JP3865569B2 - スピンドルモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報/映像機器等への搭載に好適なスピンドルモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報/映像機器は、高記録密度化/高速データ転送が強く要望されるようになり、そのためにモータの回転精度、高速回転化を同時に満足し得るスピンドルモータが開発されて来つつある。
【0003】
ラジアル軸受に流体軸受を採用した磁気ディスク装置用スピンドルモータを例にとって説明する。図5(a)に示すように、ベース101に、上下方向の固定軸102が下端において圧入固定されるとともに、複数相のステータコイル103が巻回されたステータコア104が固定されている。磁気ディスク(図示せず)を搭載するハブ105は、固定軸102に外挿されたスリーブ106の外周面に接着等により固定されて、スリーブ106と一体的に一方向に回転するようになっており、ステータコイル103に対向する外周面に装着された磁石107とともに回転子を構成している。磁石107の外周円筒面には、複数極の着磁がなされている。
【0004】
固定軸102の上端面は凸状円弧面に仕上げられており、スリーブ106に固定して対向配置されたスラストプレート120がスラスト軸受を構成している。121は吸引板である。一方、図5(b)に示すように、スリーブ106の内周面にはラジアル軸受部110、111が固定軸102の軸長手方向に沿って上からこの順に形成されており、ラジアル軸受部110、111と固定軸102との間には所定の隙間(数μmオーダー)が形成されている。これらラジアル軸受部110、111はそれぞれ、転造等の加工手段によって形成されたへリングボーン形状の動圧発生溝110a、111aを有し、固定軸102との間の隙間に潤滑剤Lが注入されていて、ラジアル軸受を構成している。上側の動圧発生溝110aの溝幅F1と下側の動圧発生溝111aの溝幅F2とは、等しいか、あるいはF1がF2より大きくなるように設計されている。また下側の動圧発生溝111aは、屈曲部よりも下側の溝幅E2が、屈曲部より上側の溝幅E1よりも長く構成されている。
【0005】
このようなスピンドルモータにおいて、複数相よりなるステータコイル103に回転子の回転位相に応じて順次通電を行うと、磁石107との間でフレミングの左手の法則によりトルクが発生し、それにより磁石107、ハブ105、スリーブ106が一体的に回転し始める。
【0006】
このとき、スラスト軸受では、固定軸102の上端の凸状円弧面102aとスラストプレート120との間で低摩擦のすべり軸受が実現される。一方、ラジアル軸受では、動圧発生溝110a、111aで楔形状に基づくポンピング作用が働き、ヘリングボーン形状の屈曲部で潤滑剤Lの圧力が上昇するため、固定軸102がラジアル方向に押圧され、固定軸102とスリーブ106(ラジアル軸受部110、111)とは非接触に保たれる。
【0007】
なおこの時、上記したように下側のラジアル軸受部111の動圧発生溝111aでは屈曲部より下側の溝幅E2>上側の溝幅E1であるため、ラジアル軸受部111全体としては潤滑剤Lは上側に向かう力を受け、スリーブ106の開放端からの潤滑剤Lの漏れは発生し難い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、近年、磁気ディスク装置などの小型、薄型化に伴い、スピンドルモータも小型、薄型のものが要求されるようになってきており、スピンドルモータの小型、薄型化を図ると、ラジアル軸受スパンが十分に確保できない。そのため、スリーブ開放端からの潤滑剤漏れを防止するために上記したような動圧発生溝構造をとると、ヘリングボーン形状の屈曲部より上側の溝幅が極端に短くなり、軸をスリーブの軸心位置に配置する軸受本来の剛性が確保できなくなるという問題があった。すなわち、潤滑剤漏れ防止と軸受剛性確保とは相反するものであり、妥協点を見つける必要があった。
【0009】
本発明は上記問題を解決するもので、潤滑剤漏れ防止と軸受剛性確保とを満足できるスピンドルモータを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、軸と、一端開口が封止され前記軸に外挿されたスリーブ部を有し前記軸とスリーブ部との間に注入された潤滑剤を介して軸と相対的に回転運動する回転子と、ヘリングボーン形状の動圧発生溝を有し前記軸の外周円筒面とスリーブ部の内周円筒面との間に軸長手方向に沿って複数段に設けられ前記軸をラジアル方向に支承するラジアル軸受部とを備えたスピンドルモータにおいて、少なくとも1つの前記ラジアル軸受部に、ヘリングボーン形状の屈曲部よりも前記スリーブ部の開放端に近い部位に形成されて潤滑剤を保持する補助溝を前記動圧発生溝間に等間隔に配置したことを特徴とする。
【0013】
この構成により、動圧発生溝全体の溝幅が小さくても、スリーブ部の開放端に近い部位で潤滑剤を溝内に引き込むのに十分な力が発生することになり、潤滑剤漏れが少なくなるとともに、十分な軸受剛性を確保できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における磁気ディスク用スピンドルモータの断面図であり、図2は同スピンドルモータを構成する(a) スリーブの断面図、(b) 動圧発生溝の平面図、(c) 動圧発生溝の断面図である。
【0017】
図1〜図2において、ベース1には、上下方向の固定軸2が下端において圧入固定されるとともに、複数相のステータコイル3が巻回されたステータコア4が固定されている。磁気ディスク(図示せず)を搭載するハブ5は、固定軸2に外挿されたスリーブ6の外周面に接着等により固定されてスリーブ6と一体的に一方向に回転するようになっており、ステータコイル3に対向する外周面に装着された磁石7とともに回転子を構成している。磁石7の外周円筒面には、複数極の着磁がなされている。
【0018】
固定軸2の上端面は凸状円弧面に仕上げられており、スリーブ6に固定して対向配置されたスラストプレート8がスラスト軸受を構成している。9は吸引板である。スリーブ6の内周面には、ラジアル軸受部10、11が固定軸2の軸長手方向に沿って上からこの順に設けられており、ラジアル軸受部10、11と固定軸2との間には所定の隙間(数μmオーダー)が形成されている。これらラジアル軸受部10、11はそれぞれ、転造等の加工手段によって、スリーブ6の軸芯と直角をなす線を中心として屈曲して形成されたヘリングボーン形状の動圧発生溝(複数の楔形状溝)10a、11aを有し、固定軸2との間の隙間に潤滑剤Lが注入されていて、ラジアル軸受を構成している。
【0019】
動圧発生溝10a、11aでは、上側の動圧発生溝10aの軸長手方向の溝幅A1と下側の動圧発生溝11aの溝幅A2とが等しくなるように設計されている。また動圧発生溝11aは、ヘリングボーン形状の屈曲部Oよりも下側の溝部OBの深さが、屈曲部より上側の溝部OAの深さよりも大きくなるように形成されている。
【0020】
このようなスピンドルモータにおいて、複数相よりなるステータコイル3に回転子の回転位相に応じて通電すると、回転子(磁石7、ハブ5、スリーブ6)が回転を開始して、例えば毎分4,500回転といった定常回転数に達するまで加速し、定常回転数に至ったところ一定回転数を保つ。
【0021】
このとき、固定軸2の上端面の凸状円弧面とスラストプレート8の略中央部が数十μmの直径の略円形の面で摺動し、スラスト荷重を支える。一方、動圧発生溝10a、11aにおいて、ヘリングボーン形状の屈曲部Oに潤滑剤Lが流入して動圧が発生し、この動圧によって、固定軸2の外周円筒面とスリーブ6の内周円筒面とは非接触の状態となる。
【0022】
なおこのとき、上記したように動圧発生溝11aでは屈曲部Oよりも下側の溝部OBの深さ>上側の溝部OAの深さであるため、屈曲部Oに流入する潤滑剤L量が下側で大きくなり、ラジアル軸受部11全体としては、潤滑剤Lを上側へ引き込む力が作用する。このため、スピンドルモータに発生する遠心力や振動などが潤滑剤Lに作用しても、スリーブ6の下端の開放部から潤滑剤Lが漏れることはない。
【0023】
このように、上述した従来モータとは異なって、深さ方向の溝形状によって潤滑剤Lを上側へ引き込む力を発生させる構成なので、スピンドルモータの小型化あるいは薄型化によってラジアル軸受スパンを短くせざるを得ず、溝幅などが制約されていても、実施可能である。
【0024】
なお、この実施の形態1では屈曲部Oの上側と下側とで深さ方向の溝形状を変えたが、屈曲部Oの上側と下側とで幅方向の溝形状を変えたり、相似形状として断面比率を変えるようにしても、同様の効果が得られる。
【0025】
また、スラスト軸受も流体軸受とした構成であっても、同様の効果が得られる。さらに、ハブが静止しベースが固定軸とともに回転する機器を構成しても、同様の効果が得られる。これらの構成は以下の実施の形態2,3でも可能である。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2におけるスピンドルモータを説明する。このスピンドルモータは上記した実施の形態1のモータとほぼ同様の構成を有しているが、次の点で相違している。
【0026】
図3に示すように、スリーブ6では、上側のラジアル軸受部10の動圧発生溝10aの軸長手方向の溝幅A1と、下側のラジアル軸受部11の動圧発生溝11aの溝幅A2とが等しくなるように、また溝深さが等しくなるように設計されている。そして、下側のラジアル軸受部11に、屈曲部Oよりも下側の動圧発生溝11aに沿ってノの字形状に形成され潤滑剤Lを保持する補助溝11bが複数個、等間隔に配置されている。
【0027】
このため、ラジアル軸受部10、11ともに、楔形状の動圧発生溝10a,11aで略々上下対称な動圧力が発生する。それに加えてラジアル軸受部11では、ノの字形状の補助溝11bで上側に向かう圧力が発生し、ラジアル軸受部11全体として、潤滑剤Lを上側に向かわせる力が働く。したがって、スリーブ6の下端の開放部からの潤滑剤漏れは発生しにくい。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3におけるスピンドルモータを図5を用いて説明する。このスピンドルモータは上記した実施の形態1のモータとほぼ同様の構成を有しているが、次の点で相違している。
【0028】
図4に示すように、スリーブ6では、上側のラジアル軸受部10の動圧発生溝10aの軸長手方向の溝幅C1よりも下側のラジアル軸受部11の動圧発生溝11aの溝幅C2を大きくしている。そして下側のラジアル軸受部11の動圧発生溝11aで分に大きな溝幅C2を確保したことに基づいて、屈曲部Oより上側の溝幅D1よりも、屈曲部Oより下側の溝幅D2を大きくしている。
【0029】
その結果、下側のラジアル軸受部11全体として、潤滑剤Lを上側に向かわせる力が働き、潤滑剤Lを十分に保持する力が発生し、スリーブ6の開放端からの潤滑剤漏れを防止できる。しかも、ラジアル軸受部10と11の軸受剛性のバランスをとるための設計が大変容易になる。このような構成は、小型あるいは薄型のスピンドルモータのようにラジアル軸受の軸受スパンが短い場合に特に有効である。
【0030】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、一端開口が封止され軸に外挿されたスリーブ部を有した回転子を備え、ヘリングボーン形状の動圧発生溝を形成したラジアル軸受部を軸長手方向に沿って複数段に設けたスピンドルモータにおいて、ヘリングボーン形状の屈曲部よりもスリーブ部の開放端に近い部位の動圧発生溝に沿う別途の動圧発生溝を配置することにより、潤滑剤を効率よく保持可能になり、軸受剛性を確保しながら、スリーブ部の開放端からの潤滑剤漏れが少ない小型、薄型のスピンドルモータを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1におけるスピンドルモータの概略全体構成を示す断面図
【図2】図1のスピンドルモータを構成するスリーブの構成を示す説明図
【図3】本発明の実施の形態2におけるスピンドルモータを構成するスリーブの断面図
【図4】本発明の実施の形態3におけるスピンドルモータを構成するスリーブの断面図
【図5】従来のスピンドルモータの概略全体構成を示す断面図
【符号の説明】
1 ベース
2 固定軸
3 ステータコイル
4 ステータコア
5 ハブ
6 スリーブ
7 磁石
8 スラストプレート
10,11 ラジアル軸受部
10a,11a 動圧発生溝
11b 補助溝
O 屈曲部
L 潤滑剤
Claims (1)
- 軸と、一端開口が封止され前記軸に外挿されたスリーブ部を有し前記軸とスリーブ部との間に注入された潤滑剤を介して軸と相対的に回転運動する回転子と、ヘリングボーン形状の動圧発生溝を有し前記軸の外周円筒面とスリーブ部の内周円筒面との間に軸長手方向に沿って複数段に設けられ前記軸をラジアル方向に支承するラジアル軸受部とを備えたスピンドルモータにおいて、少なくとも1つの前記ラジアル軸受部に、ヘリングボーン形状の屈曲部よりも前記スリーブ部の開放端に近い部位に形成されて潤滑剤を保持する補助溝を前記動圧発生溝間に等間隔に配置したことを特徴とするスピンドルモータ。
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