JP3871639B2 - 車両用操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステアバイワイヤシステムに係る車両用操舵装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ステアリングホイールと操舵輪の操舵機構とを機械的に接続するリンク機構を設けることなく、ステアリングホイールの操作状態に基づいて操舵輪の目標実舵角を決定し、この決定された目標実舵角に操舵輪を制御する、いわゆるステアバイワイヤシステム(以下「SBWシステム」という。)が提案されている。このようなSBWシステムにおいては、主要な構成装置・構成部品に故障等が発生した場合の安全性を確保する観点から、例えば特許文献1に開示されているように、制御装置として主制御部と副制御部を設けたり、駆動モータや駆動回路をそれぞれを2系統設けて二重化にした冗長構成を採るものがある。
【0003】
通常、このような冗長構成を採るSBWシステムでは、二重化された主要な構成装置等の一方が故障した場合には、計器パネルの警告灯を点灯させたり、あるいは合成音声やアラーム音等により車両に故障が発生した旨を運転者に告知する。これにより車両の故障を認識した運転者は、二重化されていない他方の構成装置等によって動作しているSBWシステムによる安全性を確保するため、例えば、走行速度を徐行速度に減速させたり、あるいは路肩に駐停車させて故障箇所の修理を要請するといった応急対策を採るのが通常である。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−37112号公報(第1頁〜第6頁、図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように二重化された主要な構成装置等の故障によって警告灯等による故障発生の告知があっても、このような警告に運転者が気づかない場合や、かかる警告を運転者が無視して車両の通常走行を続けた場合には、その間は、二重化にはならないSBWシステムにより操舵制御が行われることとなる。そのため、このような二重化された主要な構成装置等の故障により、もはや二重化にはならないSBWシステムによる操舵制御は極力回避する必要がある。
【0006】
また、3系統以上に多重化された冗長構成を採るSBWシステムにおいては、当初予定していた多重化における安全性の確保を期待することができなくなる。なお「当初予定していた多重化」とは、SBWシステムが備えている多系統を構成する装置やユニット等の全てが正常に作動し得る状態をいう。以下同じ。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、安全性を確保し得る車両用操舵装置を提供することにある。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【課題を解決するための手段および発明の作用・効果】
上記目的を達成するため、請求項1の車両用操舵装置では、ステアリングホイールの操作状態に基づいて操舵輪の目標実舵角を決定し、この決定された目標実舵角に操舵輪を制御する操舵制御系を多系統に備えた車両用操舵装置であって、前記多系統の操舵制御系の、いずれの異常も検出して異常検出情報を出力する異常検出手段と、前記異常検出情報の出力があると車両駆動装置の起動を阻止する起動阻止情報を車両駆動制御装置に出力する起動阻止情報出力手段と、を備えることを技術的特徴とする。
【0013】
請求項1の発明では、異常検出手段により多系統の操舵制御系の、いずれの異常も検出して異常検出情報を出力し、この異常検出情報の出力があると車両駆動装置の起動を阻止する起動阻止情報を起動阻止情報出力手段により車両駆動制御装置に出力する。これにより、多系統の操舵制御系のいずれかに異常があると、当該車両の駆動力の発生を制御している車両駆動制御装置に対し、起動を阻止する起動阻止情報が出力されるので、このような起動阻止情報を受け取った当該車両駆動制御装置は、停止状態にある車両駆動装置の起動を阻止される。したがって、車両駆動装置の停止状態において、多重化された操舵制御系のいずれかに異常があり、もはや当初予定していた多重化にはならなくなった場合には、車両駆動制御装置により車両駆動装置の起動が阻止され、当該車両を走行不能にするので、安全性を確保することができる。
【0014】
【0015】
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両用操舵装置の実施形態について図を参照して説明する。
まず本実施形態に係る車両用操舵装置(以下「操舵装置」という。)20の構成を図1に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、操舵装置20は、主に、ステアリングホイール21、操舵角センサ23、ステアリングアクチュエータ25、SBW_ECU 30等により構成されている、SBWシステムである。即ち、操舵装置20は、ステアリングホイール21と操舵輪FR、FLのステアリングアクチュエータ25とを機械的に接続するリンク機構を設けることなく、ステアリングホイール21の操作状態を操舵角センサ23により検出し、この操舵角センサ23から出力された操舵角θh に基づいて操舵輪FR、FLの目標実舵角をSBW_ECU 30により決定し、この決定された目標実舵角に操舵輪FR、FLをステアリングアクチュエータ25により制御するものである。
【0018】
ステアリングホイール21は、ステアリング軸22の一端側に連結されており、このステアリング軸22にはSBW_ECU 30に接続された操舵角センサ23が取り付けられている。これにより、ステアリングホイール21の操作状態を操舵角センサ23により検出し、ステアリングホイール21の操舵角θh をSBW_ECU 30に出力している。
【0019】
このステアリング軸22の他端側には、SBW_ECU 30に接続された反力モータ24が連結されている。この反力モータ24は、ステアリングホイール21を操作する運転者に対して、操舵感を与えるもので、後述するように、SBW_ECU 30により制御されている。
【0020】
ステアリングアクチュエータ25は、SBW_ECU 30に接続された2個の転舵モータ27a、27bを内蔵しており、この転舵モータ27a、27bの出力軸による回転運動を図略のボールねじ機構を介して両端に連結されたステアリングロッド26に伝達する。これにより、図略のタイロッドやナックルアームを介在させてステアリングロッド26に連結されている操舵輪FR、FLを転舵可能にしている。
【0021】
また、このステアリングアクチュエータ25には、転舵モータ27a、27bの回転角をそれぞれ検出し得る回転角センサ28a、28bも内蔵されており、これらの回転角センサ28a、28bはSBW_ECU 30に接続されている。これにより転舵モータ27a、27bの出力軸の回転量を検出することができるため、後述するようなフィードバック制御によって転舵モータ27a、27bの出力制御を可能にするとともに、転舵モータ27a、27bの回転を制御することにより目標実舵角に操舵輪FR、FLを制御可能にしている。
【0022】
なお、SBWシステムにおいては、主要な構成装置・構成部品に故障等が発生した場合の安全性を確保する観点から、前述したように、制御装置、駆動モータや駆動回路をそれぞれを2系統設けて二重化にした冗長構成を採っている。そのため、本実施形態に係る操舵装置20においても、操舵輪FR、FLを目標実舵角に向くように制御する転舵モータ27a、27bを二重化している。
【0023】
SBW_ECU 30は、図略のCPUを中心にROM、RAM等のメモリ装置、各種の入出力インタフェイスやモータ駆動回路等を備えた制御装置であり、入力ポートには、前述の操舵角センサ23や回転角センサ28a、28b、また後述する車速センサ33等が電気的に接続され、出力ポートには、前述の反力モータ24や転舵モータ27a、27b、また後述するENG_ECU 40等が電気的に接続されている。これにより、各種センサにより検出された信号のSBW_ECU 30への入力や、各モータやENG_ECU 40に対する制御信号のSBW_ECU 30からの出力を可能にしている。
【0024】
なお、SBW_ECU 30は、当該車両の運動制御を行う他のECU (例えばENG_ECU 40やABS_ECU 等)と車内ネットワークを構成している。そのため、SBW_ECU 30は当該車内ネットワークを介して車両駆動装置(内燃機関や電動モータ等)を制御するENG_ECU 40との通信を可能にしており、後述するように、車速制限情報や起動阻止情報をENG_ECU 40に通知している。
【0025】
車速センサ33は、駆動輪や従動輪の車輪速信号を検出し得るもので、SBW_ECU 30に電気的に接続されており、その出力信号である車速信号をSBW_ECU 30に出力している。これにより、SBW_ECU 30では、当該車両の走行速度、つまり車速に関する情報を得ることができるため、後述するように、当該車両の車速が所定の低速度以下に減速されているか否かを知ることができる。
【0026】
なお、この車速に関する情報は、このような車速センサ33から直接得る構成に限られることはなく、例えば、車速センサ33の出力信号を処理する他のECU から車速に関する情報を取得するように構成しても良い。これにより、当該SBW_ECU 30による演算処理の負担が軽減されるので、他の処理を高速に演算することができる。
【0027】
次に、SBW_ECU 30により制御される操舵装置20の基本機能を、図2に示す機能ブロックを参照して説明する。
図2に示すように、操舵角センサ23により検出されたステアリングホイール21の操舵角θh 、つまり位置指令がSBW_ECU 30に入力されると、位置制御処理30aにより、当該操舵角θh に応じた目標操舵角に操舵輪FR、FLを転舵制御可能なステアリングロッド26の位置を求める演算が行われる。
【0028】
位置制御処理30aによる位置演算が行われると、次にトルク分配処理30bにより、2つの転舵モータ27a、27bによって発生させるトルクを決定するトルク分配演算が行われる。即ち、操舵装置20では、操舵輪FR、FLを制御する操舵制御系として2つの転舵モータ27a、27bによる二重化構成を採っているため、それぞれの転舵モータ27a、27bにより発生させるトルクに対応する電流指令値を、このトルク分配処理30bによって算出する処理が行われる。
【0029】
電流制御処理30cでは、トルク分配処理30bにより得られた電流指令値に対するモータ駆動電流を転舵モータ27aに供給し得るように図略のPWM回路等を制御する。そのため、転舵モータ27aに供給されるモータ駆動電流は、電流センサ35aにより検出される検出電流として電流制御処理30cにフィードバック入力され、また転舵モータ27aの回転角は、回転角センサ28aにより検出される検出位置(検出回転角)として位置制御処理30aおよび電流制御処理30cにフィードバック入力される。
【0030】
同様に、電流制御処理30dでも、トルク分配処理30bにより得られた電流指令値に対するモータ駆動電流を転舵モータ27bに供給し得るように図略のPWM回路等を制御するため、転舵モータ27bに供給されるモータ駆動電流が、電流センサ35bにより検出される検出電流として電流制御処理30dにフィードバック入力され、また転舵モータ27bの回転角は回転角センサ28bにより検出される検出回転角として電流制御処理30dにフィードバック入力される。
【0031】
これにより、転舵モータ27a、27bには、トルク分配処理30bにより分配された指令トルクをそれぞれ発生させることができるため、当該トルクによりステアリングアクチュエータ25のステアリングロッド26をステアリングホイール21の操舵角θh に応じた位置に制御でき、図略のタイロッドやナックルアームを介して操舵輪FR、FLを目標実舵角に転舵することが可能となる。
【0032】
ここで、電流センサ35bによる検出される検出電流と、回転角センサ28bにより検出される検出回転角とは、反力推定処理30eにも入力される。これにより、ステアリングホイール21の他端側に連結された反力モータ24に発生させるべき反力を演算している。即ち、ステアリングホイール21を操作する運転者に対して、適当な操舵感を与えるために必要となる、操舵回転方向とは逆回転方向にステアリングホイール21を回転させる回転力(反力)を、反力推定処理30eにより演算している。
【0033】
反力推定処理30eにより反力が演算されると、反力モータ24により発生させる反力に対応する電流指令値を、反力特性マップ30fにより求める処理が行われ、これにより求められた電流指令値に対するモータ駆動電流を反力モータ24に供給し得るように、電流制御処理30gにより図略のPWM回路等を制御する。なお、この電流制御処理30gにも、反力モータ24に供給されるモータ駆動電流が電流センサ36による検出される検出電流としてフィードバック入力される。これにより、反力モータ24には、ステアリングアクチュエータ25のステアリングロッド26の位置に応じた反力を発生させ得るため、ステアリングホイール21を操作する運転者に適当な操舵感を与えることが可能となる。
【0034】
続いて、このように制御される操舵制御の異常を検出する処理(以下「異常検出処理」という。)の流れを図3に基づいて説明する。なおこの処理は、SBW_ECU 30により、一定時間(例えば5ミリ秒)ごとに繰り返し行われる割り込み処理に類するものであり、これに関する一連のメインルーチンの説明は省略する。
【0035】
図3に示すように、SBW_ECU 30では、まずステップS101により、操舵制御系の異常の有無を検出する処理が行われる。即ち、回転角センサ28a、28bにより検出された各回転角や電流センサ35a、35bにより検出された各検出電流に基づいて、これらの転舵モータ27a、27b、回転角センサ28a、28bや電流センサ35a、35bに異常があるか否かを判断する処理を行い、これらのいずれかに異常がある場合には異常検出情報を出力、例えば、所定の異常検出フラグや異常検出ビット等を設定する処理を行う。
【0036】
次のステップS103では、操舵制御系に異常があるか否かの判断処理を行う。即ち、ステップS101により異常検出情報が出力(または設定)されている場合には、ステップS105によりENG_ECU 40に所定の通知を行う必要があるので、このステップS103によって当該異常検出情報の出力がある場合には(S103でYes)、ステップS105に処理を移行する。一方、異常検出情報の出力があると判断されない場合には(S103でNo)、操舵制御系の異常はないので、一連の本異常検出処理を終了し、次回の処理に備える。
【0037】
ステップS105では、車速制限要求をENG_ECU 40に通知する処理が行われる。即ち、当該車両の走行速度(車速)を所定の徐行速度あるいは所定の低速度(例えば5km/h)以下に制限させる車速制限情報を、車内ネットワークを介してSBW_ECU 30に接続されたENG_ECU 40に送信する処理が行われる。ここで、「徐行速度」とは、ブレーキをかけると直ちに停止できる速度のことをいう。
【0038】
続くステップS107では、操舵制御系に異常が発生していることを、運転者や乗員に告知するため、計器パネルの警告灯を点灯させる処理、つまり警告表示処理が行われる。この処理では、警告灯等の表示に限られず、例えば合成音声やアラーム音等を鳴動させるものであっても良い。これにより、もはや二重化ではないSBWシステムによる安全性を確保するため、例えば、走行速度を所定の徐行速度に減速させたり、あるいは路肩に駐停車させて故障箇所の修理を要請するといった行動をとる契機を当該運転者等に与えることができる。
【0039】
このようにして警告表示が行われると、一連の本異常検出処理は終了するのであるが、ステップS105により車速制限要求の通知を受けたENG_ECU 40では次のような処理が行われる。なお、このENG_ECU 40による車速制限処理も、一定時間(例えば5ミリ秒)ごとに繰り返し行われる割り込み処理に類するものであり、これに関する一連のメインルーチンの説明は省略する。
【0040】
即ち、図3に示すように、ENG_ECU 40では、ステップS501により、車速制限要求通知の有無を検出する処理が行われ、SBW_ECU 30から車内ネットワークを介して車速制限要求を受信しているか否かを判断する処理を行い、受信している場合には車速制限情報を出力、例えば、所定の車速制限フラグや車速制限ビット等を設定する処理を行う。
【0041】
次のステップS503では、車速制限要求の通知があるか否かの判断処理を行う。即ち、ステップS501により車速制限情報が出力(または設定)されている場合には、ステップS507により車速制限制御を行う必要があるので、このステップS503によって当該車速制限情報の出力がある場合には(S503でYes)、ステップS505に処理を移行する。一方、車速制限情報の出力があると判断されない場合には(S503でNo)、車速制限要求の通知は受けていないので、一連の本車速制限処理を終了し、次回の処理に備える。
【0042】
続くステップS505では、当該車両の走行速度(車速)が、例えば、所定の徐行速度以下であるか否かの判断処理が行われる。例えば、SBW_ECU 30による警告表示処理(S107)により、既に、運転者が自主的に所定の徐行速度以下に減速している場合には、ステップS507による車速制限制御処理をさらに行う必要はないので、このステップS505により現在の車速を判断している。そのため、ステップS505により車速が所定の徐行速度以下であると判断された場合には(S505でYes)、一連の本車速制限処理を終了し、次回の処理に備える。一方、車速が所定の徐行速度以下であると判断されない場合、つまり所定の徐行速度を超えている場合には(S505でNo)、ステップS507により車速制限制御を行う必要があるので、次ステップS507に処理を移行する。
【0043】
ステップS507では、車速制限制御処理が行われる。即ち、SBW_ECU 30により操舵制御系の異常があることから、車速制限要求の通知を受けているにもかかわらず、当該車両の走行速度が、所定の徐行速度あるいは所定の低速度以下に減速されていない場合には、もはや二重化にはなっていないSBWシステムによる安全性を確保する必要上、いち早く所定の徐行速度等に減速して運転者がブレーキをかけると直ちに停止可能な状態にすべきである。そのため、ステップS507では車速制限制御として、例えば、車両駆動装置が内燃機関の場合には、アクセルペダルの踏込み量にかかわらずスロットルバルブの開度を抑える制御や、車両駆動装置が電動モータの場合には、回生ブレーキ等の作用により減速する制御、等が行われる。このような車速制限制御処理が行われると、一連の本車速制限処理を終了し、次回の処理に備える。
【0044】
【0045】
次に、SBW_ECU 30により処理される異常検出処理の第1変形例の流れを図4に基づいて説明する。なおこの処理は、図3に示すステップS103からステップS107の間に、所定の徐行速度以下になるまで徐々に減速させる処理を追加したものである。そのため、図4に示すステップS201、S203、S213は、それぞれ図3に示すステップS101、S103、S107に対応するものであるから、これらの説明は省略し、本第1変形例に特有の処理について以下説明する。
【0046】
図4に示すように、ステップS203により操舵制御系に異常があると判断すると(S203でYes)、ステップS205により車速情報を取得する処理が行われる。即ち、車速センサ33から当該車両の現在の車速情報を取得する。
【0047】
ステップS207では、ステップS205により取得した車速情報に基づいて当該車両の現在の走行速度が所定の徐行速度以下であるか否かを判断する処理が行われる。なお所定の徐行速度は、図3を参照して説明したものと同様である。このような判断処理を行うのは、現在の車速が徐行速度以下であればそれ以上の車速制限を行う必要がないからである。そのため、現在の車速が徐行速度以下の場合には(S207でYes)、ENG_ECU 40に車速制限要求の通知を行うことなく、ステップS213により警告表示処理を行うこととしている。
【0048】
ステップS207により、現在の車速が徐行速度以下であると判断されない場合、つまり徐行速度を超えている場合には(S207でNo)、続くステップS209により所定の制限速度を設定する処理を行う。所定の制限速度は、例えば所定の徐行速度よりも速く、現在の車速(または前回設定した所定の制限速度)よりも遅い速度に設定される。このステップS207では、前回に設定された所定の制限速度を記憶しているので、次回またこのステップS207による処理を行う場合には、前回設定した所定の制限速度よりも遅い速度に所定の制限速度が設定される。これにより、次のステップS211により通知さえる所定の制限速度を徐々に減速させることができる。
【0049】
ステップS211では、車速制限要求をENG_ECU 40に通知する処理が行われる。即ち、当該車両の走行速度(車速)をステップS209により設定された所定の制限速度以下に制限させる車速制限情報を、車内ネットワークを介してSBW_ECU 30に接続されたENG_ECU 40に送信する処理が行われる。
【0050】
このようにして所定の制限速度以下に制限させる車速制限情報がENG_ECU 40に送信されると、ENG_ECU 40ではステップS601により、車速制限要求通知の有無を検出する処理が行われ、SBW_ECU 30から車内ネットワークを介して所定の制限速度以下に制限させる車速制限要求を受信しているか否かを判断する処理を行い、受信している場合には車速制限情報を出力、例えば、所定の車速制限フラグや車速制限ビット等を設定する処理を行う。
【0051】
次のステップS603では、車速制限要求の通知があるか否かの判断処理を行い、所定の制限速度以下に制限させる車速制限情報が出力(または設定)されている場合には(S603でYes)、ステップS605に処理を移行する。一方、車速制限情報の出力があると判断されない場合には(S603でNo)、車速制限要求の通知は受けていないので、一連の本車速制限処理を終了し、次回の処理に備える。
【0052】
続くステップS605では、当該車両の走行速度(車速)が、所定の制限速度以下であるか否かの判断処理が行われる。例えば、SBW_ECU 30による警告表示処理(S213)により、既に、運転者が自主的に所定の制限速度以下に減速している場合には、今回はステップS607による車速制限制御処理を行う必要はないので、このステップS605により現在の車速を判断している。そのため、ステップS605により車速が所定の制限速度以下であると判断された場合には(S605でYes)、一連の本車速制限処理を終了し、次回の処理に備える。一方、車速が所定の制限速度以下であると判断されない場合、つまり所定の制限速度を超えている場合には(S605でNo)、ステップS607により車速制限制御を行う必要があるので、次のステップS607に処理を移行する。
【0053】
ステップS607では、車速制限制御処理が行われる。即ち、SBW_ECU 30により操舵制御系の異常があることから、車速制限要求の通知を受けているにもかかわらず、当該車両の走行速度が、所定の制限速度以下に減速されていない場合には、もはや二重化にはなっていないSBWシステムによる安全性を確保する必要上、当該所定の制限速度以下に減速しつつ、所定の徐行速度等に減速して運転者がブレーキをかけると直ちに停止可能な状態にすべきである。そのため、ステップS607では車速制限制御として、例えば、車両駆動装置が内燃機関の場合には、アクセルペダルの踏込み量にかかわらずスロットルバルブの開度を抑える制御や、車両駆動装置が電動モータの場合には、回生ブレーキ等の作用により減速する制御、等が行われる。このような車速制限制御処理が行われると、一連の本車速制限処理を終了し、次回の処理に備える。
【0054】
【0055】
次に、SBW_ECU 30により処理される異常検出処理の第2変形例の流れを図5に基づいて説明する。なおこの処理は、当該車両の車両駆動装置が停止している場合に行われるもので、図3に示すステップS103からステップS107の間に、当該車両駆動装置の起動中止要求を通知する処理を追加したものである。そのため、図5に示すステップS301、S303、S311は、それぞれ図3に示すステップS101、S103、S107に対応するものであるから、これらの説明は省略し、本第2変形例に特有の処理について以下説明する。
【0056】
図5に示すように、ステップS303により操舵制御系に異常があると判断すると(S303でYes)、ステップS305により車速情報を取得する処理が行われる。即ち、車速センサ33から当該車両の現在の車速情報を取得する。
【0057】
ステップS307では、ステップS305により取得した車速情報に基づいて当該車両の現在の走行速度がゼロであるか否かを判断する処理が行われる。このような判断処理を行うのは、現在の車速がゼロでなければ当該車両は駐停車しているとは言えず、当該車両の車両駆動装置は停止していない可能性が高い。そのため、ENG_ECU 40に対し当該車両駆動装置の起動中止要求を通知する必要がないからである。したがって、現在の車速がゼロであると判断されない場合には(S307でNo)、ENG_ECU 40に起動中止要求の通知を行うことなく、ステップS311により警告表示処理を行うこととしている。
【0058】
ステップS307により、現在の車速がゼロであると判断された場合には(S307でYes)、続くステップS309により当該車両駆動装置の起動中止要求をENG_ECU 40に通知する処理が行われる。即ち、当該車両のイグニッションスイッチがオンされても、例えば、内燃機関や駆動モータが起動されないことを要求する起動阻止情報を、車内ネットワークを介してSBW_ECU 30に接続されたENG_ECU 40に送信する処理が行われる。
【0059】
このようにして当該車両駆動装置の起動阻止を要求する起動阻止情報がENG_ECU 40に送信されると、ENG_ECU 40ではステップS701により、起動中止要求通知の有無を検出する処理が行われ、SBW_ECU 30から車内ネットワークを介して当該起動中止要求通知を受信しているか否かを判断する処理を行い、受信している場合には起動阻止情報を出力、例えば、所定の起動阻止フラグや起動阻止ビット等を設定する処理を行う。
【0060】
次のステップS703では、起動中止要求の通知があるか否かの判断処理を行い、車両駆動装置の起動を中止する起動阻止情報が出力(または設定)されている場合には(S703でYes)、ステップS705に処理を移行する。一方、起動阻止情報の出力があると判断されない場合には(S703でNo)、起動中止要求の通知は受けていないので、一連の本起動阻止処理を終了し、次回の処理に備える。
【0061】
続くステップS705では、当該車両の内燃機関や電動モータ(車両駆動装置)が停止中であるか否かの判断処理が行われる。つまり、本起動阻止処理は、当該車両の車両駆動装置が停止している場合に行われるものであるから、当該車両の内燃機関や電動モータ(車両駆動装置)が停止されていない場合には、今回はステップS707による起動阻止処理を行う必要はないので、このステップS705により現在の内燃機関や電動モータ(車両駆動装置)の状況を判断している。そのため、ステップS705により車両の内燃機関や電動モータ(車両駆動装置)が停止中であると判断されない場合には(S705でNo)、一連の本起動阻止処理を終了し、次回の処理に備える。一方、車両の内燃機関や電動モータ(車両駆動装置)が停止中であると判断された場合には(S705でYes)、ステップS707により起動阻止制御を行う必要があるので、次のステップS707に処理を移行する。
【0062】
ステップS707では、起動阻止制御処理が行われる。即ち、SBW_ECU 30により操舵制御系の異常があることから、イグニッションスイッチがオンにされても、もはや二重化にはなっていないSBWシステムによる安全性を確保する必要上、当該車両の内燃機関や電動モータ(車両駆動装置)の起動を行わないようにすべきである。そのため、ステップS707では起動阻止制御として、例えば、車両駆動装置が内燃機関の場合には、イグニッションスイッチのオンにかかわらずセルモータが回転しないような制御や、車両駆動装置が電動モータの場合には、当該電動モータに駆動電流を供給しないような制御、等が行われる。このような起動阻止制御処理が行われると、一連の本起動阻止処理を終了し、次回の処理に備える。
【0063】
このように本実施形態に係る操舵装置20のSBW_ECU 30による異常検出処理の第2変形例では、ステップS301により2系統の操舵制御系(転舵モータ27a、27b、回転角センサ28a、28b、電流センサ35a、35b)の、いずれの異常も検出して異常検出情報を出力し、この異常検出情報の出力があると車両駆動装置の起動を阻止する起動阻止情報をステップS309によりENG_ECU 40に出力する。これにより、2系統の操舵制御系(転舵モータ27a、27b、回転角センサ28a、28b、電流センサ35a、35b)のいずれかに異常があると、当該車両の駆動力の発生を制御しているENG_ECU 40に対し、起動を阻止する起動阻止情報が出力されるので、このような起動阻止情報を受け取った当該ENG_ECU 40は、停止状態にある内燃機関や電動モータの起動を阻止される。したがって、内燃機関や電動モータの停止状態において、二重化された操舵制御系のいずれかに異常があり、もはや二重化にはならなくなった場合には、ENG_ECU 40により内燃機関や電動モータの起動が阻止され、当該車両を走行不能にするので、安全性を確保することができる。
【0064】
なお、ステップS309により起動阻止情報をENG_ECU 40に出力する代わりに、例えば、自動変速機構を備えたオートマチックトランスミッション車においては、ステップS309による起動阻止情報を当該自動変速機構を制御する変速制御コンピュータに出力し、変速制御コンピュータによりパーキングレンジからドライブレンジへの移行を阻止する構成を採っても良い。これにより、二重化された操舵制御系のいずれかに異常があり、もはや二重化にはならなくなった場合には、当該変速制御コンピュータによりドライブレンジへの移行を阻止され、当該車両を走行不能にするので、安全性を確保することができる。
【0065】
なお、以上説明した操舵装置20は、その異常検出装置として、S101により2系統の操舵制御系(転舵モータ27a、27b、回転角センサ28a、28b、電流センサ35a、35b)の、いずれの異常も検出して異常検出情報を出力し、この異常検出情報の出力があると車速を所定の低速度以下に制限させる車速制限情報をステップS105によりENG_ECU 40に出力するように構成しても良い。これにより、2系統の操舵制御系(転舵モータ27a、27b、回転角センサ28a、28b、電流センサ35a、35b)のいずれかに異常があると、当該車両の駆動力の発生を制御しているENG_ECU 40に対し、車速を所定の低速度以下に制限させる車速制限情報が出力されるので、このような車速制限情報を受け取った当該ENG_ECU 40は、車速が所定の低速度以下になるように駆動力の発生を制限する。したがって、2系統ある、つまり二重化された操舵制御系(転舵モータ27a、27b、回転角センサ28a、28b、電流センサ35a、35b)のいずれかに異常があり、もはや二重化にはならなくなった場合には当該車両の車速が所定の低速度以下、例えばブレーキをかけると直ちに停止できる程度に減速されるので、安全性を確保することができる。
【0066】
なお、上述した実施形態では、2系統の操舵制御系が常に作動しているものを挙げたが、これに限られることはない。例えば、2系統のうち、一方を通常使用する主操舵制御系とし、他方を主操舵制御系に異常が発生したときに作動する副操舵制御系とするシステムにおいて、主操舵制御系に異常が発生した際に図3〜図5に示す異常処理の動作を行っても良い。さらに2系統に限ることなく、更に多数系統の操舵制御系にも適用できることは詳述するまでもなく可能であり、上述した作用および効果と同様のものを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る車両用操舵装置の構成概要を示す説明図である。
【図2】 本実施形態に係る車両用操舵装置の主な機能構成を示すブロック図である。
【図3】 本実施形態に係る車両用操舵装置のSBW_ECU 30により処理される異常検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】 本実施形態に係る車両用操舵装置のSBW_ECU 30により処理される異常検出処理の第1変形例の流れを示すフローチャートである。
【図5】 本実施形態に係る車両用操舵装置のSBW_ECU 30により処理される異常検出処理の第2変形例の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
20 操舵装置 (車両用操舵装置)
21 ステアリングホイール
22 ステアリング軸
23 操舵角センサ(操舵制御系)
24 反力モータ
25 ステアリングアクチュエータ
26 ステアリングホイールロッド
27a、27b 転舵モータ (操舵制御系)
28a、28b 回転角センサ(操舵制御系)
30 SBW_ECU (異常検出手段、起動阻止情報出力手段)
30a 位置制御処理
30b トルク分配処理
30c 電流制御処理
30d 電流制御処理
30e 反力推定処理
30f 反力特性マップ
30g 電流制御処理
33 車速センサ
35a、35b 電流センサ (操舵制御系)
36 電流センサ
40 ENG_ECU (車両駆動制御装置)
FR、FL 操舵輪
S101
S301(異常検出手段)
S103、S105、S211
S205
S303、S309(起動阻止情報出力手段)
Claims (1)
- ステアリングホイールの操作状態に基づいて操舵輪の目標実舵角を決定し、この決定された目標実舵角に操舵輪を制御する操舵制御系を多系統に備えた車両用操舵装置であって、
前記多系統の操舵制御系の、いずれの異常も検出して異常検出情報を出力する異常検出手段と、
前記異常検出情報の出力があると車両駆動装置の起動を阻止する起動阻止情報を車両駆動制御装置に出力する起動阻止情報出力手段と、
を備えることを特徴とする車両用操舵装置。
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