JP3855157B2 - 非線形分離制御方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非線形特性を有する制御対象を制御する非線形分離制御方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業界で用いられている多くの制御装置は、PID制御器により構成されている。PID制御器は、制御対象が線形の場合には有効に動作する。しかしながら現実の制御対象は、厳密には線形なものはなく、一般に非線形特性を有する。このような非線形特性を有する制御対象を制御する場合にはPID制御器では満足する制御性能が得られないことが多い。
【0003】
すなわちPID制御器が、制御器の主要な目的である(a)目標値への追従、(b)外乱対策、(c)非線形性への対応、の役割全てを担当することとなる。しかしPID制御器は、元来非線形の制御対象に対して制御するように構成されたものではないために、この3つの役割を果たすようにPID制御器のパラメータを調整することは困難である。
そこで非線形の動特性を有する制御対象に対して有効な制御方法として、非線形分離制御方法が提案されている。この非線形分離制御方法は、制御対象における非線形な特性を分離し、この逆特性によって制御を行うものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の非線形分離制御方法では、制御器の主要な3つの役割を果たす部分を分離し、構成する具体的な方法および装置は開示されておらず、非線形特性を有する制御対象を制御する非線形分離制御方法および装置を容易に具現化できないという課題がある。
【0005】
また、既存のPID制御器をそのまま用い、これに制御対象が有する非線形特性を補償する補償手段と目標値への追従を制御する補償手段とを付加することで十分な制御性能を得る方法および装置は知られていない。
そこで、本発明は、上記の課題にかんがみ、制御器の主要な3つの役割を果たす手段を分離して構成する非線形分離制御方法および装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の非線形分離制御方法は、制御対象を、非線形スタティクス部、線形ダイナミクス部、及び、積分特性部の直列結合で表した非線形分離モデルで表し、非線形スタティクス部の逆特性を有する非線形スタティクス補償手段、線形ダイナミクス部の逆特性を有する線形ダイナミクス補償手段、積分特性部の逆特性を有する積分特性補償手段、及び、外乱によるずれ及び上記制御対象をモデル化する際の誤差を補正するPID制御手段とにより、上記制御対象を制御することを特徴とする。
【0007】
本発明の非線形分離制御方法において、制御対象の積分特性部、非線形スタティクス部、及び、線形ダイナミクス部の逆特性は、制御対象にステップ入力を入力し、出力のステップ応答から積分要素の個数を調べることで積分特性部の特性を同定し、この特性から逆特性を求め、次に、積分特性補償手段を制御対象の出力に付加し、制御対象の入力にステップ入力を入力し、ステップ応答から、ステップ入力の入力値とステップ応答の定常値との入出力関係を調べることで非線形スタティクス部の特性を同定し、この特性から逆特性を求め、次に、線形スタティクス補償手段を制御対象の入力に付加し、積分特性補償手段を制御対象の出力に付加し、異なるステップ幅のステップ入力に対するステップ応答の時定数を求めることで線形ダイナミクス部の特性を同定し、この特性から逆特性を求めることができる。
【0008】
また、本発明は、制御対象を非線形スタティクス部、線形ダイナミクス部及び積分特性部の直列結合で表した非線形分離モデルで表し、非線形スタティクス部の逆特性を有する非線形スタティクス補償手段と、線形ダイナミクス部の逆特性を有する線形ダイナミクス補償手段と、積分特性部の逆特性を有する積分特性補償手段と、外乱によるずれ及び制御対象をモデル化する際の誤差を補正するPID制御手段と、により上記制御対象を制御する非線形分離制御装置であって、目標値と制御対象の出力との差を第1の加算器により演算し、この出力をPID制御手段に入力し、他方、積分特性補償手段に上記目標値を入力し、この出力を線形ダイナミクス補償手段に入力し、この出力とPID制御手段の出力との和を第2の加算器により演算し、この出力を非線形スタティクス補償手段に入力し、この出力を制御対象に入力するように構成したことを特徴とする。
【0009】
上記構成の本発明の非線形分離制御装置は、制御器の果たす主要な役割部分を分離して構成するので、非線形特性および積分特性を有する制御対象を制御する非線形分離制御装置を容易に構築することができる。また、産業界に広く普及しているPID制御器をそのまま用い、これに制御対象の持つ非線形特性および積分特性を補償する補償手段と目標値への追従を制御する補償手段とを付加することで、十分な制御性能を得ることができ、安価で安定した制御装置を作ることができる。
【0010】
さらに、本発明は、制御対象を非線形スタティクス部、線形ダイナミクス部及び積分特性部の直列結合で表した非線形分離モデルで表し、非線形スタティクス部の逆特性を有する非線形スタティクス補償手段と、線形ダイナミクス部の逆特性を有する線形ダイナミクス補償手段と、積分特性部の逆特性を有する積分特性補償手段と、外乱によるずれ及び制御対象をモデル化する際の誤差を補正するPID制御手段と、により制御対象を制御する非線形分離制御装置であって、目標値を第1の積分特性補償手段に入力し、この出力を線形ダイナミクス補償手段に入力し、他方、制御対象の出力を第2の積分特性補償手段に入力し、この出力と第1の積分特性補償手段の出力との差を第1の加算器により演算し、この出力をPID制御手段に入力し、線形ダイナミクス補償手段の出力とPID制御手段の出力との和を第2の加算器により演算し、この出力を非線形スタティクス補償手段に入力し、この出力を制御対象に入力するように構成したことを特徴とする。
【0011】
上記構成の本発明の非線形分離制御装置は、制御器の果たす主要な役割部分を分離して構成するので、非線形特性および積分特性を有する制御対象を制御する非線形分離制御装置を容易に構築することができる。また、産業界に広く普及しているPID制御器をそのまま用い、これに制御対象の持つ非線形特性および積分特性を補償する補償手段と目標値への追従を制御する補償手段とを付加することで、十分な制御性能を得ることができる。
【0013】
上記構成の本発明の非線形分離制御方法は、制御対象を分離してモデル化し、その分離されたモデルを同定するので、制御対象を制御する非線形分離制御方法を容易に設計することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図面中の同一番号は同一物あるいは相当物を示す。図1は本発明の実施の形態に係る非線形分離制御装置の構成ブロック図である。非線形分離制御装置1は、入力される目標値3に従って制御対象2を制御するものである。
【0015】
制御対象2を、非線形スタティクス部11、線形ダイナミクス部10、積分特性部12の直列結合で表した非線形分離モデルで表現する。非線形分離制御装置1は、制御対象2の出力を観測値16とし、非線形スタティクス部11を補償する非線形スタティクス補償手段6、線形ダイナミクス部10を補償する線形ダイナミクス補償手段5、積分特性部12を補償する積分特性補償手段7、さらに外乱13によるずれおよび制御対象をモデル化する際の誤差を補正するPID制御器8により、制御指令14を制御対象2に入力15として与えて制御する。ただし、一般の制御系では入力15にはノイズなどの外乱13が加わる。
【0016】
このように制御対象2を非線形分離モデルで表現し、非線形分離制御装置1はこの非線形分離モデルを補償する補償手段を内在することで、良好な制御性能を得ることができる。
【0017】
次に、制御対象2を非線形スタティクス部11と線形ダイナミクス部10と積分特性部12に分離して直列結合でモデル化し、モデル化された各部を同定する方法を説明する。制御対象2のモデル化は、積分特性部12の同定、非線形スタティクス部11の同定、線形ダイナミクス部10の同定の順に行い、同定された各部(それぞれ特性V、F、G)に対応する逆特性(それぞれV-1、F-1、G-1)を持つ補償手段を求める。
【0018】
図2は本発明の補償手段を求める方法を説明する図である。
(1) 図2(a)は、積分特性部12の同定を説明する図であって、制御対象2の入力20aにステップ入力を入力し、制御対象2の出力21aにおけるステップ応答を調べ、制御対象2が何型(積分要素1/sの個数)であるかを判定する。
ステップ応答が一定値に収束する場合は、積分特性部12に積分要素はない、すなわち0型である。ステップ応答が直線的に増加する場合は、制御対象2は1型、すなわち積分要素は1つである。ステップ応答が放物線的に増加する場合は、制御対象2は2型、すなわち積分要素は2つである。一般に、ステップ応答がn乗曲線的に増加する場合は、制御対象2はn型、すなわち積分要素はn個であり、積分特性部12の関数Vは(1/s)n である。ただし、sはラプラス演算子である。
【0019】
(2) 図2(b)は非線形スタティクス部11の同定を説明する図である。上記(1)において求めた積分特性部12の関数Vの逆特性V-1である積分特性補償手段7を制御対象2の出力に付加し、制御対象2の入力20bにステップ入力を入力し、積分特性補償手段7の出力21bにおけるステップ応答を調べる。ステップ入力とステップ応答との間には積分要素を含まないので、ステップ応答は過渡状態の後に一定値に収束する。非線形スタティクス部11の非線形特性は、異なるステップ入力を与えた時の、ステップ入力の入力値とステップ応答の定常値との入出力関係となる。制御対象2が非線形特性を有する場合には、この入出力関係は非線形特性を示し、非線形スタティクス部11の特性Fとなる。
【0020】
(3) 図2(c)は、線形ダイナミクス部10の同定を説明する図である。上記(1)において求めた積分特性部12の関数Vの逆特性V-1である積分特性補償手段7を制御対象2の出力に付加し、上記(2)において求めた非線形スタティクス部11の特性Fの逆特性F-1である非線形スタティクス補償手段6を制御対象2の入力に付加する。したがって入力20cと出力21cとの間には積分要素および非線形特性を含まないこととなる。出力21cのステップ応答にオーバーシュートがない場合には、線形ダイナミクス部10は1次系となる。異なるステップ幅のステップ入力に対するステップ応答を求めて、それぞれのステップ幅に対する時定数を求める。もし全てのステップ幅に対する時定数が一定値となれば、入力20cから出力21cまでの間のシステムは線形となる。様々なステップ幅に対する時定数が異なる場合には、ステップ幅に依存する時定数を持つ1次系で線形ダイナミクス部10を表すことができる。
【0021】
なお、制御対象2の駆動特性および検出特性があらかじめ分かっている場合には、駆動特性を非線形スタティクス部11の前に、検出特性を積分特性部12の後に追加する。
また、制御対象2が多入力多出力である場合には、1入力1出力を組み合わせて上に述べた各部を同定することにより、非線形分離モデルを構築することが可能である。
【0022】
図3は本発明の実施形態に係る非線形分離制御装置の構成ブロック図である。非線形分離制御装置1は、制御対象2を非線形分離モデルとして表し、その各部の逆特性に相当するような構成を含むことで実現する。非線形分離制御装置1に入力される目標値3は、制御対象2の出力16との差を加算器17により演算し、加算器17の出力をPID制御器8に入力する。他方、積分特性部12の逆特性を備える積分特性補償手段7に目標値3を入力し、積分特性補償手段7の出力を線形ダイナミクス部10の逆特性を備える線形ダイナミクス補償手段5に入力する。線形ダイナミクス補償手段5の出力とPID制御器8の出力との和を加算器18により演算し、加算器18の出力を非線形スタティクス部11の逆特性である非線形スタティクス補償手段6に入力し、非線形スタティクス補償手段6の出力を制御対象2に入力する。これによって非線形分離制御装置1は、制御対象2を制御することとなる。
【0023】
図4は、本発明の実施形態に係る非線形分離制御装置の他の構成ブロック図である。非線形分離制御装置1は、図3で説明したと同様に制御対象2を非線形分離モデルとして表し、その各部の逆特性に相当するような構成を含むことで実現する。非線形分離制御装置1に入力される目標値3を積分特性補償手段7aに入力し、積分特性補償手段7aの出力を線形ダイナミクス補償手段5に入力する。他方、制御対象2の出力16を積分特性補償手段7bに入力し、積分特性補償手段7aの出力と積分特性補償手段7bの出力との差を加算器17により演算し、加算器17の出力をPID制御器8に入力する。また、線形ダイナミクス補償手段5の出力とPID制御器8の出力との和を加算器18により演算し、加算器18の出力を非線形スタティクス補償手段6に入力し、非線形スタティクス補償手段6の出力を制御対象2に入力する。これによって非線形分離制御装置1は、制御対象2を制御することとなる。
【0024】
図3および図4のブロック図にあって、制御器の主要な目的である(a)目標値への追従、(b)外乱およびモデル化誤差への対策、(c)非線形性への対応、の役割を、それぞれ線形ダイナミクス補償手段6、PID制御器8、非線形スタティクス補償手段5が担当することとなる。また、制御対象2の有する積分特性の補償を積分特性補償手段7,7a,7bが担当することとなる。
なお、線形ダイナミクス補償手段5の特性は、線形ダイナミクス部10の逆特性に限る必要はなく、線形ダイナミクス特性を補償する各種のフィードフォワード型の補償手段を用いることもできる。
【0025】
次に、非線形分離制御装置1を既存のPID制御装置によって実装できることを説明する。図5は、既存のPID制御装置の構成を示す図であって、既存の多くのPID制御装置は、PID制御器8以外にプログラム可能な関数C1 、C2 、C3 、C4 を有している。ここで関数C1 =G-1、C2 =F-1、C3 =V-1、C4 =V-1とすることで、既存のPID制御装置を用いて図3における非線形分離制御装置1を実現することができる。
【0026】
また、関数C1 =G-1V-1、C2 =F-1、C3 =1、C4 =1とすることで、既存のPID制御装置を用いて図4における非線形分離制御装置1を実現することができる。
したがって、産業界に広く普及しているPID制御装置をそのまま用い、これに制御対象の持つ特性を補償する補償手段を付加することで、十分な制御性能を得ることができ、安価で安定した制御装置を作ることができる。
【0027】
【実施例】
次に、本発明に係る非線形分離制御装置の実施例について説明する。図6は、本発明の実施例に係る化学プラントのスラリー(泥状流動体)と液面を制御するシステム構成図である。
【0028】
このシステムにおける操作量は、粉体流量WS と液体流量Wl であり、非線形分離制御装置61は、出力63により弁65を開閉して粉体流量WS を制御し、出力64により弁66を開閉して液体流量Wl を制御し、制御対象62におけるタンク67内に粉体と液体を注入し、攪拌し、タンクより排出するスラリーの固形分比Zとタンク67内の液面高さLとをそれぞれ目標値Zd 、Ld に追従するようにするものである。したがって非線形分離制御装置61は、2入力2出力の構成となっている。
【0029】
ここで、スラリーの固形分比Zは、粉体の密度をρS 、液体の密度をρL 、 スラリーの密度をρt とすると、
Z=(1/ρt −1/ρL )/(1/ρS −1/ρL )である。
なお、出力63と弁65および出力64と弁66は、便宜上、非線形分離制御装置61の外部にあるものとして図示するが、以下の説明では非線形分離制御装置61の内部にあるものとする。
【0030】
図7は、本発明の実施例に係る化学プラントを制御する非線形分離制御装置のブロック構成図である。制御対象62は、図2において説明した補償手段を同定する方法によって、積分特性部12c、非線形スタティクス部11c、線形ダイナミクス部10cのそれぞれの特性V、F、Gを推定する。この結果、
【数1】
【数2】
を得た。ただし、K11、K12、K21、K22、T11、T21は定数、sはラプラス演算子である。
【0031】
図8は、本発明の実施例に係る非線形スタティクスとその逆特性を表す図であり、非線形スタティクス部11cの変換特性Fを表わしている。図8(a)中の点、例えばPN (N=1〜8)が、図8(b)の点QN (N=1〜8)に対応して、変換される。
【0032】
図7の非線形分離制御装置61は、図3における非線形分離制御装置の構成ブロック図と同等であり、2入力2出力の構成となっている。積分特性補償手段7cの特性V-1は、[数1] の逆マトリクス演算により得られ、
【数3】
となり、線形ダイナミクス補償手段の特性G-1は、 [数2] の逆マトリクス演算により得られ、
【数4】
となる。また、非線形スタティクス補償手段の特性F-1は、図8(b)中の点、例えばQN (N=1〜8)から図8(a)の点PN (N=1〜8)に対応して変換される。
【0033】
非線形分離制御装置1に入力される排出するスラリーの固形分比の制御の目標値Zd は、制御対象62の出力であるスラリーの固形分比Zとの差を加算器17aにより演算し、加算器17aの出力eZ は、PID制御器8c内のPZ に入力する。また、非線形分離制御装置1に入力されるタンク67内の液面高さの制御の目標値Ld は、制御対象62の出力であるタンク67内の液面高さLとの差を加算器17bにより演算し、加算器17bの出力el は、PID制御器8c内のPl に入力する。
【0034】
他方、積分特性部12cの逆特性V-1を備える積分特性補償手段7cに目標値Zd および目標値Ld を入力し、積分特性補償手段7cの出力を線形ダイナミクス部10cの逆特性G-1を備える線形ダイナミクス補償手段5cに入力する。線形ダイナミクス補償手段5cの出力とPID制御器8cの出力との和を加算器18aおよび加算器18bにより演算し、加算器18aおよび加算器18bの出力を非線形スタティクス部11cの逆特性F-1である非線形スタティクス補償手段6cに入力し、非線形スタティクス補償手段6cの出力である粉体流量WS と液体流量Wl とを制御対象2に入力する。このときノイズなどの外乱DS 、Dl が混入するものとする。
【0035】
以上説明した非線形分離制御装置61および従来のPID制御器によって、制御対象62を制御した場合の変動の例を図9に示す。図9は、本発明の実施例に係る固形分比Z、液面L、粉体流量WS 、液体流量Wl の変動を表す図である。図9(a)は本発明に係る非線形分離制御装置による結果であり、図9(b)は従来のPID制御器による結果である。それぞれの図は上から固形分比Z、液面L、粉体流量WS と液体流量Wl の変動を表す。変動を表す曲線の一部については拡大して図示している。
【0036】
本発明に係る非線形分離制御装置による結果では、すべての制御量が目標値に追従し、振動なども生じていない。一方、従来のPID制御器による結果では、目標値と制御量との間に偏差が存在し、またオーバーシュートや振動が生じている。この結果から本発明に係る非線形分離制御装置は、非線形なダイナミクス特性を持つ制御対象を制御するのに極めて有効であることが分かる。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明によれば、制御器の主要な3つの役割を果たす手段を分離して構成するので、非線形特性を有する制御対象を制御する非線形分離制御方法および装置を容易に実現することができる。また、制御対象を分離してモデル化し、その分離されたモデルを同定するので、制御対象を制御する非線形分離制御方法を容易に設計することができる。
さらに、産業界に広く普及しているPID制御器をそのまま用い、これに制御対象の持つ非線形特性を補償する補償手段と目標値への追従を制御する補償手段とを付加することで、十分な制御性能を得ることができ、安価で安定した制御装置を作ることができ、経済的効果は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る非線形分離制御装置の構成ブロック図である。
【図2】本発明の補償手段を求める方法を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る非線形分離制御装置の構成ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る非線形分離制御装置の他の構成ブロック図である。
【図5】既存のPID制御装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例に係る化学プラントのスラリー(泥状流動体)と液面を制御するシステム構成図である。
【図7】本発明の実施例に係る化学プラントを制御する非線形分離制御装置のブロック構成図である。
【図8】本発明の実施例に係る非線形スタティクスとその逆特性を表す図である。
【図9】本発明の実施例に係る固形分比Z、液面L、粉体流量WS 、液体流量Wl の変動を表す図である。
【符号の説明】
1,61 非線形分離制御装置
2,62 制御対象
3 目標値
5,5c 線形ダイナミクス補償手段
6,6c 非線形スタティクス補償手段
7,7a,7b,7c 積分特性補償手段
8 PID制御器
14 制御指令
16 観測値
17,17a,17b,18,18a,18b 加算器
Claims (4)
- 制御対象を、非線形スタティクス部、線形ダイナミクス部、及び、積分特性部の直列結合で表した非線形分離モデルで表し、
上記非線形スタティクス部の逆特性を有する非線形スタティクス補償手段、
上記線形ダイナミクス部の逆特性を有する線形ダイナミクス補償手段、
上記積分特性部の逆特性を有する積分特性補償手段、及び、
外乱によるずれ及び上記制御対象をモデル化する際の誤差を補正するPID制御手段とを用いて上記制御対象を制御する非線形分離制御方法であって、
上記制御対象の目標値と出力との差を演算し、この演算出力を上記PID制御手段に入力し、上記積分特性補償手段に上記目標値を入力し、上記積分特性補償手段の出力を上記線形ダイナミクス補償手段に入力し、上記線形ダイナミクス補償手段の出力と上記PID制御手段の出力との和を演算し、この演算出力を上記非線形スタティクス補償手段に入力し、上記非線形スタティクス補償手段の出力を上記制御対象に入力するか、又は、
上記制御対象の目標値を上記積分特性補償手段に入力し、上記積分特性補償手段の出力を上記線形ダイナミクス補償手段に入力し、上記制御対象の出力を上記積分特性補償手段に入力し、上記目標値を入力した上記積分特性補償手段の出力と上記制御対象の出力を入力した上記積分特性補償手段の出力との差を演算し、この演算出力を上記PID制御手段に入力し、上記線形ダイナミクス補償手段の出力と上記PID制御手段の出力との和を演算し、この演算出力を上記非線形スタティクス補償手段に入力し、上記非線形スタティクス補償手段の出力を制御対象に入力することを特徴とする、非線形分離制御方法。 - 前記制御対象の積分特性部の逆特性、非線形スタティクス部の逆特性、及び、線形ダイナミクス部の逆特性は、
上記制御対象にステップ入力を入力し、このステップ応答から積分要素の個数を調べることで上記積分特性部の特性を同定し、この特性から上記積分特性部の逆特性を求め、
次に、この逆特性を有する前記積分特性補償手段を上記制御対象の出力に付加して制御対象の入力にステップ入力を入力し、このステップ応答から、ステップ入力の入力値とステップ応答の定常値との入出力関係を調べることで上記非線形スタティクス部の特性を同定し、この特性から上記非線形スタティクス部の逆特性を求め、
次に、この逆特性を有する前記線形スタティクス補償手段を上記積分特性補償手段を出力に付加した制御対象の入力に付加して異なるステップ幅のステップ入力を入力し、このステップ応答の時定数を求めることで上記線形ダイナミクス部の特性を同定し、この特性から上記線形ダイナミクス部の逆特性を求めることを特徴とする、請求項1に記載の非線形分離制御方法。 - 制御対象を非線形スタティクス部、線形ダイナミクス部及び積分特性部の直列結合で表した非線形分離モデルで表し、上記非線形スタティクス部の逆特性を有する非線形スタティクス補償手段と、上記線形ダイナミクス部の逆特性を有する線形ダイナミクス補償手段と、上記積分特性部の逆特性を有する積分特性補償手段と、外乱によるずれ及び上記制御対象をモデル化する際の誤差を補正するPID制御手段と、により上記制御対象を制御する非線形分離制御装置であって、
上記制御対象の目標値と出力との差を第1の加算器により演算し、この演算出力を上記PID制御手段に入力し、他方、上記積分特性補償手段に上記目標値を入力し、この出力を上記線形ダイナミクス補償手段に入力し、この出力と上記PID制御手段の出力との和を第2の加算器により演算し、この演算出力を上記非線形スタティクス補償手段に入力し、この出力を上記制御対象に入力するように構成したことを特徴とする、非線形分離制御装置。 - 制御対象を非線形スタティクス部、線形ダイナミクス部及び積分特性部の直列結合で表した非線形分離モデルで表し、上記非線形スタティクス部の逆特性を有する非線形スタティクス補償手段と、上記線形ダイナミクス部の逆特性を有する線形ダイナミクス補償手段と、上記積分特性部の逆特性を有する積分特性補償手段と、外乱によるずれ及び上記制御対象をモデル化する際の誤差を補正するPID制御手段と、により上記制御対象を制御する非線形分離制御装置であって、
上記制御対象の目標値を第1の積分特性補償手段に入力し、この出力を上記線形ダイナミクス補償手段に入力し、他方、上記制御対象の出力を第2の積分特性補償手段に入力し、この出力と第1の積分特性補償手段の出力との差を第1の加算器により演算し、この演算出力を上記PID制御手段に入力し、上記線形ダイナミクス補償手段の出力と上記PID制御手段の出力との和を第2の加算器により演算し、この演算出力を上記非線形スタティクス補償手段に入力し、この出力を上記制御対象に入力するように構成したことを特徴とする、非線形分離制御装置。
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