JP3846227B2 - 地下通水装置の洗浄方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、地下通水装置の洗浄方法に関し、特に、止水性の地中壁を構築した後に、地下水の流下を可能にする地下通水装置の洗浄方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、地下構造物、例えば、地下鉄や車両専用道路用などの地下トンネルを開削工法で構築する際には、地山の崩壊を防止して、内部の掘削を可能にするために止水性を備えた地中壁が構築される。
【0003】
この種の地中壁を構築する工法は、地中連続壁工法を始めとして、各種各様の方法が提供されているが、地中連続壁工法や柱列壁工法などで構築される地中壁は、地下構造物の本体部を構築した後にも地中に残置される場合がある。
【0004】
ところで、止水性を備えた地中壁を地中に残置しておくと、地下水流を遮断することになり、地中壁の上流側で地下水位が上昇し、下流側では、地下水位が低下するいわゆるダムアップ現象が生じる。
【0005】
そこで、従来は、このようなダムアップ現象を解消するために、地中壁の形成後に、地中壁で遮断された地下水流を連通させる通水路が形成される地下通水装置を設置していた。
【0006】
図3には、この種の地下通水装置の一例が示されている。同図に示した通水装置は、掘削溝1内に鉄筋籠2を建て込み、コンクリート3を打設することで形成した地中壁4内に設けられており、地中壁4の厚み方向を貫通する通水路5を有している。
【0007】
通水路5は、地山側に配置された集水部5aと、一端がこの集水部5aに連通され、ほぼ水平方向に延設された通水管5bとを有している。集水部5aには、地中壁4の内部を通って、地上側に延設される洗浄管6の一端が連通接続され、洗浄管6の他端側は、開閉バルブAを介して、洗浄水7が収容された洗浄タンク8に接続されている。
【0008】
通水管5bの掘削側の端部には、開閉バルブBが設けられている。なお、この開閉バルブBは、内方の根切り掘削後に設置される。また、通水管5bの掘削側には、上方に延設された分岐管5cが設けられていて、分岐管5cの端部には、流量測定用の開閉バルブCが設けられている。
【0009】
このような構成の通水装置では、集水部5aには、通常、土砂などの固形分を濾過するフィルターが使用され、このフィルターが目詰まり状態になると、地下水流の流下が阻害されるので、集水部5aの洗浄を行っていた。
【0010】
この集水部5aの洗浄方法は、まず、開閉バルブAを開放し、開閉バルブB,Cを閉塞し、この状態で、洗浄タンク8から洗浄水7を集水部5aに供給し、この洗浄水7でフィルター層を洗浄し、その後、開閉バルブAを閉塞し、開閉バルブCを閉塞した状態で開閉バルブBを開放して、洗浄後の汚染水を通水管5bを介して外部に排出する。
【0011】
このような洗浄操作は、複数回繰り返され、予め決定される洗浄回数毎に、開閉バルブBを閉塞した状態で、開閉バルブCを開放して、通水管5bを流れる流量を測定し、所定の流量が確保できるまで、洗浄操作と流量測定とを繰り返していた。
【0012】
しかしながら、このような従来の地下通水装置の洗浄方法には、以下に説明する課題があった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、上述した従来の洗浄方法では、通水装置の複数の開閉バルブA,B,Cの開閉操作を手動で行うため、通水装置の設置深度が深い場合などには、少なくとも2名の作業者が必要になり、時間とコストとがかかる。
【0014】
また、この種の通水装置は、地中壁4の延長方向に沿って、通常、複数箇所に設置されるが、この際に、設置数に応じて、より多くの作業員を配置するか、あるいは、洗浄操作を複数回に分けて行うことになり、より一層、時間とコストとが掛かっていた。
【0015】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、時間とコストの低減が可能になる地下通水装置の洗浄方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、止水性地中壁が地中の地下水流を遮断するように形成され、前記地中壁の形成後に、前記地中壁で遮断された前記地下水流を連通させる通水路が形成される地下通水装置の洗浄方法において、前記通水路は、前記地中壁の地山側に配置される集水部と、この集水部に一端が連通され、前記地中壁の厚み方向を貫通するように埋設される通水管と、前記通水路に介装された第1電動バルブとを備え、前記第1電動バルブの開弁および閉弁を制御する制御器を設け、前記制御器は、前記通水管内の流量が定常水量値以下になった時に、前記集水部に洗浄水を供給して洗浄操作を行うように前記第1電動バルブの開閉を制御し、かつ、洗浄後の前記通水管内の流量が定常水量値以上になると、前記洗浄操作を停止させるようにした。
【0017】
このように構成した地下通水装置の洗浄方法によれば、制御器は、通水管内の流量が定常水量値以下になった時に、集水部に洗浄水を供給して洗浄操作を行うように第1電動バルブの開閉を制御し、かつ、洗浄後の通水管内の流量が定常水量値以上になると、洗浄操作を停止させるので、自動的に集水部の洗浄を行い、その機能を回復させることができる。
【0018】
前記制御器は、タンク内に収容されている前記洗浄水を第2電動バルブの開閉を制御して、前記集水部に供給することができる。
【0019】
この構成によれば、洗浄水の自動供給が可能になる。
【0020】
前記通水管内の流量は、前記通水管に連通接続され、前記通水管の設置深度よりも排出口が上方に位置する分岐管と、前記分岐管を前記制御器からの送出信号を受けて開閉させる第3電動バルブと、前記第3電動バルブの開弁状態で、前記分岐管内を流下する水量が前記定常水量値以上の場合に作動する水位センサーとを備えた流量測定部で計測することができる。
【0021】
この構成によれば、通水管に連通接続され、通水管の設置深度よりも排出口が上方に位置する分岐管の流量により、定常水量値を測定するので、少ない水量測定で、定常流量値の判断が可能になる。
【0022】
また、前記制御器は、前記通水管内に設置した流量計、または、地盤中に設置した水位計で、前記通水管内の流量を間接的ないしは直接的に常時測定し、この測定値が定常水量値以下になったときの入力信号を受けて、前記洗浄操作を開始することができる。
【0023】
この構成によれば、洗浄操作を自動的に開始することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1および図2は、本発明にかかる地下通水装置の洗浄方法の一実施例を示している。
【0025】
同図に示した地下通水装置10は、止水性の地中壁12が地中の地下水流を遮断するように形成されている時に用いられるものであって、地中壁12の形成後に、地中壁12で遮断された地下水流を、上流側と下流側とで連通させる。
【0026】
本実施例の地下通水装置10は、地中壁12の厚み方向をほぼ水平に貫通し、両端が地下水流の上流側と下流側にそれぞれ臨む通水路14を備えている。地中壁12は、本実施例の場合には、地中連続壁工法により構築され、地中に掘削溝16を掘削形成し、鉄筋籠18を建て込んだ後に、掘削溝16内に、コンクリート20を打設して形成される。
【0027】
通水路14は、地中壁12の地山側に配置される集水部22と、鋼管製などの中空円筒状の通水管24と、第1電動バルブ26とを備えている。集水部22は、地中壁12の地山側に配置され、全体形状が概略平板状に形成されている。
【0028】
集水部22は、地中壁12側に配置されるケーシング22aと、フィルター層22bとを備えている。ケーシング22aは、地山側に配置される部分が開口した箱型のものであって、その内部にフィルター層22bが充填されている。
【0029】
この集水部22は、地盤中の所定深度に、所定の幅で存在する地下水を、フィルター層22bで固形分をろ過しながら水分だけを通過させて、内部に取り入れる機能を備えている。
【0030】
また、この集水部22には、地中壁12の内部を通って、地上側に延設される洗浄管28の一端が連通接続され、洗浄管28の他端側は、第2電動バルブ30を介して、洗浄水32が収容され、地上側に設置された洗浄タンク34に接続されている。
【0031】
通水管24は、両端が開口した管体であって、一端側が集水部22に連通接続され、他端側が、通水管24の他端に嵌着固定されたフランジ部25を介して、地中壁12の掘削側に臨むように、地中壁12内にほぼ水平を指向するように配置されている。
【0032】
なお、通水管24の掘削側の開口は、打設するコンクリート20の廻込みを防止するために、地中壁12を構築する際には、プレートなどにより閉塞されている。
【0033】
第1電動バルブ26は、地中壁12の構築後に、その内方側を掘削して、フランジ部25をはつり出し、その端部に通水管24と連通接続される延長管36の端部に配置されている。
【0034】
この第1電動バルブ26は、地上側設置される制御器38(具体的には、パーソナルコンピュータで構成している。)から送出される制御信号を受けて開閉される。
【0035】
制御器38には、第2電動バルブ30と、地山中に埋設され、地下水のレベルを検出する水位計40とが電気的に接続されている。また、本実施例の場合には、通水管24内の流量を測定する流量測定部42が設置されている。
【0036】
この流量測定部42は、分岐管42aと、第3電動バルブ42bと、容器42cと、水位センサー42dとを有している。分岐管42aは、延長管36の上部に設置されていて、この延長管36を介して通水管24に連通接続されている。
【0037】
また、この分岐管42aは、略L字形折曲されていて、その排出口(設置深度H2)が、通水管24の設置深度H1よりも上方に位置している。第3電動バルブ42bは、制御器38からの送出信号を受けて、分岐管42aを開閉させる。
【0038】
容器42cは、分岐管42aの排出口の直下に設置され、第3電動バルブ42bの開弁状態で、分岐管42a内を流下する水を受承する。水位センサー42dは、容器42cの内部に設置されていて、容器42a内に収容された水量が、定常水量値以上の場合に作動する。この水位センサー42dの作動信号は、制御器38に入力される。
【0039】
このような構成の流量測定部42を採用すると、以下に説明する利点がある、すなわち、通水管24は、地下水の流通幅の下端側に設置され、その設置深度H1が比較的深くなるので、通水管24の流量を直接測定すると、図1に示すように、地下水位H0との間の水頭差が大きくなり、流量が多く測定が困難になる。
【0040】
ところが、本実施例のように分岐管42を設けて、その排出口(設置深度H2)を通水管24の設置深度H1よりも上方に位置させて水量値を測定すると、排出口を上方に移動させた分だけ、地下水位H0との間の水頭差が少なくなり、その結果、少ない水量測定で、定常流量値の測定が可能になる。
【0041】
以上のように構成された地下通水装置10では、地中壁12の構築中、ないしは、その内部の根切り掘削、さらには、根切り掘削後の内部構築構造物の構築工事中においては、通水路14は、フランジ部25の閉塞、または、第1電動バルブ26の閉弁により、地下水が地中壁12内を通過して、下流側に流下することを阻止する。
【0042】
そして、工事が完了すると、第1電動バルブ26を開弁させて、地下水の下流側へ流下させて、地中壁12の上流側で地下水位の上昇を防止し、下流側では、地下水位が低下するいわゆるダムアップ現象を排除する。
【0043】
そして、このような供用中に集水部22のフィルター層24bに目詰まりが発生すると、集水部22の洗浄操作が行われる。図2には、この洗浄操作の手順が示されている。
【0044】
同図に示した洗浄操作の手順では、まず、ステップ1で、地下通水装置10における地中壁12の内部での非定常状態が確認された際に実行される。この非定常状態は、具体的には、集水部22の目詰まりにより、地下水の流下が阻害された場合であり、この状態は、本実施例では、水位計40により間接的に検出される。
【0045】
すなわち、地下水の流下が阻害されると地中壁12の上流側で、地下水位が上昇するので、これを水位計40で常時計測することにより検知する。なお、非定常状態の検知は、この水位計40で間接的に検出すること以外に、通水管24の流量を常時流量計で計測して直接的に検知してもよい。
【0046】
このような水位計40の検知信号は、制御器38に入力されているので、この信号を受けた制御器38は、次に、ステップ2で、洗浄水32の注排水の繰り返しを指示し、集水部22および通水管24の洗浄操作を行わせる。
【0047】
この洗浄操作は、▲1▼.必要水量が測定されるように、流量測定部42の水位センサー42dをオン状態にする。▲2▼.第1電動バルブ26を閉弁、第2電動バルブ30を開弁、第3電動バルブ42dを閉弁として、集水部22に洗浄タンク34から洗浄水32を供給する。
【0048】
▲3▼.第1電動バルブ26を開弁、第2電動バルブ30を閉弁、第3電動バルブ42dを閉弁として、洗浄水32の供給を停止して、集水部22を洗浄した汚水を通水管24を介して、外部に排出する。
【0049】
以上の▲2▼,▲3▼の洗浄、排水工程が、所定の回数になった時に、ステップ3で、第1電動バルブ26を閉弁、第2電動バルブ30を閉弁、第3電動バルブ42dを開弁として、流量を流量測定部42により測定し、流量測定部42の水位センサー42dの作動ないしは非作動により、流量が定常流量値以上になったか、否かが判断される。
【0050】
ステップ3で、流量が定常流量値以上になったと判断されると、次のステップ4で、洗浄操作を停止し、その後、通常の地下通水に移行する(ステップ5)。一方、ステップ3で、流量が定常流量値以上になっていないと判断された場合には、ステップ2に戻り、洗浄操作が続行される。
【0051】
さて、以上のように構成した地下通水装置10の洗浄方法によれば、制御器38は、通水管24内の流量が定常水量値以下になった時に、集水部22に洗浄水を供給して洗浄操作を行うように第1電動バルブ26の開閉を制御し、かつ、洗浄後の通水管24内の流量が定常水量値以上になると、洗浄操作を停止させるので、自動的に集水部22の洗浄を行い、その機能を回復させることができる。
【0052】
従って、洗浄にかかる手間が大幅に改善され、作業員の数も少なくて済み、雪駄する通水装置10が複数であって、少人数での作業が可能になり、経済的な面でも非常に有利になる。
【0053】
また、本実施例の場合には、制御器38は、タンク34内に収容されている洗浄水32を第2電動バルブ30の開閉を制御して、集水部22に供給するので、洗浄水32の自動供給が可能になる。
【0054】
さらに、本実施例の場合には、制御器38は、地中に設置した水位計40で、通水管24内の流量を間接的に常時測定し、この測定値が定常水量値以下になったときの入力信号を受けて、洗浄操作を開始するので、洗浄操作を自動的に開始することができる。
【0055】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明にかかる地下通水装置の洗浄方法によれば、時間とコストの低減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる地下通水装置の洗浄方法の一実施例を示す洗浄時の説明図である。
【図2】図1の洗浄方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】従来の地下通水装置の洗浄方法の一実施例を示す洗浄時の説明図である。
【符号の説明】
10 地下通水装置
12 地中壁
14 通水路
22 集水部
24 通水管
26 第1電動バルブ
28 洗浄管
30 第2電動バルブ
32 洗浄水
38 制御器
42 流量測定部

Claims (4)

  1. 止水性地中壁が地中の地下水流を遮断するように形成され、前記地中壁の形成後に、前記地中壁で遮断された前記地下水流を連通させる通水路が形成される地下通水装置の洗浄方法において、
    前記通水路は、前記地中壁の地山側に配置される集水部と、この集水部に一端が連通され、前記地中壁の厚み方向を貫通するように埋設される通水管と、前記通水路に介装された第1電動バルブとを備え、
    前記第1電動バルブの開弁および閉弁を制御する制御器を設け、
    前記制御器は、前記通水管内の流量が定常水量値以下になった時に、前記集水部に洗浄水を供給して洗浄操作を行うように前記第1電動バルブの開閉を制御し、かつ、洗浄後の前記通水管内の流量が定常水量値以上になると、前記洗浄操作を停止させることを特徴とする地下通水装置の洗浄方法。
  2. 前記制御器は、タンク内に収容されている前記洗浄水を第2電動バルブの開閉を制御して、前記集水部に供給することを特徴とする請求項1記載の地下通水装置の洗浄方法。
  3. 前記通水管内の流量は、前記通水管に連通接続され、前記通水管の設置深度よりも排出口が上方に位置する分岐管と、前記分岐管を前記制御器からの送出信号を受けて開閉させる第3電動バルブと、前記第3電動バルブの開弁状態で、前記分岐管内を流下する水量が前記定常水量値以上の場合に作動する水位センサーとを備えた流量測定部で計測することを特徴とする請求項1または2記載の地下通水装置の洗浄方法。
  4. 前記制御器は、前記通水管内に設置した流量計、または、地盤中に設置した水位計で、前記通水管内の流量を間接的ないしは直接的に常時測定し、この測定値が定常水量値以下になったときの入力信号を受けて、前記洗浄操作を開始することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の地下通水装置の洗浄方法。
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