JP3870550B2 - コモンレール式燃料噴射装置用燃料ポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コモンレール内の高圧燃料をエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射するコモンレール式燃料噴射装置に用いられる燃料ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コモンレール内の高圧燃料をエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射するコモンレール式燃料噴射装置に用いられる燃料ポンプとしては、例えば特開平8−210223号公報に開示されたジャーク式の燃料ポンプ(図4参照)が知られている。
【0003】
この燃料ポンプ100では、ポンププランジャ101は、戻しバネ102により常にポンプ室103が広がる方向すなわち図4にて下向きに付勢され、また、ポンププランジャ101の下部101aはカム104と常に接触している。このポンププランジャ101の下部101aがカム104の凸部104aから凹部104bに至るまでの区間においては、ポンププランジャ101は戻しバネ102のバネ力によって下降して下死点位置に至る。このとき、ポンプ室103が広がるため、ポンプ室103には低圧室から低圧燃料が供給される。その後、ポンププランジャ101の下部101aがカム104の凹部104bから凸部104aに至るまでの区間においては、ポンププランジャ101は戻しバネ102のバネ力に抗して凸部104aによって押し上げられる。このとき、ポンプ室103はその容積が減じられると共に低圧室と遮断されるので、ポンプ室103内の燃料は高圧化される。そして、所定の圧力に達すると、吐出弁105が開かれ、ポンプ室103内の高圧燃料はコモンレール106に流入する。一方、エンジンの各気筒に設けられたインジェクタ107は、このコモンレール106に接続されており、図示しないエンジン・コントロール・ユニット(以下ECUという)によってその開閉が制御されている。そして、各インジェクタ107が開放されると、コモンレール106内の高圧燃料がエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記燃料ポンプ100では、カム104からポンププランジャ101に動力が伝達される際に、カム104の凸面104aとポンププランジャ101の下部101aとの接触面に生じるヘルツ応力が高圧能力の限界を決定し、100MPaを越える高圧ポンプは容易に実現できなかった。このことは、ディーゼル機関の燃料ポンプの高圧化を阻む最大の要因となっていた。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、従来実現が困難であった高圧燃料の供給を簡単な構造で実現するコモンレール式燃料噴射装置用燃料ポンプを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記課題を解決するため、本発明は、コモンレール内の高圧燃料をエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射するコモンレール式燃料噴射装置に用いられる燃料ポンプにおいて、増圧ピストンポンプと、前記エンジンの回転に伴って回転するドライブシャフトの延長上に形成された分配ロータとを備え、前記増圧ピストンポンプは、増圧ピストンと、前記増圧ピストンを摺動可能に収納したシリンダと、前記増圧ピストンによって仕切られた前記シリンダの内部のうち、燃料の吸入が可能な状態で燃料タンクに接続されると共に前記コモンレールに高圧燃料を供給可能な状態で該コモンレールに接続されたポンプ室と、前記増圧ピストンによって仕切られた前記シリンダの内部のうち前記ポンプ室と反対側の駆動室とを有し、前記分配ロータは、一端が高圧側に接続された供給通路と、一端が低圧側に接続された排出通路とを有し、前記分配ロータが前記エンジンの回転に伴い軸回転するのにしたがって前記供給通路の他端及び前記排出通路の他端が交互に前記駆動室に連通し、前記供給通路の他端が前記駆動室に連通したときには、前記増圧ピストンは前記ポンプ室が狭くなる方向に移動し、前記ポンプ室内の燃料は高圧化されて前記コモンレールに供給され、一方、前記排出通路の他端が前記駆動室に連通したときには、前記増圧ピストンは前記ポンプ室が広がる方向に移動し、前記ポンプ室内に前記燃料タンクから燃料が吸入される。
【0007】
本発明の燃料ポンプでは、分配ロータが軸回転して供給通路の他端が増圧ピストンポンプの駆動室に連通したとき、駆動室は供給通路を介して高圧側例えば加圧された作動流体に接続されるため、駆動室内の圧力が上昇し、増圧ピストンはポンプ室が狭くなる方向に移動する。すると、ポンプ室内の燃料は高圧化されてコモンレールに供給される(吐出行程)。一方、分配ロータが軸回転して排出通路の他端が増圧ピストンポンプの駆動室に連通したとき、駆動室は排出通路を介して低圧側例えば低圧の作動流体に接続されるため、駆動室内の圧力が下降し、増圧ピストンはポンプ室が広くなる方向に移動する。すると、ポンプ室内には燃料タンクから燃料が吸入される(吸入行程)。
【0008】
本発明の燃料ポンプによれば、増圧ピストンは従来のようにカムで駆動されるのではなく圧力によって駆動されるため、従来のようにピストンとカムとの接触面における焼き付けを考慮する必要がなく、カムでは達成できなかった高圧を達成できるという効果が得られる。また、エンジンの回転に伴い軸回転する分配ロータを利用して増圧ピストンポンプの駆動室の圧力を調整するため、電磁弁などにより駆動室の圧力を調整する場合に比べて、簡素な構造になり、信頼性が高くなる。
【0009】
本発明の燃料ポンプにおいて、前記増圧ピストンは、一対の大面積ピストンと小面積ピストンから構成され、前記シリンダの内部のうち前記ポンプ室は前記小面積ピストン側に形成され、前記駆動室は前記大面積ピストン側に形成されていてもよい。この場合、ポンプ室内の燃料の圧力は、小面積ピストンに対する大面積ピストンの比(>1)に応じた大きさとなるため、駆動室内の圧力よりも大きくすることができる。このため、例えば100MPaを越えるような高圧燃料をコモンレールに供給することが可能になる。
【0010】
本発明の燃料ポンプにおいて、前記増圧ピストンポンプは複数形成されていてもよい。この場合、増圧ピストンポンプが複数存在するため、コモンレール内の圧力は燃料噴射されるごとに下がるものの、分配ロータが1回転する間に複数回コモンレールに高圧燃料を供給する。このため、コモンレール内の圧力を予め定めた設定圧に維持しやすい。
【0011】
本発明の燃料ポンプにおいて、前記供給通路の一端に接続されている高圧側はアキュムレータとしてもよい。この場合、例えばフィードポンプからアキュムレータに加圧流体を与える構成を採用するとすれば、フィードポンプのフィードタイミングをどのように設定してもよいため、設計の自由度が高くなる。これに対してアキュムレータを介さず直接フィードポンプから分配ロータの供給通路に加圧流体を与える構成とした場合には、フィードタイミングを供給通路と駆動室とが重なったときに合わせる必要がある。
【0012】
本発明の燃料ポンプにおいて、前記アキュムレータは、フィードポンプの吐出側に接続され、前記排出通路の一端に接続されている低圧側は、前記フィードポンプの吸入側に接続されていてもよい。この場合、増圧ピストンポンプを駆動するための作動流体を循環させることができ、構造が簡素化される。
【0013】
本発明の燃料ポンプにおいて、前記アキュムレータは、フィードポンプの吐出側から高圧燃料が供給され、前記ポンプ室と弁を介して接続されていてもよい。この場合、増圧ピストンポンプの作動流体として燃料を利用するためフィードポンプは1つでよく構成が簡素となる。これに対して作動流体と燃料を別々にした場合には作動流体のフィードポンプと燃料のフィードポンプがそれぞれ必要になる。
【0014】
このとき、前記増圧ピストンポンプが前記分配ロータの回転軸を中心として複数形成され、前記アキュムレータは前記分配ロータの回転軸を中心として環状に形成されていてもよい。この場合、アキュムレータが分配ロータの回転軸を中心として環状に形成されているため、複数の増圧ピストンポンプのポンプ室に燃料を供給するための流路を確保しやすく、レイアウトがシンプルになる。
【0015】
また、前記フィードポンプの吸入側と吐出側とは開閉弁を介して接続され、前記開閉弁は前記コモンレール又は前記アキュムレータの圧力に応じて開閉されるように構成してもよい。この場合、例えば制御装置がコモンレール又はアキュムレータの圧力センサからその内部圧力を検出し、その値が予め定めた設定圧となるように、フィードポンプの吸入側と吐出側とを接続する開閉弁を開閉制御する。具体的には、設定圧未満ならば開閉弁を閉じ、設定圧を越えていれば開閉弁を開く。この結果、余分な燃料をほとんどエネルギー損失なくリリーフすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は本発明の燃料ポンプを適用した燃料噴射システムの概略構成図である。本実施形態の燃料噴射システム1は、主として、燃料ポンプ10、コモンレール式燃料噴射装置40、ECU45から構成されている。
【0017】
燃料ポンプ10は、フィードポンプ11、アキュムレータ12、増圧ピストンポンプ13を備えている。フィードポンプ11は、周知のベーンポンプやギヤポンプであり、燃料タンク2内の燃料すなわち軽油を吸入し、2〜10MPaに加圧して、フィードポンプ11からアキュムレータ12への流れのみを許容する弁(一方向弁)としての逆止弁14を介して、この加圧燃料をアキュムレータ12へ供給する。アキュムレータ12は、アキュムレータ12から増圧ピストンポンプ13への流れのみを許容する弁(一方向弁)としての逆止弁15を介して、増圧ピストンポンプ13に接続されている。増圧ピストンポンプ13は、アキュムレータ12から供給された燃料を30〜160MPaに高圧化して、増圧ピストンポンプ13からコモンレール式燃料噴射装置40のコモンレール(以下リザーバともいう)41への流れのみを許容する弁(一方向弁)としての逆止弁17を介して、高圧燃料をリザーバ41へ供給する。なお、フィードポンプ11の吸入側と吐出側とは、ECU45により開閉を制御される電磁弁16を介して接続されている。
【0018】
コモンレール式燃料噴射装置40は、リザーバ41と複数のインジェクタ43、43、43、43を備えている。リザーバ41は、燃料ポンプ10から供給された高圧燃料を蓄えるものであり、リザーバ41の内部圧力を検出する圧力センサ42を備えている。インジェクタ43はECU45からの制御信号に基づいて電磁力によってノズルを開閉する方式のものであり、ディーゼル機関(以下エンジンという)の気筒ごとに設けられている。
【0019】
ECU45は、周知のCPU、ROM、RAMなどで構成されており、圧力センサ42からの検出信号のほかエンジン回転数や負荷などを入力し、電磁弁16や各インジェクタ43へ制御信号を出力する。具体的には、ECU45は、エンジンの要求する時期に要求する期間だけ各インジェクタ43を開弁してリザーバ41内の高圧燃料をエンジン各気筒の燃焼室内に噴射供給する。ところで、増圧ピストンポンプ13はリザーバ41が所定の内部圧力を維持すべく高圧燃料を供給せねばならないが、そのために、ECU45は、圧力センサ42からの検出信号に基づいて電磁弁16を開閉することにより、フィードポンプ11からの供給燃料のうちの過剰分をフィードポンプ11の吸入側に戻している。
【0020】
次に、本発明の燃料ポンプ10について図2に基づいて詳細に説明する。図2はコモンレール式燃料噴射装置用燃料ポンプの概略断面図である。
燃料ポンプ10は、ハウジング3の中にフィードポンプ11、アキュムレータ12、増圧ピストンポンプ13、分配ロータ30などを収納して構成されている。
【0021】
フィードポンプ11は、図示しないフィードポンプロータがドライブシャフト4に設けられている。ドライブシャフト4は、ハウジング3内に設けられ、図示しないエンジンの回転に伴って回転する。従って、フィードポンプ11は、エンジンの回転に伴って駆動され、燃料タンク2の燃料を燃料ポンプ10の入口10aから吸入口11aを経由して吸入し、2〜10MPaに加圧した燃料を吐出口11bからアキュムレータ12へ供給する。なお、吐出口11bとアキュムレータ12の間には、前述の逆止弁14が配置されている。
【0022】
アキュムレータ12は、ドライブシャフト4の回転軸(=分配ロータ30の回転軸)を中心とする環状すなわちドーナツ状の容積として形成されている。アキュムレータ12は分配ロータ30の周りに設けられた環状溝18に連通されている。また、アキュムレータ12と後述の増圧ピストンポンプ13のポンプ室27とは、前述の逆止弁15を介して連通されている。
【0023】
増圧ピストンポンプ13は、増圧ピストンとしてのステップピストン21と、このステップピストン21を摺動可能に収納するシリンダ24とを備えている。ステップピストン21は大面積ピストンとしての大径ピストン22と小面積ピストンとしての小径ピストン23から構成され、大径ピストン22はシリンダ24のうち大径シリンダ25内に摺動可能に収納され、小径ピストン23は小径シリンダ26内に摺動可能に収納されている。
【0024】
小径シリンダ26の内部のうち小径ピストン23の上端面によって仕切られた空間は、前述の逆止弁17を介してリザーバ41に接続されており、燃料ポンプ10の出口10bからリザーバ41に高圧燃料を供給するためのポンプ室27を形成している。一方、大径シリンダ25の内部のうち大径ピストン22の下端面によって仕切られた空間は、駆動室28を形成している。また、大径シリンダ25の内部のうち大径ピストン22の上端面(ステップピストン21の肩の部分)によって仕切られた空間は、スプリング室29を形成している。このスプリング室29には、ポンプ室27が広くなる方向にステップピストン21を付勢する付勢体としてのスプリング20が配置されている。また、スプリング室29は燃料ポンプ10の入口10aつまり低圧燃料の側に接続されている。
【0025】
分配ロータ30はドライブシャフト4の延長上に形成されており、供給通路31と排出通路32を有する。分配ロータ30の端面とハウジング3との間には入口10aに連通する隙間が設けられている。
供給通路31は、分配ロータ30の周面に入口ポート31aと供給ポート31bの2個の開口を有する。このうち入口ポート31aは、分配ロータ30の周りに設けられた環状溝18を介してアキュムレータ12と常に連通している。つまり、供給通路31の一端である入口ポート31aは、高圧燃料の側に接続されている。一方、供給ポート31bは、開口形状が円周方向に長く延びる長円状であり、分配ロータ30が特定の位相のときのみ駆動室28の開口28aと重なって駆動室28とアキュムレータ12とを供給通路31を介して連通させる。
【0026】
排出通路32は、分配ロータ30の周面に排出ポート32a、分配ロータ30の端面に出口ポート32bの2個の開口を有する。このうち出口ポート32bは、分配ロータ30の端面とハウジング3との間の隙間を介して燃料ポンプ10の入口10aに接続されている。つまり、排出通路32の一端である出口ポート32bは、低圧燃料の側に接続されている。一方、排出ポート32aは、開口形状が円周方向に長く延びる長円状であり、分配ロータ30が特定の位相のときのみ駆動室28の開口28aと重なって駆動室28と燃料ポンプ10の入口10aとを連通させる。
【0027】
なお、増圧ピストンポンプ13は、本実施形態のように複数個(2個)設けることが好ましい。ここでは、図2に示すように、2個の増圧ピストンポンプ13、13’は分配ロータ30の回転軸を中心とした直径方向に配列されている。そして、分配ロータ30の供給通路31の供給ポート31bが一方の増圧ピストンポンプ13の駆動室28の開口28aと重なったとき、分配ロータ30の排出通路32の排出ポート32aは他方の増圧ピストンポンプ13’の駆動室28’の開口28a’と重なるように構成されている。
【0028】
次に、本実施形態の燃料ポンプ10の作用につき、図2及び図3に基づいて説明する。図3は分配ロータの位相に対する各部の物理量の変化を表すチャート図である。なお、ここでは燃料ポンプ10の2つの増圧ピストンポンプ13、13’のうち、一方の増圧ピストンポンプ13を中心に説明する。
【0029】
エンジンの回転に伴いドライブシャフト4が回転すると、これに伴ってフィードポンプ11が駆動され、燃料タンク2内の燃料を燃料ポンプ10の入口10aから吸入口11a経由で吸入し、2〜10MPaに加圧した燃料を吐出口11bからアキュムレータ12へ供給する。すると、アキュムレータ12にはこのように加圧された燃料が蓄えられる。また、分配ロータ30の供給通路31の入口ポート31aは環状溝18を介して常にアキュムレータ12と連通している。このため、供給通路31内はこの加圧された燃料で充填されている。
【0030】
一方、ドライブシャフト4が回転して分配ロータ30の供給通路31の供給ポート31bと駆動室28の開口28aとが重なると(図3(a)の矢印ア参照)、駆動室28にはアキュムレータ12内の加圧燃料が導入されるため、駆動室28内の圧力は上昇していく(図3(c)参照)。なお、駆動室28内の圧力は最大でアキュムレータ12内の圧力と同じになり暫く保持されるが、これは供給ポート31bの開口形状が長円状だからである。
【0031】
駆動室28内の圧力が上昇していき、駆動室28内の圧力が大径ピストン22に及ぼす作用力F1が、スプリング20の付勢力FSとポンプ室27内の圧力(=アキュムレータ12の圧力)が小径ピストン23に及ぼす作用力F2との和に打ち勝ったとき、つまり、F1>FS+F2になったとき、ステップピストン21はポンプ室27を狭くする方向に移動し始める(図3(d)の矢印イ参照)。この結果、ポンプ室27内の燃料は高圧化される(図3(e)参照)。ポンプ室27の圧力は最大でおよそアキュムレータ12内の圧力の16倍(大径ピストン22と小径ピストン23の面積比)に達する。そして、ポンプ室27内の圧力がコモンレール式燃料噴射装置40のリザーバ41内の圧力を越えたとき、逆止弁17が開いてポンプ室27内から出口10bを経てリザーバ41に対して高圧燃料が吐出される(吐出行程、図3(f)参照)。この結果、リザーバ41内の圧力は上昇し、設定圧Paに達する(図3(g)参照)。
【0032】
リザーバ41内の圧力は、その後インジェクタ43から燃料が噴射されるごとに、図3(g)に示すように圧力Pb、更には圧力Pcへ低下し、その後もう一つの増圧ピストンポンプ13’から高圧燃料が圧送されることにより(図3(f)のかっこ内のピーク)、再び設定圧Paまで戻る。なお、ECU45は圧力センサ42からリザーバ41内の圧力つまり噴射圧を検出し、それに合わせて一定の噴射量となるようにインジェクタ43の電磁弁を制御するため、リザーバ41内の圧力が設定圧PaからPb、Pcに下がっても、噴射量は一定に保たれる。
【0033】
ドライブシャフト4が回転して分配ロータ30の排出通路32の排出ポート32aと駆動室28の開口28aとが重なると(図3(b)の矢印ウ参照)、駆動室28は入口10aつまり低圧燃料の側に連通される。このため、駆動室28内の圧力は低下していくが(図3(c)参照)、F1<FS+F2になったとき、ステップピストン21はポンプ室27を広くする方向に移動する(図3(d)の矢印エ参照)。この結果、逆止弁17は閉じ、逆止弁15が開いてポンプ室27内にアキュムレータ12の燃料が流入する(吸入行程)。
【0034】
なお、この増圧ピストンポンプ13の駆動室28には、分配ロータ30が180°回転するごとに、供給通路31の供給ポート31bと排出通路32の排出ポート32aが交互に連通する。
以上詳述した本実施形態の燃料ポンプ10によれば、以下の効果が得られる。
【0035】
▲1▼増圧ピストンであるステップピストン21は従来のようにカムで駆動されるのではなく油圧によって駆動されるため、従来のようにピストンとカムとの接触面における焼き付けを考慮する必要がなく、カムでは達成できなかった高圧を達成できる。また、分配ロータ30を利用して増圧ピストンポンプ13の駆動室28の圧力を調整するため、電磁弁などにより駆動室の圧力を調整する場合に比べて、簡素な構造になり、また信頼性が高く、多気筒化(複数ポンプ化)にも有利である。
【0036】
▲2▼ステップピストン21は、一対の大径ピストン22と小径ピストン23から構成され、ポンプ室27は小径ピストン23側、駆動室28は大径ピストン22側に形成されている。このため、ポンプ室27内の燃料の圧力は、小径ピストン23の面積に対する大径ピストン22の面積の比(>1)に応じた大きさとなり、駆動室28内の圧力よりも十分大きくすることができる。このため、例えば100MPaを越えるような高圧燃料をリザーバ41に供給することが可能になる。
【0037】
▲3▼リザーバ41内の圧力は各インジェクタ43から燃料噴射されるごとに下がるものの、複数(ここでは2個)の増圧ピストンポンプ13、13’が形成されているため、分配ロータ30が1回転する間に複数回リザーバ41に高圧燃料が供給される。このため、リザーバ41内の圧力を予め定めた設定圧に維持しやすい。なお、増圧ピストンポンプを複数個設ける場合には分配ロータ30の回転軸を中心として放射状に(半径方向に)設けることが製造を容易にするため好ましい。
【0038】
▲4▼供給通路31の入口ポート31aはアキュムレータ12に接続されているため、フィードポンプ11のフィードタイミングを供給通路31の供給ポート31bと駆動室28の開口28aとが重なったときに合わせる必要がなく、フィードタイミングをどのように設定してもよい。このため、フィードポンプ11として周知のベーンポンプやギヤポンプを使用でき、設計の自由度が高くなる。
【0039】
▲5▼アキュムレータ12はフィードポンプ11の吐出側に接続され、排出通路32の出口ポート32bはフィードポンプ11の吸入側に接続されているため、増圧ピストンポンプ13を駆動するための燃料を循環させることができ、構造が簡素化される。
【0040】
▲6▼アキュムレータ12はフィードポンプ11の吐出側から高圧燃料(2〜10Pa)が供給され、ポンプ室27は逆止弁15を介してアキュムレータ12に接続されているため、増圧ピストンポンプ13の作動流体として燃料を利用でき、作動流体と燃料を別々にした場合に比べて構成が簡素化される。
【0041】
▲7▼アキュムレータ12は分配ロータ30の回転軸を中心として環状の容積として形成されているため、複数の増圧ピストンポンプ13のポンプ室27に燃料を供給するための流路を確保しやすく、レイアウトがシンプルになる。
▲8▼フィードポンプ11の吸入側と吐出側とは電磁弁16を介して接続し、ECU45は圧力センサ42からリザーバ41の内部圧力を検出し、その値が予め定めた設定圧となるように電磁弁16の開閉を制御するため、余分な燃料をほとんどエネルギー損失なくリリーフすることができる。
【0042】
尚、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、ECU45はリザーバ41の圧力に応じて電磁弁16の開閉を制御したが、アキュムレータ12に圧力センサを設け、アキュムレータ12の圧力が設定圧Paとなるように電磁弁16の開閉を制御してもよい。ただし、リザーバ41の圧力に基づいて制御する方が直接的であるため好ましい。
【0043】
また、駆動室28の開口28a、供給通路31の供給ポート31b、排出通路32の排出ポート32aの形状は、円形であってもよいが、上記実施形態のように円周方向に長い長円状や楕円状であってもよい。後者の場合、開口28aと供給ポート31b(あるいは排出ポート32a)とが重なり合う時間を長くすることができるし、高い設計精度が要求されないので好ましい。
【0044】
更に、ステップピストン21は大径ピストン22と小径ピストン23とが分離していてもよい。この場合、駆動室28が供給通路31を介してアキュムレータ12に接続されたときには、大径ピストン22は小径ピストン23を押し上げるため、両ピストン22、23は一体化される。また、駆動室28が排出通路32を介して入口10aに接続されたときには、逆止弁15が開いてアキュムレータ12からポンプ室27へ加圧燃料が流入し、小径ピストン23が大径ピストン22を押し下げるため、両ピストン22、23は一体化される。このように両ピストン22、23を分離して構成した場合には、ステップピストン21の製造が容易になる。
【0045】
更にまた、増圧ピストンポンプ13の数を増やしてインジェクタ43が噴射するごとに毎回リザーバ41の内部圧力が設定圧Paに戻るように構成してもよい。例えばエンジンが4気筒なら4つの増圧ピストンポンプ13を設ければよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態の燃料ポンプを適用した燃料噴射システムの概略構成図である。
【図2】 本実施形態の燃料ポンプの概略断面図である。
【図3】 分配ロータの位相に対する各部の物理量の変化を表すチャート図である。
【図4】 従来のコモンレール式燃料噴射装置用燃料ポンプの概略断面図である。
【符号の説明】
1・・・燃料噴射システム、2・・・燃料タンク、4・・・ドライブシャフト、10・・・燃料ポンプ、10a・・・燃料ポンプの入口、10b・・・燃料ポンプの出口、11・・・フィードポンプ、12・・・アキュムレータ、13・・・増圧ピストンポンプ、20・・・スプリング、21・・・ステップピストン、22・・・大径ピストン、23・・・小径ピストン、24・・・シリンダ、25・・・大径シリンダ、26・・・小径シリンダ、27・・・ポンプ室、28・・・駆動室、28a・・・駆動室の開口、29・・・スプリング室、30・・・分配ロータ、31・・・供給通路、31a・・・入口ポート、31b・・・供給ポート、32・・・排出通路、32a・・・排出ポート、32b・・・出口ポート、40・・・コモンレール式燃料噴射装置、41・・・リザーバ、42・・・圧力センサ、43・・・インジェクタ。
Claims (8)
- コモンレール内の高圧燃料をエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射するコモンレール式燃料噴射装置に用いられる燃料ポンプにおいて、
増圧ピストンポンプと、前記エンジンの回転に伴って回転するドライブシャフトの延長上に形成された分配ロータとを備え、
前記増圧ピストンポンプは、
増圧ピストンと、
前記増圧ピストンを摺動可能に収納したシリンダと、
前記増圧ピストンによって仕切られた前記シリンダの内部のうち、燃料の吸入が可能な状態で燃料タンクに接続されると共に前記コモンレールに高圧燃料を供給可能な状態で該コモンレールに接続されたポンプ室と、
前記増圧ピストンによって仕切られた前記シリンダの内部のうち前記ポンプ室と反対側の駆動室とを有し、
前記分配ロータは、
一端が高圧側に接続された供給通路と、
一端が低圧側に接続された排出通路とを有し、
前記分配ロータが前記エンジンの回転に伴い軸回転するのにしたがって前記供給通路の他端及び前記排出通路の他端が交互に前記駆動室に連通し、前記供給通路の他端が前記駆動室に連通したときには、前記増圧ピストンは前記ポンプ室が狭くなる方向に移動し、前記ポンプ室内の燃料は高圧化されて前記コモンレールに供給され、一方、前記排出通路の他端が前記駆動室に連通したときには、前記増圧ピストンは前記ポンプ室が広がる方向に移動し、前記ポンプ室内に前記燃料タンクから燃料が吸入されるコモンレール式燃料噴射装置用燃料ポンプ。 - 前記増圧ピストンは、一対の大面積ピストンと小面積ピストンから構成され、前記シリンダの内部のうち前記ポンプ室は前記小面積ピストン側に形成され、前記駆動室は前記大面積ピストン側に形成されていることを特徴とする請求項1記載のコモンレール式燃料噴射装置用燃料ポンプ。
- 前記増圧ピストンポンプは複数形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のコモンレール式燃料噴射装置用燃料ポンプ。
- 前記供給通路の一端に接続されている高圧側はアキュムレータであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコモンレール式燃料噴射装置用燃料ポンプ。
- 前記アキュムレータは、フィードポンプの吐出側に接続され、前記排出通路の一端に接続されている低圧側は、前記フィードポンプの吸入側に接続されていることを特徴とする請求項4記載のコモンレール式燃料噴射装置用燃料ポンプ。
- 前記アキュムレータは、フィードポンプの吐出側から高圧燃料が供給され、前記ポンプ室と弁を介して接続されていることを特徴とする請求項4又は5記載のコモンレール式燃料噴射装置用燃料ポンプ。
- 前記増圧ピストンポンプは前記分配ロータの回転軸を中心として複数形成され、前記アキュムレータは前記分配ロータの回転軸を中心として環状に形成されていることを特徴とする請求項6記載のコモンレール式燃料噴射装置用燃料ポンプ。
- 前記フィードポンプの吸入側と吐出側とは開閉弁を介して接続され、前記開閉弁は前記コモンレール又は前記アキュムレータの圧力に応じて開閉されることを特徴とする請求項6又は7記載のコモンレール式燃料噴射装置用燃料ポンプ。
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