JP3863197B2 - 車両のサスペンション制御装置、サスペンションのばね定数設定方法、および減衰定数設定方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、低速から高速まで良好な乗り心地や操縦性を提供する車両のサスペンション制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術として、車両のサスペンションのばね定数を車速に基づいて変えるものがある(例えば、特開昭63−46911号公報)。この従来技術は、車両の速度が所定値以上の高速になると、ばね定数を通常値よりも低ばね定数にするように制御するものであり、車両の走行中に発生する空気の流れによって車両に作用する力(以後は空力と記す。)の影響を考慮していない。
また、別の従来技術として、車両のサスペンションの減衰定数を車速に基づいて変えるものがある(例えば、特開昭60−71315号公報)。この従来技術は、車両の速度に応じて、減衰定数を通常値よりも高速時に高い減衰定数、低速時に低い減衰定数にそれぞれ設定するものであり、車両の走行中に発生する空力の影響を考慮していない。
空力の車両運動に与える影響は、車両の走行速度が高速になるにつれて大きくなるため、車両の乗り心地や応答性および安定性の向上のためには、この空力の寄与をばね定数の変化量または減衰定数の変化量の少なくとも一方の算定に導入する必要がある。
しかし、従来、空力が車両運動にどのような影響を与えるかについては詳しく知られておらず、本発明者等の実験解析結果によって今回初めて解明されたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、空力の車両運動に及ぼす影響を考慮してサスペンションのばね定数または減衰定数の少なくとも一方を制御し、車両の乗り心地や応答性および安定性を向上させることにある。
また本発明の第2の目的は、従来の実車試験による経験的なサスペンションのばね定数の設定方法を改善し、空力弾性力学を適用することにより、車両に加わる空力と弾性要素であるサスペンションのばね定数を連成させたサスペンションのばね定数の設定方法を提供することにある。
さらに本発明の第3の目的は、従来の実車試験による経験的なサスペンションの減衰定数の設定方法を改善し、空力弾性力学を適用することにより、車両に加わる空力と弾性要素であるサスペンションの減衰定数を連成させたサスペンションの減衰定数の設定方法を提供することにある。
【0004】
(本発明の着眼点)
車両が走行している時の車両の姿勢の変化に伴う空力特性の変化について、本発明者等が行なった実験の解析結果として、図2に車両のヒービング運動(車両の上下方向の運動)、図3に車両のピッチング運動(車両の重心まわりの揺動運動)を示す。
なお、車両の運動において、ヒービング運動、ピッチング運動が主である走行状態、例えば直進状態における乗り心地や操縦性を向上させる目的では、ヒービング運動とピッチング運動の応答特性を改善することが最も基本的かつ効率的であり、さらに、ヒービング運動とピッチング運動を対象にする場合では、車両の前後輪を含んだ1/2車両モデルで考えれば充分であるので、このヒービング運動とピッチング運動に基づいた1/2車両モデルに基づいた定式化や運動の評価を行う。
図2及び図3は、揚力係数CL とピッチングモーメント係数CPMの車両の高さ(ヒービング変位量)及びピッチング角変位量による変化を示したものである。
【0005】
図2及び図3で表す揚力係数やピッチングモーメント係数は、車両の実用的な姿勢の変化域において、ヒービング変位量及びピッチング角変位量に対してほぼ比例する関係となり、その勾配は直線となることがわかる。
本発明は、このような空力特性値の変化が車両の実用的な姿勢の変化域において、ほぼヒービング変位量やピッチング角変位量に対して比例するという性質を利用して、サスペンションのばね定数または減衰定数の少なくとも一方を最適な値に調整するものである。
【0006】
すなわち、ヒービング変位量やピッチング角変位量に対してほぼ比例した空力の作用がなされるということは、車両に作用する空力は車両の姿勢の変化量に対して比例した力を発生し、さらに、車両の姿勢の変化速度にも比例することになる。
具体的には、車両はサスペンションにばね要素や減衰要素を有しており、空力はサスペンションのばね定数や減衰定数を見かけ上変化させ、車両の乗り心地や操縦性に影響を与えていることに、本発明者等は着眼した。
また従来、車両に加わる空力は車両の走行速度や姿勢によって変化するため、車両の運動モデルに組み込む際、多くの仮定や条件を必要とし複雑化するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明者らは、車両の姿勢変化に対する空力を空力微係数で表すことによって、線形モデル化し、車両の外乱に対する収束性を一般的な粘性減衰系の振動問題と同様に扱い得ることに着眼した。
【0008】
本発明は、車両のサスペンション要素のうちばね要素に着目し、空力の影響をばね要素の変化として求め、可変ばね機構によって空力の影響によるばね定数の変化を補償するものである。
また本発明は、車両のサスペンション要素のうち減衰要素に着目し、空力の影響を減衰要素の変化として求め、可変減衰機構によって空力の影響による減衰定数の変化を補償するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1発明の車両のサスペンション制御装置は、車両の速度を検出する車両速度検出手段と、該車両速度検出手段によって検出された車両速度と、前記車両の形状によって決まる揚力係数及びピッチングモーメント係数のヒービング変位量及びピッチング角変位量の少なくとも一つに対する変化率である空力微係数とに基づき、前記車両速度の増加あるいは減少による車両のサスペンションの見かけのばね定数の変化量を前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮しない車両の運動方程式におけるサスペンションの見かけのばね定数の変化として演算するばね定数変化量演算手段あるいは前記車両速度の増加あるいは減少による車両のサスペンションの見かけの減衰定数の変化量を前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮しない車両の運動方程式におけるサスペンションの見かけの減衰定数の変化として演算する減衰定数変化量演算手段の少なくとも一方と、該ばね定数変化量に基づき車両のサスペンションのばね定数を所定の値に可変修正するばね定数可変修正手段あるいは該減衰定数変化量に基づき車両のサスペンションの減衰定数を所定の値に可変修正する減衰定数可変修正手段の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0010】
【作用】
車両速度検出手段によって車両の速度を検出し、ばね定数変化量演算手段において該車両速度の増加あるいは減少による車両のサスペンションの見かけのばね定数の変化量あるいは減衰定数変化量演算手段において該車両速度の増加あるいは減少による車両のサスペンションの見かけの減衰定数の変化量の少なくとも一方を演算する。
そして、ばね定数可変修正手段において前記演算された見かけのばね定数の変化量に基づきサスペンションのばね定数、あるいは減衰定数可変修正手段において前記演算された見かけの変化量に基づきサスペンションの減衰定数の少なくとも一方を修正し、車両の乗り心地や応答性および安定性を向上させる適正なばね定数あるいは減衰定数の少なくとも一方を設定する。
【0011】
【発明の効果】
車両の走行速度に応じて、空力の影響を考慮しつつ、サスペンションのばね定数あるいは減衰定数の少なくとも一方を修正し、車両の乗り心地や応答性および安定性を向上することができる。
【0012】
(第2発明の構成)
本発明の第2発明のサスペンションのばね定数設定方法は、車両の揚力係数及びピッチングモーメント係数に対するヒービングによる影響を表すヒービング方向の空力微係数、あるいは車両の揚力係数及びピッチングモーメント係数に対するピッチングによる影響を表すピッチング方向の空力微係数の少なくとも一方を測定する工程と、前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮した車両の運動方程式におけるヒービング方向の空力の変化、あるいはピッチング方向の空力の変化の少なくとも一方を、前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮しない車両の運動方程式におけるサスペンションの見かけのばね定数の変化として解く工程と、該見かけのばね定数の変化に基づきサスペンションのばね定数を設定する工程を有することを特徴とする。
【0013】
(第2発明の作用・効果)
次に、本発明の第2発明のサスペンションのばね定数設定方法の作用・効果について説明する。
本発明の第2発明においては、まず車両の揚力係数及びピッチングモーメント係数に対するヒービングによる影響を表すヒービング方向の空力微係数、あるいは車両の揚力係数及びピッチングモーメント係数に対するピッチングによる影響を表すピッチング方向の空力微係数の少なくとも一方を測定する。
次に、前記ヒービング方向の空力微係数あるいは前記ピッチング方向の空力微係数の少なくとも一方を考慮した車両の運動方程式をたて、ヒービング方向の空力の変化あるいはピッチング方向の空力の変化の少なくとも一方を車両の運動方程式中に含める。
【0014】
次に、前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮しない車両の運動方程式をたて、該空力微係数を考慮しない車両の運動方程式と前記空力微係数を考慮した車両の運動方程式とが等価であるとして、前記空力微係数を考慮した車両の運動方程式中のヒービング方向の空力の変化あるいはピッチング方向の空力の変化の少なくとも一方を前記空力微係数を考慮しない車両の運動方程式中のサスペンションの見かけのばね定数の変化として解くことによって、空力微係数の変化をサスペンションの見かけのばね定数の変化に見立てることができる。
更に、該見かけのばね定数の変化に基づきサスペンションのばね定数を設定することによって、空力の影響を考慮したサスペンションのばね定数の設定が可能になる。
【0015】
このようにして設定されたばね定数によって、車両の走行速度に応じて、空力の影響を考慮しつつ、サスペンションのばね定数を修正し、車両の乗り心地や応答性および安定性を向上することができる。
【0016】
(第3発明の構成)
本発明の第3発明のサスペンションの減衰定数設定方法は、車両の揚力係数及びピッチングモーメント係数に対するヒービングによる影響を表すヒービング方向の空力微係数、あるいは車両の揚力係数及びピッチングモーメント係数に対するピッチングによる影響を表すピッチング方向の空力微係数の少なくとも一方を測定する工程と、前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮した車両の運動方程式におけるヒービング方向の空力の変化、あるいはピッチング方向の空力の変化の少なくとも一方を、前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮しない車両の運動方程式におけるサスペンションの見かけの減衰定数の変化として解く工程と、該見かけの減衰定数の変化に基づきサスペンションの減衰定数を設定する工程を有することを特徴とする。
【0017】
(第3発明の作用・効果)
次に、本発明の第3発明のサスペンションの減衰定数設定方法の作用・効果について説明する。
本発明の第3発明においては、まず車両の揚力係数及びピッチングモーメント係数に対するヒービングによる影響を表すヒービング方向の空力微係数、あるいは車両の揚力係数及びピッチングモーメント係数に対するピッチングによる影響を表すピッチング方向の空力微係数の少なくとも一方を測定する。
次に、前記ヒービング方向の空力微係数あるいは前記ピッチング方向の空力微係数の少なくとも一方を考慮した車両の運動方程式をたて、ヒービング方向の空力の変化あるいはピッチング方向の空力の変化の少なくとも一方を車両の運動方程式中に含める。
【0018】
次に、前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮しない車両の運動方程式をたて、該空力微係数を考慮しない車両の運動方程式と前記空力微係数を考慮した車両の運動方程式とが等価であるとして、前記空力微係数を考慮した車両の運動方程式中のヒービング方向の空力の変化あるいはピッチング方向の空力の変化の少なくとも一方を前記空力微係数を考慮しない車両の運動方程式中のサスペンションの見かけの減衰定数の変化の変化として解くことによって、空力微係数の変化をサスペンションの見かけの減衰定数の変化に見立てることができる。
更に、該見かけの減衰定数の変化に基づきサスペンションの減衰定数を設定することによって、空力の影響を考慮したサスペンションの減衰定数の設定の設定が可能になる。
【0019】
このようにして設定された減衰定数によって、車両の走行速度に応じて、空力の影響を考慮しつつ、サスペンションの減衰定数を修正し、車両の乗り心地や応答性および安定性を向上することができる。
【0020】
【本発明の実施態様】
本発明の実施態様について以下に説明する。
(1) 前記第1発明において、前記見かけのばね定数の変化量は、車両の姿勢変化量による空力の変化に比例することを特徴とする。
(2) (1)において、前記空力は、車両速度と車両の形状によって決まる空力特性とから決まることを特徴とする。
(3) (2)において、前記空力特性は、揚力係数及びピッチングモーメント係数のヒービング変位量及びピッチング角変位量の少なくとも一つに対する変化率である空力微係数で表されることを特徴とする。
(4) 前記第1発明において、前記見かけのばね定数の変化量は、車両速度の二乗と比例定数とから決まり、車両の姿勢の時間的変化が車両速度が変わってもほぼ同様となることを特徴とする。
(5) (4)において、前記車両の車高が1.7m未満の乗用車である場合、前記比例定数は、前輪側をαf、後輪側をαrとし、単位をN・S2/m3とす
ると、
αf =0.5〜1.4、αr =0.2〜0.5
(6) (4)において、前記車両の車高が1.7m以上の乗用車である場合、前記比例定数は、前輪側をβf、後輪側をβrとし、単位をN・S2/m3とす
ると、
βf =0.2〜1.7、βr =−1.2〜−2.7
(7) (4)において、前記見かけのばね定数の変化量は、車両速度の関数として逐次演算することを特徴とする。
(8) (4)において、前記見かけのばね定数の変化量は、代表車両速度における修正量をマップ形式で予め記憶していることを特徴とする。
(9) (4)において、前記ばね定数可変修正手段は、一端をサスペンションアームに取り付け他端を車体に取り付けられたピストンロッドと、該ピストンロッドの伸縮によって容積変化を生じるエアチャンバと、該エアチャンバーに空気を供給する供給源と、前記エアチャンバーに空気を供給あるいは排出してばね定数を変化させるバルブ手段と、該バルブ手段の開閉を制御する制御手段とからなることを特徴とする。
(10) 前記第1発明において、前記見かけの減衰定数の変化量は、車両の姿勢変化速度による空力の変化に比例することを特徴とする。
【0021】
(11) (10)において、前記空力は、車両速度と車両の形状によって決まる空力特性とから決まることを特徴とする。
(12) (11)において、前記空力特性は、揚力係数及びピッチングモーメント係数のヒービング変位量及びピッチング角変位量の少なくとも一つに対する比例定数である空力微係数で表されることを特徴とする。
(13) 前記第1発明において、前記見かけの減衰定数の変化量は、車両速度と比例定数とから決まり、姿勢の時間的変化が車両速度が変わってもほぼ同様となることを特徴とする。
(14) (13)において、前記車両の車高が1.7m未満の乗用車である場合、前記比例定数は、前輪側をγf、後輪側をγrとし、単位をN・S2/m2
とすると、
γf =−1.8〜−2.5、γr =−0.1〜−0.5
(15) (14)において、前記車両の車高が1.7m以上の乗用車である場合、前記比例定数は、前輪側をγf、後輪側をγrとし、単位をN・S2/m2
とすると、
γf =−0.5〜−1.9、γr =1.0〜3.0
(16) (13)において、前記見かけの減衰定数の変化量は、車両速度の関数として逐次演算することを特徴とする。
(17) (13)において、前記見かけの減衰定数の変化量は、代表車両速度における修正量をマップ形式で予め記憶していることを特徴とする。
(18) (13)において、前記減衰定数可変修正手段は、一端をサスペンションアームに取り付け他端を車体に取り付けられたピストンロッドと、該ピストンロッドの伸縮速度に応じて減衰力を発生するダンパー手段と該ダンパー手段に内蔵された絞り孔の径を変え、該絞り孔を通過するダンパーオイルの流動抵抗を調整することによって減衰定数を変化させる可変絞り手段と、該可変絞り手段の絞り孔の径を制御する制御手段とからなることを特徴とする。
(19) 前記第1発明において、車体のヒービング運動の変位、速度、あるいは加速度、またはピッチング運動の角変位、角速度、角加速度、あるいはばね下の変位、速度、加速度、あるいはばね機構にかかる力、減衰機構にかかる力のうちの少なくとも一つに基づいて外乱を測定する外乱センサーを更に備え、
前記ばね定数可変修正手段あるいは前記減衰定数可変修正手段は、前記外乱が所定の値を越えた場合に所定の時間経過後に、見かけのばね定数あるいは見かけの減衰定数を所定の値に可変修正することを特徴とする。
(20) (19)において、前記所定の時間が、0.2秒乃至0.3秒であることを特徴とする。
【0022】
(21) 前記第2発明において、前記車両は実車であることを特徴とする。
(22) 前記第2発明において、前記車両は模型であることを特徴とする。
(23) 前記第2発明において、前記空力は、車両速度と車両の形状によって決まる空力特性とから決まることを特徴とする。
(24) (23)において、前記空力特性は、揚力係数及びピッチングモーメント係数のヒービング変位量及びピッチング角変位量の少なくとも一つに対する変化率である空力微係数で表されることを特徴とする。
(25) (24)において、前記変化率は一定値であることを特徴とする。
(26) 前記第2発明において、前記空力の変化を考慮した車両の運動方程式と前記空力の変化を考慮しない車両の運動方程式とが等価であるとして解くことを特徴とする。
(27) (26)において、前記運動方程式が等価とは、運動方程式によって表現される車両の姿勢変化量の過渡応答特性が等しいことであることを特徴とする。
(28) (27)において、車両の姿勢変化量の過渡応答特性が等しいとは、車両の姿勢変化量の時間的変化がほぼ等しいことであることを特徴とする。
(29) (28)において、車両の姿勢変化量とは、前記ヒービングの変位量あるいは前記ピッチングの角変位量の少なくとも一つであることを特徴とする。(30) 前記第2発明において、前記ヒービングあるいはピッチングによる空力の変化から解を求めることを特徴とする。
(31) 前記第2発明において、前記ヒービング及び前記ピッチングの両方のの空力の変化を対象として最小自乗法によって解を求めることを特徴とする。
【0023】
(32) 前記第3発明において、前記車両は実車であることを特徴とする。
(33) 前記第3発明において、前記車両は模型であることを特徴とする。
(34) 前記第3発明において、前記空力は、車両速度と車両の形状によって決まる空力特性とから決まることを特徴とする。
(35) (34)において、前記空力特性は、揚力係数及びピッチングモーメント係数のヒービング変位量及びピッチング角変位量の少なくとも一つに対する変化率である空力微係数で表されることを特徴とする。
(36) (35)において、前記変化率は一定値であることを特徴とする。
(37) 前記第3発明において、前記空力の変化を考慮した車両の運動方程式と前記空力の変化を考慮しない車両の運動方程式とが等価であるとして解くことを特徴とする。
(38) (37)において、前記運動方程式が等価とは、運動方程式によって表現される車両の姿勢変化量の過渡応答特性が等しいことであることを特徴とする。
(39) (38)において、車両の姿勢変化量の過渡応答特性が等しいとは、車両の姿勢変化量の時間的変化がほぼ等しいことであることを特徴とする。
(40) (39)において、車両の姿勢変化量とは、前記ヒービングの変位量あるいは前記ピッチングの角変位量の少なくとも一つであることを特徴とする。(41) (40)において、前記ピッチングの角変位量が、車両の走行速度、ヒービング速度およびピッチング速度の三つの速度の合成ベクトルの方向に移動していることを考慮して補正されていることを特徴とする。
(42) 前記第3発明において、前記ヒービングあるいはピッチングによる空力の変化から解を求めることを特徴とする。
(43) 前記第3発明において、前記ヒービング及び前記ピッチングの両方のの空力の変化を対象として最小自乗法によって解を求めることを特徴とする。
【0024】
【実施例】
(第1実施例)
本発明の車両のサスペンション制御装置を、サスペンションのばね定数が可変制御できる車両に適用した第1実施例について以下に説明する。
本第1実施例は、図4に示すように、車両速度センサー11と、制御回路21と、駆動回路41、ならびに制御対象である空気ばね機構101とからなる。
車両速度センサー11は、スピードメータ、あるいは車両の対気速度センサー等から成り、対応する電気信号を車両速度信号Uとして出力する。
制御回路21は、車両速度信号Uによって、見かけ上変化するばね定数の値を演算し、見かけのばね定数変化量として出力する。
以下に、制御回路21における見かけのばね定数変化量の演算の内容を示す。図2及び図3で表す揚力係数やピッチングモーメント係数は、実用的な車高を有する車両の実用的な姿勢の変化域において、ヒービング変位量及びピッチング角変位量に対してほぼ比例する関係となり、その勾配は直線となることがわかる。
【0025】
すなわち、空力の作用力は、ヒービング変位量やピッチング角変位量に対してほぼ比例し、サスペンションのストローク量に対して比例した力を発生するばねの作用と等価であるといえる点に着目する。
この点に着目すると、車両の姿勢変化に対する空力の効果は、揚力係数やピッチングモーメント係数のヒービング変位量やピッチング角変位量に対する変化率が、一定の値で表し得ることに単純化され、上述の変化率を空力微係数として、車両の運動方程式に導入することができる。空力微係数を考慮した車両の運動方程式は、次式のようになる。
なお、以下の説明において、変数xの時間微分をx’と記す。
【0026】
FL =(1/2) ρU2 A(CLZz+CL THθ)・・・(1)
FPM=(1/2) ρU2 Aa(CPMZ z+CPMTHθ)・・・(2)
Mw’=−kf xf −cf xf ’−kr xr −cr xr ’+FL ・・・(3)
Ip’=−af (kf xf +cf xf ’)
+ar (kr xr +cr xr ’) +FPM ・・・(4)
【0027】
ここで、
af , ar :車両重心から前輪位置ならびに後輪位置までの長さ[m]
a :ホイールベース(=af +ar )[m]
A :車両の前面投影面積[m2 ]
cf , cr :前後サスペンションの減衰係数[Ns/m]
CLZ :揚力係数のヒービング方向の空力微係数(=∂CL /∂z)
[1/m]
CLTH :揚力係数のピッチング方向の空力微係数(=∂CL /∂θ)
[1/rad]
【0028】
CPMZ :ピッチングモーメント係数のヒービング方向の空力微係数
(=∂CPM/∂z)[1/m]
CPMTH :ピッチングモーメント係数のピッチング方向の空力微係数
(=∂CPM/∂θ)[1/rad]
FL , FPM:ヒービング運動、ならびにピッチング運動方向の外力
[N],[Nm]
I :ピッチング軸周りの慣性モーメント[kgm2 ]
kf , kr :前輪サスペンション、ならびに後輪サスペンションのばね定数
[N/m]
M :車両の質量[kg]
θ :ピッチング角変位量[rad]
p :ピッチング運動の角速度(=θ’)[rad/s]
R :車両の重心位置から車両のボデー先端までの長さ[m]
U :車両速度[m/s]
z :車両重心のヒービング変位量[m]
zf ,zr :前後車軸中心のヒービング変位量[m]
w :ヒービング運動の速度(=z’)[m/s]
xf , xr :前後サスペンションのストローク[m]
xf =z+af θ−zf , xr =z+ar θ−zr
ρ :空気密度[kg/m3 ]
【0029】
式(1) はヒービング運動方向の外力、式(2) はピッチング運動方向の外力であって、それぞれ変位であるzやθに比例した力が生じることを表す。さらに、この力は車両速度の2乗と、車両の形状によって一意に決まる空力微係数CLZ、CLTH 、CPMZ 、CPMTHにも比例する値である。
空力微係数の測定手順は以下のようである。
風洞に供試車両あるいは、模型を搬入あるいは設置し、車両の姿勢を乗員及び積載物が乗せられていない車両を水平面上に置いた基準状態に対して、
ヒービング方向Zとピッチング方向θに規定量の変位を与える。(図2(a)、図3(a))
実車の場合は、車室内ならびにボンネット、エンジンルーム内、すなわち流れに影響しないところに重りを載せることによって基準状態からの変位を得る。
模型の場合は、ホイールの取付位置を変更するか、ワイヤやスティングで取り付けている場合は、ワイヤ長さやスティングの設定角度を調整することで、規定量の変位を得る。
基準状態ならびに規定の変位の状態における空力特性値(CLとCPM)を計測し、変位と空力特性値の関係を図示する。(図2(b)、図3(b))
変位と空力特性値の関係は、通常の走行状態における変位範囲において線形性を有しているので、この線分の傾きとして定義される空力微係数の値を決定する。式(1) から(4) で示した運動方程式を状態方程式の形に書き直し、ヒービング運動とピッチング運動を表すと次式になる。
【0030】
Mw’=(−af kf +ar kr +qACLTH )θ
+(−af cf +ar cr )p
+(−kf −kr +qACLZ)z
+(−cf −cr )w+kf zf +cf wf +kr zr +cr wr
・・・(5)
【0031】
Ip’=(−af 2 kf −ar 2 kr +qAaCPMTH)θ
+(−af 2 cf −ar 2 cr )p
+(−af kf +ar kr +qAaCPMZ )z
+(−af cf +ar cr )w+(af kf )zf
+(af cf )wf −ar kr zr −ar cr wr
・・・(6)
【0032】
ここで、
wf =zf ’、wr =zr ’、q=(1/2) ρU2 ・・・(7)
式(5) と(6) の右辺のそれぞれ第1項と第3項の空力微係数が含まれる項、すなわち、次式が空力によってばね定数が見かけ上変化することを表している。
【0033】
A1 =−af 2 kf −ar 2 kr +qAaCPMTH ・・・(8)
A2 =−af kf +ar kr +qAaCPMZ ・・・(9)
A3 =−af kf +ar kr +qACLTH ・・・(10)
A4 =−kf −kr +qACLZ ・・・(11)
【0034】
本実施例による制御回路21によって、該車両速度の値に基づいたA1 からA4 の値を式(8) から式(11)を用いて演算し、該演算結果と空力微係数を考慮しない車両の運動方程式、すなわち車両速度Uを0とした場合のA1 からA4 の項中のサスペンションのばね定数の変化とが見かけ上等価となるような、見かけのばね定数を算出する。つまり、走行状態の車両の前輪ならびに後輪のサスペンションの見かけのばね定数をkf * ,kr * とすれば、kf * ,kr * は、次式(12)を満たすことになる。
【0035】
【数1】
【0036】
上式の最小自乗解が、車両の前輪ならびに後輪のサスペンションの見かけのばね定数kf * ,kr * であり、実際のばね定数kf ,kr との差、すなわち、見かけのばね定数変化量Δkf =kf −kf * とΔkr =kr −kr * とを出力する。
【0037】
図4においては、本実施例の制御回路21の具体例として、車載のサスペンション用マイクロコンピュータ51で、逐次演算する方法を示しているが、上述のように、ばね定数変化量は車両の速度の関数として表されるので、代表車両速度における修正量をマップ形式で予め記憶させて、車両速度に対しステップ的に修正量を出力する形式でもよい。
駆動回路41は、制御回路21の出力信号に基づいて、サスペンションのばね定数を車両の速度に応じて可変修正するもので、空気ばね機構101を制御する。
【0038】
空気ばね機構101は、空気ばね式懸架装置として従来知られているものであって、下端部を車輪軸部材としてのアーム115に取り付けられたシリンダ部材112と、上端部を車体116に取り付けられたピストンロッド113と、上記シリンダ部材112とピストンロッド113との間に形成されたエアチャンバ114とから成り、車体の上下振動をエアチャンバー114内に封入された空気圧によって弾性支持するようになっており、該エアチャンバー114に空気を供給したり、あるいは排出したりすることで、ばね定数を変化させることが可能になっている。
エアチャンバー114への空気の供給及び排出は、ソレノイドバルブ111及び121で制御され、駆動回路41の出力信号に基づいて可変修正する。
【0039】
ここで、図5に制御回路21によって演算される見かけのばね定数の変化量の一例を示す。本実施例では、次式で表されるような見かけのばね定数変化量と車両速度との関係式に基づいて、ばね定数の可変制御が行われる。
Δkf =αf U2 ・・・(13)
Δkr =αr U2 ・・・(14)
上式において、αf とαr は車両諸元から決まる定数であって、本実施例で想定した普通乗用車クラスの車両の場合は、一例として次の値となる。
αf =0.79、αr =0.44[N・S2/m3]
また、車重のより軽い別の小型乗用車においては
αf =0.74、αr =0.36[N・S2/m3]
となる。
【0040】
以上のように、車両速度の増大あるいは減少にともなって見かけ上変化したサスペンションのばね定数は、見かけのばね定数の変化量を打ち消すようにサスペンションのばね定数を可変修正することによって、低速から高速まで車両速度によらず、乗り心地や操縦性が変化しない車両特性が実現される。
本実施例で示したサスペンション制御装置の効果の一例を、従来技術である図6と比較して図7に示す。
【0041】
図6および図7において(a)は、車両が直進走行中に微小な段差を通過したときの車両の姿勢の変化を時間変化で表したインパルス応答特性であり、(b)は、その時の車両の姿勢変化の過渡応答を周波数領域で表示したものである。
従来技術である図6の制御なしの場合は、(b)に示されるように、車両の走行速度の増加に伴って、過渡応答波形の共振周波数が低下する。このことは、(a)に示されるように、走行時に車両が外乱を受けた時に、高速であるほど角変位量の変化が緩慢になり、運動の収束性が悪化する傾向にあることを意味する。
【0042】
一方、本実施例である図7の制御ありの場合は、(b)に示されるように、共振周波数の低下傾向は改善され、(a)に示されるように、過渡応答の時間変化も車両速度が変わってもほぼ同様な波形を示す。つまり、高速時においても低速時と同程度の外乱に対する収束性が確保されていることがわかる。
【0043】
(第2実施例)
次に、前記第1実施例の車両のサスペンション制御装置において、サスペンションの制御回路21の演算方式を変更した実施例を本発明の第2実施例として、以下に説明する。
なお、本第2実施例は、ヒービング方向の空力微係数の変化は、ピッチング方向の空力微係数の変化に較べ小さいので、ピッチング方向の空力微係数の変化のみを考慮してばね定数変化量を演算することを特徴とする。空力特性や車両モデルに関する説明は、前記第1実施例と同様であり、式(1) から式(11)においてヒービング方向の空力微係数CLZ=0、CPMZ =0となる。
この場合、走行状態の車両の前輪ならびに後輪のサスペンションの見かけのばね定数をkf * ,kr * とすれば、kf * ,kr * は、次式(15)を満たすことになる。
【0044】
【数2】
【0045】
上式の解が、車両の前輪ならびに後輪のサスペンションの見かけのばね定数kf * ,kr * であり、実際のばね定数kf ,kr との差、すなわち、見かけのばね定数変化量Δkf =kf −kf * とΔkr =kr −kr * とを出力する。
ここで、図8に制御回路21によって演算される見かけのばね定数の変化量の一例を示す。本実施例では、次式で表されるような見かけのばね定数変化量と車両速度との関係式に基づいて、ばね定数の可変制御が行われる。
【0046】
Δkf =αf U2 ・・・(16)
Δkr =αr U2 ・・・(17)
【0047】
上式において、αf とαr は車両諸元から決まる定数であって、本実施例で想定した普通乗用車クラスの車両の場合は、一例として次の値となる。
αf =1.2、αr =0.35[N・S2/m3]
また、より車重の軽い小型乗用車においては、
αf =1.3、αr =0.37[N・S2/m3]
となる。
【0048】
以上のように、車両速度の増大あるいは減少にともなって見かけ上変化したサスペンションのばね定数は、見かけのばね定数の変化量を打ち消すようにサスペンションのばね定数を可変修正することによって、低速から高速まで車両速度によらず、乗り心地や操縦性が変化しない車両特性が実現される。
本実施例で示したサスペンション制御装置の効果の一例を、従来技術である図6と比較して図9に示す。
【0049】
図6および図9において(a)は、車両が直進走行中に微小な段差を通過したときの車両の姿勢の変化を時間変化で表したインパルス応答特性であり、(b)は、その時の車両の姿勢変化の過渡応答を周波数領域で表示したものである。
従来技術である図6の制御なしの場合は、(b)に示されるように、車両の走行速度の増加に伴って、過渡応答波形の共振周波数が低下する。このことは、(a)に示されるように、走行時に車両が外乱を受けた時に、高速であるほど角変位量の変化が緩慢になり、運動の収束性が悪化する傾向にあることを意味する。
【0050】
一方、本実施例である図9の制御ありの場合は、(b)に示されるように、共振周波数の低下傾向は改善され、(a)に示されるように、過渡応答の時間変化も車両速度が変わってもほぼ同様な波形を示す。つまり、高速時においても低速時と同程度の外乱に対する収束性が確保されていることがわかる。
以上のように、本第2実施例においても前記第1実施例と同様の効果が得られることが分かる。
【0051】
(第3実施例)
次に、前記第1実施例の車両のサスペンション制御装置において、サスペンションの制御回路21の演算方式を変更し、サスペンションの減衰定数を可変制御できる車両に適用した第3実施例について以下に説明する。
本第3実施例は、図10に示すように、車両速度センサー11と、制御回路21と、駆動回路41、ならびに制御対象である可変ダンパー機構302とからなる。
【0052】
車両速度センサー11は、スピードメータ、あるいは車両の対気速度センサー等から成り、対応する電気信号を車両速度信号Uとして出力する。
制御回路21は、車両速度信号Uによって、見かけ上変化する減衰定数の値を演算し、見かけの減衰定数変化量として出力する。
なお、図10において、サスペンションのばね要素として空気ばね機構101を図示しているが、本第3実施例はばね要素の制御を必要としないため、空気ばね可変機構がない。本第3実施例では空気ばねに代えてコイルばねを用いた構成でも良い。
【0053】
以下に、制御回路21における見かけの減衰定数変化量の演算の内容を示す。図2及び図3で表す揚力係数やピッチングモーメント係数は、実用的な車高を有する車両の実用的な姿勢の変化域において、ヒービング変位量及びピッチング角変位量に対して、ほぼ比例する関係となり、その勾配は直線となることがわかる。
【0054】
車両運動時の姿勢変化を厳密に考えると、車両の先端は車両の走行速度で移動するとともに、車両の上下方向のヒービング速度およびピッチング速度(ピッチング角速度と車両の重心位置から車両先端までの長さとの積)で移動している。つまり、車両先端は大気に対して前記三つの速度の合成ベクトルの方向に移動していることになる。この姿勢変化は、前記第1実施例で示した車両の重心まわりのピッチング角変位量によって表される運動とは独立した運動であり、該ピッチング角変位量はこの姿勢変化を考慮して補正する必要がある。補正したピッチング角変位量は、次式となる。
【0055】
Θ =θ−(z’+Rθ’)/U ・・・(18)
ただし、
Θ :実ピッチング角変位量[rad]
【0056】
この実ピッチング角変位量を用いると、前記第1実施例で示した式(1) のヒービング運動の外力FL 、ならびに式(2) で示したピッチング運動方向の外力FPMは、次式のようになる。
【0057】
FL =(1/2) ρU2 A(CLZz+CLTH Θ) ・・・(19)
FPM=(1/2) ρU2 Aa(CPMZ z+CPMTHΘ) ・・・(20)
【0058】
式(19)はヒービング運動方向の外力、式(20)はピッチング運動方向の外力であって、ヒービング変位量であるzと、式(18)で表される実ピッチング角変位量Θ、すなわちピッチング角変位量、ヒービング変位速度およびピッチング角変位速度にも比例した力が生じていることを表す。さらに、この力は車両速度の2乗と、車両の形状によって一意に決まる空力微係数CL Z 、CL TH、CPMZ 、CPMTHにも比例する値である。
前記第1実施例で示した式(3) 、式(4) 、および式(18)ないし式(20)で示した運動方程式を状態方程式の形に書き直し、ヒービング運動とピッチング運動を表すと次式になる。
【0059】
Mw’=(−af kf +ar kr +qACLTH )θ
+(−af cf +ar cr −qARCLTH )p
+(−kf −kr +qACLZ)z
+(−cf −cr −qACLTH )w
+kf zf +cf wf +kr zr +cr wr
・・・(21)
【0060】
Ip’=(−af 2 kf −ar 2 kr +qAaCPMTH)θ
+(−af 2 cf −ar 2 cr −qAaRCPMTH)p
+(−af kf +ar kr +qAaCPMZ )z
+(−af cf +ar cr −qAaCPMTH)w
+(af kf )zf
+(af cf )wf −ar kr zr −ar cr wr
・・・(22)
【0061】
ここで、
wf =zf ’、wr =zr ’、q=(1/2) ρU2 ・・・(23)
【0062】
式(21)と(22)の右辺のそれぞれ第1項から第4項の空力微係数が含まれる項が空力によって車両の運動特性が変化することを表す。すなわち、車両の姿勢変化を考慮した空力の作用は、サスペンションのストローク量に比例した力を発生するばねの作用、およびサスペンションのストローク変化速度に対して比例した力を発生するダンパーの作用と等価であるといえる。
式(21)および(22)の右辺のそれぞれ第2項と第4項に着目すると、空力によって減衰定数が見かけ上変化することがわかる。
【0063】
なお、式(5) 、(21)および式(6) 、(22)からわかるように、空力の減衰定数への影響を考慮しない前記第1および第2実施例のピッチング角変位量と空力の減衰定数への影響を考慮した本第3実施例の実ピッチング角変位量のどちらを用いても、見かけのばね定数については同一の扱いとなる。このため、前記第1および第2実施例においては、式(5) 、(6) に示されるように見かけの減衰定数の変化量を含まないためピッチング角変位量を用いており、本第3実施例においては式(21)(22)に示されるように、見かけの減衰定数の変化量を演算するため式(20)で表される実ピッチング角変位量を用いている。
【0064】
式(21)および(22)の右辺のそれぞれ第2項、第4項の係数を次式で表す。
D1 =−af cf +ar cr −qARCLTH ・・・(24)
D2 =−cf −cr −qACLTH ・・・(25)
D3 =−af 2 cf −ar 2 cr −qAaRCPMTH ・・・(26)
D4 =−af cf +ar cr −qAaCPMTH ・・・(27)
【0065】
本実施例による制御回路21によって、該車両速度の値に基づいた、D1 からD4 の値を式(24)から式(27)を用いて演算し、該演算結果と空力微係数を考慮しない車両の運動方程式、すなわち車両速度Uを0とした場合のD1 からD4 の項中のサスペンションの減衰定数の変化とが見かけ上等価となるような、見かけの減衰定数を算出する。つまり、走行状態の車両の前輪ならびに後輪のサスペンションの見かけの減衰定数をcf * ,cr * とすれば、cf * ,cr * は、次式(28)を満たすことになる。
【0066】
【数3】
【0067】
上式の最小自乗解が、車両の前輪ならびに後輪のサスペンションの見かけの減衰定数cf * ,cr * であり、実際の減衰定数cf ,cr との差、すなわち、見かけの減衰定数変化量Δcf =cf −cf * とΔcr =cr −cr * とを出力する。
【0068】
図10においては、本実施例の制御回路21の具体例として、車載のサスペンション用マイクロコンピュータ51で、逐次演算する方法を示しているが、上述のように、減衰定数変化量は車両の速度の関数として表されるので、代表車両速度における修正量をマップ形式で予め記憶させて、車両速度に対しステップ的に修正量を出力する形式でもよい。
【0069】
駆動回路41は、制御回路21の出力信号に基づいて、サスペンションの減衰定数を車両の速度に応じて可変修正するもので、可変ダンパー機構301を制御する。
可変ダンパー機構301は、ダンパーの減衰定数を走行状態によって可変調整する装置として従来知られているものであって、アクチュエータ302によって、可変ダンパー機構に内蔵された孔の径を変え、孔を通過するダンパーオイルの流動抵抗を調整することによって、減衰定数を変化させることが可能になっている。
【0070】
アクチュエータ302の制御は、駆動回路41の出力信号に基づいて可変修正する。
【0071】
ここで、図11に制御回路21によって演算される見かけの減衰定数の変化量の一例を示す。本実施例では、次式で表されるような見かけの減衰定数変化量と車両速度との関係式に基づいて、減衰定数の可変制御が行われる。
【0072】
Δcf =δf U ・・・(29)
Δcr =δr U ・・・(30)
【0073】
上式において、δf とδr は車両諸元から決まる定数であって、本実施例で想定した普通乗用車クラスの車両の場合は、一例として次の値となる。
δf =−2.4、δr =−0.43[N・S2/m2]
また、より車重の軽い別の小型乗用車においては、
δf =−2.0、δr =−0.27[N・S2/m2]
となる。
【0074】
以上のように、車両速度の増大あるいは減少にともなって見かけ上変化したサスペンションの減衰定数は、見かけの減衰定数の変化量を打ち消すようにサスペンションの減衰定数を可変修正することによって、低速から高速まで車両速度によらず、乗り心地や操縦性の変化が少ない車両特性が実現される。
本実施例で示したサスペンション制御装置の効果の一例を、従来技術である図12と比較して図13に示す。
【0075】
図12および図13において、車両が直進走行中に微小な段差を通過したときの車両の姿勢の変化を時間変化で表したインパルス応答特性である。
従来技術である図12の制御なしの場合は、図示されるように、走行時に車両が外乱を受けた時に、車速によりヒービング変位量の第1の谷の大きさが大きく異なり、高速時に低速時と異なる挙動を示すため、車速により乗り心地が変化するため乗員に違和感が感じられることを意味する。
【0076】
一方、本実施例である図13の制御ありの場合は、図示されるように、過渡応答の時間変化も車両速度が変わってもほぼ同様な波形を示す。つまり、高速時においても低速時と同様な乗り心地が確保されていることがわかる。
【0077】
(第4実施例)
次に、前記第1実施例の車両のサスペンション制御装置において、サスペンションの制御回路21の演算方式を変更し、サスペンションのばね定数ならびに減衰定数が同時に可変制御できる車両に適用した第4実施例について以下に説明する。
【0078】
本第4実施例は、図10に示すように、車両速度センサー11と、制御回路21と、駆動回路41、ならびに制御対象である可変ダンパー機構301ならびに空気ばね機構101とからなる。
車両速度センサー11は、スピードメータ、あるいは車両の対気速度センサー等から成り、対応する電気信号を車両速度信号Uとして出力する。
制御回路21は、車両速度信号Uによって、見かけ上変化する減衰定数ならびにばね定数の値を演算し、見かけの減衰定数ならびに見かけのばね定数変化量として出力する。
【0079】
以下に、制御回路21における見かけの減衰定数変化量ならびに見かけのばね定数変化量の演算の内容を示す。
前記第3実施例の状態方程式(21)と(22)の右辺のそれぞれ第1項から第4項の空力微係数が含まれる項が空力によって車両の運動特性が変化することを表し、すなわち、次式が空力によってばね定数ならびに減衰定数が見かけ上変化することを表している。
【0080】
B1 =−af 2 kf −ar 2 kr +qAaCPMTH ・・・(31)
B2 =−af kf +ar kr +qAaCPMZ ・・・(32)
B3 =−af kf +ar kr +qACLTH ・・・(33)
B4 =−kf −kr +qACL z ・・・(34)
B5 =−af cf +ar cr −qARCLTH ・・・(35)
B6 =−cf −cr −qACLTH ・・・(36)
B7 =−af 2 cf −ar 2 cr −qAaRCPMTH ・・・(37)
B8 =−af cf +ar cr −qAaCPMTH ・・・(38)
【0081】
本実施例による制御回路21によって、該車両速度の値に基づいた、B1 からB8 の値を式(31)から式(38)を用いて演算し、該演算結果と空力微係数を考慮しない車両の運動方程式、すなわち車両速度Uを0とした場合のB1 からB8 の項中のサスペンションのばね定数ならびに減衰定数の変化とが見かけ上等価となるような、見かけのばね定数ならびに減衰定数を算出する。つまり、走行状態の車両の前輪ならびに後輪のサスペンションの見かけのばね定数をkf * ,kr * とし、同見かけの減衰定数をcf * ,cr * とすれば、kf * ,kr * ,cf * ,cr * は、次式(39)および(40)を満たすことになる。
【0082】
【数4】
【0083】
上式の最小自乗解が、車両の前輪ならびに後輪のサスペンションの見かけのばね定数kf * ,kr * ならびに同見かけの減衰定数cf * ,cr * であり、実際のばね定数kf ,kr との差、すなわち、見かけのばね定数変化量Δkf =kf −kf * とΔkr =kr −kr * 、ならびに実際の減衰定数cf ,cr との差、すなわち、見かけの減衰定数変化量Δcf =cf −cf * とΔcr =cr −cr * とを出力する。
【0084】
図10においては、本実施例の制御回路21の具体例として、車載のサスペンション用マイクロコンピュータ51で、逐次演算する方法を示しているが、上述のように、ばね定数変化量は車両の速度の関数として表されるので、代表車両速度における修正量をマップ形式で予め記憶させて、車両速度に対しステップ的に修正量を出力する形式でもよい。
【0085】
駆動回路41は、制御回路21の出力信号に基づいて、サスペンションのばね定数ならびに減衰定数を車両の速度に応じて可変修正するもので、空気ばね機構101ならびに可変ダンパー機構301を制御する。
空気ばね機構101は、空気ばね式懸架装置として従来知られているものであって、下端部を車輪軸部材としてのアーム115に取り付けられた上記可変ダンパー機構301と、上端部を車体116に取り付けられたピストンロッド113と、上記可変ダンパー機構301とピストンロッド113との間に形成されたエアチャンバ114とから成り、車体の上下振動をエアチャンバー114内に封入された空気圧によって弾性支持するようになっており、該エアチャンバー114に空気を供給したり、あるいは排出したりすることで、ばね定数を変化させることが可能になっている。
【0086】
エアチャンバー114への空気の供給及び排出は、ソレノイドバルブ111及び121で制御され、駆動回路41の出力信号に基づいて可変修正する。
可変ダンパー機構301は、ダンパーの減衰定数を走行状態によって可変調整する装置として従来知られているものであって、アクチュエータ302によって、可変ダンパー機構に内蔵された孔の径を変え、孔を通過するダンパーオイルの流動抵抗を調整することによって、減衰定数を変化させることが可能になっている。
【0087】
アクチュエータ302の制御は、駆動回路41の出力信号に基づいて可変修正する。
【0088】
ここで、図14に制御回路21によって演算される見かけのばね定数の変化量の一例、ならびに図15に制御回路21によって同時に演算される見かけの減衰定数の変化量の一例を示す。本実施例では、次式で表されるような見かけのばね定数変化量ならびに減衰定数の変化量と車両速度との関係式に基づいて、減衰定数の可変制御が行われる。
【0089】
Δkf =βf U2 ・・・(41)
Δkr =βr U2 ・・・(42)
Δcf =γf U ・・・(43)
Δcr =γr U ・・・(44)
【0090】
上式において、βf ,βr, γf ,γrは車両諸元から決まる定数であって
、本実施例で想定した普通乗用車クラスの車両の場合は、一例として次の値となる。
βf =0.79、βr =0.44[N・S2/m3]
γf =−2.4、γr =−0.43[N・S2/m2]
また、より車重の軽い別の小型乗用車においては、
βf =0.74、βr =0.36[N・S2/m3]
γf =−2.0、γr =−0.27[N・S2/m2]
となる。
【0091】
以上のように、車両速度の増大あるいは減少にともなって見かけ上変化したサスペンションの減衰定数ならびにばね定数は、見かけの減衰定数の変化量ならびに見かけのばね定数の変化量を打ち消すようにサスペンションの減衰定数ならびにばね定数を可変修正することによって、低速から高速まで車両速度によらず、乗り心地や操縦性が変化しない車両特性が実現される。
本実施例で示したサスペンション制御装置の効果の一例を、従来技術である図12と比較して図16に示す。
【0092】
図12および図16において、車両が直進走行中に微小な段差を通過したときの車両の姿勢の変化を時間変化で表したインパルス応答特性である。
従来技術である図12の制御なしの場合は、図示されるように、走行時に車両が外乱を受けた時に、車速によりヒービング変位量の第1の谷の大きさが大きく異なり、高速時に低速時と異なる挙動を示すため、車速により乗り心地が変化するため乗員に違和感が感じられることを意味する。
【0093】
一方、本実施例である図16の制御ありの場合は、図示されるように、過渡応答の時間変化も車両速度が変わってもほぼ同様な波形を示す。つまり、高速時においても低速時と同程度の外乱に対する収束性、乗り心地が確保されていることがわかる。
【0094】
(第5実施例)
次に、前記第4実施例の車両のサスペンション制御装置において、サスペンションのばね定数ならびに減衰定数が同時に可変制御できる車両に適用した第5実施例について以下に説明する。本実施例では該サスペンション制御装置を搭載する車両としてワゴン(車高が1.7m以上の車両)を想定する。
図17に制御回路21によって演算される見かけのばね定数の変化量の一例、ならびに図18に制御回路21によって同時に演算される見かけの減衰定数の変化量の一例を示す。本実施例では、次式で表されるような見かけのばね定数変化量ならびに減衰定数の変化量と車両速度との関係式に基づいて、減衰定数の可変制御が行われる。
【0095】
前記第4実施例において、式(41)(42)(43)(44)におけるβf ,βr ,γf ,γr は車両諸元から決まる定数であり、本実施例では一例として次の値となる。βf =0.69、βr =−1.39[N・S2/m3]
γf =−1.5、γr =2.0[N・S2/m2]
また、より車重の軽いワゴンにおいては、
βf =0.79、βr =−1.38[N・S2/m3]
γf =−1.8、γr =1.4[N・S2/m2]
となる。
本実施例で示したサスペンション制御装置の効果の一例を、従来技術である図19と比較して図20に示す。
【0096】
図19および図20において、(a)は車両が直進走行中に微小な段差を通過したときの車両の姿勢の変化を時間変化で表したインパルス応答特性であり、(b)はその時の車両の姿勢の変化の過渡応答を周波数領域で表示したものである。
従来技術である図19の制御なしの場合は、図示されるように、走行時に車両が外乱を受けた時に、高速であるほど角変位量の変化が急速になり、乗り心地が悪化する傾向にあり、さらに、高速であるほどに波形の振幅も増大し、乗り心地や操縦性が悪化することを意味する。このことは、周波数領域で観察した図19(b)において共振周波数が高速になるほど高くなることでも示される。
【0097】
一方、本実施例である図20の制御ありの場合は、図20(b)で示されるように、共振周波数の変化が小さくなると同時に、図20(a)で観察されるように波形の振幅の変化も小さくなる。つまり、過渡応答の時間変化が車両速度が変わってもほぼ同様な波形を示すことになり、高速時においても低速時と同程度の外乱に対する収束性が確保されていることがわかる。
【0098】
本実施例では、βf ,βr ,γf ,γr の正負が、前記第4実施例と全く反対となっている。すなわち、空力の影響はすべての車両に一律ではなく、車速のみならず、本サスペンション制御装置を搭載する車両の空力特性にも応じて、ばね定数および減衰定数の制御を行わなければならないことがわかる。
以上のように、車両速度の増大あるいは減少にともなって見かけ上変化したサスペンションのばね定数ならびに減衰定数は、見かけのばね定数の変化量ならびに見かけの減衰定数の変化量を打ち消すようにサスペンションのばね定数ならびに減衰定数を可変修正することによって、低速から高速まで車両速度によらず、乗り心地や操縦性が変化しない車両特性が実現される。
【0099】
(第6実施例)
次に、前記第4実施例の車両のサスペンション制御装置において、サスペンションの制御回路21の演算方式を変更し、サスペンションのばね定数ならびに減衰定数を、外乱の入力から時間遅れを設けて可変制御する実施例を本発明の第6実施例として、以下に説明する。
なお、本第6実施例は、図10に示す車両速度センサー11と、制御回路21と、駆動回路41、制御対象である可変ダンパー機構301、および空気ばね機構101と、図示しない外乱センサーとからなることを特徴とする。
【0100】
車両速度センサー11は、スピードメータ、あるいは車両の対気速度センサー等から成り、対応する電気信号を車両速度信号Uとして出力する。
図示しない外乱センサーは、車体のヒービング運動の変位、速度、あるいは加速度、またはピッチング運動の角変位、角速度、角加速度、あるいはばね下の変位、速度、加速度、あるいはばね機構にかかる力、減衰機構にかかる力のうちの少なくとも一つを測定するセンサーであり、対応する電気信号を外乱信号として出力する。
【0101】
制御回路21は、車両速度信号Uによって、見かけ上変化する減衰定数ならびにばね定数の値を演算し、外乱信号が所定の値を越えた場合に所定の時間経過後に、見かけの減衰定数ならびに見かけのばね定数変化量として出力する。
制御回路21における見かけの減衰定数変化量ならびに見かけのばね定数変化量の演算の内容は、前記第4実施例と同じであり、その他の構成も前記第4実施例で記した通りである。
本実施例で示したサスペンション制御装置の効果の一例を、前記第4実施例の結果である図16と比較して図21に示す。
【0102】
図16および図21において、車両が直進走行中に微小な段差を通過したときの車両の姿勢の変化を時間変化で表したインパルス応答特性である。
前記第4実施例の結果である図16において図示されるように、車両が直進走行中に微小な段差を通過した後の最初の変位振幅の極大値が車両速度によって異なっている。
【0103】
一方、本実施例は上記の点をさらに改善するために、制御回路21からのばね定数ならびに減衰定数変化の信号を出力するときに時間遅れを設けたものである。本実施例において、制御回路21は、車両速度に対応した見かけのばね定数の変化量ならびに見かけの減衰定数の変化量を演算する。そして外乱センサーとして用いたばね下の加速度センサーからの外乱信号が1Gを越えた場合、0.25秒経過後に該見かけの変化量を出力するものである。
本実施例である図21の場合は、図示されるように、該段差通過後の最初の極大値の振幅も含めて、過渡応答の時間変化が車両速度が変わってもほぼ同様な波形を示す。つまり、高速時においても低速時と同程度の外乱に対する収束性、乗り心地が確保されていることがわかる。
【0104】
(第7実施例)
次に、前記第4実施例の車両のサスペンション制御装置において、前後輪の荷重配分を考慮に入れてばね定数と減衰定数を制御する第7実施例について説明する。
図22に制御回路21によって演算されるみかけのばね定数の変化量の一例、ならびに図23に制御回路21によって同時に演算される見かけの減衰定数の変化量の一例を示す。
車両の前後輪の重量配分は車両の重心位置として扱うことができるので、前後輪の軸中心位置と重心位置の距離をeと置くと、前後輪の軸中心位置の高さzと重心位置の実ヒービング変位量Zの関係は以下の式で与えられる。
Z=z-eθ ・・・(45)
ただし、e:前後輪の軸中心位置と重心位置の距離[m]
Z:重心位置の実ヒービング変位量[m]
【0105】
関係式(45)を用いて、前記第3実施例で示したヒービング運動の外力FL、ならびにピッチング運動方向の外力モーメントFPMは次式のようになる。
FL=(1/2)ρU2A(CLz Z + CLTH Θ) ・・・(46)
FPM=(1/2)ρU2Aa(CPM Z + CPMTH Θ)
+(1/2)eρU2A(CLz Z + CLTH Θ) ・・・(47)
前記第3実施例の式(21) から(22) で示した運動方程式、ならびに式(45)か
ら式(47)で表した外力と外力モーメントの項を状態方程式の形に書き直し、あらためてΘをθ、Zをzと置き直すと、ヒービング運動とピッチング運動を表すと次式になる。
【0106】
Mw’=(-af kf + ar kr + qACLTH - eqACLz) θ
+(-af cf + ar cr - qARCLTH/U) p
+(-kf - kr + qACLz) z
+(-cf - cr - qACLTH/U) w
+ kf zf + cf wf + kr zr + cr wr ・・・(48)
Ip’=(-af 2 kf - ar 2 kr + qAaCPMTH
-eqAaCPMZ - eqACLTH + e2qACLZ) θ
+(-af 2 cf - ar 2 cr - qAaRCPMTH/U
+ eqARCLTH/U) p
+(-af kf + ar kr + qAaCPMZ - eqACLz ) z
+(-af cf + ar cr - qAaCPMTH/U + eqACLTH/U) w
+af kf zf + af cf wf - ar kr zr - ar cr wr
・・・(49)
ここで、
wf =zf ’、wr =zr ’、q=(1/2) ρU2 ・・・(50)
【0107】
状態方程式(48)と(49)の右辺のそれぞれ第1項から第4項の空力微係数が含まれる項が空力によって車両の運動特性が変化することを表す。すなわち、次式が空力によって減衰定数ならびにばね定数が見かけ上変化することを表す。
G1=-af 2 kf - ar 2 kr + qAaCPMTH
-eqAaCPMZ - eqACLTH + e2qACLZ ・・・(51)
G2=-af kf + ar kr + qAaCPMZ - eqACLz ・・・(52)
G3=-af kf + ar kr + qACLTH - eqACLz ・・・(53)
G4=-kf - kr + qACLz ・・・(54)
G5=-af cf + ar cr - qARCLTH/U ・・・(55)
G6=-cf - cr - qACLTH/U ・・・(56)
G7=-af 2 cf - ar 2 cr - qAaRCPMTH/U + eqARCLTH/U
・・・(57)
G8=-af cf + ar cr - qAaCPMTH/U + eqACLTH/U
・・・(58)
【0108】
本実施例による制御回路21によって、該車両速度の値に基づいた、G1 からG8 の値を式(16) から式(23)を用いて演算し、該演算結果と空力微係数を考慮しない車両の運動方程式、すなわち車両速度Uを0とした場合のG1 からG8 の項中のサスペンションの減衰定数ならびにばね定数の変化とが見かけ上等価となるような、見かけの減衰定数ならびにばね定数を算出する。つまり、走行状態の車両の前輪ならびに後輪のサスペンションの見かけの減衰定数をcf * ,cr * とし、同見かけのばね定数をkf * ,kr *とすれば、cf * ,cr * ,kf * ,kr * ,は、次式(59)(60)を満たすことになる。
【0109】
【数5】
【0110】
上式の最小自乗解が、車両の前輪ならびに後輪のサスペンションの見かけの減衰定数cf * ,cr * ならびに同見かけのばね定数kf * ,kr * であり、実際の減衰定数cf ,cr との差、すなわち、見かけの減衰定数変化量Δcf =cf −cf * とΔcr =cr −cr * 、ならびに実際のばね定数kf ,kr との差、すなわち、見かけのばね定数定数変化量Δkf =kf −kf * とΔkr =kr −kr * とを出力する。
Δkf =ξf U2 ・・・(61)
Δkr =ξr U2 ・・・(62)
Δcf =ηf U ・・・(63)
Δcr =ηr U ・・・(64)
【0111】
上式において、ξf ,ξr, ηf ,ηrは車両諸元から決まる定数であって
、本実施例で想定した普通乗用車クラスの車両の場合は、重心がホイルベースの中心位置から前輪側へ、ホイルベースの10%移動した場合、一例として次の値となる。
ξf =0.73、ξr =0.38[N・S2/m3]
ηf =−2.2、ηr =−0.35[N・S2/m2]
また、より車両の軽い小型乗用車クラスの車両の場合は、一例として次の値となる。
ξf =0.68、ξr =0.30[N・S2/m3]
ηf =−1.9、ηr =−0.21 [N・S2/m2]
【0112】
さらに、前記第5実施例に示した車高が1.7m以上であるワゴンにおいて、重心が、ホイルベースの中心位置から前輪側へ、ホイルベースの10%移動した場合、一例として次の値となる。
ξf =0.34、ξr =−1.7[N・S2/m3]
ηf =−0.6、ηr =2.3[N・S2/m2]
また、より車重の軽いワゴンにおいては、
ξf =0.42、ξr =−1.7[N・S2/m3]
ηf =−0.9、ηr =1.7[N・S2/m2]
となる。
本第7実施例においては、重心の移動を考慮してばね定数及び減衰定数を適切に設定することができる。
【0113】
また、前輪及び後輪への荷重を検出するセンサを追加することによって、重心の移動を演算し、ばね定数及び減衰定数を実走行時における重心の移動を考慮して設定することができる。
前記第1乃至第7実施例に示したように、見かけのばね定数の変化量及び見かけの減衰定数の変化量は、車両の種類、車両の諸元、及び重心位置の変化によって影響を受ける。見かけのばね定数の変化量を決める比例定数は、単位をN・S2/m3 とすると、車高1.7m未満の乗用車においては、前輪で0.5〜1.4、後輪で0.2〜0.5、車高1.7m以上のワゴンにおいては、前輪で0.2〜1.7、後輪で−1.2〜−2.7とするのが好ましい。
また、見かけの減衰定数の変化量を決める比例定数は、単位をN・S2/m2
とすると、車高1.7m未満の乗用車においては、前輪で−1.8〜−2.5、後輪で−0.1〜−0.5、車高1.7m以上のワゴンにおいては、前輪で−0.5〜−1.9、後輪で1.0〜3.0とするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概要を示すブロック図である。
【図2】(a)ヒービング変位の説明図。
(b)ヒービング時の空力微係数の変化を示す線図である。
【図3】(a)ピッチング角変位の説明図。
(b)ピッチング方向の空力微係数の変化を示す線図である。
【図4】第1実施例および第2実施例の構成を示す図である。
【図5】第1実施例におけるばね定数の変化量と車両速度の関係を示す線図である。
【図6】従来技術の車両の応答特性を示す線図である。
【図7】第1実施例の車両の応答特性を示す線図である。
【図8】第2実施例におけるばね定数の変化量と車両速度の関係を示す線図である。
【図9】第2実施例の車両の応答特性を示す線図である。
【図10】第3実施例、第4実施例および第5実施例の構成を示す図である。
【図11】第3実施例における減衰定数の変化量と車両速度の関係を示す線図である。
【図12】従来技術の車両の応答特性を示す線図である。
【図13】第3実施例の車両の応答特性を示す線図である。
【図14】第4実施例におけるばね定数の変化量と車両速度の関係を示す線図である。
【図15】第4実施例における減衰定数の変化量と車両速度の関係を示す線図である。
【図16】第4実施例の車両の応答特性を示す線図である。
【図17】第5実施例におけるばね定数の変化量と車両速度の関係を示す線図である。
【図18】第5実施例における減衰定数の変化量と車両速度の関係を示す線図である。
【図19】従来技術の車両の応答特性を示す線図である。
【図20】第5実施例の車両の応答特性を示す線図である。
【図21】第6実施例の車両の応答特性を示す線図である。
【図22】第7実施例におけるばね定数の変化量と車両速度の関係を示す線図である。
【図23】第7実施例における減衰定数の変化量と車両速度の関係を示す線図である。
【符号の説明】
11・・・車両速度センサー
21・・・制御回路
41・・・駆動回路
51・・・サスペンション用マイクロコンピュータ
111・・・ソレノイドバルブ
112・・・シリンダ部材
113・・・ピストンロッド
114・・・エアチャンバ
115・・・アーム
116・・・車体
121・・・ソレノイドバルブ
301・・・可変ダンパー機構
302・・・アクチュエータ
Claims (3)
- 車両の速度を検出する車両速度検出手段と、該車両速度検出手段によって検出された車両速度と、前記車両の形状によって定まる揚力係数及びピッチングモーメント係数のヒービング変位量及びピッチング角変位量の少なくとも一つに対する変化率である空力微係数とに基づき、前記車両速度の増加あるいは減少による車両のサスペンションの見かけのばね定数の変化量を前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮しない車両の運動方程式におけるサスペンションの見かけのばね定数の変化として演算するばね定数の変化量演算手段、及び前記車両速度の増加あるいは減少による車両のサスペンションの見かけの減衰定数の変化量を前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮しない車両の運動方程式におけるサスペンションの見かけの減衰定数の変化として演算する減衰定数の変化量演算手段の少なくとも一方と、
該ばね定数変化量に基づき車両のサスペンションのばね定数を所定の値に可変修正するばね定数可変修正手段、及び該減衰定数変化量に基づき車両のサスペンションの減衰定数を所定の値に可変修正する減衰定数可変修正手段の少なくとも一方と、
を含むことを特徴とする車両のサスペンション制御装置。 - 車両の揚力係数及びピッチングモーメント係数のヒービング変位量に対する変化率であるヒービング方向の空力微係数、及び車両の揚力係数及びピッチングモーメント係数のピッチング角変位量に対する変化率であるピッチング方向の空力微係数の少なくとも一方を測定する工程と、
前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮した車両の運動方程式におけるヒービング方向の空力の変化、及びピッチング方向の空力の変化の少なくとも一方を、前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮しない車両の運動方程式におけるサスペンションの見かけのばね定数の変化として解く工程と、
該見かけのばね定数の変化に基づきサスペンションのばね定数を設定する工程と、
を有することを特徴とするサスペンションのばね定数設定方法。 - 車両の揚力係数及びピッチングモーメント係数のヒービング変位量に対する変化率であるヒービング方向の空力微係数、及び車両の揚力係数及びピッチングモーメント係数のピッチング角変位量に対する変化率であるピッチング方向の空力微係数の少なくとも一方を測定する工程と、
前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮した車両の運動方程式におけるヒービング方向の空力の変化、及びピッチング方向の空力の変化の少なくとも一方を、前記ヒービング方向の空力微係数及び前記ピッチング方向の空力微係数を考慮しない車両の運動方程式におけるサスペンションの見かけの減衰定数の変化として解く工程と、
該見かけの減衰定数の変化に基づきサスペンションの減衰定数を設定する工程と、
を有することを特徴とするサスペンションの減衰定数設定方法。
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