JP3846404B2 - オイル劣化検出装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オイル劣化検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
オイル劣化検出装置としては、例えばオイル劣化検出のためのpH方式として、いわゆる2極方式のものがある。この2極方式のオイル劣化検出装置では、pH応答電極と非応答電極の電位差を測定する。これら電極表面での電位発生の反応速度は油中での反応のためそれほど大きくない。なお、水溶液中での反応では反応速度は速いが、オイル劣化検出のための油中では、水溶液に比べて電極表面での電位発生の速度が低い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来構成のオイル劣化検出装置では、電位測定側のリークによる電位維持能力が低い。すなわち、2極からなるオイル劣化検出部は、そのオイル劣化検出部に生じるオイル劣化信号である電位差を測定する測定回路のリークに対して、電位維持能力が低い。リークがある場合、それを補うだけの電位発生の反応速度がなく、電位が低下してしまう。
【0004】
特に測定回路としてのアンプ側の電源をOFFにするときには、オペアンプの内部抵抗が著しく低下して、オペアンプ内部のリークが大きくなる。その結果、電極の表面電位の低下を招く。また、電源をONした後、すぐに測定することができないという問題がある(図7参照)。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、電源OFFしたとしても、オイル劣化検出部のオイル劣化信号の強度低下の防止が図れるオイル劣化検出装置を提供することにある。
【0006】
また、別の目的は、電源OFF時におけるオイル劣化検出部のオイル劣化信号の強度低下を防止するともに、電源ON直後の応答性の向上が図れるオイル劣化検出装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1によると、油中に浸漬したオイル劣化検出部と、このオイル劣化検出部に接続され、オイル劣化検出部のオイル劣化信号を測定する測定回路を備えたオイル劣化検出装置において、少なくともその測定回路に給電する電源の給電停止をするとき、そのオイル劣化検出部からその測定回路の間の回路を遮断する回路を備えている。
【0008】
これにより、電源OFF時、オイル劣化検出部と、そのオイル劣化検出部のオイル劣化検出信号が入力される測定回路の接続を切断し、オープン状態にすることが可能である。したがって、例えば電源OFF時に測定回路側のリークがある場合、オイル劣化検出部に発生するオイル劣化検出信号の無駄リークを防止し、結果として、その信号強度の減衰防止が図れる。
【0009】
例えば、オイル劣化検出部は二つの電極を備え、当該二極のそれぞれに発生する電極電位の電位差をオイル劣化検出信号とする場合、発生電位の低下を防止することが可能である。
【0010】
本発明の請求項2によると、オイル劣化検出部は、二つの電極の電位差に基いたオイル劣化信号を検出する。
【0011】
オイル劣化検出部は、二つの電極にそれぞれ発生する電極電位の電位差に基いて、オイル劣化検出信号を検出可能である。例えば、一旦電源OFFした後、再度電源ONするとき、電源OFF後もその信号強度の低下防止が図られているので、電源ON直後から測定可能な信号レベルまで回復する時間の短縮化が図れる。
【0012】
本発明の請求項3によると、二つの電極は、その油中の酸性、塩基性度に係わらず電極電位が略一定の基準電極と、その油中の酸性、塩基性度に感応して電極電位が変化する作用電極を備えている。
【0013】
基準電極、作用電極に発生する電極電位の電位差をオイル劣化検出信号とする場合、電極表面での電位発生の反応速度は、略絶縁液である油中は、水溶液中に比べて遅い。リークがある場合、電極電位が低下し易い。また、電源ON後測定可能に回復する時間を要する。
【0014】
これに対して、電源OFF時は測定回路へのリークによるオイル劣化検出部つまりオイル劣化センサのセンサ出力の低下を防ぐとともに、電源ON直後の応答性の改善が図れる。
【0015】
本発明の請求項4によると、その遮断する回路は、半導体スイッチング素子を備えている。
【0016】
これにより、オイル劣化検出部と測定回路間の接続を遮断する回路としては、半導体スイッチング素子を用いることができる。
【0017】
本発明の請求項5によると、その遮断する回路は、固定接点と、この固定接点に接離可能な可動接点を備えている。
【0018】
これにより、オイル劣化検出部と測定回路間の接続を遮断する回路としては、半導体スイッチング素子による電気的なスイッチに代えて、固定接点と、この固定接点に接離可能な可動接点による物理的なスイッチを用いることができる。
【0019】
本発明の請求項6によると、測定回路は、オペアンプからなる。これにより、測定回路として、例えば電源OFFすると内部抵抗が低下するオペアンプを用いることができる。
【0020】
本発明の請求項7によると、測定回路は、電源からの給電が停止しているとき、給電時に比べて内部インピーダンスが低下する。
【0021】
油中に浸漬されたオイル劣化検出部の内部抵抗、例えば二つの電極間の電極間抵抗に比べて、電源ON中は測定回路の内部インピーダンスを、検出精度の観点から、一般に高く設定する必要がある。
【0022】
これに対して、電源OFF時に内部インピーダンスが低下しても、電源OFF中は測定するわけではないので、電源OFF時におけるオイル劣化検出装置の機能を阻害することはない。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のオイル劣化検出装置を、具体化した実施形態を図面に従って説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態のオイル劣化検出装置の電気的構成を表す模式的回路図である。図2は、本実施形態のオイル劣化検出装置に係わるオイル劣化検出部の電極の一実施例を示す断面図である。図3は、図2の電極を示す分解斜視図である。図4は、本実施形態のオイル劣化検出装置の概略構成を示す説明図であって、図4(a)は断面図、図4(b)はカバーの内部から図4(a)のB方向にみた矢視図である。
【0025】
オイル劣化検出装置1は、図4に示すように、例えば車両のオイルパンに取り付けられ、油圧制御用および潤滑用の少なくともいずれか一方に用いられるオイルの劣化程度を検出する。このオイル劣化検出装置1は、オイル劣化検出部(以下、オイル劣化センサ)10と、このオイル劣化検出部10のオイル劣化信号を測定する測定回路50と含んで構成されている。
【0026】
なお、測定回路50には、測定回路50で測定された測定値に基いてオイル品質を評価する評価回路60が接続されている。測定回路50は、オイル劣化センサ10からの入力信号に基いて測定を行なう測定手段である。また、評価回路60は、オイル劣化センサ10から入力信号を測定回路50の増幅等によって変換された測定値に基いてオイル劣化について評価する評価手段である。また、評価回路60は、例えばその測定値と閾値を比較して、その測定値が閾値を超えたときに車両の運転者等の乗員に報知する報知手段(図示せず)を備えている。この報知手段は、点灯して乗員に知らせる警報ランプ、警報音を鳴らして乗員に知らせる警報ブザー等いずれの周知の報知手段であってもよい。なお、この報知手段は、図示しないメータ等の車両表示盤またはナビゲーション装置の表示部等に設けられている。
【0027】
オイル劣化センサ10は、二つの電極からなり、第1の電極20および第2の電極30を備えている。この二つの電極20、30は、二つの電極にそれぞれ発生する電位に基いてオイル劣化信号を検出するものであればいずれでもよい。例えばオイル中に浸漬して二つの異なる金属材料からなる電極間に電位差を発生するいわゆる電池構造であっても、オイル中に浸漬して二つの電極間に静電容量を蓄えられるいわゆるコンデンサ構造であってもよい。
【0028】
なお、本実施形態で説明する劣化オイルセンサ(詳しくは、二つの電極20、30)は、オイル中に浸漬された電池構造として電極間20、30に電位差が発生するものとして説明する。
【0029】
二つの電極20、30は、一方の電極はオイル中の酸性、塩基性度に係わらず電位が略一定の金属からなる電極(以下、基準電極と呼ぶ)から構成され、他方の電極はオイル中の酸性、塩基性度に感応して電位が変化する金属からなる電極(以下、作用電極と呼ぶ)から構成されている。これら作用電極は、アルミナ、シリコン(Si)、ステンレス(SUS)、コバルト(Co)、タングステン(W)等の金属およびそれら金属の合金が用いられる。例えば基準電極をコバルトもしくはコバルト合金とし、これと組合せる作用電極をタングステンもしくはタングステン合金としてもよい。
【0030】
なお、以下本実施形態では、第1の電極20は、基準電極としてコバルト(Co)の金属材料を用い、オイル中のpH値に係わらず略一定の電位が発生するもの、第2の電極30は、作用電極としてタングステン(W)の金属材料を用い、オイル中のpH値により電位が変化するものとして説明する。
【0031】
第1の電極20および第2の電極30は、図2、図3、および図4(b)に示すように、略円筒状に形成されており、絶縁樹脂製の支持部材11に接着剤等で取付けられている(図4(a)参照)。第1の電極20および第2の電極30はオイルパン等のオイル中に浸漬されている(図4(a)参照)。第2の電極30は、第1の電極20の外側に第1の電極30と略同軸上に配置されている。支持部材11には、図4(a)に示すように、これら電極20、30と電気的に接続しているターミナル12が埋設されている。カバー15は支持部材11と結合し、第1の電極20および第2の電極30を覆っている。カバー15には、オイルがカバー15の内外を流通するように連通孔15aが設けられている。
【0032】
図2および図3に示すように、第1の電極20は、第2の電極30に向けて径方向外側に突出するとともに軸方向に延びる突起部としての第1のフィン21を有している。周方向に隣接する第1のフィン21と第1のフィン21の間には、第1の電極20の内側と外側とを連通しオイルが流通可能な連通孔25が形成されている。第2の電極30は、第1の電極20に向けて径方向内側に突出するとともに軸方向に延びる突起部としての第1のフィン31を有している。周方向に隣接する第2のフィン31と第2のフィン31の間には、第2の電極30の内側と外側とを連通しオイルが流通可能な連通孔35が形成されている。連通孔25および連通孔35を通りオイルが各電極の内外を流通するので、オイルが両電極の周囲に停滞しない。したがって、オイル全体の劣化状態を高精度に検出することが可能である。
【0033】
図2に示すように第1の電極20および第2の電極30を組付けた状態において、第1のフィン21の周方向両側に第2のフィン31が位置し、第2のフィン31の周方向両側に第1のフィン21が位置している。つまり、第1の電極20と第2の電極30に形成されるフィンの数は同じであり、第1のフィン21は2個の第2のフィン31と、第2のフィン31は2個の第1のフィン21と向き合っている。さらに、第1の電極20の外周面と第2の電極30の内周面とが径方向に向き合っている。したがって、第1の電極20と第2の電極30とが向き合う対向面積の拡大が図れる。これら電極20、30の対向面積が大きくなると、電極間抵抗R0(図1参照)を小さくなるので、オイル劣化程度を高精度、つまりオイル品質を高精度に検出することが可能となる。
【0034】
なお、本実施形態の互いに向き合う第1のフィン21および第2のフィン31は、図2および図3に示すように、板状の母材から切り曲げ加工により形成されている。各フィン21、31が形成された母材を丸めて略円筒状に形成し、両坦部同士を溶接等により接合して各電極が形成されている。切り上げる前の元の筒壁位置に対するそれぞれのフィン21、31の曲げ角度θ21、θ31は、図2に示す略直角(90°)に限らず、90°未満に形成されていてよい。なお、曲げ角θ21、θ31は略同じであることが好ましい。フィン21、31を含む電極同士の間隔δを、隣接する電極の間で略同じに形成することが可能であるので、電極間抵抗R0の安定化が図れる。さらに、各フィン21、31は90°未満の曲げ角度で形成されているので、径方向に向き合って配置されている第1の電極20および第2の電極30の各フィン21、31が過度に近づき過ぎるようになることはない。したがって、フィンを含む第1の電極20と第2の電極30の間隔を周方向のほぼ一定に保持することが容易となる。さらに、略直角(90°)比べて90°未満に小さくすることで曲げ角度θ21、θ31を抑えることが可能であるので、曲げられた角部に亀裂が生じにくくすることが可能である。
【0035】
なお、母材の一部を捨てることなく切り曲げ加工により各フィン21、31を形成しているので、第1の電極20および第2の電極30同士の対向面積の減少を防止することが可能である。
【0036】
なお、本実施形態では、基準電極と作用電極の組合せを、略円筒状に形成された第1の電極20と第2の電極30の二重環構造で説明したが、この二重環の基準電極20と作用電極30の内側、または外側に別の二重環構造の基準電極と作用電極をさらに配置した四重環構造であってもよい。これにより、両電極20、30同士の対向面積の拡大がさらに図れる。なお、二重環の基準電極20と作用電極30の内側に別の二重環構造の基準電極と作用電極をさらに配置した四重環構造の場合、体格を大きくすることなく、両電極20、30同士の対向面積の拡大をさらに図ることが可能である。
【0037】
ここで、オイル劣化検出装置1の基本原理を、従来構成の電気的構成を示す図6に従って説明する。図6に示すように、オイル劣化センサ10の基準電極20と作用電極30との電極間電位をE0、これら両電極20、30の電極間抵抗をR0、測定回路50の内部インピーダンスすなわち入力インピーダンスをRin、測定回路50での計測電位をEで表すと、次式で表される。
【0038】
【数式1】
E/E0=Rin/(R0+Rin)
【0039】
【数式2】
R0=ρ×L/S
なお、ρはオイルの体積抵抗率、Lは電極間隔、Sは電極面積をそれぞれ表す。
【0040】
上記式から明らかなように、基準電極20と作用電極30は測定されるオイル中に浸漬され、その電極20、30間にオイルが満たされているので、電極間抵抗R0は、この電極間距離Lと電極面積Sとオイルの体積抵抗率ρの関数である。基本的にオイルの体積抵抗率ρは高いため、電極間抵抗R0は例えば数MΩ程度の高い抵抗値となる。そのため、測定回路50の入力インピーダンスRinはさらにこの電極間抵抗R0より高くすることにより、検出精度を高める必要がある(R0<Rin)。
【0041】
この入力インピーダンスRinは測定回路50に給電する電源がON状態では比較的高く保持されている。電源OFFされると、測定回路50は電源OFF状態では入力インピーダンスRinが低下する。測定回路50の入力信号(本実施例では、オイル劣化センサ10の電極間電位に対する増幅率等が高い測定回路50の場合では、著しく低下する。なお、この電源OFF状態ではオイル劣化センサの入力信号を入力回路としての測定回路50に入力して測定するわけではないので、このとき入力インピーダンスRinが比較的低くても、オイル劣化検出装置1の機能上、問題はないと一般に考えられていた。
【0042】
しかしながら、本発明の発明者は、実験(図7参照)により以下の問題を把握した。すなわち、この電源OFF状態、特に電源OFF直後において、入力インピーダンスRinが低下し、測定回路50内部のリークがある場合、オイル劣化センサ10の基準電極20と作用電極30の電位が変化し、その結果、両電極20、30間の電位差E0は低下してしまう。次に電源ON時、特に電源直後において、その低下した電極間電位E0はその電極20、30の表面における化学反応により電荷が蓄えられていく。オイル劣化センサ10をオイル中で浸漬する場合は、水溶液中と異なり、オイル中の電極20、30における電極金属の溶解反応、つまり電極20、30表面での電位発生の速度が遅いため、一旦オイル劣化センサ10の両電極20、30間の電位が変化すると、電位の回復(詳しくは、測定可能な電極間電位E0まで電位を上昇させる)には、時間を要することを明らかになった(図7参照)。なお、図7は横軸を経過時間、縦軸をオイル劣化センサ10の入力信号E0に基いて測定回路50で測定した計測値(センサ出力)を表す。
【0043】
これに対して、本発明のオイル劣化装置1は、以下の特徴を有する。図1において、従来の電気的構成を示す図6に対して、オイル劣化センサ10と測定回路50の間の回路に、回路を遮断、導通する切換え手段70を設ける。さらに、この切換え手段70は、測定回路に給電する電源Vbの給電停止をするとき、オイル劣化センサ10と測定回路50の間の回路を遮断する。すなわち電源OFF時にはオイル劣化センサ10と測定回路50が接続する回路を、切換え手段70によって遮断することで、開回路とし、オープン状態とする。
【0044】
これにより、電源OFF時、オイル劣化センサ10とそのオイル劣化センサ10の入力信号である電極間電位E0が入力される測定回路50の接続を切断し、オープン状態にすることができる。したがって、電源OFF時に測定回路50側へのリークがある場合、オイル劣化センサ10の電極20、30間に発生する電位差E0、つまりオイル劣化検出信号の無駄リークの防止が図れる。その結果、オイル劣化センサのオイル劣化検出信号強度、すなわち電位差の減衰防止が図れる。
【0045】
なお、本実施形態では、図1に示すように、測定回路50として、オペアンプを用いる。オペアンプは、電源Vbに接続されるとともに、アース接地されている。オイル劣化検出信号である電極間電位E0、つまり入力信号がオペアンプ50の非反転入力(+)に入力されると、それがインピーダンス変換される。これによりオペアンプ50に出力電圧である計測電圧(センサ出力)が現れ、この出力電圧が、評価手段を構成する評価回路60へ、測定回路50の出力信号として出力される。なお、反転入力(−)には図子しない帰還抵抗等により計測電圧に応じた信号が入力され、所定の増幅比率等によって、オイル劣化検出信号を変換する。そのため、オペアンプ50へ給電する電源VbをOFFすると、内部インピーダンスすなわち入力インピーダンスRinが、電源ON時に較べて低下する。測定回路50としてオペアンプを用いる場合でも、切換え手段70によって電源OFF時にはオペアンプ50とオイル劣化センサ10の回路をオープン状態にするので、電源OFFにより入力インピーダンスRinの低下に伴って、オイル劣化センサ10のオイル劣化検出信号である電位E0がオペアンプ50へリークすることを防止できる。
【0046】
さらになお、測定回路として用いるオペアンプ50に特別な改良、例えば電源OFFしても内部インピーダンスRinの低下防止を図る機能、あるいは手段を加える必要がないので、オイル劣化検出装置1として安価に提供することが可能である。
【0047】
さらになお、本実施形態では、切換え手段70として、例えば車両の走行状態に対応して連動する必要はなく、電源VbのOFF時に回路遮断し、ON時に回路通電するだけでよいので、固定接点70aと、この固定接点に接離可能な可動接点70bを備えている。切換え手段70として安価に提供することができる。この固定接点70aおよび可動接点70bからなる物理的スイッチとしては、例えば車両のイグニッションスイッチ(図子せず)、あるいはイグニッションスイッチ(図子せず)に連動するリレー回路であてもよい。
【0048】
なお、ここで、切換え手段70は、オイル劣化センサ10から測定回路50の間の回路を遮断する回路を構成する。
【0049】
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用した他の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態においては、第1の実施形態と同じもしくは均等の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0050】
第2の実施形態では、切換え手段70として、物理的なスイッチである固定接点70aと可動接点70bからなる構成に代えて、図5に示すように、電気的なスイッチである半導体スイッチング素子170とする。図5は、本実施形態のオイル劣化検出装置の電気的構成を表す模式的回路図である。図5に示すように、オイル劣化センサ10とオペアンプ50の間の回路に、FET等の半導体スイッチング素子(以下、トランジスタと呼ぶ)170を接続する。詳しくは、トランジスタ170のドレインDとソースS間がオイル劣化センサ10とオペアンプ50の間の回路に接続している。トランジスタ170のゲートGは、電源Vbに接続さている。電源VbがON時には、ゲートGに電圧が加わり、ドレインD・ソースS間が接続される。電源VbがOFF時には、ゲートGに電圧が加わらなくなるため、ドレインD・ソースS間が遮断される。このような構成にしても、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0051】
なお、トランジスタ170は電気的スイッチであるので、回路の遮断、導通をする動作を、電源のON、OFFに素早く対応することが可能である
以上説明した実施形態において、オイル劣化センサは、二つの電極の電位差に基いて、オイル劣化検出信号を検出するものであれば、基準電極20と作用電極30間にそれぞれ発生する電位差E0を利用した電池構造に限らず、コンデンサ構造等の他の構造、あるいは電源OFF時の測定回路50側へオイル劣化検出信号がリークの恐れがある構造等いずれの構造であってもよい。これにより、一旦電源VbOFFした後、再度電源ONするとき、電源OFF後もそのオイル劣化検出信号の強度の低下防止が図られるので、電源ON直後から測定可能な信号レベルまで回復する時間の短縮化が図れる。
【0052】
本実施形態で説明した基準電極20、作用電極30に発生する電極電位の電位差E0をオイル劣化検出信号とする場合、電極20、30の表面での電位発生の反応速度は、略絶縁液であるオイル中は、水溶液中に比べて遅い。この場合、オイル劣化検出信号を入力信号として入力する測定回路50等にリークがある場合、電極電位が低下し易く、また電源ON後測定可能に回復する時間を要する。これに対して、電源OFF時には測定回路50へのリークによるオイル劣化センサの電位差E0の低下を防ぐとともに、電源ON直後の応答性の改善が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のオイル劣化検出装置の電気的構成を表す模式的回路図である。
【図2】第1の実施形態のオイル劣化検出装置に係わるオイル劣化検出部の電極の一実施例を示す断面図である。
【図3】図2の電極を示す分解斜視図である。
【図4】第1の実施形態のオイル劣化検出装置の概略構成を示す説明図であって、図4(a)は断面図、図4(b)はカバーの内部から図4(a)のB方向にみた矢視図である。
【図5】第2の実施形態のオイル劣化検出装置の電気的構成を表す模式的回路図である。
【図6】従来のオイル劣化検出装置の電気的構成を表す模式的回路図である。
【図7】従来のオイル劣化検出装置の電源OFF後の応答性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 オイル劣化検出装置
10 オイル劣化センサ(オイル劣化検出部)
20 基準電極(第1の電極)
30 作用電極(第2の電極)
50 オペアンプ(測定回路)
60 評価回路
70 切換え手段
70a、70b 固定接点、可動接点
170 トランシスタ(半導体スイッチング素子)
R0 電極間抵抗
Rin 入力インピーダンス(内部インピーダンス)
E0 (電極間に発生する)電位差(電極間電位)
E 測定電圧(出力電圧、計測電圧)
Vb 電源
【発明の属する技術分野】
本発明は、オイル劣化検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
オイル劣化検出装置としては、例えばオイル劣化検出のためのpH方式として、いわゆる2極方式のものがある。この2極方式のオイル劣化検出装置では、pH応答電極と非応答電極の電位差を測定する。これら電極表面での電位発生の反応速度は油中での反応のためそれほど大きくない。なお、水溶液中での反応では反応速度は速いが、オイル劣化検出のための油中では、水溶液に比べて電極表面での電位発生の速度が低い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来構成のオイル劣化検出装置では、電位測定側のリークによる電位維持能力が低い。すなわち、2極からなるオイル劣化検出部は、そのオイル劣化検出部に生じるオイル劣化信号である電位差を測定する測定回路のリークに対して、電位維持能力が低い。リークがある場合、それを補うだけの電位発生の反応速度がなく、電位が低下してしまう。
【0004】
特に測定回路としてのアンプ側の電源をOFFにするときには、オペアンプの内部抵抗が著しく低下して、オペアンプ内部のリークが大きくなる。その結果、電極の表面電位の低下を招く。また、電源をONした後、すぐに測定することができないという問題がある(図7参照)。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、電源OFFしたとしても、オイル劣化検出部のオイル劣化信号の強度低下の防止が図れるオイル劣化検出装置を提供することにある。
【0006】
また、別の目的は、電源OFF時におけるオイル劣化検出部のオイル劣化信号の強度低下を防止するともに、電源ON直後の応答性の向上が図れるオイル劣化検出装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1によると、油中に浸漬したオイル劣化検出部と、このオイル劣化検出部に接続され、オイル劣化検出部のオイル劣化信号を測定する測定回路を備えたオイル劣化検出装置において、少なくともその測定回路に給電する電源の給電停止をするとき、そのオイル劣化検出部からその測定回路の間の回路を遮断する回路を備えている。
【0008】
これにより、電源OFF時、オイル劣化検出部と、そのオイル劣化検出部のオイル劣化検出信号が入力される測定回路の接続を切断し、オープン状態にすることが可能である。したがって、例えば電源OFF時に測定回路側のリークがある場合、オイル劣化検出部に発生するオイル劣化検出信号の無駄リークを防止し、結果として、その信号強度の減衰防止が図れる。
【0009】
例えば、オイル劣化検出部は二つの電極を備え、当該二極のそれぞれに発生する電極電位の電位差をオイル劣化検出信号とする場合、発生電位の低下を防止することが可能である。
【0010】
本発明の請求項2によると、オイル劣化検出部は、二つの電極の電位差に基いたオイル劣化信号を検出する。
【0011】
オイル劣化検出部は、二つの電極にそれぞれ発生する電極電位の電位差に基いて、オイル劣化検出信号を検出可能である。例えば、一旦電源OFFした後、再度電源ONするとき、電源OFF後もその信号強度の低下防止が図られているので、電源ON直後から測定可能な信号レベルまで回復する時間の短縮化が図れる。
【0012】
本発明の請求項3によると、二つの電極は、その油中の酸性、塩基性度に係わらず電極電位が略一定の基準電極と、その油中の酸性、塩基性度に感応して電極電位が変化する作用電極を備えている。
【0013】
基準電極、作用電極に発生する電極電位の電位差をオイル劣化検出信号とする場合、電極表面での電位発生の反応速度は、略絶縁液である油中は、水溶液中に比べて遅い。リークがある場合、電極電位が低下し易い。また、電源ON後測定可能に回復する時間を要する。
【0014】
これに対して、電源OFF時は測定回路へのリークによるオイル劣化検出部つまりオイル劣化センサのセンサ出力の低下を防ぐとともに、電源ON直後の応答性の改善が図れる。
【0015】
本発明の請求項4によると、その遮断する回路は、半導体スイッチング素子を備えている。
【0016】
これにより、オイル劣化検出部と測定回路間の接続を遮断する回路としては、半導体スイッチング素子を用いることができる。
【0017】
本発明の請求項5によると、その遮断する回路は、固定接点と、この固定接点に接離可能な可動接点を備えている。
【0018】
これにより、オイル劣化検出部と測定回路間の接続を遮断する回路としては、半導体スイッチング素子による電気的なスイッチに代えて、固定接点と、この固定接点に接離可能な可動接点による物理的なスイッチを用いることができる。
【0019】
本発明の請求項6によると、測定回路は、オペアンプからなる。これにより、測定回路として、例えば電源OFFすると内部抵抗が低下するオペアンプを用いることができる。
【0020】
本発明の請求項7によると、測定回路は、電源からの給電が停止しているとき、給電時に比べて内部インピーダンスが低下する。
【0021】
油中に浸漬されたオイル劣化検出部の内部抵抗、例えば二つの電極間の電極間抵抗に比べて、電源ON中は測定回路の内部インピーダンスを、検出精度の観点から、一般に高く設定する必要がある。
【0022】
これに対して、電源OFF時に内部インピーダンスが低下しても、電源OFF中は測定するわけではないので、電源OFF時におけるオイル劣化検出装置の機能を阻害することはない。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のオイル劣化検出装置を、具体化した実施形態を図面に従って説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態のオイル劣化検出装置の電気的構成を表す模式的回路図である。図2は、本実施形態のオイル劣化検出装置に係わるオイル劣化検出部の電極の一実施例を示す断面図である。図3は、図2の電極を示す分解斜視図である。図4は、本実施形態のオイル劣化検出装置の概略構成を示す説明図であって、図4(a)は断面図、図4(b)はカバーの内部から図4(a)のB方向にみた矢視図である。
【0025】
オイル劣化検出装置1は、図4に示すように、例えば車両のオイルパンに取り付けられ、油圧制御用および潤滑用の少なくともいずれか一方に用いられるオイルの劣化程度を検出する。このオイル劣化検出装置1は、オイル劣化検出部(以下、オイル劣化センサ)10と、このオイル劣化検出部10のオイル劣化信号を測定する測定回路50と含んで構成されている。
【0026】
なお、測定回路50には、測定回路50で測定された測定値に基いてオイル品質を評価する評価回路60が接続されている。測定回路50は、オイル劣化センサ10からの入力信号に基いて測定を行なう測定手段である。また、評価回路60は、オイル劣化センサ10から入力信号を測定回路50の増幅等によって変換された測定値に基いてオイル劣化について評価する評価手段である。また、評価回路60は、例えばその測定値と閾値を比較して、その測定値が閾値を超えたときに車両の運転者等の乗員に報知する報知手段(図示せず)を備えている。この報知手段は、点灯して乗員に知らせる警報ランプ、警報音を鳴らして乗員に知らせる警報ブザー等いずれの周知の報知手段であってもよい。なお、この報知手段は、図示しないメータ等の車両表示盤またはナビゲーション装置の表示部等に設けられている。
【0027】
オイル劣化センサ10は、二つの電極からなり、第1の電極20および第2の電極30を備えている。この二つの電極20、30は、二つの電極にそれぞれ発生する電位に基いてオイル劣化信号を検出するものであればいずれでもよい。例えばオイル中に浸漬して二つの異なる金属材料からなる電極間に電位差を発生するいわゆる電池構造であっても、オイル中に浸漬して二つの電極間に静電容量を蓄えられるいわゆるコンデンサ構造であってもよい。
【0028】
なお、本実施形態で説明する劣化オイルセンサ(詳しくは、二つの電極20、30)は、オイル中に浸漬された電池構造として電極間20、30に電位差が発生するものとして説明する。
【0029】
二つの電極20、30は、一方の電極はオイル中の酸性、塩基性度に係わらず電位が略一定の金属からなる電極(以下、基準電極と呼ぶ)から構成され、他方の電極はオイル中の酸性、塩基性度に感応して電位が変化する金属からなる電極(以下、作用電極と呼ぶ)から構成されている。これら作用電極は、アルミナ、シリコン(Si)、ステンレス(SUS)、コバルト(Co)、タングステン(W)等の金属およびそれら金属の合金が用いられる。例えば基準電極をコバルトもしくはコバルト合金とし、これと組合せる作用電極をタングステンもしくはタングステン合金としてもよい。
【0030】
なお、以下本実施形態では、第1の電極20は、基準電極としてコバルト(Co)の金属材料を用い、オイル中のpH値に係わらず略一定の電位が発生するもの、第2の電極30は、作用電極としてタングステン(W)の金属材料を用い、オイル中のpH値により電位が変化するものとして説明する。
【0031】
第1の電極20および第2の電極30は、図2、図3、および図4(b)に示すように、略円筒状に形成されており、絶縁樹脂製の支持部材11に接着剤等で取付けられている(図4(a)参照)。第1の電極20および第2の電極30はオイルパン等のオイル中に浸漬されている(図4(a)参照)。第2の電極30は、第1の電極20の外側に第1の電極30と略同軸上に配置されている。支持部材11には、図4(a)に示すように、これら電極20、30と電気的に接続しているターミナル12が埋設されている。カバー15は支持部材11と結合し、第1の電極20および第2の電極30を覆っている。カバー15には、オイルがカバー15の内外を流通するように連通孔15aが設けられている。
【0032】
図2および図3に示すように、第1の電極20は、第2の電極30に向けて径方向外側に突出するとともに軸方向に延びる突起部としての第1のフィン21を有している。周方向に隣接する第1のフィン21と第1のフィン21の間には、第1の電極20の内側と外側とを連通しオイルが流通可能な連通孔25が形成されている。第2の電極30は、第1の電極20に向けて径方向内側に突出するとともに軸方向に延びる突起部としての第1のフィン31を有している。周方向に隣接する第2のフィン31と第2のフィン31の間には、第2の電極30の内側と外側とを連通しオイルが流通可能な連通孔35が形成されている。連通孔25および連通孔35を通りオイルが各電極の内外を流通するので、オイルが両電極の周囲に停滞しない。したがって、オイル全体の劣化状態を高精度に検出することが可能である。
【0033】
図2に示すように第1の電極20および第2の電極30を組付けた状態において、第1のフィン21の周方向両側に第2のフィン31が位置し、第2のフィン31の周方向両側に第1のフィン21が位置している。つまり、第1の電極20と第2の電極30に形成されるフィンの数は同じであり、第1のフィン21は2個の第2のフィン31と、第2のフィン31は2個の第1のフィン21と向き合っている。さらに、第1の電極20の外周面と第2の電極30の内周面とが径方向に向き合っている。したがって、第1の電極20と第2の電極30とが向き合う対向面積の拡大が図れる。これら電極20、30の対向面積が大きくなると、電極間抵抗R0(図1参照)を小さくなるので、オイル劣化程度を高精度、つまりオイル品質を高精度に検出することが可能となる。
【0034】
なお、本実施形態の互いに向き合う第1のフィン21および第2のフィン31は、図2および図3に示すように、板状の母材から切り曲げ加工により形成されている。各フィン21、31が形成された母材を丸めて略円筒状に形成し、両坦部同士を溶接等により接合して各電極が形成されている。切り上げる前の元の筒壁位置に対するそれぞれのフィン21、31の曲げ角度θ21、θ31は、図2に示す略直角(90°)に限らず、90°未満に形成されていてよい。なお、曲げ角θ21、θ31は略同じであることが好ましい。フィン21、31を含む電極同士の間隔δを、隣接する電極の間で略同じに形成することが可能であるので、電極間抵抗R0の安定化が図れる。さらに、各フィン21、31は90°未満の曲げ角度で形成されているので、径方向に向き合って配置されている第1の電極20および第2の電極30の各フィン21、31が過度に近づき過ぎるようになることはない。したがって、フィンを含む第1の電極20と第2の電極30の間隔を周方向のほぼ一定に保持することが容易となる。さらに、略直角(90°)比べて90°未満に小さくすることで曲げ角度θ21、θ31を抑えることが可能であるので、曲げられた角部に亀裂が生じにくくすることが可能である。
【0035】
なお、母材の一部を捨てることなく切り曲げ加工により各フィン21、31を形成しているので、第1の電極20および第2の電極30同士の対向面積の減少を防止することが可能である。
【0036】
なお、本実施形態では、基準電極と作用電極の組合せを、略円筒状に形成された第1の電極20と第2の電極30の二重環構造で説明したが、この二重環の基準電極20と作用電極30の内側、または外側に別の二重環構造の基準電極と作用電極をさらに配置した四重環構造であってもよい。これにより、両電極20、30同士の対向面積の拡大がさらに図れる。なお、二重環の基準電極20と作用電極30の内側に別の二重環構造の基準電極と作用電極をさらに配置した四重環構造の場合、体格を大きくすることなく、両電極20、30同士の対向面積の拡大をさらに図ることが可能である。
【0037】
ここで、オイル劣化検出装置1の基本原理を、従来構成の電気的構成を示す図6に従って説明する。図6に示すように、オイル劣化センサ10の基準電極20と作用電極30との電極間電位をE0、これら両電極20、30の電極間抵抗をR0、測定回路50の内部インピーダンスすなわち入力インピーダンスをRin、測定回路50での計測電位をEで表すと、次式で表される。
【0038】
【数式1】
E/E0=Rin/(R0+Rin)
【0039】
【数式2】
R0=ρ×L/S
なお、ρはオイルの体積抵抗率、Lは電極間隔、Sは電極面積をそれぞれ表す。
【0040】
上記式から明らかなように、基準電極20と作用電極30は測定されるオイル中に浸漬され、その電極20、30間にオイルが満たされているので、電極間抵抗R0は、この電極間距離Lと電極面積Sとオイルの体積抵抗率ρの関数である。基本的にオイルの体積抵抗率ρは高いため、電極間抵抗R0は例えば数MΩ程度の高い抵抗値となる。そのため、測定回路50の入力インピーダンスRinはさらにこの電極間抵抗R0より高くすることにより、検出精度を高める必要がある(R0<Rin)。
【0041】
この入力インピーダンスRinは測定回路50に給電する電源がON状態では比較的高く保持されている。電源OFFされると、測定回路50は電源OFF状態では入力インピーダンスRinが低下する。測定回路50の入力信号(本実施例では、オイル劣化センサ10の電極間電位に対する増幅率等が高い測定回路50の場合では、著しく低下する。なお、この電源OFF状態ではオイル劣化センサの入力信号を入力回路としての測定回路50に入力して測定するわけではないので、このとき入力インピーダンスRinが比較的低くても、オイル劣化検出装置1の機能上、問題はないと一般に考えられていた。
【0042】
しかしながら、本発明の発明者は、実験(図7参照)により以下の問題を把握した。すなわち、この電源OFF状態、特に電源OFF直後において、入力インピーダンスRinが低下し、測定回路50内部のリークがある場合、オイル劣化センサ10の基準電極20と作用電極30の電位が変化し、その結果、両電極20、30間の電位差E0は低下してしまう。次に電源ON時、特に電源直後において、その低下した電極間電位E0はその電極20、30の表面における化学反応により電荷が蓄えられていく。オイル劣化センサ10をオイル中で浸漬する場合は、水溶液中と異なり、オイル中の電極20、30における電極金属の溶解反応、つまり電極20、30表面での電位発生の速度が遅いため、一旦オイル劣化センサ10の両電極20、30間の電位が変化すると、電位の回復(詳しくは、測定可能な電極間電位E0まで電位を上昇させる)には、時間を要することを明らかになった(図7参照)。なお、図7は横軸を経過時間、縦軸をオイル劣化センサ10の入力信号E0に基いて測定回路50で測定した計測値(センサ出力)を表す。
【0043】
これに対して、本発明のオイル劣化装置1は、以下の特徴を有する。図1において、従来の電気的構成を示す図6に対して、オイル劣化センサ10と測定回路50の間の回路に、回路を遮断、導通する切換え手段70を設ける。さらに、この切換え手段70は、測定回路に給電する電源Vbの給電停止をするとき、オイル劣化センサ10と測定回路50の間の回路を遮断する。すなわち電源OFF時にはオイル劣化センサ10と測定回路50が接続する回路を、切換え手段70によって遮断することで、開回路とし、オープン状態とする。
【0044】
これにより、電源OFF時、オイル劣化センサ10とそのオイル劣化センサ10の入力信号である電極間電位E0が入力される測定回路50の接続を切断し、オープン状態にすることができる。したがって、電源OFF時に測定回路50側へのリークがある場合、オイル劣化センサ10の電極20、30間に発生する電位差E0、つまりオイル劣化検出信号の無駄リークの防止が図れる。その結果、オイル劣化センサのオイル劣化検出信号強度、すなわち電位差の減衰防止が図れる。
【0045】
なお、本実施形態では、図1に示すように、測定回路50として、オペアンプを用いる。オペアンプは、電源Vbに接続されるとともに、アース接地されている。オイル劣化検出信号である電極間電位E0、つまり入力信号がオペアンプ50の非反転入力(+)に入力されると、それがインピーダンス変換される。これによりオペアンプ50に出力電圧である計測電圧(センサ出力)が現れ、この出力電圧が、評価手段を構成する評価回路60へ、測定回路50の出力信号として出力される。なお、反転入力(−)には図子しない帰還抵抗等により計測電圧に応じた信号が入力され、所定の増幅比率等によって、オイル劣化検出信号を変換する。そのため、オペアンプ50へ給電する電源VbをOFFすると、内部インピーダンスすなわち入力インピーダンスRinが、電源ON時に較べて低下する。測定回路50としてオペアンプを用いる場合でも、切換え手段70によって電源OFF時にはオペアンプ50とオイル劣化センサ10の回路をオープン状態にするので、電源OFFにより入力インピーダンスRinの低下に伴って、オイル劣化センサ10のオイル劣化検出信号である電位E0がオペアンプ50へリークすることを防止できる。
【0046】
さらになお、測定回路として用いるオペアンプ50に特別な改良、例えば電源OFFしても内部インピーダンスRinの低下防止を図る機能、あるいは手段を加える必要がないので、オイル劣化検出装置1として安価に提供することが可能である。
【0047】
さらになお、本実施形態では、切換え手段70として、例えば車両の走行状態に対応して連動する必要はなく、電源VbのOFF時に回路遮断し、ON時に回路通電するだけでよいので、固定接点70aと、この固定接点に接離可能な可動接点70bを備えている。切換え手段70として安価に提供することができる。この固定接点70aおよび可動接点70bからなる物理的スイッチとしては、例えば車両のイグニッションスイッチ(図子せず)、あるいはイグニッションスイッチ(図子せず)に連動するリレー回路であてもよい。
【0048】
なお、ここで、切換え手段70は、オイル劣化センサ10から測定回路50の間の回路を遮断する回路を構成する。
【0049】
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用した他の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態においては、第1の実施形態と同じもしくは均等の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0050】
第2の実施形態では、切換え手段70として、物理的なスイッチである固定接点70aと可動接点70bからなる構成に代えて、図5に示すように、電気的なスイッチである半導体スイッチング素子170とする。図5は、本実施形態のオイル劣化検出装置の電気的構成を表す模式的回路図である。図5に示すように、オイル劣化センサ10とオペアンプ50の間の回路に、FET等の半導体スイッチング素子(以下、トランジスタと呼ぶ)170を接続する。詳しくは、トランジスタ170のドレインDとソースS間がオイル劣化センサ10とオペアンプ50の間の回路に接続している。トランジスタ170のゲートGは、電源Vbに接続さている。電源VbがON時には、ゲートGに電圧が加わり、ドレインD・ソースS間が接続される。電源VbがOFF時には、ゲートGに電圧が加わらなくなるため、ドレインD・ソースS間が遮断される。このような構成にしても、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0051】
なお、トランジスタ170は電気的スイッチであるので、回路の遮断、導通をする動作を、電源のON、OFFに素早く対応することが可能である
以上説明した実施形態において、オイル劣化センサは、二つの電極の電位差に基いて、オイル劣化検出信号を検出するものであれば、基準電極20と作用電極30間にそれぞれ発生する電位差E0を利用した電池構造に限らず、コンデンサ構造等の他の構造、あるいは電源OFF時の測定回路50側へオイル劣化検出信号がリークの恐れがある構造等いずれの構造であってもよい。これにより、一旦電源VbOFFした後、再度電源ONするとき、電源OFF後もそのオイル劣化検出信号の強度の低下防止が図られるので、電源ON直後から測定可能な信号レベルまで回復する時間の短縮化が図れる。
【0052】
本実施形態で説明した基準電極20、作用電極30に発生する電極電位の電位差E0をオイル劣化検出信号とする場合、電極20、30の表面での電位発生の反応速度は、略絶縁液であるオイル中は、水溶液中に比べて遅い。この場合、オイル劣化検出信号を入力信号として入力する測定回路50等にリークがある場合、電極電位が低下し易く、また電源ON後測定可能に回復する時間を要する。これに対して、電源OFF時には測定回路50へのリークによるオイル劣化センサの電位差E0の低下を防ぐとともに、電源ON直後の応答性の改善が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のオイル劣化検出装置の電気的構成を表す模式的回路図である。
【図2】第1の実施形態のオイル劣化検出装置に係わるオイル劣化検出部の電極の一実施例を示す断面図である。
【図3】図2の電極を示す分解斜視図である。
【図4】第1の実施形態のオイル劣化検出装置の概略構成を示す説明図であって、図4(a)は断面図、図4(b)はカバーの内部から図4(a)のB方向にみた矢視図である。
【図5】第2の実施形態のオイル劣化検出装置の電気的構成を表す模式的回路図である。
【図6】従来のオイル劣化検出装置の電気的構成を表す模式的回路図である。
【図7】従来のオイル劣化検出装置の電源OFF後の応答性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 オイル劣化検出装置
10 オイル劣化センサ(オイル劣化検出部)
20 基準電極(第1の電極)
30 作用電極(第2の電極)
50 オペアンプ(測定回路)
60 評価回路
70 切換え手段
70a、70b 固定接点、可動接点
170 トランシスタ(半導体スイッチング素子)
R0 電極間抵抗
Rin 入力インピーダンス(内部インピーダンス)
E0 (電極間に発生する)電位差(電極間電位)
E 測定電圧(出力電圧、計測電圧)
Vb 電源
Claims (7)
- 油中に浸漬したオイル劣化検出部と、前記オイル劣化検出部に接続され、前記オイル劣化検出部のオイル劣化信号を測定する測定回路を備えたオイル劣化検出装置において、
少なくとも前記測定回路に給電する電源の給電停止をするとき、前記オイル劣化検出部から前記測定回路の間の回路を遮断する回路を備えていることを特徴とするオイル劣化検出装置。 - 前記オイル劣化検出部は、二つの電極の電位差に基いた前記オイル劣化信号を検出することを特徴とする請求項1に記載のオイル劣化検出装置。
- 前記二つの電極は、前記油中の酸性、塩基性度に係わらず電極電位が略一定の基準電極と、前記油中の酸性、塩基性度に感応して電極電位が変化する作用電極を備えていることを特徴とする請求項2に記載のオイル劣化検出装置。
- 前記遮断する回路は、半導体スイッチング素子を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のオイル劣化検出装置。
- 前記遮断する回路は、固定接点と、前記固定接点に接離可能な可動接点を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のオイル劣化検出装置。
- 前記測定回路は、オペアンプからなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のオイル劣化検出装置。
- 前記測定回路は、前記電源からの給電が停止しているとき、給電時に比べて内部インピーダンスが低下することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のオイル劣化検出装置。
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