、Crめっき腐食摩耗が共に優れていることが判る。
【0041】
なお、下記の表4に示した潤滑剤性能やCrめっき腐食摩耗は下記の方法により調査した結果である。
1)粉体の貯蔵時における固化性
ペトリ皿に試料を50g量り、60℃の恒温槽で24時間静置した後に固化の状態を観察した。評価は、全く固化していなかったものを◎、少し固化していたものを○、固化していたものを×とした。
【0042】
2)粉体の流動性
安息角の測定により評価した(細川式)。評価は、安息角が38度未満であったものを◎、安息角が38〜42度未満であったものを○、安息角が42〜46度未満であったものを△、安息角が46度以上であったものを×とした。
【0043】
3)高温時の流動性
1100℃に設定した電気炉に、150mm×150mm×5mmの試片(SS400とSUS304)を入れて15分間加熱した後、この試片上に0.2gの試料を載せて30°傾け、30秒間保持した後電気炉より取り出し、流動性を観察した。評価は、非常に良く広がったものを◎、広がったものを○、やや流れたものを△、広がらなかったもの、又は、流れすぎたものを×とした。
【0044】
4)摩擦係数
下記の条件によるリング圧縮試験方法により評価した。
リング試片材質:SS400
リング形状:内径15mm、外径30mm、厚み10mm
リング加熱温度:1100℃
ダイス材質:SKD−61
目標圧縮率:55%
【0045】
評価は、μが0.06未満のものを◎、μが0.06〜0.08未満のものを○、μが0.08〜0.10未満のものを△、μが0.10以上のものを×とした。
【0046】
5)Crめっき腐食摩耗
外径が60mm、内径が20mm、長さが30mmのSS400製及びSUS304製の試料を1050℃に加熱し、この試料の表面に潤滑剤を塗布した後に0〜200rpmの回転数で回転させ、これに50μmの厚さにCrめっきした外径が50mm、長さが60mmの工具を、980Nの荷重で10分間ずつ10回押し付けることで摩擦を与えて評価した。評価は、残存めっき厚さが50〜36μmのものを◎、35〜21μmのものを○、20〜10μmのものを△、10μm未満のものを×とした。
【0047】
【表4】
【0048】
(実施例2)
上記した実施例1で潤滑性能とCrめっき腐食摩耗状況を評価した潤滑剤のうち、本発明の実施例を3種類と、比較例を2種類と、従来例を3種類を実際のマンドレルミル圧延ラインで使用し、潤滑性能とCrめっき腐食摩耗状況を調査した。その結果を下記表5に示すが、表5より明らかなように、実機に適用した場合にも、本発明の実施例は比較例や従来例と比べて、摩擦係数、内面品質、Crめっき腐食摩耗状況共に優れていることが判る。
【0049】
なお、下記表5を得た圧延条件は以下の通りである。
圧延装置:5スタンドフルリトラクトマンドレルミル
被圧延材:13%Cr鋼
被圧延材の圧延前温度:1150℃
【0050】
バーの表面には黒鉛系潤滑剤を塗布、乾燥させている。
【0051】
【0052】
なお、下記の表5に示した摩擦係数、内面品質、Crめっき腐食摩耗状況は下記により評価した結果である。
1)摩擦係数
摩擦係数はマンドレルバーのリテインド力を各スタンド荷重の和で除した値で評価した。評価は、上記値が0.03以下のものを◎、0.031〜0.04のものを○、0.041〜0.05のものを△、0.051以上のものを×とした。
【0053】
2)内面品質
内面品質はパイプ内面に軸方向直線状に発生する疵の発生率で評価した。評価は、上記発生率が0.5%以下のものを◎、0.5〜1.0%のものを○、1.0〜2.0%のものを△、2.0%以上のものを×とした。
【0054】
3)Crめっき腐食摩耗
Crめっき腐食摩耗は30パス圧延後のマンドレルバーの残存めっき厚さで評価した。評価は、上記残存めっき厚さが41μm以上のものを◎、30〜40μmのものを○、20〜30μmのものを△、20μm以下のものを×とした。
【0055】
【表5】
【0056】
上記した実施例では、本発明にかかる熱間粉体潤滑剤組成物をマンドレルミル圧延に適用したものについて説明したが、本発明にかかる熱間粉体潤滑剤組成物はマンドレルミル圧延に限らず、他の継目無管製造時のプラグ等に塗布して使用することは勿論のこと、棒鋼、条鋼、線材の熱間圧延時や他の熱間加工時にも適用可能であることは言うまでもない。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る熱間粉体潤滑剤組成物および熱間加工方法は、少なくとも表層部にCr層を有する熱間工具を用いた熱間加工において、高温の熱間加工面に付着した場合には、瞬時に溶融して加工面に発生したスケールをも融解しながら液体状になって加工面に広がるので、潤滑性を損なうことなく良質の安定した製品内面品質を得ることができる。しかも、表層のCr層の腐食損耗を抑制できて熱間工具の寿命を延長することができるようになる。
Claims (3)
- 少なくとも表層部にCr層を有する熱間工具を用いた熱間加工において使用する潤滑剤組成物であって、
硼酸ナトリウムの無水塩が30〜80質量%、或いは、硼酸ナトリウムの5水塩又は10水塩の何れか一方が40〜89質量%、或いは、硼酸ナトリウムの無水塩、5水塩、10水塩を2種以上混合した割合に応じて前記配合比から求めた下限値および上限値からなる範囲と、
炭酸ナトリウムが5〜30質量%と、炭酸カルシウム又は蛍石の1種以上が1〜20質量%と、脂肪酸のNa塩又は脂肪酸のCa塩の1種以上が5〜25質量%とからなることを特徴とする熱間粉体潤滑剤組成物。 - 硼酸ナトリウムを除いたCaとNaの質量百分率の比が1:0.5〜1:5の範囲であることを特徴とする請求項1記載の熱間粉体潤滑剤組成物。
- 穿孔圧延されて1000〜1300℃となった中空素管を、少なくとも表層部にCr層を有する熱間工具を用いて熱間加工する方法であって、
前記中空素管の内面に、少なくとも片端から素管内面に請求項1または2に記載の熱間粉体潤滑剤組成物を吹き込んだのち、前記熱間工具を用いて加工することを特徴とする熱間加工方法。
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