JP3854743B2 - 水処理装置における抗菌材のブロッキング防止方法及び水処理装置 - Google Patents

水処理装置における抗菌材のブロッキング防止方法及び水処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水処理装置における抗菌材のブロッキング防止方法及び水処理装置に係り、詳しくは冷却塔や貯水槽等の水利用装置内に、細菌や藻類が繁殖、付着して水が汚濁するのを防止するため、流動床内に所定の形状に成形された抗菌材を充填し、被処理水を流動床の下から上へと通水して水処理を行う水処理装置における抗菌材のブロッキング防止方法及び水処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の水処理装置では、比較的小さなスペースで被処理水を抗菌材で効率よく処理するため、流動床タイプのものが使用されている。例えば、特開平6−238284号公報には、図5に示すように、円筒状の流動床31に抗菌材32を充填し、流動床31の下部に抗菌材32の一部を収容する役割を兼ねたパイプ33をその中心が流動床31の円筒部の軸と一致するように接続した構成が開示されている。
【0003】
また、特開平8−47692号公報には、流動床タイプの水処理装置を構成する送水ポンプ収納室、抗菌材充填部及びこれらを結ぶ流路を、一対の板状体に形成した凹陥部同士を対向させて、対接する平坦面同士を接着して形成し、全体をコンパクトに形成したものが開示されている。この装置では図6に示すように、抗菌材充填部34は全体がほぼ円筒状に形成されるとともに、抗菌材充填部34に被処理水を送り込むパイプ35は一部が抗菌材充填部34の周壁面と滑らかに連続するように、パイプ35が抗菌材充填部34の中心から偏った位置に接続されている。
【0004】
図5及び図6に示す従来装置の形状では、流動床の下部の隅に水の滞留部分が生じて抗菌材が効率良く被処理水を処理することができない。そこで、流動床に充填された抗菌材で効率良く被処理水を処理するため、図7に示すように、流動床31の下部を円錐状とし、送水ポンプPから吐出される被処理水を流動床31に送り込むパイプ35を、その中心軸が円錐状部31aの軸と一致する状態で連結した水処理装置も使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、下部を円錐状とした流動床を備えた水処理装置では、水処理装置の運転停止時に抗菌材が流動床下部でブロッキングを起こし、運転を再開した際に抗菌材が流動しなくなることがある。この場合、流動床の上部から棒などを使用して抗菌材を突いてほぐす必要があり、作業が面倒であった。
【0006】
抗菌材のブロッキングが発生する原因を検討した結果、次のことが考えられる。抗菌材粒子は比重が約2.5と水の比重1よりかなり大きいため、水処理装置の運転が停止された際、抗菌材粒子は円錐状部31aの壁面に沿って自重で落下する。落下過程において、抗菌材が壁面を押圧する力の反作用として、図8(a)に示すように、円錐状部31aの中心方向に向かう横応力Fが発生する。パイプ35の中心軸と円錐状部31aの軸とが一致する状態でパイプ35が連結されている場合、円錐状部31aの開口部が円錐状部31aの中心に位置する。図8(a)では抗菌材32を1層分しか図示していないが、実際はその上側に多数の層が存在する。そして、図示した位置の抗菌材層には上側の抗菌材32の重量に基づく荷重が積算された状態で作用するため、前記横応力Fが大きくなりブロッキングが発生する。
【0007】
また、抗菌材32に円柱状や四角柱状などの、直線部分の多い形状のものを使用した場合、抗菌材32が流動床の下部に溜まった際、図8(b)に示すように、抗菌材同士が線接触あるいは面接触する部分が多くなり、ブロッキングが発生する原因になると考えられる。
【0008】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は水処理装置の運転再開時に抗菌材のブロッキング・詰まりが発生するのを防止することができる水処理装置における抗菌材のブロッキング防止方法及び水処理装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、下側に円錐状部が形成された流動床内に、粒状に成形された抗菌材を充填し、被処理水を流動床の下から上へと通水して水処理を行う水処理装置において、前記流動床に被処理水を導く導入流路を、その中心軸が前記円錐状部の軸からずれた状態で前記円錐状部の下部に接続して、前記水処理装置へ通水する。
【0010】
請求項2に記載の発明では、下側に円錐状部が形成された流動床内に、粒状に成形された抗菌材を充填し、被処理水を流動床の下から上へと通水して水処理を行う水処理装置であって、前記流動床に被処理水を導く導入流路を、その中心軸が円錐状部の軸からずれた状態で前記円錐状部の下部に接続した。
【0011】
請求項3に記載の発明では、下側に円錐状部が形成された流動床内に、所定の形状に成形された抗菌材を充填し、被処理水を流動床の下から上へと通水して水処理を行う水処理装置において、前記抗菌材としてほぼ柱状に成形された抗菌材と、前記柱状の抗菌材の使用により角が取れて丸くなった形状の抗菌材とを混合して使用する。
【0012】
請求項1及び請求項2に記載の発明では、下側に円錐状部が形成された流動床内に下から上へと通水され、粒状に成形された抗菌材が流動床内で流動して被処理水が抗菌処理を受ける。流動床の下部に被処理水を導く導入流路は、その中心軸が円錐状部の軸からずれた状態で接続され、導入流路の円錐状部に対する開口部が、円錐状部に対して非対称の位置に配置される。その結果、水処理装置の運転が停止した状態で抗菌材が流動床の下部へ落下して堆積する際、導入流路の開口部と対応する位置における横応力の集中がなくなり、横応力に起因するブロッキングが防止される。
【0013】
請求項3に記載の発明では、流動床内に充填される抗菌材として、ほぼ柱状に成形され直線部分の多いものと、使用によって角が取れて丸くなった形状のものとが混合して使用される。従って、水処理装置の運転停止時に抗菌材が流動床の下部に溜まった際、丸くなった形状のものが介在して抗菌材同士の接触面積が減少して摩擦抵抗が少なくなり、水処理装置の運転再開時におけるブロッキング・詰まりが防止される。
【0014】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図1及び図2に従って説明する。図1に示すように、水処理装置1は抗菌材2が充填された流動床3及び送水ポンプ4を備えている。流動床3は円筒の両端に円錐状部が連結された形状に形成され、その下部と送水ポンプ4の吐出側との間に、流動床3に被処理水を導く導入流路としてのパイプ5が連結されている。パイプ5は、流動床3の下側の円錐状部6の下部に、その中心軸O1が円錐状部6の軸O2からずれた状態で接続されている。この実施の形態では図2に示すように、パイプ5の円錐状部6に対する開口部5a側の周壁の一部が、円錐状部6の軸O2とほぼ一致する状態で接続されている。
【0015】
パイプ5は、流動床3との連結部から所定長さ鉛直方向に延びる部分5bと、送水ポンプ4の吐出側に対して水平に延びる状態で連結される部分と、その途中に設けられた逆U字状に延びる部分5cとを備えている。部分5bは水処理装置1の運転停止中、抗菌材2の貯留部の役割を果たし、部分5cは抗菌材2が部分5bより送水ポンプ4側へ逆流するのを防止する役割を果たす。部分5bには蓋7aを備えた抗菌材2の取出口7が設けられている。
【0016】
上側の円錐状部8にはその中心部に流出パイプ9が連結されている。また、円錐状部8には抗菌材2の投入口(図示せず)が設けられている。
次に前記のように構成された水処理装置1の作用を説明する。所定量の抗菌材2が投入口から流動床3内に投入される。投入された抗菌材2は、送水ポンプ4の運転停止中、パイプ5の部分5b、円錐状部6及び流動床3の円筒部の下部に溜まる。
【0017】
その状態から送水ポンプ4が運転されると、取水管10を経て被処理水が水処理装置1に取り込まれ、パイプ5を経て流動床3に供給される。そして、送水ポンプ4から吐出される被処理水により流動床3の下部及び部分5bに溜まっていた抗菌材2が移動して、流動床3内で流動攪拌される。そして、被処理水が流動床3内を通過する間に抗菌材2から抗菌成分が水中に溶出し、抗菌材2の処理を受けた水が流出パイプ9を経て図示しない冷却塔等の水利用装置へと送られる。抗菌材2は流動床3内で流動攪拌される間に、抗菌材2同士が衝突して抗菌材2の表面が賦活される。
【0018】
送水ポンプ4の運転が停止されると、抗菌材2は比重が約2.5と水の比重よりかなり大きいため、流動床3内を下降する。そして、円錐状部6に到達した抗菌材2は、円錐状部6の壁面に沿って落下する。円錐状部6において抗菌材2が壁面を押圧する力の反作用として、円錐状部6の中心に向かう横応力が発生する。壁面と接触する抗菌材2は自重の他に上側の抗菌材2からの押圧力を加えた力で壁面を押圧するため、抗菌材2に作用する横応力は円錐状部6の下側ほど大きくなる。そして、パイプ5の中心軸と円錐状部6の軸とが一致した従来装置では、図8(a)で説明したように、円錐状部6の下端において抗菌材2に横応力が集中し、ブロッキングが発生し易くなる。
【0019】
しかし、この実施の形態ではパイプ5はその中心軸O1が円錐状部6の軸O2からずれた状態で円錐状部6に接続され、パイプ5の円錐状部6に対する開口部5aが、円錐状部6に対して非対称の位置に配置される。そして、水処理装置1の運転が停止した際に抗菌材2が流動床3の下部へ落下して堆積する際、図2の模式図に示すように、開口部5aと対応する円錐状部6の下部で抗菌材2に対して円錐状部6の壁面から作用する横応力が片側、図2においては左側から作用する状態となる。その結果、パイプ5の開口部5aと対応する位置における抗菌材2に対する横応力の集中がなくなり、横応力に起因するブロッキングが防止される。
【0020】
この実施の形態では次の効果を有する。
(1) 下側の円錐状部6に被処理水を送り込むパイプ5(導入流路)の接続位置を円錐状部6の軸O2からずれた位置に変更することにより、パイプ5の開口部5aと対応するする位置において、抗菌材2に作用する横応力の集中が回避される。従って、パイプ5の接続位置を円錐状部6の軸O2からずれた位置に変更するという簡単な改造で、水処理装置の運転再開時に抗菌材のブロッキング・詰まりが発生するのを防止することができる。
【0021】
(2) パイプ5は開口部5a側の周壁の一部が、円錐状部6の軸O2とほぼ一致する状態で円錐状部6に接続されているため、軸O2が開口部5aの周縁より内側に位置するように接続された場合に比較して横応力の集中の割合がより小さくなる。
【0022】
(3) 送水ポンプ4と円錐状部6とを連結するパイプ5の途中に抗菌材2の送水ポンプ4側への逆流を防止する部分5cが存在するため、パイプ5の途中又は円錐状部6の開口に抗菌材2の逆流を防止するためのストレーナ等が不要になり、目詰まりを起こすことがない。
【0023】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態を図3及び図4に従って説明する。この実施の形態では抗菌材として図4に示すように、一般的な円柱状の抗菌材2と、使用により円柱状の抗菌材2の角が取れて丸くなった形状の抗菌材2uとを混合して使用する点が前記実施の形態と大きく異なっている。また、図に示すように、流動床3の下側の円錐状部6に対するパイプ5の連結位置が、パイプ5の中心軸と円錐状部6の軸とが一致する状態に設定されている点が異なり、その他の構成は前記実施の形態と同じであり、同一部分は同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
円柱の角が取れて丸くなった抗菌材2uとしては、円柱状の抗菌材2を長期間(例えば、抗菌材2の寿命であるほぼ8500時間)使用後に流動床3から取り出した古い抗菌材を使用する。長期間使用後の抗菌材は、使用中の抗菌材同士の衝突や摩擦によって角が取れて丸くなっている。この古い抗菌材2uを重量にして数〜数十%混合して使用する。古い抗菌材2uはほとんど抗菌効果がないため、抗菌材の交換時期に使用する新しい抗菌材2の量は常に同じである。
【0025】
この実施の形態においても、送水ポンプ4の運転中は抗菌材2,2uが流動床3内で流動攪拌され、被処理水が抗菌材2の処理を受けるとともに抗菌材2の表面が賦活される。
【0026】
送水ポンプ4が停止されて抗菌材2,2uが流動床3内を下降して、パイプ5の部分5b及び流動床3の下部に溜まる。このとき、円柱状の抗菌材2だけの場合と異なり、丸い形状の抗菌材2uが混合されているため、図4に示すように、抗菌材2,2u同士の接触面積が減少する。従って、抗菌材2,2uに力が作用したとき、抗菌材2,2u同士の摩擦抵抗が少なくなる。
【0027】
この実施の形態では次の効果を有する。
(4) 柱状に成形された抗菌材2と、柱状の抗菌材2の角が取れて丸くなった形状の抗菌材2uとが混合して使用されるため、運転停止中に流動床3の下部に溜まったときの抗菌材2,2u同士の接触面積が減少する。その結果、水処理装置の運転再開時に抗菌材2,2uのブロッキング・詰まりが発生するのを防止することができる。
【0028】
(5) 円柱状の抗菌材2に混合する角が取れた丸い形状の抗菌材2uは、抗菌材の寿命がくるまで長期使用された古い抗菌材である。従って、丸い抗菌材2uをわざわざ製造する手間が不要になり、従来は廃棄処分にしていた古い抗菌材の有効再利用ができるとともに、廃棄処分の経費を削減できる。
【0029】
(6) 従来の流動床を改造せずにそのまま使用し、古い抗菌材2uを新しい円柱状の抗菌材2に混合することにより実施できるため、実施にあたって流動床の改造費等の余計な費用がいらない。
【0030】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 第1の実施の形態のように、パイプ5をその中心軸が下側の円錐状部6の軸からずれた状態で円錐状部6に接続した構成の水処理装置1において、抗菌材として柱状に成形された抗菌材2と、柱状の抗菌材2の角が取れて丸くなった形状の抗菌材2uとの混合物を使用する。この場合、パイプ5の接続位置が円錐状部6の軸からずれていることによるブロッキング防止効果と、抗菌材2,2u同士の接触面積の減少によるブロッキング防止効果との両方で、より確実に運転再開時のブロッキング・詰まりを防止することができる。
【0031】
○ 角が取れた丸い形状の抗菌材2uとして、長期使用後の古い抗菌材を使用する代わりに、柱状の抗菌材2の他に角が取れた丸い形状の抗菌材2uを製造してもよい。
【0032】
○ 古い抗菌材の混合割合を、古い抗菌材の繰り返し使用回数によって変更してもよい。
○ 水処理装置として、それぞれ個別に形成した流動床3、パイプ5及び流出パイプ9を連結するする構成に代えて、特開平8−47692号公報に開示された装置のように、流動床3、導入流路及び流出流路を一対の板状体に形成した凹陥部同士を対向させて、対接する平坦面同士を接着して形成してもよい。
【0033】
前記実施の形態から把握できる請求項記載以外の技術的思想(発明)について、以下にその効果とともに記載する。
(1) 請求項1又は請求項2に記載の発明において、抗菌材としてほぼ柱状に成形された抗菌材と、前記柱状の抗菌材の使用により角が取れて丸くなった形状の抗菌材とを混合して使用する。この場合、水処理装置の運転再開時に抗菌材のブロッキング・詰まりが発生するのをより確実に防止することができる。
【0034】
(2) 請求項3に記載の発明において、前記柱状の抗菌材に混合する抗菌材を、使用時の磨耗により丸くなった古い抗菌材に代えて、柱状の角が取れて丸くなった形状の新しい抗菌材を使用する。この場合も抗菌材のブロッキング・詰まりが防止される。
【0035】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1〜請求項3に記載の発明によれば、水処理装置の運転再開時に抗菌材のブロッキング・詰まりが発生するのを防止することができる。
【0036】
請求項3に記載の発明では、従来の流動床で使用する抗菌材に寿命の来た古い抗菌材を混合するだけで、装置本体の改造なしに実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態の水処理装置の概略図。
【図2】 ブロッキングの防止作用を示す模式図。
【図3】 第2の実施の形態の水処理装置の概略図。
【図4】 同じく抗菌材の接触状態を示す模式図。
【図5】 従来装置の模式側面図。
【図6】 (a)は別の従来装置の抗菌材充填部の概略斜視図、(b)は(a)のB−B線拡大断面図。
【図7】 別の従来装置の概略図。
【図8】 (a)は円錐状部の底部における作用を説明する模式図、(b)は従来の抗菌材の接触状態を示す模式図。
【符号の説明】
1…水処理装置、2…抗菌材、2u…古い抗菌材、3…流動床、5…導入流路としてのパイプ、6…円錐状部。

Claims (3)

  1. 下側に円錐状部が形成された流動床内に、粒状に成形された抗菌材を充填し、被処理水を流動床の下から上へと通水して水処理を行う水処理装置において、
    前記流動床に被処理水を導く導入流路を、その中心軸が前記円錐状部の軸からずれた状態で前記円錐状部の下部に接続して、前記水処理装置へ通水する水処理装置における抗菌材のブロッキング防止方法。
  2. 下側に円錐状部が形成された流動床内に、粒状に成形された抗菌材を充填し、被処理水を流動床の下から上へと通水して水処理を行う水処理装置であって、前記流動床に被処理水を導く導入流路を、その中心軸が円錐状部の軸からずれた状態で前記円錐状部の下部に接続した水処理装置。
  3. 下側に円錐状部が形成された流動床内に、所定の形状に成形された抗菌材を充填し、被処理水を流動床の下から上へと通水して水処理を行う水処理装置において、
    前記抗菌材としてほぼ柱状に成形された抗菌材と、前記柱状の抗菌材の使用により角が取れて丸くなった形状の抗菌材とを混合して使用する水処理装置における抗菌材のブロッキング防止方法。
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