JP2005319456A - 廃棄物埋立処分場の安定化促進工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 廃棄物最終処分場の安定化の促進を図ることができるとともに、浸出液の処理に要する費用を軽減することができる方法を提供する。
【解決手段】 廃棄物埋立処分場の安定化を促進するためのものであって、廃棄物埋立処分場の廃棄物堆積層中に、パイプを少なくとも一本、貫通させて設置し、該パイプを通して、少なくとも一種の有機物分解性微生物を含む水溶液及び/又は少なくとも一種の重金属固定剤を含む水溶液を前記廃棄物堆積層中に投入することを特徴とする廃棄物埋立処分場の安定化促進工法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、廃棄物埋立処分場の安定化を促進する工法に関するものである。
廃棄物埋立処分場の埋立地に埋め立てられた廃棄物中には、水を汚染する様々な物質(BOD値やCOD値に反映される有機成分や、金属などの無機成分)が含まれている。埋立地に雨水が浸透して廃棄物と接触すると、廃棄物中に含まれているこれらの有機物や無機物は、浸透雨水に溶解あるいは微粒子状態で移行して、汚水(浸出液)として排出される。この浸出液は、公共用水域や地下水の汚染を防止するために、浸出液処理施設において処理され、浄化された後放流される。河川や湖沼、海域などの公共用水域へ放流するためには、法律で定める排水基準を満たす必要があり、また、放流後に田用水や水道原水などに混入する場合には、排水基準よりもさらに厳しい基準が適用されることもある。このため、浸出液処理施設では、生物処理、凝集沈殿処理、砂ろ過、活性炭吸着処理、キレート吸着処理、膜処理、微量有害物質除去処理などを組み合わせた高度処理方式により処理する必要があり、処理施設の建設費および維持管理費はかなり高額になる。
通常、廃棄物埋立処分場では、埋め立てられた廃棄物中の有機物は、自然降雨による水供給を受けて、埋立地内部に存在する微生物の作用により分解され、液化やガス化する。これらが浸透雨水に溶解するなどして、浸出液中に含まれて外部へ排出され、残りは土砂化(腐植土など)して安定化状態で残存する。また、埋め立てられた廃棄物中に混在する重金属やカルシウムは、浸透雨水に溶解するなどして、浸出液中に含まれて外部へ排出され、残りは不溶性の状態あるいは他の土粒子に吸着されて処分場内に安定化状態で残存する。このように、廃棄物埋立処分場の有機物や無機物が安定化状態(一般土壌と同様の安定な物質に変わる)となれば、浸出液中に溶け出すことはなくなり、浸出液の水質が改善されて、対策を講じなくても、環境へ影響しなくなる(廃棄物埋立処分場が安定化する)。しかし、その速度は遅く、長期間を要するという問題がある。
廃棄物埋立処分場は、安定化して、都道府県知事等により廃止が認められるまでの期間は、その維持管理を行う必要がある。具体的には、最終処分場の維持管理基準に則り、周縁2ヶ所の地下水の水質、浸出液及び放流水の水質を法律で定める頻度、水質項目に基づいて測定し、記録を保存しなければならない。さらに、構造物の点検、保守、補修などを行い、施設が適正に機能するように維持管理しなければならない。産業廃棄物の管理型処分場や一般廃棄物埋立処分場が、埋立終了後から廃止基準に適合するまでの期間は、埋立地の立地条件(山間埋立地、平地埋立地など)、埋立量、廃棄物の性状(有機性汚泥、紙ごみ、木くず、繊維くず、動植物性残渣、廃プラスチック、焼却灰やばいじんなど)、埋立工法(区画埋立、覆土の性状、覆土厚さなど)、処分場構造等により大きく異なるが、通常、5年〜数十年以上を要するといわれている。そのため、埋立処分場の廃止までにかかる費用は莫大なものとなる。
特許文献1において、一般廃棄物や産業廃棄物を埋め立てた廃棄物最終処分場の有害物質除去方法であって、前記廃棄物最終処分場への雨水の流入を防止する状態において、埋め立てた廃棄物に散水して、廃棄物より浸出した浸出水を引き抜き、引き抜いた浸出水に、生物処理や凝集沈殿処理や砂ろ過や活性炭吸着などの浸出水処理を施して、浸出水中の有害物質を除去し、有害物質を除去した処理水は循環返送して前記廃棄物に散水するものであって、散水に酸を混合することを特徴とする廃棄物最終処分場の有害物質除去方法が開示されている。この方法では、埋め立てた廃棄物に酸性の処理水を散水することによって、重金属などの有害物質の溶出を促進することができ、埋立完了後の処理期間を短縮することができる。
特開平10−5714号 廃棄物最終処分場の有害物質除去方法
しかしながら、上記した特許文献1の方法では、重金属以外に大量に埋め立てられるカルシウム成分(焼却灰、ばいじんなど)なども浸出液中に溶出するので、浸出液の処理にかかる費用がより高額になるといった問題がある。また、処理により発生した汚泥は再び埋立処分しなければならないという問題がある。
さらに、廃棄物埋立処分場における浸出液の性状として、浸出液中の窒素濃度が非常に下がりにくいという問題がある。管理型埋立処分場における浸出液の性状を図11に模式的に示す(出典:福岡大学工学部水理衛生工学実験室)。図11は、アンモニア性窒素の経年変化を示すものであるが、浸出液中の窒素の形態はほとんどアンモニア性であることから、埋立地内部の保有水の全窒素濃度も図11とほぼ同様になる。
埋立当初は、埋立処分場内部における微生物の活動は不活発であり、浸出液のBOD濃度は高いが、埋立が進行するに従って処分場内の微生物により有機物が分解されるので、急激に低下する。一方、浸出液中の窒素成分はアンモニアの形態で溶解しており、場内では酸素が不足しているので硝化されず、次第に高濃度に変化する。
従って、埋め立てから年数が経過するにつれ、管理型埋立処分場において発生する浸出液の水質は、BOD濃度は低くなるが、CODや全窒素の濃度が依然高い傾向にある。
放流水は、窒素濃度についても規制されているため、BODのほかに窒素濃度も下げる必要があり、窒素除去に適した浸出液処理システムを設置する必要がある。
窒素の除去は通常、一旦有機物を分解しBODを除去した後に、硝化槽で曝気して硝化を行い、アンモニア性窒素から硝酸性窒素へ変換し、その後、硝化した排水を脱窒細菌の作用で硝酸性窒素から窒素ガスに還元することによって行っている。この際、脱窒細菌の栄養源としての炭素が不足するため、メチルアルコ−ルなどの有機物を供給しなければならないが、水処理コストが高くなり、且つ、処理水質の悪化が懸念されている。
このため、浸出液中の窒素濃度の早期低下が望まれているが、浸出液中の窒素濃度は非常に下がりにくく、埋立から相当の年月が経過しても、高濃度のままであるという問題があった。
本発明は、以上のような従来技術における問題点を考慮してなされたものであり、廃棄物埋立処分場の安定化促進を図ることができるとともに、浸出液の処理に要する費用を軽減できる方法を提供するものである。さらには、浸出液中の全窒素濃度を効率よく低下させることができる方法を提供するものである。
本発明は、廃棄物埋立処分場の安定化を促進するためのものであって、廃棄物埋立処分場の廃棄物堆積層中に、パイプを少なくとも一本、貫通させて設置し、該パイプを通して、少なくとも一種の有機物分解性微生物を含む水溶液を、前記廃棄物堆積層中に投入することを特徴とする、廃棄物埋立処分場の安定化促進工法である。
パイプを通して、有機物分解性微生物を含む水溶液を廃棄物堆積層中に投入することにより、投入した微生物が廃棄物堆積層中で生育し、あるいは堆積層中に元から存在していた微生物が活性化され、有機物の分解が促進される。その結果、廃棄物埋立処分場の安定化が促進され、廃止までに要する期間を短縮することができる。また、埋立地から有機物を洗い出す方法と異なり、埋立地自体にいわば浄化作用を持たせるため、浸出液の水質を改善し、浸出液処理費用の軽減を図ることができる。さらに、埋立終了から年数が経過しても下がりにくい浸出液中の全窒素濃度を効率良く低下させることができる。そのため、このことによっても浸出液処理費用を軽減することができる。
また本発明は、廃棄物埋立処分場の安定化を促進するためのものであって、廃棄物埋立処分場の廃棄物堆積層中に、パイプを少なくとも一本、貫通させて設置し、該パイプを通して、少なくとも一種の金属固定化剤を含む水溶液を前記廃棄物堆積層中に投入することを特徴とする、廃棄物埋立処分場の安定化促進工法である。
パイプを通して、金属固定化剤を含む水溶液を、廃棄物堆積層中に投入することにより、埋立地内における可溶性重金属類や塩類の溶出の抑制を図ることができ、廃棄物埋立処分場自体の安定化が促進され、廃棄物埋立処分場の廃止までに要する期間を短縮することができる。また、重金属類の洗い出しを促進する方法と異なり、埋立地内で重金属類を固定化するため、浸出液中に排出される重金属類が低減され、浸出液処理費用の軽減を図ることができる。
前記パイプは、管壁に多数の放水孔を設けた多孔性パイプであることが好ましい。管壁に多数の放水孔を設けたパイプを通して、有機物分解性微生物あるいは金属固定化剤を含む水溶液を投入することにより、パイプの管壁に設けた放水孔を通して、有機物分解性微生物あるいは金属固定化剤を含む水溶液を、廃棄物堆積層中に効率よく散布することができ、浸出液の浄化及び安定化がより促進される。
前記パイプを通して、有機物分解性微生物と共に金属固定化剤を含む水溶液を、廃棄物堆積層中へ投入することも可能である。
同一埋立地の廃棄物堆積層中に、有機物分解性微生物と金属固定化剤の両方を投入することにより、有機物の分解と重金属類の固定化をそれぞれ促進することが可能になる。この際、微生物と金属固定化剤を別々のパイプを通して投入することもできるが、同一のパイプを通して投入することにより、工程の簡略化を図ることができる。
前記水溶液は、前記廃棄物埋立処分場から浸出した浸出液の原水あるいは処理水を含むものであってもよい。
廃棄物堆積層中に投入する水溶液として、浸出液の原水あるいは処理水を利用することにより、処分場外へ放流する浸出液量を低減あるいは無にすることができる。このため、浸出液を処分場外へ放流するために必須である、排水基準等を満たしやすくなるか、あるいは排水基準等を満たすための処理や検査が不要になる。従って、浸出液処理施設を小規模なものとすることが可能となり、施設の建設・維持管理にかかる費用を低減することができる。
前記廃棄物埋立処分場に、廃棄物堆積層への雨水の浸透を防止するための手段を設けてもよい。
廃棄物堆積層への雨水の浸透を防止することにより、天候による浸出液量の変動を防止し、処理施設にかかる負担・経費を軽減することができる。また、廃棄物堆積層中に投入する水の量を、微生物の成育に適した量とすることにより、廃棄物堆積層中の微生物生育環境を人工的に調節して、有機物の分解を促進することができる。
前記多孔性パイプを設置する代わりに、廃棄物埋立処分場の埋立地に、注水孔を設けて、該注水孔を通して、少なくとも一種の有機物分解性微生物あるいは金属固定化剤を含む水溶液を、前記埋立地の廃棄物堆積層中に投入してもよい。
前記パイプあるいは前記注水孔の周囲の少なくとも一部に、平均粒径10〜500mmの粒状物質の層を形成し、前記パイプあるいは注水孔から放出される水溶液が、前記粒状物質層を経て前記廃棄物堆積層中に浸透するようにしてもよい。
上記構成をとることによって、パイプあるいは注水孔から廃棄物堆積層中への水溶液の浸透がスムーズになり、投入効率が上昇する。また、水溶液を放出する部分の目詰まりが起こりにくくなる。
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、廃棄物埋立処分場の廃棄物堆積層中に、有機物分解性微生物を含む水溶液を投入するため、堆積層中の有機物の分解を促進することができる。また、浸出液の窒素濃度を効率よく低下させることができる。また、前記パイプを通して、少なくとも一種の金属固定化剤を含む水溶液を投入すれば、重金属類の固定化を促進することができる。
この結果、廃棄物埋立処分場の安定化を促進することができるとともに、浸出液原水の水質を改善することができる。
また前記パイプとして、管壁に多数の放水孔を設けた多孔性パイプを用いれば、より効率よく廃棄物堆積層中に水溶液を散布することができる。
また、前記パイプを通して、有機物分解性微生物と共に金属固定化剤を含む水溶液を廃棄物堆積層中投入すれば、簡易な工程で、有機物の分解および重金属類の固定化の両方を促進することができる。
さらにまた、前記水溶液として、廃棄物埋立処分場から浸出した浸出液の原水あるいは処理水を含む水溶液を用いることにより、埋立処分場外へ放流する浸出液の量を低減することができる。
また、前記廃棄物埋立処分場に、前記廃棄物堆積層への雨水の浸透を防止するための手段を設けることにより、廃棄物堆積層に浸透する水の量および廃棄物堆積層から発生する浸出液の量を調節することが可能になる。
また、前記多孔性パイプの代わりに、廃棄物埋立処分場の埋立地に注水孔を設けて、該注水孔を通して、有機物分解性微生物を含む水溶液を、前記埋立地の廃棄物堆積層中に投入することによっても、廃棄物堆積層中の有機物の分解を促進することができるとともに、浸出液中の窒素濃度を低減することができる。同様に、前記注水孔を通して、金属固定化剤を含む水溶液を投入すれば、金属類の固定化を促進することができる。
これにより、廃棄物埋立処分場の安定化を促進することができるとともに、浸出液原水の水質を改善することができる。
また、前記パイプあるいは前記注水孔の周囲の少なくとも一部に、平均粒径10〜500mmの粒状物質の層を形成することにより、水溶液を効率よく廃棄物堆積層中に浸透させることができ、また、パイプや注水孔の目詰まりを防ぐことができる。
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年12月制定 法律第137号)において、廃棄物の種類ごとに埋立処分の個別基準が設定されている。廃棄物埋立処分場は、一般廃棄物処分場と産業廃棄物処分場に大分類され、産業廃棄物を埋立対象とした処分場は、遮断型処分場、安定型処分場及び管理型処分場の三つに分類され、各々の処分場に埋立処分できる廃棄物の種類及び構造基準・維持管理基準が規定されている。
本発明の対象になる廃棄物埋立処分場は、主に一般廃棄物埋立処分場と産業廃棄物の管理型埋立処分場である。一般廃棄物埋立処分場とは、産業廃棄物以外の廃棄物を埋め立てる処分場であり、一般廃棄物(主に家庭ごみ)の埋立場所である。また、管理型埋立処分場とは、産業廃棄物のうち、紙くず、繊維くず、木くず、動植物性残さ、動物のふん尿、動物の死体及び燃え殻、ばいじん、汚泥、鉱さい及び廃棄物を処分するために処理したものを埋め立てる場所をいう。
また、本発明の対象になる廃棄物埋立処分場には、有害な燃え殻、ばいじん、汚泥、鉱さいを埋立て対象とした遮断型埋立処分場や、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラス・コンクリ−トくず及び陶磁器くず、工作物の除去に伴って生じたコンクリ−トの破片及びこれに類する不用物(ガレキ類)などを埋立処分する安定型埋立処分場も含まれる。
廃棄物埋立処分場が安定化するとは、浸出液の水質や発生ガスによる環境への影響がない状態まで、廃棄物埋立処分場が浄化されることを意味する。例えば、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」では、産業廃棄物の管理型処分場及び一般廃棄物最終処分場について、下記の(1)〜(3)を満たした場合に安定化したと認めている。
(1)浸出液の原水水質が、次の頻度で測定し、2年以上にわたり行った水質検査の結果、排水基準等に適合していること。
1.測定頻度;排水基準等の項目を6月に1回以上、測定すること。
2.水質項目はBOD、COD、SSとし、3月に1回以上、測定すること。
(2)埋立地からガス発生がほとんど認められない、又はガスの発生量の増加が2年間以
上にわたり認められないこと。
(3) 埋立地の内部が周辺の地中温度に比して、異常な高温になっていないこと。
本発明の工法は、廃棄物埋立処分場の埋立完了後のみならず、埋立中にも行うことができる。すなわち、埋立途中の廃棄物堆積層中に、注水孔あるいはパイプを通じて水溶液を投入し、安定化を促進しつつ、廃棄物の埋立を続けることも可能である。
本発明にかかるパイプは、直径約30mm以上のものが好ましく、より好ましくは直径約40〜約200mmのものであり、特に好ましくは直径約50〜約80mmのものである。
また、多孔性パイプを用いる場合、パイプの管壁に設けられた放水孔の大きさは、約3mm〜約30mmであることが好ましく、より好ましくは約10mmである。放水孔は、廃棄物堆積層中に水溶液を均一に散布できるよう、管壁の全周に渡って設けられることが好ましく、また、パイプの長手方向約1mあたり、放水孔の大きさにもよるが、少なくとも10個以上、好ましくは100個以上の割合で設けられることが好ましい。
パイプの設置間隔は、埋立地の形状、埋立物、埋立構造、埋立工法などにより異なるが、300mから1000mに1本の割合とすることが好ましい。パイプの設置は、例えば、廃棄物埋立中あるいは埋立後に、廃棄物覆土層を貫通するボ−リング孔を形成し、このボーリング孔にパイプを挿入する等して設置することができる。パイプは、埋立地表層から即日覆土や中間覆土層を貫通して設置されていれば効果が期待できるが、多孔性パイプの場合は特に、パイプ設置場所の全廃棄物堆積層の約1/3以上を貫通するように設置することが好ましい。
また、パイプを貫通させて設置するとは、パイプが廃棄物堆積層中を通るように設置されていることを意味する。従って、貫通とは、パイプが廃棄物堆積層中に直線上に設置されていることのみを意味せず、曲線状に設置されていてもよく、廃棄物堆積層中に網目状に配置されていてもよい。
パイプが目詰まりするなどして使用に適さなくなった場合は、適宜パイプを交換すればよく、目詰まりが頻繁に起こる場合は、パイプの設計変更や、周囲に粒状物質層を設けるなど適宜対処すればよい。
前記多孔性パイプに投入された水溶液は、廃棄物堆積層中で水平方向に散布されることが好ましい。そのため、多孔性パイプの直径、放水孔の大きさを調節する他、パイプに投入する水溶液に圧力をかけてもよい。また、パイプ周囲を粒状物質層で囲ってもよい。
本発明における水溶液とは、水を溶媒とする溶液であり、物質が完全に溶解している溶液のみならず、物質をコロイド状、あるいは懸濁状態で含む溶液も含む。
前記パイプあるいは注水孔を通じて投入する水溶液の量は、埋立地の形状、埋立物、埋立構造、埋立工法、降雨状況などにより異なるが、廃棄物処分場の浸出液処理施設の処理能力を超えない程度の水量とすることが好ましい。また、廃棄物堆積層への雨水の浸透を防止する手段が設けられている処分場の場合は、降雨の状況に関係なく、所定の量を投入することができる。この場合にも、浸出液原水の水質等を考慮し、投入する水溶液量を調節することが好ましい。
また、前記水溶液は、浸出液の原水や処理水を含んでいてもよい。本発明において、浸出液の原水とは、埋立地の廃棄物堆積層から浸出した浸出液そのものか、あるいは希釈したものを指す。浸出液の処理水とは、浸出液の原水に、希釈以外の一定の処理を加えたものを指す。例えば、生物処理、凝集沈澱処理やろ過処理などの処理を行い、排水基準値以下まで低下させたものである。
原水を利用する場合には、埋立処分場の浸出液処理施設の原水設定値を考慮し、浸出液の原水水質が設定値の最大濃度を超えない範囲で注入することが適切である。
また、貯留させておいた雨水、河川水、地下水や湧水なども水溶液として利用することができる。
さらに、前記水溶液には、有機物分解性微生物や金属固定化剤の他にも、微生物の生育や増殖を助ける物質、例えば、浸出液処理工程で発生した微生物を含む汚泥あるいは糖蜜やアルコ−ルなどの栄養剤などが含まれていてもよい。また、重金属類の固定機能を高める物質、例えば、イオン交換剤や活性炭などの炭化物などの吸着剤が含まれていてもよい。また、処分場へ注入する水溶液に、空気を強制的に含ませて(例えば、水処理時に微細空気を注入するなど)溶存酸素の向上を図ってもよい。これにより、処分場内におけるアンモニアの硝化速度を向上させて、浸出液中の窒素濃度をより効率的に下げることができる。
本発明にかかる有機物分解性微生物は、埋立地内部において効率的に有機物を分解できる微生物が好ましい。または、埋立地中に存在する微生物の餌となって、これらを活性化することによって有機物の分解を促進する微生物であってもよい。埋立地内部は好気的な部分と嫌気的な部分が混在しているので、両方の雰囲気下で活動できる微生物群が適切である。とくに、埋立地の空気の流入構造を考慮すると、埋立地表層部や底部集排水管付近が最も好気性雰囲気であり、そこから離れるにしたがって嫌気性雰囲気になるものと推定される。このような条件を考慮すると、添加する微生物群は酸素濃度がやや低い状態で最も活動する通性嫌気性菌が好ましい。たとえば、酵母類、乳酸菌や納豆菌あるいはこれらの混合物である。また、浸出液処理施設における生物処理槽で生じた汚泥には有機物を分解する微生物群が含まれているので、この汚泥由来の微生物を用いることも効果的である。
水溶液中に含まれる有機物分解性微生物の量は、廃棄物堆積層中の有機物量等によっても適宜調節可能であるが、一般に水溶液中に0.1〜5%程度含まれることが効果的であり、かつ経済的である。
本発明にかかる金属固定化剤とは、排水基準及び土壌環境基準で規定されているすべての重金属類(水銀、カドミウム、鉛、六価クロム、ヒ素、銅、亜鉛、ベリリウム、クロム、ニッケル、バナジウム、セレンまたはそれらの化合物)、および浸出液処理施設で障害となるカルシウムのうちの、いずれか一種以上を固定化できる物質を指す。
具体例として、重金属類の安定化に効果のあるキレ−ト剤あるいは塩類の不溶化に効果があるイオン交換剤や凝集剤を挙げることができる。埋立地内部において効率的に重金属類と結合して安定化できる液状の薬剤が好ましいが、粒子状であってもかまわない。
前記キレ−ト剤は、廃棄物堆積層中の重金属類を化学的に安定な不溶性の状態にする。重金属類の種類及び濃度により、適切なキレ−ト剤の種類や濃度が異なるので、埋立地中の重金属を考慮し、適切なキレート剤・濃度を選択することが好ましい。また、浸出液中で最も濃度の高い重金属の固定に適したキレ−ト剤を添加することが好ましい。市販されているキレ−ト樹脂には、スチレン系、アクリル系、フェノ−ル系の高分子基体にイミノ二酢酸基、ポリアミン酸、アミノメチルホスホン酸、オキシム基などの官能基を付与させたものやピロリジン系、イミン系、カルバミン酸系の高分子基体に硫黄化合物や窒素化合物を付与させたものなどがある。これらのキレ−ト剤を含む水溶液を投入することにより、重金属類は廃棄物堆積層中に固定化されるか又はキレ−ト吸着により固定化した粒子状物質として浸出液と共に排出される。吸着機能を残している場合には排出された粒子状物質を再度キレート剤として添加し、循環利用することもできる。水溶液中のキレート剤の濃度は、廃棄物堆積層中の重金属の濃度にもよるが、約0.01〜約5%であることが好ましい。また、キレ−ト剤の替わりに吸着能力を有するイオン交換剤や活性炭などの炭化物などを添加して循環することも可能である。
また、溶解したカルシウムなどの塩類を炭酸カルシウムとして固定化するために、炭酸ナトリウムなどの炭酸化合物を水溶液に添加して循環することも可能である。浸出液中のカルシウム濃度にもよるが、約0.1〜約5%であることが好ましい。
前記凝集剤は大別して有機系と無機系に分けられる。水中に存在している微粒子は一般的に表面が負に荷電しており、これを中和することで凝集する。とくに、金属イオンはpHの影響を受けるので、アルカリ性を高くして凝集を促進することも可能である。無機系凝集剤としては、一般的に水処理で用いられている硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄や塩化鉄などがある。一方、有機凝集剤には界面活性剤と高分子凝集剤がある。たとえば、界面活性剤には陰イオン性のラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムなどがあり、陽イオン性にはドデシルアミン・アセテ−トやオクタルデシルアミン・トアセテ−トなどがある。また、高分子凝集剤としては、アルギン酸ナトリウム、水溶性アニリン樹脂塩酸塩などがある。これらはいずれも投入する水溶液に約0.01%〜約5%の濃度になるように添加することが好ましい。また埋立当初に低濃度で用い、次第に高濃度にするなど添加効果を確認しながら利用することが望ましい。
前記有機物分解性微生物と前記金属固定化剤の両方を、同一埋立地の廃棄物堆積層中に投入することにより、有機物の分解と金属の固定化をそれぞれ促進して、廃棄物処分場の安定化をより促進することができる。この際、微生物と金属固定化剤を別々の多孔性パイプあるいは注水孔を通して投入してもよく、同一のパイプあるいは注水孔を通して投入してもよい。また、同一のパイプあるいは注水孔を通して投入する場合、両者を共に含む水溶液を投入してもよく、あるいは別々に含む水溶液を、時間差をつけて投入してもよい。それぞれを別々に含む水溶液を投入する場合、微生物を含む水溶液には微生物分解を促進する他の物質を添加し、金属固定化剤を含む水溶液には金属固定化を促進する他の物質を添加してもよい。
本発明にかかる、廃棄物堆積層への雨水の浸透を防止するための手段としては、例えば、廃棄物堆積層の表層を、遮水性あるいは難透水性を有する材料(遮水性あるいは難透水性を有する覆土、シートなど)で覆うことを挙げることができる。雨水の浸透を完全に遮断するものだけでなく、大半を防ぐことができるものであればよい。
本発明における注水孔とは、上記水溶液を廃棄物堆積層中に投入するための孔であって、例えば掘削孔であり、表層部からオ−ガ−やボ−リング工法、バックホウやベノト工法などで掘削することによって設けることができる。また、覆土を貫通する直径50cm以上の掘削孔が好ましい。なお、掘削孔の深さや数は、埋立処分場の立地条件(開析谷、平地、山間など)、埋立量(容量、広さ、深さなど)、気象条件(日平均、月、年降水量、日照時間、湿度など)により決定することが出来る。また、覆土を完全に貫通する深さの孔を堀り、この孔にパイプを挿入して注水孔としてもよく、あるいは、栗石や砕石を詰めた竪孔を設け、覆土層底部に敷設した砕石などを詰めたトレンチ(溝)に接続し、竪孔から注水してもよい。
本発明において、粒状物質層とは、平均粒径10〜500mmの粒状物質からなる層を指す。より好ましくは平均粒径30〜300mm、さらに好ましくは平均粒径50〜150mmの粒状物質からなる層である。粒状物質層は、パイプあるいは注水孔から廃棄物堆積層中に水溶液が放出される位置のいずれかあるいは全てに設けられる。具体的には、パイプを通じて水溶液を投入する場合は、パイプの出口周辺部分であり、パイプが多孔性パイプの場合はパイプ管壁の外周部分も含み、掘削孔をそのまま利用して水溶液を投入する場合は、掘削孔の底面あるいは周壁部分である。粒状物質の層の厚さは諸条件により適宜調節すればよいが、好ましくは30cm以上であり、より好ましくは50cm以上である
本発明に係る粒状物質としては、耐水性を有する無機物を使用する。耐薬品性を有するものがより好ましく、また、重量及び強度があるものが好ましい。このような粒状物質の一例として、一般に栗石(ぐり石)と呼ばれている砕石や砂利などを挙げることができる。
図10に粒状物質層の一実施例を示す。図10では水溶液を投入するための注入管を、覆土を貫通する深さで設置し、注入管下端部に粒状物質層を設けている。図10の構成をとることにより、注入管に投入された水溶液は、廃棄物堆積層中によりスムーズ且つより広範囲に浸透していく。
次に、本発明にかかる廃棄物埋立処分場の安定化促進工法の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
実験を行った廃棄物埋立処分場は、管理型の処分場である。図1にその概略を示す。図中、1は埋立地の廃棄物堆積層中に貫通させた多孔性パイプであり、2は埋立地底部に埋設された浸出液集排水管であり、3は該集排水管から排出される浸出液が流れ込む浸出液調整槽であり、4は浸出液を処理する処理施設であり、5は揚水設備であり、6は揚水した水溶液を貯留する貯留槽であり、7は微生物培養施設であり、8は培養した微生物の貯留タンクである。
前記廃棄物堆積層には、雨水の浸透を防止するために中間覆土及び即日覆土(表面覆土)が設けられている。
多孔性パイプ1は、表面覆土及び中間覆土を貫通し、かつパイプ設置場所の全廃棄物堆積層の約1/3以上を貫通するように設置されている(当該処分場の埋立層厚は、約5〜50mである)。具体的には、埋立層厚が約30mの地点には長さが約15mの多孔性パイプを設置した。また、パイプの管壁には、パイプ1mにつき直径6mmの放水孔を約10個設けた。当該パイプは塩化ビニール製であり、設置は、ボ−リング掘削後にパイプを挿入することによって行った。
埋立処分場底部に敷設した浸出液集排水管2は浸出液を速やかに集水する。集水管は、直径が約300mmの上部有孔管であり、周辺は目詰まり防止のためグリ石で覆われている。集水された浸出液は、埋立処分場外に設置した容量が約700m3の浸出液調整槽3に導水されて貯留される。
調整槽3からポンプアップされた浸出液は、浸出液処理施設4に送水され、沈砂、スクリ−ン、油水分離、pH調整などの前処理が行われた後に、生物処理(ばっ気、嫌気、生物膜処理)が行われて、処理水槽へ送水される。なお、当該処理施設の処理能力は1日に270m3である。
この処理水を揚水設備5により上流部に設置した貯留槽6へ揚水する。なお、揚水設備は、2機の揚水ポンプからなり、所定量の浸出液処理水を高度差80m、距離約1.2km上流の貯留槽6まで時間あたり2機で5トンを揚水する能力がある。貯留槽6は約150m3の貯水能力がある。
微生物培養施設7は、温度コントロ−ラ−、攪拌機、水供給ポンプを備えたFRP製タンクからなり、これに所定量の糖蜜(60kg)や水(930kg)を注入して攪拌した後に所定量の納豆菌(10g)、乳酸菌(10g)及び酵母菌(5kg)を注入して37度の恒温で2日に1回10分程度ゆっくりと混合攪拌しながら7日間培養し、貯留タンク8(2m)に貯留した。
貯留槽6は、コンクリ−ト製で、容量が約150mあり、貯留槽に貯水された水溶液は、所定の多孔性パイプまで送水ホ−スにより送水される。揚水の際に、水溶液に微生物培養液を約5%の濃度で混合し、多孔性パイプに注入する。なお、貯留槽6と多孔性パイプ1には20m以上の高低差があるので、自然の圧力により注水することができる。また、ホ−スの口を多孔性パイプの口に固定することにより注水した。廃棄物堆積層全体(廃棄物量約30万トン)への水溶液の注入量は、自然降雨や浸出水量の状況を勘案し、浸出液量が処理能力を超えないようにし、1日に平均6トンを週に2回の頻度で注入した。
浸出液のBOD、COD、窒素濃度を測定し、有機物分解性微生物の投入が、廃棄物埋立処分場の浸出液に与える影響を検討した。また、浸出液の電気伝導率も測定した。電気伝導率は、排水基準項目には規定されていないが、電極で簡単に測定できるので、廃棄物処理法においてモニタリング項目に規定されている。電気伝導率は、電気の通り易さを測定したものであり、浸出水中にイオン性の溶解物質を含んでいることを示す指標である。電気伝導率に異常があった場合には、他の水質規制項目の分析が義務付けられるなど、浸出液の水質を把握する目安となっている。すなわち、この数値が低くなるほど、浸出液中の汚濁物質も少なくなったことを示し、浸出液が浄化されたことを表す指標として用いられている。
Figure 2005319456
有機物濃度(BOD,COD、窒素)の測定結果を表1及び図2に示す。表1及び図2において、「現状」とは、水溶液注水前3ヵ月の平均値を意味する。
表1及び図2に示すように、有機物濃度(BOD,COD、窒素)は、有機物分解性微生物を含む水溶液の注水開始後、低下する傾向を示した。特に窒素濃度は、微生物を投入する前までは上昇傾向を示していたにもかかわらず(注水開始の3ヵ月前は、490mgN/L、2ヵ月前は、518mgN/L、1ヵ月前は、552mgN/Lであった)、注水開始後は減少傾向に転じ、注水開始後4ヵ月を過ぎた頃から大幅な減少を示した。
大幅な減少まで4ヵ月かかった理由として、添加した微生物の馴致あるいは存在する微生物の生育環境が整うまでの期間は、分解効果が小さいことが分かっており、実施例1のような大きな埋立処分場では数ヵ月以上かかるためと考えられる。
電気伝導率の測定結果を表2および図3に示す。表2及び図3において、「現状」とは、有機物分解性微生物を含む水溶液の注水開始1ヵ月前の測定値を意味する。
Figure 2005319456
表2および図3に示すように、浸出液の電気伝導率も、有機物分解性微生物を含む水溶液を廃棄物埋立処分場に投入し始めてから、確実な低下を示した。
以上の結果から、有機物分解性微生物を含む水溶液の投入により、廃棄物埋立処分場から発生する浸出液が浄化されてきたことが分かる。特に、有機物分解性微生物を含む水溶液の投入が、窒素濃度の低下に有効であることが分かる。
上記実施例1に示す、廃棄物埋立処分場への有機物分解性微生物投入の効果を検討するために、実験室において、浸出液処理を想定した簡易水処理模型実験設備を作成し、浸出液に有機物分解性微生物を添加した際の、有機物の分解効果および窒素除去効果を検討した。
実施例2の概要及び処理フロ−を図4に示す。原水槽に、既存の産業廃棄物管理型埋立処分場の浸出液を入れ、5%の有機物分解性微生物を添加し、原水槽、及び処理水(沈殿槽の上澄み)の水質を測定した。実験流量は1日に1リットルであるため、毎日1リットルが排水されるので、これを補うために、1週間に7リットルの浸出液を追加した。また、約2週間に一度の割合で水質分析を行い、サンプリングとして合計約1リットルを採取するので、サンプリングのある週には、上記1週間分の排水量(約7リットル)に加えてサンプリング分の約1リットル(合計8リットル)の浸出液を追加した。なお、採水は、原水槽及び沈殿槽の水をビ−カを用いて採取することによって行った。また、実験で流出した浸出液は排水タンクに保管し、定期的に適正に廃棄した。
さらに、対照実験として、全く同じ簡易水処理模型実験設備を製作し、原水槽に有機物分解性微生物を添加しない場合の処理水(沈殿槽の上澄み)の水質を測定した。
添加した有機物分解性微生物は、実施例1と同一の微生物であり、実施例1と同一の方法で培養した。実験開始時に、上記微生物を含む溶液(組成、割合共に実施例1と同じもの)を原水槽(18リットル)に900ml添加し、その後、1週間に7リットル追加する時には350mlを、8リットル追加する時には400mlを添加した。
図中、原水槽は18リットル、嫌気槽は約3リットル、曝気槽は約4リットルである。また、原水槽における曝気量は1分間に100mlであり、曝気槽では500mlである。なお、嫌気槽における循環ポンプは、循環脱窒するために設置したものである。撹拌スクリューは腐敗を防止するために定期的に撹拌するために設置している。
原水槽及び処理水の水質について、それぞれBOD、COD、全窒素を測定した。
上記のように、実験流量が1日に1リットルであるので、1週間に7リットルの浸出液を追加し、水質分析を行った週には、排水分(7リットル)に加えて、採水分(1リットル)の浸出液も追加した。すなわち、実施例2においては、2週間に、15リットルの水が抜かれ、処分場の浸出液15リットルが新たに追加される。従って、その都度、BOD、COD、全窒素濃度は上昇することになり、実験の経時的な効果を正確に示すデータを得ることはできず、傾向を見るに留まった。
しかし、1週間ごとに水質汚濁物質(浸出液)の追加があるにもかかわらず、微生物を添加した場合、原水槽および処理水の全窒素濃度は、明かに低下した。結果を、表3および図5・図6に示す。表3は有機物分解性微生物を5%投入した際の脱窒素の結果を示すものであり、図5は有機物分解性微生物を5%投入した際の窒素濃度の経時的推移を示すグラフであり、図6は窒素除去率の経時的推移を示すグラフである。
Figure 2005319456
なお、原水槽の除去率は、次式から求めた。
原水槽の除去率=[浸出液の全窒素濃度−原水槽の全窒素濃度]×100/浸出液の全窒素濃度
また、処理水(沈殿槽の上澄み)の除去率は、次式から求めた。
処理水の除去率=[浸出液の全窒素濃度−処理水の全窒素濃度]×100/浸出液の全窒素濃度
浸出液の全窒素濃度とは、並行して行った対照実験の原水槽の全窒素濃度である。
表と図で示すように、原水槽の窒素は最大で約70%除去された。
また、BOD、CODについては、1週間ごとの浸出液の追加に加えて、微生物と共に栄養剤である糖蜜が投入されるため、これによっても上昇し、変動が大きいものの、全体として、除去率の向上が認められた。
5%添加試験において有機物分解性微生物の効果が認められたため、ついで、微生物添加量を2%に減らして、図7に示す処理フロ−を用いて、その効果について実験した。
実施例2と同様、浸出液処理を想定した簡易水処理模型実験設備を製作し(図7)、実験に用いた。なお、実施例3では、原水槽を2つ設け(A・B)、原水槽Aに既存の産業廃棄物管理型埋立処分場の浸出液を入れ、原水槽Aから原水槽Bに送水し、原水槽Bで微生物を添加する構成とした(すなわち、原水槽Aでは、微生物を添加しない場合の水質を、原水槽Bでは微生物を添加した場合の水質を測定することができる)。
実施例2と同様、実験流量は1日に1リットルであるため、1週間に7リットルの浸出液を原水槽Aに追加した。また、約2週間に一度の割合で水質分析を行い、サンプリングとして合計約1リットルを採取するので、サンプリングのある週には、合計8リットルの浸出液を追加した。採水は、原水槽A、原水槽B及び沈殿槽においてビ−カを用いてそれぞれの槽中の水を採取することによって行った。
添加した有機物分解性微生物は、実施例2と同じものであり、実験開始時に、上記微生物を含む溶液(組成、割合共に実施例1と同じもの)を原水槽B(18リットル)に360ml添加し、その後、1週間に7リットル追加する時には140mlを、8リットル追加する時には160mlを原水槽Bに添加した。
図中、原水槽Aの容積は11リットル、原水槽Bは18リットル、嫌気槽は約3リットル、曝気槽は約4リットルである。他の構成は、実施例2と同様である。
原水槽A、原水槽B及び処理水(沈殿槽の上澄み)の水質について、それぞれBOD、COD、全窒素濃度を測定した。
実施例2と同様、実施例3においても、2週間で、合計15リットルの水が抜かれ、処分場の浸出液15リットルが原水槽Aに追加される。従って、その都度、BOD、COD、全窒素濃度は新たに上昇することになり、実験の経時的な効果を正確に示すデータを得ることはできず、傾向を見るに留まった。
しかし、実施例2と同様、1週間ごとに水質汚濁物質の追加があるにもかかわらず、微生物を添加した原水槽(B)では、明かに全窒素濃度が低下した。結果をまとめて、表4および図8・図9に示す。表4は有機物分解性微生物を2%投入した際の脱窒素の結果を、図8は有機物分解性微生物を2%投入した際の窒素濃度の経時的推移を示すグラフであり、図9は窒素除去率の経時的推移を示すグラフである。表および図中の値は、月内に測定したデータの平均値である。
Figure 2005319456
原水槽Bの除去率は、次式から求めた。
原水槽Bの除去率=[原水槽(A)の全窒素濃度−原水槽(B) の全窒素濃度]×100/原水槽Aの全窒素濃度
また、処理水(沈殿槽の上澄み)の除去率は、次式から求めた。
処理水の除去率=[原水槽(A)の全窒素濃度−処理水の全窒素濃度]×100/原水槽Aの全窒素濃度
表と図で示すように、有機物分解性微生物を2%添加した際には、原水槽Bの窒素は最大で約50%除去された。また、BOD、CODについては、変動が大きいものの、全体として除去率の向上が認められた。
実施例2および実施例3の結果から、有機物分解性微生物を添加することによって、廃棄物埋立処分場の浸出液中の窒素が大幅に除去されることが確認できた。これにより、実施例1の処分場における、浸出液中の全窒素濃度の減少効果が、有機物分解性微生物を含む水溶液の投入によってもたらされることが立証された。
実施例1の廃棄物埋立処分場の模式図である。 浸出液の有機物濃度の推移を示す折れ線グラフである。 浸出液の電気伝導率の推移を示す折れ線グラフである。 実施例2の概要を示すフロ−チャートである 有機物分解性微生物を5%投入した際の、窒素濃度の経時的推移を示す折れ線グラフである。 有機物分解性微生物を5%投入した際の、窒素除去率の経時的推移を示す折れ線グラフである。 実施例3の概要を示すフロ−チャートである 有機物分解性微生物を2%投入した際の、窒素濃度の経時的推移を示す折れ線グラフである。 有機物分解性微生物を2%投入した際の、窒素除去率の経時的推移を示す折れ線グラフである。 粒状物質層の一実施形態を示す図である。 浸出液中のBOD、CODMn、NH−Nの経年変化の模式図である。
符号の説明
1 多孔性パイプ
2 浸出液集排水管
3 浸出液調整槽
4 浸出液処理施設
5 揚水設備
6 貯留槽
7 微生物培養施設
8 微生物貯留タンク

Claims (9)

  1. 廃棄物埋立処分場の安定化を促進するためのものであって、廃棄物埋立処分場の廃棄物堆積層中に、パイプを少なくとも一本、貫通させて設置し、該パイプを通して、少なくとも一種の有機物分解性微生物を含む水溶液を前記廃棄物堆積層中に投入することを特徴とする、廃棄物埋立処分場の安定化促進工法。
  2. 廃棄物埋立処分場の安定化を促進するためのものであって、廃棄物埋立処分場の廃棄物堆積層中に、パイプを少なくとも一本、貫通させて設置し、該パイプを通して、少なくとも一種の金属固定化剤を含む水溶液を前記廃棄物堆積層中に投入することを特徴とする、廃棄物埋立処分場の安定化促進工法。
  3. 前記パイプが管壁に多数の放水孔を設けた多孔性パイプである、請求項1または2に記載の工法。
  4. 前記パイプを通して、有機物分解性微生物と共に金属固定化剤を含む水溶液を廃棄物堆積層中に投入することを特徴とする、請求項1または3に記載の工法。
  5. 前記水溶液が、前記廃棄物埋立処分場から浸出した浸出液の原水あるいは処理水を含むものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の工法。
  6. 前記廃棄物埋立処分場に、前記廃棄物堆積層への雨水の浸透を防止する手段が設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の工法。
  7. 廃棄物埋立処分場の安定化を促進するためのものであって、廃棄物埋立処分場の埋立地に、注水孔を設けて、該注水孔を通して、少なくとも一種の有機物分解性微生物を含む水溶液を、前記埋立地の廃棄物堆積層中に投入することを特徴とする、廃棄物埋立処分場の安定化促進工法。
  8. 廃棄物埋立処分場の安定化を促進するためのものであって、廃棄物埋立処分場の埋立地に、注水孔を設けて、該注水孔を通して、少なくとも一種の金属固定化剤を含む水溶液を、前記埋立地の廃棄物堆積層中に投入することを特徴とする、廃棄物埋立処分場の安定化促進工法。
  9. 前記パイプあるいは前記注水孔の周囲の少なくとも一部に、平均粒径10〜500mmの粒状物質の層を形成し、前記パイプあるいは注水孔から放出される水溶液が、前記粒状物質層を経て前記廃棄物堆積層中に浸透するようにする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の工法。
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