JP3849004B2 - 急冷凝固バルクアモルファス合金材料の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、急冷凝固バルク(固体)材料の製造方法に関するものであって、急冷凝固過程を必要とするバルクアモルファス合金の製造や、通常の冷却法では単相状態が得られない合金組成の均一固溶バルク材料の製造に利用できる。
【0002】
【従来の技術】
アモルファス合金は、その磁気特性を利用した磁性材料とか、硬度改善効果を利用した耐磨耗材料に利用されている。また、高強度材料、高靭性材料、高耐食材料としての応用も期待されている。
アモルファス合金の製造方法としては、溶融した合金を急速に冷却して過冷させ、その構造を凍結させてアモルファスとする液体急冷法が最も一般的に利用されている。
【0003】
従来、液体急冷法によるアモルファス合金の製造方法としては、合金等の溶融原料を銅製水冷ロール等の固体冷却媒体で急冷し薄帯を得る方法、スプレー等で微粉化し冷却板あるいは液体の冷却媒体で急冷し粉末を得る方法、液中紡糸により細線を得る方法が一般的であった。従って、得られる、アモルファス合金は薄帯状、粉末状、細線状に限られていた。
【0004】
その理由は、下記の技術上の問題点があったことによる。
▲1▼ 溶融原料を、バルク形状に保ったまま急冷する技術がなかった。
▲2▼ 急冷凝固時、凝固材の内部伝熱律速および凝固に伴う潜熱解放により、表面を急冷してもアモルファス化する領域が限られる。
【0005】
一部実験室規模であるが、高圧ダイキャスト法、すなわち、水冷銅の鋳型に高圧力で溶融試料を押し込み成形し、棒状のアモルファス合金を得る方法、が東北大学で試みられている。しかし、従来、バルク状のアモルファス合金を実用的に得る方法は存在していない。また、薄帯状または粉末状のアモルファス合金を低融点金属等バインダーで固め複合化しても、良い特性は得られないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アモルファス合金等の急冷凝固バルク材料の製造方法を提供し、急冷凝固材料の応用範囲を広げることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の事項をその要旨としている。すなわち、
所定の組成の原料を溶融混合し、バルク状に一次凝固し、該凝固成形体の表面を凝固体よりも高い融点を有する酸化物等の皮膜で被覆し、該被覆凝固成形体を凝固体の融点以上かつ被覆材の融点以下まで昇温し、その後凝固体の融点直上まで降温し、液状冷却媒体で急冷凝固させることを特徴とする急冷凝固バルク材料の製造方法。
【0008】
以下に、本発明を詳細に説明する。
凝固体表面を被覆する方法としては、スパッタリング法とかゾルゲル法等で被覆する方法と、予め原料成分に再加熱時加熱雰囲気と反応し凝固成形体よりも融点の高い反応物が形成されるものを含む場合には、再加熱時の初期に雰囲気を制御して高融点の皮膜を形成させる方法がある。
【0009】
被覆の組成としては、再溶融時凝固形成体と反応しないものであれば限定するものではない。
被覆の厚さは、製造しようとする急冷凝固体の大きさおよび形状により適宜選択できる。再溶融時に形状を確保でき、急冷時に伝熱律速阻害とならない厚さであれば限定するものではない。
【0010】
再加熱時雰囲気と反応させて皮膜を生成させる例としては、原料中にAl等を含み、弱酸化雰囲気でAlを生成する等が挙げられる。再溶融時の雰囲気としては、所定の皮膜が生成された後に凝固体形成体と反応しない雰囲気で加熱する。
【0011】
急冷方法としては、水中へのどぶ漬け冷却法とか水スプレー法等を適宜採用できる。
【0012】
以上のように、本発明急冷凝固法により、バルクアモルファス合金のほか、表面にアモルファスの特性を付与したバルク材とか、通常の鋳込み凝固法等では単相状態が全く得られなかった組成の合金の均一固溶バルク材料を得ることができる。
【0013】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づきさらに説明する。
図1〜図4には、本発明方法を実施するための製造工程の一例を示す。
本発明には、例えば図1に示す試料加熱装置を用いる。試料5を入れるカーボン製坩堝3を耐火物製台7上に置き、カーボン製坩堝3の直下に温度測定用熱電対を設置した。カーボン製坩堝3の寸法は、内径12cm×深さ12mmである。
【0014】
試料に供したLa−Al−Ni系合金は、モル比で、La:Al:Ni=55:25:20になるように、塊状La、板状Al、粉末Niで調製した。試料としては、2g、3g、4g、6gの4種類を用いた。本合金は、空気中で加熱すると激しく酸化するため、坩堝3の外側を透明石英製のカバー2で覆い、アルゴンガス1を上方から導入し、不活性雰囲気中下で高周波加熱炉6により1000℃に加熱溶融した。また、カーボン坩堝3、は試料5との反応を避けるために内壁に窒化硼素4を塗布して使用した。
【0015】
次に、試料の温度を800℃に下げた後、図2に示すように試料成型用銅棒9で押し込んで試料5を成形し、降温した。試料の寸法は、12mmφ×2.6〜8.2mmであった。
【0016】
この成形した試料5をカーボン坩堝から取り出し、図3に示した窒化硼素10を塗布したカーボン製皿11に乗せ、再びアルゴン気流中で高周波加熱した。この際、雰囲気中に微量に混入した酸素により試料表面に薄い酸化被膜12が形成されていた。約20分かけて800℃まで加熱し、試料5が変形しない状態を保ちながら内部の合金だけを完全に溶融した。その後、約10分かけて700℃まで降温し、700℃にて約1分間保持した。
【0017】
次いで、試料5をカーボン製皿11ごと水13に入れて急冷した。図4に示すように、試料5は水中に入れた瞬間に発生する気泡によりカーボン製皿11から浮き上がり、全表面から効率よく冷却された。
【0018】
以上の操作により、試料は変形することなく冷却された。
各試料の断面を光学顕微鏡により観察した。その結果、2g試料(厚さ2.6mm)は、全体がアモルファス化されていた。また3g〜6gの試料(厚さ4.4mm〜8.3mm)は、表面から約1.5mmの厚さまでアモルファス化されていた。
【0019】
【発明の効果】
本発明により、従来得られなかったバルク状(固体状)のアモルファス化された急冷凝固材料が得られた。この材料を使用することにより、急冷凝固材料の応用範囲が格段に広がった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施するための製造工程のうち加熱工程を説明した図である。
【図2】本発明方法を実施するための製造工程のうち成形工程を説明した図である。
【図3】本発明方法を実施するための製造工程のうち再加熱工程を説明した図である。
【図4】本発明方法を実施するための製造工程のうち急冷工程を説明した図である。
【符号の説明】
1 アルゴンガス
2 石英ガラス製カバー
3 カーボン製坩堝
4 窒化硼素
5 試料
6 高周波加熱炉
7 耐火物製台
8 熱電対
9 試料成形用銅棒
10 窒化硼素
11 カーボン製皿
12 酸化皮膜
13 水

Claims (1)

  1. 所定の原料を溶融混合し、バルク状に一次凝固し、該凝固成形体の表面を凝固体よりも高い融点を有する、再溶融時に形状を確保でき、急冷時に伝熱律速阻害とならない厚さであって、再溶融時凝固形成体と反応しない組成からなる皮膜で被覆し、該被覆凝固成形体を凝固体の融点以上、被覆材の融点以下の温度まで試料が変形しない状態を保ちながら内部の合金だけを完全に溶融する温度、時間で加熱し、液状冷却媒体で急冷凝固させることを特徴とする、急冷凝固バルクアモルファス合金材料の製造方法。
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