JP3852013B2 - 携帯通信端末用のアンテナエレメント - Google Patents

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この発明は、携帯電話、簡易携帯電話(いわゆるPHS携帯電話をいう、以下同じ)、ポケットベル、携帯用情報処理端末等の携帯通信端末に好適に使用することができる携帯通信端末用のアンテナエレメントに関する。
携帯通信端末に使用するアンテナは、携帯通信端末を構成するケースに伸縮自在に組み込むロッドアンテナが主流である。また、ケースの外部に常に短く突出しているヘリカルアンテナも知られている。
特開平9−162624号公報
かかる従来技術によるときは、ロッドアンテナは、使用の都度、ケースから長く引き出す必要があるから、操作が面倒である上、僅かの外力によって簡単に破損したり、使用時において目を突いたりする危険があるという問題があった。また、ヘリカルアンテナは、空心コイルからなるアンテナエレメントをシリコーンゴムのようなカバー材によって保護して構成されているから、外径が大きくなりがちであり、ケースから突出させて固定すると、全体体裁がよくないという問題が避けられなかった。
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、基板上の第1、第2の導体によりコイルを形成することによって、外形寸法を最小に抑え、携帯通信端末のケースに体裁よく付設することができる携帯通信端末用のアンテナエレメントを提供することにある。
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、密着して重層することにより一体に仕上げる3枚の基板と、基板のそれぞれの表面に所定のピッチごとに平行に配列する第1の導体と、基板のそれぞれの裏面において各第1の導体の一端を他端に順に連結する第2の導体とを備えてなり、第1、第2の導体は、各基板を介して同一巻き方向のコイルを形成し、中間の基板には、コイルの1/2相当の基部側を形成し、上下の各基板には、コイルの1/2相当の先端側を重複して形成し、先端側は、それぞれ基部側を延長するようにして基部側の一端に共通に連結することをその要旨とする。
なお、第1、第2の導体は、各基板に形成するスルホールを介して連結することができる。
かかる発明の構成によるときは、第1の導体は、基板の表面において所定のピッチごとに平行に配列され、第2の導体は、基板の裏面において、各第1の導体の一端を他端に順に連結する。そこで、第1、第2の導体は、基板の両面において、全体として所定長さのコイルを形成し、所定の使用周波数に共振させることができる。ただし、このときの第1、第2の導体は、使用周波数の波長λに対し、電気的にλ/4の奇数倍相当の長さのコイルを形成し、電気的に十分大きな地板と組み合わせ、モノポールアンテナとして使用するものとする。なお、コイルは、重層する3枚の基板上に分割して形成されているから、共振特性がブロードになり、広帯域特性を容易に実現することができる。ただし、コイルは、たとえば基部側の1/2を中間の基板上に形成し、先端側の1/2を上下の基板上に重複して形成する。
すなわち、この発明によれば、基板の表面に配列する第1の導体と、基板の裏面において各第1の導体の一端を他端に順に連結する第2の導体とを設けることによって、第1、第2の導体は、基板を介してコイルを形成することができるから、全体の外形寸法を最小にし、携帯通信端末のケースに対し、極めて体裁よく付設することができる上、従来のアンテナに比して何ら遜色のない良好な動作特性を実現することができるという優れた効果がある。
スルホールを介して第1、第2の導体を連結すれば、第1、第2の導体は、スルホールメッキ工程を介して一挙に連結され、コイルを形成することができる。
なお、基板をカバー材によって保護すると、基板上に形成するコイルは、カバー材を介し、機械的な外力に対して有効に保護することができる。カバー材は、たとえばシリコーンゴムのように、適度の弾性を有し、しかも、電波の透過率が良好な合成樹脂材料を使用するものとし、端子を除く基板の全体をカバーするように、所定の外形形状に一体成形するものとする。また、基板に透孔を設ければ、カバー材は、成形の際に一部が透孔内にも充填され、基板との一体性を強化することができる。また、カバー材に係合突部を設ければ、係合突部を介し、全体を携帯通信端末のケースなどに簡単に固定することができる。
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
携帯通信端末用のアンテナエレメント10は、基板11と、基板11上に配列する第1の導体21、21…、第2の導体22、22…とを備えてなる(図1)。
基板11は、フッ素樹脂系またはエポキシ樹脂系等の高周波特性の良好な両面プリント基板である。基板11の一端には、大径のスルホール11aが形成されており、基板11の他端部には、小径の透孔11bが形成されている。なお、基板11は、長さd4 、幅d5 の長方形に形成されている。
第1の導体21、21…は、基板11の表面において、所定のピッチd1 ごとに平行に配列されている(図1、図2)。第2の導体22、22…は、それぞれ両端のスルホール23、23を介し、各第1の導体21の一端を他端に順に連結しており、したがって、第1、第2の導体21、21…、22、22…は、基板11を介し、全体として長さd2 、幅d3 のコイル20を形成している。ただし、コイル20の基端側の最初の第1の導体21は、連結線24aを介し、基板11のスルホール11aに連結されている。また、コイル20は、別の連結線24bを介し、基板11の透孔11bを迂回している。すなわち、コイル20の長さd2 は、透孔11bの部分d2bを介し、長い基端側部分d2a、短い先端側部分d2cに分割されており、d2 =d2a+d2b+d2cとなっている。
基板11のスルホール11aには、両面プリント板からなる端子12が付設されている(図1、図3)。端子12は、基端の突部12aをスルホール11aに挿入してはんだ付けすることにより基板11に立設されており、先端部には透孔12bが形成されている。ただし、透孔12bには、フィーダ用の同軸ケーブル13の芯線13aを挿入してはんだ付けし、同軸ケーブル13のシールド外被13bには、地板14が接続されている。
アンテナエレメント10は、カバー材15を介して保護されている(図1、図4)。カバー材15は、端子12を外部に露出させて所定形状に一体成形するとともに、先端部下面に係合突部15aが突設されている。ただし、係合突部15aの基部には、係合リブ15a1 が形成されている。また、カバー材15は、基板11の透孔11bにも充填されている。
かかるアンテナエレメント10は、カバー材15を介し、たとえば携帯電話のケースCに対してコンパクトに付設することができる(図4、図5)。ただし、ケースCは、本体部C2 に開閉蓋C1 を付して構成されており、アンテナエレメント10は、開閉蓋C1 の先端部内面に付設されている。開閉蓋C1 の先端部には、送話器C1aが組み込まれ、本体部C2 には、数字キーC2a、C2a…を含む各種の操作キーや、表示器C2b、受話器C2cなどが組み込まれている。なお、アンテナエレメント10は、端子12、係合突部15aをそれぞれ開閉蓋C1 の取付孔C1b、C1cに挿入し、係合リブ15a1 を介して固定されている。また、アンテナエレメント10に付属する同軸ケーブル13は、本体部C2 内の図示しない通信部に連結するとともに、地板14は、開閉蓋C1 内に組み込まれている。
アンテナエレメント10は、長さd4 =27mm、幅d5 =4.5mm、厚さ0.5mmのエポキシ樹脂系の基板11上において、ピッチd1 =0.5mm、d2a=0.5×38=19mm、d2b=2mm、d2c=0.5×2=1mm、長さd2 =d2a+d2b+d2c=22mm、幅d3 =3.1mmのコイル20を形成し、地板14とともにモノポールアンテナとして作動させるとき、図6の周波数特性が得られた。ただし、図6の横軸は、周波数f(MHz )を示し、縦軸は、電圧定在波比SWRを示している。また、このアンテナは、設置方向ごとに、水平偏波、垂直偏波からなる受信電波Sh 、Sv に対し、図7〜9の各実線に示すような水平指向特性であった。ただし、これらの図において、一点鎖線は、ロッドアンテナRDの比較対照特性であり、付属の略図は、受信電波Sh 、Sv が到来する0°方向を図示している。また、半径方向は、受信電圧V(dBμV)である。すなわち、アンテナエレメント10は、ロッドアンテナRDに対し、全く遜色がない良好な動作特性を実現することができる。
他の実施の形態
アンテナエレメント10は、端子12を基板11の一部として形成してもよい(図10)。なお、カバー材15は、縦長の先細ドーム状に形成され、ケースCの表面に突出して固定されている。また、基板11には、上端部、下部に透孔11b、11bが形成され、コイル20の端子12側の一端は、図示しない連結線を介して端子12に引き出されている。そこで、アンテナエレメント10は、端子12の透孔12bに同軸ケーブル13の芯線13aを挿入して接続し、シールド外被13bに地板14を接続することにより、モノポールアンテナとして作動させることができる。
アンテナエレメント10は、重層する複数の基板11、11…上にコイル20を分割して形成することができる(図11)。コイル20は、全体の1/2に相当する基部側20aが中間の基板11上に形成され、他の1/2に相当する先端側20bが上下の基板11、11に重複して形成されている(図11(A)、(B))。基部側20a、先端側20b、20bは、それぞれを同一巻き方向とし、各先端側20bは、基部側20aを延長するようにして、基板11、11…を貫く連結線24cを介して基部側20aの一端に共通に連結されている。なお、基板11、11…は、密着して重層することにより一体に仕上げることができる(同図(C))。ただし、各基板11の一端には、透孔12b付きの端子12を一体に形成し、連結線24aを介してコイル20の一端を連結する端子12、12…には、同軸ケーブル13の芯線13aを共通に接続するものとする。
図11のアンテナエレメント10は、各部の寸法を図1のそれとほぼ同一に形成するとき、図12のとおりの周波数特性が得られた。すなわち、アンテナエレメント10は、コイル20を複数の基板11、11…上に分割して形成することにより、共振特性をブロードにし、広帯域化を図ることができる。
アンテナエレメント10は、基板11上において、長さが異なる複数組のコイル20、20を同方向に同一位置に形成してもよい(図13)。コイル20、20は、それぞれ連結線24aを介して共通の端子12に引き出されている。コイル20、20は、異なる周波数に共振するから、アンテナエレメント10は、全体としてダブルピークの周波数特性を実現することができる(図14)。
アンテナエレメント10は、基板11上において、長さが異なる複数組のコイル20、20…を同方向に異なる位置に形成してもよい(図15)。基板11上の各コイル20は、それぞれ異なる共振周波数を有し、したがって、アンテナエレメント10は、全体として、マルチピークの広帯域の周波数特性を示す(図16)。なお、単一コイルのアンテナエレメントは、たとえば簡易携帯電話に使用するとき、使用状態によって共振周波数が大きく変動するが(図17)、図15のアンテナエレメント10は、その広帯域特性により、かかるボデーエフェクトを有効にカバーすることができる。ただし、図17の実線、一点鎖線、二点鎖線は、それぞれ単一コイルのアンテナエレメントをモノポールアンテナとして組み込む簡易携帯電話を耳に付けて現に使用しているとき、手で保持しているとき、机上に放置しているときの各周波数特性の一例を示している。
アンテナエレメント10は、基板11上において、長さが同一の複数組のコイル20、20を互いに直角方向に異なる位置に形成してもよい(図18)。アンテナエレメント10は、コイル20、20を介し、全体として、いわゆる偏波合成アレー形のアンテナエレメントとして作動し、水平偏波、垂直偏波からなる受信電波Sh 、Sv の双方に対し、ほぼ均一な水平指向特性を実現することができる(図19)。ただし、図19の実線は、垂直偏波からなる受信電波Sv に対する特性を示し、一点鎖線は、水平偏波からなる受信電波Sh に対する特性を示す。
全体構成分解斜視説明図 コイルの要部説明図 図1の要部拡大断面図 図1の縦断面相当図 使用状態説明図 動作特性線図(1) 動作特性線図(2) 動作特性線図(3) 動作特性線図(4) 他の実施の形態を示す使用状態説明図 他の実施の形態を示す構成説明図 動作特性線図(5) 他の実施の形態を示す構成概念図(1) 動作特性線図(6) 他の実施の形態を示す構成概念図(2) 動作特性線図(7) 動作特性線図(8) 他の実施の形態を示す構成概念図(3) 動作特性線図(9)
符号の説明
d1 …ピッチ
11…基板
20…コイル
21…第1の導体
22…第2の導体
23…スルホール

特許出願人 株式会社 エフ・イー・シー
杉 村 詩 朗
多成電子通信株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

Claims (2)

  1. 密着して重層することにより一体に仕上げる3枚の基板と、該基板のそれぞれの表面に所定のピッチごとに平行に配列する第1の導体と、前記基板のそれぞれの裏面において前記各第1の導体の一端を他端に順に連結する第2の導体とを備えてなり、前記第1、第2の導体は、前記各基板を介して同一巻き方向のコイルを形成し、中間の前記基板には、前記コイルの1/2相当の基部側を形成し、上下の前記各基板には、前記コイルの1/2相当の先端側を重複して形成し、該先端側は、それぞれ前記基部側を延長するようにして前記基部側の一端に共通に連結することを特徴とする携帯通信端末用のアンテナエレメント。
  2. 前記第1、第2の導体は、前記各基板に形成するスルホールを介して連結することを特徴とする請求項1記載の携帯通信端末用のアンテナエレメント。
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