JP3860620B2 - Cr(VI)を含有する固体をその場で生物的に再生する方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、クロム(VI) (Cr(VI))-含有の、土壌、堆積物及び廃棄物を含む固体をその場で(in situ) 生物再生する方法である。特に、本発明は Cr(VI)-含有固体をその場で処理する方法であって、固体をその存在位置から除去する必要なく Cr(VI) が Cr(III)に生物的に再生される方法に関する。
【0002】
【関連技術の説明】
国中に数多くある Cr(VI) が混入した廃棄物処分地の再生には、多くの努力が費やされている。これらの Cr(VI)-含有の固体は、 Cr(III)- 含有の固体の低い毒性と比較すると健康に対する脅威となる可能性がある。
Cr(VI)-含有廃棄物の1つタイプとしては、キルン内で焙焼することによってクロム鉄鉱石中の Cr(III)部分を Cr(VI) に酸化させた後に水溶性 Cr(VI) 塩を焙焼石から抽出するという、典型的なクロム鉄鉱石焙焼プロセスによってできる残査がある。クロム鉄鉱石加工残査 (COPR) は、不完全な浸出のために Cr(VI) を含み、焙焼プロセスに石灰 (CaO)を使用するために通常非常にアルカリ性が高い。
【0003】
典型的にはCr(VI)は COPR 中に 10,000 から20,000 mg/kgの範囲の濃度で存在し、全 Cr のうちの Cr(VI) フラクションは一般に 1% から 13%の範囲である。しかしながら、 COPR が他の物質と混合されていると、混合物中の Cr(VI) 濃度は全クロム濃度のフラクションとして、大きく変動する。
Cr(VI)塩は、中性及びアルカリ性のpHで水酸化物として沈殿するCr(III) と比べると非常に水溶性が高い。Cr(VI)は、陽性イオン(カチオン)となる Cr(III)とは対照的に、水中では陰性イオン(アニオン)として実際に存在する。カチオンは土壌中で他のカチオンと交換されるが、アニオンはそれよりも土壌中における移動性が通常高い。その結果、Cr(VI)は可溶性と移動性がかなり高い傾向にあり、Cr(III) は相対的に可溶性と移動性が低い傾向にある。Cr(VI)をCr(III) に転化させることは、環境中にクロムが拡散する可能性を大きく抑えるという利点を持つ。
【0004】
Cr(VI)のCr(III) への生物的還元は実験室内及び実地において証明されている。工学技術財団及び米国土木工学協会への1979年の研究報告で、ヒギンズ(Higgins) は Cr(VI) のCr(III) への生物的還元及びそれに続く排水流からの除去について報告した。この研究者は、 Cr(VI) 及び Cd を含む処理済排水が農業用の土壌に灌漑用水として使用された場合の地下水への重金属の移動を調査するために、実験用土壌カラムを利用した。調査により、最初は Cr(VI) が土壌カラム中を自由に浸透するが、やがて浸透液中の Cr(VI) 濃度が減少することが見出された。顕著なバクテリアの生育がカラム表面に認められた。クロム除去は、 Cr(VI) のCr(III) への生物的還元に続いて水酸化物の沈殿或いは吸着のいずれか又はその両方が起きたことによるとされた。バクテリア生育のための飼料は浸透水中に残留する生物学的酸素要求量 (BOD)によって供給された。
【0005】
ルプトンら (Lupton et al.)の米国特許第5,155,042 号は Cr(VI)-含有固体、とりわけ COPR の生物再生に関するものである。この方法で、Cr(VI)は、ある位置で固体中に酸性溶液を注入し第二の位置から浸出液を取り除いて、硫酸還元嫌気性バクテリア、及びバクテリア生育の必要に応じて硫酸塩や他の栄養分が加えられる外部の生物反応容器中で処理される。この反応容器中でCr(VI)は生物学的に Cr(III)に還元され、その後水酸化物として沈殿し固体分離プロセスを用いて溶液から除去される。次いで pH を 6.5ないし 9.5に維持するように硫酸還元嫌気性バクテリアを含む溶液に酸を加え、この溶液を Cr(VI)-含有固体中に再循環させて残存する Cr(VI) のその場での還元及び浸出を促進する。 COPR は pH を6.5 ないし 9.5の範囲に低下させるのに十分な酸を添加した後、COPRからアルカリ度が徐々に放出されることにより pH が徐々に 9.5以上に上昇するという「アルカリ リバウンド」効果を示すことが認められた。COPR中の可溶性 Cr(VI) 濃度は 200 mg/l よりも低くなければならないこと、及び硫酸還元嫌気性バクテリアが自己持続性個体数になる前に安定化された pH はその場で維持できることも認められた。彼らはこれにより、酸及び硫酸還元嫌気性バクテリアを複数回使用する必要がある方法であって、浸出液の生物学的反応容器中における外部処理を用いて Cr(VI) を Cr(III)に還元する方法を提唱した。
【0006】
シュウィッツゲベル (Schwitzgebel) の米国特許第5,285,000 号は Cr(VI) で汚染された土壌のその場で(in situ) の化学処理に関するものである。この方法は最初に第一鉄含有溶液を用いて、Cr(VI)を Cr(III)に還元し、得られる Fe(OH)3及び Cr(OH)3を他の重金属と共沈殿させる。珪酸ナトリウムゲル形成溶液を加えて金属類の浸出を減少させる。
キーゲルら (Kigel et al.) の米国特許第5,304,710 号は、クロム鉱石廃棄物で汚染された土壌を、酸性化、化学的還元、中和及び安定化によって化学的に処理するその場以外での(ex situ) プロセスに関する。この方法には、土壌粉砕;pH 3以下への酸性化;第一鉄塩を用いたCr(VI)の Cr(III)への還元;石灰のようなアルカリ性試薬による pH 上昇処理;クロム及び鉄の水酸化物としての沈殿;及び物理的強度を改善する必要がある場合は、セメント、セメント炉灰、フライアッシュ、スラグ又は他の薬剤を加えることによる混合物の安定化の工程が含まれる。
【0007】
スタンフォースら (Stanforth et al.) の米国特許第5,202,033 号は Cr(VI) で汚染された土壌のその場での化学処理に関するものである。土壌中の固体廃棄物又は非許容濃度のクロムを含む固体廃棄物を処理するこの方法には、廃棄物又は土壌をその場で硫酸第一鉄と混合することが含まれる。この方法は、硫酸第一鉄及び、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムのような pH 調節剤を土壌又は廃棄物に加えること、並びにクロムを非浸出形態に転化するような反応を可能にする条件下で混合することから成る。処理添加剤は以下の技術によって土壌又は廃棄物に導入及び接触させることができる:土壌又は廃棄物の上面に添加剤を散布して、回転耕作機のような機械装置で混合すること;処理用化学物質を溶液又はスラリーとして集水埋きょ (infiltration gallery) を通じて加えること;注入ノズル又は注入ウェルを通じて可溶性添加剤を注入すること;及び、処理添加剤を中空軸オーガー(auger) を通じて加え、機械的に混合すること。
【0008】
媒質中に酸を浸透させることによる Cr(VI)-含有の固体の処理を含む方法には2つの欠点がある:すなわち、酸が固体と反応して媒質の水圧透過性を著しく低下させるために、処理材料を連続的に浸透させる能力に限界があること;及び、酸が接触することになる最初の固体材料と反応して、注入点付近の細孔水における pH は望ましい値よりも低くなってしまい、注入点から離れたところでの pH は望ましい値よりも高くなってしまう。その結果、媒質の pH はかなり変動するが、6.5 ないし 9.5の望ましい pH 範囲にある媒質はほとんどない。
また、浸透はバクテリアを Cr(VI)-含有の固体媒質中に分散させるには効率の悪い方法である。バクテリアには濾過によって媒質中に除去される傾向があると考えられる。濾去されないバクテリアは(媒質の濾過作用を避けて)単細胞の傾向にあり、高濃度の Cr(VI) にさらされることになり、浸透により注入できる生存バクテリアの数が減少してしまう。
【0009】
ルプトンら (Lupton et al.)の米国特許第5,155,042 号は Cr(VI) 還元における硫酸還元バクテリアの使用に限定されている。特許所有者の一人であるデフィリピ (Defilipi) は、汚染調節及び廃棄物減量化のための加工工学ハンドブック(ワイズ及びトラトーロ (D.L.Wise and D.J.Tratolo) 編)の前刷りである、「硫酸還元バクテリアを用いた、水、土壌及びスラグ中の6価クロムの生物的再生」で、硫酸還元バクテリアが H2Sを製造し、H2S が次いで Cr(VI) と反応してこれを Cr(III)に還元し、 Cr(III)が水酸化クロム(III) として沈殿することを確認した。この方法で問題となる可能性があるのは毒性ガスであるH2S の発生である。
【0010】
他の研究者らは、硫酸塩を還元するもの以外のバクテリアが Cr(VI) の Cr(III)への還元において有効であることを示している。ヒギンズ (Higgins)は、家庭排水処理プラントからの流出水中に存在するバクテリアが Cr(VI) を還元することを示した。
ブレイクら (Blake et al.) は、Environmental Geochemistry and Health 、15巻の2、1993年、の「毒性廃棄物処分地から得られたシュードモナス菌株による毒性金属の化学的変質」で、シュードモナス マルトフィリア(Pseudomonas maltophilia)菌を研究した。その試験から、「 Cr(VI) の還元が膜結合型クロム酸還元酵素により触媒される」ことが示された。エンテロバクター クロアカエ(Enterobacter cloacae)についてのオータケ及びハージョーの試験から、このバクテリアが細胞表面において Cr(VI) を嫌気的に還元することが見出された。還元されたクロムはその後、不溶性の金属水酸化物として沈殿した。かれらの試験から、この反応に最も好ましい pH が 7であることも示された。「6価クロムの無毒化及び除去のための生物学的方法」、Water Science and Technology、25巻の15、1992年、を参照のこと。
【0011】
【発明が解決すべき課題】
従って、固体を掘削することなく、有機材料、栄養分、天然バクテリア及び無機酸又は塩基とその場で機械的に混合することによって、Cr(VI)-含有の固体をその場で生物的に還元する効果的で効率のよい方法を提供することが本発明の目的である。本発明のこれらの目的及び他の目的は、以下の説明によって、さらに明らかにされる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの態様により、地面から材料又は土壌を取り除くことなくCr(VI)-含有固体をその場で生物的に再生する方法が提供される。本発明の別の態様によれば、Cr(VI)-含有固体をその場で生物的に再生する方法であって、Cr(VI)がCr(III)に還元されて固体中のCr(VI)濃度が標準的試験方法を用いた場合の検出限界以下に低下するような方法が提供される。より詳しく言うと、本発明の方法は有機材料、天然バクテリア、栄養分、十分量の無機酸又は塩基及び水をCr(VI)-含有固体に加えて混合物のpHを6.5ないし9.5の間に維持し、その後その場で十分に混合してCr(VI)からCr(III)への生物的還元を促進することを含む。
【0013】
他のファクターの中でも本発明は、固体中のCr(VI)濃度を減少させるために浸出を行う必要がなく、又は先行技術の生物的再生方法で要求されるような培養された硫酸還元バクテリアを使用する必要がなく、うまく効率的にCr(VI)-含有固体の生物的再生をその場で達成することができるという認識に基づいている。現地材料中にバクテリア、栄養分及びpHを6.5ないし9.5の間に維持するのに十分な無機酸又は塩基を含む有機材料を十分に混合することによって、処理容積の中でCr(VI)がCr(III)に還元されることが見出されている。その結果、COPR及びCOPRを含む混合物のようなCr(VI)-含有固体を、他の方法を用いてこれまでに可能だったよりも効率良く且つ容易に生物的方法によって再生することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、材料を地面から除去することなく、又はその利用を妥協的に行うことなく Cr(VI)-含有固体をその場で生物的に還元する方法に関する。この方法においては、処理材料を Cr(VI)-含有材料中に混合する。処理材料にはバクテリア、栄養分、有機材料、及びバクテリア生育の助けとなる pH (典型的には 6.5ないし 9.5の間)にする必要がある場合には酸又は塩基を含む。
【0015】
バクテリアおよび栄養分を含む有機材料は、堆肥、泥炭、排水処理スラッジ又はそれらの混合物を含む。これらの材料には数多くの多様なバクテリア(特に、Cr(VI)還元に有効であることが見出されている大腸菌(Escherichia coli))が含まれる。これらの有機材料の半固体性が、Cr(VI)-含有固体の細孔水中のCr(VI)の潜在的有害作用に対する何らかの保護作用をバクテリアに与える。さらに、これらの材料の半固体性は、Cr(VI)のCr(III)への還元が長期間に渡って行われる場合に、バクテリアが使用する有機材料の長期貯蔵器を提供する。
【0016】
処理領域内の地下水流を、バクテリアの生育を促進するのに適した水分を持たせるように調節してもよい。
本発明の生物的還元方法においては、以下の現象が起きる:固体中のCr(VI)が溶解し、粒子間の液体が充填された細孔に移動する。十分な有機材料、栄養分及びバクテリアが細孔に供給され、Cr(VI)及び他の容易に還元される化合物の生物的還元が行われる。
6.5 から 9.5の間への pH 調整、十分な水分の添加、並びに窒素及びリンのような十分な栄養分の供給を含む生物活性に適当な条件が、 Cr(VI)-含有固体中に維持される。
【0017】
本発明の生物的還元方法では、バクテリアの増殖に適した条件が得られるように材料中に6.5から9.5の間のpHを長期間達成するのに必要な無機酸又は塩基の量を決定するためにCr(VI)-含有固体の特性を決定する。一般に、本発明の方法は以下の操作を含む。処理混合物のpHを長期間6.5から9.5の範囲に調整するのに十分な無機酸又は塩基、水及び、堆肥、泥炭又は排水処理スラッジのような、バクテリアおよび栄養分を含む有機材料を、その場でCr(VI)-含有固体に加え、生物的分解方法を増進させてCr(VI)のCr(III)への還元を行わせる。この生物的還元方法の速度を上げるために、硫酸第一鉄を任意で加えてもよい。生物的還元がうまく進むには、平衡条件が確立した後に材料のpHが6.5から9.5の間に維持されることが必要である。処理材料をCr(VI)-含有固体とその場で十分に混合して濃度を均一とする。混合は、例えば中空軸オーガー、耕作機又は他の適当な混合機械を含むいずれの適当な手段によって行ってもよい。
【0018】
本発明の方法では、 Cr(VI)-含有固体又は土壌をその場で反応体と物理的に混合し、地面が反応容器として働く。これにより、現場又は処理プラントの近くにおいてより迅速な反応を行うために Cr(VI)-含有固体を掘削し、次いで材料を物理的に粉砕する必要なしに、大量の Cr(VI)-含有固体に生物的再生及び Cr(VI) 還元を適用することが可能になる。
【0019】
現場での効果的な生物的再生及び Cr(VI) 還元は、以下の操作によって確認することができる。水サンプルを土壌又は材料から採取し、 Cr(VI) 、pH及び全微生物数(プレートカウント法による)を分析して生物的再生方法の進行をモニターしてもよい。土壌又は材料の混合固体の代表サンプルを採取し、全 Cr 及び Cr(VI) 、並びに得られた質量バランスを分析して、Cr(VI)の Cr(III)への転化及び全 Cr の保存がなされていることを確かめることもできる。
【0020】
【実施例】
本発明を以下の実施例によってさらに詳しく説明する。これらの実施例は説明のために用いるのであって、開示又は特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。実施例及び本明細書中の他でのパーセンテージは、他に指定されない限り、 Cr(VI)-含有固体の乾燥重量に対する材料の乾燥重量パーセントで示す。
実施例1
本発明をクロム鉄鉱石加工残査について試験した。COPR及び処理材料の組成を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
以下の操作を使用した:
1.COPR材料を十分に混合して 1/2インチの篩を通し、サンプルを均質化し破片を除去した。
2.COPRのサンプルを種々の量の水道水、硫酸、硫酸第一鉄、新しい堆肥、培養した堆肥及び泥炭と混合した。
3.混合物を直径6インチのカラムに約1フィートの深さに詰めた。
4.カラムに水を加え、混合物を飽和させた。
5.液体サンプルを底の蛇口から採取し、 Cr(VI) 、pH及び全微生物数(プレートカウント法による)について分析した。
6.混合固体のサンプルを採取し、栄養分(窒素及びリン)、COD 、並びに全Cr及び Cr(VI) について分析した。
【0023】
7.カラムを密封し室温(約 20 ℃)で保存した。カラムをサンプル採取のために開封し、再び密封した。
8.各月毎に、水サンプルをカラムから流出して採取し、 Cr(VI) 、pH及び微生物数について分析した。カラム内の水の高さをモニターし、飽和状態が維持されるように水を加えた。カラムを開封して固体サンプルを採集し、全Cr及び Cr(VI) について分析した。
カラム試験の試験条件を表2に示す。泥炭及び培養した堆肥の混合物を試験し、新しい堆肥と比較したこれらの生物的に安定化された材料の有効性を測定した。カラム C1 及び C2 には硫酸第一鉄を加え、Cr(VI)の初期還元が、バクテリアに対する潜在的なクロムの毒性の軽減及び生物的還元方法の増進に必要とされるかどうかを測定した。
【0024】
【表2】
【0025】
COPR Cr(VI)-含有固体における本発明の方法の試験において、サンプルの pH は初期 pH が 5.6から 8.1になるように硫酸で調整した(表3)。1ヶ月の間に pH は 7.8から 9.4の間に安定化した。これらの試験により、無機酸を1回だけ添加することによって COPR Cr(VI)- 含有固体の pH を長期間 Cr(VI) の生物的還元に最適な範囲に調整できることが示された。
【0026】
【表3】
【0027】
表4は、堆肥及び泥炭の種々の混合物を材料に適用し、かつ pH を最適範囲 (pH 6.5から 9.5) に調整した場合に、バクテリアの培養が COPR 中に発生及び維持できることを示している。有機物を補充していない C0 及び C1 は、両方とも低い微生物数で開始された。(培養した又は新しい)堆肥を加えたカラムは全て、健全なバクテリア数で開始された。これらの微生物数は最初の2ヶ月の間は減少する傾向にあったが、その後増加し、これはおそらくはバクテリアが COPR 中の高濃度の Cr(VI) に順応する必要があったためであろう。C4は回復が非常に遅かった。このカラムはまた pH が最も高く(試験期間のほとんどに渡って9よりも高かった)、このことは高い pH が Cr(VI) よりも強い毒性因子であるという結論を裏付けている。新しい堆肥を最も多く用いたカラム (C5) では、最も良好なバクテリア培養がなされた。pHがピーク時で 9.3まで上がったが、C2も健全なバクテリア培養がなされた。
【0028】
【表4】
【0029】
表5は細孔水中の Cr(VI) 濃度を示し、表6はカラムの固体相中の全 Cr(VI) を示す。対照カラム (C0) データは、試験期間を通じて基本的に変化がなかったことを示している。これにより、 pH の低下はバクテリアの生育を適度に促進したが、その結果 COPR 中の Cr(VI) が有意に還元されるということはなかったことが示される。
【0030】
有機物で処理したサンプルは全て、細孔水 Cr(VI) が即座に、且つ有意に還元されたことを示した。カラム C3 及び C5 の細孔水(表5)では、4ヶ月後には 0.01 mg/lの検出限界以下まで減少し、残りの期間中も検出不能を維持した。カラム C2 中の細孔水では7ヶ月後には検出限界以下まで減少したが、1年後には検出限界よりもわずかに高くなった。カラムの1つ (C4) は、pHが高く、その結果としてバクテリア数が少ないために、他のカラムよりも遅れていた。1年後に細孔水 Cr(VI) は検出限界付近又は以下を維持していた。1年後には、補充したカラムからの固体相 Cr(VI) 濃度は全て(表6)100 mg/kg よりも低く、C4以外は全て 20 mg/kg の検出限界よりも低かった。9ヶ月後に採集した先のサンプルでは、カラム C2 及び C5 中の固体相 Cr(VI) 濃度はそれぞれ 6及び 8 mg/kgの検出限界よりも低かった。
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
【0033】
この試験から、Cr(VI)-含有固体をその場で生物的還元する本発明の方法が技術的に実行可能であることが証明された。Cr(VI)-含有固体のpHは無機酸又は塩基を1回添加することによってバクテリア活性に最適な範囲(6.5から9.5)に調整することができる。バクテリアおよび栄養分を含む有機材料(新しい堆肥及び培養した堆肥並びに泥炭と栄養分の種々の混合物)を加えることにより、適当なバクテリア数及びその増殖に適した環境が提供された。これらのバクテリアは2,000mg/kgを超えるCr(VI)濃度に順応することができ、またCr(VI)-含有固体中のCr(VI)濃度を減少させるであろうことが示された。硫酸第一鉄を添加することにより、有機材料だけで処理した場合と比較するとCr(VI)還元がより速く行われた。
【0034】
実施例2
処理するCr(VI)-含有固体を最初に試験して、Cr(VI)-含有固体のCr(VI)還元に必要な添加剤の適当な量を決定してもよい。酸又は塩基の必要量は、そのCr(VI)-含有固体の代表サンプルの酸又は塩基滴定によって決定することができる。バクテリアおよび栄養分を含む有機材料の必要量、すなわち、新しい堆肥又は培養した堆肥及び/又は泥炭は、実験カラム又は現地でのパイロット試験を用いて決定することができる。
【0035】
添加剤の典型的な用量比率は、乾燥重量ベースで Cr(VI)-含有固体に対して堆肥が 5% 未満、有機酸又は塩基が 2% 未満と考えられる。処理領域は、必要に応じて別々の処理ゾーンに分割して、異なる量の処理添加剤の使用を容易にすることもできる。領域に対する添加剤の量を決定すると、添加剤を Cr(VI)-含有固体に加え混合する。添加剤の適用及びそれらの Cr(VI)-含有固体との混合は、安定化/固体化のためにポゾラン(pozzolonic)材料のその場での混合に用いられるような中空軸オーガー又は「泡立て器」様装置を用いて行い、添加剤をさまざまな深さに同時に加え、添加剤を Cr(VI)-含有固体と十分に混合することもできる。地表付近の Cr(VI)-含有固体に対しては、すき又は耕作機のような農具を使用して添加剤を Cr(VI)-含有固体と混合してもよい。
【0036】
本発明を利用することによって、比較的単純で便利な様式で用地の Cr(VI) 還元を効果的に達成することができる。本発明の方法で具体化されたその場での生物的再生は、先行技術による掘削及び化学的処理なしに Cr(VI) 還元を達成し、使用すれば多くの利益を得ることができる。用地が一旦本発明のその場で行う方法によって処理されれば、より毒性が低く移動性がより低い Cr(III)原子価状態を含む地面のその場に材料を放置することができる。
本発明を好ましい態様について述べてきたが、当業者には明らかなように変更及び改良を行うことができる。このような変更及び改良は特許請求の範囲内にあるものとみなすべきである。
Claims (6)
- Cr(VI)-含有固体をその場で生物的に還元する方法であって、Cr(VI)-含有固体に、バクテリアおよび栄養分を含む有機材料、混合物のpHを6.5ないし9.5の間に維持するのに十分な量の無機酸又は塩基、及び水を加えること、並びにCr(VI)-含有固体及び添加剤をその場で十分に混合しそれによってその場におけるCr(VI)のCr(III)への還元を行わせることを含み、
前記バクテリアおよび栄養分を含む有機材料が、新しい又は培養した堆肥、泥炭、排水処理スラッジ、又はそれらの混合物を含む、前記方法。 - 添加及び混合が中空軸オーガー、又は農具によって行われる、請求項1に記載の方法。
- 農具がすき又は耕作機である、請求項2に記載の方法。
- 混合が中空軸オーガーを使用して達成される、請求項2に記載の方法。
- バクテリアが大腸菌(Escherichia coli)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- Cr(VI)-含有固体をその場で生物的に還元する方法であって、処理するCr(VI)-含有固体を分析して、Cr(VI)還元に必要な添加剤の適当な量を決定すること;Cr(VI)-含有固体に、決定された量のバクテリアおよび栄養分を含む有機材料、無機酸又は塩基、及び水を加えて混合物のpHを6.5ないし9.5の間に維持すること、並びにCr(VI)-含有固体及び添加剤を十分に混合してその場におけるCr(VI)のCr(III)への還元を行わせることを含み、
前記バクテリアおよび栄養分を含む有機材料が、新しい又は培養した堆肥、泥炭、排水処理スラッジ、又はそれらの混合物を含む、前記方法。
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