JP3858996B2 - エンジンの燃料噴射量制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの燃料噴射量制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料噴射弁から噴射された燃料の一部が、燃焼室内に付着し、付着した燃料の一部が蒸発する、とする壁流モデルを用いて燃料噴射弁からの燃料噴射量を算出するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9-303173号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来装置では、燃焼室内は一様であるとして扱っているため、燃焼室内の壁流の実際の挙動を適切に表すことができていない。すなわち、燃焼室内はシリンダ面のほか、吸気弁の燃焼室に臨む表面、排気弁の燃焼室に臨む表面、シリンダヘッド壁、ピストン冠面、点火プラグなどによって囲まれた空間であるため、これら各部位に燃料が付着して壁流が形成され、この壁流より一部は再び気化して燃焼に寄与する。
【0005】
壁流の蒸発特性は主に壁温度、吸気流速に依存する。壁温度が高いほど盛んに燃料が蒸発し、吸気流速が速いほど引き剥がされる分が増し壁流量が減少する。エンジンを低温で始動する当初はシリンダ面、吸気弁の表面、排気弁の表面、シリンダヘッド壁、ピストン冠面、点火プラグなどすべて同じ温度であるが、エンジンの暖機が進むと共に、各部位に温度差が生じる。シリンダブロックに形成されるシリンダ面はシリンダブロック内のウォータジャケットを流れる冷却水により冷却されるため、シリンダ面壁の温度はほぼ水温に等しい温度で推移するのに対して、シリンダ面壁以外の燃焼室壁のほうは燃焼熱を直接に浴びること、吸排気弁は駆動部品のため弁座を介してしかシリンダヘッドと接触していないために冷却されずらいこととにより、温度上昇して300℃にもなる。さらに詳細には排気弁の燃焼室側表面の温度が最も高く、吸気弁の燃焼室側表面とピストン冠面とはほぼ同じ温度、またこれら吸気弁の燃焼室側表面、ピストン冠面の温度のほうがシリンダヘッド壁の温度より高い。
【0006】
このように燃焼室内の各部位で特に壁温度が大きく異なるときには、燃焼室内の各部位での壁流の蒸発特性が大きく違ったものとなり、従って従来装置を適用して燃焼室内の全体を1つの壁流モデルで表すことができない。この結果として、低温始動からの暖機途中や過渡時の空燃比が目標値から外れるエラーが生じ、排気性能や運転性能が悪くなる。
【0007】
そこで本発明は、吸気弁に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁を備える場合に吸気ポートに付着した燃料から剥離して噴霧となりまたは付着したまま移動して燃焼室に流入した燃料が、また燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を備える場合に燃料噴射弁から燃焼室内に直接噴射された燃料が、少なくともシリンダ面壁とその他の燃焼室壁との2つの部位に分岐して付着し、その2つの部位にそれぞれ付着した燃料の蒸発特性が大きく相違する場合においても、各部位からの蒸発量を精度よく求めることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、燃焼室入口の吸気ポートを開閉する吸気弁と、吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射弁とを備え、吸気ポートに付着した燃料から剥離して噴霧となりまたは付着したまま移動して燃焼室に流入した燃料(Mfv・(Y1+Y2)+Mfp・(Z1+Z2))が、少なくともシリンダ面壁とその他の燃焼室壁との2つの部位に分岐して付着し、その付着しているそれぞれの燃料(Cfc、Cfh)の一部が、異なる特性で蒸発するモデルを用いて前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を算出すると共に、前記シリンダ面壁とその他の燃焼室壁との2つの部位に付着している燃料には、燃焼が完了してから蒸発し燃焼に寄与せずに未燃のまま排出される未燃分を有し、前記シリンダ面壁に付着している燃料より排出される未燃分のほうを、前記その他の燃焼室壁に付着している燃料より排出される未燃分より大きく設定するように構成している。
【0009】
また、本発明は、燃焼室入口の吸気ポートを開閉する吸気弁と、燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁とを備え、この燃料噴射弁から燃焼室内に直接噴射された燃料(Fin)が、少なくともシリンダ面壁とその他の燃焼室壁との2つの部位に分岐して付着し、その付着しているそれぞれの燃料(Cfc、Cfh)の一部が、異なる特性で蒸発するモデルを用いて前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を算出すると共に、前記シリンダ面壁とその他の燃焼室壁との2つの部位に付着している燃料には、燃焼が完了してから蒸発し燃焼に寄与せずに未燃のまま排出される未燃分を有し、前記シリンダ面壁に付着している燃料より排出される未燃分のほうを、前記その他の燃焼室壁に付着している燃料より排出される未燃分より大きく設定するように構成している。
【0010】
【発明の効果】
本発明によれば、吸気ポートに付着した燃料から剥離して噴霧となりまたは付着したまま移動して燃焼室に流入した燃料が、あるいは燃焼室内に直接噴射された燃料が、少なくともシリンダ面壁とその他の燃焼室壁との2つの部位に分岐して付着し、その付着しているそれぞれの燃料(Cfc、Cfh)の一部が、異なる特性で蒸発するモデルを用いるので、シリンダ面壁とその他の燃焼室壁とで壁温度が大きく相違する場合においても、シリンダ面壁、その他の燃焼室壁にそれぞれ付着している燃料(Cfc、Cfh)からの蒸発分を精度よく求めることができる。
【0011】
このようにして各付着している燃料からの蒸発分を精度よく求めることができると、低温始動からの暖機途中や過渡時の空燃比の精度を高めることができ、排気性能や運転性能を向上させることができる。
また、燃焼に寄与しない未燃分が多いと、燃料増量要求が増えたり、過渡時の壁流補正が大量に必要になったりするのであるが、本発明によれば、シリンダ面壁と燃焼室壁との2つの部位に付着している燃料(Cfc、Cfh)には、燃焼が完了してから蒸発し燃焼に寄与せずに未燃のまま排出される未燃分(V1、W1)を有することから、その未燃分をモデルで補正できるので、未燃分が多いガソリン噴射エンジンにおいても排気性能や運転性能を改善できる。
さらに、シリンダ面壁に付着している燃料(Cfc)より排出される未燃分(W1)が多いと燃料増量要求が増えたり、過渡時の壁流補正が大量に必要になったりするのであるが、本発明によればシリンダ面壁に付着している燃料(Cfc)より排出される未燃分(W1)のほうを、燃焼室壁に付着している燃料(Cfh)より排出される未燃分(V1)より大きく設定するので、モデルが実際とよく一致することになり、シリンダ面壁に付着する燃料(Cfc)より排出される未燃分(W1)が多いガソリン噴射エンジンにおいても排気性能や運転性を改善できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。図1はL−ジェトロニック方式のガソリン噴射エンジンに適用した本発明の一実施形態のシステムを説明するための概略図である。
【0013】
吸気絞り弁23により調量される空気は、吸気コレクタ2に蓄えられた後、吸気マニホールド3を介して各気筒の燃焼室5に導入される。燃料は各気筒の吸気ポート4に配置された燃料噴射弁21より、エアフローメータ32により検出される吸入空気流量と、クランク角センサ(33、34)からの信号に基づいて演算されるエンジン回転速度とに応じ、所定のタイミングで吸気ポート内に、より具体的には吸気ポートに遮るように存在する吸気弁15(傘裏部)に向けて、間欠的に噴射供給される。
【0014】
吸気弁15に向けて噴射された燃料は、吸気と混合して混合気を作り、この混合気は吸気弁15を閉じることで燃焼室5内に閉じこめられ、ピストン6の上昇によって圧縮され、点火プラグ14により着火されて燃焼する。この燃焼によるガス圧がピストン6を押し下げる仕事を行い、このピストン6の往復運動はクランクシャフト7の回転運動へと変換される。燃焼後のガス(排気)は排気弁16が開いたとき排気通路8へと排出される。
【0015】
排気通路8には三元触媒9を備える。三元触媒9は排気の空燃比が理論空燃比を中心とした狭い範囲にあるとき、排気に含まれるHC、CO及びNOxを同時に効率よく除去できる。このため、エンジンコントローラ31では運転条件に応じて燃料噴射弁21からの基本燃料噴射量を定めると共に、三元触媒9の上流に設けたO2センサ(図示しない)からの信号に基づいて空燃比をフィードバック制御する。
【0016】
上記の吸気絞り弁23はスロットルモータ24により駆動される。運転者が要求するトルクはアクセルペダル41の踏み込み量(アクセル開度)に現れるので、エンジンコントローラ31ではアクセルセンサ42からの信号に基づいて目標トルクを定め、この目標トルクを実現するための目標空気量を定め、この目標空気量が得られるようにスロットルモータ24を介して吸気絞り弁23の開度を制御する。
【0017】
また、主に燃費向上のため、EGR装置(EGR通路25、EGR弁26、アクチュエータ27からなる)とVTC機構(バルブタイミングコントロール機構)29を備えてもいる。
【0018】
さて、L−ジェトロニック方式のガソリン噴射エンジンを前提として、本実施形態では、燃焼予測型制御を行う。具体的には温度を主なパラメータとして吸気ポート4、燃焼室5内の壁流燃料と未燃分燃料を推定し、その結果を燃料噴射制御に適用する。
【0019】
まず、今回改めて噴射弁21から噴射された燃料が燃焼するまでの燃料の挙動を見直した結果を図2、図3に示す。図2において破線は、噴射弁21から噴射された燃料がガス状で移動することを、実線は噴霧の状態で移動することを示す。なお、噴霧のうち微細なもの(微粒噴霧)はガスと同じに扱えるので、ガスのほうに分類している。この場合、ガス、微粒噴霧は再び吸気ポートや燃焼室内に付着することはないと仮定する。
【0020】
ここでは、燃焼室入口までの燃料挙動と燃焼室内での燃料挙動とに大きく分ける。
【0021】
(1)燃焼室入口までの燃料挙動:
噴射弁21から吸気ポート4に噴射された燃料は、気化してガス(気体)となる分と、噴霧のまま漂う分とに大きく分岐される。ガス、微粒噴霧となった燃料はポート壁4aや吸気弁傘裏部15aに付着することなく燃焼室5に吸入される。噴霧のまま漂う燃料は、その一部が気流に運ばれて燃焼室5に直接吸入され、残りは吸気弁傘裏部15aと吸気ポート壁4aとに付着する。
【0022】
ここで、吸気弁15に付着して形成される壁流は、傘裏部15aだけでなく吸気弁15の燃焼室5に臨む表面15bにも形成される。この燃焼室側表面15bに形成される壁流は燃焼室5内に形成される壁流のほうで扱うので、以下では吸気弁15の傘裏部15aの壁面のみを「吸気弁壁」と定義する。
【0023】
ポート壁4a、吸気弁壁15aに付着した燃料は壁流を形成する。この場合、各壁では主に壁温度が大きく異なり(冷間始動後は同じであるが、エンジンの暖機が進むほど吸気弁壁の温度のほうがポート壁の温度より高くなってゆく)、各壁流から異なる特性で燃料が蒸発するので、壁流も別々に扱う。
【0024】
これら各壁流は、一部はそれぞれの壁温度など蒸発し易さの物理量の結果を受けてガスとなり燃焼室5に吸入され、残りは吸気の流れや重力により壁流から剥がされて噴霧となりまたは壁流としておのおの壁部を伝って燃焼室5内に流入する。
【0025】
(2)燃焼室内での燃料挙動:
このようにしていろいろな経緯を経て燃焼室5に吸入された燃料群は、一部はガス、微粒噴霧として直接燃焼に寄与し、一部は燃焼室5内の壁流を形成する。燃焼室5内の壁流は、現実には吸気弁15の燃焼室側表面15b、排気弁16の燃焼室側表面(図2、図3には図示していない)、吸気ポート4aにつながっているシリンダヘッド壁51、ピストン冠面6a、点火プラグ表面(図示しない)、さらにはシリンダ面壁52とどこにでも存在する。燃焼室5内の壁流は、一部は点火による燃焼までの間に圧縮熱や壁熱などで蒸発、気化してガス、微粒噴霧となり燃焼に寄与し、一部は燃焼が完了してから蒸発し燃焼に寄与せずに排気行程で排気通路8へと排出される。特に、シリンダ面壁52の壁流を形成する燃料はその一部がオイルに希釈されたままクランクケースに逃げてブローバイガスに含まれる。
【0026】
ここでは、燃焼室5内に壁流が形成される部位をシリンダ面壁52とそれ以外の燃焼室壁とに分ける。
【0027】
ここで、シリンダ面壁52以外の燃焼室壁を「燃焼室壁」と定義する。一般的に「燃焼室壁」といった場合、シリンダ面壁を含むので紛らわしいのであるが、他に適切な表現が見あたらないので本実施形態ではシリンダ面壁52を除いた概念として「燃焼室壁」を使う。この燃焼室壁には吸気弁の燃焼室側表面15bが含まれる。
【0028】
燃焼室壁とシリンダ面壁52との2つに分けたのも両壁に主に壁温度差が大きくあり(シリンダブロックに形成されるシリンダはシリンダブロック内のウォータジャケットを流れる冷却水により冷却されるため、シリンダ面壁52の温度はほぼ水温に等しい温度で推移するため、燃焼室壁の温度のほうがシリンダ面壁52の温度より高い)、各壁流からの燃料蒸発特性が大きく異なるためと、演算ロジックを簡素化して適合を容易にするためである。
【0029】
ただし、分ける数は2つに限定されるものでない。詳しくいうと、燃焼室壁は、上述したように吸気弁15の燃焼室側表面15b、排気弁16の燃焼室側表面、シリンダヘッド壁51、ピストン冠面6a、点火プラグ表面などからなり、これらの間でも大きな壁温度差がある。すなわち、排気弁16の燃焼室側表面の温度が最も高く、吸気弁の燃焼室側表面15bとピストン冠面6aとはほぼ同じ温度、またこれら吸気弁の燃焼室側表面15b、ピストン冠面6aの温度のほうがシリンダヘッド壁51の温度より高い。従って、燃焼室壁を壁温度毎にさらに2以上に分割することが考えられる(例えば高温部燃焼室壁と低温部燃焼室壁とに分割する)。
【0030】
このように、壁温度の違いにより燃焼室5内に形成される壁流を2つに分割し(燃焼室壁流とシリンダ面壁流)、さらに燃焼室5内の燃料を燃焼に寄与する分と、未燃のまま排出される分と、オイルに希釈される分との3つに分けると、これらは次のように整理できる。
【0031】
〔1〕燃焼に寄与する燃料:
これは▲1▼噴射弁21より噴射された直後にガス、微粒噴霧となった燃料、▲2▼燃焼室5に吸入された噴霧から蒸発してガス、微粒噴霧となった燃料、▲3▼ポート壁流より蒸発してガス、微粒噴霧となった燃料、▲4▼吸気弁壁流より蒸発してガス、微粒噴霧となった燃料、▲5▼燃焼室壁流より点火による燃焼までの間に蒸発してガス、微粒噴霧となった燃料、▲6▼シリンダ面壁流より点火による燃焼までの間に蒸発してガス、微粒噴霧となった燃料の合計である。
【0032】
〔2〕未燃のまま排出される燃料:
これは、▲7▼燃焼室壁流より燃焼が完了してから蒸発してガス、微粒噴霧となり、排気行程で排気通路8へと排出される燃料と、▲8▼シリンダ面壁流より燃焼が完了してから蒸発してガス、微粒噴霧となり、排気行程で排気通路8へと排出される燃料との合計である。
【0033】
〔3〕オイル落ち燃料:
これは、▲9▼シリンダ面壁流よりオイルに希釈されたままクランクケースに逃げてブローバイガスに含まれる燃料である。
【0034】
図2、図3に示したこうした燃料挙動の解析結果に基づいて4つの各壁流(ポート壁流、吸気弁壁流、燃焼室壁流、シリンダ面壁流)を図4に示したようにモデル化して1気筒当たりのポート、燃焼室の混合気モデルを構築する。すなわち、図4のように当該混合気モデルを、燃料噴射量算出手段51、各部燃料分岐割合算出手段52、4つの燃料付着量算出手段(吸気弁壁付着量算出手段53、ポート壁付着量算出手段54、燃焼室壁付着量算出手段55、シリンダ面壁付着量算出手段56)、燃焼分燃料算出手段57、未燃分燃料算出手段58、オイル落ち量算出手段59、排気燃料算出手段60から構成する。
【0035】
まず吸気弁壁付着量算出手段53とポート壁付着量算出手段54では、1噴射毎(=吸入行程毎)つまり1燃焼サイクル毎に各壁流量(燃料付着量)が変化するものとして、1燃焼サイクル当たり一回、次の漸化式を用いて吸気弁壁付着量Mfvとポート壁付着量Mfpを算出する。
【0036】
ここで、上記(1)式は、1燃焼サイクル前の吸気弁壁付着量であるMfvn-1に対して今回の噴射により壁流となって増える燃料分(右辺第2項)を加算し、今回の噴射までに減っている燃料分(右辺第3項、第4項、第5項)を減算するものである。すなわち、右辺第2項のFin・X1は、今回の燃料噴射量Finのうち吸気弁壁流に変化する燃料分である。右辺第3項のMfvn-1・Y0はMfvn-1のうち今回の噴射までに蒸発してガス、微粒噴霧となりそのまま燃焼室5に吸入されて燃焼する燃料分である。右辺第4項のMfvn-1・Y1はMfvn-1のうち今回の噴射までに引き剥がされて噴霧となった後にあるいは壁流のまま流れて燃焼室壁流となる燃料分、Mfvn-1・Y2はMfvn-1のうち今回の噴射までに引き剥がされて噴霧となった後にあるいは壁流のまま流れてシリンダ面壁流となる燃料分である。
【0037】
上記(2)式は上記(1)式と同様である。すなわち、右辺第2項のFin・X2は、今回の燃料噴射量のうちポート壁流に変化する燃料分である。右辺第3項のMfpn-1・Z0はMfpn-1のうち今回の噴射までに蒸発してガス、微粒噴霧となりそのまま燃焼室5に吸入されて燃焼する燃料分である。右辺第4項のMfpn-1・Z1はMfpn-1のうち今回の噴射までに引き剥がされて噴霧となった後にあるいは壁流のまま流れて燃焼室壁流となる燃料分、右辺第5項のMfpn-1・Z2はMfpn-1のうち今回の噴射までに引き剥がされて噴霧となった後にあるいは壁流のまま流れてシリンダ面壁流となる燃料分である。
【0038】
燃焼室壁付着量算出手段55とシリンダ面壁算出手段56でも、1噴射毎つまり1燃焼サイクル毎に各燃料付着量が変化するものとして、1燃焼サイクル当たり一回、次の漸化式を用いて燃焼室壁付着量Cfhとシリンダ壁付着量Cfcを算出する。
【0039】
上記(3)式において、右辺第2項のFin・X3は、今回の燃料噴射量Finのうち燃焼室壁流に変化する燃料分である。右辺第3項、第4項のMfv・Y1、Mfp・Z1はそれぞれMfv、Mfpから引き剥がされて噴霧となった後にあるいは壁流のまま流れて燃焼室壁流に変化する燃料分である。右辺第5項のCfhn-1・V0はCfhn-1のうち点火による燃焼までの間に圧縮熱や壁熱等で蒸発、気化して燃焼に寄与した燃料分、右辺第6項のCfhn-1・V1はCfhn-1のうち燃焼が完了してから蒸発し燃焼に寄与せずに排気行程で排出された燃料分である。
【0040】
上記(4)式は、右辺第7項のCfcn-1・W2を除いて上記(3)式と同様である。すなわち、右辺第2項のFin・X4は、今回の燃料噴射量のうちシリンダ面壁流に変化する燃料分である。右辺第3項、第4項のMfv・Y2、Mfp・Z2はそれぞれMfv、Mfpから引き剥がされて噴霧となった後にあるいは壁流のまま流れてシリンダ面壁流に変化する燃料分である。右辺第5項のCfcn-1・W0はCfcn-1のうち点火による燃焼までの間に圧縮熱や壁熱等で蒸発、気化して燃焼に寄与した燃料分、右辺第6項のCfcn-1・W1はCfcn-1のうち燃焼が完了してから蒸発し燃焼に寄与せずに排気行程で排出された燃料分である。右辺第7項のCfcn-1・W2はCfcn-1のうちオイルに希釈されたままクランクケースに逃げてブローバイガスに含まれてしまった燃料分である。
なお、図4は全体でもモデルであるが、部分でもモデルである。すなわち、上記(1)式が吸気弁壁流モデル、上記(2)式がポート壁流のモデル、上記(3)式が燃焼室壁流のモデル、上記(4)式がシリンダ面壁流のモデルである。また、燃料噴射量FinがX0〜X4に分かれるとするのもモデルである。
【0041】
なお、図4は全体でもモデルであるが、部分でもモデルである。すなわち、上記(1)式が吸気弁壁流モデル、上記(2)式がポート壁流のモデル、上記(3)式が燃焼室壁流のモデル、上記(4)式がシリンダ面壁流のモデルである。また、燃料噴射量FinがX0〜X4に分かれるとするのもモデルである。
【0042】
燃焼分燃料算出手段57、未燃分燃料算出手段58、オイル落ち量算出手段59では次式により燃焼分燃料Fcom、未燃分燃料Fac、オイル落ち量Foilをそれぞれ算出する。
【0043】
ここで、(5)式は上記▲1▼〜▲6▼の燃料の合計を燃焼分燃料Fcomと、(6)式は上記▲7▼、▲8▼の燃料の合計を未燃分燃料Facと、(7)式は上記▲9▼の燃料をオイル落ち量Foilとして数式化したもの(モデル)である。
【0044】
排気燃料算出手段60では、次式のようにこれら燃焼分燃料Fcomと未燃分燃料Facを合計した値を、排気に影響する排気燃料Foutとして算出する。
【0045】
Fout=Fcom+Fac…(8)
(8)式は燃焼分も未燃分も燃焼室5内のすべてのガスが排気通路8へ排出されることを表している。実際には一部のガスは排気通路8へ排出されることなく燃焼室5内に残留するのであるが、この残留ガスは図4に示した混合気モデルでは考えていない。
【0046】
これら4つの算出手段57〜60での算出タイミングは、燃料付着量算出手段53〜56と同じである。
【0047】
このようにして、上記(1)〜(8)式が得られたが、これら式中の値のうち代表的なものを図3に図示している。
【0048】
次に、図5は図4に示した混合気モデルを用いて気筒別の燃料噴射量をTiを算出するためのデータフローを示した図である。
【0049】
まず性能要求判定手段71では、運転条件より三元触媒9からの排気要求と、出力要求(または安定度要求)のいずれがあるのか否かを判定する。例えば低温始動直後の燃焼が安定しにくい領域は安定度要求があるとき、全負荷領域は出力要求があるときである。また、触媒の活性化後は三元触媒9からの排気要求があるときである。
【0050】
目標当量比決定手段72では、こうした判定結果より排気要求があるときには排気要求当量比Tfbye(=1.0)を、また出力要求(または安定度要求)があるときには出力要求当量比Tfbyp(1.1〜1.2の値で固定値)を目標当量比Tfbyaとして決定する。
【0051】
ここで、当量比は理論空燃比(≒14.7)を空燃比で除した値である。このため、当量比=1.0のとき空燃比は理論空燃比となり、当量比=1.1〜1.2のとき空燃比は理論空燃比よりもリッチ側の値となる。
【0052】
要求噴射量算出手段75では、このようにして決定した目標当量比Tfbya及び性能要求判定手段71の判定結果と、各部付着量算出手段73、各部燃料分岐割合算出手段74(それぞれ図4の一部)の算出結果とに基づいて次式により要求噴射量Finを算出する。
【0053】
(1)出力要求(または安定度要求)があるとき;
Fin={K#・Tfbya・Tp−(Mfv・Y0+Mfp・Z0
+Cfh・V0+Cfc・W0)}/X0…(9)
(2)排気要求があるとき;
Fin={K#・Tfbya・Tp−(Mfv・Y0+Mfp・Z0
+Cfh・V0+Cfc・W0+Cfh・V1+Cfc・W1)}
/X0…(10)
ここで、(9)式は出力要求または安定度要求があるときにシリンダ吸入空気量(Qcyl)と、前記3つの燃焼分(X0、Y0+Z0、V0+W0)の燃料(Fin・X0+Mfv・Y0+Mfp・Z0+Cfh・V0+Cfc・W0)との比が理論空燃比よりリッチ側の値となるように要求噴射量Finを算出する式である。これに対して(10)式は三元触媒9からの排気要求があるときにシリンダ吸入空気量(Qcyl)と、3つの燃焼分(X0、Y0+Z0、V0+W0)の燃料(Fin・X0+Mfv・Y0+Mfp・Z0+Cfh・V0+Cfc・W0)及び未燃分(V1+W1)の燃料(Cfh・V1+Cfc・W1)の合計との比が理論空燃比となるように燃料噴射弁21からの燃料噴射量を算出する式である。
【0054】
(10)式は(9)式に対して未燃分燃料Fac(=Cfh・V1+Cfc・W1)を加えている点のみが相違する。排気中の空燃比を考えるときには未燃分燃料をも考慮する必要があるためである。この逆に、未燃分燃料は出力には寄与しないので除く必要がある。
【0055】
(9)式で代表して述べると、(9)式は次式より導出したものである。
【0056】
ただし、K#:定数、
Tp:エアフローメータ32よりから求めた基本噴射量、
(11)式は、ガス、微粒噴霧となる燃料分(右辺第1項)及び燃料壁流に奪われる燃料分(右辺第2項〜第5項)の合計とが左辺の噴射燃料量に等しいことを表している。この式をFinについて整理すれば、上記(9)式が得られる。
【0057】
ここで、(11)式左辺の基本燃料噴射量Tpは1気筒当たりの値であるので、右辺のFin、Mfv、Mfp、Cfh、Cfcの各値も1気筒当たりの値である。基本燃料噴射量Tpの実際の単位は質量の単位である[mg]でなく時間の単位である[ms]であるため、右辺のFin、Mfv、Mfp、Cfh、Cfcの各値について、その単位を[ms]で定義すれば、定数K#は1.0でよい。Fin、Mfv、Mfp、Cfh、Cfcの単位を[mg]で定義してもかまわない。ただし、このときには定数K#を、[ms]より[mg]への変換係数として導入する。
【0058】
最終噴射量算出手段76では、このようにして算出した要求噴射量Fin[ms]を用いて次式のいずれかによりシーケンシャル噴射時の最終噴射量Ti[ms]を算出する。
【0059】
Ti=Fin×α×αm×2+Ts…(12a)
Ti=Fin×(α+αm−1)×2+Ts…(12b)
ただし、α:空燃比フィードバック補正係数、
αm:空燃比学習補正係数、
Ts:無効パルス幅、
これら最終噴射量Tiの式はL−ジェトロニック方式のガソリン噴射エンジンにおける従来の燃料噴射量Ti[ms]の演算式とは趣が異なる。ちなみに、当該演算式(シーケンシャル噴射時)は次のようなものである。
【0060】
Ti=(Tp+Kathos)×TFBYA×(α+αm−1)×2
+CHOSn+Ts…(13)
TFBYA=1+KTW+KAS+KUB+KMR…(14)
ただし、TFBYA:従来装置の目標当量比、
Kathos:壁流補正量(応答の遅いもの)、
CHOSn:壁流補正量(応答の速いもの)、
KTW:水温増量補正係数、
KAS:始動後増量補正係数、
KUB:未燃分補正係数、
KMR:混合気補正係数、
(13)、(14)式に示す従来の演算式では、増量補正係数がたくさんあることからもわかるように、低水温時、低温始動直後で燃焼不安定な状態、未燃分、全負荷時、加減速時などに対してそれぞれに別個の増量補正係数(KTW、KAS、KUB、KMR、Kathos、CHOSn)を導入し、個別に対応していた。しかしながら、こうした方法だと増量補正係数の数に応じて適合工数が飛躍的に増大せざるを得ない。また、KTW、KAS、KUBの適合については燃料挙動までは解析されていない。
【0061】
一方、すべての燃料増量をトータルで考えてみると、すべて壁流燃料に関係する。従って、上記図2、図3のように今回改めて噴射弁21から噴射された燃料が燃焼するまでの燃料の挙動を見直し、その結果を用いて図4、図5のように混合気モデルと燃料噴射量算出モデルとを構築するようにした本実施形態によれば、KTW、KAS、KUB、KMRの各補正係数は不要となる。また、Kathos、CHOSnに代えて、4つの付着量Mfv、Mfp、Cfh、Cfcが置き換わる。すなわち、上記(1)〜(10)式及び(12a)、(12b)式のいずれかを用いる本実施形態によれば、(13)、(14)式の従来の演算式を用いるガソリン噴射エンジンに対して次の効果が得られる。
【0062】
効果1;特に低温始動、暖機途中の空燃比制御精度がよくなり、この制御精度の向上により排気性能が向上しかつ始動性、運転性(トルク精度)が向上する。
【0063】
効果2;吸気ポート、燃焼室内の壁流挙動(噴射してから燃焼するまでのすべての燃料挙動)を解析しているので、机上適合が容易になり適合工数を低減できる。
【0064】
効果3;このように精密に壁流挙動を解析して燃料噴射を行わせた結果、それでも空燃比が目標より外れていれば、それは噴射弁やエアフローメータなど部品の精度に関係するものと判断できるので、制御結果を空燃比制御にフィードバックすることで、エンジンそのものの素質を改善できる。
【0065】
ところで、性能要求判定手段71による判定方法はこれに限らない。出力要求時(または安定度要求時)から排気要求時への切換時またはその逆への切換時に前記(9)式の要求噴射量より(10)式の要求噴射量へとステップ的に切換えまたはその逆への切換時に(10)式の要求噴射量より(9)式の要求噴射量へとステップ的に切換えたのではトルク段差が生じ、これによりトルクショックによる不快感や音質変化などが感じられる。
【0066】
そこで、低温始動からの時間、アクセル開度、三元触媒9の温度の少なくとも一つに応じて出力要求と排気要求の要求比を設定し、この要求比で前記(9)、(10)式の2つの要求噴射量を補間計算した値を、改めて要求噴射量として算出することにより、2つの要求噴射量の間を要求比に応じて滑らかに繋ぎ、2つの要求噴射量の間をステップ的に切換える際に生じるトルクショックによる不快感や音質変化などを防止する。
【0067】
これについて説明すると、排気要求と出力要求の比を要求度数(要求比)で定義する。ここでは出力要求のみに応ずるときの要求度数を100%とし、排気要求のみに応ずるときの要求度数を0%として、そのときの運転条件に応じた要求度数を設定する。具体的には、低温始動直後は燃焼室内での燃焼が安定しにくいので、出力要求である。全負荷領域でも出力要求に応じる必要がある。また、排気通路8に設けている触媒9が活性化した後には排気要求に応じる必要がある。これらの要求のため、要求度数を図16、図17、図18に示したように設定している。すなわち、図16のように初期値を100%として低温始動直後の出力要求に応じると共に、始動後時間(あるいは壁温度)が経過するほど要求度数を小さくしていくことにより出力要求から排気要求へとゆるやかに切換える。図17のようにアクセルペダル41を最大まで踏み込む付近で要求度数を大きくすることにより全負荷領域での出力要求に応える。図18のように初期値を100%として触媒温度が上昇するほど要求度数を小さくしていくことにより出力要求から排気要求へと緩やかに切換える。
【0068】
このようにして、始動後時間、アクセル開度、触媒温度より図16、図17、図18を内容とするテーブルを参照して3つの要求度数を得た後は、これら3つの要求度数のうち最も大きい値を選択する。
【0069】
そして、上記(10)式の要求噴射量FinをFin1(第1の燃料噴射量)、上記(9)式の要求噴射量FinをFin2(第2の燃料噴射量)として区別し、この選択した要求度数でこれら2つの要求噴射量Fin1、Fin2を補間計算した値を要求噴射量Finとして算出する。
【0070】
Fin=Fin2×要求度数+Fin1×(1−要求度数)…(15)
(15)式によれば要求度数=100%のときFin=Fin2、要求度数=0%のときFin=Fin1となる。
【0071】
ここで、始動後時間はエンジン始動タイミングで起動するタイマにより計測する。アクセル開度はアクセルセンサ42により検出する。触媒温度は触媒温度センサ43により検出する。
【0072】
次に、図4の各部燃料分岐割合算出手段52では、各部燃料(Fin、Mfv、Mfp、Cfh、Cfc)の分岐割合を算出するが、この各部燃料の分岐割合の算出について以下に項分け説明する。上記(1)〜(7)、(10)、(11)式をみればわかるように本実施形態では各部燃料分岐割合Xn、Yn、Zn、Vn、Wnが適合値になる。そして、これらを精度よく適合することで空燃比制御精度を高めることができる。
【0073】
ここでは、L−ジェトロニック方式のガソリン噴射エンジンのうち、標準システム(後述する)を有するあらゆるエンジンを対象として検討しているため、吸気行程噴射を行うものやアシストエアー方式の燃料噴射弁を備えるもの、成層燃焼を行うもの、スワールコントロールバルブを備えるものなどを含めているが、適用するエンジンに該当しないものはカットすればよい。
【0074】
〈1〉噴射弁噴霧の分岐割合Xn(n=0〜4)
1)X0;噴霧が気化する分と微粒噴霧のまま燃焼室に漂い燃焼する分
X0はシミュレーションしてみると、吸気行程噴射やアシストエアー方式、成層燃焼を除き数%と非常に少ない。X0に影響するパラメータとしては噴射タイミング、噴霧粒径、燃料の揮発性、ガス温度、相対流速(回転速度、吸気弁15のバルブタイミング、ポート流路径)がある。ここで、相対流速とは燃料の流速を基準とした吸気の流速のことである。X0が増えると後述するX1、X2、X3、X4は減少する。
【0075】
2)X1;吸気弁壁15aに付着する分
吸気弁壁15a(吸気弁傘裏部)は一般に噴霧狙い個所であり、噴霧の大半が一旦ここに付着する。ポート壁4aに跳ね返る燃料もあると思われる。
【0076】
X1に影響するパラメータとしては吸気弁直撃率[%]がある。ここで、吸気弁直撃率とは、噴霧が吸気弁15に当たる割合のことで、これは設計図より幾何学的に計算可能である。
【0077】
3)X2;ポート壁4aに付着する分
吸気弁15の傘裏狙いでも噴霧がポート壁4aに付着する。噴霧の跳ね返り、吸気弁15開時の吸気の逆流で吸気弁15から飛ばされポート壁4aに付着する分もあると思われる。アシストエアー方式では噴霧広がりでポート壁4aへ、またアシスト空気により吸気通路の上流側へと運ばれポート壁4aに付着する。
【0078】
X2に影響するパラメータとしてはX1と同じく吸気弁直撃率(100%−吸気弁直撃率)がある。
【0079】
4)X3;吸気ポート4をすり抜け直接に燃焼室壁に付着する分
これは吸気行程噴射やアシストエアー方式を除き非常に少なく、吸気弁壁15aやポート壁4aを介して壁流のまま、または再度液滴となって燃焼室5に流入する量が多い。その理由は吸気弁15閉時に噴射されると噴霧は燃焼室壁に届かないかあるいは漂わないためである。
【0080】
X3に影響するパラメータとしては噴霧粒径、噴射タイミング、噴霧狙いの方向と場所がある。
【0081】
5)X4;吸気ポート4をすり抜け直接にシリンダ面壁52に付着する分
吸気行程噴射であって噴霧は開弁隙間狙いであるとき、X4は増大(燃焼不安定、HC激増、オイル希釈増)する。超微粒化ならX4は小さい。X4に影響するパラメータはX3と同じでよい。
【0082】
MPI(マルチポイントインジェクション)の標準的な噴射弁21かつ噴霧方向は吸気弁傘裏狙い(吸気弁15は2弁または4弁。4弁のときは噴射弁21は2ホール噴射弁。)の仕様に対して机上検討を行った結果、噴射弁噴霧の分岐割合Xnの傾向を図6〜図8に示す。図6に示したようにガス温度の上昇、吸入圧力(この絞り弁下流で大気圧より低くなる吸気通路内の吸入圧力を「吸入負圧」という。)の低下(負圧大)で気化率が向上しX0が増加する(破線参照)。また、負圧大で噴霧が広がりポート壁付着分X2が増加する(破線参照)。図7に示したようにガス流速(この代表値として回転速度)の上昇で待ち時間が短くなり、噴霧気化量と噴霧吸入量が増加しX0が増大する。同じく、噴霧吸入量が増加し、X3、X4が増大する。図8に示したように吸気行程噴射で噴霧と残留ガスの吹き返しとが重なり、残留ガス温度と残留ガスの流速とで気化促進されX0が増加する。吸気行程噴射で噴霧が吸気気流に運ばれてX0、X3、X4とも増大する。
【0083】
結論;これら図6〜図8より標準システムのガソリン噴射エンジンの場合、ガス温度、負荷、ガス流速(回転速度)でXnを割りつける。
【0084】
ここで、「標準システム」のガソリン噴射エンジンとは次の2つの条件を満足するものをいう。
【0085】
(a)吸気通路に吸気弁を備えること。
【0086】
(b)可変動弁機構を備えていないか、備えていても可変動弁の可変代が小さいこと。
【0087】
本実施形態は(a)、(b)の条件を共に満足するので、標準システムのガソリン噴射エンジンである。一方、吸気絞り弁を備えておらず吸気弁のみで吸入空気流量を調整するエンジン、電磁駆動の吸気弁を備えるエンジン、圧縮比可変のエンジンは標準システムのガソリン噴射エンジンでない。従って、これらエンジンは対象外である。
【0088】
上記の結論にいう「ガス温度」は噴霧を取り巻く空気と残留ガスのミックス温度で、吸気温度や水温から推定する。簡単には吸気温度と水温の単純平均値や加重平均値をガス温度の推定値とすればよい。吸気温度は吸気温度センサ44により、水温は水温センサ45により検出する。
【0089】
ただし、図6〜図8の特性は実際のエンジン制御に用いる制御マップでは無く机上検討した特性データであるので、実際のエンジンへの適用に際しては適用するエンジン仕様に応じた修正を行う。例えば、噴射タイミングITの影響は噴射タイミングITを大きく変えない場合は無視し、図6の特性を基準としてガス流速と圧力で簡単な補正を行ってX0〜X4を求めればよい。
【0090】
これについて説明すると、分岐割合X0[%]を次式により構成する。
【0091】
X0=X0P・X0N…(16)
ただし、X0P:温度と圧力に応じた基本分岐割合[%]、
X0N:回転速度補正係数[無名数]、
このうち、基本分岐割合X0Pはガス温度と吸入負圧Pmとから図13を内容とするテーブルを検索することによって求める。図13において横軸はガス温度+Pm・KPT#(KPT#は揮発性圧力を温度に変換するための係数)である。基本分岐割合X0Pはガス温度が高くなるほど、また吸入負圧Pmが大きくなるほど大きくなる(吸入負圧Pmは低負荷で大となる特性)。吸入負圧は吸気コレクタ2に設ける圧力センサ46により検出する。吸入負圧に代えエンジン負荷相当値(例えばTp)を用いることができる。
【0092】
また、回転速度補正係数X0Nは回転速度から図14を内容とするテーブルを検索することによって求める。X0Nは回転速度が大きくなるほど大きくなる。
【0093】
次に、X3、X4は回転速度から図15を内容とするテーブルを検索することによって求める。X3、X4[%]も回転速度が大きくなるほど大きくなる。
【0094】
このようにして求めたX0、X3、X4から次式によりX1、X2[%]を計算する。
【0095】
X1={100−(X0+X3+X4)}×BT#…(17)
X2={100−(X0+X3+X4)}×(1−BT#)…(18)
ただし、BT#;吸気弁直撃率、
〈2〉吸気弁壁付着燃料の分岐割合;Yn
1)Y0;壁流が気化して燃焼する分
Y0に影響するパラメータとしては燃料揮発性、吸気弁壁の温度、ガス温度と壁流面ガス流速(吸気弁径、回転速度、スワールコントロールバルブの開閉、吸気弁のバルブタイミング、弁リフトにより変化する)、圧力、弁端形状がある。
【0096】
2)Y1;燃焼室壁へ移動する分
これは、壁流から再度液滴となった後に燃焼室壁に付着する分Y1Aと、シリンダヘッド面51、吸気弁の燃焼室側表面15bへと壁流のまま移動する分Y1Bとがある。Y1Aに影響するパラメータとしてはガス流速、吸気弁壁15aの温度、ガス温度(燃料粘性)、圧力、弁端形状、噴霧とガス流入方向がある。Y1Bに影響するパラメータは、Y1Aに影響するパラメータと同じであり、加えて燃焼室ガス流れがある。
【0097】
3)Y2;シリンダ面壁へ移動する分
これも、壁流から再度液滴となった後にシリンダ面壁52に付着する分Y2Aと、シリンダヘッド面51、吸気弁の燃焼室側表面15bに壁流がそのまま移動する分Y2Bとがある。Y2Aに影響するパラメータとしてはガス流速、吸気弁壁15aの温度、ガス温度(燃料粘性)、圧力、弁端形状、噴霧とガス流入方向がある。Y2Bに影響するパラメータは、Y2Aに影響するパラメータと同じであり、加えて燃焼室ガス流れがある。
【0098】
4)そのまま次サイクルに持ち越される分
これは1−Y0−Y1−Y2である。
【0099】
〈3〉ポート壁付着燃料の分岐割合;Zn
1)Z0;壁流が気化して燃焼する分
Z0に影響するパラメータとしては燃料揮発性、ポート壁4aの温度、ガス温度、壁流面ガス流速(弁径、回転速度、スワールコントロールバルブの開閉、吸気弁15のバルブタイミング、弁リフトにより変化する)、圧力、弁シート端形状が考えられる。
【0100】
2)Z1;燃焼室壁へ移動する分
これは、壁流から再度液滴となった後に燃焼室壁に付着する分Z1Aと、シリンダヘッド面52、吸気弁の燃焼室側表面15bを介して壁流が移動してくる分Z1Bとがある。Z1Aに影響するパラメータとしてはガス流速、吸気弁壁15aの温度、ガス温度(燃料粘性)、圧力、弁端形状、噴霧とガス流入方向がある。Z1Bに影響するパラメータはZ0に影響するパラメータと同じであり、加えて燃焼室ガス流れがある。
【0101】
3)Z2;シリンダ面壁へ移動する分
これは、壁流から再度液滴となった後にシリンダ面壁52に付着する分Z2Aと、シリンダヘッド面51、吸気弁の燃焼室側表面15bを介して壁流が移動してくる分Z2Bとがある。Z2Aに影響するパラメータとしてはガス流速、吸気弁壁15aの温度、ガス温度(燃料粘性)、圧力、弁シート端形状、噴霧とガス流入方向がある。Z2Bに影響するパラメータはZ0に影響するパラメータと同じであり、加えて燃焼室ガス流れがある。
【0102】
4)そのまま次サイクルに持ち越される分
これは1−Z0−Z1−Z2である。
【0103】
以上の机上検討を行った結果、吸気弁壁15a、ポート壁4aの各付着燃料の分岐割合Yn、Znの傾向を図9、図10に示す。図9に示したように壁温度とガス流速の上昇で気化量が増加し、また壁流移動速度も増加する。吸入負圧が大きいとき(図では高負圧)気化量が増加する(破線参照)。吸気弁壁15aの温度範囲は非常に広い(例えば水温Tw〜約300℃)。
【0104】
図10に示したように傾向は図9に示す吸気弁壁流と同じだが、ポート壁4aは温度が低く壁温度範囲も狭い(例えば水温Tw〜Tw−15℃程度)。燃焼室壁とシリンダ面壁52ヘの分岐が、吸気弁壁流とは異なる。濡れ面が広く壁流移動距離が長いので、Z1、Z2は小さい。
【0105】
結論;これら図9、図10より標準システムのガソリン噴射エンジンでは吸気弁壁、ポート壁のそれぞれの温度と圧力、ガス流速(回転速度)とでYn、Znを算出する。
【0106】
ここで、吸気弁壁15aの温度としては、水温Twと運転条件から公知の方法(特開平3−134237号参照)により演算したものを用いればよい。ポート壁4aの温度としては、水温Twまたは水温Twより所定値(例えば15℃程度)低い温度を用いればよい。
【0107】
圧力(吸入負圧)は圧力センサ46により検出する。吸入負圧と密接に関連するエンジン負荷(例えばTp)で代用してもかまわない。
【0108】
〈4〉燃焼室壁付着燃料の分岐割合;Vn
1)V0;壁流が気化して燃焼する分
V0に影響するパラメータとしては燃料揮発性、吸気弁の燃焼室側表面15bの温度、排気弁の燃焼室側表面温度、シリンダヘッド壁51の温度、ピストン冠面6aの温度、圧縮燃焼温度、壁流面ガス流速(弁径、回転速度、スワールコントロールバルブの開閉、吸気弁のバルブタイミング、弁リフトにより変化する)、圧力が考えられる。
【0109】
2)V1;膨張行程後に気化して排出される分
これは、壁流から火炎消炎後に燃焼ガス温度、ガス流速により蒸発または引きちぎられて排気される分である。V1に影響するパラメータはV0に影響するパラメータと同じである。
【0110】
3)そのまま壁流として次サイクルに持ち越される分
これは、燃焼室壁の温度、ガス流速が低いと蒸発しきれず、残りは次サイクルに持ち越される分、つまり1−V0−V1である。
【0111】
〈5〉シリンダ面壁付着燃料の分岐割合;Wn
1)W0;壁流が気化して燃焼する分
W0に影響するパラメータとしては燃料揮発性、シリンダ面壁52の温度、圧縮燃焼温度、壁流面ガス流速(弁径、回転速度、スワールコントロールバルブの開閉、吸気弁のバルブタイミング、弁リフトにより変化する)、圧力、オイル揮発性、オイル付着量がある。
【0112】
2)W1;膨張行程後に気化して排出される分
これは、壁流から火炎消去後に燃焼ガスの温度、流速により蒸発または引きちぎられて排気される分である。W1に影響するパラメータはW0に影響するパラメータと同じである。
【0113】
3)W2;オイル希釈のままクランクケースへ逃げる分
これは、壁流からピストンリングで掻き落とされたオイル中の燃料分と、ピストンリングとシリンダ面との隙間から漏れた燃料分との合計である。W2に影響するパラメータとしては回転速度、シリンダ面壁52の温度、油膜厚さ(油量、温度、油粘度)、ピストンリングの形状、張力、筒内圧、リング隙間、リング溝隙間がある。
【0114】
4)そのまま壁流として次サイクルに持ち越される分
これは、シリンダ面壁の温度、ガス流速が低いと蒸発しきれず、残りは次サイクルに持ち越される分、つまり1−W0−W1−W2である。
【0115】
以上の机上検討を行った結果、燃焼室壁、シリンダ面壁52の各付着燃料の分岐割合Vn、Wnの傾向を図11、図12に示す。図11に示したように、壁温度とガス流速の上昇で気化量が増加する。壁温度は圧縮燃焼温度の影響も受け、低壁温でも気化があると思われる。壁温度範囲が場所で大きく異なり非常に広いが比較的高い。そこで適合上は一つの温度で扱う。吸入負圧が小さいとき(高負圧)気化量が増加する(破線参照)。
【0116】
図12に示したようにシリンダ面壁流は一部オイルに混入する。壁温度は水温の影響、ガス接触時間の関係で比較的低い。また、圧縮燃焼温度の影響も受け、低壁温でも気化があると思われる。吸入負圧が大きいとき(高負圧)気化量が増加する(破線参照)。
【0117】
結論;これら図11、図12より標準システムのガソリン噴射エンジンではそれぞれの壁温度と圧力、ガス流速(回転速度)でVn、Wnを算出する。機種差はガス流速に依存させる。
【0118】
ここで、本実施形態の作用を説明する。
【0119】
本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、吸気ポート(吸気弁壁15aと吸気ポート壁4a)に付着した燃料(Mfv、Mfp)から剥離して噴霧となりまたは付着したまま移動して燃焼室5に流入した燃料(Mfv・(Y1+Y2)+Mfp・(Z1+Z2))が、少なくともシリンダ面壁52と燃焼室壁との2つの部位に分岐して付着し、その付着しているそれぞれの燃料(Cfc、Cfh)の一部が、異なる特性で蒸発するモデルを用いるので、シリンダ面壁52と燃焼室壁とで壁温度が大きく相違する場合においても、シリンダ面壁52、燃焼室壁にそれぞれ付着している燃料(Cfc、Cfh)からの蒸発分を精度よく求めることができる。
【0120】
このようにして各付着している燃料(Cfc、Cfh)からの蒸発分を精度よく求めることができると、低温始動からの暖機途中や過渡時の空燃比の精度を高めることができ、排気性能や運転性能を向上させることができる。
また、燃焼に寄与しない未燃分が多いと、燃料増量要求が増えたり、過渡時の壁流補正が大量に必要になったりするのであるが、本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、シリンダ面壁52と燃焼室壁との2つの部位に付着している燃料(Cfc、Cfh)には、燃焼が完了してから蒸発し燃焼に寄与せずに未燃のまま排出される未燃分(V1、W1)を有することから、その未燃分をモデルで補正できるので、未燃分が多いガソリン噴射エンジンにおいても排気性能や運転性能を改善できる。
さらに、シリンダ面壁52に付着している燃料(Cfc)より排出される未燃分(W1)が多いと燃料増量要求が増えたり、過渡時の壁流補正が大量に必要になったりするのであるが、本実施形態(請求項1の発明)によればシリンダ面壁52に付着している燃料(Cfc)より排出される未燃分(W1)のほうを、燃焼室壁に付着している燃料(Cfh)より排出される未燃分(V1)より大きく設定するので、モデルが実際とよく一致することになり、シリンダ面壁52に付着する燃料(Cfc)より排出される未燃分(W1)が多いガソリン噴射エンジンにおいても排気性能や運転性を改善できる。
【0121】
本実施形態(請求項3、4に記載の発明)によれば、燃料噴射弁21から噴射された燃料には気化してまたは微小噴霧のまま燃焼室5に流入しシリンダ面壁52と燃焼室壁との2つの部位に付着することなく燃焼に寄与する分(X0)を有し、また吸気ポートに付着した後に気化してまたは微小噴霧のまま燃焼室5に流入しシリンダ面壁52とその他の燃焼室壁との2つの部位に付着することなく燃焼に寄与する分(Y0+Z0)を有する。すなわち、気体(ガス)または噴霧のまま燃焼室5に吸入され燃焼に寄与する分もモデルで扱うので、温度が高く蒸発しやすい条件や、吸気行程噴射などガス流速で気化促進しやすくかつ噴霧が気流に運ばれやすい噴射仕様や運転条件にあっても、空燃比の精度を高めることができる。
【0122】
本実施形態(請求項5、7に記載の発明)によれば、シリンダ面壁52に付着している燃料(Cfc)には燃焼までの間に蒸発して燃焼に寄与する分(W0)を有し、燃焼室壁に付着している燃料(Cfh)には燃焼までの間に蒸発して燃焼に寄与する分(V0)を有する。すなわち、壁流から燃焼室内で気体(ガス)または噴霧となって燃焼に寄与する分もモデルで扱うので、温度が高く蒸発しやすい条件や、吸気行程噴射などガス流速で気化促進しやすくかつ噴霧が気流に運ばれやすい噴射仕様や運転条件にあっても、空燃比の精度を高めることができる。
【0123】
本実施形態(請求項6に記載の発明)によれば、シリンダ面壁52に付着している燃料(Cfc)にはオイルに希釈して燃焼室から無くなる分(W2)を有するので、オイル落ちにより実際に燃焼や排気に寄与しない分を分離した燃料噴射を実現でき、さらに排気性能や運転性能を向上できる。
【0126】
本実施形態(請求項8に記載の発明)によれば、噴射弁21から噴射された燃料が、吸気ポートに分岐して付着し、その付着した燃料の一部が異なる特性で蒸発するモデルを有する。すなわち、吸気ポートの壁流モデルと組み合わせることで、燃焼に寄与する分の燃料を精度良く算出することができ、実際に燃焼や排気に寄与しない燃料を分離した燃料噴射を実現できることから、さらに排気性能や運転性能が向上する。
【0127】
この場合、吸気ポートに燃料が付着する部位はポート壁4aと吸気弁壁15aの2つであるが、従来装置(特開平9−303173号公報)のように吸気ポートに燃料が付着する部位をポート壁4aのみとしてもよい。
【0128】
本実施形態(請求項9に記載の発明)によれば、シリンダ面壁52に付着している燃料と燃焼室壁に付着している燃料とを別々の壁流モデルで表すので、部品変更などにより燃焼室5の仕様が変わっても、適合工数を低減できる。
【0129】
実施形態では噴射弁21が吸気ポート4に臨んで設けられている場合で説明したが、これに限られるものでない。例えば噴射弁が燃焼室内に直接臨んで設けられている場合にも本発明を適用できる(請求項2に記載の発明)。
【0130】
実施形態では、L−ジェトロニック方式のガソリン噴射エンジンで説明したが、D−ジェトロニック方式のガソリン噴射エンジンにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す自動車用エンジンのシステム図。
【図2】吸気ポート及び燃焼室内の混合気の挙動を示す概念図。
【図3】吸気ポート及び燃焼室内にの混合気の挙動を示す概念図。
【図4】吸気ポート、燃焼室の混合気モデルのデータフロー図。
【図5】燃料噴射量算出モデルのデータフロー図。
【図6】温度、圧力に対する噴射弁噴霧の分岐割合の特性図。
【図7】流速に対する噴射弁噴霧の分岐割合の示す特性図。
【図8】噴射タイミングに対する噴射弁噴霧の分岐割合の特性図。
【図9】吸気弁壁流の分岐割合の特性図。
【図10】ポート壁流の分岐割合の特性図。
【図11】燃焼室壁流の分岐割合の特性図。
【図12】シリンダ面壁流の分岐割合の特性図。
【図13】温度と圧力に応じた基本分岐割合の特性図。
【図14】回転速度補正係数の特性図。
【図15】ポートをすり抜け直接的に燃焼室壁とシリンダ面壁にそれぞれ付着する分の特性図。
【図16】始動後時間に対する要求度数の特性図。
【図17】アクセル開度に対する要求度数の特性図。
【図18】触媒温度に対する要求度数の特性図。
【符号の説明】
4 吸気ポート
4a ポート壁
5 燃焼室
15 吸気弁
15a 吸気弁壁
21 燃料噴射弁
31 エンジンコントローラ
42 アクセルセンサ
43 触媒温度センサ
44 吸気温度センサ
45 水温センサ
46 圧力センサ
52 シリンダ面壁
Claims (9)
- 燃焼室入口の吸気ポートを開閉する吸気弁と、
吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
吸気ポートに付着した燃料から剥離して噴霧となりまたは付着したまま移動して燃焼室に流入した燃料が、少なくともシリンダ面壁とその他の燃焼室壁との2つの部位に分岐して付着し、その付着しているそれぞれの燃料の一部が、異なる特性で蒸発するモデルを用いて前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出手段と
を備え、
前記シリンダ面壁とその他の燃焼室壁との2つの部位に付着している燃料には、燃焼が完了してから蒸発し燃焼に寄与せずに未燃のまま排出される未燃分を有し、前記シリンダ面壁に付着している燃料より排出される未燃分のほうを、前記その他の燃焼室壁に付着している燃料より排出される未燃分より大きく設定することを特徴とするエンジンの燃料噴射量制御装置。 - 燃焼室入口の吸気ポートを開閉する吸気弁と、
燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、
この燃料噴射弁から燃焼室内に直接噴射された燃料が、少なくともシリンダ面壁とその他の燃焼室壁との2つの部位に分岐して付着し、その付着しているそれぞれの燃料の一部が、異なる特性で蒸発するモデルを用いて前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出手段と
を備え、
前記シリンダ面壁とその他の燃焼室壁との2つの部位に付着している燃料には、燃焼が完了してから蒸発し燃焼に寄与せずに未燃のまま排出される未燃分を有し、前記シリンダ面壁に付着している燃料より排出される未燃分のほうを、前記その他の燃焼室壁に付着している燃料より排出される未燃分より大きく設定することを特徴とするエンジンの燃料噴射量制御装置。 - 前記燃料噴射弁から噴射された燃料には気化してまたは微小噴霧のまま燃焼室に流入し前記シリンダ面壁とその他の燃焼室壁との2つの部位に付着することなく燃焼に寄与する分を有することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
- 前記燃料噴射弁から噴射された燃料には、吸気ポートに付着した後に気化してまたは微小噴霧のまま燃焼室に流入し前記シリンダ面壁とその他の燃焼室壁との2つの部位に付着することなく燃焼に寄与する分を有することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
- 前記シリンダ面壁に付着している燃料には燃焼までの間に蒸発して燃焼に寄与する分を有することを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
- 前記シリンダ面壁に付着している燃料にはオイルに希釈して燃焼室から無くなる分を有することを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
- 前記その他の燃焼室壁に付着している燃料には燃焼までの間に蒸発して燃焼に寄与する分を有することを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
- 前記燃料噴射弁から噴射された燃料が、吸気ポートに分岐して付着し、その付着した燃
料の一部が、燃焼室内に付着している燃料と異なる特性で蒸発するモデルを有することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。 - 前記シリンダ面壁に付着している燃料と、前記その他の燃焼室壁に付着している燃料とを別々の壁流モデルで表すことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
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