JP3856251B2 - 感光性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷版、IC回路やホトマスク製造に適するポジ感光性組成物に関し、とくに高感度で硬調な画像形成性を与えるポジ型感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
o−キノンジアジド化合物を含有してなる感光性組成物は、非常に優れたポジ型感光性組成物として平版印刷版の製造やフォトレジストとして工業的に用いられてきた。従来このo−キノンジアジド系のポジ型感光性組成物の感度を高める方法について種々の提案がなされてきたが、感度を低下させることなく、硬調な画像形成性を示し、かつ、焼きぼけ、白灯安全性、および現像許容性の広い、満足するべき物は得られていない。
【0003】
また、o−キノンジアジド化合物よりも高感度を示す系として、米国特許第4491628号、欧州特許第249139号などに記載されているようなアルカリ可溶性基を酸分解基で保護した化学増幅系の感光物が提案され広く用いられている。しかしこの系においても、硬調な画像形成性を示し、かつ現像許容性の広い満足すべきものが得られていないのが実状である。
【0004】
ここで、画像が硬調であるとはステップウェッジを通して露光し現像したときに画像が残存し始める段数と完全に膜が残存している段数との差が小さいことを意味する。また焼きぼけとはキノンジアジドの分解により生じた窒素及び感光層と原稿フィルムの間に混入したゴミによりリスフィルムが浮き上がり完全な密着露光が出来なくなるために生じるものであり、一般的にクリアー感度を同一にしたとき、画像が硬調であるほど焼きぼけを解消しやすい。また、白灯安全性とは印刷版を蛍光灯などの白灯下に曝したときに画像の感度の安定性を示すものであり、焼きぼけと同様に、画像が硬調なものほど白灯安全性が良い。なおステップウェッジとは一段ごとに濃度が0.15ずつ変化する短冊形のフィルムであり、露光量と露光後現像した後の感光層残膜量との関係を得る際に用いられる。またクリアー感度とは露光現像後に画像が出来始めるときの感度を意味する。また現像許容性とは現像液の濃度が変化したときに、露光し現像した後の画像感度がどれだけ変動するかをみるものであり、感度の変動が小さいものほど現像許容性が良いという。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来から、o−キノンジアジド化合物を含む感光性組成物に非感光性の化合物を添加して、感度を上昇させる技術が提案されているが、種々の欠点を有しているのが現状である。
例えば、感度を上昇させるため特開昭52−80022号公報には環状酸無水物の添加が提案されている。しかしこの方法は、感度上昇の効果は認められるが、大きな感度上昇が認められる程度に酸無水物を添加すると画像が軟調となり、白灯安全性、現像許容性が大きく劣化した。
【0006】
これらの問題点を解決するために界面活性剤を添加する方法がいくつか提示されてきた。たとえば特開昭59−121044号公報には高感度化したポジ型感光性組成物に両性界面活性剤および有機ホウ素系活性剤を添加することにより現像許容性を広くする方法が示されている。また特開昭62−251740号公報には高感度化したポジ型感光性組成物に非イオン性界面活性剤を添加することにより現像許容性を広くする方法が示されている。しかしながら、いずれの方法もある程度の現像許容性改善の効果はあったが十分なものではなく、十分な効果を得ようとすると感度低下を招いた。また焼きぼけ、白灯安全性に関しては大きな効果が得られなかった。
【0007】
また、特開昭62−226143号、特開平3−172849号、特開平8−15858号公報には界面活性剤としてフルオロ脂肪族基、およびポリオキシアルキレン基を有するフッ素系ポリマーが記載されている。しかし、これらのポリマーを用いても焼きぼけ、白灯安全性に関しては効果が得られなかった。更に、これらのフルオロ脂肪族基を有するフッ素系ポリマーを用いたポジ型感光性組成物を大量にアルカリ現像処理した場合には、現像液中に沈殿物が発生してヘドロ化が生じてしまい、特に電導度を用いたpH値の検定により液感度を管理している自動現像機処理において支障が生じるという問題があった。
【0008】
本発明は、従来の技術の上記問題点を解決し、感度を低下させることなく、硬調な画像形成性を示し、かつ、焼きぼけ、白灯安全性および現像許容性が広く、更に大量処理しても現像液のヘドロ化が生じない、ポジ型感光性組成物を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を進めた結果、ポジ型感光性組成物に特定の含フッ素ポリマーを添加することにより、上記目的が達成されることを見いだした。すなわち本発明は含フッ素ポリマーとして、下記に示す特定の共重合成分を特定量含有する共重合体を感光性組成物に添加することにより、感度を低下させることなく、硬調な画像形成性を示し、かつ、焼きぼけ、白灯安全性および現像許容性が広く、更に大量処理しても現像液のヘドロ化が生じないポジ型感光性組成物が得られることを見いだした。また本発明は、従来公知の高感度化したポジ型感光性組成物の硬調化に特に有効であり、本発明による含フッ素ポリマーを添加することで軟調であった画像が硬調化し、焼きぼけ、白灯安全性および現像許容性が改善され、且つ現像液のヘドロ化が生じないことを見いだした。
【0010】
本発明による含フッ素ポリマーとは、下記(1)で示される構成単位20〜60モル%及び下記(2)で示される構成単位30〜70モル%を共重合成分として有する高分子化合物である。
(1)水素原子がフッ素原子で置換されているフルオロ脂肪族基を側鎖に有する付加重合可能なモノマー
(2)−SO2NH2、−SO2NH−、−SO2NHCOO−、−CONHSO2−、−CONHSO2NH−、−NHCONHSO2−及び−CONHCO−から選択される少なくとも1つの酸性水素原子置換基を有する付加重合可能なモノマー
【0011】
本発明で用いられる含フッ素共重合ポリマー中に用いられる成分(1)のフルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該共重合ポリマーの重量に基づいて20〜60モル%、好ましくは25〜50モル%、更に好ましくは25〜35モル%の範囲である。この範囲内において、ポリマーの良好な表面配向性が得られ、且つ現像液溶解性を十分に保持することが可能となり、ヘドロ化が生じない。また、成分(2)の酸性基含有モノマーの量は、該共重合ポリマーの重量に基づいて30〜70モル%、好ましくは35〜50モル%、更に好ましくは35〜45モル%の範囲である。この範囲内において、成分(1)の性能を阻害することなく、良好な感度及び硬調化効果た得られ、ヘドロ化も生じない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明の特徴をなす含フッ素ポリマーにおける各成分(1)および(2)について説明する。
【0013】
成分(1)である、炭素原子上の水素原子がフッ素化されているフルオロ脂肪族基とは、通常飽和されかつ一般に一価又は二価の脂肪族基である。これは直鎖、分岐鎖、または環式のものを含む。フルオロ脂肪族基は本発明の目的において十分な効果を発揮するためには、3〜20、好ましくは6〜12の炭素原子を有し、かつ40重量%以上の好ましくは50重量%以上の、炭素原子に結合したフッ素を有するものである。好適なフルオロ脂肪族基は、CnF2n+1−(nは1以上、好ましくは3以上の整数)のように実質上完全にまたは十分にフッ素化されたパーフルオロ脂肪族基(以下、Rf基とも略す)である。
【0014】
成分(1)として示される炭素原子上の水素原子がフッ素化されているフルオロ脂肪族基を有する付加重合可能なモノマーにおける付加重合性モノマー部としては、ラジカル重合可能な不飽和基を持つビニル単量体が用いられる。これらのビニル単量体のうち好ましいものとしてはアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン系、ビニル系である。
【0015】
フルオロ脂肪族基が結合したアクリレート,メタクリレートの具体例としては、例えば、Rf−R′−OOC−C(R″)=CH2(ここでR′は、例えば、単結合、アルキレン、スルホンアミドアルキレン、またはカルボンアミドアルキレンであり、R″は水素原子、メチル基、ハロゲン原子、またはパーフルオロ脂肪族基)で表される化合物が挙げられる。
これらの具体例としては例えば米国特許第2803615号、同第2642416号、同第2826564号、同第3102103号、同第3282905号、及び同第3304278号、特開平6−256289号、特開昭62−1116号、特開昭62−48772号、特開昭63−77574号、特開昭62−36657号に記載のもの及び日本化学会誌1985(No.10)1884〜1888頁記載のものを挙げることができる。
【0016】
またこれらのフルオロ脂肪族基結合モノマーのほかにも、Reports Res. Lab. Asahi Glass Co. Ltd., 34巻1984年27〜34頁記載のフルオロ脂肪族基結合マクロマーを優位に用いることができる。
またフルオロ脂肪族基結合モノマーとしては、下記構造式の様なパーフルオロアルキル基の長さの異なる混合物であっても用いることができる。
【0017】
【化1】
【0018】
一方、成分(2)である酸性水素原子置換基は、−SO2NH2、−SO2NH−、−SO2NHCOO−、−CONHSO2−、−CONHSO2NH−、−NHCONHSO2−及び−CONHCO−から選択されるものである。
【0019】
成分(2)として示される特定の酸性水素原子置換基を有する付加重合可能なモノマーにおける付加重合性モノマー部としてはラジカル重合可能な不飽和基を持つビニル単量体が用いられる。これらのビニル単量体のうち好ましいのもとしてはアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン系、ビニル系である。
【0020】
本発明の特定の酸性水素原子置換基を有するビニル単量体の好ましい構造の例としては、下記の一般式〔1〕、〔2〕または〔3〕で示される構造単位を有するモノマーを挙げることが出来る。
【0021】
【化2】
【0022】
式〔1〕及び〔2〕中、Aは水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Bはアリーレン基を表す。Xは−CO−または−SO2−を表す。Xが−SO2−のとき、Yは水素原子、アルキル基、アリール基、−CO−R1、または−SO2−R1を表す。またXが−CO−のとき、Yは−CO−R1または−SO2−R1を表す。Zは−NH−、−NR1−、−O−を表す。Eはアリーレン基またはアルキレン基を表す。R2は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。mおよびnは0または1を表すが、mおよびnが共に0であることはない。R1はアルキル基またはアリール基を表す。また、BとY、あるいはEとR2とは連結して非金属原子からなる環を形成しても良い。
【0023】
【化3】
【0024】
式〔3〕中、FおよびGは、フェニレン基またはアルキレン基を表す。Tは−OCO−、−CO−または−SO2−を表す。p、p′、qおよびq′は0または1を表すが、q、q′が同時に0になることはない。
【0025】
前記一般式〔1〕および〔2〕において、Aの好ましいものとしては水素原子またはメチル基である。Y、R1またはR2で表される好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、イソプロピルなどの炭素数1〜20のアルキル基があり、Y、R1またはR2で表される好ましいアリール基としてはフェニル、ナフチルなどの炭素数6〜18のアリール基がある。BまたはEで表される好ましいアリーレン基としてはフェニレン、ナフチレンなどのを挙げることができ、Eで表される好ましいアルキレン基としてはメチレン、エチレンなどの炭素数1〜20のアルキレン基がある。
【0026】
Y、R1またはR2で表されるアルキル基およびアリール基、並びにBまたはEで表されるアリーレン基およびアルキレン基は置換基を有していても良く、置換基としてはフッ素、クロロ、ブロモなどのハロゲン原子、メトキシ、エトキシなどのアルコキシ基、フェノキシなどのアリールオキシ基、シアノ基、アセトアミドなどのアミド基、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基などのほか炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基などを挙げることができる。
【0027】
前記一般式〔3〕において、F、Gの好ましいものとしてはBもしくはEで用いたものと同義のものを挙げることができる。
なお、前記一般式〔1〕〜〔3〕において、〔1〕及び〔2〕のモノマーがより好ましい。
【0028】
次に本発明に用いられる酸性水素原子置換基を含有するビニル単量体の具体的な構造の例を以下に示す。
【0029】
【化4】
【0030】
【化5】
【0031】
【化6】
【0032】
【化7】
【0033】
【化8】
【0034】
本発明の含フッ素ポリマーは、更に必要に応じて、成分(3)として、下記構造〔4〕〜〔7〕を含有していてもよい。
成分(3)は、感光性組成物、特に印刷版の低露光部における現像抑制効果をもたらし、よって本発明の効果である硬調化効果を増大させるのに有効な働きを成す。
【0035】
【化9】
【0036】
Wは、酸素又は−NR3−であり、R3は水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。R5は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基、R6はアルキル基又はアリール基を表す。Uはシアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシメチル基又は窒素原子を含むヘテロ環を表す。Aは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。
【0037】
構造〔4〕〜〔7〕で示されるモノマーの好ましい範囲としては、Wは酸素又は−NR3−であり、R3は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。R5は置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基、R6は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基を表す。Uはシアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシメチル基、窒素原子を含むヘテロ環又は−CH2OCOR6(R6は前記と同義)を表す。
【0038】
R5が置換基を有していてもよいアルキル基のとき、その置換基としては、フッ素、クロロ、ブロモ等のハロゲン原子、水酸基、メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、フェノキシ等のアリールオキシ基、シアノ基、アセトアミド等のアミド基、エトキシカルボニルのようなアルコキシカルボニル基などを挙げることができる。
R5が置換基を有していてもよいアリール基のとき、その置換基としては、上記の他、メチル基を挙げることができる。
【0039】
成分(3)の好ましい具体例を以下に示す。
例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニル(メタ)アクリルアミド、N−トリル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド、N−トリルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、N−ベンジルマレイミド等のN−置換マレイミド類;酢酸アリル、カプロン酸アリル、ステアリン酸アリル、アリルオキシエタノール等のアリル化合物;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、エトキシビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、トリルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、安息香酸ビニル、クロル安息香酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、クロルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、ヒドロキシスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン等のスチレン類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、アクリロニトリル等が挙げられる。
これらの成分(3)のうち特に好ましいのは、構造〔4〕及び〔6〕で示されるモノマーである。
【0040】
本発明の含フッ素共重合ポリマー中に含有していてもよいこれらの成分(3)のモノマーの量は、該共重合ポリマーの重量に基づいて0〜50重量%であり、好ましくは10〜30重量%の範囲で用いられる。
【0041】
本発明の含フッ素ポリマーは公知慣用の方法で製造することができる。例えばフルオロ脂肪族基を有する(メタ)アクリレートおよび特定の酸性水素原子置換基を有するビニル単量体、更に必要に応じて脂肪族基もしくは芳香族基を有する(メタ)アクリレートとを、有機溶媒中、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、熱重合させることにより製造できる。あるいは場合によりその他の付加重合性不飽和化合物とを、添加して上記と同じ方法にて製造することができる。
【0042】
また場合により用いられるその他の付加重合不飽和化合物としては、Polymer Handbook 2nd ed., J.Brandrup, Wiley Interscience (1975) Chapter 2 Page 1〜483記載のものを用いることが出来る。またこれらのモノマーの他、特開昭62−226143号、特開平3−172849号公報記載のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートを用いることが出来る。
【0043】
以下、本発明による含フッ素ポリマーの具体的な構造の例を示す。なお式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。
【0044】
【化10】
【0045】
【化11】
【0046】
本発明で用いる含フッ素系ポリマーの分子量の範囲は平均分子量として3,000〜200,000までのものであり、好ましくは4,000〜100,000までのものを用いることができる。また本発明で用いるフッ素系ポリマーの添加量は、溶媒を除く全組成分に対して、0.001〜10重量%の範囲であり、より好ましくは0.01〜5重量%の範囲である。
【0047】
次に本発明のポジ型感光層用の感光性組成物を調製するに際して必要となる、本発明の含フッ素ポリマー以外の他の成分について説明する。
【0048】
ポジ型感光性組成物としては、露光の前後で現像液に対する溶解性または膨潤性が変化するものならば使用できるが、代表的なものとしては、o−キノンジアジド化合物が挙げられる。例えば、アルカリ可溶性樹脂とo−キノンジアジド化合物とを含有するポジ型感光性組成物の場合、o−キノンジアジド化合物は、少なくとも1つのo−キノンジアジド基を有する化合物で、活性光線によりアルカリ水溶液に対する溶解性を増すものが好ましい。
【0049】
この様なものとしては、種々の構造のものが知られており、例えば、J.KOSAR著「Light-Sensitive Systems」(John Wiley & Sons, Inc, 1965年発行)P.336〜P.352に詳細に記載されている。
【0050】
ポジ型感光性組成物としては、特に種々のヒドロキシル化合物とo−ベンゾキノンジアジドあるいはo−ナフトキノンジアジドのスルホン酸エステルが好適である。
【0051】
上記のようなo−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール・ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂とのエステル;米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール・アセトン樹脂とのエステル;特公昭63−13528号公報に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとレゾルシン−ベンズアルデヒド樹脂とのエステル;特公昭62−44257号公報に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとレゾルシン−ピロガロール・アセトン共縮合樹脂とのエステル;特公昭56−45127号公報に記載されている末端にヒドロキシル基を有するポリエステルに1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドをエステル化させたもの;特公昭50−24641号公報に記載されているN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドのホモポリマーまたは他の共重合しうるモノマーとの共重合体に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドをエステル化させたもの;特公昭54−29922号公報に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとビスフェノール・ホルムアルデヒド樹脂とのエステル;特公昭52−36043号公報に記載されているp−ヒドロキシスチレンのホモポリマーまたは他の共重合しうるモノマーとの共重合体に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドをエステル化させたもの;1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとポリヒドロキシベンゾフェノンとのエステルがある。
【0052】
その他、本発明に使用できる公知のo−キノンジアジド化合物としては、特開昭63−80254号、特開昭58−5737号、特開昭57−111530号、特開昭57−111531号、特開昭57−114138号、特開昭57−142635号、特開昭51−36129号、特公昭62−3411号、特公昭62−51459号、特公昭51−483号などの各明細書中に記載されているものなどを上げることができる。
前記のo−キノンジアジド化合物の含有量は、感光性組成物の全固形分に対して、通常5〜60重量%で、より好ましくは10〜40重量%である。
【0079】
水不溶でアルカリ性水溶液に可溶の合成樹脂(以下、アルカリ可溶性樹脂という)としては、例えばフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、ハイドロキノンモノメタクリレート共重合体の他、特開平7−28244号公報記載のスルホニルイミド系ポリマー、特開平7−36184号公報記載のカルボキシル基含有ポリマーなどが挙げられる。その他特開昭51−34711号公報に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号に記載のスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系の樹脂、等種々のアルカリ可溶性の高分子化合物も用いることができる。これらのアルカリ可溶性高分子化合物は、重量平均分子量が500〜20,000で数平均分子量が200〜60,000のものが好ましい。
かかるアルカリ可溶性の高分子化合物は1種類あるいは2種類以上を組合せて使用してもよく、全組成物の80重量%以下の添加量で用いられる。
【0080】
更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物を併用することは画像の感脂性を向上させる上で好ましい。かかるアルカリ可溶性樹脂は、通常、組成物全重量の90重量%以下の添加量で用いられる。
【0081】
感光性組成物中には、更に必要に応じて、感度を高めるための環状酸無水物、露光後直ちに可視像を得るための焼き出し剤、画像着色剤としての染料、その他のフィラーなどを加えることができる。
【0082】
本発明における感光性組成物中には、感度を高めるために環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加することが好ましい。
環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されているように無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸等がある。
フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、4,4,4″−トリヒドロキシ−トリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
【0083】
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、ホスフィン酸類、リン酸エステル類、カルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキセン−2,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜8重量%である。
【0084】
露光後、直ちに可視像を得るための焼き出し剤としては、露光によって酸を放出する感光性化合物と、酸と塩を形成して色調を変える有機染料との組み合わせを挙げることができる。
【0085】
露光によって酸を放出する感光性化合物としては、例えば、特開昭50−36209号公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニド;特開昭53−36223号公報に記載されているトリハロメチル−2−ビロンやトリハロメチル−s−トリアジン;特開昭55−62444号公報に記載されている種々のo−ナフトキノンジアジド化合物;特開昭55−77742号公報に記載されている2−トリハロメチル−5−アリール−1,3,4−オキサジアゾール化合物;ジアゾニウム塩などを挙げることができる。これらの化合物は、単独または混合して使用することができ、その添加量は、組成物全重量に対し、0.3〜15重量%の範囲が好ましい。
【0086】
本発明における、感光性組成物中には、光分解して酸性物質を発生する化合物の光分解生成物と相互作用することによってその色調を変える有機染料が少なくとも一種類以上用いられる。このような有機染料としては、ジフェニルメタン系、トリアリールメタン系、チアジン系、オキサジン系、フェナジン系、キサンテン系、アントラキノン系、イミノナフトキノン系、アゾメチン系の色素を用いることができる。具体的には次のようなものである。
ブリリアントグリーン、エオシン、エチルバイオレット、エリスロシンB、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、フェノールフタレイン、1,3−ジフェニルトリアジン、アリザリンレッドS、チモールフタレイン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、オレンジIV、ジフェニルチオカルバゾン、2,7−ジクロロフルオレセイン、パラメチルレッド、コンゴーレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、フエナセタリン、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、オイルブルー#603〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルピンク#312〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルレッド5B〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルスカーレット#308〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルレッドOG〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルレッドRR〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルグリーン#502〔オリエント化学工業(株)製〕、スピロンレッドBEHスペシャル〔保土谷化学工業(株)製〕、ビクトリアピュアーブルーBOH〔保土谷化学工業(株)製〕、パテントピュア−ブルー〔住友三国化学工業(株)製〕、スーダンブルーII〔BASF社製〕、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、ファーストアッシドバイオレットR、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチル−アミノ−フェニルイミノナフトキノン、p−メトキシベンゾイル−p′−ジエチルアミノ−o′−メチルフェニルイミノアセトアニリド、シアノ−p−ジエチルアミノフェニルイミノアセトアニリド、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等。
【0087】
特に好ましい有機染料は、トリアリールメタン系染料である。トリアリールメタン系染料では、特開昭62−2932471号公報、特願平4−112844号明細書に示されているような対アニオンとしてスルホン酸化合物を有するものが特に有用である。
これらの染料は単独又は混合して使用することができ、添加量は感光性組成物の総重量に対して0.3〜15重量%が好ましい。また必要に応じて他の染料、顔料と併用でき、その使用量は染料及び顔料の総重量に対して70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0088】
その他本発明の組成物中には、画像のインキ着肉性を向上させるための、疎水基を有する各種樹脂、例えばオクチルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、t−ブチルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、t−ブチルフェノール・ベンズアルデヒド樹脂、ロジン変性ノボラック樹脂、及びこれら変性ノボラック樹脂のo−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル等;塗膜の可撓性を改良するための可塑剤、例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、ブチルグリコレート、リン酸トリクレジル、アジピン酸ジオクチル等、種々の目的に応じて各種添加剤を加えることができる。これらの添加量は組成物全重量に対して、0.01〜30重量%の範囲が好ましい。
【0089】
更にこれらの組成物中には、皮膜の耐摩耗性を更に向上させるための公知の樹脂を添加できる。これらの樹脂としては、例えばポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等があり、単独または混合して使用することができる。添加量は組成物全重量に対して、2〜40重量%の範囲が好ましい。
【0090】
また、本発明における感光性組成物中には、現像のラチチュードを広げるために、特開昭62−251740号公報や、特開平4−68355号公報に記載されているような非イオン性界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0091】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどが挙げられ、両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、アモーゲンK(商品名、第一工業(株)製、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型)、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、レボン15(商品名、三洋化成(株)製、アルキルイミダゾリン系)などが挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤の感光性組成物中に占める割合は0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜5重量%である。
【0092】
本発明における感光性組成物中には、塗布面質を向上するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、全感光性組成物の0.001〜1.0重量%であり、更に好ましくは0.005〜0.5重量%である。
【0093】
また、本発明における感光性組成物中には、以下の黄色系染料を添加することができる。
e)一般式〔I〕、〔II〕あるいは〔III〕で表わされ、417nmの吸光度が436nmの吸光度の70%以上である黄色系染料
【0094】
【化21】
【0095】
式〔I〕中、R21及びR22はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又はアルケニル基を示す。またR21とR22は環を形成してもよい。R23、R24、R25はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を示す。G1、G2はそれぞれ独立にアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アリールカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基又はフルオロアルキルスルホニル基を示す。またG1とG2は環を形成してもよい。さらにR21、R22、R23、R24、R25、G1、G2のうち1つ以上に1つ以上のスルホン酸基、カルボキシル基、スルホンアミド基、イミド基、N−スルホニルアミド基、フェノール性水酸基、スルホンイミド基、又はその金属塩、無機又は有機アンモニウム塩を有する。YはO、S、NR(Rは水素原子もしくはアルキル基又はアリール基)、Se、−C(CH3)2−、−CH=CH−より選ばれる2価原子団を示し、n1は0、1を示す。
【0096】
【化22】
【0097】
〔式中、R26及びR27はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロ環基、置換ヘテロ環基、アリル基又は置換アリル基を表わし、また、R26とR27とは共にそれが結合している炭素原子と共に環を形成しても良い。
n2は、0、1又は2を表わす。
G3及びG4はそれぞれ独立に、水素原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、置換アリールオキシカルボニル基、アシル基、置換アシル基、アリールカルボニル基、置換アリールカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、フルオロアルキルスルホニル基を表わす。ただし、G3 とG4が同時に水素原子となることはない。また、G3とG4とはそれが結合している炭素原子と共に非金属原子から成る環を形成しても良い。〕
さらにR26、R27、G3、G4のうち1つ以上に1つ以上のスルホン酸基、カルボキシル基、スルホンアミド基、イミド基、N−スルホニルアミド基、フェノール性水酸基、スルホンイミド基、又はその金属塩、無機又は有機アンモニウム塩を有する。
【0098】
【化23】
【0099】
R28、R29、R30、R31、R32、R33はそれぞれ同じでも異なっていてもよく水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、アシル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ニトロ基、カルボキシル基、クロル基、ブロモ基を表わす。
【0100】
本発明のフッ素系界面活性剤を含んだ感光性組成物から平版印刷版用感光材料を得る場合には、まずそれが適当な支持体上に設けられる。本発明のフッ素系界面活性剤を含んだ感光性組成物は、下記の有機溶剤の単独あるいは混合したものに溶解または分散され、支持体に塗布され乾燥される。
【0101】
有機溶剤としては、公知慣用のものがいずれも使用できるが、沸点40℃〜200℃、特に60℃〜160℃の範囲のものが、乾燥の際における有利さから選択される。勿論、本発明の界面活性剤が溶解するものを選択するのが良い。
【0102】
有機溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−またはイソ−プロピルアルコール、n−またはイソ−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メトキシベンゼン等の炭化水素類、エチルアセテート、n−またはイソ−プロピルアセテート、n−またはイソ−ブチルアセテート、エチルブチルアセテート、ヘキシルアセテート等の酢酸エステル類、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、モノクロルベンゼン等のハロゲン化物、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコール、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ、ジエチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール等の多価アルコールとその誘導体、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の特殊溶剤などが単独あるいは混合して好適に使用される。そして、塗布する組成物中の固形分の濃度は、2〜50重量%とするのが適当である。
【0103】
本発明の組成物の塗布方法としては、例えばロールコーティング、ディップコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、グラビアオフセットコーティング、ホッパーコーティング、ブレードコーティング、ワイヤドクターコーティング、スプレーコーティング等の方法が用いられ、乾燥後の重量にして0.3〜4.0g/m2が好ましい。塗布量が小さくなるにつれて画像を得るための露光量は小さくて済むが、膜強度は低下する。塗布量が大きくなるにつれ、露光量を必要とするが感光膜は強くなり、例えば、印刷版として用いた場合、印刷可能枚数の高い(高耐刷の)印刷版が得られる。
【0104】
支持体上に塗布された感光性組成物の乾燥は、通常加熱された空気によって行われる。加熱は30℃〜200℃特に、40℃〜140℃の範囲が好適である。乾燥の温度は乾燥中一定に保たれる方法だけでなく段階的に上昇させる方法も実施し得る。
【0105】
また、乾燥風は除湿することによって好結果が得られる場合もある。加熱された空気は、塗布面に対し0.1m/秒〜30m/秒、特に0.5m/秒〜20m/秒の割合で供給するのが好適である。
【0106】
上記のようにして設けられた感光層の表面には、真空焼き枠を用いた密着露光の際の真空引きの時間を短縮し、且つ焼きボケを防ぐため、マット層を設けることが好ましい。具体的には、特開昭50−125805号、特公昭57−6582号、同61−28986号の各公報に記載されているようなマット層を設ける方法、特公昭62−62337号公報に記載されているような固体粉末を熱融着させる方法などが挙げられる。
【0107】
感光性平版印刷版等に使用される支持体は、寸度的に安定な板状物であり、これ迄印刷版の支持体として使用されたものが含まれ、好適に使用することができる。かかる支持体としては、紙、プラスチックス(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、例えばアルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、鉄、銅などのような金属の板、例えば二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酪酸酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのようなプラスチックスのフイルム、上記のような金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルムなどが含まれるが、特にアルミニウム板が好ましい。アルミニウム板には純アルミニウム板及びアルミニウム合金板が含まれる。アルミニウム合金としては種々のものが使用でき、例えばけい素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケルなどの金属とアルミニウムの合金が用いられる。これらの組成物は、いくらかの鉄およびチタンに加えてその他無視し得る程度の量の不純物をも含むものである。
【0108】
支持体は、必要に応じて表面処理される。例えば感光性平版印刷版の場合には、支持体の表面に、親水化処理が施される。
また金属、特にアルミニウムの表面を有する支持体の場合には、砂目立て処理、珪酸ソーダ、弗化ジルコニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理、あるいは陽極酸化処理などの表面処理がなされていることが好ましい。また、米国特許第2,714,066号明細書に記載されているように、砂目立てしたのち珪酸ナトリウム水溶液に浸漬処理したアルミニウム板、米国特許第3,181,461号明細書に記載されているようにアルミニウム板を陽極酸化処理を行った後にアルカリ金属珪酸塩の水溶液に浸漬処理したものも好適に使用される。上記陽極酸化処理は、例えば、燐酸、クロム酸、硫酸、硼酸等の無機酸、若しくは蓚酸、スルファミン酸等の有機酸またはこれらの塩の水溶液又は非水溶液の単独又は二種以上を組み合わせた電解液中でアルミニウム板を陽極として電流を流すことにより実施される。
【0109】
また、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。
これらの親水化処理は、支持体の表面を親水性とする為に施される以外に、その上に設けられる感光性組成物との有害な反応を防ぐ為や、感光層との密着性を向上させる為に施されるものである。
アルミニウム板を砂目立てするに先立って、必要に応じて表面の圧延油を除去すること及び清浄なアルミニウム面を表出させるためにその表面の前処理を施しても良い。前者のためには、トリクレン等の溶剤、界面活性剤等が用いられている。また、後者のためには水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ・エッチング剤を用いる方法が広く行われている。
【0110】
砂目立て方法としては、機械的、化学的および電気化学的な方法のいずれの方法も有効である。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラスト研磨法、軽石のような研磨剤の水分散スラリーをナイロンブラシで擦りつけるブラシ研磨法などがあり、化学的方法としては、特開昭54−31187号公報に記載されているような鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法が適しており、電気化学的方法としては塩酸、硝酸またはこれらの組合せのような酸性電解液中で交流電解する方法が好ましい。このような粗面化方法の内、特に特開昭55−137993号公報に記載されているような機械的粗面化と電気化学的粗面化を組合せた粗面化方法は、感脂性画像の支持体への接着力が強いので好ましい。
上記の如き方法による砂目立ては、アルミニウム板の表面の中心線表面粗さ(Ha)が0.3〜1.0μとなるような範囲で施されることが好ましい。
【0111】
このようにして砂目立てされたアルミニウム板は必要に応じて水洗および化学的にエッチングされる。
エッチング処理液は、通常アルミニウムを溶解する塩基あるいは酸の水溶液より選ばれる。この場合、エッチングされた表面に、エッチング液成分から誘導されるアルミニウムと異なる被膜が形成されないものでなければならない。好ましいエッチング剤を例示すれば、塩基性物質としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二カリウム等;酸性物質としては硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸及びその塩等であるが、アルミニウムよりイオン化傾向の低い金属例えば亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、銅等の塩はエッチング表面に不必要な被膜を形成するから好ましくない。
これ等のエッチング剤は、使用濃度、温度の設定において、使用するアルミニウムあるいは合金の溶解速度が浸漬時間1分あたり0.3グラムから40g/m2になる様に行なわれるのが最も好ましいが、これを上回るあるいは下回るものであっても差支えない。
【0112】
エッチングは上記エッチング液にアルミニウム板を浸漬したり、該アルミニウム板にエッチング液を塗布すること等により行われ、エッチング量が0.5〜10g/m2の範囲となるように処理されることが好ましい。
上記エッチング剤としては、そのエッチング速度が早いという特長から塩基の水溶液を使用することが望ましい。この場合、スマットが生成するので、通常デスマット処理される。デスマット処理に使用される酸は、硝酸、硫酸、りん酸、クロム酸、ふっ酸、ほうふっ化水素酸等が用いられる。
エッチング処理されたアルミニウム板は、必要により水洗及び陽極酸化される。陽極酸化は、この分野で従来より行なわれている方法で行なうことができる。具体的には、硫酸、りん酸、クロム酸、蓚酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等あるいはそれらの二種類以上を組み合せた水溶液又は非水溶液中でアルミニウムに直流または交流の電流を流すと、アルミニウム支持体表面に陽極酸化被膜を形成させることができる。
【0113】
陽極酸化の処理条件は使用される電解液によって種々変化するので一般には決定され得ないが一般的には電解液の濃度が1〜80重量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60アンペア/dm2、電圧1〜100V、電解時間30秒〜50分の範囲が適当である。
これらの陽極酸化処理の内でも、とくに英国特許第1,412,768号明細書に記載されている硫酸中で高電流密度で陽極酸化する方法および米国特許第3,511,661号明細書に記載されている燐酸を電解浴として陽極酸化する方法が好ましい。
【0114】
上記のように粗面化され、さらに陽極酸化されたアルミニウム板は、必要に応じて親水化処理しても良く、その好ましい例としては米国特許第2,714,066号及び同第3,181,461号に開示されているようなアルカリ金属シリケート、例えば珪酸ナトリウム水溶液または特公昭36−22063号公報に開示されている弗化ジルコニウム酸カリウムおよび米国特許第4,153,461号明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法がある。
【0115】
本発明の感光性平版印刷版には感光層を塗設する前に有機下塗層を設けることが非画像部の感光層残りを減らす上で好ましい。かかる有機下塗層に用いられる有機化合物としては例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、およびトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩などから選ばれるが、二種以上混合して用いてもよい。
【0116】
その他ポリ(p−ビニル安息香酸)など下記一般式〔IV〕で示される構造単位を分子中に有する高分子化合物群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることができる。
【0117】
【化24】
【0118】
前記一般式〔IV〕において、R41は水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表すが、好ましくは、水素原子、塩素原子、または炭素数1〜4個のアルキル基を表す。特に好ましくは水素原子またはメチル基を表す。
R42とR43は各々独立して、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基、−R44、−COOR45、−CONHR46、−COR47もしくは−CNを表すか、またはR42とR43が結合して環を形成しても良い。ここでR44〜R47は各々アルキル基または芳香族基を表す。より好ましいR42とR43は、各々独立して、水素原子、水酸基、塩素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、フェニル基、−R44、−COOR45、−CONHR46、−COR47、−CNであり、ここでR44〜R47は炭素数1〜4個のアルキル基またはフェニル基である。特に好ましいR42とR43は、各々独立して、水素原子、水酸基、メチル基またはメトキシ基である。
【0119】
Xは水素原子、金属原子、NR48R49R50R51を表し、ここで、R48〜R51は、各々独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香族基、置換芳香族基を表すか、またはR48とR49が結合して環を形成しても良い。より好ましいXは、水素原子、一価の金属原子、NR48R49R50R51であり、ここで、R48〜R51は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基またはフェニル基である。特に好ましいXは、水素原子、ナトリウム、カリウムまたはNR48R49R50R51を表し、ここで、R48〜R51は、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基を表す。
nは1〜3の整数を表すが、好ましくは1または2を表し、より好ましくは1を表す。
【0120】
この有機下塗層は次のような方法で設けることが出来る。即ち、水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記有機化合物を吸着させ、しかる後、水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10重量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などいずれの方法を用いてもよい。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。
【0121】
これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpHを調節し、pH1〜12の範囲で使用することもできる。また、感光性平版印刷版の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の乾燥後の被覆量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。上記の被覆量が2mg/m2より少ないと十分な耐刷性能が得られない。また、200mg/m2より大きくても同様である。
【0122】
支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物および特開平6−35174号公報記載の有機または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4、などの珪素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており特に好ましい。
【0123】
かくして得られたPS版は透明原画を通してカーボンアーク灯、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプなどを光源とする活性光線により露光された後、現像処理される。
【0124】
本発明の感光性平版印刷版の現像液として好ましいものは、(a)非還元糖から選ばれる少なくとも一種の糖類および(b)少なくとも一種の塩基を含有し、pHが9.0〜13.5の範囲にある現像液である。
以下この現像液について詳しく説明する。なお、本明細書中において、特にことわりのない限り、現像液とは現像開始液(狭義の現像液)と現像補充液とを意味する。
【0125】
この現像液は、その主成分が、非還元糖から選ばれる少なくとも一つの化合物と、少なくとも一種の塩基からなり、液のpHが9.0〜13.5の範囲であることが好ましい。
かかる非還元糖とは、遊離のアルデヒド基やケトン基を持たず、還元性を示さない糖類であり、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体および糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、何れも好適に用いられる。トレハロース型少糖類には、サッカロースやトレハロースがあり、配糖体としては、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。また糖アルコールとしてはD,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシットおよびアロズルシットなどが挙げられる。更に二糖類の水素添加で得られるマルチトールおよびオリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)が好適に用いられる。これらの中で特に好ましい非還元糖は糖アルコールとサッカロースであり、特にD−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用があることと、低価格であることで好ましい。
【0126】
これらの非還元糖は、単独もしくは二種以上を組み合わせて使用でき、それらの現像液中に占める割合は0.1〜30重量%が好ましく、更に好ましくは、1〜20重量%である。この範囲以下では十分な緩衝作用が得られず、またこの範囲以上の濃度では、高濃縮化し難く、また原価アップの問題が出てくる。
尚、還元糖を塩基と組み合わせて使用した場合、経時的に褐色に変色し、pHも徐々に下がり、よって現像性が低下するという問題点がある。
【0127】
非還元糖に組み合わせる塩基としては従来より知られているアルカリ剤が使用できる。例えば、水酸化ナトリウム、同カリウム、同リチウム、燐酸三ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、燐酸二ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウムなどの無機アルカリ剤が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。
【0128】
これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。これらの中で好ましいのは水酸化ナトリウム、同カリウムである、その理由は、非還元糖に対するこれらの量を調整することにより広いpH領域でpH調整が可能となるためである。また、燐酸三ナトリウム、同カリウム、炭酸ナトリウム、同カリウムなどもそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
これらのアルカリ剤は現像液のpHを9.0〜13.5の範囲になるように添加され、その添加量は所望のpH、非還元糖の種類と添加量によって決められるが、より好ましいpH範囲は10.0〜13.2である。
【0129】
現像液には更に、糖類以外の弱酸と強塩基からなるアルカリ性緩衝液が併用できる。かかる緩衝液として用いられる弱酸としては、解離定数(pKa)が10.0〜13.2のものが好ましい。このような弱酸としては、Pergamon Press社発行のIONISATION CONSTANTS OF ORGANIC ACIDS IN AQUEOUS SOLUTIONなどに記載されているものから選ばれ、例えば2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール−1(PKa12.74)、トリフルオロエタノール(同12.37)、トリクロロエタノール(同12.24)などのアルコール類、ピリジン−2−アルデヒド(同12.68)、ピリジン−4−アルデヒド(同12.05)などのアルデヒド類、サリチル酸(同13.0)・3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(同12.84)、カテコール(同12.6)、没食子酸(同12.4)、スルホサリかル酸(同11.7)、3,4−ジヒドロキシスルホン酸(同12.2)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(同11.94)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(同11.82)、ハイドロキノン(同11.56)、ピロガロール(同11.34)、o−クレゾール(同10.33)、レゾルシノール(同11.27)、p−クレゾール(同10.27)、m−クレゾール(同10.09)などのフェノール性水酸基を有する化合物、
【0130】
2−ブタノンオキシム(同12.45)、アセトキシム(同12.42)、1,2−シクロヘプタンジオンジオキシム(同12.3)、2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム(同12.10)、ジメチルグリオキシム(同11.9)、エタンジアミドジオキシム(同11.37)、アセトフェノンオキシム(同11.35)などのオキシム類、アデノシン(同12.56)、イノシン(同12.5)、グアニン(同12.3)、シトシン(同12.2)、ヒポキサンチン(同12.1)、キサンチン(同11.9)などの核酸関連物質、他に、ジエチルアミノメチルホスホン酸(同12.32)、1−アミノ−3,3,3−トリフルオロ安息香酸(同12.29)、イソプロピリデンジホスホン酸(同12.10)、1,1−エチリデンジホスホン酸(同11.54)、1,1−エチリデンジホスホン酸1−ヒドロキシ(同11.52)、ベンズイミダゾール(同12.86)、チオベンズアミド(同12.8)、ピコリンチオアミド(同12.55)、バルビツル酸(同12.5)などの弱酸が挙げられる。
【0131】
これらの弱酸の中で好ましいのは、スルホサリチル酸、サリチル酸である。
これらの弱酸に組み合わせる塩基としては、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムが好適に用いられる。
これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。
上記の各種アルカリ剤は濃度および組み合わせによりpHを好ましい範囲内に調整して使用される。
【0132】
現像液には、現像性の促進や現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が挙げられる。
【0133】
界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N.N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、
【0134】
脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホべタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。以上挙げた界面活性剤の中でポリオキシエチレンとあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンなどのポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらの界面活性剤もまた包含される。
【0135】
更に好ましい界面活性剤は分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤である。かかるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型およびパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。
上記の界面活性剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、現像液中に0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%の範囲で添加される。
【0136】
現像液には、種々の現像安定化剤を用いることができる。それらの好ましい例として、特開平6−282079号公報記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩およびジフェニルヨードニウムクロライドなどのヨードニウム塩が好ましい例として挙げられる。
更には、特開昭50−51324号公報記載のアニオン界面活性剤または両性界面活性剤、また特開昭55−95946号公報記載の水溶性カチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載されている水溶性の両性高分子電解質を挙げることができる。
更に、特開昭59−84241号公報のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭60−111246号公報記載のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック重合型の水溶性界面活性剤、特開昭60−129750号公報のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンを置換したアルキレンジアミン化合物、特開昭61−215554号公報記載の重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開昭63−175858号公報のカチオン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39157号公報の酸またはアルコールに4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加化合物と、水溶性ポリアルキレン化合物などが挙げられる。
【0137】
現像液には更に必要により有機溶剤が加えられる。かかる有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10重量%以下のものが適しており、好ましくは5重量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノールおよび4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミンおよびN−フェニルジエタノールアミンなどを挙げることができる。有機溶剤の含有量は使用液の総重量に対して0.1〜5重量%である。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶剤の量が増すにつれ、界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これは界面活性剤の量が少なく、有機溶剤の量を多く用いると有機溶剤が完全に溶解せず、従って、良好な現像性の確保が期待できなくなるからである。
【0138】
現像液には更に還元剤を加えることができる。これは印刷版の汚れを防止するものであり、特に感光性ジアゾニウム塩化合物を含むネガ型感光性平版印刷版を現像する際に有効である、好ましい有機還元剤としては、チオサリチル酸、ハイドロキノン、メトール、メトキシキノン、レゾルシン、2−メチルレゾルシンなどのフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジンなどのアミン化合物が挙げられる。更に好ましい無機の還元剤としては、亜硫酸、亜硫酸水素酸、亜リン酸、亜リン酸水素酸、亜リン酸二水素酸、チオ硫酸および亜ジチオン酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。これらの還元剤のうち汚れ防止効果が特に優れているのは亜硫酸塩である。これらの還元剤は使用時の現像液に対して好ましくは、0.05〜5重量%の範囲で含有される。
【0139】
現像液には更に有機カルボン酸を加えることもできる。好ましい有機カルボン酸は炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸である。脂肪族カルボン酸の具体的な例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸などがあり、特に好ましいのは炭素数8〜12のアルカン酸である。また炭素鎖中に二重結合を有する不飽和脂肪酸でも、枝分かれした炭素鎖のものでもよい。
芳香族カルボン酸としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などにカルボキシル基が置換された化合物で、具体的には、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸などがあるがヒドロキシナフトエ酸は特に有効である。
【0140】
上記脂肪族および芳香族カルボン酸は水溶性を高めるためにナトリウム塩やカリウム塩またはアンモニウム塩として用いるのが好ましい。本発明で用いる現像液の有機カルボン酸の含有量は格別な制限はないが、0.1重量%より低いと効果が十分でなく、また10重量%以上ではそれ以上の効果の改善が計れないばかりか、別の添加剤を併用する時に溶解を妨げることがある。従って、好ましい添加量は使用時の現像液に対して0.1〜10重量%であり、より好ましくは0.5〜4重量%である。
【0141】
現像液には、更に必要に応じて、防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤および硬水軟化剤などを含有させることもできる。硬水軟化剤としては例えば、ポリ燐酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸および1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸などのアミノポリカルボン酸およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)および1−ヒドロキシタエン−1,1−ジホスホン酸やそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩を挙げることができる。
【0142】
このような硬水軟化剤はそのキレート化と使用される硬水の硬度および硬水の量によって最適値が変化するが、一般的な使用量を示せば、使用時の現像液に0.01〜5重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%の範囲である。この範囲より少ない添加量では所期の目的が十分に達成されず、添加量がこの範囲より多い場合は、色抜けなど、画像部への悪影響がでてくる。
現像液の残余の成分は水である。現像液は、使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は、各成分が分離や析出を起こさない程度が適当である。
【0143】
本発明の感光性平版印刷版の現像液としてはまた、特開平6−282079号公報記載の現像液も使用できる。これは、SiO2/M2O(Mはアルカリ金属を示す)のモル比が0.5〜2.0の珪酸アルカリ金属塩と、水酸基を4以上有する糖アルコールに5モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加化合物を含有する現像液である。糖アルコールは糖のアルデヒド基およびケトン基を還元してそれぞれ第一、第二アルコール基としたものに相当する多価アルコールである。糖アルコールの貝体的な例としては、D,L−トレイット、エリトリット、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズルシット、アロズルシットなどであり、更に糖アルコールを縮合したジ、トリ、テトラ、ペンタおよびヘキサグリセリンなども挙げられる。上記水溶性エチレンオキシド付加化合物は上記糖アルコール1モルに対し5モル以上のエチレンオキシドを付加することにより得られる。さらにエチレンオキシド付加化合物には必要に応じてプロピレンオキシドを溶解性が許容できる範囲でブロック共重合させてもよい。これらのエチレンオキシド付加化合物は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの水溶性エチレンオキシド付加化合物の添加量は現像液(使用液)に対して0.001〜5重量%が適しており、より好ましくは0.001〜2重量%である。
この現像液にはさらに、現像性の促進や現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて、前述の種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。
【0144】
かかる組成の現像液で現像処理されたPS版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液で後処理を施される。本発明のPS版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
近年、型版・印刷業界では製版作業の合理化および標準化のため、PS版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、PS版を搬送する装置と、各処理液槽およびスプレー装置からなり、露光済みのPS版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像および後処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによってPS版を浸漬搬送させて現像処理する方法や、現像後一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃水を現像液原液の希釈水としで再利用する方法も知られている。
このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼動時間等に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0145】
【実施例】
以下本発明を合成例および実施例に基づいて更に説明する。ただし本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0146】
合成例1
2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート46.6g、N−(4−スルファモイルフェニル)メタクリルアミド28.8g、(n)−ノニルメタアクリレート18.9gおよびジメチルアセトアミド180gを500mlの3口フラスコに取り窒素気流下攪拌しながら65℃に保った。2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3.73g加え攪拌を続けた。4時間後68℃まで昇温し1時間保った。反応終了後、室温にまで冷却し、反応液を400ml中の水中に注いだ。析出した固体をろ取し、乾燥した。
収率32.5g、GPCによりこの固体は重量平均分子量2.3万の高分子化合物であった。
【0147】
合成例2
合成例1と同様の方法にして、第1表に示したポリマーを合成した。また比較例のポリマーも同様の方法にて合成した。
【0148】
【表1】
【0149】
実施例1〜4及び比較例1〜4
この実施例におけるパーセントは、他に指定のない限り、すべて重量%である。
厚さ0.24mmのJIS A 1050アルミニウム板を、平均粒径約2.1μのパミストンと水の懸濁液をアルミニウム表面に供給しながら、以下に示す回転ナイロンブラシにより、ブラシグレイニング処理した。第1ブラシは毛長100mm、毛径0.95mm、植毛密度70本/cm2であり、第2ブラシは毛長80mm、毛径0.295mm、植毛密度670本/cm2であった。ブラシロ−ルの回転はいずれも250rpmであった。ブラシグレイニングにひき続きよく水洗した後、10%水酸化ナトリウムに60℃で25秒間浸漬してエッチングし、さらに流水で水洗後20%硝酸で中和洗浄、水洗した。これらを、VA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて、11%硝酸水溶液中で160クローン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、0.79μ(Ra表示)であった。引き続いて、1%水酸化ナトリウム水溶液に40℃、30秒間浸漬後、30%の硫酸水溶液中に浸漬し、60℃で40秒間デスマット処理した後、20%硫酸水溶液中、電流密度2A/dm2において1.6g/m2の酸化皮膜重量になるように直流で陽極酸化し、水洗して基板を調製した。
【0150】
このように処理した基板の表面に下記組成の下塗り液(I)を塗布し80℃、30秒間乾燥して、基板〔A〕を作成した。乾燥後の被覆量は10/m2であった。
下塗り液(I)
β−アラニン 0.10g
メタノール 40g
純 水 60g
【0151】
次にこの基板〔A〕上に第2表に示す感光液をロッドコーティングで12ml/m2塗設し、100℃で1分間乾燥してポジ型感光性平版印刷板を得た。乾燥後の塗布量は1.15g/m2であった。さらに真空密着時間を短縮させるため、特公昭61−28986号公報記載のようにしてマット層を形成させた。
【0152】
【表2】
【0153】
【化25】
【0154】
【表3】
【0155】
このようにして作製した感光性平版印刷版を以下の方法で評価した。
感度は、富士写真フイルム(株)製ステップウェッジ(各段の濃度差が0.15)を通して、1mの距離から3kWのメタルハライドランプにより1分間露光を行ったのち、富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Vを用いて、30度12秒間、SiO2/K2Oのモル比が1.16、SiO2濃度が1.4%の水溶液で現像し、クリアーの段数で表わした。段数が高い程感度が高いことを示す。
階調は、上述の感度評価したサンプルのクリアー段数とベタ段差の差を表した。この値が低い程硬調であることを示す。
【0156】
現像許容性は、上述の現像液を基準にして、pHを上下に0.2増減させた液を用いた以外は上述の感度と同一な露光、現像を行い、pHによるベタ段数の変化を表した。この値が小さい程現像許容性は良好であることを示す。
ヘドロ発生の有無は、富士写真フイルム(株)製現像補充液DP−7RWを1:6.5に希釈した液100ccに作成した感光性平版印刷版1m2を全面バッ光した後、現像処理し、現像補充液中に含フッ素ポリマー起因のヘドロが発生したかを表した。
これらの結果を第4表に示す。
【0157】
【表4】
【0158】
第4表からも分かるように、実施例1〜4は、クリア感度の大きな低下がなく硬調化し、現像許容性も良好である。さらに、ヘドロの発生もなく、自動現像機で安定処理が可能である。
【0159】
実施例5〜8及び比較例5〜8
この実施例におけるパーセントは、他に指定のない限り、すべて重量%である。
厚さ0.24mmのJIS A1050アルミニウム板の表面をナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水懸濁液を用い砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20%HNO3で中和洗浄、水洗した。これを、VA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で160クローン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、0.6μ(Ra表示)であった。ひきつづいて30%のH2SO4水溶液中に浸漬し55℃で2分間デスマットした後、20%H2SO4水溶液中で電流密度14A/dm2、陽極酸化皮膜量が2.5g/m2相当になるように陽極酸化し、水洗した後、ひきつづき珪酸ナトリウム2.5wt%水溶液で30℃、20秒処理し、水洗して基板を作成した。
【0160】
このように処理した基板の表面に下記組成の下塗り液(II)を塗布し70℃、10秒間乾燥して、基板〔B〕を作成した。乾燥後の被覆量は、15mg/m2であった。
下塗り液(II)
ポリビニル安息香酸(Mw42000) 0.3g
メタノール 100g
純水 1g
次にこの基板〔B〕上に実施例1〜4と同一の感光層及びマット層を設けた。
【0161】
このようにして作製した感光性平版印刷版を以下の方法で評価した。
感度は、富士写真フイルム(株)製ステップウェッジ(各段の濃度差が0.15)を通して、1mの距離から3kWのメタルハライドランプにより1分間露光を行ったのち、富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Vを用いて、30℃12秒間、第5表に示す水溶液で現像し、クリアーの段数で表わした。段数が高い程感度が高いことを示す。
階調は、上述の感度評価したサンプルのクリアー段数とベタ段差の差を表わした。この値が低い程硬調であることを示す。
現象許容性は、上述の現像液を基準にして、pHを上下に0.2増減させた液を用いた以外は上述の感度と同一な露光、現像を行い、pHによるベタ段数の変化を表わした。この値が小さい程現像許容性は良好であることを示す。
ヘドロ発生の有無は、第5表の水溶液100ccに、作成した感光性平版印刷版1m2を全面バッ光した後、現像処理し、処理液中に含フッ素ポリマー起因のヘドロが発生したかを表わした。これらの結果を第6表に示す。
【0162】
【表5】
【0163】
【表6】
【0164】
第6表からも分かるように、実施例5〜8は、現像液を変えてもクリア感度の大きな低下がなく硬調化し、現像許容性も良好である。さらにヘドロの発生も無く、自動現像機で安定処理が可能である。
【0165】
【発明の効果】
本発明に従い、ポジ型感光性組成物に特定の含フッ素ポリマーを添加することにより、感度を低下させることなく、硬調な画像形成性を示し、かつ、焼きぼけ、白灯安全性および現像許容性が広く、更に大量処理しても現像液のヘドロ化が生じないポジ型感光性組成物を得ることができる。
Claims (1)
- 少なくとも下記(1)で示される構成単位20〜60モル%及び下記(2)で示される構成単位30〜70モル%を共重合成分として有する高分子化合物とo−キノンジアジド化合物とを含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
(1)水素原子がフッ素原子で置換されているフルオロ脂肪族基を側鎖に有する付加重合可能なモノマー
(2)−SO2NH2、−SO2NH−、−SO2NHCOO−、−CONHSO2−、−CONHSO2NH−、−NHCONHSO2−及び−CONHCO−から選択される少なくとも1つの酸性水素原子置換基を有する付加重合可能なモノマー
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