JP3854112B2 - ガラス素子成形装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に断熱筒と軸の断熱性を改良したガラス素子の成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラスレンズなどの高精度が要求されるガラス素子の製造方法としては、研削・研磨により製造されるものと、リヒートプレスにより製造されるものの二種類に大別される。
【0003】
一般に光学ガラス素子の製造方法としてガラス素材を研削・研磨して光学面を形成する方法が多く用いられる。しかし、研削・研磨による曲面形成には十数工程が必要であるうえに、作業者に有害なガラス研削粉が多量に発生する問題点、さらに、研削・研磨では、付加価値の高い非球面形状の光学面を持つガラスレンズを同じ精度で大量に製作することが困難であるという問題点を持っている。
【0004】
それに対してリヒートプレスは、溶融したガラスを一度冷却して製作したガラス素材を加熱し、プレスすることにより型の形状をガラス素材に転写させ、ガラスレンズなどのガラス素子を成形する方法であり、曲面形成に必要な工程はプレス成形の一工程のみであるという利点がある。また、型を一度製作すれば、型の精度に準じた成形品がいくつも製作することも可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、光通信分野や医療分野で、ガラス素子は非常に注目されている。中でも、熱膨張が少ない、不純物が少ない、紫外線透過率が良い等の理由から、石英ガラス素子が注目されている。そのためガラス素子は、マイクロレンズアレイ等形状の複雑なもの、また、大きさも超小型のものから大型のものまで各種必要となってくる。
【0006】
上述したリヒートプレスでは、型の間にガラス素材を置き、型の酸化を防止する目的で型およびガラス素材を含む成形室内を不活性ガス雰囲気もしくは真空雰囲気にしたうえで、高周波加熱装置や赤外線ランプ等により加熱し、ガラス素材を型によりプレスした後、成形品を冷却して取り出す方法が取られる。通常の光学ガラスを成形する場合は、成形温度が高くても約700℃であり、断熱筒は熱伝導率の低いセラミックス製が用いられてきた。しかし、石英ガラスのように成形温度が約1400℃と高いガラス素材では、ガラス素材を加熱させる際に、型と一緒に断熱筒が加熱されてしまい、断熱筒の耐久性が低下もしくは断熱筒が破損する問題があった。そこで、本発明は石英ガラスのような成形温度が高いガラス素子をリヒートプレスにより成形する際に、断熱筒の耐久性の向上に関する問題を解決する、ガラス素子成形装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を解決するためのもので、以下の構成を備えている。
【0008】
(1) 加熱されるガラス素材が配置される一対の型組立てと、これら一対の型組立てをそれぞれ断熱筒を介して支持する一対の軸と、断熱筒と軸の間に取付けられた断熱スペーサとを備え、前記断熱筒は炭化けい素、前記断熱スペーサは窒化けい素であることを特徴とするガラス素子成形装置。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のガラス素子成形装置は、石英ガラスのような高温な成形温度の素材をプレス成形する際にも、断熱筒と断熱スペーサを組合せることで、型と軸の間に断熱効果を持たせることができ、断熱筒に異常が生じない。この場合、型はセラミックス製もしくはカーボン製などであり、断熱筒および断熱スペーサは窒化珪素または炭化珪素などの耐熱材料および高強度材料であるセラミックス材料であリ、特に断熱筒は炭化けい素、断熱スペーサは窒化けい素である。
【0012】
本発明によれば、ガラス素材を加熱させる際に、軸と断熱筒との間にスペーサがあるので型と一緒に断熱筒が加熱されることがなく、あるいは加熱されにくくなる。これを、断熱筒が炭化けい素、断熱スペーサが窒化けい素である場合について具体的に説明する。炭化けい素は、1200℃以上での強度が窒化けい素よりも高いために、断熱筒を炭化けい素で構成している。しかし、炭化けい素は熱伝導率が63.0w/m・Kと高く、この断熱筒に軸を直接接続すると、型からこの断熱筒を通して軸へ流れる熱の流れが大きく、断熱筒の角隅部などに応力集中が生じてここが破損しやすくなる。そこで断熱筒と軸との間に窒化けい素の断熱スペーサを介在させる。窒化けい素は900℃以下での強度が炭化けい素より高く、熱伝導率が12.6w/m・Kと低い。従って、型から軸への熱の流れをこの熱伝導率の低い窒化けい素の断熱スペーサにより抑制して、断熱筒に与える負荷を減少させ、もって、断熱筒の破損を防止することができる。なお、断熱スペーサが劣化した場合、断熱スペーサのみを交換すればよい。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照し説明する。
本発明に係るガラス素子32の成形装置の1例を図1に示す。この装置はフレーム1の上部から固定軸2が下方に向かって伸びており、その下端に断熱スペーサ33を介してセラミック製の断熱筒3が取付けられ、この断熱筒3に上型組み立て4が図示しないボルト等により取り付けられている。上型組み立て4は、金属製又はセラミック・カーボン製のダイプレート5、セラミックや超硬合金などで作られた上型6、ならびにこの上型6をダイプレート5に取り付けると共に型の一部を形成する固定ダイ7からなっている。そして、断熱スペーサ33、断熱筒3は窒化珪素または炭化珪素などの耐熱材料および高強度材料であるセラミックス材料からなる。
【0014】
フレーム1の下部にはサーボモータ8aを駆動源とし、サーボモータ8aの回転運動を直線運動推力に変換するスクリュージャッキ等の駆動装置8が設けられ、駆動装置8には荷重検出装置8bを介して移動軸9が取り付けられている。移動軸9は制御装置27に入力したプログラムにより、速度、位置およびトルク制御可能に上下動し、固定軸2と対向して上方に向かって伸びている。移動軸9の上端には断熱スペーサ34を介して断熱筒3と同様の断熱筒10が取り付けられている。下型組み立て11は、ダイプレート12、下型13および移動ダイ14からなっている。そして、断熱スペーサ34、断熱筒10は窒化珪素または炭化珪素などの耐熱材料および高強度材料であるセラミックス材料からなる。
【0015】
固定軸2には図示しない駆動装置によって上下動させるブラケット15が移動可能に結合されている。ブラケット15には対をなす型組み立て4,11の周囲を囲む石英ガラス管16が取り付けられている。ブラケット15には石英ガラス管16と外筒18が取り付けられ、外筒18にはランプユニット19が取り付けられている。ランプユニット19は、赤外線ランプ20とその後方に配置された反射ミラー21、さらに反射ミラー21を冷却するための図示しない水冷パイプから構成されており、型組み立て4,11を加熱するようになっている。
【0016】
フランジ付透明石英管16の上端はブラケット15に、はめ込まれたO−リングに気密当接している。また、フランジ付透明石英管16の下端は移動軸9が貫通している中間プレート1aのO−リングに気密当接し、型組み立て4,11の周囲に大気から遮断される成形室17を形成するようになっている。
【0017】
固定軸2、移動軸9およびブラケット15には、成形室17内を不活性ガス雰囲気にしたり、型組み立て4,11を冷却するためのガス供給路22,23が設けられ、図示しない流量コントロール計を介して、不活性ガスを所定流量で成形室17へ供給するようになっている。成形室17へ供給された不活性ガスは、ガス排出路24から排気される。なお、25は真空排気口、26は下型組み立て11の温度検出用熱電対、28は真空バルブ、29はガス排気バルブ、30は真空排気装置、31は真空計である。
【0018】
この装置を用い、型材質として、ダイプレートおよび移動ダイをカーボン、断熱筒の材質を炭化珪素、断熱スペーサを窒化珪素としてテストを行なった。
【0019】
テストでは、石英(ES:日本石英ガラス)の成形温度である1400℃において、不活性ガス雰囲気および減圧雰囲気(5×10-1Pa)でプレス力20kNにおいてプレス成形を実施し、断熱筒が破損しないことを確認した。また、前記条件において連続成形を200回実施し、断熱筒が破損しないことを確認するとともに、耐久性の向上を確認した。
【0020】
【発明の効果】
本発明によるガラス素子の成形方法によれば、石英ガラスなどの高融点ガラスを不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気で成形する場合においても、断熱筒の破損防止および断熱筒の耐久性向上が図れるため、石英ガラスなどの高融点ガラスのガラス素子を容易に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光学素子の成形装置の実施例を示す概略断面図。
【符号の説明】
1…フレーム、2…固定軸、3…断熱筒、4…上型組み立て、5…ダイプレート、6…上型、7…固定ダイ、8…駆動装置、8a…サーボモータ、8b…荷重検出器、9…移動軸、10…断熱筒、11…下型組み立て、12…ダイプレート、13…下型、14…移動ダイ、15…ブラケット、16…石英ガラス管、17…成形室、18…外筒、19…ランプユニット、20…赤外線ランプ、21…反射ミラー、22,23…ガス供給路、24…ガス排出路、27…制御装置部、28…真空バルブ、29…ガス排気バルブ、30…真空排気装置、31…真空計、32…ガラス素材、33…断熱スペーサ、34…断熱スペーサ。

Claims (1)

  1. 加熱されるガラス素材が配置される一対の型組立てと、これら一対の型組立てをそれぞれ断熱筒を介して支持する一対の軸と、断熱筒と軸の間に取付けられた断熱スペーサとを備え、前記断熱筒は炭化けい素、前記断熱スペーサは窒化けい素であることを特徴とするガラス素子成形装置。
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