JP3861126B2 - ステロイド骨格含有化合物分解菌 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステロイド骨格を有する化合物を分解することができる、新規なNovosphingobium属に属する菌株、及びその利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、社会的な問題となっている内分泌攪乱化学物質、いわゆる環境ホルモンは、体内の天然ホルモンの作用を攪乱することによって生体に悪影響を及ぼすと考えられている。この攪乱物質の多くが難生分解性であり、市民生活において極めて身近に存在することから大変深刻な社会問題となっている。
【0003】
環境ホルモンには水圏生態系に悪影響を及ぼすものも知られており、例えば多摩川に生息している鯉のメス化現象は河川水に含まれるノニルフェノール(NP)及びエストラジオールが主原因ではないか、とする説が有力になっている(朝日新聞 2001年7月6日)。
【0004】
水生生物に対して内分泌攪乱作用を示す天然エストロゲンの中でも最も強力な作用を有するものはエストラジオールであり、エストラジオールは人及び家畜の排泄物から抱合体(不活性型)として排出されるが、下水中の微生物によって脱抱合されて活性型に戻ることが知られている。
また、人畜が排出する17β−エストラジオール(以下、本明細書において「E2」と記載した場合は、17β−エストラジオールのことを意味する)等も、エストロゲン(女性ホルモン)活性を有するため、水生生物(魚類、両生類等)の生殖機能に影響を与えることが判明している。
【0005】
そして、エストラジオール類の化合物の1種である、17α−エチニルエストラジオールは合成卵胞ホルモンの一種であり、従来より避妊薬(ピル)として用いられている。低容量ピルが最近、正式に認可されたことから、今後ピルの使用が飛躍的に上昇することが考えられ、それとともに、ピルに含まれるエストラジオールの廃棄量も増加することが考えられる。
【0006】
このようなエストロゲンは、都市部での人口増加及び畜産業の規模拡大化によって、最近においては全国の河川から高頻度に検出されており、環境省も産業由来内分泌攪乱化学物質とともに、その環境動態を詳しく調査すべき「要監視物質」として取り扱っている。
【0007】
上述したように、E2等のエストロゲンは難生分解性であり、また生殖器官に異常を発生する生物学的影響等も報告されており、従って、バイオレメディエーションに応用できる、新規なエストロゲン(ステロイド骨格を有する化合物)分解菌を単離及び同定することが望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ステロイド骨格を有する化合物を分解することができる、新規な微生物を単離及び同定することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、東京都における汚水処理プラントの活性汚泥中に顕著なステロイド骨格含有化合物分解活性が観察されることを見だした。今回、本発明者らは、新規なステロイド骨格含有化合物分解菌(ARI−1Tと命名)を単離することに成功した。さらに、この単離したステロイド骨格含有化合物分解菌の特徴を分析した結果、この菌が新種の菌であるという知見を得た。本発明は、上記知見に基づいてなされなものである。
【0010】
すなわち、本発明は、ステロイド骨格含有化合物を分解することができるNovosphingobium属に属する菌株を提供するものである。なお、ステロイド骨格含有化合物としては、例えばエストラジオール、エストロン、エストリオール等が挙げられる。
本発明の菌株の好ましい具体例としては、ステロイド骨格含有化合物を二酸化炭素に分解するものであり、グルコース、アラビノース、マンノース、マンニトール、N−アセチル−グルコサミン、マルトース、グルコン酸、アジピン酸及びリンゴ酸からなる群からなる化合物を同化しない菌株である。すなわち、本発明の好ましい菌株としては、ステロイド骨格含有化合物(例えば、エストラジオール、エストロン、エストリオール等)以外の多くの炭素源を資化せず、ステロイド骨格含有化合物のみを特異的に資化する菌株である。
【0011】
本発明の菌株の好ましい具体例としては、カタラーゼ及びニトレートレダクターゼの酵素活性が陽性で、β−グルコシダーゼ、ゼラチナーゼ及びβ−ガラクトシダーゼの酵素活性が陰性である菌株である。
本発明の菌株の好ましい具体例としては、グラム陰性、好気性、桿状の細菌であり、コロニーが円形、凸状、不透明かつ淡褐色であり、25℃で生育できるが、4℃又は42℃では生育できない菌株である。
【0012】
本発明の菌株の好ましい具体例としては、DNAのG+C含有量が約61%である菌株である。本発明の菌株の好ましい具体例としては、主要な非極性脂肪酸が18:1であり、主要な2−ヒドロキシ脂肪酸が14:0 2−OHであり、3−ヒドロキシ脂肪酸は存在せず、主要なイソプレノイドキノンはユビキノンQ−10である菌株である。本発明の菌株の好ましい具体例としては、唯一の炭素源としてエストラジオールを含む培地を用いたスクリーニングにより単離される菌株である。本発明の菌株の好ましい具体例としては、受託番号FERM P−18924を有する菌株である。
【0013】
また、本発明は、上述の本発明のNovosphingobium属に属する菌株を用いることを特徴とする、ステロイド骨格含有化合物分解方法を提供するものである。
また、本発明は、上述の本発明のNovosphingobium属に属する菌株を用いることを特徴とする、廃水処理方法を提供するものである。
また、本発明は、上述の本発明のNovosphingobium属に属する菌株を用いることを特徴とする、ステロイド骨格含有化合物を分解するためのバイオリアクターを提供するものである。該バイオリアクターは、排水処理用として好適に用いられる。
【0014】
また、本発明は、上述の本発明のNovosphingobium属に属する菌株を用いることを特徴とする、ステロイド骨格含有化合物を検出するためのバイオセンサを提供するものである。
また、本発明は、唯一の炭素源としてエストラジオールを含む培地を用いてスクリーニングを行うことを特徴とする、ステロイド骨格含有化合物を分解することができる、Novosphingobium属に属する菌株のスクリーニング方法を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明のNovosphingobium属に属する菌株について説明する。本発明のNovosphingobium属に属する菌株は、ステロイド骨格含有化合物を分解することのできる菌株であり、以下、本明細書において「ステロイド骨格含有化合物分解菌」ともいう。本発明において、ステロイド骨格含有化合物とは、ステロイド骨格を含有する有機化合物全てを含む概念であり、例えばエストラジオール、エストロン、エストリオール等の化合物を意味する。エストラジオール、エストロン、エストリオールの化学構造を以下に示す。
【0016】
【化1】
Figure 0003861126
【0017】
本発明の菌株は、Novosphingobium属に属する菌株であり、本発明者らが単離した一例の菌株(ARI−1T)は、受託番号FERM P−18924として寄託されている。上記菌株は、東京の汚水処理プラントの活性汚泥から単離されたものである。ARI−1T株の分離のために、0.1質量%の17β−エストラジオール(以下、本明細書において「E2」ともいう)を含むYNB寒天(pH7.0;25℃)(E2−YNB培地)を使用した。
後述する実施例に詳述する通り、得られた微生物の菌学的性質を調べ、新規微生物であることを確認した。得られた菌株の菌学的性質を以下に示す。
【0018】
〔1〕形態学的性質
(1)細胞の形:桿状
(2)大きさ:長さ1.2μm;直径0.8μm
(3)グラム染色:陰性
【0019】
〔2〕生育状態
コロニーは円形、凸状、不透明かつ淡褐色である。
〔3〕生理学的性質
(1)生育温度:25℃で生育できるが、4℃又は42℃では生育できない。
(2)酸素要求性:好気的
(3)資化性:エストラジオール、エストロン、エストリオールを同化するが、グルコース、アラビノース、マンノース、マンニトール、N−アセチル−グルコサミン、マルトース、グルコン酸、アジピン酸及びリンゴ酸を同化しない。
【0020】
(4)カタラーゼ及びニトレートレダクターゼの酵素活性は陽性である。
(5)β−グルコシダーゼ、ゼラチナーゼ及びβ−ガラクトシダーゼの酵素活性は陰性である。
(6)DNAのG+C含有量は約61%である。
(7)主要な非極性脂肪酸は18:1であり、主要な2−ヒドロキシ脂肪酸は14:0 2−OHであり、3−ヒドロキシ脂肪酸は存在しない。主要なイソプレノイドキノンはユビキノンQ−10である。
【0021】
本発明のステロイド骨格含有化合物を分解することができるNovosphingobium属に属する菌株は、汚水処理プラントの活性汚泥等から、例えば0.1質量%のE2を含むYNB寒天(pH7.0;25℃)(E2−YNB培地)を使用してスクリーニングすることにより単離することができる。E2を含むYNB培地は、唯一の炭素源としてE2を含む培地である。単離された菌株は、E2を検出するHPLC等の常用手段を用いて培養液を経時的に分析することによって、E2分解活性を検出することができる。
【0022】
本発明のステロイド骨格含有化合物を分解することができる菌株を培養するための培地としては、通常、これらの菌株が生育することのできるものであれば、天然培地であっても合成培地であってもよく、いずれも使用することができる。また、培地は固体培地、液体培地のいずれでもよい。用いられる培地には、炭素源、窒素源及び無機物などが含まれる。炭素源としては、エストラジオールが好ましく用いられ、その他の各種炭化水素が含まれていてもよい。窒素源としては、例えば酵母エキス、肉エキス、ペプトン、各種のアミノ酸等の有機窒素類、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等の無機窒素等が挙げられる。炭素源、窒素源、いずれも単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。その他の無機物としては、例えばカリウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、カルシウム塩等を必要に応じて適宜使用する。本発明のステロイド骨格含有化合物分解菌の培養方法としては、通常の方法でよく、例えば培養温度は15〜35℃が好ましく、20〜30℃が更に好ましい。また、培地のpHは6〜8とすることが好ましく、7付近であることが更に好ましい。また、培養は振盪培養を行うか、又は通気撹拌を行い、好気条件下で行うことが好ましい。
【0023】
次に、本発明のステロイド骨格含有化合物分解方法について説明する。
本発明のステロイド骨格含有化合物分解方法は、本発明のステロイド骨格含有化合物分解菌を用いることを特徴とする。具体的には、本発明のステロイド骨格含有化合物分解菌を、エストラジオール、エストロン、エストリオール等のステロイド骨格含有化合物を含む処理対象(例えば、下水、畜産廃水、井戸水、水道水等)に接触させ、上記分解菌の作用により処理対象物中のステロイド骨格含有化合物を分解し、無毒化する。
【0024】
次に、本発明の排水処理方法について説明する。
本発明の排水処理は、本発明のステロイド骨格含有化合物分解菌を用いることを特徴とする。具体的には、本発明のステロイド骨格含有化合物分解菌を、エストラジオール、エストロン、エストリオール等のステロイド骨格含有化合物を含む排水(例えば、下水、畜産排水、井戸水、水道水など)に接触させ、上記分解菌の作用により処理対象物中のステロイド骨格含有化合物を分解し、無毒化する。
【0025】
次に、本発明のバイオリアクターについて説明する。
本発明のバイオリアクターは、本発明のステロイド骨格含有化合物分解菌を用いることを特徴とする。具体的には、本発明のバイオリアクターは、本発明のステロイド骨格含有化合物分解菌を担体に固定化し、ステロイド骨格含有化合物分解菌固定化担体を得、環境水等の処理対象物を通液するタンク内に、上記ステロイド骨格含有化合物分解菌固定化担体を設置することによって製造することができる。なお、本発明のステロイド骨格含有化合物分解菌が本来の活性を損なわないようにしつつ、動かないように固定することが必要である。また、制御装置、ポンプ、各種センサー等を設置してもよい。用いられる担体としては、本発明のステロイド骨格含有化合物分解菌を固定化することができるものであれば、どのようなものであってもよい。用いられる担体としては、例えばアルギン酸、ポリビニルアルコール、ゲランガム、アガロース、セルロース、デキストラン等のゲル状物質や、ガラス、活性炭、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、木材、シリカゲル等の担体が挙げられる。ステロイド骨格含有化合物分解菌を固定化する方法としては、アルギン酸、ポリビニルアルコール、ゲランガム、アガロース、セルロース、デキストラン等のゲル状物質に包括固定する方法、ガラス、活性炭、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、木材、シリカゲル等の担体に吸着固定する方法が挙げられる。
【0026】
本発明のステロイド骨格含有化合物分解菌を担体に固定化する方法について簡単に説明すると、例えば菌株の培養液を担体に流し込むことにより固定化する固定法、アスピレーターを用いて担体を減圧下にし、菌株の培養液を流し込むことにより固定化する固定法、菌株の培養液を滅菌した培地と担体との混合物に流し込み、振盪培養を行った後、上記混合物から取り出した担体を自然乾燥する方法等が挙げられる。
【0027】
本発明のバイオリアクターは、例えば廃水処理用として用いられる。このような排水処理は、例えば回分式、半回分式、連続式等の方法により行うことができる。排水処理は、処理対象物となる排水の温度を、好ましくは15〜35℃の温度、更に好ましくは20〜30℃の温度に調整して処理を行う。
【0028】
次に、本発明のバイオセンサについて説明する。
本発明のバイオセンサは、本発明のステロイド骨格含有化合物分解菌を用いることを特徴とする。具体的には、本発明のバイオセンサは、本発明のステロイド骨格含有化合物分解菌を固定化した担体と、例えば酸素電極とを組み合わせて製造される。
【0029】
ステロイド骨格含有化合物を固定化する担体としては、ニトロセルロース膜等の膜が用いられる。また、アルギン酸カルシウムゲル等のゲルを用いることもでき、この場合には耐久性に優れるとともに、微生物担持ゲルをガラス管内に重点することによりユニット化することができるという利点もある。
本発明のステロイド骨格含有化合物分解菌を担体に固定化する方法については、バイオリアクターの説明において記載したのと同様の方法でよい。
【0030】
本発明のバイオセンサは、排水(例えば、下水、畜産排水、井戸水、水道水など)中のエストラジオール、エストロン、エストリオール等のステロイド骨格含有化合物の含有量を測定するために用いられる。具体的には、本発明のバイオセンサと、該バイオセンサを一定の温度に保温することのできる恒温槽と、バイオセンサにおける酸素電極の電流の変化を測定する電圧電流計と、測定された電流の変化を記録するための記録計とを備えた装置とし、ステロイド骨格含有化合物分解菌がステロイド骨格含有化合物を分解する時に消費する酸素濃度を測定することにより、排水中のステロイド骨格含有化合物の含有量の測定が可能となる。
【0031】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1
ステロイド骨格含有化合物分解菌の単離
東京都の汚水処理プラント(STP)の活性汚泥からステロイド骨格含有化合物分解菌を単離した。活性汚泥からのステロイド骨格含有化合物分解菌の単離のためには、0.1質量%のE2を含むYNB培地(以下、E2−YNB培地という)を使用した。E2は和光純薬工業(株)から購入したものを用いた。YNB培地は、Difco Manualに記載されている通り、窒素源としての(NH42SO4、他の塩(KH2PO4、MgSO4、NaCl及びCaCl2)、微量の金属及び少量のビタミンを含んでいる。従って、E2−YNB培地には、E2以外の炭素源は存在せずE2がE2−YNB培地における唯一の炭素源であると考えられる。
【0032】
活性汚泥を上記E2−YNB培地に接種した。サンプルが液体の場合には100μlのサンプルを直接E2−YNB寒天培地に接種した(サンプル量:30mg/ml)。サンプルが沈殿の場合には、接種前に10gのサンプルを10mlのYNB培地に懸濁させ、この懸濁液を、上記のようにE2−YNB培地に接種した。
【0033】
次いで、サンプルを接種した培地を150rpmで回転しながら25℃で14日間培養した。培養終了後、培養物を120mlのメタノールと混合し、0.2μmのポアサイズのフィルター(Millex LG13,ミリポア製)を用いてろ過した。ろ液をMightysil RP-18GPオクタデシルシリルカラム(内径:4.6mm、長さ:150mm)を有するHPLCシステムで分析を行い、210nmにおけるUV吸収を測定することにより、E2の分解活性を分析した。すなわち、210nmにおけるUV吸収の減少によりE2の分解活性を確認した。なお、移動相としては80%メタノール水を用いた。
【0034】
分析の結果、1つのサンプルがE2分解活性を有することが示された。このサンプルは14日間で60%のE2を分解した。E2分解菌を分離するため、この寒天培地に増殖した微生物を3回継代培養した。継代培養は栄養寒天培地にて画線培養を行った。培養は25℃の温度で行い、小さい白褐色のコロニーをひろい、これをARI−1Tと命名した。このARI−1Tは独立行政法人産業技術総合研究所特許生物センターに受託番号FERM P−18924として寄託されている。
【0035】
実施例2
ARI−1 T 株による、各種ステロイド骨格含有化合物の分解活性
ARI−1Tのステロイド骨格含有化合物分解活性について、単一コロニーを、エストラジオール、エストロン、エストリオールを含むYNB寒天培地に接種し、エストラジオール、エストロン、エストリオールを分解するかどうかを調べた。エストラジオール、エストロン、エストリオールの培地中の濃度は、10mg/30mlとした。エストラジオール、エストロン、エストリオールは、いずれも和光純薬工業(株)より購入したものを用いた。培養は、25℃の温度で行った。培養初日、培養10日後及び20日後に、培養物を120mlのメタノールと混合し、0.2μmのポアサイズのフィルター(Millex LG13,ミリポア製)を用いてろ過した。ろ液をMightysil RP-18GPオクタデシルシリルカラム(内径:4.6mm、長さ:150mm)を有するHPLCシステムで分析を行い、210nmにおけるUV吸収を測定することにより、エストラジオール、エストロン、エストリオールの分解活性を分析した。すなわち、210nmにおけるUV吸収の減少によりエストラジオール、エストロン、エストリオールの分解活性を確認した。なお、移動相としては80%メタノール水を用いた。
【0036】
結果を図1に示す。図1は、ARI−1T株による各種のステロイド骨格含有化合物の分解の時間経過を示すグラフである。図1のグラフにおいて、白丸はエストロン、三角はエストラジオール、四角はエストリオールの分解の時間経過である。図1に示すように、エストロンは10日培養後には約10%が分解され、20日培養後には約50%が分解された。エストラジオールは、10日培養後に約75%が分解され、20培養後には約85%が分解された。エストリオールは、10日培養後に約90%が分解され、10日分解後には約95%が分解された。
【0037】
実施例3
エストラジオール濃度によるエストラジオール分解活性
培地中のエストラジオールの初濃度を、30、10及び5mg/30mlとした以外は、実施例2と同様に培養を行い、初濃度が30mg/30mlのものについては、0日目から10日置きに50日目まで分解活性を測定し、初濃度が10mg/30ml濃度のものについては、0日目から5日おきに25日目まで、初濃度が5mg/30ml濃度のものについては、0日目から4日置きに20日目まで分解活性を測定した。分解活性の測定は実施例1と同様に行った。
【0038】
結果を図2に示す。図2は、ARI−1T株による、エストラジオール分解活性の分解の時間経過を示すグラフである。図2において、白丸は初濃度が30mg/30ml濃度、二重丸は初濃度が10mg/30ml濃度、黒丸は初濃度が5mg/30ml濃度の場合の結果を示す。図2から明らかなように、初濃度が5mg/30mlの場合は20日でほぼ全てが分解され、10mg/30mlの場合は25日で約90%が分解され、30mg/30ml濃度の場合は50日で約90%が分解された。
【0039】
実施例4
代謝産物の分析
ARI−1TによるE2の代謝産物を以下のようにして調べた。すなわち、ARI−1Tの培養を、10mg/30mlのE2を含有するYNB寒天培地を用いて行い、0日、5日、10日、15日、20日及び25日培養後の代謝産物を分析した。分析は以下のように行った。
【0040】
培養物をヘキサン又はクロロホルムを用いて抽出した。ヘキサン又はクロロホルムを用いたのは、それらが異なるオクタノール−水分配係数を有しており、それらが疎水性の指標として用いられるからである。抽出物をVarian3800ガスクロマトグラフ−質量スペクトル(GCMS)により分析した。分析条件は以下の通りである。
カラム:BPX−5キャピラリーカラム(内径:25m×0.22mm、SGEから購入)
注入量:3μl
キャリアーガス:ヘリウム(1.0ml/分)
温度勾配:50℃で3.4分、50〜370℃で10℃/分、370℃で10分。
また、電子衝撃イオン化のイオン化エネルギーは70eVであった。
【0041】
図3に、0日及び30日培養物のクロロホルム抽出物の全イオンガスクロマトグラムを示す。図3は、培養物のクロロホルム抽出物の全イオンクロマトグラムである。図3において、(A)は0日培養物、(B)は30日培養物のクロロホルム抽出物の全イオンクロマトグラムである。図3に示すように、0日、30日培養物のいずれにおいても、E2のピークのみが検出され、代謝産物と考えられるピークはいっさい検出されなかった。また、培養が進むにつれ、ピークの減少が観察された。
【0042】
次に、1H-NMRを用いてE2の代謝運命について検討した。GCMSに用いた試料(0日培養物及び30日培養物)を25℃の温度の下で濃縮乾固し、重メタノール(CD3OD)に再溶解したものを試料として測定した。測定は、JEOL JNM-EX400 NMRスペクトロメーターを用い、400MHZにおいて5mmの直径の試験管に入れたサンプル溶液を用いて測定した。測定の結果を図4に示す。図4は、培養物のクロロホルム抽出物のNMRスペクトルであり、(a)は0日培養物、(b)は30日培養物のNMRスペクトルであり、(c)はE2の化学構造を示す。図に示すように、30日培養物においては、E2の芳香族及び非芳香族部分のプロトンのシグナルがほとんど完全に消失していた。このことから、E2の代謝産物は、二酸化炭素や有機酸等の低分子量化合物にまで分解されていることがわかる。
【0043】
実施例5
形態学的特性
ARI−1Tを透過型電子顕微鏡により観察した。電子顕微鏡写真の作製において、3日間培養した細胞を遠心分離して集め、生理食塩水にて洗浄した後、formvarでコーティングしたグリッドに細胞を載せ、オスミウム蒸気により数分間固定を行った。次いで、グリッドを蒸留水で洗浄した後、酢酸ウラニル溶液でネガティブに染色し、Hitachi H-300透過型電子顕微鏡で観察を行った。グラム染色は、Yokota(1999)、「微生物学実験法」の「グラム染色」の章、 199. Edited by Sugiyama J., Watanabe S., Oowada K., Kuroiwa T., Takahashi H. & Tokuda G., Tokyo: Kodansha Scientific に記載された方法により行った。
【0044】
ARI−1T株はグラム陰性、及び桿状(長さ長さ1.2μm;直径0.8μm)であった。図5はARI−1T株の電子顕微鏡写真を示す。この株は、Nutrient Agar、Brain Heart Infusion Agar又はTryptic Soy Agar上で25℃6〜7日間で淡褐色のコロニーを形成した。コロニーは円形、凸状、不透明であった。コロニーの生育は4℃及び42℃では観察されなかった。
【0045】
実施例6
生理学的及び生化学的特徴
本実施例でARI−1Tとともに使用した細菌株を以下に記載する。これらは、the Japan Collection of Microorganisms (JCM)及びAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手した。
生育のための酸素要求は、普通寒天及びBBL Gaspak Anaerobic System (Becton Dickinson, Cockeysville, MD)を用いて調べた。オキシダーゼ及びカタラーゼの試験は、poremediaオキシダーゼ試験指示薬(栄研化学(株)製)及び3.0%過酸化水素により実施した。API20NEシステム(BioMerieux)を用いて試験微生物の生化学的特徴を調べた。
【0046】
使用した細菌株
Novosphingobium subarcticum JCM 10398T
Novosphingobium subterraneum ATCC 700279T
Novosphingobium stygium ATCC 700280T
Novosphingobium capsulatum ATCC 14666T
Novosphingobium rosaATCC 51837T
Novosphingobium aromaticivorans ATCC 700278T
【0047】
ARI−1T株は好気性の菌株であった。
ARI−1T株及びその他の使用した菌株の特徴を表1に示す。ARI−1T株は本実験で試験した、グルコース、アラビノース、マンノース、マンニトール、N−アセチル−グルコサミン、マルトース、グルコン酸、アジピン酸及びリンゴ酸のいずれも同化しなかった。これらの実験で用いた、他のNovosphingobiumに属する菌株は、多数の異なる種類の化合物を同一の実験条件下で同化したので、実験系は正常に機能していると考えられる。
なお、本実施例で用いた菌株は、全て、オキシダーゼ試験、インドール生成、グルコースから酸の生成、アルギニンジヒドロラーゼ活性、ウレアーゼ活性及びn−カプリン酸、クエン酸及び酢酸フェニルの同化が陰性であった。
【0048】
【表1】
Figure 0003861126
【0049】
実施例7
16S−rDNA及びDNA塩基組成の解析
DNAの調製
25℃の温度で48時間増殖させた培養物から菌株を集菌し、標準手段(Sambrook J, 他(1989) Molecular Cloning:a laboratory Manual, 2nd edn. ColdSpring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory)によって染色体DNAを精製した。すなわち、細菌細胞をTris−EDTA緩衝液(pH8.0)に懸濁し、リゾチーム(最終濃度:2mg/ml)及びドデシル硫酸ナトリウム(最終濃度:0.5%)に溶解し、細菌細胞を溶菌させた。溶菌液からフェノール−クロロホルム抽出によってDNAを回収し、RNase処理、CTAB処理及びエタノール沈殿を行い、精製DNAを得た。なお、RNase処理、CTAB処理は2回行った。
【0050】
DNA塩基組成、すなわちグアニン+シトシン(G+C)含量は、Kumagai, M.(1980) J. Mol Biol 16,111-120に記載された方法に従って高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0051】
大腸菌16S−rDNAのナンバリングシステム8−27及び1492−1510に対応するユニバーサルプライマーセット及びTaqDNAポリメラーゼを用いて、PCRにより、ほぼ完全な16S−rDNAを増幅した。温度プロフィールは25サイクルを含み、94℃で60秒、58℃で60秒、及び72℃で90秒、最終のポリメリゼーションは72℃で7分である。増幅されたDNAフラグメントの直接配列決定は、
Satomi, M. et al., (1997) Int J Syst Bacteriol 47, 832-836に記載された方法により実施した。
【0052】
ARI−1Tを、BLASTアルゴリズム(Altschul, S. F. et al., (1990) J Mol Biol 215, 403-410)を使用して、Genbank、EMBL、及びDDBJデータベース中の既知の全ての配列データと比較した。複合配列、Kimura, M. (1980) J Mol Biol 16, 111-120に記載されたヌクレオチド置換速度(Knuc値)の計算及びNeighbor-Joining法(Saitou, N. & Nei, M. (1987) Mol Biol Evol 4, 406-425)による系統樹の構築は、CLUSTAL Wコンピュータープログラム(Thompson, J. et al. (1994) Nucleic Acids Res 22, 4673-4680)を用いて行った。
【0053】
ARI−1TのG+C含量は61%と測定された(表2)。この値はNovosphingobium属の他の菌株について測定される範囲内(すなわち60〜66%)である(Balkwill, D. L., Drake, G. R., Reeves, R. H., Fredrickson, J. K., White, D. C., Ringelberg, D. B, Chandler, D. P., Romine, M. F., Kennedy, D. W. & Spadoni, C. M. (1997) Taxonomic study of aromatic-degrading bacteria from deep-terrestrial-subsurface sediments and description of Sphingomonas aromaticivorans sp. nov., Sphingomonas subterranea sp nov., and Sphingomonas stygia sp. nov. Int J Syst Bacteriol 47, 191-201、Yabuuchi, E., Yano, I., Oyaizu, H., Hashimoto, Y., Ezaki, T. & Yamamoto, H. (1990) Proposals of Sphingomonas paucimobilis gen. nov. and comb. nov., Sphingomonas parapaucimobilis sp. nov., Sphingomonas yanoikuyae sp. nov., Sphingomonas adhaesiva sp. nov., Sphingomonas capsulata comb. nov., and two genospecies of the genus Sphingomonas. Microbiol Immunol 34, 99-119及びTakeuchi, M., Sawada, H., Yanagi, M., Yamasato, K., Hamana, K. & Yokota, A. (1995) Taxonomic study of bacteria isolated from plants: Proposal of Sphingomonas pruni sp. nov., Sphingomonas asaccharolytica sp. nov., and Sphingomonas mali sp. nov., Int J Syst Bacteriol 45, 334-341)。
表2は、ARI−1T株及び他のNovosphingobium種に属する菌株のDNAのG+C含量及びDNA−DNA相同性の値を示す。
【0054】
【表2】
Figure 0003861126
【0055】
図6に、ARI−1T株及び関連細菌の16S−rDNA配列に基づく近隣結合法(Neighbor-Joining法)により構築した系統樹を示す。スケールを示す棒は、進化距離(Knuc)0.01を示す。
16S−rDNA配列の分析の結果(図6)から、ARI−1T株は、 Novosphingobium aromaticivorans ATCC 700278T、Novosphingobium subterraneum ATCC 700279T、Novosphingobium subarcticum JCM 10398T、Novosphingobium capsulatum ATCC 14666T Novosphingobium stygium ATCC 700280Tと類似性を示した。しかし、これらの菌種との16S−rDNAの配列類似性は最大でも97%であったことから、ARI−1Tとは別種であるとみなすべきである。従って、ARI−1T及び他のNovosphingobium種との間の関係の確証的な情報を得るため、基質として1,2−フェニレンジアミン、比色酵素としてストレプタビジン−パーオキシダーゼコンジュゲートによるフォトビオチンラベル及び比色検出を用いたマイクロプレートハイブリダイゼーション法によってDNA−DNAハイブリダイゼーション実験を行った。表2は、これらの種の間におけるDNA−DNA再会合値を示すが、比較的低レベルのハイブリダイゼーションが示される(最大36%)。系統発生的に定義される菌種は、70%以上のDNA−DNAハイブリダイゼーション値を示す株からなることが決定されている(Wayne LG,他(1987) Int J Syst Bacteriol 37, 463-464)。従って、ARI−1T株は既知のNovosphingobium種とは別種である。
【0056】
実施例8
脂肪酸組成及び極性脂質
全細胞の脂質を、Bligh, E. J. & Dyer, W. J. (1959) A rapid method of total lipid extraction and purification. Can J Biochem Physiol 37, 911-917に記載の方法に従い抽出した。抽出した脂質を脂肪酸メチルエステルに転換し、脂肪酸メチルエステルはテフロンキャップ付きの試験管内で100℃で24時間、メタノール中の2N塩酸で抽出した脂質と反応することにより調製した。
【0057】
得られた脂肪酸メチルエステルをヘキサンで3回抽出し、ヘキサン層を真空遠心分離により完全に蒸発させ、次いで脂肪酸メチルエステルを適当量のヘキサンに再溶解させた。BPX70キャピラリーカラムを備えるGC1700ガスクロマトグラフ(島津製作所製)により、脂肪酸メチルエステルの分析を行った。キャリアガスとしてはヘリウムを用いた(カラムヘッドの圧力は130kPaである)。インジェクター及び検出器を260℃に維持し、カラムオーブンを4℃/分の速度で155〜235℃に上昇するようにプログラムし、235℃に10分間維持した。ピーク面積は、C-R8Aクロマトグラフィーレコーダー(島津製作所)によって定量した。化合物は、既知の標準物質との保持時間の比較により同定し、BPX70キャピラリーカラム(25m×0.22mm)を備えるVarian 3800 ガスクロマトグラフに連結されたSaturn 2000イオントラップ質量分析計(Varian Inc.)を用いたガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)により確認した。オーブンは、4℃/分の速度で80〜240℃まで上昇するようにプログラムされた。キャリアーガスとしてヘリウムを用いた(1ml/分)。GC/MSは、40〜400原子質量単位を有する、70eVの電離電圧及び230℃のトラップ温度で操作される。
【0058】
ARI−1T株の全細胞脂肪酸プロフィールを表3に示す。検出された主要な非極性脂肪酸は18:1であり、14:0 2−OHが優勢なヒドロキシル化脂肪酸として存在している。しかし、3−ヒドロキシル化脂肪酸は検出されなかった。これらの結果は、Novosphingobium属の説明(Yabuuchi et al., 1990; Takeuchi et al., 1993, 1994, 2001; Kampfer et al., 1997)と一致する。
【0059】
【表3】
Figure 0003861126
【0060】
また、極性脂質のプロフィールを、二次元TLCにより試験した。精製していない脂質を2種類の溶媒システムによるシリカゲル60TLCプレート(20×20cm)上で分離した。溶媒システムは、1つはクロロホルム−メタノール−水(65:25:4、v/v)であり、もう一方はクロロホルム−メタノール−酢酸−水(80:12:15:4、v/v)である。全ての種類の脂質のスポットを検出するために、50%溶液を用いた。糖、α−グリコール、リン酸塩及びフリーのアミノ基を検出するために、α−ナフトール/硫酸、過要素酸試薬、zinzadze(Dittmer試薬)、及びニンヒドリン試薬をそれぞれ用いた。試験の結果として、リン脂質、未同定の脂質及び色素に加えてNovosphingobium属に独特の脂質であるスフィンゴ糖脂質が検出された。
【0061】
実施例9
イソプレノイドキノン組成
イソプレノイドキノン組成は、Yamada, Y. & Kuraishi, I. (1982) Gakkai Shuppan Centerによって記載された方法によって、一次元TLC及びHPLCによって測定した。全細胞の全アセトン溶解抽出物は溶出液としてベンゼンを用いた一次元TLCによって分離した。イソプレノイドの長さは、逆相カラム(Wako Handy ODS, 250mm×4.6mm、和光純薬)を用いたHPLCにより分析した。
主にQ−10からなるユビキノンを含む(データは示さず)。優性なイソプレノイドキノンとしてのユビキノンQ−10の存在は、Novosphingbium属を含むプロテオバクテリアのアルファブランチのメンバーとして典型的である(Yabuuchi et al., (1990) Microbiol Immunol 34, 99-119; Yrjala et al., (1998) Int J Syst Bacteriol 48, 1057-62; Stolz et al., (2000) Int J Syst Evol Miclobiol 50, 35-41; (2001) Int J Syst Evol Microbiol 51, 1405-1417)。
【0062】
結論
Takeuchiら(Takeuchi, M., Hamana, K. & Hiraishi, A. (2001) Int J Syst Evol Microbiol 51, 1405-1417)は最近Sphingomonas属をSphingomonas, Sphingobium, Sphingopyxis及びNovosphingobiumの4つの新規な種に分離した。 Novosphingobiumは6種のメンバーからなり、この属のいくつかの菌種は芳香族化合物を分解することが知られている。例えば、N.aromaticivorans, N.stygium及びN.subterraneumはベンゾエート、クレオール、ナフタレン又はキシレンを分解することが報告されている(Balkwill, D. L. et al., (1997) Int J Syst Bacteriol 47, 191-201)。また、N.subarctiumはクロロフェノールを分解することができる(Nohynek, L. J. et al, (1996) Int J Syst Bacteriol 46, 1042-1055)。
【0063】
16S−rDNA配列(図6)、ゲノムDNAのG+C含量(表2)、イソプレノイドキノン組成、全細胞脂肪酸プロフィール(表3)、及びスフィンゴ糖脂質の存在から、ARI−1T株はNovosphingobium属に属することが示唆される。また、ARI−1T株と他の既知のNovosphingobium属に属する菌株との間の16S−rDNAの類似性から(図6)、ARI−1T株は新種であることが示唆される。また、DNA−DNAハイブリダイゼーション実験(表2)により、ARI−1T株がNovosphingobium属の新種であることが示唆される。
【0064】
本発明で得られた菌株の表現型、遺伝型及び系統発生のデータから、ARI−1T株はNovosphingobium属の新種の分類されると結論付けられる。従って、この新規菌株をNovosphingobium tardaugensと命名する。
【0065】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、新規なNovosphingobiumの属する菌株が提供される。本発明によって提供される菌株は、エストラジオール、エストロン及びエストリオール等のステロイド骨格含有化合物を分解することができる。本発明の菌株を用いて排水処理を行なうことにより環境中のステロイド骨格含有化合物を分解することができ、これによりステロイド骨格含有化合物が環境に蓄積することによって生じる環境汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ARI−1T株による各種のステロイド骨格含有化合物の分解の時間経過を示すグラフである。
【図2】ARI−1T株による、エストラジオール分解活性の分解の時間経過を示すグラフである。
【図3】培養物のクロロホルム抽出物の全イオンガスクロマトグラムである。
【図4】培養物のクロロホルム抽出物のNMRスペクトルである。
【図5】ARI−1T株の電子顕微鏡写真である。
【図6】ARI−1T株及び関連細菌の16S−rDNA配列に基づく近隣結合法(Neighbor-Joining法)により構築した系統樹である。

Claims (14)

  1. エストラジオール、エストロン及びエストリオールからなる群から選択されるステロイド骨格含有化合物を分解することができる、Novosphingobium tardaugens 種に属する菌株
  2. 上記ステロイド骨格含有化合物を二酸化炭素に分解する、請求項1に記載の菌株。
  3. グラム陰性、好気性、桿状の細菌であり、コロニーが円形、凸状、不透明かつ淡褐色であり、25℃で生育できるが、4℃又は42℃では生育できない、請求項1又は2に記載の菌株。
  4. グルコース、アラビノース、マンノース、マンニトール、N−アセチル−グルコサミン、マルトース、グルコン酸、アジピン酸及びリンゴ酸からなる群からなる化合物を同化しない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の菌株。
  5. カタラーゼ及びニトレートレダクターゼの酵素活性が陽性である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の菌株。
  6. β−グルコシダーゼ、ゼラチナーゼ及びβ−ガラクトシダーゼの酵素活性が陰性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の菌株。
  7. 唯一の炭素源としてエストラジオールを含む培地を用いたスクリーニングにより単離される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の菌株。
  8. 受託番号FERM P−18924を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の菌株。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株を用いることを特徴とする、エストラジオール、エストロン及びエストリオールからなる群から選択されるステロイド骨格含有化合物分解方法。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株を用いることを特徴とする、排水処理方法。
  11. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株を用いることを特徴とする、ステロイド骨格含有化合物を分解するためのバイオリアクター。
  12. 排水処理用に用いられる、請求項11に記載のバイオリアクター。
  13. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株を用いることを特徴とする、ステロイド骨格含有化合物を検出するためのバイオセンサ。
  14. 唯一の炭素源としてエストラジオールを含む培地を用いてスクリーニングを行うことを特徴とする、ステロイド骨格含有化合物を分解することができる、Novosphingobium属に属する菌株のスクリーニング方法。
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