JP3849011B2 - 黄色みを帯びた発光をする発光材料とその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、比較的安価であり、資源的にも安定しており、かつ、低速の電子線照射下で高効率の発光を示すことが知られている酸化亜鉛に固溶成分を含む黄色みを帯びた発光を示す発光材料およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化亜鉛はウルツ鉱型結晶構造を有し、一般に酸化亜鉛の特性制御は、添加物の添加と熱処理によって実現される。クレーガ・フィンクの欠陥方程式は、例えば、下記の式1、式2で示される。
【0003】
【式1】
【0004】
上記の式1、式2の様にして欠陥生成による導電率の付与が記述される。これまで、こうして導入された欠陥が酸化亜鉛の発光に関与していると考えられており、既に開発・実用化がなされている青緑色の発光を与える酸化亜鉛蛍光材料は、式1、ないし2の化学反応で合成される欠陥を含んだ酸化亜鉛、言い換えると、化学式としてZn1+xO、あるいは、ZnO1-xで与えられるような物質、であることが知られている。
【0005】
これらの方法による酸化亜鉛の特性制御においては、VO .やZni .等の欠陥の濃度、すなわち、電子濃度は、酸素分圧と熱処理温度によって変化するため、その熱処理の温度や雰囲気を変化させることによって、特性の変調が可能であることが知られている。
【0006】
酸化亜鉛の添加物による特性制御は、例えば、XはIII族元素である、アルミニウム、インジウム、ガリウムのいずれか、Zはアルカリ金属元素である、ナトリウムとリチウムのいずれかとした場合に、下記の式3、式4のように記述される。
【0007】
【式2】
【0008】
式3はIII族元素添加による導電性の付与、式4はアルカリ金属元素添加による導電性の抑制を示す。すなわち、いわゆるドナーとアクセプターの導入を式1、式2に示すように、欠陥の導入と除去、あるいは、式3、式4に示すように添加物の添加によって行い、工業的に必要とされる性能を実現してきた。
【0009】
従来、ZnOへの添加物の効果はドナーないし、アクセプターのいずれかを導入するという技術が一般的であり、緑色の発光を与える酸化亜鉛においても、原理的には、Zn1+xO、あるいは、ZnO1-xで与えられるような物質で実現されている。
【0010】
これに対して、本発明では、酸化亜鉛中でドナー準位の形成をもたらすIII族元素とアクセプター準位の形成をもたらすアルカリ金属元素を同時に添加してどの発光特性を制御するという視点で従来技術と異なる。
【0011】
黄色の発色を与える酸化亜鉛塗料に関して、日本国特許「特公平6-70190号公報」に開示された発明がある。この発明では、日光や、一般的な照明に代表される白色光で照らした際に、黄色に見える塗料の組成、および、その製造法が示されている。すなわち、黄色の反射スペクトルを与える酸化亜鉛に関する発明である。しかし、特公平6-70190号公報は黄色塗料に粒子線や電磁波を照射した場合の発光について、何ら示すものではなく、同発明と本発明は、その目的・効果を異にするものであり、黄色みを帯びた発光は、特公平6-70190号公報記載の酸化亜鉛塗料によっては達成されない。
【0012】
酸化亜鉛の可視光発光体については、先に示した、Zn1+xO、あるいは、ZnO1-xによる緑色の発光と異なり、ランタニド元素を添加することによって可視発光を与える酸化亜鉛があり、特開平8-236275号公報にその組成が示されている。特開平8-236275号公報記載の酸化亜鉛は、ランタニド元素の輝線を使った可視発光であり、特定の波長のみを発することを特徴とする。いわゆる白熱灯に代表される、ブロードな発光バンドを有し、連続的な発光スペクトルを生じさせる酸化亜鉛の製造法ではない。したがって、本発明の目的とそこから得られる効果は、特開平8-236275号公報記載の酸化亜鉛によって達せられない。
【0013】
【発明が解決すべき課題】
本発明で着目するウルツ鉱型結晶構造の酸化亜鉛とそれに固溶した添加物とからなる組成物である固溶体(以下適宜、「酸化亜鉛基組成物」という)の黄色発光は物理学的には既に検討が行われていた課題である。例えば、Schermel とTwingel がSolid State Communication 誌(1970年発行、第8巻 1559ページ)に示しているように、黄色の発光が酸化亜鉛基組成物から得られることが示されている。しかし、これまで有効な工業的製造法やその発光効率を制御するための化学組成が示されておらず、その製造法、材料として工業利用に供されるための化学組成は不明なままであった。さらに、ブロードな発光スペクトルを実現することによる黄色みを帯びた発光という観点での工業的開発は達成されていなかった。
【0014】
発光材料の使途は多岐にわたり、大電流の電子線によって励起する素子や、微弱な強度の紫外線で励起する素子など、様々な利用形態が考えられる。そのため、例えば、大電流の電子線照射によって発光を励起するような使用法では、発光材料となる酸化亜鉛基組成物の電気抵抗率が低く抑えられている必要があり、また、微弱な強度の紫外線による励起で使用する場合には、電気抵抗率を下げることよりも、発光効率を上げることが優先する。従って、当該発光材料にあっては、その電気抵抗率の設計も可能であることが望ましい。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも当該組成物のバンドギャップを越えるエネルギーを有する、電子線を含む粒子線、あるいは、紫外線を含む電磁波による励起に対して、目視で、黄色みを帯びた発光を呈していることを確認しうる酸化亜鉛基組成物、すなわち、短波長側で460nm以下から、長波長側で750nm以上にわたる連続でバンド幅の広い発光を示し、その発光色がCIE1964表色系でx=0.45から0.47、y=0.45から0.47に対応する黄色みを帯びた色で発光する組成物を提供する。
【0016】
純粋な酸化亜鉛は、約3.3電子ボルトのバンドギャップを持つ半導体であり、純粋な酸化亜鉛は約380ナノメーターの紫外線発光を与える。また、欠陥を導入することにより、約520ナノメーターに発光強度のピークを持つ青緑色の発光を与える。こうした特徴を持つ酸化亜鉛から黄色みを帯びた発光を得るためには、バンドギャップ内に、さらに、輻射遷移を与える準位を導入しなければならない。
【0017】
一般的な酸化、あるいは、還元的な雰囲気中での熱処理では、先の緑色発光の欠陥のみが導入されるため、何らかの添加物を加えて、他の欠陥を導入しなければならない。また、そうして導入された欠陥が、少なくともバンドギャップを越えるエネルギーを持つ粒子線、電磁波による励起に対して、青色でも緑色でもない、黄色みを帯びた可視発光を与えるに適当なエネルギー状態をもっている必要がある。
【0018】
本発明者らは、ドナー・アクセプター対による発光、すなわち、ドナーが持つ電子とアクセプターが持つ正孔との結合による発光を利用することが有効な手段であるとの考えに基づき検討した結果、ドナー準位の形成をもたらす周期律表のIII族元素である、アルミニウム、ガリウム、インジウムのいずれかのうち1種以上とアクセプター準位の形成をもたらすアルカリ金属元素である、ナトリウム、リチウムのうちの1種以上を同時に添加した酸化亜鉛基組成物が、少なくとも当該組成物のバンドギャップを越えるエネルギーを有する、電子線を含む粒子線、あるいは、紫外線を含む電磁波に対して、目視によって、黄色みを帯びた発光が確認しうる酸化亜鉛基組成物であることを見出した。
【0019】
すなわち、本発明は、酸化亜鉛中でドナー準位の形成に寄与するIII族元素であるアルミニウム、ガリウム、インジウム のうちの少なくとも1種の固溶成分と、酸化亜鉛中でアクセプター準位形成に寄与するアルカリ金属であるナトリウム、リチウムのうちの少なくとも1種の固溶成分をそれぞれ含むウルツ鉱型結晶構造の酸化亜鉛からなり、少なくとも当該組成物のバンドギャップエネルギーを越えるエネルギーを持つ、粒子線、あるいは、電磁波による励起に対して、短波長側で460nm以下から、長波長側で750nm以上にわたる連続でバンド幅の広い、CIE1964 表色系で x=0.45 から 0.47 、 y=0.45 から 0.47 に対応する黄色みを帯びた色の発光を示すことを特徴する発光材料である。
【0020】
また、本発明は、III族元素がアルミニウム、アルカリ金属がリチウムであり、アルミニウムの濃度が亜鉛の原子数に対して1万分の1から100分の1、リチウムの濃度が亜鉛の原子数に対して1万分の1から100分の1であることを特徴とする上記の発光材料である。
【0021】
さらに、本発明は、酸化亜鉛粉末に対して、ナトリウム、リチウムのうちの少なくとも1種を含む化合物又はナトリウム、リチウムのうちの少なくとも1種の金属と、アルミニウム、ガリウム、インジウム のうちの少なくとも1種を含む化合物又はアルミニウム、ガリウム、インジウム のうちの少なくとも1種の金属を添加、混合した混合物を得、当該混合物中の構成成分を熱処理によって反応させて、アルミニウム、ガリウム、インジウム のうちの少なくとも1種の固溶成分と、ナトリウム、リチウムのうちの少なくとも1種の固溶成分をそれぞれ含むウルツ鉱型結晶構造の酸化亜鉛を形成することを特徴とする上記の発光材料の製造法である。
【0022】
また、本発明は、酸化亜鉛粉末に対して、ナトリウム、リチウムのうちの少なくとも1種を含む溶液と、アルミニウム、ガリウム、インジウム のうちの少なくとも1種を含む溶液を加えた後に、乾燥して混合、あるいは、混練して乾燥という処置を加えることによって混合物を得、当該混合物中の構成成分を熱処理によって反応させることを特徴とする上記の発光材料の製造法である。
【0023】
また、本発明は、熱処理時に酸素を主成分とするガス中で反応させることを特徴とする上記の発光材料の製造法である。また、本発明は、熱処理によって反応させて得られる固溶成分をそれぞれ含むウルツ鉱型結晶構造の酸化亜鉛を、さらに酸素を主成分とする雰囲気中で焼鈍することを特徴とする上記の発光材料の製造法である。
【0024】
本発明に基づき製造される酸化亜鉛基組成物は、照明器具用蛍光材料、情報表示素子用蛍光材料、塗料、顔料の分野への応用が可能である。
【0025】
照明器具においては、当該組成物が持つ可視光ほぼ全域にわたる発光を呈する、という特徴を利用して、通常の白熱球、照明用蛍光管、ハロゲンランプやエキシマランプをはじめとする発光管に蛍光材料として利用し、黄色みを帯びた光を発する照明器具に応用される。特に、複数種の蛍光材料を併用することなく、黄色みを帯びた発光を与えることが可能である。
【0026】
情報伝達素子への応用では、真空蛍光表示管やプラズマディスプレーや電界放射型ディスプレーの蛍光材料として、あるいは液晶ディスプレーのバックライト用の蛍光材料として用いることにより、その黄色みを帯びた発光を利用した情報表示に応用される。
【0027】
顔料に関しては、化粧品を含む顔料に混合して用いることにより、紫外光を含む照明や太陽光の照射に対しても、人間の視覚に対して自然な暖色系の感覚をもって識別される発色をあたえ、人に快適さを与えるための顔料としても利用可能である。すなわち、遊戯施設などにおける塗料として利用することによって、紫外線照明を受けて発色する塗料であったり、化粧用顔料として利用し、写真用のフラッシュランプに対して暖色系の発色を与える顔料として利用などが考えられる。
【0028】
さらに、粒子線での刺激によって、可視光の発色を与えるため、簡便な紫外線照射感知、電子線照射感知などの指示板、あるいはその発色を利用したセンサーへの応用が可能である。
【0029】
先に挙げた使用法において、電気抵抗率を制御する必要が生じた場合、当該組成物の陽イオン組成、あるいは、それを製造する際の熱処理条件(温度、雰囲気)を変化させることで、電気抵抗率、すなわち、組成物中の電子濃度の調整が可能となる。ドナー濃度、すなわち、添加するアルミニウム、ガリウム、インジウムの量と、アクセプター濃度、すなわち、添加するリチウム、ナトリウムの量、および、熱処理条件と上記の添加物の添加量によって変化する酸素欠陥、亜鉛欠陥、侵入亜鉛、侵入酸素によって電子濃度を変化させることで電気伝導率の調整が可能である。
【0030】
【発明の実施の形態】
(1)酸化亜鉛基組成物の組成
本発明の対象となる組成物は、少なくとも当該組成物のバンドギャップエネルギーを越えるエネルギーを持つ粒子線、あるいは、電磁波による励起に対して、目視によって、黄色みを帯びた発光を与えることが認められる、すなわち、短波長側で460nm以下から、長波長側で750nm以上にわたる連続でバンド幅の広い発光を示し、その発光色がCIE1964表色系でx=0.45から0.47、y=0.45から0.47に対応する黄色みを帯びた色で発光する組成物であって、その製造法の如何を問わず、酸化亜鉛を主成分とし、これにアクセプター準位の形成をもたらすアルカリ金属元素であるナトリウム、リチウムの少なくとも1種と、ドナー準位の形成をもたらすIII族元素である、アルミニウム、インジウム、ガリウムの少なくとも1種のあわせて2種以上の固溶成分を含むことを特徴する酸化亜鉛基組成物である。
【0031】
本発明の対象となる組成物のうち典型的な組成物は、少なくとも当該組成物のバンドギャップを越えるエネルギーを持つ粒子線、あるいは、電磁波による励起に対して、目視によって、黄色みを帯びた発光を与えることが認められる、すなわち、短波長側で460nm以下から、長波長側で750nm以上にわたる連続でバンド幅の広い発光を示し、その発光色がCIE1964表色系でx=0.45から0.47、y=0.45から0.47に対応する黄色みを帯びた色で発光する組成物であって、その製造法の如何を問わず、酸化亜鉛を主成分とし、これに少なくとも、アルミニウムとリチウムを含む2種以上の固溶成分を含むことを特徴する酸化亜鉛基組成物である。しかし、これはあくまでもその例であって、その製造法の如何を問わず、当該組成物を製造する際の環境(製造温度、製造時の雰囲気ガス)に応じて、組成と発光スペクトルの関係を検討し、もっとも好ましい特性が得られる様に、アルカリ金属元素、あるいは、III族元素の種類と添加量を最適化することが望ましい。
【0032】
本発明の対象となる組成物のうち、典型的な組成物の化学組成代表例は、少なくとも当該組成物のバンドギャップを越えるエネルギーを持つ粒子線、あるいは、電磁波による励起に対して、目視によって、黄色みを帯びた発光を与えることが認められる、すなわち、短波長側で460nm以下から、長波長側で750nm以上にわたる連続でバンド幅の広い発光を示し、その発光色がCIE1964表色系でx=0.45から0.47、y=0.45から0.47に対応する黄色みを帯びた色で発光する組成物であって、その製造法の如何を問わず、酸化亜鉛を主成分とし、これに少なくともアルミニウムとリチウムを固溶成分として含むことを特徴する酸化亜鉛基組成物であり、当該組成物中の亜鉛の原子数に対して、アルミニウムの原子数を1万分の1から百分の1、リチウムの原子数を1万分の1から百の1の濃度になるように調整した組成物である。
【0033】
しかし、その製造法の如何を問わず、当該組成物を製造する際の環境(製造温度、製造時の雰囲気ガス)に応じて、組成と発光スペクトルの関係を検討し、もっとも好ましい特性が得られる様に、アルカリ金属元素、あるいは、III族元素の種類と添加量を最適化することが望ましい。ただし、例えば適量のリチウムと過剰にアルミニウムを加えて製造した場合、固溶限を越えたアルミナが析出した、(アルミニウム、リチウム)を含む酸化亜鉛固溶体とアルミナの混合物が製造されるが、その混合物であっても、黄白色の発光という性能を満足する。
【0034】
特に、当該組成物を素子、機器に利用する場合、その電気伝導度の調整が必要となった場合、(1)アルミニウム、ガリウム、インジウムの少なくとも1種の添加量を増す、(2)リチウム、ナトリウムの少なくとも1種の添加量を減らす、(3)比較的低い酸素分圧下で熱処理する、という手法のいずれか1つ、または、その組み合わせによる措置を施すことによって、電子濃度を増し、電気伝導度を高めることが可能である。電気伝導度を減ずるには、逆の措置をすることでその調整が可能となる。
【0035】
(2) 酸化亜鉛基組成物の発光本発明の対象となる組成物は、その製造法の如何を問わず、酸化亜鉛を主成分とし、これにアクセプター準位の形成をもたらすアルカリ金属元素の少なくとも1種と、ドナー準位の形成をもたらすIII族元素の少なくとも1種のあわせて2種以上の固溶成分を含むことを特徴する酸化亜鉛基組成物であって、少なくとも当該組成物のバンドギャップを越えるエネルギーを持つ粒子線、あるいは、電磁波による励起に対して、目視によって、黄色みを帯びた発光、すなわち、短波長側で460nm以下から、長波長側で750nm以上にわたる連続でバンド幅の広い発光を示し、その発光色がCIE1964表色系でx=0.45から0.47、y=0.45から0.47に対応する黄色みを帯びた色で発光する。
【0036】
本発明の対象となる組成物は、その製造法の如何を問わず、酸化亜鉛を主成分とし、これにアクセプター準位の形成をもたらすアルカリ金属元素の少なくとも1種と、ドナー準位の形成をもたらすIII族元素の少なくとも1種のあわせて2種以上の固溶成分を含むことを特徴する酸化亜鉛基組成物であって、少なくとも当該組成物のバンドギャップエネルギーを越えるエネルギーを持つ粒子線、あるいは、電磁波による励起に対して、目視によって、黄色みを帯びた発光、すなわち、短波長側で460nm以下から、長波長側で750nm以上にわたる連続でバンド幅の広い発光を示し、その発光色がCIE1964表色系でx=0.45から0.47、y=0.45から0.47に対応する黄色みを帯びた色で発光し、一般的な分光器と光検出器を用いた計測で、波長550〜650ナノメートルの間に発光強度の最強値をもち、その発光バンドの持つブロードな発光スペクトルを与える酸化亜鉛基組成物である。しかし、当該組成物の製造、使用において一般の分光器と光検出器を用いた計測を行うことは、本発明の必須の要件ではない。
【0037】
当該組成物は、典型的な使用方法として、少なくとも当該組成物のバンドギャップを越えるエネルギーを持つ電子線による励起を与えることによって、目視によって、黄色みを帯びた発光、すなわち、短波長側で460nm以下から、長波長側で750nm以上にわたる連続でバンド幅の広い発光を示し、その発光色がCIE1964表色系でx=0.45から0.47、y=0.45から0.47に対応する黄色みを帯びた色で発光させる方法がある。しかし、当該組成物の製造、使用において電子線で励起することは必ずしも必須でなく、この典型的な使用方法に限られない。
【0038】
当該組成物は、典型的な使用方法として、少なくとも当該組成物のバンドギャップを越えるエネルギーを持つ電磁波による励起を与えることによって、目視によって黄色みを帯びた発光、すなわち、短波長側で460nm以下から、長波長側で750nm以上にわたる連続でバンド幅の広い発光を示し、その発光色がCIE1964表色系でx=0.45から0.47、y=0.45から0.47に対応する黄色みを帯びた色で発光させる方法がある。しかし、当該組成物の製造、使用において電磁波で励起することは必ずしも必須でなく、この典型的な使用方法に限られない。
【0039】
(3)組成物の簡便な製造方法本発明が対象とする組成物、すなわち、少なくとも当該組成物のバンドギャップを越えるエネルギーを持つ粒子線、あるいは、電磁波による励起に対して、目視によって、黄色みを帯びた発光、すなわち、短波長側で460nm以下から、長波長側で750nm以上にわたる連続でバンド幅の広い発光を示し、その発光色がCIE1964表色系でx=0.45から0.47、y=0.45から0.47に対応する黄色みを帯びた色の発光を与えることが認められる組成物の簡便な製造法の1つは、酸化亜鉛を主成分とし、これにアクセプター準位の形成をもたらすアルカリ金属元素の少なくとも1種と、ドナー準位の形成をもたらすIII族元素の少なくとも1種のあわせて2種以上の固溶成分を含むことを特徴する酸化亜鉛基組成物を製造することである。
【0040】
その簡便な製造方法の1つは、酸化亜鉛粉末に対して、酸化亜鉛中にアクセプター準位の形成をもたらすアルカリ金属元素の少なくとも1種を含む化合物ないし金属と、酸化亜鉛中にドナー準位の形成をもたらすIII族元素の少なくとも1種を含む化合物、ないし金属を添加、混合した混合物に熱処理を施して反応させるという方法である。酸化亜鉛原料としては、必ずしも、酸化亜鉛粉末を用いる必要はなく、その製造方法に適した原料を選択することが望ましい。例えば、亜鉛蒸気を析出させて酸化亜鉛とする方法や、有機金属、アルコキシド、各種塩類を出発原料として最終的に酸化亜鉛に到達するという製造法も可能である。アルカリ金属の原料としては、酸化物(Li2O, Na2O)、炭酸塩(Li2CO3,Na2CO3)、硝酸塩(Li2NO3,Na2NO3)、水酸化物(LiOH、NaOH)、金属(Li, Na)等の一般的な化合物を用いることが可能であるが、一般にその吸湿性や反応性が原因となって正確な秤量や安全な取扱が難しくなるため、炭酸塩の形態を持つ化合物を利用するのが簡便である。
【0041】
また、III族元素の原料としては、酸化物(Al2O3, Ga2O3, In2O3など)を用いることが簡便である。弗化物等の利用も原理的には可能であるが、分解して発生するフッ素などが酸化亜鉛基組成物の固溶成分として熱処理後も残存してしまう恐れがあるため、固形のIII族元素の原料には、酸化物を使用することが望ましい。また、添加する原料の反応性に応じて、添加したLi2CO3やAl2O3等の原料が主成分である酸化亜鉛と十分に反応し、酸化亜鉛基組成物中に、発光に寄与するドナー準位とアクセプター準位が形成されるに足る温度で熱処理しなければならない。
【0042】
例えば、一般的に市販されている粉末試薬のLi2CO3と一般的に市販されている粉末試薬のAl2O3を一般的に市販されている粉末試薬の酸化亜鉛に添加して熱処理する場合、特にその加熱機構を指定しない熱処理装置において、800℃〜1100℃の範囲で3時間から12時間の熱処理を施すことが望ましい。しかし、熱処理条件は、その添加物原料、及び、主成分である酸化亜鉛原料の粉体粒子径などに依存するため、製造にあたっては、使用する原料の形態によって、熱処理温度と熱処理時間を調整する必要がある。熱処理雰囲気は、特に指定しないが、電気的に低い抵抗を示す発光材料を得るという目的以外の場合、酸素雰囲気中で熱処理することが望ましい。
【0043】
特に、アルカリ金属元素は、蒸気圧が高く、特に温度を上げた場合に蒸発して失われやすいため、添加物と主成分の酸化亜鉛が反応する温度であって、かつ、アルカリ金属の蒸発が顕著にならない温度にいったん加熱して、反応を開始させた後に、さらに高温で熱処理するという方法をとっても、差し支えない。
【0044】
また、熱処理に際し、過剰な高温、あるいは、過剰に低い酸素分圧において処理を行った場合、主成分である酸化亜鉛、あるいは、固溶成分であるアルカリ金属元素、III族元素の蒸発が顕著になり、本発明による酸化亜鉛基組成物からなる発光材料が所望の特性を持たなくなる恐れがあるため、熱処理の温度、雰囲気は、こうした蒸発による顕著な組成変化が起こらない条件下で行うことが望ましい。しかし、ここに示した方法は、簡便な方法の例であって、この方法を実施するか否かは、本発明において本質的に必要な事項ではない。
【0045】
上記以外の簡便な製造方法のうちの1つは、酸化亜鉛粉末に対して、酸化亜鉛中にアクセプター準位の形成をもたらすアルカリ金属元素の少なくとも1種を含む溶液(LiCl、NaCl水溶液やそれをアルコール類で希釈した溶液など)と、酸化亜鉛中にドナー準位の形成をもたらすIII族元素の少なくとも1種を含む溶液(Al(NO3)3水溶液やそれをアルコール類で希釈した溶液など)を加えた後に、乾燥して混合、あるいは、混練して乾燥という処置を加えることによって得た混合物に熱処理を施して反応させるという方法である。
【0046】
混練して乾燥、乾燥して混合の過程は、特にその前後をこだわらないが、添加する溶液の量によって適宜、その順番を変更しても、製造工程全体に与える影響は無視できる。乾燥と混合を同時に行うこともあり得る。乾燥の条件は、乾燥の後に行う熱処理において、揮発成分(水分など)の蒸発が、その反応、製造物の回収の妨げとならない程度になされていれば、特に、その乾燥工程のための温度、雰囲気は限定しない。
【0047】
結果として、主成分と添加したアルカリ金属、III族元素が良く混合された状態を達成できる手法であれば、特に製造物の特性に顕著な違いを与えるものではない。また、熱処理については、リチウムやアルミニウム等の固溶成分が主成分である酸化亜鉛と十分に反応し、酸化亜鉛基組成物中に、発光に寄与するドナー準位とアクセプター準位が形成されるに足る温度で熱処理しなければならない。例えば、塩化リチウム水溶液と硝酸アルミニウムを一般的に市販されている粉末試薬の酸化亜鉛に添加して熱処理する場合、特にその加熱機構を指定しない熱処理装置において、800℃〜1100℃の範囲で3時間から12時間の熱処理を施すことが望ましい。
【0048】
しかし、熱処理条件は、その添加物原料、及び、主成分である酸化亜鉛原料の粉体粒子径などに依存するため、製造にあたっては、使用する原料の形態によって、熱処理温度と熱処理時間を調整する必要がある。熱処理雰囲気は、特に指定しないが、電気的に低い抵抗を示す発光材料を得るという目的以外の場合、酸素雰囲気中で熱処理することが望ましい。
【0049】
特に、アルカリ金属元素は、蒸気圧が高く、特に温度を上げた場合に蒸発して失われやすいため、添加物と主成分の酸化亜鉛が反応する温度であって、かつ、アルカリ金属の蒸発が顕著にならない温度にいったん加熱して、反応を開始させた後に、さらに高温で熱処理するという方法をとっても、差し支えない。また、熱処理に際し、過剰な高温、あるいは、過剰に低い酸素分圧において処理を行った場合、主成分である酸化亜鉛、あるいは、固溶成分であるアルカリ金属元素、III族元素の蒸発が顕著になり、本発明による酸化亜鉛基組成物からなる発光材料が所望の特性を持たなくなる恐れがあるため、熱処理の温度、雰囲気は、こうした蒸発による顕著な組成変化が起こらない条件下で行うことが望ましい。しかし、ここに示した方法は、簡便な方法の例であって、この方法を実施するか否かは、本発明において本質的に必要な事項ではない。
【0050】
また、先に示した製造法の過程において実施される、混合物を反応させて酸化亜鉛基組成物にドナーとアクセプターを形成させる熱処理に際しては、混合物を酸素ガス中で反応させて製造物を得ることにより、その発光効率の向上が認められることがある。製造物に求められる特性(ここでは、発光効率と電気抵抗率)によってその酸素分圧は調整が必要である。酸素分圧が高まることによって製造物の電気抵抗も高まるため、所望の特性に最も近い製造物が得られるように、酸素分圧を調整する必要がある。しかし、この酸素雰囲気中での製造は、本発明において本質的に必要な事項ではない。
【0051】
その製造に際して、当該組成物に酸素を主成分とする雰囲気中での熱処理を加えることによって、その発光効率の向上が認められることがある。そのため、その組成物の製造時の最終過程において、酸素を主成分とするガス中で当該組成物を焼鈍させることが発光効率の向上に有効である場合がある。ここで言う焼鈍処理は、先に示した製造工程の後に実施するものであり、主成分である酸化亜鉛に、固溶成分である、III族元素のうちのアルミニウム、ガリウム、インジウムのいずれかと、リチウム、ナトリウムのうちのいずれかの少なくとも2種の添加物によって、既にドナー準位とアクセプター準位が形成された酸化亜鉛基組成物の特性の調整を行うために実施するものであり、必ずしも実施しなければならないものではない。
【0052】
ここで言う焼鈍処理は、欠陥の量、状態を変化させるためのものであるため、400℃〜1100℃の間でもっとも効果的な温度で行うことが望ましい。すなわち、酸化亜鉛中の酸素欠陥をはじめとする欠陥種の濃度と状態は、温度と酸素分圧との両方の影響を受けるため、所望の特性(ここでは、発光効率と電気伝導度)あるいは、それに近い特性が得られるように、温度と雰囲気を調整する必要がある。
【0053】
組成物を製造する際の熱処理において、一般に温度が低く、酸素分圧が高いときに酸素欠陥が減少する傾向があるが、温度が低くなると、固体中のイオンの拡散係数が低下し、長時間の処理が必要となる。さらに、製造する酸化亜鉛基組成物の寸法によりその十分な熱処理時間は自ずと異なってくる。そのため、例えば、直径10ミリ、厚さ2ミリのペレット状の製造物を仮定した場合、有限時間で効果が得られる熱処理条件は、800℃〜1100℃の温度で1気圧の酸素で満たされた熱処理装置において1〜10時間の加熱を施した後に同じ雰囲気で3〜6時間の間に室温まで降温する、という条件が適当である。製造物の形状、密度によってその処理条件を検討し、最適条件を見出す必要がある。しかし、この酸素雰囲気中での焼鈍は、本発明において本質的に必要な事項ではない。
【0054】
【実施例】
実施例1
一般的に市販されている99.999%純度の酸化亜鉛粉末試薬に対して、亜鉛に対する原子比にして、アルミニウムが1千分の1、リチウムが1万分の1の濃度となるよう混合し、その混合粉体を市販の酸素ガスボンベから供給した酸素雰囲気中で8×102℃において3時間の間熱処理し、反応させた。得られた反応物を粉砕し、その粉砕物を金型を用い、1トンの荷重を加えて錠剤形に成型した後に、酸素雰囲気中で1×103℃において6時間熱処理し、焼成して酸化亜鉛基組成物の成型体を製造した。
【0055】
この際、リチウム、アルミニウムの原料は、一般的に販売されている濃度1000ppmの分析標準液を一般的な純水で希釈した溶液の形態として準備し、当該溶液を規定量の酸化亜鉛粉末に加えて混練し、乾燥することによって混合物を得た。混練は、一般のガラス製ビーカーと一般のガラス製攪拌棒によって行った。攪拌後の乾燥は、空気中で混練物を70〜80℃に加熱することで行った。また、8×102℃の熱処理の後の粉砕は、瑪瑙製乳鉢と瑪瑙製乳棒を用いて実施した。
【0056】
上記の方法で得られた酸化亜鉛基組成物に対して、約355ナノメーター、あるいは、約245ナノメーターの波長を持つ光を照射した際に当該組成物が発する光を目視で観察したところ、黄色みを帯びた発光が確認された。従来型の亜鉛過剰の組成をもつ酸化亜鉛蛍光体を同様に観測したところ青緑色の発光が目視で確認された。
【0057】
上記の酸化亜鉛基組成物に対して、5キロ電子ボルトに加速された電子線を照射し、この励起によって生じた光を市販の一般的な分光器によって分光し、市販の一般的な光検出器であるCCD検出器によって検出し、その発光スペクトルを記録した。その結果を図1に示すようなスペクトルが得られた。太線で示す従来品が2.3電子ボルト(波長約540ナノメーター)に最強値をもつ発光を与えているのに対して、細線で示した本発明による酸化亜鉛基組成物は、アクセプター準位の形成をもたらすアルカリ金属元素とドナー準位の形成をもたらすIII族元素とを含んでおり、約2.0電子ボルト(波長約600ナノメーター)に最強値を持つ発光を示している。この2つのスペクトルは、同一の分光器、光検出器を用いて同様の測定条件で計測した結果であり、少なくとも、その相互比較が可能な実験条件で得られた物である。
【0058】
従来品である青緑色を発する酸化亜鉛蛍光体とのスペクトルの比較から、ドナーとアクセプターを同時添加した酸化亜鉛基組成物がよりブロードな可視発光をあたえ、白色に近いスペクトルとなっている。この発光スペクトル、すなわち、短波長側で460nm以下から、長波長側で750nm以上にわたる連続でバンド幅の広い発光スペクトルを元に算出された、CIE1964表色系にある光源色の表示は、x値、y値ともに、4.6であり、同表色系において黄色と分類される発光であった。
【0059】
実施例2
一般的に市販されている99.999%純度の酸化亜鉛粉末試薬に対して、亜鉛に対する原子比にして、ドナー準位形成をもたらすアルミニウムが1万分の1、アクセプター準位の形成をもたらすリチウムが1万分の1の濃度となるよう混合し、その混合物を錠剤形に成型した後に市販の酸素ガスボンベから供給した酸素雰囲気中で1×103℃において6時間熱処理し、反応させて酸化亜鉛基組成物を製造した。
【0060】
この際、リチウム、アルミニウムの原料には、それぞれ、一般的に販売されている炭酸リチウム、酸化アルミニウムを用い、規定量の当該粉末を規定量の酸化亜鉛粉末に加えて混合することによって混合物を得た。混合は、瑪瑙性の容器と攪拌棒を用いて行い、混合に際しては、エタノールを分散媒としてもちい、このエタノールを室温で蒸発させることで乾燥させた。
【0061】
上記の方法で得られた酸化亜鉛基組成物に対して、約355ナノメーター、あるいは、約245ナノメーターの波長を持つ光を照射した際に当該組成物が発する光を目視で観察したところ、先の実施例1と同様に黄色みを帯びた発光が確認された。
【0062】
実施例3
実施例1と同様の方法で製造された反応物を市販の一般的なアルゴンガスを利用してアルゴンガス中で1000℃において6時間の熱処理を施した。これにより、当該組成物の発光強度が実施例1で得られたものよりも低下した。図2にアルゴン雰囲気で処理された製造物と酸素雰囲気で処理された製造物の5キロ電子ボルトに加速された電子線の照射下での発光スペクトルを示す。何れも、同一の装置を用い、同一の測定条件で得られたスペクトルであり、その相互比較は可能である。強度が高い方が酸素ガス中で加熱して製造された物であり、強度の低い方がアルゴンガス中で加熱して製造された物である。
【0063】
両者ともに、本発明の特徴である、ドナー準位の形成をもたらすIII族元素とアクセプター準位の形成をもたらすアルカリ金属元素が添加されている。何れも、約2.0電子ボルト(波長約600ナノメーター)に最強値を持つ発光を示している。この比較からアルゴンガスを用いた熱処理に比べ、酸素雰囲気での熱処理が発光効率の向上に対して好ましいことが示された。また、酸素ガス中熱処理品とアルゴンガス中熱処理品について、ホール係数によって電子濃度を測定したところ、酸素ガス中熱処理品では、1立方センチメートル当たり、10の16乗のキャリアー濃度を持ち、アルゴンガス中熱処理品では、10の19乗のキャリアー濃度を持つことが示され、アルゴンガス中熱処理によってキャリアー濃度、すなわち、電気伝導度が向上することが確認できた。
【0064】
比較例 1
一般的に市販されている99.999%純度の酸化亜鉛粉末試薬に対して、亜鉛に対する原子比にして、リチウムが1千分の1の濃度となるよう混合し、その混合粉体を市販の酸素ガスボンベから供給した酸素雰囲気中で8×102℃において3時間の間熱処理し、反応させた。得られた反応物を粉砕し、その粉砕物を金型を用い、1トンの荷重を加えて錠剤形に成型した後に、酸素雰囲気中で1×103℃において6時間熱処理し、焼成して酸化亜鉛基組成物の成型体を製造した。
【0065】
この際、リチウム、アルミニウムの原料は、一般的に販売されている濃度1000ppmの分析標準液を一般的な純水で希釈した溶液の形態として準備し、当該溶液を規定量の酸化亜鉛粉末に加えて混練し、乾燥することによって混合物を得た。混練は、一般のガラス製ビーカーと一般のガラス製攪拌棒によって行った。攪拌後の乾燥は、空気中で混練物を70〜80℃に加熱することで行った。また、8×102℃の熱処理の後の粉砕は、瑪瑙製乳鉢と瑪瑙製乳棒を用いて実施した。
【0066】
上記によって得られた焼成物を市販の一般的なアルゴンガスを炉内に充満させたアルゴン雰囲気において、1000℃で6時間の熱処理を施して焼鈍し、酸化亜鉛基組成物を製造した。
【0067】
上記の方法で得られた酸化亜鉛基組成物に対して、約355ナノメーター、あるいは、約245ナノメーターの波長を持つ光を照射した際に当該組成物が発する光を目視で観察したところ、緑色の発光が確認され、従来型の亜鉛過剰の組成をもつ酸化亜鉛蛍光体の発光と良く類似した発光色であった。
【0068】
上記の酸化亜鉛基組成物に対して、5キロ電子ボルトに加速された電子線を照射し、この励起によって生じた光を市販の一般的な分光器によって分光し、市販の一般的な光検出器であるCCD検出器によって検出し、その発光スペクトルを記録した。
【0069】
その結果、図3に示すように、実施例1によって得られた製造物よりも、従来品である、亜鉛過剰組成の酸化亜鉛蛍光体の発光スペクトルに近いスペクトル形状を示し、実施例1と対応する製造法であるが、アルミニウムを添加せず、リチウムのみを添加した場合には、本発明が目的としている短波長側で460nm以下から、長波長側で750nm以上にわたる連続でバンド幅の広い発光スペクトルを元に算出された、CIE1964表色系にある光源色の表示は、x値、y値ともに、4.6であり、同表色系において黄色と分類される発光を示さず、緑色の成分が強い発光となることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による酸化亜鉛基組成物(実施例1)と従来品である亜鉛過剰組成を有する酸化亜鉛蛍光体の電子線励起下での発光スペクトルの比較図である。
【図2】図2は、本発明による酸化亜鉛基組成物であって、酸素ガス中で製造された物(実施例1)とアルゴンガス中で製造された物(実施例3)の電子線励起による発光スペクトルの比較図である。
【図3】図3は、本発明による酸化亜鉛基組成物(実施例1)、従来品、リチウムのみを添加した酸化亜鉛基組成物(比較例1)の電子線励起下での発光スペクトルの比較図である。
Claims (6)
- 酸化亜鉛中でドナー準位の形成に寄与するIII族元素であるアルミニウム、ガリウム、インジウム のうちの少なくとも1種の固溶成分と、酸化亜鉛中でアクセプター準位形成に寄与するアルカリ金属であるナトリウム、リチウムのうちの少なくとも1種の固溶成分をそれぞれ含むウルツ鉱型結晶構造の酸化亜鉛からなり、少なくとも当該組成物のバンドギャップエネルギーを越えるエネルギーを持つ、粒子線、あるいは、電磁波による励起に対して、短波長側で460nm以下から、長波長側で750nm以上にわたる連続でバンド幅の広い、CIE1964 表色系で x=0.45 から 0.47 、 y=0.45 から 0.47 に対応する黄色みを帯びた色の発光を示すことを特徴する発光材料。
- III族元素がアルミニウム、アルカリ金属がリチウムであり、アルミニウムの濃度が亜鉛の原子数に対して1万分の1から100分の1、リチウムの濃度が亜鉛の原子数に対して1万分の1から100分の1であることを特徴とする請求項1記載の発光材料。
- 酸化亜鉛粉末に対して、ナトリウム、リチウムのうちの少なくとも1種を含む化合物又はナトリウム、リチウムのうちの少なくとも1種の金属と、アルミニウム、ガリウム、インジウム のうちの少なくとも1種を含む化合物又はアルミニウム、ガリウム、インジウム のうちの少なくとも1種の金属を添加、混合した混合物を得、当該混合物中の構成成分を熱処理によって反応させて、アルミニウム、ガリウム、インジウム のうちの少なくとも1種の固溶成分と、ナトリウム、リチウムのうちの少なくとも1種の固溶成分をそれぞれ含むウルツ鉱型結晶構造の酸化亜鉛を形成することを特徴とする請求項1記載の発光材料の製造法。
- 酸化亜鉛粉末に対して、ナトリウム、リチウムのうちの少なくとも1種を含む溶液と、アルミニウム、ガリウム、インジウム のうちの少なくとも1種を含む溶液を加えた後に、乾燥して混合、あるいは、混練して乾燥という処置を加えることによって混合物を得、当該混合物中の構成成分を熱処理によって反応させることを特徴とする請求項1記載の発光材料の製造法。
- 熱処理時に酸素を主成分とするガス中で反応させることを特徴とする請求項3または4に記載の発光材料の製造法。
- 熱処理によって反応させて得られる固溶成分をそれぞれ含むウルツ鉱型結晶構造の酸化亜鉛を、さらに酸素を主成分とする雰囲気中で焼鈍することを特徴とする請求項3または4に記載の発光材料の製造法。
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