JP3865425B2 - 多層配線板とその製造方法及び多層配線板の製造に用いる転写用原版とその製造方法 - Google Patents

多層配線板とその製造方法及び多層配線板の製造に用いる転写用原版とその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は多層配線板とその製造方法及び多層配線板の製造に用いる転写用原版とその製造方法に係り、特に高精細なパターンを有する多層配線板と、このような多層配線板を低コストで製造することができる製造方法、及び、上記の多層配線板の製造を工業的に有利に行うことができる転写用原版とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体技術の飛躍的な発展により、半導体パッケージの小型化、多ピン化、ファインピッチ化、電子部品の極小化などが急速に進み、いわゆる高密度実装の時代に突入した。それに伴って、プリント配線板も片面配線から両面配線へ、さらに多層化、薄型化が進められている。
【0003】
現在、プリント配線板の銅パターンの形成には、主としてサブトラクティブ法と、アディティブ法が用いられている。
【0004】
サブトラクティブ法は、銅張り積層板に穴を開けた後に、穴の内部と表面に銅メッキを行い、フォトエッチングによりパターンを形成する方法である。このサブトラクティブ法は技術的に完成度が高く、またコストも安いが、銅箔の厚さ等による制約から微細パターンの形成は困難である。
【0005】
一方、アディティブ法は無電解メッキ用の触媒を含有した積層板上の回路パターン形成部以外の部分にレジストを形成し、積層板の露出している部分に無電解銅メッキ等により回路パターンを形成する方法である。このアディティブ法は、微細パターンの形成が可能であるが、コスト、信頼性の面で難がある。
【0006】
多層基板の場合には、上記の方法等で作製した片面あるいは両面のプリント配線板を、ガラス布にエポキシ樹脂等を含浸させた半硬化状態のプリプレグと一緒に加圧積層する方法が用いられている。この場合、プリプレグは各層の接着剤の役割をなし、層間の接続はスルーホールを作成し、内部に無電解メッキ等を施して行っている。
【0007】
また、高密度実装の進展により、多層基板においては薄型、軽量化と、その一方で単位面積当りの高い配線能力が要求され、一層当たりの基板の薄型化、層間の接続や部品の搭載方法等に工夫がなされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のサブトラクティブ法により作製された両面プリント配線板を用いた多層基板の作製は、両面プリント配線板の穴形成のためのドリル加工の精度と、微細化限界の面から高密度化に限界があり、製造コストの低減も困難であった。
【0009】
一方、近年では上述のような要求を満たすものとして、基材上に導体パターン層と絶縁層とを順次積層して作製される多層配線板が開発されている。この多層配線板は、銅メッキ層のフォトエッチングと感光性樹脂のパターニングを交互に行って作製されるため、高精細な配線と任意の位置での層間接続が可能となっている。
【0010】
しかしながら、この方式では銅メッキとフォトエッチングを交互に複数回行うため、工程が煩雑となり、また、基板上に1層づつ積み上げる直列プロセスのため、中間工程でトラブルが発生すると、製品の再生が困難となり、製造コストの低減に支障を来していた。
【0011】
さらに、従来の多層配線板においては、層間の接続がバイアホールを作成することにより行われていたため、煩雑なフォトリソグラフィー工程が必要であり、製造コスト低減の妨げとなっていた。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、さらなる絶縁信頼性向上を得るための熱硬化性転写用粘着性電着塗料組成物から形成される絶縁樹脂層を用いた高精細なパターンを有する多層配線板と、上記の電着塗料組成物を用いた多層配線板をフォトリソグラフィー工程を含まず基板上への転写積層方式により製造することが可能な製造方法と、この多層配線板の製造を工業的に有利に実施することを可能とする転写用原版とその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の多層配線板は、基板、該基板上に順次転写された複数の配線パターン層を備え、該配線パターン層は導電性層と該導電性層の下部に形成された絶縁樹脂層を有するとともに、該絶縁樹脂層によって前記基板あるいは下層の配線パターン層に固着されてなり、該絶縁樹脂層が水酸基及びイオン性基を含有する樹脂(A)と、脂環式骨格及び/又は有橋脂環式骨格にエポキシ基が結合してなるエポキシ基含有官能基を1分子あたり平均2個以上有するエポキシ基含有硬化剤(B)とを主成分として含有する熱硬化性転写用粘着性電着塗料組成物より形成されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の多層配線板の製造方法は、導電性基板の上に、導電性層と該導電性層上に積層された前記絶縁樹脂層とを有する配線パターン層を設けた転写用原版を複数作製し、次に、多層配線板用の基板の一方の面に前記転写用原版を圧着し、前記導電性基板を剥離することにより前記配線パターン層を転写する操作を順次繰り返し、前記基板上に複数の前記配線パターン層を積層することを特徴としている。
【0015】
本発明の多層配線板の製造に用いる転写用原版は、少なくとも表面が導電性の導電性基板と、該導電性基板に形成された所望パターンの絶縁層と、前記導電性基板の導電性面露出部に形成された導電性層と、該導電性層上に前記絶縁樹脂層をさらに有することを特徴としている。
【0016】
また、本発明の多層配線板の製造に用いる転写用原版の製造方法は、少なくとも表面が導電性の導電性基板上に、所望パターンで絶縁層を形成し、露出している前記導電性基板表面にメッキ法により導電性層を形成し、該導電性層上に電着法により前記絶縁樹脂層をさらに形成することを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
基板に積層された配線パターン層は導電性層と前記絶縁樹脂層を備え、絶縁樹脂層によって基板あるいは下層の配線パターン層に固着された、いわゆる重ね刷り型の構造であり、各配線パターン層の導電性層は部分的に常に裸出されており、上記配線パターンの積層は、転写用原版上の配線パターン層を基板上に順次転写することにより行われるため、基板上におけるメッキ及びフォトエッチング工程は不要であり、多層配線板の製造工程の簡略化及び配線パターン層間の絶縁信頼性向上が可能となる。
【0018】
以下、本発明の多層配線板について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は本発明の多層配線板の一例を示す概略断面図である。図1において、多層配線板1は、基板2と、基板2上に設けられた第1層目の配線パターン層3と、この配線パターン層3上に積層された第2層目の配線パターン層4と、更に配線パターン層4上に積層された第3層目の配線パターン層5とを備えた3層構成の多層配線板である。
【0020】
この多層配線板1を構成する各配線パターン層3,4,5は、それぞれ導電性層3a,4a,5aと、この導電性層の下部に形成された絶縁樹脂層3b,4b,5bとを有している。そして、多層配線板1は、各配線パターン層3,4,5を基板2の上、あるいは下層の配線パターン層の上に順次転写積層した重ね刷り型の構造であり、各配線パターン層が相互に交差する部位(交差部)では、上下の配線パターン層間の絶縁は上層の配線パターン層を構成する絶縁樹脂層により保たれている。
【0021】
このため、本発明の多層配線板1は、従来の多層配線板に見られたような絶縁層による配線パターンの被覆がなく、各配線パターン層3,4,5の導電性層3a,4a,5aは部分的に常に裸出されており、後述するように、配線パターン層の交差部あるいは各配線パターン層が相互に近接する部位(近接部)における各配線パターン層相互の接続を容易に行うことができる。
【0022】
本発明の多層配線板1を構成する基板2は、ガラスエポキシ基板、ポリイミド基板、アルミナセラミック基板、ガラスエポキシとポリイミドの複合基板等、多層配線板用の基板として公知の基板を使用することができる。この基板2の厚さは5〜1000μmの範囲であることが好ましい。
【0023】
各配線パターン層3,4,5の厚みは、後述する積層転写における下層の配線パターン層の乗り越えを欠陥なく行うために、100μm以下、好ましくは10〜60μmの範囲とする。また、各配線パターン層3,4,5を構成する導電性層3a,4a,5aの厚みは、配線パターン層の電気抵抗を低く抑えるため1μm以上、好ましくは5〜40μmの範囲とする。さらに、前記絶縁樹脂層3b,4b,5bの厚みは、交差部において上下の配線パターン層間の絶縁を保つために少なくとも0.5μm以上、好ましくは1〜30μmの範囲とする。このような配線パターン層3,4,5の線幅は、最小幅10μm程度まで任意に設定することができる。
【0024】
導電性層3a,4a,5aの材料は、後述するように電着法により薄膜形成が可能なものであれば特に制限はなく、例えば、銅、銀、金、ニッケル、クロム、亜鉛、すず、白金等を用いることができる。
【0025】
また、絶縁樹脂層3b,4b,5bの形成に使用される熱硬化性転写用粘着性電着塗料組成物について以下説明する。
熱硬化性転写用粘着性電着塗料組成物
本発明において使用される熱硬化性転写用粘着性電着塗料組成物は、主成分として、水酸基及びイオン性基を含有する樹脂(A)と、脂環式骨格及び/又は有橋脂環式骨格にエポキシ基が結合してなるエポキシ基含有官能基を1分子あたり平均2個以上有するエポキシ基含有硬化剤(B)とを含有する。
【0026】
水酸基及びイオン性基を含有する樹脂(A)
水酸基及びイオン性基を有する樹脂(A)は、エポキシ基含有硬化剤(B)中のエポキシ基と反応しうる水酸基を含有し、且つ安定な水性分散物を形成するのに十分な数のイオン性基を有する任意の樹脂が包含される。イオン性基としてはカチオン性基及びアニオン性基のいずれであってもよい。樹脂(A)としては例えば次のものを挙げることができる。
【0027】
(イ)ポリエポキシ樹脂とカチオン化剤とを反応せしめて得られる反応生成物;
(ロ)ポリカルボン酸とポリアミンとの重縮合物(米国特許第2,450,940号明細書参照)を酸でプロトン化したもの;
(ハ)ポリイソシアネート及びポリオールとモノ又はポリアミンとの重付加物を酸でプロトン化したもの;
(ニ)水酸基ならびにアミノ基含有アクリル系又はビニル系モノマーの共重合体を酸でプロトン化したもの(特公昭45−12395号公報、特公昭45−12396号公報参照);
(ホ)ポリカルボン酸樹脂とアルキレンイミンとの付加物を酸でプロトン化したもの(米国特許第3,403,088号明細書参照);等。
【0028】
これらのカチオン性樹脂の具体例及び製造方法については、例えば特公昭45−12395号公報、特公昭45−12396号公報、特公昭49−23087号公報、米国特許第2,450,940号明細書、米国特許第3,403,088号明細書、米国特許第3,891,529号明細書、米国特許第3,963,663号明細書等に記載されている。
【0029】
本発明における樹脂(A)として特に望ましいのは、前記(イ)に包含される、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとから得られる防食性に優れているポリエポキシド化合物のエポキシ基にカチオン化剤を反応せしめて得られる反応性生成物である。
【0030】
前記ポリエポキシド化合物は、エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物で、一般に少なくとも200、好ましくは400〜4,000、さらに好ましくは800〜2,000の範囲内の数平均分子量を有するものが適している。そのようなポリエポキシド化合物としてはそれ自体公知のものを使用することができ、例えば、ポリフェノール化合物をアルカリの存在下にエピクロルヒドリンと反応させることにより製造することができるポリフェノール化合物のポリグリシジルエーテルが包含される。ここで使用しうるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
【0031】
上記したポリエポキシド化合物の中で、基体樹脂Aの製造に特に適当なものは、数平均分子量が少なくとも約380、より好適には約800〜約2,000、及びエポキシ当量が190〜2,000、好適には400〜1,000の範囲内のポリフェノール化合物のポリグリシジルエーテルであり、殊に下記式
【0032】
【化5】
Figure 0003865425
【0033】
で示されるものである。該ポリエポキシド化合物は、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドアミン、ポリカルボン酸、ポリイソシアネート等と部分的に反応させてもよく、さらに、δ−4カプロラクトン、アクリルモノマー等をグラフト重合させてもよい。
【0034】
一方、上記ポリエポキシド化合物にカチオン性基を導入するためのカチオン化剤としては、脂肪族又は脂環族又は芳香−脂肪族の第1級もしくは第2級アミン塩、第3級アミン塩、第2級スルフィド塩、第3級ホスフィン塩等が挙げられる。これらはエポキシ基と反応してカチオン性基を形成する。さらに第3級アミノアルコールとジイソシアネートの反応によって得られる第3級アミノモノイソシアネートをエポキシ樹脂の水酸基と反応させてカチオン性基とすることもできる。
【0035】
前記カチオン化剤におけるアミン化合物の例としては、例えば次のものを例示することができる。
(あ)メチルアミン、エチルアミン、n−又はiso−プロピルアミン、モノエタノールアミン、n−又はiso−プロパノールアミン等の第1級アミン;
(い)ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジn−又はiso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級アミン;
(う)エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン等のポリアミン。
【0036】
これらの中で水酸基を有するアルカノールアミン類が好ましい。また、第1級アミノ基を予めケトンと反応させてブロックした後、残りの活性水素でエポキシ基と反応させてもよい。
【0037】
さらに、上記アミン化合物以外にアンモニア、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ヒドロキシエチルヒドラジン、N−ヒドロキシエチルイミダゾリン化合物等の塩基性化合物も同様に使用することができる。これらの化合物を用いて形成される塩基性基は酸、特に好ましくはギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸等の水溶性有機カルボン酸でプロトン化してカチオン性基とすることができる。
【0038】
さらに、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等の第3級アミン等も使用でき、これらは酸で予めプロトン化し、エポキシ基と反応させて第4級塩にすることができる。
【0039】
また、アミノ化合物以外に、ジエチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、テトラメチレンスルフィド、チオジエタノール等のスルフィド類とホウ酸、炭酸、有機モノカルボン酸等との塩をエポキシ基と反応させて第3級スルホニウム塩としてもよい。
さらに、トリエチルホスフィン、フェニルジメチルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類と上記の如き酸との塩をエポキシ基と反応させて、第4級ホスホニウム塩としてもよい。
【0040】
樹脂(A)の水酸基としては、例えば、上記カチオン化剤中のアルカノールアミン、エポキシド化合物中に導入されることがあるカプロラクトンの開環物及びポリオール等から導入できる第1級水酸基;エポキシ樹脂中の2級水酸基;等が挙げられる。このうち、アルカノールアミンにより導入される第1級水酸基はエポキシ基含有硬化剤(B)との架橋硬化反応性が優れているので好ましい。このようなアルカノールアミンは前記カチオン化剤で例示したものが好ましい。
【0041】
樹脂(A)における水酸基の含有量は、エポキシ基含有硬化剤(B)に含まれるエポキシ基との架橋硬化反応性の点からみて、水酸基当量で20〜5,000、特に100〜1,000の範囲内が好ましく、特に第1級水酸基当量は200〜1,000の範囲内にあることが望ましい。また、イオン性基の含有量は、樹脂(A)を安定に分散しうる必要な最低限以上が好ましく、KOH(mg/g固形分)換算で一般に3〜200、特に10〜80の範囲内にあることが好ましい。しかし、イオン性基の含有量が3以下の場合であっても、界面活性剤等を使用して水性分散化して使用することも可能である。
【0042】
樹脂(A)は、水酸基及びイオン性基を有しており、遊離のエポキシ基は原則として含まないことが望ましい。樹脂(A)は転写性の観点からガラス転移点(Tg)が、−30〜100℃、好ましくは0〜60℃の範囲内であることが適当である。
【0043】
エポキシ基含有硬化剤(B)
エポキシ基含有硬化剤(B)(以下このものを「硬化剤(B)」ということもある)は、樹脂(A)と主として前記のごとくエーテル化反応等によって架橋硬化塗膜を形成するための硬化剤であって、特定の「エポキシ基含有官能基」を1分子あたり平均2個以上、好ましくは3個以上有するものである。
【0044】
すなわち、硬化剤(B)における該エポキシ基含有官能基は、脂環式骨格及び/又は有橋脂環式骨格とエポキシ基とからなり、脂環式骨格は、4〜10員、好ましくは5〜6員の飽和炭素環式環又は該環が2個以上縮合した縮合環を含有し、また、有橋脂環式骨格は、上記環式又は多環式環を構成する炭素原子2個の間に直鎖状もしくは分岐鎖状のC1-6 (好ましくはC1-4 )アルキレン基〔例えば−CH2 −、−CH2 CH2 −、−CH(CH3 )−、−CH(CH3 )CH2 −、−C(CH3 2 −、−CH(C2 5 )CH2 −等〕の橋(エンドメチレン、エンドエチレン等)が結合した環を含有するものである。
【0045】
一方、エポキシ基
【0046】
【化6】
Figure 0003865425
【0047】
は、該エポキシ基中の炭素原子の1つが上記脂環式骨格又は有橋脂環式骨格中の環炭素原子に直接結合している(例えば下記式[1]、[2]参照)か、或いは該エポキシ基の2個の炭素原子と上記脂環式骨格又は有橋脂環式骨格中の環を構成する隣接する2個の炭素原子とが共通している(例えば下記式[3]、[4]参照)することが重要である。
そのようなエポキシ基含有官能基の具体例としては、下記式[1]〜[4]で示されるものが挙げられる。
【0048】
【化7】
Figure 0003865425
【0049】
【化8】
Figure 0003865425
【0050】
【化9】
Figure 0003865425
【0051】
【化10】
Figure 0003865425
【0052】
(式中、R1 、R2 、R3 、R5 、R6 、R7 、R10及びR11はそれぞれH、CH3 又はC2 5 を表わし、そしてR4 、R8 及びR9 はそれぞれH又はCH3 を表わす。)
【0053】
硬化剤(B)は、上記式[1]〜[4]から選ばれるエポキシ基含有官能基を1分子あたり平均少なくとも2個、好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上有することができる。硬化剤(B)におけるエポキシ基含有官能基は同一であっても異なっていてもよく、また硬化剤(B)は単独であっても2種以上の混合物であってもよい。
【0054】
上記のうち、式[1]及び[3]で示されるエポキシ基含有基が好ましく、殊に下記式[5]
【0055】
【化11】
Figure 0003865425
【0056】
で示されるエポキシ基含有官能基、及び下記式[6]
【0057】
【化12】
Figure 0003865425
【0058】
で示されるエポキシ基含有官能基が好適である。
【0059】
硬化剤(B)のエポキシ当量及び分子量は厳密に制限されるものではなく、その製造方法や最終の塗料組成物の要求性能等に応じて変えることができるが、一般的に言えば、エポキシ当量は通常、100〜2,000、好ましくは150〜500、さらに好ましくは150〜250の範囲内にあることができ、また、数平均分子量は通常400〜100,000、好ましくは700〜50,000、さらに好ましくは700〜30,000の範囲内にあるのが適当である。
【0060】
このようなエポキシ基含有官能基を1分子中に2個以上有する硬化剤(B)は、例えば、特公昭56−8016号公報、特開昭57−47365号公報、特開昭60−166675号公報、特開昭63−221121号公報、特開昭63−234028号公報等の文献に記載されており、それ自体既知のものを使用することができる。
或いはまた、上記エポキシ基含有官能基を有する硬化剤(B)はそれ自体既知の方法によって得られ、その主な製造法を以下に列挙するが、これらに限定されるものではない。
【0061】
第1の製造方法:1分子中に炭素−炭素二重結合を2個以上有する脂環化合物の該二重結合の一部を部分エポキシ化し、そのエポキシ基を開環重合した後、重合体に残る該二重結合をエポキシ化する方法。
第2の製造方法:同一分子中にエポキシ基を2個以上有する脂環化合物を該エポキシ基に基づいて、該エポキシ基のすべてが消去しない程度に開環重合する方法。
第3の製造方法:同一分子中にエポキシ基含有官能基と重合性不飽和結合とを有する化合物を重合する方法。
【0062】
以下、これらの製造方法についてさらに具体的に説明する。
第1の製造方法:
1分子中に炭素−炭素二重結合を2個以上有する脂環化合物(以下、「脂環化合物(a)」と略称する)は、脂環式骨格又は有橋脂環式骨格について前述した脂環式環又は有橋脂環式環構造を基本骨格とし、さらに二重結合を、環を構成する隣接炭素原子2つの間で存在するか、又は該環構造を構成する炭素原子に他の炭素原子に基づく二重結合が直接結合する状態で少なくとも2個以上含有する化合物である。
脂環化合物(a)の代表例を示せば次のとおりである。
【0063】
【化13】
Figure 0003865425
【0064】
脂環化合物(a)に含まれる炭素−炭素二重結合の一部を過酸化物等によってエポキシ基に変性する(部分エポキシ化)。部分エポキシ化物は、前記脂環化合物(a)に含まれる複数の二重結合のうち一部をエポキシ基に変性したものであり、1分子中にエポキシ基と炭素−炭素二重結合とをそれぞれ少なくとも1個ずつ有しており、該二重結合は環を構成する隣接の炭素原子2個の間に存在するかもしくは該環の炭素原子に他の炭素原子に基づく二重結合が結合していることが必要である。
【0065】
次に、この部分エポキシ化物中のエポキシ基に基づいて開環重合して脂環式化合物(a)の重合体を得る。この開環重合には開始剤を用いることが好ましく、硬化剤(B)の末端には該開始剤成分による残基Xが結合していてもよい。ここで、Xは活性水素を有する有機化合物残基であり、その前駆体である活性水素を有する有機化合物としては、例えば、アルコール類、フェノール類、カルボン酸類、アミン類、チオール類等が挙げられる。
開環重合の際に、部分エポキシ化物を単独もしくは必要に応じてその他のエポキシ化合物を併存させて、これらに含まれるエポキシ基を開環重合(エーテル結合)させることによって得られる。
【0066】
開環重合体におけるその他のエポキシ化合物の構成比率は目的に応じて任意に選ぶことができるが、具体的には、得られる開環共重合体1分子あたり前記構造式[1]〜[4]のいずれか1種又は複数種を平均2個以上、好ましくは平均3個以上、より好ましくは4個以上有する範囲内で選ぶことが望ましい。
このようにして得られる該(共)重合体の数平均分子量は一般に400〜100,000、特に700〜50,000、さらに700〜30,000の範囲内にあることが好ましい。
【0067】
開環重合体には脂環化合物(a)に基づく二重結合が存在しており、そのすべてもしくは一部をエポキシ化することによって硬化剤(B)が得られる。二重結合のエポキシ化は例えば過酸類、ハイドロパーオキサイド類等のエポキシ化剤を用いて行なうことができる。
このようにして得られる硬化剤(B)のエポキシ当量は一般に100〜2,000、特に150〜500、さらに150〜250の範囲内であることが好ましい。
【0068】
このような硬化剤(B)の市販品としては、例えばEHPE−3150、EHPE−3100、EHPE−1150〔ダイセル化学工業(株)製商品名〕等が挙げられ、これらは4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドを用いたシクロヘキサン骨格を持つ下記構造式のエポキシ樹脂である。
【0069】
【化14】
Figure 0003865425
【0070】
(式中、nは2以上であり、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、Xは開始剤成分の残基である。)
【0071】
第2の製造方法:
例えば、前記脂環化合物(a)に含まれる二重結合のうち少なくとも2個をエポキシ化し、次いでエポキシ基が残存するように開環重合することによって得られる。
上記1分子あたり平均2個以上のエポキシ基を有する脂環化合物としては、単環式もしくは縮合環式の下記化合物が代表的に示される。
【0072】
【化15】
Figure 0003865425
【0073】
開環重合は、上記1分子あたり平均2個以上のエポキシ基を有する脂環化合物の1種以上を前記第1の製造方法で述べたのと同様にして、必要に応じ開始剤、触媒を使用し、開環重合反応を行ないエポキシ基が残存している所定の反応点で反応を止めることにより硬化剤(B)を得ることができる。
このようにして得られる開環重合体〔硬化剤(B)〕の数平均分子量は一般に400〜10,000、特に700〜50,000の範囲内にあることが好ましく、また、エポキシ当量は一般に100〜2,000、特に150〜500、さらに150〜250の範囲内にあることが好都合である。
【0074】
第3の製造方法:
同一分子中にエポキシ基含有官能基と重合性不飽和結合とをそれぞれ少なくとも1個ずつ有する化合物(以下、「重合性エポキシモノマー」と略称することがある)としては、例えば以下の一般式▲1▼〜▲4▼に示すものが挙げられる。
【0075】
【化16】
Figure 0003865425
【0076】
(式中、R12は水素原子又はメチル基を表わし、R13は炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表わす。)
上記重合性エポキシモノマーにおいて、R13によって表わされる炭素数1〜6の2価の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、エチルエチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン基等を挙げることができる。
【0077】
上記一般式▲1▼〜▲4▼で示される重合性エポキシモノマーの具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等が挙げられる。さらに、4−ビニルシクロヘキセンオキサイドも重合性エポキシモノマーとして使用できる。
【0078】
重合性エポキシモノマーから選ばれる1種もしくは2種以上を重合することによって硬化剤(B)を製造することができるが、その際他の重合性不飽和モノマーを共重合させることもできる。
上記他の重合性不飽和モノマーとしては、得られる(共)重合体に望まれる性能に応じて広範に選択することができ、その代表例を示せば次のとおりである。
【0079】
(a)アクリル酸又はメタクリル酸のエステル;例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル。
(b)ビニル芳香族化合物;例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロルスチレン。
(c)ポリオレフィン系化合物;例えば、ブタジシエン、イソプレン、クロロプレン。
(d)その他;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ベオバモノマー(シェル化学製品)、ポリカプロラクトン鎖をもつビニル化合物(例えば、FM−3Xモノマー;ダイセル化学工業製商品名)。
【0080】
重合性エポキシモノマーと他の重合性不飽和モノマーとの構成比率は、目的に応じて任意に選択することができ、これらの共重合反応によって得られる硬化剤(B)の1分子中あたりエポキシ基含有官能基が平均少なくとも2個、好ましくは平均3個以上、より好ましくは平均4個以上含有するような範囲で選択することができるが、十分な硬化性を付与する官能基として利用するためには、特に該エポキシ樹脂(B)固形分中重合性エポキシモノマー含有率が5〜100重量%、より好ましくは20〜100重量%の範囲内となるようにするのが好ましい。
【0081】
上記第3の製造方法によって得られる硬化剤(B)は、通常のアクリル樹脂やビニル樹脂等の重合性不飽和結合に基づく重合反応と同様の方法、条件を用いて製造することができる。
上記第3の製造例の硬化剤(B)は、数平均分子量が一般に約3,000〜約100,000の範囲内にあるものが好ましく、特に4,000〜10,000の範囲内にあるものがより好ましい。
【0082】
上記した硬化剤(B)の中で、好適なものは、1分子あたりにエポキシ基含有官能基を平均して3個以上、より好ましくは平均して4個以上、最も好ましくは平均して5個以上有するものであり、また、エポキシ当量が好ましくは100〜2,000、より好ましくは150〜500、特に150〜250の範囲内にあり、そして数平均分子量が好ましくは400〜100,000、より好ましくは700〜50,000、特に好ましくは700〜30,000の範囲内にあるものである。
本発明の絶縁樹脂層の形成に使用される電着塗料組成物において、樹脂(A)と硬化剤(B)との配合比は特に限定されるものではないが、一般には硬化剤(B)の樹脂(A)に対する固形分の重量比が0.2〜1.0、特に0.25〜0.85、さらに望ましくは0.25〜0.65の範囲内となるように選択するのが好ましい。
本発明の絶縁樹脂層の形成に使用される電着塗料組成物には、硬化用樹脂(B)の一部が基体樹脂(A)にあらかじめ付加したものが含まれていてもさしつかえない。
【0083】
本発明の絶縁樹脂層の形成に使用される電着塗料用組成物を調製するには、例えば、樹脂(A)と硬化剤(B)を混合した後、水中に安定に分散せしめ、次いで必要に応じて、カーボンブラック、チタン白、鉛白、酸化鉛、ベンガラのような着色顔料;クレー、タルクのような体質顔料;あるいはさらに他の添加剤を混練することによって行なわれる。配合し得る他の添加剤としては、例えば、分散剤又は塗面のハジキ防止剤としての少量の非イオン系界面活性剤;硬化促進剤等が挙げられる。
【0084】
特に、本発明の絶縁樹脂層の形成に使用される組成物による電着塗膜を160℃以下の低温で十分に硬化するようにするには、鉛化合物、ジルコニウム化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、マンガン化合物、銅化合物、亜鉛化合物、鉄化合物、クロム化合物、ニッケル化合物等から選ばれる1種もしくは2種以上の金属化合物を触媒として添加することが有効である。これら金属化合物の具体例としては、例えば、ジルコニウムアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、アルミニウムアセチルアセトナート、マンガンアセチルアセトナート等のキレート化合物;β−ヒドロキシアミノ構造を有する化合物と酸化鉛(II)のキレート化反応生成物;2−エチルヘキサン酸鉛、セカノイック鉛、ナフチックス鉛、オクチックス鉛、安息香酸鉛、酢酸鉛、乳酸鉛、ギ酸鉛、グリコール酸鉛、オクチックスジルコニウム等のカルボキシレート等が挙げられる。
上記金属化合物は、基体樹脂(A)と硬化剤(B)との合計固形分重量に対し、金属含有率が一般に10重量%以下、好ましくは5重量%以下の量で使用することができる。
【0085】
次に、上記の多層配線板1の製造を例にして図2乃至図5を参照しながら本発明の多層配線板の製造方法を説明する。
【0086】
まず、本発明の転写用原版を作成するために、転写基板としての導電性基板11上にフォトレジストを塗布してフォトレジスト層12を形成(図2(A))する。そして、所定のフォトマスクを用いてフォトレジスト層12を密着露光し現像して絶縁層12′とし、導電性基板11のうち配線パターン部分11aを露出させる(図2(B))。次に、導電性基板11の配線パターン部分11a上にメッキ法により導電性層14を形成する(図2(C))。その後、導電性層14上に電着法により前記絶縁樹脂層15を形成する(図2(D))。これにより、導電性層14と絶縁樹脂層15とを有する第1層目の配線パターン層13を設けた配線パターン層用の転写用原版10が得られる。同様にして、図3及び図4に示されるように、導電性基板21,31上に絶縁層22′(図示せず),32′と、導電性層24,34及び絶縁樹脂層25,35を有する配線パターン層23,33を設けた第2層目の配線パターン層用の転写用原版20、第3層目の配線パターン層用の転写用原版30を作製する。
【0087】
次に、基板2上に、上記の配線パターン層用の転写用原版10を絶縁樹脂層15が基板2に当接するように圧着する。この圧着は、ローラ圧着、プレート圧着、真空圧着等、いずれの方法にしたがってもよい。また、前記絶縁樹脂層が加熱により粘着性あるいは接着性を発現する絶縁樹脂からなる場合には、熱圧着を行うこともできる。その後、導電性基板11を剥離して配線パターン層13を基板2上に転写することにより、導電性層3aと絶縁樹脂層3bを有する第1層目の配線パターン層3を基板2上に形成する(図5(A))。その後、第1層目の配線パターン層3が転写形成された基板2上に、第2層目の配線パターン層用の転写用原版20を用いて第1層目の配線パターン層に対する位置合わせを行ったうえで同様に配線パターン層の転写を行い、導電性層4aと絶縁樹脂層4bを有する第2層目の配線パターン層4を形成する(図5(B))。さらに、第1層目の配線パターン層3及び第2層目の配線パターン層4が転写形成された基板2上に、第3層目の配線パターン層用の転写用原版30を用いて同様に位置合わせを行って配線パターン層の転写を行い、導電性層5aと絶縁樹脂層5bを有する第3層目の配線パターン層5を形成する(図5(C))。
【0088】
上述のように、各配線パターン層3,4,5の積層は、配線パターン層用の転写用原版10,20,30の配線パターン層13,23,33を基板上に順次転写することにより行われるため、多層配線板1は各配線パターン層3,4,5からなる、いわゆる重ね刷り型の構造である。
【0089】
尚、上述の例では、配線パターン層用の転写用原版10,20,30は、フォトレジストからなる絶縁層と導電性層と、この導電性層上に形成された粘着性あるいは接着性の絶縁樹脂層とからなっているが、第1層目の配線パターン層用の転写用原版10については、絶縁樹脂層15が形成されていないものでもよい。この場合、予め基板2上に絶縁性の粘着剤層あるいは接着剤層を設けておけば、第1層目の配線パターン層を基板2上に転写することができる。
【0090】
次に本発明にかかる多層配線板の各配線パターン層の交差部あるいは近接部における接続について説明する。
図6は、多層配線板1を構成する配線パターン層3と配線パターン層4との交差部を示す斜視図である。図6に示されるように、各配線パターン層の導電性層は部分的に常に裸出されたものとなり、交差部では、配線パターン層3と配線パターン層4との間の絶縁は上層である配線パターン層4を構成する絶縁樹脂層4bにより保たれている。そして、各配線パターン層の導電性層は部分的に常に裸出されているため、配線パターン層の交差部、あるいは、図7に示されるように各配線パターン層が相互に近接する部位(近接部、図示例では配線パターン層3と配線パターン層4とが近接している)における各配線パターン層相互の接続を容易に行うことができる。
【0091】
上記のような各配線パターン層の交差部あるいは近接部における接続としては、(1)リフトオフ法、(2)印刷法、(3)ディスペンス法、(4)超微粒子吹付け法、(5)レーザー描画法、(6)選択無電解メッキ法、(7)選択蒸着法、(8)溶接接合法、(9)ワイヤーボンディング法、(10)ワイヤーボンディング装置を用いた1ショット法、(11)レーザーメッキ法、(12)誘電体と半田メッキとの積層体の一括転写法、(13)金属塊挿入法、(14)無電解メッキ法等が挙げられる。
【0092】
なお、交差部の接続では、可能である範囲において図8に示されるように交差部の一部に接合部51を形成して配線パターン層3の導電性層3aと配線パターン層4の導電性層4aとを接続してもよく、あるいは図9に示されるように、配線パターン層3と配線パターン層4との交差部を覆うような接合部52を形成してもよい。また、近接部における接続においても、図10に示されるように近接部の一部に跨がるように接合部61を形成して配線パターン層3の導電性層3aと配線パターン層4の導電性層4aとを接続してもよく、あるいは図11に示されるように、配線パターン層3と配線パターン層4との近接部を覆うような接合部62を形成してもよい。
【0093】
本発明の多層配線板は、上述のような接続方式を用いることにより、スルーホールの形成箇所に拘束されずに任意の箇所で各配線パターン層間の接続ができるため、多層配線板を作製した後の回路設計の変更の自由度が、従来の多層配線板に比べて大きいものである。
【0094】
尚、上記の例では多層配線板1は3層構成であるが、本発明の多層配線板の製造方法は、同様の積層転写を繰り返し行うことにより所望の数の配線パターン層を備えた多層配線板を製造することができる。
【0095】
また、本発明の多層配線板は、例えば、上記の3層構造の多層配線板1を、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグと一緒に加圧積層して、より多層化を図ったものとすることができる。
【0096】
さらに、2層構造の本発明の多層配線板は、従来の両面プリント配線板の問題点、すなわち、両面プリント配線板の穴形成のためのドリル加工の精度から生じる高密度化における問題を解決することができる。これは、上述したように、本発明の多層配線板では、各配線パターン層の導電性層が部分的に常に裸出しており、スルーホールを形成することなく配線パターン層の交差部、あるいは、近接部における各配線パターン層相互の接続を容易に行うことができるからである。
【0097】
【実施例】
以下、本発明を製造例、作製例等として示される実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に記載のない場合の「部」及び「%」は重量規準である。
【0098】
粘着性電着塗料組成物の製造
製造例1
(1)第1級水酸基含有カチオン性樹脂溶液(A−1)の製造
EHPE3150(*1)155部、ジエタノールアミン70部及び予めエポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル475部とビスフェノールA285部とジエタノールアミン53部とカルビトール80部とを混合し130℃で3時間保持して反応させてなる反応生成物全量からなる混合物を160℃で5時間反応後、メチルプロパノール692部の加え、固形分含有率60%、アミン価63、第1級水酸基当量443のカチオン性樹脂溶液(A−1)を得た。
(*1)EHPE3150:ダイセル化学工業(株)製、下記式で示される繰返し単位を有するエポキシ当量約175〜195のエポキシ樹脂。
【0099】
【化17】
Figure 0003865425
【0100】
(2)エマルジョンの製造
上記60%カチオン性樹脂溶液(A−1)100部に、エチルセロソルブに溶解した固形分80%EHPE−3150〔硬化剤(B−1)〕37.5部とギ酸0.7部を加え、十分に撹拌しながら脱イオン水312部を加えて固形分20%、pH6.5、エマルジョン粒子径0.10μmのエマルジョン▲1▼を得た。このエマルジョン▲1▼は30℃で1カ月静置してもエマルジョンの分離、沈降、粒子径の増大などは認められなかった。
【0101】
(3)カチオン電着塗料の製造
上記カチオン性樹脂溶液(A−1)100部にチタン白50部、クレー50部、塩基性ケイ酸鉛30部、ギ酸3.0部、脱イオン水75部を加え練り合わせた後、ガラスビーズ800部を加えて、ペイントシェーカーで分散し、ガラスビーズを除去して固形分62%の顔料分散物▲1▼を得た。
上記エマルジョン▲1▼1,000部と上記顔料分散物▲1▼90部とを混合し、脱イオン水188部で希釈して、pH6.2、固形分20%の粘着性カチオン電着塗料浴−1を得た。
【0102】
製造例2
(1)硬化剤溶液(B−2)の製造
3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート33.4部にアゾビスジメチルバレロニトリル2部を溶解したものを、100℃に加熱したメチルイソブチルケトン10部とブチルセロソルブ10部との混合溶剤に2時間かけて滴下し、1時間熟成後、125℃に昇温してさらに1時間熟成し、固形分60%、エポキシ当量196の硬化剤溶液(B−2)を得た。
【0103】
(2)エマルジョンの製造
前記固形分60%のカチオン性樹脂溶液(A−1)100部と上記硬化剤溶液(B−2)50部、38%オクチル酸鉛1.3部とギ酸0.53部を加え、十分に撹拌しながら脱イオン水298部を加えて、固形分20%、pH6.6、エマルジョン粒子径0.04μmのエマルジョン▲2▼を得た。このものは30℃で1カ月静置してもエマルジョンの分離、沈降、粒子径の増大などは認められなかった。
【0104】
(3)カチオン電着塗料の製造
前記固形分60%のカチオン性樹脂溶液(A−1)100部とチタン白30部、クレー60部、トリポリリン酸鉛5部、酸化鉛10部、ギ酸3部、脱イオン水70部を練り合わせた後ガラスビーズ1,000部を加え、ペイントシェーカーで分散し、固形分59%の顔料分散物▲2▼を得た。
上記エマルジョン▲2▼1,000部と顔料分散物▲2▼70部とを混合し、脱イオン水136部で希釈して固形分20%、pH6.4の電着塗料浴−2を得た。
【0105】
製造例3
(1)硬化剤溶液(B−3)の製造
デュラネートTPA−100〔旭化成(株)製商品名、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化物、イソシアネート当量185〕14.5部と3,4−エポキシテトラヒドロベンジルアルコール〔ダイセル化学工業(株)製、エポキシ当量135〕10.5部を120℃で3時間反応させ、イソシアネート価が0であることを確認してからメチルプロパノール6.3部を加えて、固形分80%の硬化剤溶液(B−3)を得た。この硬化剤樹脂は数平均分子量970、エポキシ当量325を有していた。
【0106】
(2)エマルジョンの製造
前記固形分60%のカチオン性樹脂溶液(A−1)100部、上記硬化剤溶液(B−3)37.5部及びギ酸0.7部を混合し、十分に撹拌しながら脱イオン水312部を加えて固形分20%、pH6.6、エマルジョン粒子径0.09μmのエマルジョン▲3▼を得た。このエマルジョン▲3▼は30℃で1カ月静置してもエマルジョンの分離、沈降、粒子径の増大などは認められなかった。
【0107】
(3)カチオン電着塗料の製造
上記カチオン性樹脂溶液(A−1)100部にチタン白10部、クレー10部、塩基性ケイ酸鉛2部、ギ酸3部、脱イオン水39部を混合し、分散して固形分約50%の顔料分散物▲3▼を得た。
上記エマルジョン▲3▼1,000部と顔料分散物▲3▼60部とを混合し、脱イオン水90部で希釈して固形分20%、pH6.4の電着塗料浴−3を得た。
【0108】
(1)絶縁樹脂層用電着液Aの調製
前記製造例1で得た電着塗料浴−1を絶縁樹脂層用電着液Aとして使用した。
(2)絶縁樹脂層用電着液Bの調製
前記製造例2で得た電着塗料浴−2を絶縁樹脂層用電着液Bとして使用した。
(3)絶縁樹脂層用電着液Cの調製
前記製造例3で得た電着塗料浴−3を絶縁樹脂層用電着液Cとして使用した。
【0109】
(4)転写用原版における導電性層の形成(図2(C)対応)
導電性基板として、表面を研磨した厚さ0.2mmのステンレス板を準備し、このステンレス板上に市販のメッキ用フォトレジスト(東京応化工業(株)製、PMER P−AR900)を厚さ20μmに塗布乾燥し、配線パターンが形成されている3種のフォトマスクを用いてそれぞれ密着露光を行った後、現像・水洗・乾燥し、さらに熱硬化を行って絶縁層を備えた転写用原版(3種)を作製した。
【0110】
上記の転写用原版と白金電極を対向させて下記の組成のピロ燐酸銅メッキ浴(pH=8,液温=55℃)中に浸漬し、直流電流の陽極に白金電極を陰極に上記の転写基板を接続し、電流密度10A/dm2 で5分間の通電を行い、フォトレジストで被覆されていない導電性基板の裸出部に厚さ10μmの銅メッキ膜を形成し導電性層とした。この導電性層形成を3種の転写用原版について行った。
【0111】
(ピロ燐酸銅メッキ浴の組成)
ピロ燐酸銅 … 94g/l
ピロ燐酸銅カリウム … 340g/l
アンモニア水 … 3cc/l
(5)転写用原版における絶縁樹脂層Aの形成(図2(D)対応)
上記(4)において導電性層を形成した3種の転写用原版の各々と白金電極とを対向させて上記の(1)で調製した電着液A中に浸漬し、直流電源の陰極に転写用原版を陽極に白金電極をそれぞれ接続し、50Vの電圧で1分間の電着を行い、これを180℃、30分間で乾燥・熱処理して、導電性層上に厚さ15μmの粘着性を有する絶縁樹脂層Aを形成して3種の配線パターン層用の転写用原版A1,A2,A3とした。
(6)転写用原版における絶縁樹脂層Bの形成(図2(D)対応)
上記(4)において導電性層を形成した3種の転写用原版の各々と白金電極とを対向させて上記の(2)で調製した電着液B中に浸漬し、直流電源の陰極に転写用原版を陽極に白金電極をそれぞれ接続し、20Vの電圧で30秒間の電着を行い、これを120℃、10分間で乾燥・熱処理して、導電性層上に厚さ15μmの粘着性を有する絶縁樹脂層Bを形成して3種の配線パターン層用の転写用原版B1,B2,B3とした。
(7)転写用原版における絶縁樹脂層Cの形成(図2(D)対応)
上記(4)において導電性層を形成した3種の転写用原版の各々と白金電極とを対向させて上記の(3)で調製した電着液C中に浸漬し、直流電源の陰極に転写用原版を陽極に白金電極をそれぞれ接続し、20Vの電圧で2秒間の電着を行い、これをN,N−ジメチルアセトアミド50重量%含有した水溶液で洗浄して常温乾燥させた後、150℃、1時間の熱処理を行って、導電性層上に厚さ10μmの絶縁樹脂層Cを形成して3種の配線パターン層用の転写用原版C1,C2,C3とした。
(8)多層配線板の作製1(図5対応)
上記の(5)において作製した3種の配線パターン層用の転写用原版A1,A2,A3を、この順序で厚さ50μmのポリイミドフィルム基板上に下記の条件で圧着して導電性層と絶縁樹脂層Aからなる3種の配線パターン層をフィルム基板上に転写して多層配線板を作製した。
【0112】
(圧着条件)
圧 力 : 20kgf/cm2
温 度 : 180℃
(9)多層配線板の作製2(図5対応)
上記の(6)において作製した3種の配線パターン層用の転写用原版B1,B2,B3を、この順序で厚さ50μmのポリイミドフィルム基板上に下記の条件で圧着して導電性層と絶縁樹脂層Bからなる3種の配線パターン層をフィルム基板上に転写して多層配線板を作製した。
【0113】
(圧着条件)
圧 力 : 50kgf/cm2
温 度 : 200℃
(10)多層配線板の作製3(図5対応)
上記の(7)において作製した3種の配線パターン層用の転写用原版C1,C2,C3を、この順序で厚さ50μmのポリイミドフィルム基板上に下記の条件で圧着して導電性層と絶縁樹脂層Cからなる3種の配線パターン層をフィルム基板上に転写し、その後、フィルム基板に230℃、1時間の熱処理を施し、転写された絶縁樹脂層Cを硬化させて多層配線板を作製した。
【0114】
(圧着条件)
圧 力 : 40kgf/cm2
温 度 : 200℃
【0115】
【発明の効果】
本発明によれば、パターンを構成する絶縁樹脂層が、特定の転写用粘着性電着塗料組成物より形成される粘着性塗膜層より構成されているため、硬化時における粘着性塗膜層の収縮及び低分子揮散成分の蒸発に伴うピンホールの発生による微細パターンの変形、形成した回路の短絡などのパターン欠陥を生じることなく、歩留まりよく高精細なパターンを有する多層配線板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層配線板の一例を示す概略断面図である。
【図2】(A)〜(D)は、第1層目の配線パターン層用の転写用原版の製造工程を説明するための概略断面図である。
【図3】第2層目の配線パターン層用の転写用原版の概略断面図である。
【図4】第3層目の配線パターン層用の転写用原版の概略断面図である。
【図5】(A)〜(C)は、基板上に、第1層目ないし第3層目の配線パターン層を順次積層する工程を説明するための概略断面図である。
【図6】多層配線板を構成する2種の配線パターン層の交差部を示す斜視図である。
【図7】各配線パターン層が交互に近接する部位における各配線パターン層相互の接続を説明するための斜視図である。
【図8】接合部により相互に接続された配線パターン層の状態の一態様を示す斜視図である。
【図9】接合部により相互に接続された配線パターン層の状態の他の一態様を示す斜視図である。
【図10】接合部により相互に接続された配線パターン層の状態の他の一態様を示す斜視図である。
【図11】接合部により相互に接続された配線パターン層の状態の他の一態様を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 多層配線板
2 基板
3,4,5 配線パターン層
3a,4a,5a 導電性層
3b,4b,5b 絶縁樹脂層
10,20,30 転写用原版
11,21,31 導電性基板
13,23,33 配線パターン層
14 導電性層
15 絶縁樹脂層
12′ 絶縁層
51,52,61,62 接合部

Claims (9)

  1. 基板、該基板上に順次転写された複数の配線パターン層を備え、該配線パターン層は導電性層と該導電性層の下部に形成された絶縁樹脂層を有するとともに、該絶縁樹脂層によって前記基板あるいは下層の配線パターン層に固着されてなる多層配線板において、該多層配線板が導電性基板の上に、導電性層と該導電性層上に積層された該絶縁樹脂層とを有する配線パターン層を設けた転写用原版を複数個作製し、次に、多層配線板用の基板の一方の面に前記転写用原版を圧着し、前記導電性基板を剥離することにより前記配線パターン層を転写する操作を順次繰り返し、前記基板上に複数の前記配線パターン層を積層することにより形成されたものであり、該絶縁樹脂層がポリエポキシ樹脂とカチオン化剤とを反応せしめて得られる反応生成物である水酸基及びイオン性基を含有する樹脂(A)と、脂環式骨格及び/又は有橋脂環式骨格にエポキシ基が結合してなるエポキシ基含有官能基を1分子あたり平均2個以上有するエポキシ基含有硬化剤(B)とを主成分として含有する熱硬化性転写用粘着性電着塗料組成物より形成されていることを特徴とする前記多層配線板。
  2. 該電着塗料組成物が、さらに鉛化合物、ジルコニウム化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、マンガン化合物、銅化合物、亜鉛化合物、鉄化合物、クロム化合物、ニッケル化合物から選ばれる1種もしくは2種以上の金属化合物である触媒(C)を主成分として含有する請求項1記載の多層配線板。
  3. 硬化剤(B)におけるエポキシ基含有官能基が、下記式[1]〜[4]
    Figure 0003865425
    Figure 0003865425
    Figure 0003865425
    Figure 0003865425
    (式中、R1、R2、R3、R5、R6、R7、R10及びR11は、それぞれH、CH3又はC25を表わし、R4、R8及びR9は、それぞれH又はCH3を表わす。)
    で示されるものから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の多層配線板。
  4. 樹脂(A)におけるイオン性基がカチオン性基であり、カチオン性基の含有量が、KOH(mg/g固形分)換算で3〜200、水酸基当量が20〜5,000であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の多層配線板。
  5. 前記配線パターン層が相互に交差する部位および/または近接する部位を有し、該交差部では上下の配線パターン層間の絶縁は上層の配線パターン層を構成する前記絶縁樹脂層により保たれることを特徴とする請求項1又は2記載の多層配線板。
  6. 前記交差部および/または前記近接部の必要箇所において配線パターン層相互間の接続がなされていることを特徴とする請求項に記載の多層配線板。
  7. 導電性基板の上に、導電性層と該導電性層上に積層された請求項1
    は2記載の絶縁樹脂層とを有する配線パターン層を設けた転写用原版を複数個作製し、次に、多層配線板用の基板の一方の面に前記転写用原版を圧着し、前記導電性基板を剥離することにより前記配線パターン層を転写する操作を順次繰り返し、前記基板上に複数の前記配線パターン層を積層することを特徴とする多層配線板の製造方法。
  8. 少なくとも表面が導電性の導電性基板と、該導電性基板に形成された所望パターンの絶縁層と、該導電性基板の導電性面露出部に形成された導電性層と該導電性層上に形成された請求項1又は2記載の絶縁樹脂層とを有することを特徴とする多層配線板の製造に用いる転写用原版。
  9. 少なくとも表面が導電性の導電性基板上に、所望パターンで絶縁層を形成し、露出している前記導電性基板表面にメッキ法により導電性層を形成し、該導電性層上に電着法により請求項1又は2記載の絶縁樹脂層を形成することを特徴とする多層配線板の製造に用いる転写用原版の製造方法。
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