JP3858086B2 - ラッカーゼを用いるリグニン分解方法及びリグニン分解剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は微生物を用いるリグニンの分解方法及びリグニン分解剤に関する。さらに詳しく言えば、ラッカーゼ(p−ジフェノール酸化酵素)と、ラッカーゼの作用を媒介する低分子化合物(ラッカーゼ・メディエーター)とを併用するリグニンの分解方法、リグニン分解剤及びこれらに使用するラッカーゼ・メディエーターに関する。
【0002】
【従来の技術】
製紙用パルプ及びパルプ廃液の漂白には現在塩素が用いられているが、塩素は生態系に影響を及ぼし、特に塩素処理により生じるポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(ダイオキシン)は猛毒であり、人体に与える影響が懸念されている。そこで、環境問題等の観点から、塩素に代えて微生物を用いるバイオ漂白の研究開発が進められている。
【0003】
バイオ漂白とは、天然に存在するリグニン分解菌、例えばスエヒロタケ、カワラタケ、ヒイロタケ、ベッコウタケ、コフキサルノコシカケなどの担子菌に属する木材腐朽菌、及びその菌が生産するリグニン分解酵素、具体的にはフェノールオキシダーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、キシラナ−ゼ、ヘミセルラーゼ、ラッカーゼ(p−ジフェノール酸化酵素)等を用いて、パルプ及びパルプ廃液中に存在するリグニン由来の着色物質を分解し漂白する技術である。
【0004】
バイオ漂白法として、例えば特開平6-220787号には白色腐朽菌と細菌を併用することにより化学パルプを漂白する方法が開示され、特開平6-166977号には特定の条件で特定のヘミセルラーゼによって処理することにより、クラフトパルプの漂白を向上させる方法が開示されている。また、特公平6-85717号及び特公平7-46995号には、アラゲカワラタケのフェノールオキシダーゼ遺伝子を微生物に導入し大量生産する方法が開示されている。
【0005】
バイオ漂白の実用化には克服すべき課題が多く残されている。
一つには、現在提案されているフェノールオキシダーゼを用いる漂白は反応速度が遅く、塩素を用いる現行法に比べ漂白に時間がかかり過ぎ実用的ではない。また、ペルオキシダーゼは電子受容体として過酸化水素を必要とするのでコストがかかる。
【0006】
そこで、酸素を電子受容体とするラッカーゼと、ラッカーゼの作用を媒介する物質(メディエーター)の共役反応系による酸化漂白が注目されている。ラッカーゼはリグニンの生分解に関わる酵素であるが、ラッカーゼ単独ではリグニンを分解することができず、メディエーターと呼ばれる低分子化合物の存在が必要であり、またメディエーターには酸化反応を促進する効果があることも知られている(生物工学会誌,第6号, 453, (1997))。
【0007】
ラッカーゼのメディエーターとしては、(1)低分子量、(2)水溶性、(3)電子移 動性、(4)適度な酸化還元ポテンシャルを有する、(5)ラジカルを形成する、(6) ラッカーゼの基質である、(7)ラッカーゼを阻害しない、(8)生分解性である、(9)環境毒性がない、(10)容易に入手出来る、などの性質を有するものが望ましい といわれている(9th International Symposium on Wood and Pulping Chemistry,1997)。
【0008】
これまでのスクリーニングの結果、ラッカーゼのメディエーターとして働く化学物質としては、シリングアルデヒド(syringic aldehyde, 4-hydroxy-3,5-dimethoxybenzaldehyde)、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(2,2'-azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-6-sulphonic acid),ABTSと略記する。)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(1-OH-Benzotriazole,HOBTと略記する。)等にその作用が認められている。これらの中ではHOBTが最も強い活性を示すが、水に溶解しないこと、容易に入手できないこと(製造コストが高いこと)、生分解されにくく廃棄物処理の点等で問題がある。また、ラッカーゼにより酸化されて生じるHOBTラジカルは、リグニンを酸化分解するだけでなく、ラッカーゼ自体にも作用し強い阻害剤として働くため、さらに実用化に適したメディエーターが求められている(M. Amann, 9th International Symposium on Wood and Pulping Chemistry,1997)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、塩素を用いずにパルプ等の中に含まれるリグニンを効率よく分解処理出来る、ラッカーゼの新規なメディエーターを見出し、実用化に向いたリグニンの分解方法及び分解処理剤を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、土壌から分離した多数の真菌及び放線菌類について、ラッカーゼ・メディエーターのスクリーニングを行なった。その結果、真菌の1種(Mer-F2800株と命名)がメディエーターとして有効な2つの 物質(F2800A及びF2800Bと命名)を生産していることを見出した。
この活性物質を単離精製し構造を決定した結果、これらの物質はそれぞれ下記式(1)及び(2)で示されるテレムチン(terremutin)とテレイック酸(terreic acid)であることが判明した。
【0011】
【化3】
【0012】
テレムチン(1)とテレイック酸(2)は、文献記載の公知化合物であり、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して抗菌活性があることは知られているが(Yagishita K. et al., The Japanese Journal of Antibiotics, 320(72), (1980) )、ラッカーゼのメディエーターとして働くことはこれまで全く知られていない。
【0013】
テレムチン(1)及びテレイック酸(2)は、これまで知られているラッカーゼ・メディエーターの中で活性の最も強いHOBTに比べると活性自体はそれ程強くはないが、上記式からも明らかなように水溶性である、低分子化合物である、適度な酸化還元ポテンシャルを有する、窒素原子を含まず生分解性である、ラッカーゼを失活させない、生物学的に容易に入手出来ること等、ラッカーゼのメディエーターとしては総合的にHOBTよりも優れたものであるといえる。
【0014】
また、テレムチン(1)及びテレイック酸(2)を産生する真菌のMer-F2800 株は、菌種の同定の結果、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)であることが判明した。アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)がエポキシ化合物であるテレムチン及びテレイック酸を生産することは既に知られており、生産菌の1種は国際寄託機関(ATCC)にATCC 12238として寄託されている(Yamamoto Y. et al., Chem, Pharm. Bull., 25, No.6, 1265, (1977))。
【0015】
以上の知見に基いて、本発明者らは、塩素を用いずに生物学的にパルプ等のリグニン分解処理を行ない得る、ラッカーゼとそのメディエーターを利用するリグニンの分解方法及び分解分解剤の発明に到達した。
【0016】
【発明の構成】
本発明は、以下のリグニン分解方法、リグニン分解剤及びラッカーゼ・メディエーターに関する。
1) ラッカーゼ含有物と、下記式(1)で示されるテレムチン及び/または下記式(2)で示されるテレイック酸を含有する組成物とを併用することを特徴とするリグニン分解方法。
【化4】
2) 前記テレムチン及び/またはテレイック酸を含有する組成物が、テレムチン及び/またはテレイック酸を産生する微生物の培養物またはその処理物である前記1記載のリグニン分解方法。
3) 前記テレムチン及び/またはテレイック酸を産生する微生物がアスペルギルス属(Aspergillus)に属する微生物である前記2に記載のリグニン分解方法 。
4) 前記ラッカーゼ含有物が、ラッカーゼ産生菌の培養物またはその処理物である前記1乃至3のいずれかに記載のリグニン分解方法。
5) 前記ラッカーゼ産生菌が、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)、カ ワラタケ(Coriolus versicolor)、ヒイロタケ(Pycnoporus coccineus)、ヒ ラタケ(Pleurotus octreatus )、ベッコウタケ(Fomitella fraxinea)から選 ばれる少なくとも1種である前記4記載のリグニン分解方法。
【0017】
6) ラッカーゼと、下記式(1)で示されるテレムチン及び/または下記式 (2)で示されるテレイック酸とを含むことを特徴とするリグニン分解剤。
【化5】
7) 前記1に記載の式(1)で示されるテレムチンからなるラッカーゼ・メディエーター。
8) 前記1に記載の式(2)で示されるテレイック酸からなるラッカーゼ・メディエーター。
【0018】
以下、本発明のラッカーゼ・メディエーター、リグニン分解方法及びリグニン分解剤について詳しく説明する。
(1)ラッカーゼ
本発明に用いられるラッカーゼは、どのような由来のものでもよいが、好ましくは微生物由来のものである。ラッカーゼを産生する微生物の具体例としては担子菌(Basidiomysetes)(木材腐朽菌類等、中でも白色腐朽菌等)等が挙げられる。例えば、スエヒロタケ(Schizophyllum commune )、カワラタケ(Coriolus versicolor)、ヒイロタケ(Pycnoporus coccineus)、ヒラタケ(Pleurotus octreatus)、ベッコウタケ(Fomitella fraxinea)等が挙げられる。これらの中 でも、好ましいのはヒイロタケ、カワラタケである。また、ラッカーゼを産生するように遺伝子を構築された菌であってもよい。これらの菌を1種または2種以上使用してもよい。
本発明においてはラッカーゼ含有物としては、前記の微生物から調製される培養物(微生物自体を含む培養液または微生物を遠心処理などによって除いた培養物等)、その部分精製標品または完全精製標品を使用することができる。
【0019】
(2)ラッカーゼ・メディエーター
本発明において、ラッカーゼと併用して用いられるラッカーゼ・メディエーターは、前記式(1)で示されるテレムチン及び/または前記式(2)で示されるテレイック酸であり、化学合成したものでも、微生物由来のものでもよい。
ラッカーゼ・メディエーターを生産する微生物としては、例えばアスペルギルス属(Aspergilus)に属するアスペルギルス・テレウス(Aspergilus terreus)が挙げられる。具体例として、テレムチン及び/またはテレイック酸生産菌として知られるアスペルギルス・テレウス(Aspergilus terreus)ATCC 12238、あるいは本発明者らが土壌から分離した真菌の一種(Mer-F2800株)がある。
【0020】
Mer-F2800株は菌糸が白く、分生子頭(Conidial head)はこげ茶色であり、可溶性の茶色の色素を生産する。菌体(Vesicle)は直径12〜20μmで、洋梨 または半球形をなしている。
アスペルギルス属(Aspergilla)の形態は二列(biseriate)であり、メトレ(metulae)が密生して菌体のほぼ3/4を覆っている。また、フィアライド(phialide)は6〜8×1.5〜2.5μm、分生子は球形または亜球形で、直径2〜3μmで表面は平滑である。真菌Mer-F2800株は以上の特徴を有しており、文献記載の アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)の特徴と完全に一致した。
【0021】
本発明者らは、上記真菌株Mer-F2800(アスペルギルス・テレウス)より見出 だされた2種のメディエーター様活性物質(F2800AとF2800B)を精製してその性質を調べた結果、F2800A物質はテレムチン(terremutin)と、F2800B物質はテレイック酸(terreic acid)と同定した。テレイック酸はテレムチンの類縁体である。
【0022】
本発明で使用するテレムチン及び/またはテレイック酸を含有する組成物は、テレムチン及び/またはテレイック酸を含有するものであればいかなるものでもよい。例えばテレムチン及び/またはテレイック酸を産生する微生物の培養物またはその処理物等が用いられる。
前記培養物とは、テレムチン及び/またはテレイック酸を産生する微生物自体を含む培養液または微生物を遠心処理などによって除いた培養物等である。また、処理物としては、前記の培養物を部分的に精製してテレムチン及び/またはテレイック酸の含量を高めたもの、あるいは単離精製されたテレムチン及び/またはテレイック酸、さらには前記培養物、部分精製標品または精製標品に助剤を加えて製剤化したもの等がある。
【0023】
(3)培養条件
本発明において使用するラッカーゼ産生菌及びラッカーゼ・メディエータ産生菌の培養は好気的または嫌気的条件、好ましくは好気的条件下で行なう。
好気培養は、通常の中温菌の培養に準じ、振盪培養により行なえばよい。培養液のpHは3〜8であり、さらに好ましくは6〜8である。
培養温度は10〜45℃、好ましくは25〜30℃である。培養を継続する時間は、目的とするラッカ−ゼ及びラッカ−ゼ・メディエーターが十分量産生できる時間である。微生物の種類にもよるが、通常は1〜10日間、好ましくは3〜5日程度である。
【0024】
培地は、通常の微生物、特に菌類の培養に用いるものであれば特に制限されない。
培地には、さらに必要に応じて各種の炭素源あるいは窒素源を添加する。炭素源としては、グルコース、フルクトース、マルトース、サッカロース、グルセリン、スターチ、糖蜜、廃糖蜜、マルツエキス等が挙げられる。窒素源としては、肉エキス、ペプトン、グルテンミール、大豆粉、乾燥酵母、酵母エキス、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム塩、尿素等が挙げられる。その他、必要に応じて、ナトリウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、鉄塩、カルシウム塩、リン酸塩等の無機塩類や、イノシトール、ビタミンB1塩酸塩、L−アスパラギン、ビ オチン等のビタミ類を添加してもよい。
【0025】
(4)リグニン分解方法
本発明によるラッカーゼ含有物と、テレムチン及び/またはテレイック酸を含有する組成物とを併用するリグニンの分解方法においては、前記のラッカーゼ含有物と前記の組成物を同時または順次に添加・混合し処理することにより行なわれる。例えば、前記含有物および組成物を廃材やパルプ等のリグニン含有物質に直接添加混合するか、逆にリグニン含有物質を含有物および組成物(培養液等)に添加し培養と分解を同時に行なうか、あるいは前記含有物および組成物を固定化したものにリグニン含有物質を接触させ分解を行なう方法等が挙げられる。バッチ法、連続法、半連続法等のいずれをも用いることができる。さらに、本発明のリグニン分解方法には前記した処理の後、洗浄工程または抽出工程等の工程を設けることができる。
リグニン含有物質を培養液に添加して処理する場合は、上述のリグニン分解活性を有する微生物の培養条件に準じて行なうことができる。
【0026】
(5)リグニン分解剤
本発明によるラッカーゼ含有物と、前記式(1)で示されるテレムチン及び/または式(2)で示されるテレイック酸を含有する組成物とを含むリグニン分解剤は、液剤であると固型剤であるとを問わない。例えば、リグニン分解活性を有する培養液自体、部分精製標品または精製標品に助剤を加えて製剤化したものがある。これらは1種または2種以上組み合わせて使用することができる。また、前記製造助剤を加えて固形剤としたものを、処理するリグニン含有物質自体にまたは処理媒体中に添加して使用することもできる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明に係るよるラッカーゼ・メディエーター(テレムチン及びテレイック酸)の確認実験及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの例により限定されるものではない。以下の例中、%は特に記載がない限り重量%である。
【0028】
実験例1:ラッカーゼ・メディエーター産生菌の培養
ラッカーゼ・メディエーター産生菌であるMer-F2800株の培養は、500ml 容三角フラスコにポテトデンプン(2%)、グルコース(1%)、エスサンミート(2%)、KH2PO4(0.1%)、MgSO4(0.05%水溶液4%)、アデカノール(0.05%,pH無調製)からなる培地を100ml入れて滅菌後、ポテト−デキストリン寒天斜面培地で培養したMer-F2800株の断片を植菌してロータリー シェーカー上で28℃、3日培養して種母とした。本培養は30リットル(L)−ジャーに種母培養と同じ組成の培地15Lを仕込み、撹拌数200rpm、通気7.5L/分(0.5vvm)、25℃で4日間培養した。
【0029】
実験例2:ラッカーゼ・メディエーターの確認
(1)ラッカーゼ・メディエーターの調製
F2800A物質(テレムチン(terremutin))及びF2800B物質(テレイック酸(terreic acid))の回収は以下の通りに行なった。実験例1で述べた培養液約15Lからろ過によって菌体を除き、培養濾液13Lを得た。培養濾液を6N塩酸でpHを2.5に調整してから13Lの酢酸エチルで2回抽出を行ない、酢酸エチル層 を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで濃縮乾固した。こうして得られた残渣をクロロホルム:酢酸(10:0.1)混液10mlに溶かし、溶けた画分をクロロホルム:酢酸(10:0.1)混液で充填したシリカゲルカラム (silica gel-60,メルク(Merck)社製、5φ×50cm)に付し、クロロホル ム:酢酸(10:0.1)混液で溶出を行なってF2800B物質を溶出させ、その後ク ロロホルム:メタノール:酢酸(10:0.5:0.1)混液でF2800Aの溶出を行なった。いずれも溶出液からの活性の検出は後述するラッカーゼのメディエーター・アッセイ法によって行なった。こうしてF2800A物質を950mg、F2800B物質を910mg得た。
【0030】
F2800A物質の物理化学的性質:
FAB−MS(マトリックス;グリセリン):ポジティブm/z157[(MH+)]、ネガティブm/z155[(MH-)]
1H−NMR(400MHz,D2O):δ:1.7(s, 3H)、3.63(d, 1H, J=3.66Hz)、3.86(d, 1H, J=3.66Hz)、4.73(s, 1H)
【0031】
F2800B物質の物理化学的性質:
FAB−MS(マトリックス;グリセリン):ポジティブm/z155[(MH+)]、ネガティブm/z153[(MH-)]
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ:1.94(s, 3H)、3.87(d, 1H, J=3.29)、3.90(d, 1H, J=3.67Hz)、6.80(s, 1H)
これらの結果は、アスペルギルス・テレウスが産生する毒素であるテレムチン(terremutin)及びテレイック酸(terreic acid)の文献値とよく一致した。
さらにNMRを用いた化学構造の解析によりF2800A物質の化学構造を最終的にテレムチンと同定した。
以上の通り、F2800A物質はテレムチン(terremutin)と、F2800B物質はテレイック酸(terreic acid)と同定された。
【0032】
試験例:ラッカーゼ・メディエーター活性の測定
F2800A物質(terremutin)のラッカーゼのメディエーター活性の測定は、50mM酢酸緩衝液(pH 4.5)中で10mMのベラトリアルアルコール(veratryl alcohol)と2.5mMのテレムチンを含んだ100μlの反応溶液中で室温で一 晩反応させることにより行なった。
ベラトリアルアルコールはラッカーゼ単独では酸化されず(フェノール性の水酸基がないため)、これまでにメディエーターとして知られているABTSやHOBTが共存するときにのみ酸化されてベラトアルデヒド(veratraldehyde)が生ずる。従って、ラッカーゼを反応液に添加することで、ベラトリアルアルコールが酸化されたベラトアルデヒドを検出できれば、メディエーターの存在が確認できる。
カワラタケ由来のラッカーゼ1μlを添加して反応後、反応液にメタノールを200μl加えて撹拌し、16000rpm、5分間の遠心処理により不溶物を除い てHPLC用の分析試料を得た。6φ×150mmODS、70%メタノール、0.5ml/分、310nmの条件でHPLC分析を行なった。ベラトアルデヒド の保持時間は約7.5分なので、この部分のピークの定量を行なった。
反応開始10時間後で0.156mMのベラトアルデヒドが生じた。この酸化反応 はテレムチン無添加では進行しなかった。
【0033】
F2800B物質(terreic acid)のラッカーゼ・メディエーター活性の測定は、50mM酢酸緩衝液(pH 4.5)中で10mMのベラトリアルアルコールと2.5m Mのテレイック酸を含んだ100μlの反応溶液中で室温で行なった。カワラタケ由来のラッカーゼを1μl添加することによって、ベラトリアルアルコール(veratryl alcohol)が酸化されてベラトアルデヒド(veratraldehyde)になる反応が進行し、反応開始10時間後で0.116mMのベラトアルデヒドが生じた。この酸 化反応はテレイック酸無添加では進行しなかった。
【0034】
精製したテレムチンのラッカーゼ・メディエーターとしての活性をこれまでに知られているメディエーターの活性と比較した。HOBT、ABTS及びNHAA(N-OH-acetanilide)の活性はHOBT>ABTS>NHAAの順序であるがテレムチンの活性はNHAAと同定度であった。しかし、テレムチンはこれらのメディエーターが抱えている、製造コストが高い、窒素含量が高い(窒素含量は高いと残留物処理の点で問題がある。)、ラッカーゼを失活させる等の問題がなく、総合的にはこれらよりも優れたメディエーターであると考えられる。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、これまで知られていなかったラッカーゼ・メディエーターを利用するリグニン分解方法及び分解剤を提供するものである。
本発明のリグニン分解方法によれば、塩素系の薬品を使用せずに微生物が生産するラッカーゼ及びそのメディエーターを利用して廃材やパルプ等のリグニン分解を行なうことができる。
また、本発明のリグニン分解方法に使用するラッカーゼ・メディエーターは、生分解性であり、ラッカーゼ阻害作用はなく、窒素を含有しないため残留物処理の点で環境に影響を及ぼさず、また容易に入手できるためコスト低減が可能である等公知のメディエーターにはない優れたメディエーターとして利用できる。
従って、本発明のリグニン分解方法及び分解剤は環境汚染を引起こさないものとして、製紙工業、産業廃棄物処理工業、土壌改質などの分野で利用することができる。
Claims (8)
- 前記テレムチン及び/またはテレイック酸を含有する組成物が、テレムチン及び/またはテレイック酸を産生する微生物の培養物またはその処理物である請求項1記載のリグニン分解方法。
- 前記テレムチン及び/またはテレイック酸を産生する微生物がアスペルギルス属(Aspergillus)に属する微生物である請求項2に記載の リグニン分解方法。
- 前記ラッカーゼ含有物が、ラッカーゼ産生菌の培養物またはその処理物である請求項1乃至3のいずれかに記載のリグニン分解方法。
- 前記ラッカーゼ産生菌が、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)、カワラタケ(Coriolus versicolor)、ヒイロタケ(Pycnoporus coccineus)、ヒラタケ(Pleurotus octreatus)、ベッコウタケ(Fomitella fraxinea)から選ばれる少なくとも1種である請求項4記載のリグニン分解方法。
- 請求項1に記載の式(1)で示されるテレムチンからなるラッカーゼ・メディエーター。
- 請求項1に記載の式(2)で示されるテレイック酸からなるラッカーゼ・メディエーター。
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